きょう十七日は、小泉純一郎首相と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記による初の日朝首脳会談から一周年です。首脳会談では、北朝鮮側が日本人拉致の事実を認めて一定の謝罪を表明。両首脳が国交正常化交渉の再開で合意し、「日朝平壌宣言」(別項に骨子)に署名しました。しかしその後の日朝関係はさまざまな困難や障害に直面しています。この一年の日朝関係をめぐる諸問題について、日本共産党はどうみてきたのか、どういう態度をとってきたのか、振りかえります。
初の首脳会談
交渉再開合意を支持
史上初の日朝首脳会談について、志位和夫委員長は「日朝平壌宣言」がかわされ、「国交正常化交渉の再開が合意されたことは重要な前進の一歩だ」(昨年九月十七日、談話)と評価しました。
日本共産党は、日朝間の軍事的対応の悪循環を打開するうえでも、両国間の懸案の課題を解決するうえでも、政府間の交渉ルートを開くことが必要だとして、九九年一月と十一月の不破哲三委員長(当時)の国会質問で提案しました。
拉致問題をめぐっても、北朝鮮の国際的な無法行為をもっともきびしく批判してきた党として、国会でも先駆的で継続的な追及をおこなってきました。
国交正常化交渉を再開し、両国間の諸懸案を包括的に解決するという首脳会談での合意を日本共産党が「強く支持」したのも、「交渉ルートを開こう」と提案してきた党としての立場からでした。
拉致問題では、志位委員長が九月十八日の小泉首相と野党四党首との会談で「明らかな国際犯罪」だと指摘し、問題の全容解明や責任者の処罰、被害者への謝罪と補償など、一連の問題を国交正常化交渉のなかで提起し、解決を図るよう求めました。
正常化交渉
政府が堅持すべき立場は…
両首脳の合意にもとづく第十二回の国交正常化交渉は十月二十九、三十日に開かれました。
その直前に北朝鮮は、米国との交渉で核開発計画の存在を認めました。また日本政府は一時帰国した拉致被害者五人を北朝鮮に帰さず、家族の帰国を求めていく方針を確認しました。
そうした結果、交渉は、拉致被害者家族の帰国問題や北朝鮮の核開発問題などをめぐって物別れに終わりました。
日本共産党は同年十二月の第五回中央委員会総会で、志位委員長が日朝問題を取り上げました。
そのなかで、今後の交渉で日本政府が堅持すべき大局的な立場として、(1)北東アジア地域の全体の平和と安定をたしかなものにすることが、日本の平和と安全にとって不可欠であり、両国関係を敵対から友好に転換すること(2)両国間の諸懸案を包括的に話し合い、解決するという立場にたち、誠意をもって交渉にあたること(3)北朝鮮がこれまで国際的な無法行為をおかしてきた国であればこそ、理性と道理にたった対応をすること−−の三点をあげました。
核開発問題
「物理的核抑止力」論を批判
北朝鮮は〇三年一月には、核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言。その後も米国の「先制攻撃戦略」への対応として核兵器開発をすすめる姿勢を示しました。
日本共産党は北朝鮮の核兵器開発について、NPTからの脱退を宣言した際に市田忠義書記局長が「世界平和を脅かす行為であって、いかなる理由によっても正当化されえない」と批判。核問題をめぐる国際合意の順守を明記した「日朝平壌宣言」にてらして、核開発計画を放棄するよう求めました。
五月の第六回中央委員会総会では志位委員長がこの問題で報告。「北朝鮮が核保有の道にのりだすことは認められない」とのべるとともに、問題解決の手段として「軍事の手段に訴えることを絶対に許してはならない」と強調しました。
“物理的抑止力、強力な軍事的抑止力を保有してのみ、戦争を防ぎ国と民族の安全を守ることができる”という北朝鮮の「軍事優先思想」を批判。「北朝鮮にとっての安全保障の最大の問題は、周辺諸国とのまともな外交関係がなく、国際社会で孤立していることにある」と指摘しました。さらに七〇年代から続いた数々の国際的な無法行為の清算を行ってこなかったことが、まともな国際関係確立の障害になっていると強調しました。
同時に日本政府についても、「日朝平壌宣言」という道理ある交渉の足場をつくりながら、「北朝鮮の脅威」をあおりたてて有事法制の強行など、軍事的緊張の悪循環をつくりだしていると警告。「道理にたった外交交渉への努力」を求めました。
6カ国協議
平和的解決への重要な一歩
核兵器開発問題をめぐって、北朝鮮は米国との二国間協議を主張してきましたが、四月には米朝中三国の協議に応じ、七月には日本、ロシア、韓国が加わった六カ国の協議を受け入れました。
八月二十七−二十九日に行われた同協議は、「対話を通じた平和的解決」「朝鮮半島の非核化」「北朝鮮の安全への懸念の考慮」など、六項目の「合意事項」を発表。協議の合間に行われた日朝協議も継続を確認しました。
日本共産党の志位委員長は、九月十一日放送のCS番組で「たいへん大事な一歩」「(『合意事項』に)書かれていることはどれも理性的な建設的な方向であり、そういう方向での交渉の継続と、実りある成果を期待したい」と評価。
拉致問題については、「北朝鮮に一連の国際的無法を清算させていくというなかの重要な内容として位置付ければ、たんに日朝二国間の問題ではなく、国際社会がとりくむべき問題という位置付けができる」との考えを示しました。
日朝平壌宣言骨子
一、〇二年十月中に国交正常化交渉を再開
一、日本側は過去の植民地支配に痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明
一、国交正常化後、日本側は北朝鮮に対し、無償資金協力、人道支援などの経済協力を実施。双方は一九四五年八月十五日以前の財産請求権を相互に放棄
一、北朝鮮側は、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題の再発防止措置をとることを確認
一、北東アジア地域の信頼醸成の枠組み整備の重要性で一致。朝鮮半島の核問題解決のため国際合意の順守、関係諸国の対話促進の必要性を確認
一、北朝鮮側はミサイル発射のモラトリアムの来年(二〇〇三年)以降への延長を表明
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