「敵の出方論」不使用/考

 更新日/2021(平成31.5.1栄和改元/栄和3).9.21日

「敵の出方論」不使用/考
  2021(令和3).8.4日、日本共産党創立99年記念講演会での志位和夫発言。
 安倍首相は現在においても「敵の出方論に立った暴力革命の方針に変更はない」と答弁しました。日本共産党は社会変革の道筋にかかわって、過去の一時期に、敵の出方論 と説明しておりましたが、その内容は、一つ、選挙で多数の支持を得て誕生した民主的政権に対して反動勢力があれこれの不法な攻勢に出た際には、国民とともに秩序維持のために必要な合法的な措置をとる。二つ、民主的な政権ができる以前に反動勢力が民主主義を暴力的な手段で破壊しようとした場合には、広範な国民世論を結集してこれを許さない、というものです。
 9.8日、共産党は第3回中央委員会総会で、暴力的な革命を排除していないとの誤解を避けるため、過去使用していた「敵の出方論」と呼ばれる表現を今後は使わないと決めた。志位和夫委員長は「非平和的方針を取るかのような悪宣伝に使われる」と説明した。志位氏は総会で2004年の党綱領改定後、この表現は使わないようにしていたと強調。
 記念公講演では、敵の出方論を悪用しての暴力革命の党といった日本共産党攻撃に対して、詳細な反論を加えました。日本共産党は社会変革の道筋にかかわって、過去の一時期に敵の出方論という説明をしてきましたが、その内容は、どんな場合でも平和的合法的に社会変革を進めるという日本共産党の一貫した立場を説明したものにほかなりません。この問題にかかわって、記念講演では「敵の出方」という表現だけを捉えて日本共産党が恰も平和的方針と非平和的方針の二つの方針を持っていて、相手の出方によっては非平和的方針を採るかのような捻じ曲げた悪宣伝に使われるということで、この表現は2004年の綱領改定後は使わないことにしていることを明らかにしました。「この表現は使わない」ことを中央委員会総会の決定としても明確にしておきたいと思います。

 14日には「敵の出方論を悪用している」と、政府を批判する談話も発表した。公安調査庁のホームページなどによると、「敵の出方論」とは過去の共産党内で使われていた理論で、革命の形態が平和的になるか、非平和的になるかは敵の出方によるという考え方。
 9.10(11?)日、TBS系「ひるおび!」が自民党総裁選をめぐる政局を取り上げ、次期衆院選での野党共闘(立憲民主、共産、社民、れいわ)の動きを紹介したところ、レギュラーコメンテーターの八代英輝(やしろ ひでき)弁護士が、共産党も含めた野党共闘について次のように攻撃した。
 「志位委員長がつい最近、『敵の出方』って言い方やめようって言いましたけども、共産党はまだ『暴力的な革命』というものを、党の要綱として廃止してませんから。よくそういうところと(立憲民主党らは)組もうという話になるな、と個人的には感じますね」。

 この日本共産党攻撃に対し即座に反応したのが共産党の志位委員長。同日、ツイッターで次のように猛抗議をした。
 「TBS系『ひるおび!』で出演者が『共産党は暴力的な革命を廃止していない』などと述べたことに対し、党広報部植木部長は、局の担当者に抗議し、番組としての謝罪と訂正を求めました。担当者は『申し訳ない』とのべ、訂正については検討すると答えました。事実無根の卑劣なデマは絶対に許せません」。
 「どんな場合でも、平和的・合法的に社会変革の事業を進めるということが、日本共産党の一貫した立場です」。

 志位和夫委員長に続いて小池晃書記局長らもTBSに速攻で「事実無根の卑劣なデマ」として抗議、反論した。同日、TBS広報部は、共産党の抗議を受け、「共産党の綱領には記載がなく、発言は誤りでした」と謝罪し、「月曜日の放送で対応することになります」と13日の放送で訂正などなんらかの対応をすると回答した。八代の発言後、番組スポンサーのキユーピーは番組内でのCM放送を見合わせた。


 9.13日、「ひるおび!」が番組内で、「先週の放送で、野党共闘のテーマを扱っている際に日本共産党について『まだ暴力的な革命というのを、党の要綱として廃止していない』という発言がありました。日本共産党の綱領に、そのようなことは書かれていませんでした。訂正しておわびします」とアナウンサーが謝罪。八代本人も、「先週の私の発言についてですが、私の認識は、閣議決定された政府見解に基づいたものでした。一方、日本共産党はそれを度々否定していることも併せて申し上げるべきでした。申し訳ありませんでした。TVで発言する者として今後はより正確にバランスに配慮し、言葉に責任を持っていきたいと思います」、「私の発言『共産党は暴力的な革命を、党の要綱として廃止してない』について多くの批判を頂いた。現在の共産党の党綱領には、そのような記載は存しません。私の発言により多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」 と謝罪させられた。

 この八代謝罪に対しても、志位共産党委員長は「虚偽発言への撤回・謝罪になっていない」とツイートし抗議し、ジャーナリスト江川紹子は「八代氏のは、自分の発言は政府の見解に沿ったもの、という『弁解』であって、共産党綱領にないことを『ある』とした虚偽コメントへの『謝罪』とは言えませんね」と指摘した。

 これに対して、“維新の暴言男”足立康史・衆院議員はこんなツイートを連投した。〈逆にTBSが謝罪とか訂正とかしたら、大変な問題になる。→「共産党は暴力的な革命を廃止していない」。暴力革命の問題は、単なる放送電波の問題としてでなく、国会でしっかり議論しなければなりません。音喜多駿・参院議員も〈共産党は公安も認定する通り暴力革命の路線を捨てておらず、TBS番組でコメンテーターの方が言いたかったことは正しいです。ただ、党綱領には書いてないので、その点が不正確でまずかった〉と投稿。松井一郎・大阪市長も、高橋洋一・元内閣官房参与の〈要綱で暴力的革命と発言したから間違いなので、破防法で調査団体であり暴力革命の方針に変更はないといえばよかった〉、〈月曜日の放送で謝罪というけど、折角なら、6月の閣議決定などを含めて解説してもらえればいいけど。「共産党は要綱で暴力革命と発言しましたが誤りです。正しくは破防法対象団体で、暴力革命の方針に変わりないと政府は認識しているとの閣議決定があります」と放送したら凄い〉などというツイートを連続リツイートした。高橋・元参与のツイートにある「6月の閣議決定」というのは、維新の鈴木宗男・衆院議員の質問主意書に対し、〈日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である〉などと答えたものだが、この鈴木宗男議員の質問は、「正論」(産経新聞社)7月号に掲載された公安調査庁・横尾洋一次長と佐藤優氏の対談「日本共産党に騙されるな 革命路線に変わりなし」を受けてのものだ。この閣議決定でも、肝心の具体的事案については、〈暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、現在でもこの認識に変わりはないが、その具体的内容を明らかにすることは、公安調査庁における今後の業務に支障を来すおそれがあることから、お答えは差し控えたい〉などと思わせぶりに答えるだけの代物である。
 「『敵の出方論』は暴力的な革命とは何の関係もない」。志位委員長が党創立99周年記念講演会などで説明したところによれば、「敵の出方論」というのは「(1)選挙で多数の指示を得て誕生した民主的政権に対して反動勢力があれこれの不法な暴挙に出たさいには国民とともに秩序維持のために必要な合法的措置をとる」、「(2)民主的政権ができる以前に反動勢力が民主主義を暴力的に破壊しようとした場合には広範な国民世論を結集してこれを許さない」というもので、相手が不法や暴力に出たとしても、合法的・平和的に抵抗するというもの。しかし、右派勢力が、「敵の出方によっては暴力的手段をとる。共産党は暴力革命路線を捨ててない」論拠として「敵の出方論」を喧伝していることから、2004年の綱領改定後は使っておらず、今後も使用しないことを9.8日の中央委員会総会で表明していた。

 安倍政権時代の2016年3月、〈日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である〉、〈警察庁としては、現在においても、御指摘の日本共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った「暴力革命の方針」に変更はないものと認識している〉などとする答弁書を閣議決定している。このときは宗男議員の娘である鈴木貴子・参院議員の質問主意書に答えたもの。貴子議員は質問主意書を出す直前、民主党(当時)を離党。その後自民党に入党している。
 9.16日、立憲民主党の枝野幸男代表は、共産党が「敵の出方論」に立った暴力革命を選択肢から排除していないとする従来の政府見解について、衆院選で政権交代を実現した場合、変更する可能性を示唆した。国会内で記者に「枝野内閣で変更するのか維持するのか」と問われ、「少なくても私は、今、共産が暴力革命を目指しているとは全く思っていない」と述べた。政府は平成28年3月、「共産党のいわゆる『敵の出方論』に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識している」との答弁書を閣議決定した。加藤勝信官房長官は今月14日の記者会見で、この見解を改めて説明した。一方、共産は8日の中央委員会総会で、暴力革命を排除していないとの受け止められるのを避けるため、過去に使用していた「敵の出方論」と呼ばれる表現を今後は使わないと決めた。立民は衆院選に向け、共産との候補者一本化など協力を進めている。
 9.17日、八代英輝弁護士が、この日の『ひるおび!』(TBS)で、“2度目の謝罪”をした。この日、珍しく立憲民主党の江田憲司代表代行をスタジオに招き、横浜市長選の舞台裏や総裁選、総選挙における野党の動向について話を聞いていたが、そんななか、八代弁護士が唐突にこう語った。「先日9月10日の番組内での私の発言、『共産党は暴力的な革命を党の要綱として廃止してない』につきまして、現在の共産党の党綱領には、そのような記載はないと多くのご批判をいただきました。ご指摘のとおり、現在の共産党の党綱領には、そのような記載は存しません」。“2度目の謝罪”という異例の対応になったのは1度目の謝罪で抗議が止まらなかったからと思われる。13日の1度目の謝罪では、局アナが綱領に暴力的な革命がない旨を訂正・謝罪した一方、八代弁護士は「私の認識は閣議決定された政府見解に基づいたものでした」と訂正していた。この対応に八代弁護士と『ひるおび!』に対する批判はますます高まり、TBSや番組スポンサーにも抗議の声が殺到。番組スポンサーの一つであるキユーピーがCM放映を休止する事態になった。八代弁護士は降板することも、当面の出演を控えることもなく、そのまま出演を続けている。

 志位委員長が党創立99周年記念講演会などで説明したところによれば、「敵の出方論」というのは「(1)選挙で多数の指示を得て誕生した民主的政権に対して反動勢力があれこれの不法な暴挙に出たさいには国民とともに秩序維持のために必要な合法的措置をとる」、「(2)民主的政権ができる以前に反動勢力が民主主義を暴力的に破壊しようとした場合には広範な国民世論を結集してこれを許さない」というもので、相手が不法や暴力に出たとしても、合法的・平和的に抵抗するというもの。しかし、産経などが「敵の出方」という表現を悪用して、共産党があたかも「敵の出方によっては暴力的手段をとる」、「共産党は暴力革命捨ててない」かのように喧伝していることから、2004年の綱領改定後は使っておらず、今後も使用しないことを8日の中央委員会総会で表明していた云々。TBSも共産党の抗議を受け、「共産党の綱領には記載がなく、発言は誤りでした」とデマであることを認め、「月曜日の放送で対応することになります」と13日の放送で訂正などなんらかの対応をするという。これに対し、音喜多駿・参院議員が〈共産党は公安も認定する通り暴力革命の路線を捨てておらず、TBS番組でコメンテーターの方が言いたかったことは正しいです。ただ、党綱領には書いてないので、その点が不正確でまずかった〉と投稿。松井一郎・大阪市長も、高橋洋一・元内閣官房参与の〈要綱で暴力的革命と発言したから間違いなので、破防法で調査団体であり暴力革命の方針に変更はないといえばよかった〉〈月曜日の放送で謝罪というけど、折角なら、6月の閣議決定などを含めて解説してもらえればいいけど。「共産党は要綱で暴力革命と発言しましたが誤りです。正しくは破防法対象団体で、暴力革命の方針に変わりないと政府は認識しているとの閣議決定があります」と放送したら凄い〉などというツイートを連続リツイートした。

 破防法とは、「暴力主義的破壊活動」をおこなった団体に対する規制措置などを定めた法律で、第1条には、目的が次のように書かれている。
 「第1条 この法律は,団体の活動として暴力主義的破壊活動を行つた団体に対する必要な規制措置を定めるとともに,暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定を補整し,もつて,公共の安全の確保に寄与することを目的とする」。

 いまでも共産党はこの法律に基づく調査団体、というのが政府の公式見解なのである。以下は『日本共産党の正体』(福冨健一・著)をもとに解説してみよう(以下、引用は同書より)

 たしかに共産党をずっと調査対象にしてきた。同法とセットで設置された破防法適用のための調査機関である公安調査庁(公安庁)のレポート「内外情勢の回顧と展望」の2021年1月版でも、イスラム国やアルカイダをはじめ、朝鮮総連、オウム真理教、中核や革マル等の新左翼セクト、一部右翼団体などとともに、日本共産党について述べられている。しかし、この破防法はもともと東西冷戦下の1952年に共産党を排除する政治的な目的でつくられた法律で、破防法も公安庁も、自民党や警察関係者にすら「無用の長物」「予算の無駄遣い」と冷笑されてきた。

 実際、松井市長がリツイートした高橋・元参与のツイートにある「6月の閣議決定」というのは、維新の鈴木宗男・衆院議員の質問主意書に対し、〈日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である〉などと答えたものだが、この鈴木宗男議員の質問は、「正論」(産経新聞社)7月号に掲載された公安調査庁・横尾洋一次長と佐藤優氏の対談「日本共産党に騙されるな 革命路線に変わりなし」を受けてのものだ。

 ちなみに、安倍政権時代の2016年3月にも〈日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である〉〈警察庁としては、現在においても、御指摘の日本共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った「暴力革命の方針」に変更はないものと認識している〉などとする答弁書を閣議決定している。このときは宗男議員の娘である鈴木貴子・参院議員の質問主意書に答えたもの。貴子議員は質問主意書を出す直前、民主党(当時)を離党。その後自民党に入党している。

 2016.3.14日、衆議院議員の鈴木貴子が、「日本共産党と破壊活動防止法に関する質問主意書」を政府に提出し、共産党は破防法の調査団体かどうか確認を求めている。これに対し政府は、「日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査団体である」、「いわゆる敵の出方論に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識している」、「日本共産党が、昭和20年8月15日以降、日本国内において暴力主義的破壊活動を行った疑いがあるものと認識している」という答弁書を3月22日、閣議決定している。要するに、2016年の時点で政府は、日本共産党は過去に国内で乱暴な破壊活動をやった疑いがあるし、いまでも「暴力革命」をする可能性がある団体だという認識だ、と言っている。

 この答弁書に対し共産党書記局長の山下芳生(当時)は、『公安調査庁は36年間調査したが破防法の適用申請を一回もしていない』、『わが党は正規の機関で「暴力革命の方針」をとったことは一度もない』、『憲法上の結社の自由に対する侵害だ。厳重に抗議し、答弁書の撤回を求めたい』など、政府答弁書の撤回を要求している。
【加藤官房長官】「共産党の暴力革命方針変更なし」

【「敵の出方論」考】
 1964年5月21日 第八回党大会「政治報告」は次の通り。
 革命が平和的か暴力的かは敵の出方による。現在の国家権力がたやすく権力を人民に譲渡するとは考えられない。

 宮本顕治 『日本革命の展望』(1967年、新日本新書)は次の通り。

 革命への移行が平和的となるか非平和的となるかは、結局敵の出方によることは、マルクス・レーニン主義の重要な原則である。

 不破哲三『人民的議会主義』(1970年、新日本出版社)は次の通り。
 わが党は革命への移行が最後的には敵の出方にかかるという立場をとっている。

 現在の日本共産党綱領|党紹介│日本共産党中央委員会中の文言に「敵の出方論」を表していると解釈される部分がある。
 民主連合政府の樹立は、国民多数の支持にもとづき、独占資本主義と対米従属の体制を代表する支配勢力の妨害や抵抗を打ち破るたたかいを通じて達成できる。対日支配の存続に固執するアメリカの支配勢力の妨害の動きも、もちろん、軽視することはできない。このたたかいは、政府の樹立をもって終わるものではない。引き続く前進のなかで、民主勢力の統一と国民的なたたかいを基礎に、統一戦線の政府が国の機構の全体を名実ともに掌握し、行政の諸機構が新しい国民的な諸政策の担い手となることが、重要な意義をもってくる。
 「敵の出方論」安倍前総理の国会答弁と公安調査庁見解。安倍前総理の国会答弁は以下。
 第201回国会 衆議院 本会議 第6号 令和2年2月13日
 日本共産党が破壊活動防止法の調査対象となっている理由等についてお尋ねがありました。日本共産党は、昭和二十六年から二十八年ごろにかけて、団体の活動として、革命の正当性、必要性を主張し、各地の党組織や党員が殺人や騒擾などの暴力主義的破壊活動を行った疑いがあります。現在においても、いわゆる敵の出方論に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識しており、破壊活動防止法に基づく調査の対象になっているものと承知しています。

 この答弁は当然、公安調査庁の見解を踏襲しています。公安調査庁の見解「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解 | 公安調査庁」は以下の通り。

 共産党は,第5回全国協議会(昭和26年〈1951年〉)で採択した「51年綱領」と「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」とする「軍事方針」に基づいて武装闘争の戦術を採用し,各地で殺人事件や騒擾(騒乱)事件などを引き起こしました(注1)。その後,共産党は,武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが,革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し,暴力革命の可能性を否定することなく(注2),現在に至っています。こうしたことに鑑み,当庁は,共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体としています。

 (注1) 共産党は,「(武装闘争は)党が分裂した時期の一方の側の行動であって,党の正規の方針として『暴力革命の方針』をとったことは一度もない」(3月24日付け「しんぶん赤旗」)などとしていますが,共産党自身が5全協を「ともかくも一本化された党の会議であった」と認めています(第7回党大会中央委員会報告,昭和33年)。また,不破哲三前議長と上田耕一郎元副委員長の共著「マルクス主義と現代イデオロギー」 では,当時の武装闘争について,次のように述べています。 「たんに常識はずれの『一場の悪夢』としてすまされることのできない,一国の共産党が全組織をあげ,約2年間にわたって国民にさし示した責任のある歴史的行動であった」。
 (注2) 共産党は,「『議会の多数を得て社会変革を進める』-これが日本共産党の一貫した方針であり,『暴力革命』など縁もゆかりもない」(3月24日付け「しんぶん赤旗」)などと主張していますが,同党が,日本社会党の「議会を通じての平和革命」路線を否定してきたことは,不破前議長の以下の論文でも明らかです。○ 「『暴力革命唯一論』者の議論は,民主主義を擁護する人民の力を無視した受動的な敗北主義の議論である。しかし,反対に『平和革命』の道を唯一のものとして絶対化する『平和革命必然論』もまた,米日支配層の反動的な攻撃にたいする労働者階級と人民の警戒心を失わせる日和見主義的『楽観主義』の議論であり,解放闘争の方法を誤まらせるものなのである」(不破哲三著「日本社会党の綱領的路線の問題点」)

 公安調査庁の説明では、志位委員長の主張は従前の共産党の立場通りだというのが分かります。問題は、その意味内容の解釈だということです。

 なお、警察庁見解「暴力革命の方針を堅持する日本共産党(警察庁)」は次の通り。
 日本共産党は、同党の革命路線についてコミンフォルムから批判を受け、昭和26年10月の第5回全国協議会において、「日本の解放と民主的変革を、平和の手段によって達成しうると考えるのはまちがいである」とする「51年綱領」と、「われわれは、武装の準備と行動を開始しなければならない」とする「軍事方針」を決定しました。
 改定の結果、マルクス・レーニン主義特有の用語や国民が警戒心を抱きそうな表現を削除、変更するなど、「革命」色を薄めソフトイメージを強調したものとなりました。しかし、二段階革命論、統一戦線戦術といった現綱領の基本路線に変更はなく、不破議長も、改定案提案時、「綱領の基本路線は、42年間の政治的実践によって試されずみ」として、路線の正しさを強調しました。このことは、現綱領が討議され採択された第7回党大会から第8回党大会までの間に、党中央を代表して報告された「敵の出方」論に立つ同党の革命方針に変更がないことを示すものであり、警察としては、引き続き日本共産党の動向に重大な関心を払っています。

 2021.9.14日、加藤勝信官房長官は記者会見で「政府としては日本共産党のいわゆる『敵の出方論』に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識している」と述べた。共産党が8日の中央委員会総会で、権力側の出方によっては非平和的手段に訴える「敵の出方論」との表現を今後は使用しないと決定したことに関する質問に答えた。志位氏は総会で、「敵の出方論」について「どんな場合でも平和的、合法的に社会変革の事業を進めるという共産党の一貫した立場を説明したものにほかならない」と述べていたが、加藤氏は「志位氏の発言によって政府の認識は何ら変更するものではない」とも語った。
 “革命への移行が平和的となるか非平和的となるかは、結局敵の出方によることは、マルクス・レーニン主義の重要な原則である。”(宮本顕治 『日本革命の展望』1967年)。“反対に『平和革命』の道を唯一のものとして絶対化する『平和革命必然論』もまた、米日支配層の反動的な攻撃にたいする労働者階級と人民の警戒心を失わせる日和見主義的『楽観主義』の議論であり、解放闘争の方法を誤まらせるものなのである。”(「前衛」1968年発行)




(私論.私見)