第6次中東戦争の経緯その1

 (最新見直し2006.7.31日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 以下、第6次中東戦争の経緯を素描しておく。こたびの戦闘が長期化するかどうか不明であるが、雲行きとして泥沼化しそうな気配がある。しかし、アフガンーイラクーガザーレバノンと各地で戦争状態に突入しており、長期化すればどちらが不利かは誰にでも分かる話であろう。

 2006.7.24日 れんだいこ拝


【北朝鮮のテポドンは騒がれるが、イスラエルの領空侵犯は免責される議論の不思議】
 2000.5月、イスラエルのレバノン南部からの撤退以降、二国間が締結した「ブルーライン」はイスラエル側により数百回も破られてきた。国連レバノン暫定軍(Unifil)は、イスラエルの軍用機が2001年から「ほぼ毎日ないしは絶え間なく」ラインを超えて飛んできていると報告している。再度の軍事的紛争には至らなかったが、爆撃とそれに伴う小競り合い的紛争は続いていた。

【イスラエルの挑発】

 2006.5.26日、イスラム聖戦機構の2人の高官、Nidal MajzoubとMahmoud Majzoubがレバノンの町Sidonで車爆弾で殺害された。イスラエルの情報機関モサドの仕業だと考えられた。6月、Mahmoud Rafehという名の男がこの殺人を自首し、事件を認めた。彼は1994年からモサドに従事していたことも認めた。

 6.10日、ガザ北部でイスラエル軍が発射した砲弾が、家族連れのパレスチナ人の海水浴客がおおぜいいる海岸に着弾し、子供や女性ら8人が死亡した(関連記事)。 イスラエルのペレツ国防大臣は、「内部調査の結果、イスラエル軍の砲弾はパレスチナ人に当たっていないことが分かった。海水浴客の死は砲弾を受けたからではなく、砂浜に埋まっていた昔の爆弾が爆発したためであり、イスラエル軍は関係ない」と発表した(関連記事その1その2)。このウソは、ガザに来ていたアメリカ人の元国防総省の軍事専門家によってすぐに否定された。パレスチナ側は、「あらゆる証拠から、イスラエル軍の砲弾がパレスチナ人を殺したことは間違いない」との見解を声明した(関連記事) 。アメリカの人権団体も「イスラエル軍の調査は信用できない」と発表した。これらのアメリカ側からの動きを受け、イスラエル軍は、調査の一部に間違いがあることを認めた。

 この事件でパレスチナ側は激怒し、ハマスの軍事部門は、昨年のイスラエル側のガザ撤退から続けていた停戦を破棄すると宣言し、イスラエル側に向けて砲弾を発射するなどの攻撃を開始した。イスラエルのガザ撤退の前提になっていた停戦状態は失われた(田中宇・氏の2006.7.19日付「イスラエルの逆上」参照)。 

 6.12日、イスラエルの首相オルメルトは、西岸からの撤退計画をEU諸国に承認してもらうため、イギリスを皮切りに欧州を訪問する外遊に出た。


【イスラエル国内の軍事作戦を巡る対立】
 海水浴客の殺害を機に、ハマスがガザからイスラエル側へのロケット砲撃を再開するとともに、イスラエル政界内では、撤退戦略を続行しようとするオルメルト政権への、与党内や右派野党リクードからの非難が強くなった。

 6.24日、イスラエルの右派のネタニヤフ・リクード党首が、「砲撃してくるハマスを叩くため、イスラエル軍が昨夏の撤退以来やめているガザへの進軍を再開すべきだ」と主張した。オルメルト政権側は「進軍したら、当初は数週間のつもりでも、すぐに長期化し、何年も駐留を続けることになりかねない。それでは、何のためにガザ撤退をやったのか分からなくなる」として拒否した(関連記事) 。

【ハマスとヒズボラがイスラエル兵を人質にし、収監中の同志の交換釈放を求める】
 6.25日、ガザ南部のイスラエル側との境界地帯で、パレスチナ側のスンニ派のハマスゲリラが、ガザ側から秘密裏に作ったトンネルを通ってイスラエル側の軍基地に攻撃を仕掛け、戦闘の末、双方に死者が出るとともに、イスラエル軍兵士1人を捕虜にし、ガザ側に連れ去った。イスラエル兵がパレスチナ側の捕虜になるのは10数年ぶりで、事態は一気に緊迫した(関連記事) 。

 続いて、レバノンのシーア派ヒズボラがイスラエルとの戦闘の中でイスラエル兵2名を拉致した。両組織は2004年、イスラエルによる占領に対して共同戦線を張ることで合意している。共通の目的を達成するために「業務提携」した感がある。人質政策の背景は不明であるが、イスラエルに収監されている同志の解放を求めており、これまでやられっぱなしのイスラム側が反撃したことになる。


 ヒズボラは、レバノン占領時代にイスラエルに逮捕され、(ジュネーブ条約の118条に違反して)いまだに解放されない15人の捕虜達と交換することを求めている。

【イスラエル軍のガザ侵攻で第6次中東戦争勃発】

 イスラエル軍内や政界内の右派は、ガザへの再侵攻を強く主張し、それに押されるかたちで、オルメルト首相は再侵攻を決定した。

 7.9日、どういう絡みか奇奇怪怪であるが、突如北朝鮮のミサイル騒動が発生した。メディアが一斉に批判の大合唱を繰り広げる他方で、イスラエルが、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラに身柄を拘束されたイスラエル兵2人の「人質解放」を名目にガザ地区に戦車を投入し、同時に空爆を開始した。れんだいこの見るところ、これは第6次中東戦争の勃発と思われる。

 イスラエル軍は、幹線道路、橋や発電施設などライフラインを破壊し、ガザの市民生活を麻痺状態に陥らせた。数十名のパレスチナ立法評議会議員を拘束し、自治政府のオフィスをミサイル攻撃した。自治政府の閣僚の3分の1を逮捕して軍の監獄に入れ、自治政府を機能停止状態にしてしまった(関連記事その1その2) 。

 パレスチナ医療関係者のアル=サッカ博士は、イスラエル側が化学兵器を使用しているとして告発した。アルジャジーラに対して、「負傷者の体すらほとんど完全に焼けただれています。非常に醜くく変形してしまっており、これまでに見たこともないほどです」と話した。

(私論.私見)

 北朝鮮はテポドンを海洋域へ向けて発射しただけで、国際世論から非難轟々されるのに、イスラエルのガザ侵攻は容認される不可思議さよ。れんだいこは堪らない。メディアの評論士よ、言いたいことがあったら、云うてみ。

 2006.7.24日 れんだいこ拝

(私論.私見)

 イスラエルのこたびのガザ侵攻を第6次中東戦争と捉えない世界の評論士は全く駄目だ。

 2006.7.24日 れんだいこ拝

【イスラエル軍がレバノン侵攻】
 7.12日、イスラエル軍は、ガザ攻撃に続いてレバノンに侵攻した。イスラエルは、レバノンのヒズボラの拠点を破壊して幹部を全て殺すと宣言している。

 7.13日、レバノンの首都ベイルートのラフィク空港はイスラエル軍機により爆撃された後、閉鎖された。7.14日、イスラエル軍は、ヒズボラが拠点としている首都ベイルート南郊を集中的に空爆、ヒズボラ関連施設や発電所、幹線道路などを大破した。 ベイルート港も海上封鎖された。これにより、レバノンは国家として機能麻痺に陥った。イスラエルによる攻撃は、レバノンの無数の一般市民の生活を破壊した。イスラエルは、「これは戦争である」、「この戦いは長期化する」といった表明を行った。

 レバノン南部で、イスラエル軍とシーア派組織ヒズボラの間で衝突が起こった。イスラエル兵7名が死亡した。

【ヒズボラがイスラエル北部を反撃砲撃】
 レバノン地上部隊は対空砲を発射し応戦した。イスラエルとレバノンの本格的な衝突に発展する様相も帯びてきた。7.12日未明、ヒズボラ側は反撃に転じ、イスラエル北部を砲撃、死傷者を出したと言明した。イスラエルのペレツ国防相は、ヒズボラが国内の都市や産業施設に向けて長距離ロケットを発射する場合に備えて、民間防衛計画を発動準備するよう、軍司令官に指示した。

【イランのアフマディネジャド大統領とシリアのアサド大統領と電話で協議】
 7.13日、イランのアフマディネジャド大統領は、イスラエルのレバノン攻撃に関し、「エルサレムの占領政権(イスラエル)が(次に)シリアを攻撃すれば、イスラム世界全体への攻撃とみなす。占領政権は激しい反撃に直面するだろう」と警告した。国営イラン通信が14日伝えた。同通信によると、アフマディネジャド大統領は13日、シリアのアサド大統領と電話で協議し、シリアとの結束を確認した上で、イスラム諸国に共同戦線の構築を呼び掛けたという。レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラは、シリアやイランに支援されている。

【レバノンのシニオラ首相の仲裁不調に終わる】
 7.15日、ヒズボラとイスラエルの戦争状態に収束の兆しが見えない中、レバノンのシニオラ首相がテレビ演説を行い、ヒズボラの攻撃拠点となっているレバノン南部一帯を政府の管理下に収めるよう努力することを約束し、即時停戦を求めた。だが、イスラエル紙イディオト・アハロノト(電子版)によると、オルメルト同国首相の側近は、「拉致された兵士2人が解放されるまで停戦はない」と述べ、要請を事実上拒否した。シニオラ首相はまた、イスラエルのレバノン攻撃を停止させるため国連に介入を呼び掛けた。

【イスラエルの空爆殺傷各地で相次ぐ】
 7.16日、イスラエル軍は、ベイルート国際空港を再空爆、燃料タンクを破壊した。同空港への空爆は、イスラエル軍とヒズボラの交戦が12日に始まって以来、4度目。イスラエル軍は16日だけで約80カ所を空爆。レバノン南部にある計7自治体の住民に対して空爆作戦の強化を警告し、退避を呼び掛けた。この日、レバノン南部の民家が爆弾で破壊され、カナダ人7人が死亡、3人が負傷した。

【ヒズボラの徹底抗戦と反撃】
 7.16日、ヒズボラは、イスラエル第3の都市、北部ハイファ(人口26万人)をロケット弾攻撃し、市民8人が死亡した。ハイファは地中海貿易の窓口となる港町で、火力発電所もあるイスラエル経済の要の都市である。これにより、ハイファ南郊外にあるイスラエル空軍基地が火炎に包まれた。今回の戦闘でイスラエル側が受けた最悪の死者数となった。ハイファの病院関係者によると、ヒズボラのロケット弾攻撃は20発以上に及び、死者8人のほか、10数人が負傷した。ロケット弾の1発は鉄道の駅に着弾したという。このため、イスラエル政府は同国北部地域に「48時間の非常事態令」を出した。ヒズボラは、ハイファ攻撃に使用したのはイラン製短距離ミサイル「ラード」と発表した。続いて、イスラエル北部の中心都市ハイファよりも南の都市アフラを攻撃した。

 ヒズボラ指導者のナスララ師は交戦後初めてテレビに出演し「戦いは始まったばかりだ。さらなる奇襲を仕掛ける」と述べた。

【オルメルト・イスラエル首相が報復宣明する】
 オルメルト・イスラエル首相は激しい報復の実行を言明するとともに、イスラエル軍はレバノン国民に対し同国南部から退去するよう警告した。ハイファが攻撃を受けた直後、イスラエル軍ジェット戦闘機はレバノン南部にあるヒズボラの幹部住居を爆撃した。アルジャジーラのレバノン特派員によると、この爆撃で少なくとも10人が死傷したという。一方、ヒズボラはこの日の砲撃を認める声明を出し、イスラエル軍によるレバノン市民殺害とインフラ施設破壊への報復と言明した。  

 7.17日、イスラエル軍は、レバノン北部の海岸にある2カ所の軍施設などを空爆、兵士ら計17人が死亡した。同国東部や、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ本部のあるベイルート南部でも死者が出た。イスラエルは海軍艦艇を出動させレバノンを海上封鎖すると共に、艦砲射撃を浴びせ、公共施設などを破壊した。猛空爆は連日実施されている。他方、ベイルート沖に展開する最新鋭の艦艇にヒズボラのミサイルが命中した。

 7.19日、イスラエル軍は、レバノン南部に侵攻し、レバノンのイスラム教シーア派組織、ヒズボラの拠点を攻撃した。イスラエル軍報道官は同日、「限定されたピンポイント攻撃だ。異例の作戦ではない。攻撃は国境付近で行った」と述べた。イスラエル軍は12日のヒズボラによる軍兵士拉致事件以来、レバノン南部に数回、侵攻しているが、すぐに軍を引き揚げており、大規模地上部隊によるレバノン南部侵攻を行うことは否定している。今回もヒズボラの拠点を狙った一時的侵攻とみられる。戦闘状態の激化で、19日までにレバノン側で235人が死亡、イスラエル側で25人が死亡した。

 状況はどちらが勝利しつつあるのか混沌としている。

(私論.私見) 【局面を読む】
 イスラエルのガザ、レバノン侵攻に対し、ヒズボラがイスラエルの諸都市にロケット弾攻撃で応戦していることが判明する。日本のメディアはテポドン狂いに明け暮れており、こういう経緯は報道しない。

 2006.7.24日 れんだいこ拝

【レバノン在留外国人が同国から脱出する動きが本格化する】
 7.19日、レバノン在留外国人が同国から脱出する動きが本格化し、カナダは船舶6隻をレバノンに派遣し、毎日4500人規模で地中海のキプロスに避難させる。米国は軍戦艦などを派遣。フランスも4000人の輸送が可能な艦船を派遣するほか、英国は週末までに5000人の避難を計画している。

【G-8と国連の無能無策】
 この間、G-8が開幕していたが、軍事行動をエスカレートさせるイスラエルに対し無能を晒した。ブッシューブレアー小泉は露骨にイスラエルの聖戦を支持した。こういう訳で、G-8は、北朝鮮のテポドン発射批判には熱心さをみせたが、イスラエルの蛮行に対しては何の決議も出来なかった。

 国連も然り。アナン事務総長は、155の国連総会決議、69の国連安保理決議を平然と無視している国であるイスラエルに自重を求めたが、馬の耳に念仏となった。アメリカのジョン・ボルトン米国連大使は、北朝鮮のミサイル発射に対しては「強いシグナル」を求める他方でイスラエルの行動に関してはダンマリを決め込んだ。ロシアのミハイル・カミーニン外相、アメリカのコンドリーザ・ライス国務長官やGー8の外相会談も、イスラエルの非を咎めることができなかった。こうして、G-8と国連の無能無策事態が続いている。

 国連の救援機関は、レバノン北部に不足している食料・医薬品を安全に搬送できる「人道回廊」を設けるよう求め、イスラエル政府は人道救援用物資の搬送に限り、認めることを決めた。
(私論.私見)

 今や、米英ユ+日本が「悪の枢軸」であることが明々白々になりつつある。それにしても、日本は、小泉のお蔭でとんでもないところまで加担しつつあることが判明する。国連のアナン事務総長の無能さも見飽きた。

 2006.7.24日 れんだいこ拝

【イラン革命防衛隊のレザーイー前司令官かく語る】

 イラン革命防衛隊のレザーイー前司令官は、次のように述べた。

 「(イスラエルの攻撃が継続された場合)レバノンのシーア派組織ヒズボッラーもイスラエルを攻撃する可能性がある」。
 「イスラエルに対してヒズボッラーが攻撃した場合、数十年間形成されてきたイスラエルが崩れ、破壊寸前に陥るだろう。このため、長期的に見て、この戦争の影響を大きく受けるのは、ヒズボッラーではなくイスラエルだ」。
 「レバノン危機は、この出来事が偶然のものではなく、ヒズボッラーの武装解除と打倒が失敗したことを受け、イスラエルの中東和平の行き詰まりを打開するために計画されたもので、イスラエルの対レバノン攻撃という形で始まった」。
 「もしシリアに衝突が拡がれば、ヨルダン政府の崩壊と、レバノンからイラク、エジプトにわたる中東全体に混乱を招くことになる。このことは、アメリカにとって打撃になるだろう。このことから、アメリカは、出来るだけ早く状況を沈静化すべきである」。
 「ヒズボッラーは、イスラエルの軍艦を沈没させ、ヘイファの町にミサイルを降らせ、さらに戦闘用ヘリを撃墜することで、政治的、軍事的に優位に立っている」。

【イランテレビが、シオニスト製品”ボイコットキャンペーン】

 7.19日、イランは、消費者に「シオニスト製品の購入を中止」するよう求めるキャンペーンを大々的に開始した。やり玉に挙がっているのはコカ−コーラやペプシ(清涼飲料)からカルバン・クライン(衣料)、ネスレ(食料品)までとさまざま。このキャンペーンは、パレスチナの領土とレバノンに対するイスラエルの攻撃をきっかけに開始されたもので、清涼飲料を求める消費者は「シオニストは清涼飲料業界の最大の株主であり、彼らは毎年、数十億ドルを植民主義の目的のために用意している」と告げられている。また英国の企業などにも非難の矛先が向けられ、小売りチェーンのマークス・アンド・スペンサーについては「イスラエル政権と極めて親密な関係にある。同社の主要目的の1つは、イスラエル経済の発展を支援することである」と主張している。([AFP=時事]http://news.www.infoseek.co.jp/afp/world/story/20060720afpAFP007854/


【米国高官が、米国ブッシュ政府が精密誘導爆弾のイスラエルへの輸送にとりかかっていることを暴露】

 7.21日、米国高官が、米国のブッシュ政府が大急ぎで精密誘導爆弾のイスラエルへの輸送にとりかかっていることを暴露した。ライス米国務長官はこの日、中東外交の最初に23日にイスラエルを訪問すると発表した。


【イスラエル軍がレバノン南部に侵攻 戦車投入しマルンラス村を占拠】
 7.22日、イスラエル政府は、現時点ではレバノンへの全面侵攻計画はないとしていたが、同国軍部隊はこの日、北部国境を越えてレバノン南部に侵攻、小村マルンラス村を占領した。イスラエル軍によるレバノン攻撃はこの日で11日連続となり、これまでに市民を中心にレバノン人362人が死亡している。イスラエル軍のスポークスマンは同日、今回の侵攻はレバノン領内数キロにとどまる限定的なものとした上で、「作戦範囲が拡大する可能性はあるが、現在は同範囲を限定している。また現時点で、大規模な兵力をレバノン領内に送り込むことは検討していない」とも明らかにした。

 イスラエル軍はレバノン攻撃に当たって、通信施設を中心に爆撃、破壊している。22日にもベイルート北方地区にあるテレビ中継用施設3カ所および携帯電話用の中継塔が爆撃、破壊された。中継用施設の1カ所では1人が死亡、1人が負傷した。また、アルジャジーラ調べによると、ベイルートでは停電が起きている地区も出ているという。

 同村攻防に向け、イスラエル軍とヒズボラとの交戦は23日午前も続いた。同交戦により、これまでにイスラエル軍兵士6人が死亡した。ヒズボラ側にも死者が出たとみられるが、その数は分かっていない。ヒズボラは同日、ナハリヤなどイスラエル北部地区に向けてロケット弾50発を撃ち込み、5人が負傷した。


【イスラエルで反戦デモ】
 7.22日、イスラエル中部のテルアビブで、開戦以来初の反戦デモが行われ、約2500人が即時停戦と交渉開始を訴えた。ユダヤ系とアラブ系の左派政党が合流して反米スローガンを掲げており、地元紙は「異例の共同歩調」(ハアレツ紙)と伝えている。参加者は、ユダヤ系世俗主義左派連合の「メレツ」、ユダヤ人国家からの脱却を目指すアラブ政党「国民民主同盟」など国会(クネセト)に議席を持つ左派小政党のメンバーら。

【イスラエルが、多国籍軍部隊の投入を求める】

 7.23日、イスラエルは、レバノン南部への陸上部隊投入を拡大する一方、北大西洋条約機構(NATO)を主力とする多国籍軍の派遣を容認するなど停戦のあり方を視野に入れた動きも見せ始めた。イスラエルは、現在レバノン国境に展開中の国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を「任務遂行に失敗した」と厳しく批判し、国防省報道官は強力な実行力を持った多国籍軍部隊の投入を求めた。これに対し、欧州諸国からは難色を示す声も上がっており、合意形成にはなお時間がかかりそうだ。

 82年にレバノンへ侵攻したイスラエルは00年にヒズボラに追い出される形でレバノン南部から撤退した苦い経験を持つ。今回も、レバノンに対するイスラエル軍の過剰とも言える砲爆撃によって、レバノン内の反イスラエル感情は極度に悪化。イスラエル軍陸上部隊の投入を前に、レバノンのムル国防相はイスラエル軍との対決も辞さない態度を示していた。こうした状況下でイスラエルはNATO主力の多国籍軍の受け入れ承認に転じたとみられる。


【ヒズボラの反撃】
 7.23日、ヒズボラは、イスラエル北部にある第3の都市ハイファにロケット弾を撃ち込み、同市民10人が死亡、14人以上が重傷を負った。ビズボラはこの日、ロケット弾少なくとも10発をハイファに発射した。この結果、ヒズボラが過去11日間にイスラエル領内に撃ち込んだロケット弾数は1100発を超え、イスラエル人が少なくても17人が死亡した。

 これに対しイスラエル軍はヒズボラの攻撃拠点などに、空爆および地上からの砲火を浴びせ、市民の住宅やレバノン政府の公共施設を破壊した。同軍の攻撃でレバノン人320人以上が死亡した。


【シリアが、中東情勢でアメリカと「対話の用意あり」と声明】
 7.23日、“CHANNEL NEWSASIA”によると、シリアのファイサル・ムクタッド外務次官は次のように語った。
 「中東情勢について、レバノンでの危機を解決するためにアメリカと対話の用意がある」。

 「シリアの側には、これまで常にアメリカとの対話の用意はできていた。アメリカはシリアとの対話を行おうとしないばかりか、他国がシリアと対話するのも妨害している」。

 「われわれは指図したりしないで尊重と相互利益にもとづく対話を望む。アメリカにこの問題(当面の危機)だけでなくすべての問題を解決するのに役立つ用意があるのなら、われわれの方にも役立つ用意ができている」。
 「われわれがもしこの問題を解決すれば、他の問題はどうだろう?進行中のイスラエルが占領しているアラブ領土、レバノン、パレスチナ、シリアの領土問題は? われわれは、長引く地域の問題すべてを包括的に処理しないで中東危機の解決はないと思う」。

【国連が、イスラエルの空爆を国際人道法違反と批判】

 7.23日、国連緊急援助調整官室(OCHA)のエグランド室長は、イスラエルによる爆撃が続くレバノンの首都ベイルート南部を視察し、爆撃は「(国際)人道法違反」と指摘した。室長はイスラエルによる攻撃を「ぞっとする」、「想像以上に大規模」と批判。五十万−百万人が援助を必要とし、緊急人道援助に一億ドル(百十六億円)が必要との試算を示した上で、イスラエルに対し、支援物資などを避難民らに安全に届けるルートの確立を求めた。


【イランのアハマディネジャド大統領が、イスラエルの中東からの退去を求める】
 7.23日、イランのアハマディネジャド大統領は、イスラエルに対し、「戦火に包まれる前に荷物をまとめて中東から出て行くべきだ」と警告した。大統領は以前にも「イスラエルは(米国の)アラスカにでも移ってしまえ」と発言、物議を醸したことがある。

【イスラエル軍がヒズボラの主要拠点ビントジャベル村の攻略に取りかかり、激しい戦闘模様】
 7.24日、イスラエル軍は、先に制圧したレバノン国境沿いのマルンラス村からさらに北進し、国境から4キロの位置にあるヒズボラの主要拠点ビントジャベル村の攻略に取りかかり、両者の間で激しい戦闘が繰り広げられている。

【ライス米国務長官が親イスラエル的立場で関係諸国に折衝する】
 7.24日、ライス米国務長官は、レバノンのベイルートでフアド・シニオラ首相と会談し、イスラエルの要求を突きつけ、ヒズボラが人質を釈放するまで停戦はあり得ないと語った。シニオラ首相は、戦闘勃発以来繰り返し戦闘行為の即時停止を要請してきたが、全く無視される結果となった。ライス米国務長官は、国連決議第1559号と1990年のレバノン内戦終結時のタイフ合意(国民和解憲章)が履行される必要があるという立場で、両文書が述べているレバノン政府によるヒズボラを含む民兵集団の武装解除の履行を迫った。又、シリアとイランがヒズボラの支援者になっていると非難した。

 ライス米国務長官は続いてエルサレム入りし、イスラエル軍とシーア派勢力のヒズボラとの間に戦闘が起きたことについて、イスラエル国民に同情の意を表明した。 イスラエルのリヴニ外相との会談では、ヒズボラをテロリスト集団とみなした上で、「いかなる和平も永続的な原則に基づかねばならないのであって、一時的な解決はいけません」と語った。

 リヴィニ・イスラエル外相は「自由世界は一つの脅威に直面しているが、それはヒズボラの最終目標が世界を火の海にすることであるからで、われわれはヒズボラを成功させるわけにはいかない。イスラエル、レバノン両国民の間には何の紛争もないが、イスラエルは自国の市民を防衛するのが最高の責任なのだ」と語った。

 ライス長官は次いでナビハ・ベリ国会議長と会談、停戦問題はヒズボラのリタニ川(イスラエルの北方約20キロ)への後退と国境地帯での国際部隊の展開が交渉の一部を占めると語った。同長官は、「国境の状況を7月12日以前に戻せません」とベリ議長に語った。親ヒズボラ的シーア派のベリ議長は、ライス長官に対し、物事には順序があるべきだとして、「まず停戦、捕虜の交換、次いで全般的な問題についての話し合い」とすべきだと主張した。

 ライス米国務長官は7.26日、ローマに飛んで、欧州やアラブ諸国の外相たちと今回の危機について意見を交換する。


【レバノン大統領が、イスラエル軍による「リン爆弾」使用を非難】
 7.24日、レバノンのラフード大統領が、フランスのラジオで「イスラエル軍がリン爆弾やレーザー爆弾を投下している」と非難した。大統領は、リン爆弾などを一般の住民や子どもに対して使用することはジュネーブ条約に違反しているのではないか、と問題を提起した。これに対してイスラエル軍のスポークスマンは、使用兵器は国際的な規範に違反していない、と条約違反を否定した。(http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/L24911888.htm

【ベイルート大学病院への爆撃で多数の子供が犠牲に】
 7.24日、ベイルート市内でも最大の規模を誇る病院のビラル・マスリ副院長は24日、イスラエルによる病院への爆撃に関して、「レバノン内戦時代よりも酷い爆撃である。しかも患者のほとんどは子供たちであり、負傷者の多くは重傷の状態で搬送されてくる。ここベイルート市内では死亡率が現在30%にも上り、イスラエル軍の新型爆弾により避難民が集中するシェルターは爆破され壊滅的状況になっている」と語った。さらに同院長は「新型爆弾の殺傷効果は広範囲に及ぶため、逃げ遅れた子供の犠牲者が増えている」とIPSの取材に応じて語った。

 国連の緊急援助調整官室のジャン・イゲランド事務次長は、ベイルート南部の廃墟と化した地域を視察し「砲撃による被害は想像以上に大規模であり、身の毛もよだつ。これは国際人道法違反である」と述べた。(ベイルート南部)サイダという町やその他の病院では焼夷兵器による被害を受けた患者で溢れかえっている。マスリ副院長は『白リン爆弾』の使用を公式に認めたイスラエル軍を強く非難した。


【イスラエル軍がレバノン南部の国連軍に空爆、4人死亡】
 7.24日、イスラエル軍は、国連軍UNIFIL陣地を戦車で砲撃し、ガーナ兵士4人が負傷した。7.25日、イスラエル軍が、レバノン南部の国境地帯ヒアムにある国連レバノン暫定軍(UNIFIL)基地を空爆し、少なくとも要員4人(カナダ、中国、オーストリア、フィンランド各国の国連職員)が死亡した。UNIFILは1978年からレバノン南部のイスラエル国境地帯に駐留。現在約2000人の態勢で、実際の停戦監視能力は持っておらず、米国やイスラエルは、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの武装解除などが可能な国際部隊の派遣を求めている。

 国連のコフィ・アナン(Kofi Annan)事務総長は、「イスラエルによる意図的な攻撃にショックを受けている」と語った。同事務総長によると、この建物は誤認されようがなく、したがってイスラエルの攻撃は意図的であるとしか考えられないと説明。アナン事務総長は、エフド・オルメルト(Ehud Olmert)イスラエル首相から国連関係者に対する安全の保障を受けていた。アナン氏はイスラエル政府に対し、この事態について調査を進めると同時に、今後の国連関係者の安全を要請した。今回の攻撃で犠牲となった監視団メンバーの詳細は明かされていないが、遺族に対してアナン事務総長は哀悼の意を表している。

【マレーシアのアブドラ首相がイスラエル批判】

 7.25日、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議がクアラルンプールで開幕し、マレーシアのアブドラ首相は冒頭の演説で、緊迫するレバノン情勢について「過大な武力を行使しているイスラエルを許してはならない」として、イスラエルを厳しく非難した。国連安全保障理事会は即時停戦を働き掛け、平和維持部隊を送るべきだと訴えた。


【サウジアラビアのアブドラ国王が、イスラエルに対し、我慢にも限界が有ると批判】
 7.25日、サウジアラビアのアブドラ国王は、国営サウジ通信を通じて「イスラエルのごう慢さにより和平という選択肢が失敗した場合、戦争の道以外になくなる」と警告、イスラエルに対しレバノン、パレスチナ自治区への攻撃停止を求めた。国王は「アラブ各国は和平を進めるため、過激派の呼びかけも無視してきた。しかし我慢にも限界がある」と指摘した。

 サウジはこれまでイスラエルを批判するとともにイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの行動も非難、このため国内世論に反発が生まれていた。声明は同時にイスラエルからの空爆を受けているレバノンに5億ドル(約580億円)、パレスチナにも2億5000万ドルを支援することを明らかにした。


【ヒズボラの拠点で激戦、イスラエル兵13人死亡】
 7.26日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラのレバノン南部の重要拠点ビントジュベイルで、包囲し始めたイスラエル軍とヒズボラ兵士と激しい戦闘になり、衛星テレビ「アル・ジャジーラ」によると、イスラエル兵13人が死亡した。事実とすれば、イスラエル軍のレバノン侵攻後、1日当たりの死者としては最多となる。ビントジュベイルは国境から3〜4キロ・メートルに位置し、「ヒズボラの首都」とも呼ばれるロケット弾攻撃拠点。イスラエル軍は過去数日間にわたって制圧作戦を進めており、モスクなどに隠れていたヒズボラ兵士が反撃した。イスラエル軍はヒズボラ側の約30人を殺害したとしている。

【15カ国外相会議が、レバノン情勢を討議する】
 7.26日、15カ国外相会議が、ローマで、レバノン情勢をめぐる15カ国外相緊急会議を開き、緊迫するレバノン情勢を討議した。

【国連安保理がイスラエル非難声明採択】
 7.26日、イスラエル軍がレバノン南部で国連レバノン暫定軍(UNIFIL)監視所を空爆、国連要員4人が死亡した事件で、国連安全保障理事会が開かれ、事件を非難した上で、国連との合同調査実施と速やかな結果公表をイスラエル政府に要求する議長声明案を協議した。7月の安保理議長を務めるフランスのドラサブリエール国連大使によると、議長声明採択は自国民が犠牲となった中国の王光亜国連大使が要請。王大使はボルトン米国連大使と面会、支持を取り付けた。緊急協議では国連平和維持活動(PKO)局が事件の状況を説明。王大使は協議後に記者団に対し「言い訳できない事件」と批判。ボルトン大使も「悲劇だ」と述べた。

【日本政府が、航空自衛隊の活動域を拡大し、イラクのバグダッド空港まで担当する方向で調整】
 7.27日、日本政府は、イラクでの航空自衛隊の活動について、輸送範囲を拡大する方向で調整に入った。空自はこれまでクウェートのアリ・アルサレム基地を拠点に、主にイラク南部のタリル空港まで人員・物資の輸送を担当してきた。陸上自衛隊のサマワ撤収に伴い需要が大幅に減るため、国連の要請に応える形で首都バグダッドや北部のアルビルまでの輸送を担当する。国連は日本政府にアルビルに持つ事務所を増設する計画を伝えている。空自は当面、国連職員や増設用の資材などの輸送を担当。その後、米軍をはじめとする多国籍軍向けの物資輸送にも幅を広げる方向だ。

【アマル運動を率いるナビハ・ベリ国民議会議長が、アラブ諸国がヒズボラ支持を打ち出し、イスラエル攻撃に加わるよう呼び掛ける】
 7.28日、イスラエル軍は、バノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラへの攻撃を継続する他方で、レバノン南部にある同シーア派アマル運動の拠点を砲撃した。イスラエル軍のアマル運動への攻撃は、2週間前の”開戦”後、初めて。これに対し、アマル運動を率いるナビハ・ベリ国民議会議長は同日、アルジャジーラの取材に応じ、アマル運動がヒズボラの対イスラエル攻撃に参加するとの考えを明らかにするとともに、アラブ諸国もヒズボラ支持を打ち出し、イスラエル攻撃に加わるよう呼び掛けた。同議長はさらに、「アラブ諸国はレバノンを襲っている火事を指をくわえて眺めているのか。米国はイスラエルに影響力を行使し、中東地域の全紛争を解決させねばならない。ただ眺めているだけでは問題は解決しない。行動が必要だ」とも強調した。また今回のヒズボラ攻撃について同議長は「イスラエルはヒズボラではなく、レバノン全体を相手に戦っている。アラブ諸国がこの戦いに加わるのは当然だ」と指摘した。

 このほか同議長は、今回の事態に関してアラブ諸国首脳会議がいまだに招集されていないことに疑問を呈するとともに、「イスラエルによるこのレバノンおよびパレスチナ侵攻で首脳会議が開催されないとしたら、一体どうなっているのか」と述べ、アラブ諸国の対応の緩慢さに怒りをあらわにした。一方、ベリ議長は今回の事態の発端となったヒズボラによるイスラエル兵士拉致事件について、「これはレバノンに対する陰謀である。イスラエルは2000年にヒズボラに敗れて、南部から撤退した。今回はそれへの仕返しなのだ」との見方を示した。(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)


【米英首脳が、レバノンへの国際部隊早期展開で一致】
 7.29日、フランスが、安保理決議案を提示。同日、ブッシュ米大統領は、訪米したブレア英首相とホワイトハウスで会談し、レバノンでの紛争停止に向け、国際部隊の早期展開を可能とする国連安保理決議の採択を急ぐ必要性で一致した。しかし、「即時停戦」には両首脳とも言及しなかった。ブッシュ大統領は会談後の記者会見で、「我々の目標は永続する和平であり、そのためにはレバノン政府が領土全域で完全な権限を行使できるようにする必要がある」と主張した。続いて、「根本的な原因に向き合う必要がある。それはヒズボラだ」と繰り返し強調とた。ブレア首相も、「我々はできるだけ早い紛争の停止を求めるが、中長期的に情勢を安定化させられる枠組みも必要だ」と、無条件即時停戦を求めない米国の姿勢に理解を示した。

 国際部隊の役割について、ブッシュ大統領は「レバノン政府軍が南部に向かうのを補助し、人道支援の到着を早め、避難民の帰還を可能にし、レバノン政府が完全な形で主権を行使し、国境を警備するのを支援する」と定義。国連安保理では、国連憲章第7章に基づいて紛争停止を求め、国際部隊に権限を与える内容で決議の採択を求める方針を示した。

 記者団からブッシュ大統領に「あなたはシリアとイランに、(イスラム教シーア派武装組織)ヒズボラへの支援を止めるよう警告したが、無視されている。この地域での米国の影響力はどうなったのか」との質問が出ると、ブレア首相が「影響力の喪失などとは何も関係ない」と弁護を買って出る一幕もあった。(http://www.asahi.com/international/update/0729/004.html


【イスラエル軍の空爆で破壊されたレバノン南部の発電所から大量の原油が海に流出】

 7.29日、レバノンのサラフ環境相は、イスラエル軍の空爆で破壊されたレバノン南部の発電所から大量の原油が海に流出し、地中海で過去最大級の環境被害が懸念されると語った。AP通信などによると、同国の海岸は既に約130キロにわたり汚染され、原油は首都ベイルートにも到達。本来なら市民らでにぎわっているベイルートの海水浴場は、海面が真っ黒な油で覆われ、砂浜には数百匹の魚が打ち上げられている。


【ライス国務長官が、レバノン情勢の打開に向け中東再訪問へ】

 7.29日、ライス米国務長官は再び中東入りした。米英首脳が28日、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの排除や国際部隊の早期派遣で合意したことを受け、イスラエル、レバノン両国首脳と国際部隊の受け入れ条件などについて協議する。イスラエル、レバノンともにヒズボラが支配するレバノン南部への国際部隊の派遣自体は拒否していないが、国際部隊の編成や権限、展開時期について対立している。

 イスラエル政府はレバノン南部に駐留している国連レバノン暫定軍(UNIFIL)について「イスラエルへの砲撃やテロ攻撃、誘拐を何一つ防げなかった」(国連大使)と非難している。新たな国際部隊は北大西洋条約機構(NATO)を主力とする強力な部隊が望ましいとの立場で、イスラエル軍によるヒズボラ掃討後、同軍に代わって治安維持にあたるよう求めている。

 レバノン政府もヒズボラに対抗できるだけの実力を備えた国際部隊の派遣に前向きとされる。だが、レバノン南部撤退などを停戦条件とする米国に対し、武力でレバノン政府を上回るとされるヒズボラは無条件即時停戦を要求している。レバノン政府も国内の対イスラエル世論の悪化に配慮せざるを得ない状況に追い込まれている。

 イスラエルはヒズボラをレバノン南部から駆逐することなしに停戦に応じた場合、ヒズボラと背後に控えるシリア、イラン両国が影響力を増し、自国の安全保障を保てなくなると主張している。米英首脳がイスラエルの立場を支持、国連や欧州・アラブ諸国の即時停戦要求には応じないままで国際部隊の早期派遣を求めたことから、イスラエルは国際部隊派遣には合意しながらもヒズボラへの攻撃を継続するとみられる。


【イスラエル軍がレバノン南部の村、カナ(Qana)を空爆、市民が大殺傷される】

 7.30日、イスラエル軍は、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラのロケット発射基地と見られるレバノン南部の村カナ(Qana)の民間人居住区を空爆し、多くの子どもを含む少なくとも60人以上が死亡した。イスラエル軍とイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ(Hezbollah)」の戦闘が開始されて以来、最大規模の被害となった。この攻撃でレバノンの死者数は500人を超えた。イスラエルは、1996.4月にもカナの暫定軍基地攻撃で、市民百人余を殺しており「カナの惨劇」の再来となった。

 イスラエル軍は、「ヒズボラのロケット弾攻撃拠点を攻撃した。あの建物が標的ではなかった」と述べ、誤爆事件であったと釈明した。しかし、意図的故意な「カナの惨劇の再来」の可能性が強い。数日前の国連レバノン暫定軍施設についても過去何回か標的にしている。イスラエル軍は更に、「市民に紛れ込んだヒズボラに責任がある」と述べ、責任をヒズボラに押し付けた。

 レバノンの首都ベイルートでは市民多数が国連関係の施設に押しかけるなど、同市内には今、惨劇を起こしたイスラエルへの怒りと、惨劇を防げなかった国際社会への絶望とが複雑に渦巻いている。子どもを含むカナ市民約60人が誤爆で犠牲となったことに対し、ベイルート市民たちは30日、「国連の無力さが露呈された」などとして、市内の同施設に詰めかけ、警備の警官隊を押しのけて国連事務所のカラスなどを割って、国連と米国の旗を燃やすなど絶望感と怒りを表した。抗議した市民の1人、トニ・マクリニさんは「イスラエルのしたことはテロ以外の何物でもない。国連はそれを止められなかった。レバノンがどうなってもいいと思っているのだ」と怒りをぶつけた。

 イスラエル軍の攻撃が激しさを加えるのに伴い、レバノン国民の間にはヒズボラを支持する声がさらに高まっている。最近発表された世論調査の結果によると、同国民の87%が「イスラエルのレバノン侵略に立ち向かう抵抗勢力の戦いを支持する」と回答した。ヒズボラに関する著作を持つ作家、アマル・サード・ゴレイブ氏は「彼らは米国製の爆弾を使って、意図的に市民を標的にした爆撃を行った。その結果、レバノン国民がより過激になるのは確実だ」との見方を示している。

 レバノン政府は、イスラエルによるカナへの攻撃を重く見て、コンドリーザ・ライス米国務長官に対し、同日のレバノン訪問を延期するよう要請した。同長官もシニオラ首相に電話し、訪問を延期するとともに、30日はイスラレルに残って、戦闘の中止を働きかける方針を伝えた。ただ、同長官は31日に米国に向け帰国の途に着き、国連での戦闘即時中止決議の採択に向けた作業に入る方針だ。


【安保理、イスラエルの攻撃に「遺憾の意」示す議長声明を採択】
 7.30日、国連安全保障理事会が緊急会合を招集し、イスラエルによるレバノン領内への攻撃で、一般市民に多数の死傷者が出たことを受け、「強い衝撃と悲しみ」との遺憾の意を表明する議長声明を全会一致で採択した。ただ、非難決議は米国の反対で見送られた。文言には「安全保障理事会は人道的見地から暴力のさらなる拡大に懸念を表明して、すみやかな暴力の終結と永続的な停戦の確保を強く求める」としている。ただ、「即時停戦を求める」との一文は、詰めの協議で除かれた。

 安保理が協議入りする一方、アナン事務総長は記者会見で、これまで即時停戦要求とイスラエル非難を求めていたが、安保理が有効な対応をとれなかったために被害が拡大しているとして失望感を表明していた。

 一方、イスラエルのギレルマン国連大使は安保理会議に先立ち、一般人の大量死傷については謝罪したものの、「この恐ろしく悲劇的な事件の犠牲者は、イスラエルの兵器によって死んだかもしれないが、実はヒズボラの犠牲者だ。ヒズボラがいなければ、決して起こらなかった事態だ」として、停戦前のヒズボラの武装解除を求める従来の主張を繰り返した。

【米国が、イスラエルのカナ空爆に変調哀悼声明】
 米政府は、イスラエル軍のカナ空爆について哀悼の意を表明するとともに、戦争に関係のない人たちのさらなる人命の損失は恒久的な停戦によってのみ防止できると述べた。スノー米大統領報道官は同日、「これはおぞましい出来事だ。われわれは自制の重要性について引き続きイスラエルに忠告していく」としたあと、「われわれは絶えず、戦争に無関係な人の人命損失を懸念している」と語った。スノー報道官はさらに、「われわれはカナの出来事に悲しみを感じるだけでなく、そうした事態に至った条件を取り除くことが極めて重要であるという決意の必要性も感じる」と指摘。その上で「同様の悲劇は、武装集団のヒズボラが中立化されて初めて防止できるとのブッシュ大統領の見解を改めて表明した。同報道官はまた、「われわれはレバノンのシニオラ首相が自国領土全体を実効支配下に置くよう望んでいる」と付け加えた。

【哀悼と非難相次ぐ】
 7.31日、欧州連合のソラナ理事会事務局長は、ブリュッセルで声明を出し、今回の誤爆を正当化できるものは何もないとした上で、シニオラ首相に「深い哀悼の意」を伝えたと明らかにした。

 フランスの大統領府も、「シラク大統領は無実の人々、それも子どもや女性たちを犠牲にした暴力行為に心を強く痛めている。即時停戦を行うべきだ」とする声明を発表した。

 国連当局者は、安全保障理事会が30日に緊急理事会を招集すると言明した。

 英国のベケット外相も、「恐ろしいことが起きた。イスラエルに対して適切に行動するよう要請した」と述べた。

 アラブ諸国からもイスラエル非難が相次ぎ、シリアのアサド大統領は、今回の誤爆を「国家的テロ」と厳しく非難した。アサド大統領はさらに、「カナ虐殺はイスラエルによる侵略の残虐性を表したもの。イスラエルは世界の耳目の前で国家テロを行った」と指摘した。

 これまでイスラム教シーア派組織ヒズボラをまず非難してきたヨルダンのアブドラ国王も、「イスラエルは国際法を破ってレバノンに侵攻、その上でカナで虐殺を行った。国際法違反葉明らか」と激しく非難するとともに、イスラエルなどに即時停戦に応じるよう求めた。

 エジプトのムバラク大統領は、今回の虐殺を「イスラエルによる無責任極まりない行為」と断じた。

【米国シアトルのユダヤ人連盟施設で死傷事件発生】
 7.31日、西海岸にある米ワシントン州シアトルで、パキスタン系米国人も男がユダヤ人連盟施設に侵入し、一人を殺害、5人を負傷させる事件が起きた。レバノン情勢が緊迫化している中での事件だけに、地元シアトルでは、今後同種の事件が起きる恐れもあるとして、ユダヤ教会堂周辺での警戒を強化している。

 米メディアによると、男はナビード・アフザル・ハク容疑者(30)。7月28日午後3時すぎ、シアトルの「大シアトル・ユダヤ人連盟」の建物に入り、「私は、イスラム教徒の米国人だ。イスラエルに腹を立てている」などと、口走り銃を乱射した。58歳の女性職員一人が死亡し、5人が負傷した。ハク容疑者は、警官隊が駆けつけると投降し逮捕された。狙われた「大シアトル・ユダヤ人連盟」は、地域のユダヤ人の支援を行っている組織。イスラエル軍とイスラム教シーア派過激組織ヒズボラとの戦闘をめぐって、7月23日には、イスラエル支援のデモを主催している。


【イスラエル、レバノン南部空爆を48時間停止声明】
 7.31日、イスラエルのオルメルト首相は、30日夜(日本時間31日未明)、レバノン南部カナでイスラエル軍が民間の建物を爆撃し、子供37人を含む計54人を死なせた事件を調査するため、空爆を48時間停止する方針を決め、米政府に伝達した。

【イスラエル軍が、レバノン南部空爆48時間停止声明違反】
 7.31日、イスラエルはレバノン南部のカナで30日に起きた民間人に対する爆撃事件を受け、同日夜からレバノン南部で48時間の空爆停止措置を取るとしていたが、イスラエル軍が、レバノン南部のティール北方で走行中の自動車に空爆を加え、同国の兵士1人が死亡した。イスラエル軍スポークスマンによると、同軍は車にイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの幹部が乗っているとの情報を得て、緊急性があると判断し、攻撃に踏み切った。ただ、実際に乗車していたのはレバノンの当局者や兵士で、同軍は遺憾の意を示した。一方、イスラエル軍はレバノン南部の村タイベ付近でも空爆を行った。軍はこれについて「南部で作戦を展開中の地上部隊がヒズボラの攻撃の脅威にさらされたので、防衛のため攻撃した」と説明、正当性を強調した。

【「イスラエルの暴挙停止へ世界の市民が行動を」天木・元レバノン大使とダーヘル・レバノン大教授(日刊ベリタ)】
 スラエル軍の攻撃によって多くのレバノン国民の血が流され続けているにもかかわらず、国際社会はなす術を知らぬかのようである。この悲劇を食い止めるために、私たちは何もできないのだろうか。

 7.31日、天木直人・元駐レバノン大使とマスード・ダーヘル・レバノン大学教授は、東京の反差別国際行動(IMADR)国際事務局で緊急記者会見を開き、「イスラエルの暴挙と平和への挑戦を止める唯一の手段は、世界の市民が『こんなことが許されていていいのか』と抗議の声を上げて国際世論を動かすことだ」と訴えた。

【イスラエル軍が空爆再開、ヒズボラはロケット弾300発以上による最大の攻撃】
 8.2日、イスラエルは2日から3日にかけて、レバノンの首都ベイルートの破壊された郊外地区への空爆を再開、さらにシリアとの北部国境、東部のベカー峡谷も空爆した。一方、前日、ヒズボラはイスラエル領に対して数百発のロケット弾を撃ち込む今次戦役で最大の攻撃を加えた。この空爆はレバノンの首都南郊に対する攻撃としては1週間ぶり。イスラエル軍のジェット機は2日から3日にかけて、シリアとの北部国境で道路や橋を爆撃した。これは過去24時間で2回目の攻撃で、同地区から北のトリポリ港を結ぶ橋が破壊された。ベイルートから南東約75キロのベカー峡谷では、目撃者によると、イスラエルのジェット機が夜間、道路に対して2発のミサイルを放った。イスラエル軍はレバノン南部に兵力約1万人を投入して、ヒズボラ戦闘要員と戦っている。

 8.2日、ヒズボラは、イスラエルの町アフラに対して300発以上のロケット弾を撃ち込んだ。同町はこれまでで最もイスラエルの国境から離れた標的である。


【レバノン南部での衝突でイスラエル兵20名が死傷】

 8.1日、レバノン南部の国境で起きた、シーア派組織・ヒズボッラーとイスラエルの衝突で、少なくともイスラエル兵20名が死傷した。シオニスト政権・イスラエル軍は、数十台の戦車や兵員輸送車とともに、一部基地からの撤退を余儀なくされている。イスラエル軍はさらに、レバノン南部・ホウラーでの戦闘で、兵士数名が死傷したことを認めている。


【ヒラリー・クリントン米上院議員、一転してラムズフェルド国防長官に辞任要求】
 8.3日、2008年の有力な大統領候補と見られている米民主党のヒラリー・クリントン上院議員は、AP通信とのインタビューの中で、イラク政策の失政を理由に、ラムズフェルド国防長官に辞任を求めた。同議員は「なぜ、(ブッシュ大統領は)手遅れにならないうちに状況を好転させる手を打たないのか。大統領はラムズフェルド長官の辞任という選択肢を受け入れるべきだ」とし、さらに「すでに長官は議会からも国民からも信頼を失っている。長官が退いて、国内外に新たな戦略を打ち出すことができる後任を選ぶ時期に来ている」と厳しく批判した。

  同議員はこれまで、2002年の開戦決議や今年のイラク米軍撤退期限を設定する法案に反対するなどブッシュ政権のイラク政策を支持する姿勢を示してきたことで、党内から非難を受けていた。このインタビューの数時間前には、ヒラリー議員は上院軍事委員会の公聴会に出席し、ブッシュ政権のイラク政策を「失策」と断じ、ラムズフェルド長官に対し、「あなたの主導のもと、誤った判断で我が国は被害を被った。現地では、強い抵抗や宗派・民族間対立が起きている」と痛烈に批判したが、これに対し、同長官は、批判は誤りだとして失政を否定した。また、国防総省の報道官は、同議員の批判について、「我々は政治についての話はしない」と述べるにとどめた。

【イスラエルとロンドンで反戦デモ、兵士を家に帰せ!(グッシュ・シャローム)】

 8.5日、イスラエルのテルアビブ中心部(特に保守的と思われている地域)の中心で、反戦デモが開かれた。全国各地から1万人近くのデモ参加者が(その中には多くのアラブ人も)、ベンジィオン大通りから、キング・ジョージ通りに沿って、マーゲン・ダビッド・スクエア(ダビデの星広場)まで、行進した。デモ参加者はヘブライ語で、「ユダヤ人とアラブ人は / 敵ではないぞ!」、- 「我々は、死にもしないし、殺しもしない / アメリカのために!」、 「有効な/流行のベイルートとハイファへの子供たち貧困!」、 「ペレ、ペレ、辞任しろ / 平和はもっと重要だ!」、 「100万の難民 / それは戦争犯罪だ!」、 「オルメルト、ペレ、それにレーモン / レバノンから出て失せろ!」、「兵士を家に帰せ」、「我々みんなが負けるんだ!」、 「占領も戦争も、災厄だ!」、 「ただ平和=安全だ!」、 「39年で十分だ - 占領を止めろ!」、 「軍事での解決策はない!」、 「ただちに停戦!」、 「戦争を止めろ!虐殺を止めろ!」と口々に叫んだ。

 ロンドンでも、10万人をこえる抗議者が抗議集会を開いた。抗議者は英国全土津々浦々からはせ参じた。何百という全国組織と地方組織がやってきた:労働組合からも、イスラム教協会と寺院からも、レバノン人の共同体からも、またCNDや何十という地方平和団体からも、緑の党やリスペクト統一党、戦争反対の労働党組織やその他多くの政治組織からも。


【米仏が安保理決議案を提示】
 8.5日、米仏が安保理決議案を提示。

【シリア外相が「地域戦争の用意できてる」】
 8.6日、シリアのムアレム外相は、レバノンのラフード大統領、サルーフ外相と会談した後、シリアには地域戦争の用意ができていると述べるとともに、レバノンでの暴力行為の停止を求める国連決議案を、さらなる紛争のための処方せんにすぎないと非難した。同外相はさらに、「もしイスラエルが地上からにしろ、空からにしろ、いかなる手段ででもシリアを攻撃すれば、直ちに反撃するよう、わが指導部が国軍に命じてある」と語った。外相は「国連決議案は(イスラエルとヒズボラの)戦争継続のための処方せんであり、さらにイスラエル以外に誰も関心を持たない(レバノンにおける)内戦のための処方せんでもある」と指摘。その上で「イスラエルが係争地シェバ農場を含めレバノンから撤退し、公平な捕虜交換を仲介し、国境の両側に緩衝地帯を設けることに同意した場合にのみ、停戦は達成されよう」と述べた。ムアレム外相はこの日、レバノン北部の都市トリポリに陸路到着した。同外相は7日にベイルートで開かれるレバノンに関するアラブ外相会議に出席する予定。

【イスラエル軍のレバノン駐留司令官が解任される
 レバノンでの地上戦における度重なる失敗から、レバノン駐留のイスラエル軍司令官が解任された。

 8.9日、イスラエルが、レバノン侵攻拡大を決定。

【イスラエル軍の攻勢とヒズボラの反撃続く】

 8.9日、イスラエル軍戦闘機によるベイルート南部の郊外、レバノン東部にあるパレスチナ難民キャンプ、エイノルハルワの空爆で多数の市民が殺傷された。ヒズボラは、イスラエル軍の基地31カ所に350発のミサイルを発射して反撃した。イスラエル軍のミサイルが地中海に面する港湾都市、シドンの南東にあるシーア派の町、ガジイヤで葬列のそばに落下、パニックに陥った1500人の葬列参加者の一部が逃げ惑った。目撃者と救急関係者によると、1人が死亡、4人が負傷した。

 ダベル村のそばで激戦が続いている。

 8.10日、イスラエル軍部隊がレバノン南部の町マルジャユンに侵攻、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラと激戦を展開した後、同町を制圧したと報じた。ベカー高原南部で最も大きいマルジャユンは、イスラエルとの国境から約8キロ北に位置し、リタニ川からも近いことから戦略的要衝とされている。イスラエル軍はマルジュユン周辺を国境から20キロ圏のリタニ川まで戦線を拡大する際の要衝とする方針とのこと。

 イスラエル軍は現在、兵士約1万人規模の兵力を今回の作戦に動員、レバノン南部地域侵攻を進めている。

 8.12日、イスラエル軍とヒズボラ戦士の衝突により、イスラエル兵30名が死亡、100名が負傷した他、戦車40台及びヘリコプター1機が破壊された。ヒズボラは、エイトッシャアブで奇襲攻撃を仕掛け、この中で、イスラエル兵25名が死傷した。ヒズボラーのナスロッラー事務局長は、イスラエルの侵略が続く限り、抵抗を続けると強調した。

 8.13日、レバノン・ヒズボラが、レバノン南部・ヒヤームでの衝突で、イスラエル軍の戦車10台を破壊したことを明らかにした。ヒズボラーの抵抗により、イスラエル軍は、ヒヤーム地域での撤退を余儀なくされている。


【停戦の動き】
 8.12日、イスラエル軍がレバノン侵攻拡大。ヒズボラ指導者のナスララ師が、決議受諾方針を表明。レバノン政府が決議受諾を閣議決定。アナン国連事務総長が、8.14日の停戦発効を発表。

【イスラエルも国連決議受諾、日本時間14日午後2時発効へ】
 8.13日、イスラエル政府が、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとの戦闘の全面停止を求めた国連安全保障理事会の停戦決議の受諾決議受諾を閣議決定。日本時間14日午後2時発効となった。ヒズボラも決議順守の用意を表明しており、これで全当事者が受諾。国連のアナン事務総長は同日、両国首相から同意を取り付けたとして、戦闘停止がグリニッジ標準時14日午前5時(日本時間同日午後2時)に発効するとの声明を発表した。実現すれば、7月12日以来、1カ月にわたり双方で1100人以上が死亡した戦闘が当面停止することになる。ただ、イスラエル軍は12日から3万人規模の部隊で侵攻拡大作戦を開始しており、実際に戦闘が停止するかどうか流動的な面もある。レバノン南部では13日も、双方がより有利な戦況で戦闘停止を迎えようと激戦を展開した。

【イスラエル撤退訴え 米で数万人規模集会】
 8.13日、ワシントンのホワイトハウス前で集会が開かれ、全米各地のアラブ系住民らがバスを連ねるなどして参加した。参加者は数万人規模に膨れあがった。集会では、反戦団体やアラブ系の市民団体の代表が「イスラエルはレバノンで罪のない人々を殺害している」と激しく非難し、イスラエルは直ちに撤退すべきだと訴えた。また、非難の矛先はイスラエルの自衛権を一貫して擁護しているアメリカ政府にも向けられ、参加者は、ブッシュ政権はイスラエル寄りの姿勢を改めるべきだと主張した。

【レバノン停戦が発効】
 8.14日、レバノン停戦が発効した。

【ヒズボラが勝利宣言、武装解除反対を表明する】
 レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師は、イスラエルとの停戦発効後初めてテレビで演説し、対イスラエル戦での勝利を宣言する一方、現時点での武装解除に反対する考えを表明した。ナスララ師は、次のように述べた。
 概要「我々は戦略的、歴史的勝利を前にしている。我々の敵(イスラエル)は敗者だ。(レバノン政府などが停戦受諾を機にヒズボラの武装解除について協議しようとしていることについて)精神的にも、道徳的にも(協議の)時期を誤っている」。

 先に国連安保理で採択された停戦決議は「レバノン政府の同意無しにいかなる武器も存在せず、同政府以外のいかなる権威も認めない」ことを明記しヒズボラに武装解除を迫っている。安保理決議はまた、既存の国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を増強し、レバノン政府軍とともにヒズボラの拠点であるレバノン南部へ展開することを定めている。これに対しナスララ師は「レバノン軍や国際部隊(UNIFIL)にレバノンを守ることはできない」と述べ、ヒズボラの存在意義を誇示した。

【シリア大統領がヒズボラを称揚する演説】
 8.14日、シリアのバシャール・アル=アサド大統領は、ダマスカスで開かれたアラブ・ジャーナリスト協会の会合で演説し、次のように述べた。
 概要「レバノンのヒズボラが5週間近くもイスラエルの進撃を防いだ。イスラエルが中東地域で『対テロリスト政策』を追求する前に、イスラエルによく考えさせるように強いた。我々が強くなければ、世界は我々の利益を考慮しない。抵抗は、あらゆる局面で、我々の権利を回復するための選択肢である。世界は、イスラエルが傷つけられ、我々が強力にならなければ動こうとしないだろう。平和と抵抗は相互に排除し合うものではない。アラブはこれまで、平和のための戦略的選択を誤ってきた。平和とは一つの戦略的選択肢だが、それは我々が抵抗の原理を放棄するべきであるということを意味しない。抵抗は戦争ではなく平和の達成を目的とする為のものである。レバノンの反シリア勢力がヒズボラの武装解除を求めることによって、戦禍を受けた国家に分裂のたねを蒔(ま)こうとしている。平和には、イスラエルが占領地域を元々の所有者に返還し、その権利を回復することを含む。イスラエルは侵略と覇権の基盤の上に立つ敵である。彼らの和平プロセスは失敗した。それはそもそもの初めから失敗している。はっきりしているのは、現在の(米国)政権下にあっては過去6年間、平和が存在せず、予見できる将来にもないということだ。米国の新中東建設という野望はイスラエルとの戦いでのヒズボラの成功によって粉砕された幻にすぎない」。

【ヒズボラの対戦車ミサイルがイスラエル軍のメルカバV、W戦車を破壊し続けた】
 第6次中東戦争で、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの対戦車ミサイルがイスラエル軍を苦しめたことが判明した。イスラエルのメルカバV、W戦車は世界有数の頑強な装甲と防御システムを持つとの評判を取っているが、1ヶ月かかってもリタニ川まで到達できず、その間100台を超えるメルカバ戦車が破壊された。ミサイルは、戦車の装甲を突き破り、大きな損害を与えた。ヒズボラがよく訓練されており、戦車の非常に近距離からミサイルを発射するなど、その抵抗のレベルの高さを示した。

 ヒズボラの対戦車ミサイルの多くは、ロシア製もしくはイランで製造されたロシアモデルで、最も強力なミサイルはメティスMとコルネット。両ミサイルはロシアによって製造され、1990年代にシリアに引き渡された。近代戦車の装甲を貫通させることを主眼に設計された、強力な破壊力を持つミサイルだという。ヒズボラはまた、イランで製造されたロシアの最新型のマリュートカ・ミサイルやロシア製のファゴット・ミサイルも入手している。これらの対戦車ミサイルは1メートルもの厚さの装甲を貫通し、1・5−5キロの射程距離を有するという。




(私論.私見)