天才児子育て共通考

 更新日/2023(平成31.5.1栄和改元/栄和5)年.7.8日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、「天才児子育て共通考」をものしておく。

 2022年.9.22日 れんだいこ拝


【天才児子育て共通考その1】
 2021.12.26日、週刊現代12月11・18日号大谷翔平、羽生結弦…天才アスリートの親たちが、子育てで「絶対やらなかった」意外なこと」。
 子育てほど難しいことはない。親のちょっとした選択によって、子供の将来が大きく変わる可能性があるからだ。世界で活躍するあのスター選手の家庭は、いったいどんなふうに育てていたのだろうか。
 夫婦喧嘩をしない
 投げて9勝、打って46本塁打。メジャーリーグを震撼させた大谷翔平(27歳)に限らず、'19年の全英オープンで優勝を果たした渋野日向子(23歳)や、フィギュアスケートの「絶対王者」羽生結弦(27歳)など、近年、世界のトップレベルで活躍する日本人アスリートが増えている。

 ここぞという大舞台で本領を発揮できる彼らのメンタリティは、いかにして育まれたのか。大谷ら多くの「超一流選手」の親を取材し、書籍『天才を作る親たちのルール』を著したスポーツライターの吉井妙子氏は、「両親たちの姿勢には共通点がある」と語る。「それは、頭ごなしに怒らないこと、そして子供の考えを否定しないことでした。『なぜできないのか』『お前はダメだ』と言われた瞬間、子供は強烈なコンプレックスを植え付けられてしまう。その二つを『しない』ことが、子供たちの個性を大きく育てているのです」。

 〈(昔の親は)何をしてやろうかと考えた。けれどいまの親の愛情は『何をしないか』を考えなければならない〉。'07年に亡くなった教育心理学者・河合隼雄氏は、著書の中で、いみじくもこう書き残している。良い学校に合格するために塾に通わせる。音楽の素養を身につけるためにピアノを習わせる--。子育ては「足し算」の発想になりがちだ。だが、「超一流」を育てた両親たちの振る舞いをつぶさに見ていくと、吉井氏が言うように、「何をするか」ではなく「何をしないか」に深く注意を払っていることがわかる。そもそも、「やりたいことを楽しくやらせる」がモットーだった大谷の父・徹さんは、息子に「野球の練習をしろ」と注意することは一切なかった。楽しく野球をやらせる---。それは、朝から晩まで父とバッティングセンターにこもっていたイチローのような、一昔前のプロ野球選手の成功譚とは一線を画する意識だ。


 〈160kmを投げる〉〈メジャーに行く〉 大谷は、幼い頃から大それた目標を、臆することなく口にしてきた。この背景にも、「子供が思ったことを大人の顔色を窺わずに言えるように」と願う両親の深慮がある。徹さんと母・加代子さんは、大谷が小さい頃に一つの誓いを立てた。それが、「子供の前で絶対に夫婦喧嘩をしないこと」だった。「親が喧嘩をすれば、居心地が悪くなり、顔色を窺うようになる。ご両親は家庭の雰囲気をいつも朗らかにして、子供たちが話したいことをなんでも話せる空気を作っていた。おかげで、大谷選手は反抗期もなく、中学2年生までお父さんとお風呂に入っていたそうです」(吉井氏)。練習の無理強いはせず、家庭は明るい雰囲気を保つ。

 これは、女子ゴルフの渋野の家も同じだった。渋野の父・悟さんは、かつて本誌の取材にこう答えている。「『練習行くか?』と聞いて、本人が気乗りしていない様子のときは、『じゃ、今日はやめとくか』と何もさせなかった。ケツを叩いて『練習に行け!』みたいに言ったことは、一度もありません」。ゴルフは、経験のある父親が子供のスイングの指導やコーチ選びにまで口を出すケースが多い。だが、渋野家の場合、悟さんはコーチの指導に一切介入しなかった。「指導者に習ったことと別のことを家で教えたら、子供はかならず混乱して、上達が遅くなってしまう。だから、子供が習ってきたことには一切口出しはしません」(悟さん)。ほかにも超一流になったアスリートたちの親には意外な共通点がたくさんある。その内容は
後編の「大谷翔平、藤井聡太、羽生結弦…天才の親たちの子育て、じつは「意外な共通点」があった…!」でお伝えする。
 週刊現代2021年12月11・18日号より。
 大谷翔平、渋野日向子、羽生結弦、錦織圭…前編の「天才アスリートの親たちに聞いた、子育てで「絶対にやらなかった」意外なこと」では、天才たちを育てた親たちが、その子育てで「やらかなかったこと」をお伝えしたが、そこには意外な共通点があった。天才を育てた親たちは何を意識して、子どもと接しきたのか---。引き続きお伝えする。
 好きなことを妨げない
 親は親、子供は子供という意識のもとで、子供たちの「やりたい」という意欲を重んじ、余計な口出しはしない。この原則を、さらに突き詰めたのが、史上初の10代四冠を達成した、将棋の藤井聡太(19歳)の家庭だ。藤井の父・正史さんと母・裕子さんは、息子がなにかに集中しているときは絶対に止めないように心がけていた。普通であれば、「ご飯の時間だよ」「お風呂に入りなさい」などと、生活のリズムにあわせて中断させたくなるところだ。だが、藤井の両親は本人のなかで区切りがつくまで声をかけなかった。
 そんな藤井が将棋と出会ったのは、5歳のとき。祖母が駒に動かし方が書いてある「スタディ将棋」を買ってきたところ、寝食を惜しんで熱中した。中学校に上がると、藤井が熱中したのは英語や数学などの「主要教科」ではなく、地理だった。「藤井さんは、他科目はそっちのけで山や川の名前ばかり熱心に覚えていたそうです。でも、ご両親は『もっと英語を勉強しなさい』とか『数学をやりなさい』ということは言わなかった」(藤井家を取材した将棋ライター)。こうした「好きなことを妨げない」姿勢は、藤井の将棋に対する人並み外れた探究心と集中力を養うことにつながった。ちなみに、負けて泣くのを止めなかったというユニークな逸話もある。「床にひっくり返るほどの泣き虫だった藤井さんを、お母さんは気が済むまで泣かせたそうです。そのうち冷静になり、自分の頭で考え始める」(将棋ライター)。
 期待はしすぎない
 たとえ、世間的に正しいとされている「常識的な育て方」であっても、自分の子供に適しているかどうかを冷静に見極め、合わないことは取り入れないというのも特徴だ。五輪の体操で個人総合2連覇を含む7つのメダルを獲得した内村航平(32歳)の場合、両親は偏食を止めなかった。内村が強烈な「偏食家」であることはよく知られている。大好物はチョコレート菓子のブラックサンダー。食事は一日1食で、600gの肉をペロリと平らげる。ほとんどの野菜は嫌いだ。誰から見ても心配になる食生活だが、母・周子さんは、息子の好き嫌いに干渉しなかった。「内村選手は幼少時からアトピーがひどく、周子さんは『生きてさえいてくれればそれで十分』という心構えでいたそうです。だから、元気にしているかぎり、食べ物の好き嫌いを叱らなかった。本人も好きなときに好きなものを食べることで、気持ちが乗って練習に集中できたと語っています」(スポーツ紙記者)。
 内村家の子育てにおける、もうひとつ印象的な点が、子供に親の大きな期待をかけないことだ。周子さんと対談したことのある教育評論家の尾木直樹氏が語る。「周子ママは『期待のキという文字は、息子に嫌われるのキと同じだ』と言っていました。期待するから、望んだような結果が出ないと『裏切られた』と怒ってしまう。でも、勝手に期待された子供からしたら、たまったものではありません」。東京五輪の水泳個人メドレーで2冠を達成した大橋悠依(26歳)も、期待という重圧をかけない両親のもとで育った。「水泳は、たまたま娘が選んだから応援するけれど、『やめたくなったら仕方ない』というスタンスだった。大学2年のとき、大橋が極度の貧血に陥り『水泳をやめるかもしれない』と相談したときも、ご両親はあっさりと『じゃあ、実家に戻ってくる?』と答えた。『もったいない』というプレッシャーは、一切かけなかったそうです」(スポーツライターの折山淑美氏)。子供がやめたいと言い出したら反対しないのは、超一流を育てた両親たちの大きな特徴だ。
 日本人初の全米オープン決勝進出者・錦織圭(31歳)は、島根県のごく普通の家庭に生まれた。だが、父・清志さんは、2歳で水泳、3歳でピアノ、5歳でサッカーとテニス、小学1年生で野球と、息子が「やりたい」と言えば何でもやらせた。大体は長続きしないのだが、錦織が「やめたい」と言い出したら、叱らずスパッとやめさせた。そのなかで、唯一熱心に続けたのがテニスだった。才能の芽が出て、中学生にして奨学金でアメリカに留学する権利を手にする。義務教育の半ばで海外に留学するのは、その後の進学などに支障をきたす恐れがある。だが、清志さんは迷わなかった。「当時、お父さんは『挫折して中卒になったって、生きていく道はいくらでもある』と語っていました。もし親御さんが『絶対テニスで成功できなければダメだ』というプレッシャーをかけていたら、錦織があそこまで才能を開花できたかわかりません」(テニス協会関係者)。
 前出の尾木氏が、「とても素敵な親御さん」として名前を挙げるのが、冬季五輪で2大会連続となるフィギュアスケート金メダルを獲得した羽生結弦の父・秀利さんだ。「以前、一度だけお会いする機会があったのですが、優しく謙虚で、教育が専門の私に対しても、『息子をこうやって育てた』といった話は何もおっしゃらなかった。お母さんも同様で、メディアに出られたことがない。頑張っているのはあくまで『ゆづ』(羽生の愛称)であり、自分たちは表舞台に出ないという意識がおありなのでしょう」。実際、羽生の両親は取材を一切受けず、羽生自身も家庭環境を語ったことはない。ただ、尾木氏は「ご両親は、息子を他の子供と比べないよう育てたのではないか」と推測する。「羽生選手は誰かに勝つとか、倒すという言葉は口にしません。彼にあるのは、『4回転アクセルを完璧に成功させる』というような自分との闘いだけ。他人を意識せず、自分自身の心技体の向上に集中することができた家庭環境のおかげではないでしょうか」。
 誰よりも信じてあげる
 プロテニス選手の杉山愛の母で、多くの両親への聞き取り調査も行ってきた一般社団法人・次世代SMILE協会代表理事の杉山芙沙子氏が言う。「大人だって、同僚や知り合いと比較され、『誰それより劣っている』と言われたら、とても嫌な気持ちになります。それなのに子供のことはつい比べてしまう。『あの家の子はスポーツもできて成績も良くてうらやましい』などと言われたら、子供の自尊心は深く傷つきます。親は、自分の子の可能性を誰よりも信じる『最後の砦』でなければならない。これは多くの『超一流』の親たちに共通しています」。兄弟やチームメイトをライバル視することで、飛躍的な成長を遂げることもある。だが、その相手はあくまで子供自身が見定めるべきなのだ。「私が取材したご両親は皆一様に『子育てが楽しかった』と語っていました。結局、自分の理想を押し付けないで、成長の過程を一緒に楽しめる親御さんこそ、子供の才能を開花させる可能性を秘めているのだと思います」(スポーツライターの吉井妙子氏)。超一流を育てた親があえてやらなかったこと。そこから学べることは少なくない。

【天才児子育て共通考その2】
 2023.7.8日、週刊現代「大谷翔平と藤井聡太の母親が「一切使わない言葉」があった…! 「令和の天才」を育てた親たちの素顔とは」。
 片やメジャーリーグでMVPに選ばれた後も、さらに前人未踏の記録を更新し続ける。片や史上最年少で、誰も果たしたことのない金字塔を打ち立てようとしている―。いま、さまざまな舞台で日本人の若者が「異次元」と呼べる活躍を見せる光景が、日常となっています。その中でも代表的なのが、大谷翔平と藤井聡太。この2人の天才を育てたのはいったいどんな家庭だったのか―。そんな多くの人が気になる疑問を解消する、2023年上半期、現代ビジネスで反響の大きかったベスト記事を改めて振り返ります。
 令和を代表する2人の天才
 2022年にはベーブ・ルース以来104年ぶりの二桁勝利&二桁本塁打を達成し、現在開催中のWBCでも大活躍している大谷翔平(28歳)。史上最年少でプロ入りを果たし、そのまま公式戦最多連勝記録(29連勝)を樹立、そしていまや七冠を保持する藤井聡太竜王(20歳)。野球と将棋、ジャンルは全然違うが、令和を代表する「天才少年」といえば、この2人を思い浮かべる人は多いだろう。ともに7月生まれで次男坊(大谷にはお姉さんもいるが)。子供の頃から周囲に注目されてきたのに自分を見失うことなく、着々と実績を積み上げているところも似ている。実はこの2人には、おそらく本人たちも知らない共通点がある。「大谷選手のお母さんと藤井六冠のお母さんは、“感じ”がそっくりなんです」。そう主張するのは、大谷加代子さん・藤井裕子さん両方に会った週刊現代のS記者だ。「天才」を育てる母親にはどんな共通点があるのだろうか? 以下はS記者による取材原稿である。
 ごく普通の一軒家
 2022年7月19日、藤井聡太五冠の20歳の誕生日に、彼と女優の芦田愛菜が対談したサントリーのウェブ動画『伊右衛門 新成人茶会』が公開されるや、たちまちSNSには「お似合い」という感想が溢れた。中には「結婚してほしい」という書き込みも。そんな世間の声に対し、藤井のご両親は何を思うのか? そんな記事「藤井聡太と芦田愛菜に「未来の結婚」はありえるか」を作成するため、私は昨年7月末、愛知県瀬戸市の自宅を訪れた。住宅街のなかにある、特に目立つわけでもないごく普通の一軒家だ。ラフなTシャツ姿の裕子さんは、玄関先に立つ記者の存在に気づくと目を見開き、驚いた表情を見せた。前人未踏の29連勝を始め、藤井六冠は、たびたび新聞ダネになってきた。こうした突然の訪問に対して、家族が不快感を示してもおかしくない。「取材は連盟を通してください」。それだけ言い残してその場を立ち去ることもできただろう。むしろそれが普通の対応であり、こうした直撃取材では無視されることも少なくない。しかし、裕子さんは記者の問いかけににこやかに耳を傾けてくれた。
「伊右衛門 新成人茶会」の動画を見ました。素敵な対談ですね。
「(笑みを浮かべて)そうなんですか。あまり見ないようにしているので何とも言えないですけど」。
理想のカップルだ。こうした声が挙がっています。
「いろいろ思ってくださるのは、あの、自由ですので」。
お母様としてはどんなパートナーを望みますか。
「(苦笑いで)いえ、そういうことは話さないようにと言われていますので……」。

 穏やかな表情で「評判がいいならそれはよかったです」と喜ぶ。だが芦田の印象を尋ねると、茶目っ気のある表情で「答えると記事になってしまいますでしょう?」とかわし、「わざわざ来ていただいたのにすみません」と丁寧に返事をして、家の中に戻っていった。
 大谷選手のお母さんも……
 取材を終えた瞬間、私はその約1年前に同じような経験をしたことを思い出した。大谷翔平の母、加代子さんを直撃したときのことだ。2021年9月、記者は岩手県奥州市にある大谷の実家を訪れていた。大谷選手だけでなく、菊池雄星投手もメジャーで活躍、プロ3年目で一軍登板を果たした佐々木朗希選手の動向も注目されていた。なぜ岩手からスケールの大きい選手が相次いで誕生するのか? そんなテーマで取材を行うためだった。藤井宅同様にのんびりとした雰囲気の住宅街にある、目立つわけでもないが手入れの行き届いた一軒家。Tシャツにハーフパンツ姿の加代子さんは、洗濯物を干すためにウッドデッキに現れた。

 路上から声をかけた記者に対して、加代子さんはジェスチャー交じりで「取材はすべてお断りしています」と伝えながらも、こちらが大谷選手の活躍を称えると、とても嬉しそうな表情を見せた。
――なぜ岩手県が大谷翔平選手を生んだのだと思いますか?「さぁ、なんででしょうね。わかりません」。記事になりそうな余計なことは一切話さないが、自宅に引っこむ時には、藤井裕子さんと同じように、「遠いところご苦労様です」とこちらを気遣ってくれた。
 否定の言葉を一切使わない
 2人に共通していたのは、「やめてください」といった否定や非難の言葉を一切使わなかったことだった。とはいえ、こちらにヒントとなるような言質も与えない。理知的で穏やかで、取材に応じてくれていないのにどこか憎めない雰囲気なのだ。こんなことを言うと編集部で叱られそうだが、「まぁ、取材はできなかったけど、仕方ないか。この親にしてこの子あり、だな」と妙に納得させられてしまった。丸め込まれてしまった、といっても良いかもしれない。スター選手を育てた親の中には癖が強く、とっつきにくいタイプも少なくない。しかし、大谷加代子さん・藤井裕子さん2人の「普通のお母さん」然とした佇まいからは、「頑張っているのはあくまで子供」という考えが滲み出ているようでもあった。将棋と野球。活躍の舞台こそ違うが、彼らは突出した才能を持つだけではなく、誠実でかわいげがあり、誰からも愛されている。そして、多くの人が彼らの姿に理想の息子像を見る。愛される天才はどう育つのか。その一面を垣間見た気がした。大谷加代子さん・藤井裕子さんの共通点はそれだけではない。実は2人の「子育て」にも、不思議と重なる点があるという。関連記事『大谷翔平の両親が、我が子の前で「絶対にやらなかった」意外なこと』では、両家を含め天才を育てる子育てについてより詳しく紹介する。
(私論.私見)







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