共産党の党首公選考その2

 更新日/2023(平成31.5.1栄和改元/栄和5).3.29日

【筆坂秀世(元共産党参議院議員)の党首公選論評】
 2023.2.21日、筆坂 秀世(元参議院議員、政治評論家)党首公選」提唱の松竹氏を除名処分、党改革を拒む日本共産党の理不尽な論理 “何が何でも党首公選反対”の見苦しさ」。
 松竹氏のブログを見て驚いた

 松竹伸幸氏を除名処分にした共産党だが、外部からは批判の声が大きい。新聞でも朝日新聞、毎日新聞、産経新聞が社説(産経は主張)で今回の処分を批判している。これに対して、共産党側も猛烈な批判を展開しているようだ。2月19日の松竹氏のオフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」には次のように書かれている。「それにしても、いまだに連日の『赤旗』で、私に対する批判(『攻撃』とは言いません)のキャンペーンが続いています。朝起きて、『今日のテーマは何だろう』と『赤旗』をめくるのが、毎日の日課になってしまった」。「せっかく私を批判してくれているのだから、何か反論でもしなくちゃとは思うんです。でも、共産党の側は二十数万の党員がいて、そのなかで育った試され済みの何人、何十人もの幹部が、毎日手を変え品を変え、長大な批判論文を書いている。さすがの大政党です」。皮肉いっぱいである。共産党側は、松竹氏の著書があまりにも話題になったので、こうした対応をせざるを得なくなったのかもしれない。最初からこんなつもりは共産党もなかったのではないか。

 1月21日付「赤旗」に藤田健赤旗編集局次長の「規約と綱領からの逸脱はあきらか──松竹伸幸氏の一連の言動について」と題する松竹批判の論文が掲載された。おそらく共産党は批判をこれだけにとどめておこうと考えていたと思う。この問題を聞かれた志位和夫委員長は「藤田論文がすべて」と述べ、それ以上は語ろうとしなかった。それだけではなく、委員長が対応するような相手ではない、という思いもあったのかもしれない。ところが各紙で取り上げられ、党内からも松竹氏応援の声や党中央を批判する声が上がり始めたので、あわてて反論を開始したのではないか。

 共産党は選挙をやったことないと認めるべきだ

 松竹批判の1つである山下芳生副委員長・党建設委員会責任者の反論を取り上げてみる。2月11日付「赤旗」に「日本共産党の指導部の選出方法について 一部の攻撃にこたえて」と題する山下氏の文章が掲載された。その中で山下氏は、「わが党の指導部の選出は、党規約にもとづいて自主的・自律的に、かつ厳格に行われています。具体的には、2年または3年の間に1回開かれる党大会で、全国から選出された代議員による民主的選挙によって中央委員会を選出します。そのうえで中央委員会は、幹部会委員、幹部会委員長、幹部会副委員長、書記局長を、民主的選挙によって選出します」と述べている。

 まったく嘘だ。そもそも選挙というのがどういうものなのか分かっていない。広辞苑によれば、「多人数の中から投票などにより適任者を選び出すこと」とある。広辞苑を持ち出さなくても通常の議員選挙を見れば分かる。多くの候補者が立候補し、それぞれが公約や政見を明らかにして有権者の審判を仰ぐ。そして多数派を獲得するために懸命に活動する。これが選挙だ。ところが、共産党が「選挙」と言っているものの実態はどうか。中央委員会、都道府県委員会、地区委員会、すべての段階で前の委員会が定数いっぱいの候補者名簿を作成し、その信任投票を行なっているだけだ。言ってみれば談合だ。幹部会委員長などを決める際も、私が在籍していた時は「志位同志を推薦します」などと誰かが発言し、拍手で決まりだった。選挙などどの段階でもなかったのだ。党規約にある「すべての指導機関は、選挙によってつくられる」というのは削除した方が良い。

 党首公選は党首権限を強大化するという珍論

 山下論文では、次のような記述もある。〈かりに、党首を直接選挙で選出した場合どうなるでしょう。「党員に直接選ばれた党首」ということで、その権限はたいへんに強大なものになるでしょう。中央委員会を現行とおなじ党大会で選出した場合、中央委員会との関係でも、党員の直接選挙で選ばれた党首の権限が大きくなってしまうことも起こりえます。それが果たして民主的な党運営といえるでしょうか。〉

 語るに落ちたとは、このことだ。共産党員や共産党という組織を山下氏まったく信用していないようだ。全党員の選挙で選ばれた委員長は、「強大な権限を持ってしまう」ことを懸念しているようだが、そうならないような歯止め措置を考えれば良いだけのことだ。ましてや民主的運営に邁進してきたはずの共産党党員がそんな暴走を許すことはないはずだ。だが山下氏はそう思っていないようだ。また次のようにも言う。〈党首を党員の直接選挙で選んだ場合には、党首と党指導部の他のメンバーとの権限にも、大きな差が生まれるでしょう。実際、党員の直接選挙で党首を選んでいる多くの党では、党役員の人事が党首の一存で決められています。〉 なぜ党首とその他の指導部のメンバーの権限に大きな差をつけなければならないのか。つけなければ良い。他党がそうであっても、共産党は別のやり方をやればいい。それだけのことだ。

 松竹氏にしろ、志位委員長の退陣を迫り党首公選を主張する鈴木元氏にしろ、『希望の共産党』(あけび書房)に寄稿された方々にしろ、より民主的な共産党になるように、あるいは国民からそう見られるように、党首公選の実施を提言しているのだ。強権的党首を選びなさいなどとは誰も主張していない。

 党首公選をやっても派閥、分派は必然的ではない

 山下氏はまた次のようにも言う。〈党のなかに派閥や分派をつくらず、国民に対して公党として統一的に責任をはたしていくうえで、いちばん合理的な選出方法となっています。〉〈党のなかに、さまざまな派閥やグループがつくられ、派閥やグループごとに、主張や行動がバラバラでは、国民に対して公党としての責任をはたせません。〉〈党首を党員の直接投票で選ぶということになれば、必然的に、党首のポスト争いのための派閥・分派がつくられていくことになります。それは、そうした党首の選出方法をとっている他党の現実が証明しています。〉

 ここまで来ると、何が何でも党首公選反対と叫んでいるだけである。選挙が終われば、また同志的団結を図れないのか。派閥があっても切磋琢磨することもある。党首公選は「敵と戦う」ということではないはずだ。大いに党内で論争すればいいではないか。50年問題の分裂はスターリンや毛沢東の干渉があったからで、党首公選とは何の関係もない。それより何より、今の共産党に分派や派閥を作ろうなどという活力があるのか。党員で一番多いのは、1週間後に後期高齢者となる私と同じ団塊の世代である。派閥を作るぐらいの元気があれば、上等だと思うべきだろう。

 ポストを求めて党首公選を訴えているわけではない

 山下氏は懲りずに言う。〈(共産党には)“自分が、自分が”といって党指導部のポストを求める人は一人もいません。それは、党の基礎組織である支部においても、地区委員会や都道府県委員会、中央委員会などの党機関においても同じです。〉〈ポスト争いはしないというのが、日本共産党のあり方なのです。「党首公選制」というポスト争いにつながる方式をとらないのは、こうした日本共産党のそもそもの党のあり方と結びついたものなのです。〉〈わが党の活力は、ポスト争いからうまれるものではありません。〉

 こんなことは共産党員なら誰でも知っている。松竹氏もその著書で述べているように、党員による委員長選びを提唱しているのは、委員長ポストが欲しいからではなく、共産党を変えたいと考えているからだ。これを単なるポスト争いに矮小化するのは卑怯な逃げ方と言ってよい。共産党の選挙の実態は、選挙と呼べる代物ではない。だから争いがないのだ。争わない選挙などあり得ない。

 2.23日、松竹伸幸・元共産党政策委員会安保外交部長党首公選 共産は「異論を許さない」集団ではないはずだ」。
 共産党に党首公選制の導入を求める著書(「シン・日本共産党宣言」<文春新書>)を出版したところ、党からの除名処分を受けたの導入を求める著書(「シン・日本共産党宣言」<文春新書>)を出版したところ、党からの除名処分を受けた。党首公選を主張したのは党を攻撃するためではなく、党内から党を良くするためだ。除名には納得できない。安全保障政策などで、これまでもさまざまな意見を発表し、著書も出版してきた。そのなかには必ずしも党の考えとはまったく同じではない部分もあった。しかし処分を受けたことはない。友人からは「松竹さんのような人が党員でいることで共産の幅広さを示している」と言われたこともある。「分派活動」とも言われたが、本を出版することが分派活動なら言論活動自体できなくなる。

 個性ある党員が支える党

 党執行部は、「意見を言うことを問題にしているのではなく、外部に持ち出したことが問題だ」としている。内部で意見を言う仕組みはあるが、外部になにも意見を言ってはいけないということではないはずだ。もちろん大会決議が間違っているとか、綱領が間違っているなど、外部に対しては批判を控えるべき事柄はある。しかし、日々起きているすべての課題において、党の方針がなければ発言できないとなれば、党員は有権者との対話もできなくなる。共産に投票する人も含めて、国民が抱いている違和感がある。親しみを感じない、自分に近いと感じられない。上から下まで一つの意見に凝り固まっていると思われている。実際は違う。… 
 2.24日、「松竹伸幸氏 共産は「異論を許さない」集団ではないはずだ」。
 元共産党政策委員会安保外交部長の松竹伸幸氏は毎日新聞政治プレミアの取材に応じた。松竹氏は共産党に党首公選制の導入を求める著書(「シン・日本共産党宣言」)を出版したところ、党からの除名処分を受けた。「党首公選を主張したのは党を攻撃するためではなく、党内から党を良くするためだ。除名には納得できない」と語った。松竹氏は、「党執行部は『意見を言うことを問題にしているのではなく、外部に持ち出したことが問題だ』としている。内部で意見を言う仕組みはあるが、外部になにも意見を言ってはいけないということではないはずだ」と言う。「共産に投票する人も含めて、国民が抱いている違和感がある。親しみを感じない、自分に近いと感じられない。上から下まで一つの意見に凝り固まっていると思われている。実際は違う。党員はみな本当に個性の強い集団だ。実情を知ってもらえれば良い集団なのに、共産は異論を許さないという誤ったイメージになっていてそのことが大きな壁になっている」と指摘した。

 2023.2.27日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」の「直接選挙は「必ずしも民主的でない」。
 キャスターの辛坊治郎が2月27日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。共産党の志位和夫委員長が26日放送のテレ番組に出演し、党首公選制をめぐり「直接選挙で選ぶと、党首に権限が集中する。必ずしも民主的だと思っていない」と述べたことについて、「ゼレンスキー大統領バイデン大統領も民主的ではないということか? 何だかなあ……」と失笑した。共産党の志位和夫委員長が26日、テレビ番組に出演し、党首公選制の導入を改めて否定した。「直接選挙で選ぶと、党首に権限が集中する。必ずしも民主的だと思っていない」などと理由を説明している。 辛坊)共産党の党首公選制をめぐっては、元党職員が導入を主張する著書を出版し、党を除名されて、騒ぎになりました。ニュースによると、志位和夫委員長は党首公選制について、「直接選挙で選ぶと、党首に権限が集中する。必ずしも民主的だと思っていない」と述べました。ということは、ウクライナのゼレンスキー大統領もアメリカのバイデン大統領も韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も、民主的ではないということですか? 何だかなあ……。

 2023.3.6日、「「言論・表現の自由死ぬ」除名の共産党員が会見」。
 党首公選制導入などを提唱し、共産党から除名処分を受けた現役党員の松竹伸幸氏は6日、東京都内で開いた記者会見で、来年1月に予定される党大会に向け、規約に基づき、処分の撤回を求めていく考えを示した。「党員としての権利を回復するというくらいのことがなければ、共産が今後、生き残って、日本政治の中で大事な役割を果たしていくことはできないと思う」と述べた。松竹氏は会見で、党首公選制導入などを訴えた新著の内容が、党側から「分派活動」に該当すると指摘されたと説明。その上で「(該当するならば)憲法の言論・表現の自由は共産党員には全く許されていないにも等しい」「出版が分派活動として処分されるならば、憲法の言論・表現の自由は死ぬ」と強調した。一方、「(今回の問題に関して党員の中で)議論が始まっている。これまでの共産の中ではなかったことなので、この動きを大事にできればなと思う」とも述べた。

 2023.3.6日、産経ニュース(内藤慎二)「尾を引く共産党員除名処分 金城湯池の京都で影響も」。
 党首公選制導入などを訴えたジャーナリストの松竹伸幸氏に対し、共産党が2月に断行した除名処分が尾を引いている。「異論封じ」などの批判が相次いでおり、共産は近く反論冊子を出版する予定だ。沈静化が失敗すれば、4月に迫る統一地方選や次期衆院選に悪影響を及ぼしかねない。

  「京都府内で地方議員の第一党が共産だ。日本一、分厚い力を持つ議員団をさらに大きくしていただきたい」。志位和夫委員長は5日、京都市内で開かれた集会で統一選への結束を呼びかけた。京都を拠点とする松竹氏の問題に関しては、「党規約を無視した行動で除名された某党員を利用して、一部大手メディアが『異論を許さない政党だ』というキャンペーンをやっている」と決めつけた。松竹氏の除名をめぐっては、メディアなどから批判が相次いだ。共産は今月3日に出した中央委員会幹部会の「訴え」で、「わが党の一連の反論は近く冊子にまとめて出版する予定だ」と発信するなど、神経をとがらせている。とはいえ、松竹氏と同じ問題意識を持つ党員は他にもいる。京都府委員会常任委員などを歴任した鈴木元氏は、近著『志位和夫委員長への手紙』で、「党勢を後退させた人が責任を取ろうとしないことを防ぐためにも、党首をはじめとする役員の選挙が必要」などと訴えている。小池晃書記局長は6日の記者会見で、鈴木氏の処分の有無について「所属する党組織・機関で検討していると聞いている」と述べた。党関係者は一連の問題に関して「丁寧に説明をすれば分かっていただける」と沈静化を期待する。ただ、鈴木氏の処分に踏み切れば、京都という金城湯池の地盤が揺らいだり、共産批判に拍車がかかったりする可能性もある。

 2023.3.7日、産経ニュース「共産幹部、高市氏の議員辞職要求 立民と連携し追及」。
 共産党の小池晃書記局長は7日、総務省が放送法の政治的公平の解釈に関する文書を「行政文書」だと認めたことを受け、解釈に関する高市早苗元総務相の答弁をすべて撤回するよう政府に求める方針を明らかにした。併せて高市氏に対して「自らの言明に従い、議員を辞職すべきだ」と要求した。国会内で記者団に語った。小池氏は文書について「(当時の)官邸幹部が、特定のテレビ番組を名指しして問題視し、総務省に法解釈を変えようと迫る生々しい記載だ」と指摘。「言論、出版、その他一切の表現の自由は保障するとした憲法21条を踏みにじる深刻な問題だ」と語った。さらに「安倍晋三政権時代の闇がまたひとつ、暴かれた。改めて安倍政治の負の遺産を一掃しなければいけない」と強調。立憲民主党と連携し、国会で追及していく考えを示した。

 2023.3.10日、「長崎新聞に共産が抗議 田村智子氏は党本部の関与否定 「言論萎縮」への懸念相次ぐ」。
 3.6日、長崎新聞社が松竹伸幸氏へのインタビュー記事を掲載。但しこの記事がネット上に出てこない。
 3.9日、日本共産党長崎県委員会の山下満昭委員長と原口敏彦書記長が、長崎新聞社(長崎市)を訪れ、6日付の同紙に規約に反して党を除名された松竹伸幸氏へのインタビュー記事を掲載したことについて、事実に基づかない内容で到底容認できないとして抗議の申し入れをした。山下氏は「松竹氏の一方的な主張をうのみにして、真実を報道するという立場で検証をされたのか」と問い、「共産党は規約で『異論を排除してはならない』となっている。松竹氏は規約を守らず、自分が所属する党に対して敵対的な行為をしたために処分されただけの話。『上意下達の党運営』などありもしないことを述べている」と批判した。さらに「党内で声を上げても志位氏の耳に届くかわからない」という松竹氏の言い分に対しても、第28回党大会の「議案への感想・意見・提案集」を示し、「この中では、松竹氏のように『党首選挙をするべき』との意見も出されていて『赤旗』にも掲載し、公開されている」と紹介。「松竹氏の発言は事実とは異なる。長崎新聞社として間違いを認め、対応してほしい」と求めた。
 共産党の機関紙『しんぶん赤旗』は10日付で、著書などで党首公選制導入などを訴えて除名処分となったジャーナリストの松竹伸幸氏のインタビュー記事を掲載した長崎新聞社(長崎市)に対し、党長崎県委員会幹部が抗議したとの記事を掲載した。同日の田村智子政策委員長の記者会見では、「言論を萎縮させる」などの指摘が相次いだ。田村氏は「党中央として『何かやれ』ということではなく、現地が対応した」と党本部の関与を否定。その上で「党運営について一方的な立場での報道が繰り返されているのは事実であって、そのことへの対応が行われたということだろう」との見解も示した。田村氏との質疑応答の概要は次の通り。
 ◆◆◆

 「参院では連日、いろいろな場で(放送法の「政治的公正」に関する行政文書をめぐる問題について)質疑になっている。(当事者の一人である高市早苗経済安全保障担当相の答弁は)本当に事の重大性を理解していない発言だと指摘しなければならない」。

 --長崎新聞に党長崎県委が抗議した。党本部も同じ見解か

 「現地で対応したことで、私は事態を承知していない。事実に反するような報道があった場合は事実に基づいて、わが党が色々な問題を新聞社に対してもモノを言うということは当然、あるだろう」。「この間、党首選を行わないことが『異論を封じている』とか、『民主的な党運営ではない』という一方的な決めつけが行われているので、『それは事実ではない』ということを私たちは丁寧に、赤旗も通じて皆さんにお伝えしてきた。そのことを踏まえない報道であるならば、現地としてはそういう対応をとるということはあるのではないかなと思う」。

 --一般論だが、「事実」というのはあらゆる見方があって、立ち位置によって変わる。一つの視座しか許さないように聞こえる

 「共産党が異論を封じているということは事実ではない。これは立ち位置の関係ではなくて、異論を封じるようなことは党の運営上、行っていないので、事実ではないということだ。ここが一番大切なところだと考える」。「党首選についても、民主的な手続きを踏んで行っているということを繰り返し説明してきている。私たちは『こういうふうに政治を変えるんだ』という同じ綱領の土台の上に立って党の中で議論をし、次の方針を出すということを行っている。その過程において異論を封じるということは行っていない。『非民主的』というのはわが党としては『違うでしょ』という見解を丁寧に示してきた。ルールに基づかないということがあれば、ルールに基づいて対応するということも示してきた」。

 --(社説で党の対応を批判した新聞社への抗議は)少し理解できるが、(一個人である)松竹氏の言論の自由をどう考えるのか

 「そのインタビュー記事について、別に何も申し上げていない」。

 --ただ、赤旗に記事が載っている。公党がやることではない

 「言論の自由はもちろん保障されなければならない。その時に私たちの党について述べられたことについては、私たちの見解もしっかり見て報道していただきたいということは政党として当然の要求だと思う。この間のメディアの報道がなかなかそうなっていない。一方の側だけの報道が一方的に行われている」。

 --相手は個人だ。やり過ぎだ

 「『言論には言論で』という対応でやっている。しかし、『党首公選制をしていない共産党は問題だ』ということのみでの報道がずっとやられている。私たちの主張を報道して欲しい」。

 --ある個人が言ったことをストレートに報じたりすることは言論の自由だ

 「この間、一つ一つのそういう記事について、地方紙でいろいろと載っていることについて、例えばこういう会見の場で『けしからん』とか言っていない。それはやっていない。大手の、全国紙の社説に出たときには『事実と違います』ということで、会見でも問われて言った」。

 「一方的な報道が共産党に対して行われているということについて、私たちについて言われていることだからこそ、共産党にとってもちゃんと示す必要があるわけだ。そういう報道をしてほしいと求めることは、政党としてはある意味、当然ではないかと思う」。

 --例えば赤旗に自民を批判する個人のインタビュー記事が載ったとして誰も何も思わない。「そういう見方もあるのかな」という程度だ。長崎新聞をめぐる対応は、これこそ言論を萎縮させるのではないか

 「私たちの側からもいろいろと情報を提供して、起きている問題についてさまざまに説明も行ってきている中で、一方的に松竹氏のみのインタビューを行ったということで現地が対応したと思うが、私は(そうした対応をするに至った)議論に加わったりなどはしていない。中央として『何かやれ』ということではなく、現地が対応した」。

 「ただ、全体としては今、言ったとおりだ。ずっとこの問題は、私たちの方から発信はしているが、ほとんど無視されている状態に見える。一方で、共産党の運営について一方的な立場での報道が繰り返されているというのは事実であって、そのことに対する党の対応が行われたということだろうなと思う」。

 --確認だが松竹氏のインタビューを載せた新聞社に対し、党として抗議をすることは考えていない?

 「この間、個々のところで党の中央委員会はそういう対応をしていないですよね? 地方の新聞でいろいろと書かれていることについて、私たちが会見の場で述べるというようなことはやっていないわけですよね?」。

 「長崎の件については詳細を把握していないので、これ以上の質問は答えるのが難しい。これまで私たちが述べてきたにもかかわらず、一方の側の報道だけが続いている。一方の側のインタビューとかが行われているという事実について、党として見解をちゃんと述べなければいけないし、知らせなければいけないという対応をしているというのが基本だ」。

 --「一方の側」と言うが、全体の報道を見れば、党側が処分した理由、「分派活動があった」などとわれわれは書いてきている

 「私たちがそういう対応をしたことについて、疑問があったり、問題があったりということなのか?私たちの説明では納得がいかないということなのか?党のルールに従わず、共産党の綱領をいわば否定し、ルールに基づかないやり方で出版をしたことについて、私たちがまさに党のルールに基づいての処分をしたということを…。それが間違っていると言われてしまうと、党のまさに、自らの運営、自立的な運営について、「それはおかしい」という世論を外につくるということになっていってしまう」。

 --個人にかかわることは、もう少し寛容であるべきではないか。松竹氏にインタビューをしたらすぐに共産党から抗議がくるという状況をつくることをしてはダメではないか

 「現に(松竹氏が)記者会見をやったりしても記者クラブに抗議なんかしていない」。

 --そうでしょ? (松竹氏の著書を出版した)文芸春秋社に抗議に行っていないんでしょ? ならばなぜ(今回は抗議をする)必要があるのか。赤旗に『抗議しました』とやられたら萎縮してしまう「先ほど申し上げた通り、長崎の案件については詳細に議論に関わっていない。記者会見が行われたことに抗議なんかしていない。(新聞社の社説への反論も)問われて答えているという対応をしている。私たちは私たちとして党のルールや、党の運営の問題を丁寧に赤旗などを通じてお返しをしているというのが事実だ」。

 2023.3.11日、松竹伸幸「長崎新聞社への共産党の抗議はどこが問題か」。
 私へのインタビューが共同通信から配信され、それを他の地方紙に先駆けて長崎新聞が掲載した。長崎新聞が最初になったのは、おそらく私が長崎生まれと書いてあったからであろう。それを読んで初めて、私へのインタビューがどんな記事になっているのか、私自身も知ることになった。共同通信は、まとめた記事をインタビューした人に事前に確認しないのである。メディアによって対応はさまざまだ。と思っていたところ、共産党の長崎県委員会が、私の語った内容が事実と異なるとして、長崎新聞社に抗議を行った。それをめぐってネットで話題になり、県委員長のツイッターは炎上状態だ。この問題では昨日、田村智子政策委員長もメディアから突っ込まれていた(田村さんの会見はいつも動画でアップされるのに、これがされていないのは、人に見せてはいけないと判断されたのだろう)。それらのやり取りを見ていると、共産党は何が問題にされているのか、あまり理解していないようだ。私が共産党に助言するのも変なのだが、少し書いておきたいと思う。

 まず、志位さんが朝日新聞をやり玉に挙げた記者会見以降、メディアが共産党による批判に対して結束を強めていることが背景にある。あるメディアの記者と最近話し合ったのだが、これだけ共産党から批判を加えられているので、メディアとしても黙っていられない状態になっていると言っていた。それなのに、共産党の側は、逆にメディアによる共産党批判キャンペーンがやられていると思い込んでいる。だから、メディアの報道の一つひとつに過敏になり、あまり常識的でない対応をしている。だから、メディアはどんどん結束を強めているようだ。しかも、今回の長崎新聞社への抗議は、一般に共産党批判に対して抗議するというものではなかった。私は、例えばメディアが共産党は暴力革命の党だなどと報道したとして、それに抗議したりするのは当然だと思う。しかし、今回の問題はまったく異なる。何よりも、今回の記事は私へのインタビューである。私がインタビューされるのだから、私の見解を述べる記事になるのは当然である。その内容が気にくわないからといって抗議していたら、共産党の容認する記事以外は載せるな、ということになりかねない。いや、「事実が異なるのだ」と抗議する人は述べる。しかし、例えば志位氏に辞任を求める声が多いか少ないかは、その人の周りの状況によって異なるだろう。私の周りに多いことは事実だし、おそらく県委員長にまでその声を伝えに来るような人が少ないのも事実だと思う。正確にしようとすれば、党内で秘密投票でもしなければならないが、そんなことを共産党がやるわけがないから、何が事実かは人によって受け止めが異なるとしか言いようがない。だから、メディアが公正に報道しているかどうかは、そのメディアの全体の報道を見ないと判断できないわけだ。共同通信だって、共産党の側の言い分を載せる記事はいくつも配信しているが、今回ようやく私へのインタビューをしてくれたのである。その初インタビューへの抗議なのである。いま安倍政権時代の放送への介入が問題になっているが、メディアの側が、報道の全体を見て判断してほしいと述べていたのに、「いや、単一の番組でも偏向していたら許さない」というのが安倍政権であった。現在、メディアが共産党の言い分も報道しているのに、松竹の言い分を載せたら許せないとなってしまったのが、長崎新聞をめぐる問題であった。この共同の配信は、本日、他の県でも各紙に掲載されたそうだ。メディアが政党に対抗しようとすると結束するしかない。そんな状況が今後も続きそうな気配である。

【3.13日の小池晃書記局長記者会見】
 2023.3.13日、「「行き過ぎた対応だった」 共産小池氏、長崎新聞社に抗議撤回と謝罪」。
 共産党を除名処分となったジャーナリストの松竹伸幸氏のインタビュー記事を掲載した長崎新聞社(長崎市)に対し、党長崎県委員会が抗議していた問題で、小池晃書記局長は13日の記者会見で抗議を撤回し、謝罪したことを明らかにした。記者会見の概要は次の通り。
 「まず、私の方から長崎新聞の問題の対応について述べたい。3月9日、党長崎県委が松竹伸幸氏のインタビュー記事を長崎新聞が掲載したことについて抗議した。このことについての見解を述べたい」 、「抗議という対応をとるということは党中央としての方針ではない。これまで一部のマスメディアが松竹氏の除名をめぐって事実と異なる記事を掲載した際にも、反論は行ったが、抗議といった組織的な対応はしていなかった」、 「今回、長崎新聞社に対して抗議したことは明らかに行き過ぎた対応だった。本日の常任幹部会でそのことを確認し、先ほど党長崎県委は長崎新聞社に対して抗議を撤回し、謝罪をした。合わせて今回の措置に関わった関係者に対しては注意を私どもとして行った。以上だ」。
 党中央の方針ではないと言っているが、赤旗に(抗議を行ったという)記事が載っている。赤旗は党中央の機関紙だ。矛盾するのではないか。
  「要するに、常任幹部会などで議論して決定したという経過は全くない。私自身も相談を受けていないし、もちろん(志位和夫)委員長も相談を受けていない。今回の経過については党中央の担当者、長崎県委、そしてあの記事を掲載した赤旗の編集委員会に対しても注意を行った」 。
 今後、何らかの記事に抗議をすることがある場合、党としてどういう対応をするのか。
 「私たちは『言論の自由』は断固として守るというのが党の基本的な方針だ。われわれの立場に照らして今回は行き過ぎた対応だったという話を先ほどしたわけだ。そういう立場で今後とも臨んでいきたい」 。
 10日の記者会見で田村智子政策委員長が今回の問題について、党本部の関与を否定した。いつもだったら会見の動画がアップされるのだが、今回はアップされていない
  「それは別に、なんか党でアップしないとか決めたわけではなくて、本人の意向なんかも含めて対応しているのだと思う。田村さんも知らなかった。記者会見で突然、聞かれたという経過があったので…。私は、田村さんは率直に正確な話をしたと思うが、突然、聞かれたということもあって、田村さんの判断でアップしなかったのかもしれない。ちょっとその事情は存じないが、そういうことだと思う」 、「田村さんの記者会見の中身を私も全部見させていただいた。問題はなかったと思う。彼女は率直に党本部として関与した話ではないというような話をしていたと思うが、それは事実だ。記者会見に特に問題があったとは思っていない。そういう議論も党内ではない。きちんと対応されたと思う」 。
 注意はいつ、誰に行ったのか。
  「今日の常任幹部会で、今、私が申し上げたことを確認したので、直ちに執行した。注意した対象は党本部の担当者、党長崎県委、そして、赤旗は別に『抗議しろ』と言ったわけじゃないが、それを掲載したということについて赤旗の編集委員会にも注意をした。これからの教訓にしたいと思っている」。
 今後、松竹氏を扱った記事にはどういった対応で臨むのか。
  「今までも批判とか、反論の記事を載せている。それは政党として当然の権利として、事実と違うということがあればきちんと反論は今後もしていきたい。ただ、抗議をするという組織的な対応は、この問題についてふさわしくない、適切ではないと思うので、今回こういう措置をとった」。

 2023.3.14日、デイリー新潮編集部「共産党のダブルスタンダード 「党首公選」を主張した1人は除名、1人はスルー 」。
 最も重い除名処分

 「党首公選」を主張して『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)を上梓した松竹伸幸氏(68)の”粛清“問題がいまだに尾を引いている。松竹氏は、党本部で安保外交部長などを務めた論客だが、同書での問題提起が問題視され、結果的に除名処分となった。一方で同様の内容の書籍を出版した人物の書籍は今のところ不問に付されているため、党内からもダブルスタンダードではないかとのツッコミが出ているという。一体どういうことなのか?   松竹氏は出版にあたって、会見するなどしてメディアが大きく取り上げた。党首公選や現実的な安全保障政策など、著書での主張は一般に理解されにくいものではなかった。しかし、結果として前時代的でブラック企業のような共産党の体質を浮き彫りにする内容となっており、党の方はもちろん黙っていなかった。

 お咎めなしの理由

 「しんぶん赤旗で反論文が掲載され、志位和夫委員長自身、会見で口を極めてののしるように批判していました。いつも冷静沈着な志位氏にしては珍しく、相当なプレッシャーというかストレスを感じていることが推察されましたね」 と、担当記者。結局、党は除名処分を下すことに。本の出版からは1ヶ月足らずというスピード処分である。主張そのものではなく、いきなり外部に向けて発信したこと等が問題だというのが処分する側の理屈だった。しかし、今度は朝日、毎日、産経が相次いでその判断を批判。その中には、強権体制とか不見識といった強い言葉が踊っていた。産経はともかく、朝日、毎日も強く批判することは、共産党にとっては痛かったかもしれない。一方で、松竹氏とほぼ同じ今年1月に出版されたのが、鈴木元(はじめ)氏だ。『志位和夫委員長への手紙 日本共産党の新生を願って』(かもがわ出版)なる書籍で、内部から党首公選を訴えているという意味で、『シン~』と同じ。松竹氏、鈴木氏ともジャーナリストで、過去、かもがわ出版から多くの著作を刊行していたというキャリアもよく似ている。  しかし、鈴木氏のほうはお咎めなしのようだ。どうしてなのか? 

 党歴60年の古参党員の訴え

 「著者の鈴木氏は78歳。共産党の金城湯池とされる京都で府委員会常任委員を務めた重鎮です。当然、薫陶を受けた党員も多く、除名なんてしたら、京都が穏やかでなくなる可能性もはらんでいるということでした。統一地方選が目前に迫っており、共産党側は“ひとまずスルー作戦”を採っているように映りますね」(同) 。同書のキャッチコピーには「党歴60年の古参党員からの直言 志位委員長は直ちに辞任して、党首公選を行って選ばれる新しい指導部に共産党の改革を委ねるべきだ。党歴60年の古参党員が訴える」とある。今月頭に京都市内を訪れた志位委員長は集会で、松竹氏を「党規約を無視した行動で除名された某党員」と言及し、「(この某党員)を利用して、一部大手メディアが“異論を許さない政党だ”とのキャンペーンを張っている」と主張を展開していた。

 統一地方選を気にして

 「松竹氏の“ま”の字も出さないところにプライドと言うか、センシティブさと言うか、志位氏が“気にしている感じ”が出ているように映りました。一方で鈴木氏のことについてはかりに処分があるとしても統一地方選が終わってからでしょうね。書籍のタイトルが自身に向けられた手紙ということなので、何らかのリアクションが求められるとは思います」(同)。志位氏がトップに就任してから20年以上が経過。外部からは見えない形で体制が維持されていることには大きな問題がある。これはごく普通の意見だろう。こうした「異論」に対して、一方を一気に処分し、他方をスルーというダブルスタンダードが展開されているというのが現状のようだ。しかしダンマリを決め込む時間が長ければそれだけ、弁明する内容には深さも必要になりそうだ。

 3.17日、共産党の田村智子政策委員長は17日の記者会見で、党首公選制導入を求めた著書を出版した党員の鈴木元氏(78)を新たに除名処分にしたと明らかにした。同党は同様の主張をした元党職員、松竹伸幸氏を2月上旬に除名したばかり。田村氏は処分の経緯について「(党機関紙)しんぶん赤旗の報道の通りだ」と述べた。17日付の同紙によると、党京都府委員会が15日に除名処分を決定し、党中央委員会が16日に承認。鈴木氏が著書で党を「『個人独裁』的党運営」、党幹部を「老害」などと表現したとして、同紙は「事実無根の攻撃」「誹謗(ひぼう)・中傷」と批判した。党の決定を受け、鈴木氏は17日に東京都内で記者会見し、「非常に乱暴な形で処分をした。これが間違いだと撤回を求める」と抗議した。田村氏との質疑応答の概要は次の通り。

 本日付の機関紙『しんぶん赤旗』によると、鈴木氏の処分が決まった。
 「鈴木氏が所属する京都の党組織で規約に基づいて行われたと承知している。それ以上のコメントはない」。
 事実関係を確認したい。処分は昨日付けか。
 「赤旗の報道の通りだと思う。京都府委員会での決定が行われた…。すみません、ちょっと今、手元に赤旗がないのだが、報道の通りだと思う」。
 鈴木氏は志位氏に手紙なりを出した上で本を出版した。除名処分をどう整理しているのか。
 「これも京都府委員会の除名処分の理由に書かれている通りなので、それ以上の説明を加えることはない」。
 ただ、今回は(処分を承認した)党中央委員会もかかわっている。
 「中央役員である場合には中央委員会総会で、規約違反があった場合、処分について決定をするが、そうでなければ中央の方で対応をするということではない。所属する党組織で対応を決定し、それが中央委員会の規律委員会の中で、対応に瑕疵(かし)がないかは確認するが、そうでなければそのまま承認するのが通常の手続きになる」。
 今回で除名処分が(ジャーナリストの松竹伸幸氏に続いて)2人目だ。
 「一連、起きていることの感想で言うと、本当に今、共産党が大軍拡の問題でたくさんの方々と連帯し、大軍拡に向かう政治を止めていこうと、そこに向かって共産党が一丸となって頑張っていこうというときに、こういう形でさまざまな分断が持ち込まれるようなことが行われたことをとても残念に思う」。
 鈴木氏は、中央委員会で除名が承認されたと赤旗に記載されているが、中央委員会が何を指しているのかとか、決定プロセスが不明確だという批判をしている。
 「中央委員会の中で、規律委員会というところが、特に規約違反に関わることについて取り扱うことになっている。通常の手続きに従って行われたということだ。日本全国に党員がいるので、規約にかかわる問題が起きることはある。だけど一件一件が全部、中央委員会総会の中で議論されたり、確認されたりということはこれまでもない。通常の手続きの中で今回も対応がされている」。
 鈴木氏は志位氏の辞任、党首選を実施すべきだと主張している。
 「鈴木氏のコメントについては私から一つ一つ、それに対してのことは、コメントはしないが、一連の流れということで言うと、一昨年の総選挙の時に、私たちが政権交代も掲げて選挙を戦った。その時にかなり、『共産党の綱領で日米安全保障条約廃棄を掲げているのはいかがなものか』等々の攻撃をやられたり、『(他の野党が)共産党と共闘するのはいかがなものか』と、ちょっと私もずっと定例会見をやってきていたが、総選挙を境にして共産党に対するさまざまな意見、質問の仕方がガラッと変わるような状況を感じてきた」。
 「総選挙の中では安倍晋三氏、自民の皆さんが先頭に立って火ぶたを切った、『共闘するのか攻撃』がさまざまにやられた。それで総選挙後から党首(志位氏)に対するいろいろな言われ方が始まったと私も体感している」。
 「こういう機会だから率直に言うと、私は共産党指導部の体制は、本当に集団的な英知ということでやってきたということも副委員長として経験している。例えば気候危機で出した新しい提言。若い皆さんから歓迎され、環境問題に取り組む方から、政党からここまでしっかりとした気候危機打開の政策が出ることについての感動も述べられたりした」。
 「この政策検討に至る過程をちょっとだけ言うと、志位氏からの問題提起があった。ジェンダー平等の政策も、これまでよりも踏み込んだまとまった政策を出すことが必要ではないだろうかという最初の問題提起はやはり委員長からだった。共産党が政策的にも多くの方と連帯するような方向に向かう上で、今の指導部の体制は役割を果たしてきたのではないだろうかと思っている。選挙の結果がなかなか難しいことも、委員長一人の責任にするような問題ではないと私自身、本当に思う」。
 「だから選挙で前進できなかった、あるいは野党共闘が問題にぶち当たっている、それはどうやったら解決できるのかということは、まさに私たちが指導部として、全党の皆さんに『こういうことではないでしょうか』という問題提起をするし、全党で話し合って、皆で意見を尽くして、議論して、本当に前進していこう、今で言えば大軍拡反対の運動を全党をあげてやろうと提起もしているわけだ。そういう時にこういう一連の問題が起こることの意味も大きな流れの中でとらえることも必要ではないのかなと。私の感想的な意見だ」。
 選挙について言及があった。鈴木氏は『このような一方的な処分をしたら統一選にも影響が出る』と発言している。
 「統一選は勝利に向けて全力を挙げて頑張っていく。この間、『異論を許さない』などの、私たちに対する事実に基づかない批判というか、攻撃というかに対しては、チラシも改めてつくって、私たちの規約に基づく党運営について丁寧に説明ができるものもつくった。疑問をお持ちの方のところに届けていって、この際、共産党のことをもっと知っていただく機会にしていこうではないかというふうに、勝利を目指して取り組んでいく」。
 鈴木氏は「志位氏に手紙を出したが返ってこなかった」と。どうすればこういう事態を避けられたか。
 「一般論だが、党内で議論というときには、それぞれの所属する党組織の中での議論を一番重視する。選挙の総括とかにも関わることであれば、なおのこと総選挙、参院選でなかなか議席が伸びていないことの責任がどこにあるのかというのは、まさに中央委員会で分析をした決定を出しているわけだ。その決定を所属する党組織の中で十分に議論することが求められたのではないだろうか。それがなされていると思えない。まず所属する党組織の中で徹底的な議論がされたのだろうかということがあろうかと思う」。
 先週の田村氏の会見(10日)で長崎新聞社への抗議の問題が話題に出て、数日後(13日)の小池晃書記局長の会見で党は誤りを認めた。
 「(先週の会見で)長崎新聞への抗議ということで何社かの方から質問を受けた。私はあのやりとりの中で、抗議ということについては、事情を把握して、対応について集団的な議論が必要だということを、この場でも皆さんからの問題提起を受けながら私自身も問題意識を持った」。
 「記者会見が終わってすぐに小池氏をはじめ、赤旗でこういう報道がされていると…。ちょっと私、(抗議の事実を伝えた10日付の赤旗記事を)ざざざっと読んでしまっていたこともあって、皆さんからの質問を受けて、抗議というふうなタイトルで出されている記事だったのかと改めて再認識をしたものだから、これはどうなんだろうかと」。
 「ここで答えたように、この間、私たちは新聞各社に対して抗議という対応はしていないもとで、果たしてこの対応はどうなのかと、どういう経緯でこうなって赤旗にこういう記事が載っているのかということは、ただちに対応が必要ではないだろうかということで問題提起して、週末にかけて、急いで、どういう経緯ということも含めて確認が行われ、月曜の小池氏の会見につながっている。十分なお答えができなかった。集団的検討をしていなかったので、皆さんとのやりとりの中ですれ違う回答になっていたと思う。一般論でお答えしていたので」。
 (10日の会見の時点では)赤旗の記事は十分に読んでいなかった?
 「読んでいなかった。ちょっと質問準備等々もあって、ばあっと目を通すことになっていた」。

  (J-CASTニュース編集部/工藤博司)「志位和夫氏は「ますます党を混乱させているだけ」 共産党でまた除名処分...本人が選挙への影響警告
 共産党の志位和夫委員長の辞任を求める内容の著書を出版した古参党員の鈴木元氏(78)が、規約上最も重い除名処分を受けた。鈴木氏は2023年3月17日に都内で記者会見し、著書で展開した主張について「ますますそう思いますね」などと語った。共産党は23年2月、鈴木氏と同時期に著書を出した古参党員の松竹伸幸氏(68)を除名したばかり。松竹氏の除名には批判も多く、4月に予定される統一地方選への影響も指摘される。そんな中で著書出版をめぐる2人目の除名だ。鈴木氏は、統一地方選の影響が次期衆院選にも波及し「大ダメージを受けることになる」と警告している。
 党員歴60年、京都府委員会常任委員も務める
 鈴木氏は党員歴60年の大ベテラン。京都府委員会常任委員を務めたこともあり、27年間にわたって党職員として勤務した。問題視されたのは、著書「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)だ。共産党の京都府委員会の発表では、処分の理由を大きく(1)著書の出版で党を「誹謗・中傷」した(2)松竹氏の著書と出版のタイミングを合わせるために執筆を急いだことで「党攻撃のための分派活動の一翼をになった」、と説明している。3月15日に府委員会常任委員会が除名を決定し、3月16日に「中央委員会がこれを承認し確定」した、としている。

 鈴木氏は記者会見で「除名される筋合いはない」と処分を批判。その理由を(以下引用)「私の書いていることは全部事実で、府委員会でのやり取りでも私が提起している事実を否定できない」(以上引用)と説明した。鈴木氏は処分の撤回を求めていく考えだ。松竹氏は24年1月に行われる見通しの党大会で再審査を求める考え。一方、鈴木氏は「私がそれをするかどうか、今のところ何とも言いません」と話した。
 「1か月ほどの間で共産党の社会的地位を大きくイメージダウン」
 著書で展開した主張については「ますますそう思いますね」と話し、松竹氏の除名をめぐって共産党が社会的批判を受けていることを指摘、(以下引用)「このわずか1か月ほどの間で共産党の社会的地位を大きくイメージダウンさせてしまった。僕まで(除名処分を)やる。ますますあなたは党を混乱させているだけだ」(以上引用)として、志位氏の辞任と党首公選制の導入を改めて求めた。

 統一地方選については、(以下引用)「単なる『2人目』ということではなく、共産党そのものが問われる。処分のあり方ではなく、共産党のあり方そのものが問われることになりかねない。それは多分、一斉(統一)地方選挙で相当議席を減らす、ひとつの要因になる可能性がある」(以上引用)と、厳しい見通しを示した。府委員会に呼び出された際には(以下引用) 「総選挙で大ダメージを受けることになる」(以上引用)と警告したことも紹介した。共産党は21年の衆院選で、唯一の小選挙区の議席を守る一方で、比例は11議席から9議席に後退。統一地方選の余波で衆院選の比例票が減れば議席数に直結する構造で、鈴木氏は(以下引用)「こういうふうにした志位指導部の責任は非常に大きい」(以上引用)と述べた。

 2023.3.20日、「共産党が松竹伸幸氏に続き“京都の実力者”も除名の異常事態 問われる「市田」「穀田」の人間性」。
 全国の有権者は心底、呆れている──。毎日新聞(電子版)は3月16日、「共産が志位氏の辞任求めた党員を除名 『分派活動』と認定」との記事を配信、YAHOO! ニュースのトピックスにも転載された。今年に入って日本共産党は党員の除名処分を“乱発”しているのだ。担当記者が言う。

抵抗した京都の共産党

大学教授も批判

内ゲバと同じ

松竹氏を救った鈴木氏


ジャーナリスト高野孟の証言
 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK289」の「赤かぶ 日時 2023 年 3 月 29 日 」「「自由に意見を述べる
権利」はあっても上部がそれを黙殺する共産党 永田町の裏を読む(日刊ゲンダイ)
」。
 「自由に意見を述べる権利」はあっても上部がそれを黙殺する共産党 永田町の裏を読む
 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/320746
 2023/03/29 日刊ゲンダイ

 対応の失敗のダメージは深刻(日本共産党の志位和夫委員長)/(C)日刊ゲンダイ

 3月25日付「毎日新聞」電子版が、共産党のあり方を憂える内容の本を出版した2人の古参党員を同党が相次いで除名したことについて、「こうした強硬姿勢には党内から疑問の声も出て」いて「無党派だが共産党に投票してきた人たちが離れる」だろうとの見通しを報じている。

 その通りで、この問題での志位執行部の対応の失敗のダメージは深刻だろう。志位らは「異論を許さない党だという批判は当たらない。党内で自由に意見を述べる権利は規約に明記されているのに、それをせずに党外で出版して批判したのはけしからん」と言うが、これは噴飯物である。

 不肖私は、大昔のことではあるが、20歳の時から8年間、この党で活動したことがある。前半の4年間は某私立大学の学生総細胞で大衆運動担当、組織担当の幹部として学費値上げ反対闘争の先頭を切ったり、内部に発生した毛沢東=文化大革命礼賛派との論争・排除の矢面に立ったりしたが、それは党の上部との関係では、もう異論だらけの毎日で、例えば、学内の問題で寝る間も惜しんで闘っている真っ最中に突然、地区委員会から「明後日までに赤旗日曜版を100部拡大しろ」などというノルマ割り当てが降りてくる。

 私はしばしば地区委に乗り込んで「あんたら現場の実情も知らずにこんなむちゃを割り振って、キャンパスでの活動が阻害され党員も疲弊してしまうのが分からないのか」と文句を言う。しかし答えは必ず「地区委の決定だから従え」と。こういうことが何度か重なると、そのたびに私はそのありさまを克明にしたため、地区幹部の無能ゆえの粗暴を党本部に告発したが、一度たりとも返事が来たことはなかった。

 だから、「党内で自由に意見を述べる権利」があるのは、まあ、そうなのだろう。しかし、それに答えたりその提起に応じて討論を組織したりする義務が上部機関に課せられていないので、彼らは常にそれを黙殺する。だから異論のある党員は、外で出版するなどして「言論の自由」を行使せざるを得なくなるのである。

 「民主集中制」とは、党内で意見を述べる自由という「民主」がないわけではないが、上部はそれを無視し「決定」だと言って服従させる「集中」権限を専有しているという一風変わった独裁体制のことなのである。

 高野孟 ジャーナリスト

 1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。


 2023.3.29日、「共産党 京都の「大物」鈴木元氏も除名」。
 党員同士がSNS上で激論 党内「分裂症状」とも

 日本共産党の党首公選論を唱えた『シン・日本共産党宣言』 (文春新書、1月下旬刊)が、志位委員長らの逆鱗に触れ、同党を1月に除名になった松竹伸幸氏から、3月16日に「鈴木元氏が除名になった」というメールが私を含むメディア関係者に一斉に届いた。鈴木元氏とは松竹氏の件の著作刊行と同時期に『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)という著作を出し(編集担当したのは松竹氏)、そのなかで志位氏に党首辞任を勧告していた。松竹氏除名の際も、同党書記局長の小池晃氏が「鈴木元という現役日本共産党員を名乗る人物との分派活動」と名指しで批判していたが、何故か松竹氏より除名処分が一ヶ月半も遅れる形となった。 松竹氏が除名された直後、即ち先月の2月である。『しんぶん赤旗』のある記者が、私に向かって、「今の京都府委員長と書記長は鈴木派なのか?」と尋ねて来た。私は党員ではない部外者である。私が松竹氏と接点があるので情報が欲しかったのだろう。

 鈴木元氏のプロフィールを簡単に紹介しておくと1944年生まれの78歳、高校3年生の時に日本共産党に入党し、政治活動家としてのキャリアをスタートさせた。立命館大学に入学した後は、日本共産党系の青年団体、民主青年同盟(民青)の活動家として新左翼各派の全共闘と対峙し、多くの学生をオルグし立命館の共産党組織を「左翼系の牙城」とされた京都大学や同志社大学を抜いて、同党京都府委員会における最大拠点に成長させた大物である。共産党国会対策委員長の穀田恵ニ氏も立命館大学時代から鈴木氏の下で活動し、代議士に初当選した1993年には鈴木氏が穀田氏の選対責任者を務めたという。共産党関係者らの証言によると穀田氏は周囲の党員から「鈴木の子分」と見なされていたが、今回鈴木氏及び松竹氏を批判せざるを得ない立場になっている。松竹氏も学生時代から面識があり、「僕が全学連委員長だったころ、京都に行って鈴木さんに挨拶した覚えがある。当時は深い交流はなかったが」と回想する。当時の学生運動家の間では”大物”として若き日から鳴らしていたようだ。

 鈴木氏は卒業後、共産党専従職員や母校の立命館大学職員などを務めた。松竹氏が党中央勤務員を退職した際(理由は志位氏との外交安全保障政策の対立が原因)に、京都府にあるかもがわ出版を紹介したのも鈴木氏だという(因みに松竹氏の除名に怒った同社の社長は、松竹氏が所属していた京都府南地区委員会に抗議したそうである)。  なぜ党首辞任を促すような本を書いたのに、松竹氏よりも一ヶ月以上も除名が遅れたのだろうか? 

 松竹氏は「鈴木さんにお世話になった人が京都府委員会に多く、鈴木さんの影響力は大きいから」と見るが、鈴木氏は「統一地方選が近かったからだろう」と自分にそれほど大それた力はないように語る。  私に問い合わせて来た『しんぶん赤旗』の記者の、「京都府委員長と書記長は鈴木派なのか?」という質問からもわかるように京都での影響力は絶大だ。ただ、鈴木氏を除名したように京都府委員会は党中央に屈服したとの見方もある。

 鈴木氏は昨年4月、かもがわ出版から『ポスト資本主義のためにマルクスを乗り越える』(かもがわ出版)という著作も出しており、その中でマルクスを絶対視すべきではないとか、同党の理論的支柱である不破氏に対しても批判的な論を展開している。明らかに党中央とは異質な思想を披露して来た。しかし、「あの本を出したとき中央は何も言ってこなかった」と鈴木氏は証言する。実はこのかもがわ出版は関西の出版業界では日本共産党系として有名なところ。

 だが、近年は共産党系ではないマルクス経済学者である松尾匡氏(立命館大学教授)と金子勝氏(慶應義塾大学名誉教授)の対談本を出したり、党中央直営とも言える新日本出版社から出せなかった党員研究者の本を出すなど、日本共産党系でありながら、「反代々木系」とも言える出版活動を展開してきた。

 同社から著書を出版している1人に同党の国会議員まで務めた聴涛弘(きくなみ・ひろし) 氏がおり、聴涛氏は不破氏らとは異なるマルクス解釈を行い、新左翼系の理論雑誌である『フラタニティ』(ロゴス社)にも松竹氏や鈴木氏と並んで寄稿するなど(ちなみに同誌今月号には私も論文を寄稿している)、“反中央”的活動を行っている。聴涛氏はおとがめなしなのか? 鈴木氏によると「聴涛さんの本はもう赤旗に広告を載せて貰えない。かもがわ出版自体の広告は赤旗に載っているが、それは契約上の問題だろう」と述べた上で、「聴涛氏は不破氏を直接批判するなどしないから、処分は今のところないだろう」という。  松竹氏の場合は除名処分を下したのは京都南地区委員会であり、京都府委員会が承認したというに過ぎないが、鈴木氏の除名処分は京都府委員会が除名処分を決定し、中央委員会が承認したという点が異なる。

 鈴木氏は「中央が承認したから直接、中央に責任があるという点で松竹さんとは違う。しかし、やり方から見て私も松竹さんの除名も中央主導でやったと推測されます」と語っている。  SNS等で「現役共産党員」を名乗る人同士が松竹除名の賛否を巡って激論を交わすことも珍しくない状況だ。同党の党員同士が公開の場で意見対立を表立って行うのは異例中の異例。いわゆる「民主集中制」で一致団結の一枚岩組織のハズの同党は揺らぎ始めているようにみえる。これがシンパレベルになるともっと激しく「もうビラまきを手伝わない。赤旗も取らない」と言ってくる人が後を絶えないらしい。党員にも抗議の離党を表明する人がSNS上で見受けられる。  

 松竹氏のインタビューを載せた『長崎新聞』に抗議を行った長崎県委員長の行動を、「言論妨害だ」とマスコミ・ネットで批判されたこと受け書記局長である小池晃氏が「行き過ぎだった」と抗議の撤回と謝罪もした。共産党は統一地方選をどのように戦うのだろうか?
 ■角田 裕育(政治経済ジャーナリスト)
 1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。










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