共産党の党首公選考その3

 更新日/2023(平成31.5.1栄和改元/栄和5).3.29日



 3.20日、「共産党が松竹伸幸氏に続き“京都の実力者”も除名の異常事態 問われる「市田」「穀田」の人間性」。

 全国の有権者は心底、呆れている──。毎日新聞(電子版)は3月16日、「共産が志位氏の辞任求めた党員を除名 『分派活動』と認定」との記事を配信、YAHOO! ニュースのトピックスにも転載された。今年に入って日本共産党は党員の除名処分を“乱発”しているのだ。担当記者が言う。  ***

 「今回、除名処分が下されたのは、ジャーナリストで党員の鈴木元さん(78)です。年齢からも分かる通り、まさに“古参党員”です。京都は共産党が推薦した候補者が市長選や府知事選で当選するなど、強固な支持基盤を構築しています。鈴木さんは、その立役者と言っていいでしょう」  念のため、京都の首長選で共産党の支援を受けた候補が当選した事例について説明しておこう。  1950年、蜷川虎三氏(1987~1981)が共産党や労組を含む全京都民主戦線統一会議(民統)推薦で京都府知事選に立候補し、当選を果たした。  さらに1967年、富井清氏(1903~1974)が日本社会党・日本共産党や府市内の労働組合に加え府医師連盟などで作る「全京都市民会議」の推選で京都市長選に立候補、当選を果たしている。  京都で鈴木氏を慕う党員は多いという。党のために長年尽力してきた古参党員を切り捨てたのは、今年1月、鈴木氏が『志位和夫委員長への手紙 日本共産党の新生を願って』(かもがわ出版)を上梓したからだ。 「鈴木氏は自著で志位和夫委員長(68)の辞任を求め、党首公選制の導入を主張しました。同じく1月、ジャーナリストで党員だった松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)を上梓し、党首公選制の導入を訴えたところ、2月に除名処分が下りました。全く同じ構図だと言えます」  2冊の著作はどちらも今年1月に出版された。松竹氏は2月に除名されたが、鈴木氏は3月まで除名されなかった。

 抵抗した京都の共産党

 この“タイムラグ”に一部のメディアが着目した。デイリー新潮も3月14日、「共産党のダブルスタンダード 『党首公選』を主張した1人は除名、1人はスルー」との記事を配信している。 「鈴木氏の著書を出版した『かもがわ出版』の本社は京都市にあります。しかも、2006年に入社した松竹さんが編集主幹を務めているのです。党首公選制を主張しただけで除名されるのはおかしいと思う人は多いでしょうが、それは別として、共産党は松竹さんを除名したのですから、鈴木さんも除名しなければ道理が通りません」(同・記者)。もともと松竹氏は東京で党活動に従事してきたため、京都では“新参者”だ。一方の鈴木氏は、まさに京都の共産党を代表する人物だと言える。 “京都の実力者”である鈴木氏のクビを切るのは、共産党にとっては相当な“難事業”だったようだ。京都の共産党に詳しい関係者が言う。 「松竹氏の除名処分は、共産党の京都府委員会が決定し、中央委員会が承認しました。ところが、鈴木氏の場合、『松竹氏と同じように除名処分にすべき』という議論にはなったのですが、府委員会では『除名はおかしい』という反対意見も根強く、なかなか決定を下せなかったのです」 。
 大学教授も批判

 除名を巡る議論は、なかなか進まない。この状況に噛みついたのが、元参議院議員で共産党副委員長の市田忠義氏(80)だった。2月5日に自身のFacebookに「鈴木元氏も予想していた通りの転落ぶりですね。『俺が俺が』の人物の哀れな末路を見る思いがします」と投稿したのだ。  この投稿は後に削除されたが、リアルタイムで閲覧した関係者がTwitterにキャプチャー画像や感想を投稿している。  さらに、穀田恵二・国対委員長(76)も3月15日の記者会見で鈴木氏を「けしからん」と批判し、処分をどうするのか記者に質問されると「調査中」と答えた。 「結局、党中央はどうしても鈴木氏を除名したかったのでしょう。府委員会での決定プロセスを飛ばし、『中央委員会で除名処分を承認』という荒技で決着を図りました。とはいえ、鈴木氏を慕う党員の多さと党の焦りも浮き彫りにしたと言えます。もちろん鈴木氏は除名の決定プロセスがおかしいことは承知しており、これから正面切って批判するに違いありません」(同・関係者)  YAHOO! ニュースに転載された毎日新聞記事のコメント欄に、一橋大学大学院社会学研究科教授の中北浩爾氏が《もうため息しか出ません》と投稿している。 《綱領や規約の解釈権を党指導部が独占し、それに基づき処分を行う。党内民主主義が十分に機能していないことを示しています》

 内ゲバと同じ

 Twitterでも批判の声が相次いだ。《完全なる言論弾圧》、《言論の自由のない全体主義政党の共産党》、《共産党の下部員には言論の自由はなく、志位氏の独裁は続く》――という具合だ。 「批判が相次ぐのは当然ですが、『綱領や規約の解釈権』とか『言論弾圧』などの指摘は、やや高尚すぎるかもしれません。実際のところ、そんな次元の話ではないのです。除名騒動は人間関係の対立が原因で、要するに醜悪なケンカです。登場人物の経歴を見れば簡単に分かります」(同・関係者)  以下に市田、鈴木、穀田、松竹4氏の経歴を、世代が分かりやすいよう元号も併記して紹介する。  市田氏は1942(昭和17)年に大阪府で生まれ、立命館大学法学部の夜間部を卒業。1988(昭和63)年に日本共産党京都府委員会委員長に就任した。鈴木氏は1944(昭和19)年に同じく大阪府で生まれ、立命館大学経済学部を卒業。その後は日本共産党京都北地区委員会や府委員会で常任委員を務めた。  穀田氏は1947(昭和22)年に岩手県で生まれ、立命館大学文学部を卒業。1987(昭和62)年に共産党の公認候補として京都市議選に立候補して当選。1993(平成5)年の衆議院議員選挙で旧京都1区から立候補して当選を果たした。  一方、松竹氏は1955(昭和30)年に長崎県で生まれており、上の3人とは世代が違う。高校は兵庫の県立高校だったが、大学は東京の一橋大学を卒業。その後は日本民主青年同盟(民青同盟)役員、日本共産党国会議員秘書などを歴任した。 「市田さん、鈴木さん、穀田さんの3人は同じ立命館大学のOBで、京都での党活動で頭角を現しました。つまり今回の除名騒動は、内ゲバのようなものです。市田さんが“親分”で穀田さんが“子分”。そして市田さんと鈴木さんの対立は有名でした」(同・関係者)  京都の党員が「あと30分で会議が終わる。それまで待っていてくれ」と指示されたとする。だが、1時間が経っても会議は全く終わらない。 「不思議に思って会議室を覗いてみると、市田さんと鈴木さんが口角泡を飛ばす激しい議論を繰り広げていた、こんな話は枚挙に遑がありません。市田・穀田コンビと鈴木さんは、まさに水と油の関係なのです」(同・関係者)
 松竹氏を救った鈴木氏

 市田氏は元党議長の不破哲三氏(93)に評価された。その結果、市田氏と穀田氏は“党内エリート”の道をまっしぐらに歩むことができたという。 「市田さんも穀田さんも、まるでエリート官僚のようなタイプです。京都にいても、彼らの視線は常に東京の党本部に向けられています。一方の鈴木さんは、京都に深く根ざし、草の根の党活動に従事してきた。感覚が合うはずもなく、党の運営や選挙活動の方向性など、何から何まで対立しました。市田さんと穀田さんにとって、昔から鈴木さんは“目の上のたんこぶ”だったのです」(同・関係者)  鈴木氏は松竹氏とも深いつながりを持っている。松竹氏は2005年、「自衛隊解消までの過渡的な時期に日本が他国から侵略を受けた場合、自衛隊を活用する」という趣旨の論文を発表した(註)。 「これを『自衛隊活用論』と呼び、実は志位さんも最近になって似たようなことを口にしました。しかし松竹さんが論文を発表すると志位さんは激しく批判し、松竹さんは“自己批判文”を書かされたのです。そして翌06年、勤務先だった党中央委員会から“放逐”されました。それを見た鈴木さんが松竹さんに声をかけ、かもがわ出版に招いたのです」(同・関係者)  自己批判や放逐など、まるで中国の文化大革命のようだ。共産党のアナクロニズムには驚かされる。  それはともかく、志位、市田、穀田の3氏が“人事権”を濫用し、松竹氏と鈴木氏の地位を不当に奪ったのは間違いない。彼らがやったことはブラック企業と全く同じだろう。 註:岐路に立つ共産党 「自衛隊活用論」の本気度(毎日新聞・電子版:2022年11月2日) デイリー新潮編集部

 「文藝春秋2023年6月号」編集部「「志位和夫はもうあかん!」日本共産党を除名された伝説の幹部が激白」。
 今春の統一地方選では、維新が躍進したのとは対照的に大敗。道府県議選、政令市議選で前回獲得した議席の2割、一般市議選でも1割を失う惨状だった。大敗の背景には、古参党員を除名したため、党内に動揺が広がったことがある。元党京都府委員会常任委員の鈴木元氏(78)は党歴60年の大ベテランで、党勢拡大の大功労者である。だが、今年1月に出版した『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)の中で、志位和夫委員長を批判。すると、「わが党の綱領路線に対する全面的な攻撃」「派閥・分派行為」などとして、今年3月に除名されてしまったのである。鈴木氏の除名は党員たちを失望させ、党の機関紙「赤旗」は、3月だけで日刊紙と日曜版を合わせて計約1万部も減らしている。その鈴木氏が、今回、月刊「文藝春秋」の単独インタビューに応じた。
 叩き上げの剛腕活動家

 1944年に大阪に生まれた鈴木氏は、高校時代に共産党の青年組織「民主青年同盟」に加入。進学した京都の立命館大学では学生党委員会の委員長に就き、わずか数十人だった学内の共産党組織を1000人規模にまで育て上げた。部落解放同盟や全共闘との暴力闘争にも体を張って立ち向かい、「京都に鈴木あり」と一目置かれてきた。 「(解放同盟との闘争では)向こうはドスを振り回す者がいて、こちらは椅子を盾に応戦。(中略)私たちは追及を重ね、解同を締め出すことができた。当時の合言葉は『正義は強くなければならない』でした。大学解体を叫ぶ全共闘の学生と対峙するようになると、暴力はエスカレートしました。素手からゲバ棒や鉄パイプへ、そして火炎瓶へと」 。
 選挙でも鈴木氏の剛腕はいかんなく発揮された。

 「1989年の京都市長選では、野中広務氏率いる自民党、公明党、民社党が推す候補に対して、共産党推薦候補を321票差まで肉迫させたこともあります。この一戦は京都政界に知れ渡り、私も手応えがありました」。
 毛沢東と同じやり方

 そんな鈴木氏が志位委員長批判に踏み切ったのは、「もうあかん」という危機感からだった。 「共産党は、実に40年以上の長期にわたって党の勢力減退が続いています。党員数は50万人(1990年)から27万人(2020年)と半分近くになりました。1980年に355万部あった赤旗の部数は3分の1以下の90万部にまで低迷。さらに決定的なのは、一昨年の総選挙で衆議院は12議席を10議席に、昨年の参議院選挙は改選6議席を4議席にまで減らした。かつて49人(2000年)いた国会議員数は、今や、21人です」。

 鈴木氏の著書のなかで、とりわけ党から問題視されたのは次のくだりだったという。 〈決定的な誤りは、宮本(顕治)氏によって不破哲三氏と貴方・志位和夫氏の幹部会委員長・書記局長の後継指名が行われた事です。(略)このやり方は毛沢東が林彪や華国鋒を後任に指名したのと同じやり方ではないですか。およそ近代政党とは言い難い『個人独裁』的党運営です〉
 “志位氏が志位氏をトップに推す”というレトリック

 共産党は「党内の民主的選挙で幹部を選んでいる」と強調しているが、鈴木氏は「あれは選挙と呼べる代物ではない」と斬って捨てる。 「私が『個人独裁的運営』と呼ぶのは、志位体制の『続投ありき』の案が、『満場一致で決まる』という形式を繰り返しているからです。直近の2020年1月に開かれた党大会の記録によれば、役員選考委員会の責任者である浜野忠夫氏は大会最終日にこう報告しています。 『(前回の)第27回党大会期の常任幹部会の責任で、(第28回党大会期の)3役案を提案しました。1中総(=第1回中央委員会総会)ではこの提案を検討し、全員一致で3役を選出しました』 。党の専門用語だらけですが、『常任幹部会』は、日常的な最高指導部のことで、トップの委員長は志位氏。『3役』は、常任幹部会委員長、副委員長、書記局長のことで、やはりトップは志位氏。つまり、“志位氏が志位氏を次のトップに推す”というレトリックなのです。議決する側の中央委員会が『全員一致』ということからもお察しのように、中央委員の候補者名簿も指導部が作成したもの。党大会では正委員193人、准委員28人、計221人が一人も落ちることなく、きっちり選出されました」。
 中国共産党よりもひどい

 この仕組みは、日本共産党が「覇権主義」として批判している中国共産党以下だと鈴木氏は指摘する。 「お隣の中国共産党で習近平総書記が就任した2012年の党大会の記録によれば、定員205人の中央委員を選ぶのに、224人の名簿が提示されています。つまり、定員より多い名簿が事前に示されているのです。2300人の代議員が無記名秘密投票を行い、そこで19人が落選している。日本共産党のような、予定調和ではありません。この点で、日本共産党は中国共産党以下なのです」 ――日本共産党の暗部を知りつくす鈴木元氏のインタビュー「 志位和夫は習近平以下だ 」は、5月10日発売の「文藝春秋」6月号に全10ページにわたって掲載されている。(「文藝春秋 電子版」では5月9日に公開)。

 2023.5.29日、デイリー新潮編集部 「前代未聞のことが起きた日本共産党 志位和夫も不破哲三も反論できず打つ手なしの大ピンチ」。
 日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(電子版)は5月13日、「8中総の日程延期」との記事を配信した。8中総とは「第8回中央委員会総会」を指す。元参議院議員で共産党の政策委員長を務め、2005年に離党した筆坂秀世氏は「中総の延期など一度も聞いたことがなく、まさに前代未聞です」と驚く。

 筆坂氏は1966年、18歳で共産党に入党し、1995年の参議院選挙で初当選。2003年に議員を辞職している。約40年の党員歴を持ち、離党しても共産党の動向を注視してきた。そんな筆坂氏でも中央委員会総会(以下、中総)の延期は初めて聞いたという。それではまず、共産党にとって中総がどのような意味を持つのか、筆坂氏の解説を聞こう。 「日本共産党の意思決定プロセスにおいて最も重要なのは『日本共産党大会』です。ところが、党大会は重要であるが故に準備も大変で、全党員のエネルギーを結集する必要があります。党大会が開かれるのは2年から3年に1回ですが、それくらいの間隔を空けないと党員が疲弊してしまうのです」 。数年に1度の党大会で意思決定を行うというのでは、あまりに非効率的だろう。そこで党幹部が中総を開き、様々な方針を決めるのだ。これまで開催された党大会は計28回。今回延期された中総が第8回となっていることに疑問を覚える人もいるかもしれないが、これは党大会が開催されるたびに第1回に戻して数えなおすからだ。 「党大会は2年後とか3年後の予定を組むため、直前の政治情勢を受けて延期されるのは珍しいことではありません。今年1月に党大会が開かれる予定でしたが、4月に統一地方選が行われるため、来年1月に延期されています。一方、中総は党大会に比べて小回りが利くからこそ、様々なタイミングを捉えてスピーディーに開催してきたわけです。そのため中総の延期は、極めて異例の事態と言えます」(同・筆坂氏)。
 原因はサミット?

 冒頭で紹介した赤旗の記事を読むと、一応は延期の理由が書かれている。わずか2文という短い記事なので全部を引用しよう。 《日本共産党中央委員会書記局は12日、5月21、22両日に招集していた第8回中央委員会総会について、国会日程との関係で開催が困難となったことから、日程を延期することを発表しました》 《延期の時期は、主要7カ国首脳会議後の政治情勢の展開も見極めて、6月中旬以降の適切な時期に再度招集します》  筆坂氏は「延期の理由として国会日程と広島でのG7サミットを挙げていますが、これはとても変です」と首を傾げる。 「政界で突発事態が発生したのなら延期も分かります。しかし政変など起きていません。広島サミットに至っては、昨年から決まっていました。党執行部が本気で『国会とサミットが原因で延期します』と主張するのなら、党員でさえ『あまりに先見性がなさすぎる。来年の予定を立てることもできないのか』と納得しない人はいるでしょう」
 除名への批判

 要するに、国会とサミットは口実に過ぎない。では、本当の理由は何なのだろう。担当記者が言う。 「関係者の間で指摘されているのは、5月10日に発売された月刊誌『文藝春秋』6月号に掲載されたインタビュー記事です。『志位和夫習近平以下だ』というタイトルで、元日本共産党京都府委常任委員の鈴木元氏が取材に応じ、党の問題点を洗いざらい指摘しました。叩き上げの運動家が赤裸々に語ったのですから、記事の迫真性は相当なものがあり、多くの関係者が衝撃を受けているのです」。鈴木氏は1944年生まれの78歳。立命館大学の経済学部に進学し、62年に共産党に入党した。京都に強固な共産党支持層を作り上げ、その手腕から「京都に鈴木あり」と畏敬の念を持つ保守層もいたという。  2023年1月、鈴木氏は著書『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)を上梓。すると共産党は3月、鈴木氏を除名処分とした。この著書で鈴木氏が志位和夫委員長(68)の辞任を求めたことが原因とする指摘もある。同じく1月、ベテラン党員の松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を上梓。こちらも党首公選制を主張したことなどが問題視され、共産党は2月、松竹氏を除名した。  相次いでベテランの党員を除名した共産党に、“異論を許さないのか”との批判が殺到した。反共の立場を表明することが多い産経新聞だけでなく、共産党の主張に一定の理解を示すこともあった朝日新聞や毎日新聞さえ記事や社説で批判した。「統一地方選で共産党が敗北した原因」と指摘する識者もいるほどだ。
 共産党の弱点

 「共産党の委員長は志位さんが務めていますが、前任者の不破哲三さん(93)が現在も常任幹部会のメンバーであることなどから、依然として院政を敷いているという指摘は根強いものがあります。今回の延期問題も、不破さんが志位さんに『インタビュー記事の片が付くまで、8中総は延期だ』と命令したという話が流れています」(同・記者)  筆坂氏は「私も鈴木さんのインタビュー記事は読みました。インパクトは充分で、8中総が延期された理由として挙げられるのも無理はありません」と言う。 「取り上げたテーマは広範で、共産党の抱える様々な問題点を丁寧に論じています。その中で私が注目するのは、党勢が衰退し、赤旗の購読者が減少していることを痛烈に指摘したくだりです。近年、共産党の党勢は常に右肩下がりだったというのは事実で、志位さんは反論できないはずです。鈴木さんは党の弱点を見事に突いたのです」  少し長くなるが、インタビュー記事から当該部分を引用しよう。数字の表記はデイリー新潮のスタイルに改めた。 《党員数は50万人(1990年)から27万人(2020年)と半分近くになりました。1980年に355万部あった赤旗の部数は3分の1以下の90万部にまで低迷。さらに決定的なのは、一昨年の総選挙で衆議院は12議席を10議席に、昨年の参議院選挙は改選6議席を4議席にまで減らした。かつて49人(2000年)いた国会議員数は、今や、21人です》 《統一地方選挙は道府県議選、政令市議選だけでもそれぞれ5分の1を減らす大敗北でしたが、小池晃書記局長は前半戦の翌日、「前進したところもある」と強弁。また、常任幹部会は声明で昨年の参院選の数字の一部を持ち出し「得票数や得票率が上がった」と取り繕っています》 《子ども騙しのような論法で敗北を認めないから、改革のメスも入れられない。これこそが、共産党の最大の問題です》。
 遠い改革

 記事には《私が「個人独裁的運営」と呼ぶのは、志位体制の「続投ありき」の案が、「満場一致で決まる」という形式を繰り返しているからです》とのくだりもある。鈴木氏の口調は冷静だが、志位氏を断罪していると言っても過言ではない。8中総を延期してでも対処しようと志位氏が考えるのも不思議ではないが、実際のところ打つ手などあるのだろうか?  「打つ手など何もないでしょう。志位さんは反論さえできず、真っ青になっていると思います。いまだに党執行部は党員と赤旗の購読者数を増やせとハッパをかけています。しかし、私が入党した時から40年間、全く同じ指示が繰り返され、党員は奔走に奔走を重ねてきました。にもかかわらず、党員も購読者数も減る一方です。実現性の乏しい拡大路線ばかり指示する中央委員会は、無責任で無能な集団だと批判されても仕方ありません」(同・筆坂氏)。もし志位氏が陣頭指揮を執り、党員と赤旗の読者を増やし、国政選挙でも議員を増やしたとしたら、鈴木氏は兜を脱がざるを得ない。だが、そんなことはあり得ない。 「鈴木さんの指摘のほうが正しく、志位さんだって手の打ちようがないことは分かっているはずです。党員は新規党員や購読者の獲得に忙殺され、肝心の選挙に力を注げず、敗北を許すという悪循環に陥っています。共産党に残る最後の宝は地方議員と支援者で、その象徴が鈴木さんでした。しかし、党は鈴木さんを排除しました。あれだけ重要な人を蔑ろにしたのですから、統一地方選の惨敗は当たり前でしょう。志位さんが反省し、鈴木さんの除名を取り消せば、改革の一歩を踏み出したことになりますが、もちろんそんなことが実現するはずもありません」(同・筆坂氏)。

 2023.6.9日、「共産党が兵庫・南あわじ市議を除籍 2023年3人めとなる排除にSNS「独裁反対とかよー言うたもん」」。
 6月6日、共産党の小池晃書記局長は記者会見で、党淡路地区委員会が、兵庫県南あわじ市議の蛭子智彦氏を除籍したことを明らかにした。「除名された元党員などの主張に同調し、そうした主張をSNSに投稿した。その後、会派を離脱して離党表明をした。そういう行為は地区委員にふさわしくない」と述べた。共産党は2023年に入り、党首公選制を求める2人のベテラン党員を除名していた。2月6日、現役の党員だったジャーナリストの松竹伸幸氏を、3月16日には、古参党員で、党京都府委員会常任委員などを歴任した鈴木元氏を除名した。

 蛭子氏は3月17日、自身のTwitterにこう書きこんでいた。
《共産党は組織を立て直すより、崩壊へと進み始めたと理解します。民主集中の集中と言う負の精神は、党員の多くに共有されてますから劇的な反乱は起こらないでしょうが、慢性疾患のように体を蝕んでいくと思われます》

 蛭子氏は、5月下旬に自ら離党届を提出。現在は市議として5期めで、市議会の副議長をつとめている。

 党規約でもっとも重い処分である「除名」とは違う位置づけだが、蛭子氏は「除籍」されたことで、2023年に共産党から排除された3人めとなった。共産党は苦しい状況が続いている。 「4月の統一地方選で計1396人を擁立し、当選は1079人(推薦含む)。選挙前に有していた議席の1割超となる135議席減らし、大敗を喫しました。 とくに、共産の牙城である京都の府議選で3議席、市議選で4議席減らしたことには、党首公選制を主張したベテラン党員を立て続けに除名処分にしたことが影響していると見る向きもあります。  ただ、統一地方選後の記者会見で、小池氏は、自身を含めた指導部の進退について『そういう議論になってない。対応を打ち出していくことで責任を果たしたい』と影響を否定しています」(政治担当記者)

 共産は2021年衆院選、22年参院選でも議席を減らしている。次期衆院選での野党共闘に
一縷の望みをつなぐが、立憲民主党の泉健太代表は、共産との選挙協力を「やらない」と明言している。党勢が衰えるなか、共産が蛭子市議を「除籍」したことに、SNSでは党への批判的な声が多く上がっている。 《今の共産党、党内や岩盤層の引き締めが精一杯で、無党派層の事なんか気にしている余裕は無いって事なんだろうな》 、《昨今の除籍騒動もそうだけど、今の共産党のやり方はコレなんだな。自分達の意に沿わない、気にくわないものは徹底排除。独裁政権に反対ー!とか、よー言うたもんよ》 、《共産党ヤバイですね。硬直化し過ぎて、民意からどんどん離れて行ってる。除籍の件でもあるように、あのようなやり方は民主主義とは言えない。内部構造を変えられなければ、衰退する一途だろうな》 次期衆院選は、日本維新の会と立憲が野党第1党をめぐって“ガチンコ勝負”の様相を呈している。共産党は存在感を発揮し、党勢を立て直すことができるのだろうか。

 2023.6.12日、デイリー新潮編集部「日本共産党のやっていることが恐ろしすぎて有権者は目が点に…元幹部は「究極の無責任集団。終わりの始まり」」。
 ソ連の大粛清を思い出した人も多かったのではないか──。神戸新聞NEXTは6月7日、「共産党が兵庫・南あわじ市議の蛭子氏を除籍 『党内民主主義は終わっている』などと発信」との記事を配信した。共産党は今年に入り、相次いで2人の党員に除名処分を下しており、さらなる3人目の“放逐”は異常な状態と言っても過言ではない。

 大粛清(1930~1939年)を確認しておくと、ソ連の最高指導者ヨシフ・スターリン(1878~1953)による大規模な政治弾圧を指す。一説によると、反政府主義者などのレッテルを貼られた100万人が処刑され、1200万人が獄死したという。  本題に戻ると、南あわじ市は兵庫県にある淡路島の最南端に位置している。そして共産党に除籍された市議とは蛭子智彦氏(65)。2021年11月に行われた市議選では5期目の当選を果たしたベテラン議員だ。  公式Twitterのプロフィール欄には《共産党を除籍されたた南あわじ市の市会議員です》と書かれている。まずは除籍に至る経緯を、神戸新聞の報道と蛭子氏のTwitterの投稿を元に見てみよう。 【1】蛭子氏はSNSで「党の閉鎖的で独善的なイメージを打ち破るには綱領を大きく変え、地道に活動するしかない」「党内民主主義は終わっている」などと発信していた。 【2】4月には別の共産市議との2人会派を解散し、5月下旬に自ら離党届を提出した。 【3】同党淡路地区委員会の「処理確定書」によると、6月2日に罷免処分と除籍措置を決定し、3日に兵庫県常任委員会が承認した。 【4】委員会は市議の辞職も求めたが、蛭子氏は《課題の残る地域のため》拒否した。

 批判を許さない共産党 

 蛭子氏のTwitterを閲覧すると、その主張の鋭さに驚かされる。“身を切るような想い”で投稿しているのだろう。担当記者が言う。 「長年にわたって活動を続けてきたベテランだからこそ書けるツイートであることは言うまでもありません。しかも蛭子さんは、共産党を潰せと主張しているわけではなく、党の現状を憂い、党の改革案を提示しただけです。共産党を立て直そうと考えての行動であるのは明らかであり、これを断罪したのですから世論は納得しないでしょう。自民党でも維新の会でも、まさか党を批判して除籍になるなんてことはあり得ません」  ここで蛭子氏のツイートをご覧いただこう。紙幅の関係で残念ながら3つしか引用できないが、共産党の抱える問題から逃げず、真摯に向き合っていることが分かる。 《共産党はどの党よりも民主的と信じてきました。しかし長い時間党と過ごして信じる心がボロボロと壊れていく苦しみに今あります。心が壊れていく苦しさ、信じていたものが壊れていく苦しさ、それをわかってくれる党員仲間がいる事も事実です》 《民主集中制をやめ党首公選を導入し、国連が機能しない限り、自衛隊と安保を容認する、政党助成金も受け取る。この改革をしてもなお党が伸びないなら、党はなくなるかもしれない》 《民主集中制擁護、党首公選否定の志位理論を捨てて、困っている人の解決に全力で取り組む原点を大切にする。その成果が志位委員長の地位保全に繋がらないよう、即座の退陣を求める事、これが緊急に必要です》
 民主主義とは無縁の共産党

 民主集中制とは、共産主義政党や社会主義国家で見られる組織原理であり、平たく言えば「上の機関が決めたことを、下のメンバーは無条件に従え」というルールだ。上に逆らう蛭子氏が党を追い出されるのは、民主集中制を信じる共産党員なら常識の範囲内かもしれない。とはいえ、日本共産党トップ(中央委員会幹部会委員長)の志位和夫氏(68)を批判すると、党公認の政治家であっても追い出されるのだ。非党員である一般市民からは、非常識な組織にしか見えないだろう。 本稿の冒頭で、党員の“放逐”は今年に入り3例目と紹介した。大きく報道されたのでご存知の方も多いだろうが、ここで前2例の処分について簡単に振り返っておこう。  今年1月、ベテラン党員の松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を上梓。党首公選制を主張したことなどが問題視され、共産党は2月に松竹氏を除名処分とした。  同じく1月に元京都府委常任委員の鈴木元氏が『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)を上梓。同書で志位委員長の辞任を求めたことなどから、共産党は3月に鈴木氏を除名処分とした。 共産党に言論の自由はない。“志位独裁制”の象徴だ──と感じた人も多かっただろう。

 中央委員会の十字架

 元参議院議員で共産党のナンバー4にあたる政策委員長を務め、2005年に離党した筆坂秀世氏は「相次ぐ批判に、共産党の上層部は真っ青になっているのではないでしょうか」と指摘する。 「上層部としては松竹、鈴木、蛭子の3氏を党から追い出し、自分たちの正当性を必死になって主張したいのでしょう。しかし、3氏とも除名や除籍されたところで痛くも痒くもなさそうです。むしろ精力的な発言を続け、世論も応援しています。一方の共産党は3氏を“粛清”しても、党の求心力が増したわけではありません。むしろリベラルな有権者やメディアからも激しく批判されています。何のことはありません、党は3氏を粛清したつもりなのでしょうが、逆に3氏から党が粛清されてしまったようなものです」 。

 共産党のトップは志位氏だが、党委員長の前任者であり今も常任幹部会のメンバーである不破哲三氏(93)の影響力も大きいと言われている。もちろん筆坂氏は志位・不破両氏の責任は重いと考えているが、党中央委員会の委員が負うべき責任はそれ以上に重いと指摘する。 「委員は約200人です。全員に党から給料が出ています。党運営に大きな責任を持っているにもかかわらず、誰も自分の頭では考えていません。志位・不破両氏の方針に追随するだけで、究極の無責任集団です。トップが『党員と赤旗の購読者を増やせ』と無茶な方針を決めると、委員はそれを下に命じるだけであり、現場が血を吐くような苦労を重ねてもお構いなしです。中央委員会が責任を取って解散しない限り、共産党に未来はありません」(同・筆坂氏)
 総選挙惨敗の可能性

 TBS NEWS DIGは6月8日、「吹きやまぬ“解散風”に麻生副総裁は苦言『解散の大義を教えていただければ』 国会の会期末が迫る中、解散めぐる発言相次ぐ」の記事を配信し、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。他のメディアも衆議院の解散・総選挙の可能性を精力的に報じており、「今年の年末に解散する可能性が高い」と分析した識者もいる。極めて当たり前のことだが、衆議院が解散となれば、共産党も総選挙に挑まなければならない。だが、これほど血も涙もない“粛清”を繰り返すような政党が、果たして有権者の信頼を勝ち取り、選挙に勝利することができるのだろうか──?  「総選挙が今年であれ来年であれ、厳しい結果に終わる可能性は高いでしょう。3氏の放逐問題が有権者を呆れさせた面もありますが、何より共産党の党勢は退潮に退潮を重ねています。駅前などで共産党の候補者が街頭演説を行うと、候補者も関係者も誰もが高齢です。共産党の幟、それを立てる棒にしがみつくようにしている老いた関係者の姿も珍しくありません。こうした光景を目にした有権者が、共産党に未来があると思うはずもないでしょう。政権批判票の受け皿になるとかならないとか、それ以前の問題です」(同・筆坂氏)

 統一地方選の二の舞

 蛭子氏はJCASTニュースの取材に応じ、《党の力がじりじりと落ちていっている。見渡せば老人ホームなのではないか、という状況になっている》と共産党の現状を指摘している(註)。 「統一地方選でも共産党は敗れました。敗因は党中央の掲げた主張が間違っていたからです。何しろ“大軍拡反対”と“憲法を守れ”の2つで、地方自治とは何の関係もありません。国政選挙なら主張することも可能ですが、そんなことをすれば統一地方選の二の舞です。物価高と実質賃金の低下、社会保障費の増額に苦しんでいる有権者に響く主張ではありません。本来なら党執行部は統一地方選における敗因を総括し、自分たちの責任を認めなければなりません。しかし、事実は逆で、いたずらに除名や除籍を乱発するだけです。これで党勢復活など、夢のまた夢でしょう」(同・筆坂氏) 註:共産党除名の2人に「同調して党綱領・規約を全面否定」で除籍 市議本人「異論言っても上で封殺」(6月7日配信)

 2023.6.24日、共産党の志位和夫委員長は第8回中央委員会総会で、22年以上の長期に及ぶ在任期間に批判が出ていることについて「私個人が政治的に重大な誤りを犯したとか、品性の上で重大な問題点があるという批判ではない。党そのものに対する攻撃だ」と反論した。  

 共産党の志位和夫委員長は24日の党会合で、平成12年の委員長就任から20年以上がたつことを問題視する指摘に関して、「反共攻撃の中で支配勢力から意図的に持ち込まれた議論だ」と断じた。また、「『長すぎるのが問題』という攻撃を共産党そのものに対する攻撃ととらえ、皆で力を合わせて打ち破ることを心から訴えたい」とも呼びかけた。また、「この攻撃に対する最大の回答は、選挙でも党勢拡大でも前進、勝利を勝ちとることだと心して、全力を尽くす決意だ」と続投に意欲を示した。  志位氏は会合で、任期について「確かに他党に比べれば長いのは事実だ」と認めつつ、「結局、批判の中身は選挙で後退した、党勢が後退したというもので、私個人が政治的に重大な誤りをおかしたとか、品性の上で重大な問題点があるという批判ではない」と強調。その上で「つまり、この攻撃の本質は共産党そのものに対する攻撃ではないだろうか」と述べた。 志位氏はまた、「わが党が党員の直接選挙で党首を選んでいないことをもって『閉鎖的』などと批判、攻撃する主張がある。しかし、わが党は党規約に基づく現行の選出方法が(組織原則の)『民主集中制』とも合致した、最も民主的で合理的な選出方法だと考えている」と従来の主張を繰り返した。 

 2023.7.4日、「日本共産党の志位委員長が、批判されるといつも使う“決まり文句” 元幹部は「誤魔化す体質は今に始まったことではない」
 産経新聞(電子版)は6月24日、「『「長すぎる」批判は共産攻撃』 委員長20年超の志位氏」との記事を配信し、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。日本共産党の志位和夫氏(68)は2000年から党委員長の座に就いており、見出しの通り「長すぎる」との批判は少なくない。 ところが、志位氏は理由を挙げて「長くない」と反論するのではなく、《反共攻撃の中で支配勢力から意図的に持ち込まれた議論だ》と主張した。反共攻撃とは穏やかではない。担当記者が言う。 「共産党は6月24日から第8回中央委員会総会を開き、志位さんが『幹部会報告』を行いました。その中で《日本共産党の指導部のあり方についての批判・攻撃にも答えておきたいと思います》と切り出し、《この攻撃の本質は、日本共産党そのものに対する攻撃》と主張したのです。この演説は共産党の公式サイトにも動画と全文が掲載されています」。志位氏の発言を正確にお伝えするため、公式サイトに掲載された全文から引用しよう。 《「委員長の在任期間が長すぎるのが問題だ」という批判・攻撃があります。たしかに他党に比べれば長いのは事実です。しかし、批判者たちは、「長い」ことのどこが「問題」と言っているのでしょうか。結局、批判の中身は、「選挙で後退した」「党勢が後退した」というもので、私個人が政治的に重大な誤りを犯したとか、品性の上で重大な問題点があるという批判ではありません。つまりこの攻撃の本質は、日本共産党そのものに対する攻撃ではないでしょうか》
 陰謀論と紙一重

 長くてどこが悪いのか──開き直りとも思える発言だが、これについては後で詳述する。先に進み、反共攻撃のくだりを紹介しよう。 《「長すぎるのが問題」という批判は、2020年の第28回党大会にむけた討論ではまったく出なかった批判であり、21年総選挙いらいの反共攻撃のなかで支配勢力から意図的に持ち込まれた議論だということを指摘しておきたいと思います》  

 志位氏は千葉県立千葉高校から東大に進み、物理工学科を卒業している。文春オンラインの記事には《超個性的な秀才》と書かれ(註1)、Twitterで《志位和夫 秀才》と検索すれば大量のツイートが表示される。頭脳明晰なのは折り紙つきだろう。とはいえ、《反共攻撃のなかで支配勢力から意図的に持ち込まれた議論》という主張はいただけない。例えば、朝日新聞デジタルは6月27日、「苦境の共産党、野党共闘進まず孤立 『長期政権』批判に志位氏が反論」との記事を掲載、次のように伝えた。 《志位氏の委員長在任期間は22年を超え、党員の直接投票で委員長を選ぶ「党首公選」を求める声が公然と上がった》

 朝日新聞も「長すぎる」の議論に触れたわけだ。まさか同紙が《支配勢力》のはずもない。となると、《支配勢力》が共産党を攻撃するため、朝日に記事を書かせたことになってしまう。ちなみに《支配勢力》の語を《闇の支配者》に置き換えれば、立派な陰謀論の出来上がりだ。
 野中広務の“反共攻撃”

 共産党のナンバー4にあたる政策委員長を務め、2005年に離党した元参議院議員の筆坂秀世氏は、「批判され、それに反論できない場合、昔から共産党は“反共攻撃”と主張するのが常套手段でした」と苦笑する。 「もし今の日本が、あと一歩で社会主義革命が実現するような社会情勢なら、“支配勢力”は本気で反共攻撃を行うでしょう。しかし、今の共産党は、党勢を伸長させているどころか退潮に苦しんでいます。弱体化が深刻な組織を攻撃する暇人はいません。ほったらかして自壊するのを待つのが得策です」 。念のため、歴史上の「反共攻撃」と、共産党が過去に「攻撃された」と主張した事案を比較してみよう。 1991年2月、ソ連の保守系新聞は、ロシア共和国の最高会議議長だったボリス・エリツィン氏(1931~2007)を「反共産党の筆頭」と強く批判した。8月、エリツィン氏は保守派による「ソ連8月クーデター」を粉砕、11月にロシア共産党の活動を禁止し、12月にソ連は崩壊した。エリツィン氏はロシア連邦の初代大統領に就任したが、彼が“反共攻撃”を仕掛けたのは間違いなく、だからこそ保守派は紙面で必死に訴えたのだ。 一方、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は1999年3月30日、「野中官房長官が京都で反共攻撃」との記事を掲載した。  当時、官房長官だった野中広務氏(1925~2018)が京都府議選・市議選のため応援演説を行った。その野中氏の発言を読売新聞は《共産にこれ以上、議席を与えてはならない》と報じたが(註2)、同じ発言を赤旗は《攻撃》と伝えた。 《「共産党は、われわれがこういったからこんなことが実現したとかいってるが、京都府や国の予算に反対している。選挙になると耳障りの良いことばかりいっているが、革命の綱領は変えていない」などと日本共産党を攻撃しました》 。野中氏は自民党の候補者に檄を飛ばしたのであり、選挙では日常的な光景だ。ところが、共産党の手にかかると“反共攻撃”に擦り替えられてしまう。
 “反共攻撃”のレッテル

 「確かに“反共攻撃”という言葉が説得力を持った時代もありました。1980年、日本社会党と公明党は連立政権を目標とした『社公合意』を締結し、共産党を排除。国会で与野党の協議が行われても、共産党は蚊帳の外に置かれました。選挙では反共ビラが撒かれ、聖教新聞も『共産党はハイエナ』といった荒っぽい批判記事を連日のように掲載しました。ただし、当時の共産党は、議員や党員の数も、赤旗の発行部数も、現在とは比較ならないほど多かった。政界で存在感を示していたからこそ、攻撃の対象になったのです」(同・筆坂氏)。共産党が「反共攻撃」と反論したことに筆坂氏が今でも疑問に感じているのは、1989年の天安門事件と、先に触れた91年のソ連崩壊だという。 「有権者は『やはり共産主義には問題があるのでは?』と不安視し、共産党の支持率が低下しました。これに党は『事件を利用した“反共攻撃”が繰り広げられたのが原因だ』と主張しましたが、それは違うでしょう。天安門事件もソ連崩壊も歴史的事実です。事実は事実と認め、他党の批判には堂々と反論、有権者の不安には丁寧に説明して理解を求めることが唯一の対処法だったはずです。正鵠を射る指摘に反論できない場合、“反共攻撃”を持ち出してごまかす日本共産党の体質は、今に始まったことではないのです」
 共産党はブラック企業

 先に触れた「報告」で、志位氏は《委員長の在任期間が長すぎる》という批判は《「選挙で後退した」「党勢が後退した」というもの》に過ぎず、《私個人が政治的に重大な誤りを犯したとか、品性の上で重大な問題点があるという批判》ではないと開き直った。だが筆坂氏は「今回の統一地方選でも議席を減らし、党勢が後退したことこそが、志位氏の最大の問題であり、まさに責任を取る必要があるのです」と批判する。 「統一地方選で共産党は『「大軍拡NO!」の声あげよう』と訴えました。国政選挙ならいざ知らず、地方選の争点としてふさわしいテーマとは言えず、有権者の支持も得られませんでした。結果、現有議席の1割強にあたる135議席を失ったのです。志位さんが責任を取る必要があるのは明らかですが、頑として委員長の座を譲ろうとはしません。その結果、共産党の幹部の間に“無責任体制”が横溢しています」。現在、共産党は「130%の党」を謳い、公式サイトでは《全党的に36万人の党員、130万人の「しんぶん赤旗」読者をめざす》としている。 《来年1月の党大会までに、平均して、1支部あたり、現勢で、2カ月に1人の党員、1人の日刊紙読者、3人の日曜版読者を増やせば実現できます。これが過大な目標でしょうか》 「過大な目標に決まっています。現に党員も赤旗の読者数も目に見えて減っているのです。共産党の力は衰え、若い人の支持を得ることにも失敗し、党員の高齢化は進んでいます。実現不可能な『党員を増やせ、読者を増やせ』という命令で党員を消耗させているのは紛れもなくパワハラであり、今の共産党はブラック企業そのものです。共産党は外部から“反共攻撃”を受けているのではなく、末端の党員に過酷なノルマを課すという“攻撃”を自らが行っているのです」(同・筆坂氏)
 “終わりの終わり”

 志位氏は「報告」で、「なぜ共産党はこんなにもバッシングされるのか」という疑問にも答えている。紹介しよう。 《わが党がかくも攻撃されるのは、端的に言えば、日本共産党が革命政党であるからです。つまり現在の体制を大もとから変革する綱領を持ち、不屈に奮闘する党だからであります。古い体制にしがみつく勢力にとっては、もっとも恐ろしい、手ごわい相手だからこそ、攻撃が起こっているのです》。 「公安調査庁も依然として『共産党は暴力革命路線を捨てていない』と指摘していますが、これは共産党が弱体化していることを認めると彼らの仕事がなくなるからです。党員の中心は70代です。火焔瓶を投げるどころか、60年安保で行われたジグザグデモすら無理でしょう。暴力革命など噴飯もので、まさに“老兵は消え去るのみ”です」(同・筆坂氏)。つい最近まで、無党派層の一部は、共産党を積極的に支持はしないものの、「自民党にお灸を据える」などの理由から投票することは珍しくなかった。 「今年に入って除名騒動も大きく注目されましたが、それに加えて今回の“反共攻撃”の発言です。さぞかし無党派層も呆れているでしょう。いつ行われるのか分かりませんが、次の総選挙で共産党はさらに敗北を重ねるはずです。押しても引いてもどうにもならないという組織の硬直化を考えると、共産党の“終わりの始まり”どころか、“終わりの終わり”という印象を受けます」(同・筆坂氏) 註1:東大合格者数で渋幕を超えられない……県立千葉高校出身の神童は安倍政権を支え、揺るがしていた(文春オンライン:2020年1月18日/教育ジャーナリスト・小林哲夫氏の署名原稿) 註2:99統一選は臨戦態勢 府議選と市議選 大物代議士や閣僚経験者ら続々。
 (読売新聞・大阪朝刊:1999年3月29日) デイリー新潮編集部

















(私論.私見)