道路公団民営化考2




2003年12月23日(火)「しんぶん赤旗」

道路公団の民営化案について

日本共産党 佐々木政策委員長代理が談話


 日本共産党の佐々木憲昭政策委員長代理は二十二日、政府・与党の道路公団民営化案について、次の談話を発表しました。


 一、本日、政府・与党が合意した道路公団民営化案なるものは、あくまでも九千三百四十二キロの高速道路整備計画を大前提に、採算性も、必要性も無視したムダな高速道路建設を推進するための新たな体制づくりであり、そのために、巨額の国民負担・税金投入の仕掛けが持ち込まれる、およそ「改革」の名に値しないものである。

 一、この民営化によって、国民の新たな負担、税金の投入は、際限なく広がる危険性が大きくなる。国と地方の税金投入による「直轄高速道」方式は、年間六兆円にも膨れ上がった道路特定財源が湯水のように投入されるだろう。また、四十兆円にも及ぶ債務の返済も、具体的な根拠はなく、そのうえに新会社が新たな借金をして高速道路建設をすすめる仕組みがつくられることによって、将来、巨額の債務が国民に押しつけられる危険性もある。

 一、政府・与党は、藤井前総裁が明らかにした自民党大物政治家による不当な介入の疑惑さえふたをし、道路公団をめぐる政官財の癒着、ファミリー企業や天下りなど、やる気さえあれば、すぐにでもできる改革にも、まったく手をつけようとしていない。

 一、日本共産党は、(1)高速道路整備計画の廃止、新たな建設の凍結・見直し(2)債務の計画的な返済をすすめながら料金の引き下げと将来の無料化をすすめる(3)天下りの禁止、ファミリー企業の廃止をはじめ政官財の癒着にメスを入れるとともに、道路公団を、国民の管理・監視を徹底したスリム化した組織として再編する―という改革を提案しているが、こうしたほんとうの改革にむかって、さらに努力していく。


(12/22)菅氏「道路公団民営化案、新たな国民負担」
  

 民主党の菅直人代表は22日、都内でのパーティーで、政府・与党が決めた道路4公団民営化案について「国民にこれ以上負担をかけないという目的が根本から覆された。花は小泉(首相)、実は族議員という構造が全く変わっていない」と厳しく批判した。民営化会社が借入金で高速道を建設する仕組みの導入により、新たな国民負担が生じる可能性を指摘した。

 菅氏は同日、党本部で衆院選のマニフェスト(政権公約)で提唱した高速道無料化案を立案したコンサルタントの山崎養世氏と会談。「民営化推進委は首相にいいように使われた。小泉改革では根本から変えられない」との認識で一致した。

 共産党の佐々木憲昭政策委員長代理は談話で「あくまでも9342キロの高速道路整備計画を大前提に、採算性も必要性も無視した無駄な高速道路建設を推進するための新たな体制づくりだ。およそ改革の名に値しない」と断じた。

(12/22)民営化委・大宅氏は政府・与党の民営化策に一定の理解
  

 道路関係4公団民営化推進委員会の大宅映子委員は22日、政府・与党の道路公団民営化の基本的な枠組みの決定を受けて「驚くべき意見を出してきた自民党の調査会を考えてみれば、良い方に進展したと思う」と、政府・与党の取り組みに、一定の理解を示すコメントを発表した。大宅氏のコメントは以下の通り(原文通り)。

 22日以降委員会が開かれるとして、私の意見は以下の通りです。 21日付けの新聞各紙に少しずつ差があるようではありますが、私は基本的に進んでいると思います。

 いつも申しますように、100点満点というのは無理です。特にあのような驚くべき意見を出してきた自民党の調査会を考えてみれば、良い方に進展したと思います。

 3分割、一部凍結(具体路線も挙げて)、自主性確保 etc。100%ではないにしても拒否できて、その後は公開の審議会で妥当かどうか審議するのであれば、絶対的拒否権を持つより透明性があるかしれません。

 上下一体に関しては、私たちの民営委の役目は民営化までの枠組づくりであって、その後新会社が資産をどうするかは、彼らの判断であると思います。

 何人も(メディアも)、資産を持つべき云々はいえないのではないでしょうか。

 たびたびですが、メディアへのお願い。

 批判は大切ですが、アラさがしは建設的ではありませんし、メディアも国民です。最大多数の国民に少しでも良い方向に向かっているなら、まずそこを評価し、その上で、あと、こことここが不足ですね、という論調にしていただきたい。

 (100点でないから)このことをもって小泉改革が腰くだけなどと、自分たちの持っていきたい方向に無理矢理持っていくのだけはやめていただきたい。切にお願いします。

 歯止めがかからないとしたらどうしたらいいか考える。自分たちがしかと見張るから勝手にはさせないぞとか、ヒトごとではなく、一緒に前進できるような姿勢をもっていただきたいと思います。
政府・与党の道路4公団民営化枠組み、野党が一斉批判

 野党各党は22日、政府・与党の道路関係4公団民営化の枠組みについて、「改革とは名ばかりだ」などと一斉に批判した。

 民主党の菅代表は22日夜、都内での会合で、「税金を投入しないで、過去の借金を通行料金で返すと言っていた民営化の目的は、根本から覆された結果になっている」と指摘。そのうえで、「小泉首相が花を取り、(自民党道路)族が実を取るという構造は全く変わっていない」と述べ、首相の改革姿勢を批判した。

 民主党は先の衆院選の政権公約(マニフェスト)で、高速道路の原則無料化を打ち出しており、道路公団の廃止を主張している。25日に開かれる国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)で、同党議員が政府・与党案の問題点などをただす考えだ。

 また、共産党の佐々木憲昭政策委員長代理は「道路公団をめぐる政官財の癒着、ファミリー企業や天下りなどに全く手をつけようとしていない」と指摘。社民党の又市幹事長も「建設に固執する国土交通省や道路族に押し切られた折衷案だ」と断じた。

 (2003/12/23/00:14 読売新聞 無断転載禁止)


道路公団民営化:改革の裏側「猪瀬氏、いつから国交省顧問に」

 道路公団改革の政府最終案は、「作家と局長と総裁」による前代未聞の協議でまとめられた。

 19日夜、「道路4公団民営化推進委員会」の猪瀬直樹委員は、東京・西麻布の事務所に、国土交通省の佐藤信秋道路局長、近藤剛日本道路公団総裁を次々に呼び出した。

 猪瀬氏「これでは話にならない。もっと拒否権を担保できる仕組みにすべきだ」

 民営化された新会社に経営自主権、つまり不採算路線に対する建設拒否権をどの程度与えるか、が最後の争点だった。

 国交省の原案は、新会社と国の「協議権」だけを定めていた。

 「新会社になる公団からも要求して下さい」

 猪瀬氏は近藤総裁に共同戦線を呼びかけた。

 佐藤局長が持ち帰り、国交省と猪瀬事務所の間で書き込みを入れたファクスが何度も行き交った。文語の調整が終わったのは20日午前3時。

 6時間後、04年度予算の財務省原案が提出された臨時閣議の後、小泉純一郎首相は石原伸晃国土交通相からの報告を了承した。

 帰宅し、疲労困憊(こんぱい)して眠りに就いた猪瀬氏は、夕方目を覚ますと、記者の取材に力説した。

 「最後の積み上げにぎりぎりのせめぎ合いをやった。妥協なんて言われるけど、もともと(政府と民営化委は)対等じゃない。おれは労組、相手は経営者。満額回答取れるわけじゃないけど、それなりのものは取れた。民営化推進委委員を辞任したいなんて、不戦敗みたいなもんだよ」

 その民営化委のメンバーから「いつから国交省の顧問になったのか」(田中一昭委員長代理)と疎まれながら、官邸と族議員、民営化委と国交省の「パイプ役」を果たしてきた猪瀬氏。政治家でも役人でもない同氏がなぜここまで動かなければならなかったのか。

◆「首相指示」作家が演出

 道路公団改革をとりまとめる作家、猪瀬直樹氏の動きは、必ずしも小泉純一郎首相の指示を受けたものではなかった。

 猪瀬氏は頻繁に官邸を訪れるが、日程担当の飯島勲首相秘書官に1時間以上待たされたあげく、会うのはせいぜい5分程度、結局は断られることもしばしばあった。

 それでも、テレビカメラの前では「首相の意欲」について熱弁をふるい、「官邸広報官」の役割を演じ続けた。

 では、就任間もなくから「民営化」だけを叫び続ける小泉首相の真意はどこにあったのか。

 「総理はいつも『頑張ってくれ』なんだよな」(石原伸晃国土交通相)

 「総理は意思はあるんだけど、ワンフレーズポリティックス(一言政治)だから」(猪瀬氏)

 「指示なき改革」に世の関心をつなぎとめる演出家として、週刊誌にリポートを連載し、精力的に著作を出す猪瀬氏の存在は不可欠だった。

 会うのもままならない小泉首相に代わり、猪瀬氏の相手を務めたのは丹呉泰健首相秘書官(財務省)。一昨年、主計局と国交省、道路族の間を調整し、「日本道路公団へ年間3000億円の国費投入中止」という首相指示をおぜん立てした剛腕だが、黒衣に徹するため、「表は猪瀬、裏は丹呉」の分担ができた。

 猪瀬氏は18日、政府最終案作成を控えてひそかに小泉首相と会い、「基本的に尊重する」べき民営化委員会意見書の要点として、新会社の地域分割、経営自主権、料金引き下げなどを説明。同席した丹呉氏が、国交省など政府内に根回しした。

 翌日、猪瀬氏と道路局の直折衝が実現したのは、丹呉氏の下ごしらえが功を奏したからだ。

 小泉政権発足時、猪瀬氏が「応援団」として登場し、保有機構創設、地域分割、建設の一部凍結などを言い出した時は、道路族から「作家なんかに何が分かる」と罵声(ばせい)が飛び、官僚は「基礎知識がない」と酷評した。

 あれから2年半。「猪瀬氏の貢献が大きかった」(首相側近)と評価は様変わりしている。

 自民党総裁選など政局を見ながら、凍結論を出したり引っ込めたり、猪瀬氏の柔軟すぎる姿勢には批判も絶えない。だが、首相の真意が不明なまま迷走した「改革」は、さまざまな思惑の寄せ集めとして着地点を必要としていた。多くの関係者にとって、「改革」をまとめようと奔走する猪瀬氏は、いつの間にか貴重な存在に変わっていた。

 小泉首相は失速気味だった「改革」の成果を誇示し、族議員は9342キロ整備計画を守れる。国交省は大っぴらに高速道路の直轄建設へ進出し、財務省は6.5兆円ものコスト削減を約束させた。

 猪瀬氏を突き動かしたものは何か。一人のノンフィクション作家として、自著が発端となった改革を自らの手で何とか形にしてみたい、という意地と野心だったのか。

 「辞めたい人は辞めればいい」。抗議辞任を予告した民営化委の田中一昭委員長代理らに、首相側近は冷たかった。官邸と「族」と官僚のトライアングルに、猪瀬氏は唯一残った「民間代表」として大義名分を与える役回りにも見える。

 「猪瀬さんみたいに現実的にならなきゃ。100%思い通りになるなんてないんだから」

 官邸の政府高官は結末をこう総括した。【道路国家取材班】

[毎日新聞12月23日] ( 2003-12-23-03:03 )


道路公団民営化:すり替わった改革目的

 市場原理を働かせ、無駄な道路を造らないことを目的にした小泉純一郎首相の道路改革は、単なる建設コストの削減にすり替わってしまった。22日に決定した政府・与党の道路関係4公団の民営化案では、国の高速道路整備計画による全線建設の余地を残した。族議員との妥協の産物で、当初の民営化の理念が大きく後退した印象は否めない。民営化会社への国の関与など、三つの問題点を指摘した。

◆自賛

 「建設費を当初の20兆円から半減し、10.5兆円まで切り詰めた。国民負担をできるだけ少なくするという命題に答えた」――。石原伸晃国土交通相は22日の会見で、新規建設コストの削減を2.5兆円上乗せしたことを自画自賛した。

 道路関係4公団民営化推進委は、必要性の乏しい不採算の路線は建設をやめ、「40兆円の債務を確実に返済させることを優先すべきだ」と求めてきた。ところが「建設コストを大幅に下げれば、地方の路線でも収支や採算性の評価は高まる」(国交省幹部)と、改革の方向は、道路建設の是非よりもコスト削減の上乗せに変質していった。

 一時凍結される5区間の「抜本的見直し路線」も表明されたが、国交省幹部は「9342キロの旗は降ろさない。先送りしても、『立ち枯れ』にするつもりはない」と言い切る。

◆債務

 民営化委の最終報告が示した民営化後の道路建設では、路線ごとの収支・採算性の低い新規建設には民間金融機関の選別も当然厳しく、資金調達が望めないため、建設の一定の歯止めとなるはずだった。

 しかし今回の改革では、独立行政法人の「保有・債務返済機構」が、新会社が建設した新規の道路資産を負債ごと引き受けることが確実で、現行の公団方式と大きく違わない「政府保証付き」融資案件となりかねない。

 金利変動リスクも心配だ。高速道路の年間料金収入は約2兆円。このうち、管理費が約4千億円に上るため、残り約1兆6千億円が債務返済の原資となる見通しだ。国交省は民営化後45年間の返済期間の金利を、民営化委の議論の中で示された4%を想定して試算。その結果「約6千億円を金利分、1兆円分を元本返済に充てる形で、完済は可能」としている。

 だが、今後の金利動向については「かなりラフな計算」(同省幹部)というのが実体だ。金利が上昇する時には「景気もよくなり、同様に料金収入が想定以上に伸びる」との見方もあるが、民営化に伴い高速道路の料金引き下げも実施しなければならず、逆に料金収入が目減りする危険性もある。

◆拒否権

 政府・与党の基本的合意では、道路建設で新会社と国の意見が対立した場合には、国が別の会社と交渉する「複数協議制」を採用。それでも拒否された場合は、国交相の諮問機関である「社会資本整備審議会」に諮り、最終的な判断は国交相に委ねられる。

 ただ新会社が示した建設できない理由が、審議会で「正当なものと認められる」場合には、建設は見送られるが、その判断基準は明確でない。新会社の拒否権を一応は認めるものの、最終的には国が判断する仕組みともいえ、「自主権の行使は不透明」(公団幹部)といえる。【荒木功、中村篤志】

◆協調優先、変質の小泉政権

 小泉純一郎首相の看板政策である道路公団民営化問題は22日、高速道路計画の全線建設の可能性を残して決着した。一連の小泉改革としては初の最終結論で、成果が注目されたが、「民営化」のスローガンを掲げつつ具体案は丸投げする「小泉手法」の限界を改めてのぞかせたと言える。道路族と対決を避けた背景には、自衛隊のイラク派遣を控え、与党との協調関係で安定を図ろうという政権自体の変質も見逃せない。

 「8割以上尊重している」。法律に基づき設置された民営化推進委の最終報告と今回の決着の対比を22日夕、記者団に聞かれ、首相は自ら言い出した「8割」を7回も繰り返した。

 しかし民営化問題の本質は、高速道路の建設に民間原理と採算性重視を導入する抜本改革か、コスト縮減の改良手法かの選択であり、前者こそ推進委の発想で、道路族が容認できないものだった。特にその証しとして一部委員は道路資産を新会社が保有して経営に責任を持つよう主張してきただけに、首相判断は受け入れられなかった。

 民営化問題に首相が最初に言及したのは、就任直後の01年5月。特殊法人改革の目玉として「民営化できるものは民営化」と打ち上げたのが始まりで、その後高速道路整備計画の見直しを示唆した。しかし、昨年12月に推進委が最終報告して以来「報告を基本的に尊重する」と繰り返し、中身の議論を1年にわたり放置、最終的には国土交通省に事実上丸投げした。首相にとって何が「民営化」の主眼だったかは不鮮明なままだ。

 皮肉に取れば、道路問題はすでに「味わいつくした」課題だったかもしれない。推進委への猪瀬直樹氏の起用、今井敬委員長の辞任、藤井治芳・道路公団前総裁の解任劇と、メディアが注目しての大立ち回りが演じられた後、最低限の体面を保てばよいと判断した気配がある。一時は「小泉改革」の先兵だった推進委の一部メンバーは、今や首相側から「過激派」と疎まれている。

 来年度予算編成で、首相は社会保障問題などで与党との対立の先鋭化を避け、青木幹雄参院幹事長や公明党との融和を際立たせた。抵抗勢力との対決を演出しつつ「小泉改革」による政権浮揚を図った手法に代わり、協調による政権安定を優先しながら向かう目標は何か。首相は早急に示すべきだろう。【人羅格】

[毎日新聞12月23日] ( 2003-12-23-02:54 )


道路公団:民営化案決定に「勝利感」 自民道路族

 22日に決定した道路4公団民営化の政府・与党案は整備計画(9342キロ)に沿って道路を造る仕組みを温存したため、自民党道路族には「勝利感」が漂った。建設コストの大幅削減、一部路線の「抜本的な見直し」などで小泉純一郎首相の顔を立てつつ、言い分を通したというわけだ。政府・与党案が「玉虫色」決着であることを裏付ける反応となった。

 「9342キロの整備は努力しないといけない。それにしても、小泉首相の改革意欲はたまりませんな。いやあ、参った」

 自民党の古賀誠道路調査会長は22日、政府案を事後了承した同調査会・国土交通部会合同会議後、記者団の前で首相を気遣う余裕を見せた。

 合同会議では、「抜本的見直し」に指定された5区間の地元議員らから反発する声が相次ぎ、武部勤元農相(北海道12区選出)は「40年間も建設を待っている。なぜ差別するのか。稚内や網走に新幹線は来ない。高速道路ぐらい造れ」と訴えた。別の議員は「コストをさらに2・5兆円も圧縮して大丈夫か」と指摘した。

 これに対し、古賀氏が「凍結ではない。9342キロを造るのは当然だ」と断言。安堵した見直し区間の地元議員は取材に対して「将来的に造らない訳ではない」と理解を示した。

 12日に決定した自民党案は、日本道路公団の分割は「経営安定後」で、債務の返済期間は「50年以内」の内容。政府案が「民営化と同時に3分割」「45年以内」を打ち出したが、道路族幹部は「お好きにやりなさい」と問題視しない姿勢を見せた。

 道路族からは「今回の改革は結局、何だったのか。(政府の道路関係4公団民営化推進委員会のメンバーの)猪瀬直樹さんの本が売れただけじゃないのか」(幹部)との高笑いさえ聞こえる決着となった。【犬飼直幸】

◆野党は一斉に批判

 道路4公団民営化の政府・与党案に対して野党は一斉に批判の声を上げた。民主党の菅直人代表は22日、同党衆院議員のパーティーのあいさつで「民営化といっても借金の大半には税金を投入し、新たな高速道路は『通行料で造れそうなものは通行料で、造れないものは税金で造る』という。民営化の目的は根本から覆された。『花は小泉、実は族議員』の構造が全く変わっていない」と切り捨てた。

 共産党の佐々木憲昭政策委員長代理は「無駄な高速道路建設を推進するための新たな体制づくり。ファミリー企業や天下りなどの改革にも手をつけていない」、社民党の又市征治幹事長も「高速道路整備計画の9342キロの道路建設を前提にしたもので、今以上に債務を拡大する可能性をはらんている」との批判談話を発表した。

[毎日新聞12月23日] ( 2003-12-23-02:42 )


政府案に反発、田中・松田氏辞任 民営化推進委また分裂

 政府の道路関係4公団民営化推進委員会の田中一昭委員長代理(拓殖大教授)と松田昌士委員(JR東日本会長)は22日、政府・与党が決めた公団民営化案が、債務返済を最優先する推進委の意見書の基本部分を反映していないとして、委員を辞任した。一方、猪瀬直樹委員(作家)は政府・与党の決定に一定の評価を示し、推進委は分裂した。

 推進委は02年12月、民営化後の新会社の道路建設を抑制し、4公団で40兆円にのぼる債務返済を優先する意見書を取りまとめる際、今井敬氏(日本経団連名誉会長)が委員長を辞任。中村英夫委員(武蔵工大教授)もその後、欠席を続けており、2度目の分裂となる。

 小泉首相は委員の補充をしない方針を記者団に示した。2氏の辞任で5人となった推進委の開催には、委員の過半数の3人の出席が必要なため、今後開催できるかどうかは微妙な情勢だ。

 田中、松田両氏らは「公団が抱える40兆円の債務を着実に返して、建設は新会社の採算の範囲内にすべきだ」(松田氏)と強調。政府・与党の決定では建設に歯止めがかからないとして厳しく批判した。田中氏は同日夕、小泉首相に直接会って、「これは小泉改革ではない」と抗議したうえで辞表を提出した。

 一方、猪瀬氏は独自に政府との妥協点を探る動きをみせ、建設コストの削減や一部区間の建設先送り、大幅な料金値下げなどの持論を政府案に反映させた。猪瀬氏は「新会社の自主権があるので建設抑制は可能」としている。

 他の委員のうち川本裕子氏(経営コンサルタント)は政府・与党の決定を批判しているが、進退は明らかにしていない。大宅映子委員(ジャーナリスト)は一定の評価をしており、委員にとどまる見通し。

(12/23 00:48)

首相、推進委の意見は「ほとんど尊重」 道路公団民営化

 小泉首相は22日昼、道路関係4公団の民営化をめぐる政府・与党合意について、「(道路関係4公団民営化推進委員会の意見は)ほとんど尊重されています。よくやってくれた」と評価した。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 「抜本的見直し区間」とした5区間の整備のあり方についても「抜本的見直しだ。いままで通りには無理なんですから。あとはいろんな知恵を出してもらいたい」と述べたが、凍結するかどうかについては明言を避けた。また、高速道路整備計画を見直すのかどうかという記者団の質問に対しても、「すべて出てますから、科学的なデータが」と述べるにとどめた。 (12/22 12:33)

道路公団民営化枠組み決定 「抜本的見直し」5区間設定

官邸をあとにする石原国交相
官邸をあとにする石原国交相=22日午前11時1分、首相官邸で

 道路関係4公団の民営化について、政府・与党協議会が22日午前、首相官邸で開かれ、民営化後の新会社が通行料金を担保に建設資金を自己調達し、新線建設を進める政府案を了承した。高速道路整備計画(9342キロ)のうち近畿自動車道(第2名神)の大津(滋賀県)―城陽(京都府)など5区間(計143キロ)を「抜本的見直し区間」と設定。当面、一般国道で代替するなど整備の先送りを検討することなども盛り込んだ。だが、整備計画自体の見直しまでは踏み込んでいない。

 政府は民営化関連法案を年明けの通常国会に提出し、05年度中に民営化を実施する。日本道路公団は東日本、中日本、西日本に3分割し、首都高速道路・阪神高速道路・本州四国連絡橋の各公団は、それぞれ独立して設立。本四公団は経営安定化時点で、西日本会社に合併させる。

 政府・与党が合意した「道路関係4公団民営化の基本的枠組み」によると、新会社の自主性を尊重するため、施行命令など、国が公団側に一方的に道路建設を命じていた従来の枠組みを廃止。事業中の区間は、国交相がその地域の会社と建設継続を協議し、拒否されれば他の地域会社に打診する「複数協議制」を導入する。

 さらに、建設資金は新会社が自己調達し、債務は45年で返済する▽規格の見直しなどで、新会社による建設費は想定されていた10兆円から7.5兆円に引き下げる▽通行料金は平均1割程度引き下げ、夜間割引なども導入する、などでも合意した。

 一方、「抜本的見直し区間」では採算性が極めて低く、有料方式に適さない区間として、北海道縦貫道の士別−名寄▽北海道横断道の足寄―北見▽中国横断道の米子―米子北の3区間を列挙。有料方式による整備を続けることが想定される第2名神の大津−城陽と八幡(京都府)―高槻(大阪府)の2区間は「必要性を見極める必要がある」とした。 

 福田官房長官は22日午前の記者会見で、「基本的に9342キロは整備していく。そのなかで、いかに合理化をはかるか、負担をどうするかは、今後検討される」と話した。この日の協議会でも、自民党の額賀福志郎政調会長が「道路は悪いものという意識ではなく、9342キロは国土開発幹線自動車道建設審議会で決まったものだから、コストの見直しはあるが、建設はするべきだ」と発言するなど、整備計画の完成を目指すべきだとの声が相次いだ。 (12/22 12:21)

政府案に反発、田中・松田氏辞任 推進委また分裂

政府の道路関係4公団民営化推進委員会の田中一昭委員長代理(拓殖大教授)と松田昌士委員(JR東日本会長)は、政府・与党が決めた公団民営化案が推進委の意見書の基本部分を反映していないとして、委員を辞任、推進委は分裂した。(12/23 00:48) 全文 >>

辞表を提出後、記者の質問に答える田中一昭委員長代理=22日、首相官邸で
辞表を提出後、記者の質問に答える田中一昭委員長代理=12月22日、首相官邸で 

■藤井道路公団総裁、更迭方針決定までの経緯
 00年 6月   藤井氏、日本道路公団総裁に就任
 02年 6月   道路関係4公団民営化推進委員会が第1回会合
    12月   民営化委、道路公団の分割民営化を求める意見書提出
 03年 5月   公団が債務超過に陥っていることを示す財務諸表の存在を報道
    7月10日 公団幹部、上層部が同財務諸表の存在を隠蔽していると告発
      11日 扇前国交相、藤井総裁の責任を問わない意向表明
      14日 藤井氏、衆院決算行政監視委で告発した幹部を批判
      18日 扇前国交相が公団に外部監査を受けるよう指示
      23日 4大監査法人が公団の監査拒否(その後新日本監査法人が「検証」を引き受け)
      25日 公団と藤井総裁、月刊誌の出版社や告発した幹部らに損害賠償などを求め提訴
    8月1日 公団、告発した幹部を解職
      8日 藤井氏、債務超過を示す財務諸表が公団のコンピューターに存在することを確認したと発表
      29日 公団が新日本監査法人の検証結果を発表。藤井氏「信頼性が確保された」と談話
    9月2日 扇前国交相「粉飾がないので責任問題を問うことはない」
      同日 日本公認会計士協会が「財務諸表を信頼できるかのような誤解を招きかねない説明」と反発
      22日 国交相、扇氏から石原氏に交代
      同日 石原氏が藤井氏の更迭方針を表明

 これまでの記事一覧

高速道建設の9342キロ完成可能案、首相が了承

 小泉首相は20日、日本道路公団など道路関係4公団民営化について、新会社が通行料金を担保に資金を自己調達して新線建設を進める方針を固めた。通行料金を建設に活用することで、現在の高速道路整備計画(9342キロ)の完成を可能にする案で、与党も容認していた。また、民営化後の新会社が受け持つとされている10兆円分の道路建設費を規格の見直しなどで7.5兆円に削減する。22日午前に開く政府・与党協議会で正式に決め、来年の通常国会に民営化法案を提出する。

 小泉首相はこれまで「無駄な道路は造らない」と強調し、整備計画の見直しにも言及していた。しかし、首相は建設費を削減することで改革の成果をアピールできると考え、整備計画の完成を可能にする案だが、了承したものとみられる。自民党道路族と首相が歩み寄った形で、小泉改革の中身が改めて問われそうだ。

 この日、石原国土交通相が首相官邸で、(1)05年度の民営化に合わせ、日本道路公団は東日本、中日本、西日本に3分割、首都高速道路公団、阪神高速道路公団は単独で民営化する。本州四国連絡橋公団は経営安定後(10〜15年後)に西日本会社と合併する(2)新会社の経営の自主性を尊重する。ただ、国の意向を新会社の1社が拒否した場合、国は別の新会社に声をかける(複数協議制)。それでもまとまらない場合は、社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)に諮り、正当性を審議する(3)4公団が抱える40兆円の債務の返済期間は45年とし、その後、無料にする(4)通行料金は平均1割程度引き下げる――などの国交省案を提示、首相も了承した。

 新会社の高速道路の建設の仕組みは、通行料金収入を担保に新会社が資金を借り入れる「自己調達案」を採用する。通行料の間接的な建設費充当案で、道路族もこの案を容認していた。9342キロの整備計画のうち未整備の約2100キロについて、当初は20.6兆円の費用がかかるとされていたが、与党は4兆円をコストダウンしたうえで、民営化までに道路公団が3兆円、新会社が10兆円、道路特定財源を使い国と地方で負担する新直轄方式(通行料は無料)により3兆円を負担する考えだった。

 新会社の建設分について、費用対便益の評価などが低い区間を中心に6車線の予定を4車線や対面通行に減らしたり、建設費のかかるトンネルを造らないようルートを変更したりすることで、2.5兆円を削減する。

 具体的には第2名神で2区間の建設費合計が1兆円を超える大津(滋賀県)―城陽(京都府)と八幡(同)―高槻(大阪府)のほか、採算性が極めて低く、新直轄方式で建設見込みの北海道縦貫道の士別剣淵―名寄、北海道横断道の足寄―北見、中国横断道の米子―米子北について規格などを見直す。

 自民党道路族は「この案ならばまったく問題はない」(幹部)と話している。一方、民営化推進委は昨年末にまとめた意見書で、通行料の建設費充当案を否定しており、一部委員は反発すると見られる。 (12/20 21:14)

建設資金を自己調達して新線建設 民営化案、国交相提示

 石原国土交通相は20日、日本道路公団など4道路公団について、民営化後の新会社が通行料を担保に資金を自己調達して新線建設を進める案を小泉首相に示した。政府・与党は、この案をもとに最終的な調整に入る。新会社が建設する部分について、コストを追加で約3兆円削るほか、新会社に建設する区間を選べる「自主権」を与える。

 現4公団のうち、日本道路公団を東日本、中日本、西日本の3つに分割。首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団はそのまま民営化し、計6社でスタートする。分割は05年度中の民営化時と同時に実施する。

 現在の計画では、高速道路整備計画(9342キロ)の残り2100キロのうち、民営化までに公団が3兆円分、新会社が10兆円分、国・地方自治体が新直轄方式で3兆円分造る予定だった。この新会社分をコスト削減で約7兆円で造る。 (12/20 14:01)

自治体から道路公団民営化推進委案への批判続出

 石原国交相は10日、道路関係4公団の民営化に関し、全国知事会や全国市長会などの代表者らから意見を聴いた。出席した自治体の首長らからは「道路関係4公団民営化推進委員会の案は容認できない」として、高速道路整備計画(9342キロ)の全線完成を求める意見が相次いだ。

 石原国交相は「皆さんの意見は高速道路ネットワークと早期整備の重要性に尽きると思う」と応じたが、出席者からは「民営化案が決まる差し迫った時期に意見を述べても、単なるガス抜きではないか」(加藤貞夫・福島県議会議長)などの厳しい意見が出た。

 国交省が全国の都道府県と政令指定市に行ったアンケートによると、民営化後の新会社の道路建設の枠組みについて、最も推進委寄りの案を支持する意見はゼロで、不支持が48自治体だった。

(12/10 20:52)

高速道建設、新会社同意を義務化 猪瀬氏が独自案提出へ

 道路公団の民営化法案をめぐり、道路関係4公団民営化推進委員会の委員で作家の猪瀬直樹氏は、高速道路の建設にあたって、民営化後の新会社の同意を義務づけるよう9日の推進委員会で求める。新会社の自主性を強調する内容で、採算性を無視した建設を抑制し、債務返済を促す狙いがある。

 猪瀬氏は、3案では新会社の自主性確保について明示していないため、意見書の趣旨を反映させて野放図な建設を避けるには、国と新会社に対等な協議を義務づけることが必要と判断。新会社が建設に同意しない場合、国や地方の負担で建設する「新直轄方式」や、国や自治体などと一緒に新会社が建設費を負担する「合併施行」の仕組みに委ねる案をまとめた。道路予算には限りがあることから、建設が抑制できるとみている。

 新幹線整備の際に建設主体のJRとの協議や同意を義務づけた全国新幹線鉄道整備法を念頭においたもので、新会社の自主性を強調する日本道路公団の近藤剛総裁の意向にも近いとみられる。 (12/09 08:16)

国幹会議委員に学識経験者10人 国交相が任命

 石原国土交通相は5日、国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の委員となる学識経験者10人を任命した。国会議員10人とともに、道路関係4公団の民営化に伴う高速道路整備計画を審議し、国と地方の税金で建設する「新直轄方式」の無料高速道路区間を決める。任命された委員は以下の通り。

 井田由美・日本テレビアナウンス部次長▽上村多恵子・京南倉庫社長▽奥田碩・日本経団連会長▽楓千里・月刊「旅」編集長▽金子原二郎・長崎県知事▽北城恪太郎・経済同友会代表幹事▽能見善久・東大教授▽藤井弥太郎・帝京大教授▽御手洗冨士夫・キヤノン社長▽森地茂・東大教授 (12/05 11:43)

民営化の高速道建設一部見送り 「新直轄方式」増で調整

今後の高速道路の建設方法
今後の高速道路の建設方法

 政府・与党は、道路関係4公団の民営化後の高速道路建設について、高速道路整備計画(9342キロ)の未完成部分約2000キロの一部の建設を当面見送るとともに、国と地方の税金で無料道路を建設する「新直轄方式」区間の割合を増やす方向で調整に入る。一方、新会社には、道路公団の料金収入を道路建設に活用する現在の方式と類似の方式を採用し、整備計画を完成させる余地を残す考えで、12月中の合意を目指す。

 政府・与党は、高速道路の建設について、「9342キロは全部は造れない」とする小泉首相と、建設を促進したい自民党道路族の折り合いをつけたい考え。一部の建設見送りはあるものの、民営化によって採算性を重視して新しい高速道路の建設を大幅に抑えるという、道路関係4公団民営化推進委員会が当初掲げた理念は大きく後退しそうだ。

 建設の見送りは、国土交通相が日本道路公団に「施行命令」を出していない278キロの区間を中心に選ぶ見込み。ただし、整備計画自体の見直しはせず、将来、復活する余地を残す可能性が高い。

 新直轄方式による建設については昨年末、03年度からの15年で、全線16兆円分のうち3兆円分をつくる方針を決めた。将来、これを1兆円程度拡大し、4兆円程度分とする方針。新会社が有料の高速道路として建設するのは、10兆円分から9兆円程度分に縮小する。

 一部建設見送りと新直轄部分の割合拡大を持ち出すのは、未完成部分全線を従来方針通りに建設しては、道路公団改革に期待を寄せる納税者の批判に耐えられないと判断したためだ。

 一方、公団民営化後の新会社による有料の高速道路建設については、通行料金や自己調達資金を活用し建設を進める新方式を軸に調整する方針で、基本的に現在の道路公団の建設方式が維持される。

 推進委や日本道路公団の近藤剛総裁は、新会社が自主性を確保することを求めており、地域分割や建設手法については、改革イメージを保てるように手直しする可能性がある。

 政府・与党は、公団のファミリー企業の整理や建設コストの追加削減策も打ち出し、改革進展を強調する構えだ。 (12/05 06:15)

意見書無視なら辞任の推進委員も 道路公団民営化

 政府の道路関係4公団民営化推進委員会の田中一昭委員長代理(拓殖大教授)は2日、民営化法案が債務返済を優先する推進委の意見書に沿わなかった場合、辞任する意思を小泉首相に伝えた。首相の姿勢を見極めたうえで、政府・与党が意見書案を無視すれば最終的に決断する構えだ。

 田中氏は、昨年12月にまとめた意見書の骨格部分を含んだ民営化法案にするよう、首相が石原国土交通相を指導しない場合、辞任するとの考えを書面にまとめ、2日、記者団に公表した。

 具体的には(1)新会社は経営の自主性を持つ(2)債務は早期着実に返済する(3)債務膨張につながる高速道路建設の停止――などで、同日夜、首相官邸で開かれた推進委と小泉首相との食事会の直前、首相に直接伝えた。

 これに対し、小泉首相は「私を信じてくれないのか」と話し、「推進委の意見を基本的に尊重する」との姿勢を改めて示した。

 食事会では川本裕子委員(マッキンゼー・アンド・カンパニー・シニア・エクスパート)も「推進委案でないと私の任務が果たせない」と発言。松田昌士委員(JR東日本会長)も意見書に強いこだわりをみせている。

 意見書に賛成した5委員のうち、作家の猪瀬直樹氏と評論家の大宅映子氏は、3氏の考えには同調していない。

 国交省は道路建設にあたって意見書を反映させた民営化法案のほか、建設が続けられる2案を作成。政府・与党は今月中旬にも道路建設を優先する案で決着させる方針。

 小泉首相は2日の夕食会で、金子行政改革担当相や石原国交相とともに推進委のこれまでの努力をねぎらう一方、民営化法案作りに地方自治体や与党の意見も採り入れることについて、理解を求めた。 (12/02 21:50)

近藤道路公団総裁、上下一体論撤回 自民会合で批判受け

 日本道路公団の近藤剛総裁が1日、就任後初めて、自民党道路調査会の会合に出席した。近藤氏が主張する新会社が将来、道路資産を買い取る上下一体論などに批判が相次ぎ、近藤氏は会議後、記者団に「実体的に上下一体が達成できればよい。必ずしも法的に所有することが絶対条件ではない」と述べ、事実上、一体論を撤回した。

 会合では、近藤氏が11月末のインタビューで触れた一体論と、債務返済後も維持管理のため通行料金を取り続ける「永久有料化」論に対して批判が続出。「公共財という道路の理念をふまえていない」「新会社が道路を持つと、固定資産税などがかかる。道路建設が遅滞なくできるのか」などの指摘が続いた。

 政府の道路関係4公団民営化推進委員会の意見書に沿った上下一体論だと、不採算路線は建設しにくい。近藤氏が一体論を事実上撤回したことは、道路建設を最優先する道路族の立場に歩み寄ったものといえる。

 会合後、古賀誠・道路調査会長は「(近藤氏と)考え方は全く同じ方向だ」と記者団に語った。調査会の下部組織「高速道路のあり方検討委員会」の二階俊博委員長も「総裁が少し先へ先へと話していたが、今後十分話し合っていこうという雰囲気ができた」と述べた。 (12/01 21:42)

高速道路未完成70区間の効果を点数評価 国交省

 国土交通省は28日、未完成の高速道路を、従来通り有料道路として整備するか、新直轄方式で国と地方自治体の負担による無料の道路として整備するかを振り分ける際、おおまかな基準となる区間別の総合評価点数を公表した。国交省は点数をもとに、関係する都道府県から、どちらを選択するか要望を聞き、年末の国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)を経て、新直轄方式に切り替える区間を選ぶ。

 点数化したのは、高速道路整備計画で決定された9342キロのうち、04年度以降に完成予定の1999キロ、70区間。

 それぞれの区間の(1)採算性(2)建設費・管理費に対する便益額(走行時間の短縮やガソリンの消費量減少、交通事故の減少などがもたらす額)の割合(3)高度医療施設までの搬送時間の短縮効果や二酸化炭素排出量の削減などの外部効果を算出。この3項目を偏差値化し、一定の係数を乗じて、足し合わせた。

 係数は(1)国交省の道路事業評価手法検討委員会(2)国交省が地方公共団体の首長にアンケートして決めたもの(3)道路関係4公団民営化推進委員会がまとめたものがあり、どの項目を重視するかで点数が変わる。

 新直轄方式に切り替えとなるのは、点数が低く、道路公団民営化による新会社が建設を拒絶しそうな区間の可能性が大きい。点数の開示で政治家からの不当な圧力を防ぐ狙いがあるが、一定の点数で切り捨てるような使い方はしない。

 新直轄方式の予算は03年度から15年で約3兆円と、02年12月に政府・与党で合意した。建設費の4分の3は国費だが、残りは都道府県など地方の負担となる。

      ◇      ◇

 未完成高速道路の区間別総合評価点数

  評価区間    評価手法委  地方公共団体 民営化推進委

<北海道縦貫自動車道>

七飯−国縫     52.1    53.0   50.5

士別剣淵−名寄   40.2    39.4   39.7

<北海道横断自動車道>

余市−小樽J    49.7    49.6   50.3

夕張−十勝清水   52.5    54.4   52.1

足寄−北見     42.8    44.0   40.8

本別−釧路     47.3    47.1   46.8

<東北横断自動車道>

遠野−宮守     42.2    41.7   43.2

宮守−東和     43.6    43.0   43.9

<日本海沿岸東北自動車道>

中条−朝日     48.6    51.0   46.7

温海−鶴岡J    42.3    42.8   41.4

本荘−岩城     43.7    43.7   43.1

大館北−小坂J   38.5    36.7   39.4

<東北中央自動車道>

福島J−米沢    46.6    47.2   46.0

米沢−米沢北    43.2    42.2   43.0

南陽高畠−山形上山 48.6    46.7   49.6

東根−尾花沢    47.5    47.3   47.4

<常磐自動車道>

富岡−新地     52.4    54.0   52.6

新地−山元     49.7    49.4   50.9

山元−亘理     50.6    48.8   52.2

<東関東自動車道>

三郷−高谷J    52.2    54.6   50.8

鉾田−茨城J    49.7    51.9   48.5

君津−富津竹岡   62.2    58.6   63.3

<北関東自動車道>

伊勢崎−岩舟J   67.7    68.4   69.5

宇都宮上三川−友部 61.1    65.4   61.1

<東海北陸自動車道>

飛騨清見−白川郷  47.4    46.3   47.0

<第2東海自動車道>(通称「第2東名」)

海老名南J−秦野  52.4    51.8   51.9

秦野−御殿場J   55.5    53.6   57.6

御殿場J−長泉沼津 51.7    48.2   53.8

長泉沼津−吉原J  49.8    46.6   51.8

吉原J−引佐J   58.6    57.5   59.9

引佐J−豊田東   53.5    51.7   56.9

豊田J−豊田南   79.2    67.9   79.5

<中部横断自動車道>

吉原J−増穂    54.7    58.7   53.0

増穂−若草櫛形   49.6    49.7   48.9

八千穂−佐久南   44.6    44.3   45.1

佐久南−佐久J   42.9    42.6   42.7

<近畿自動車道>

みなべ−白浜    52.9    54.9   51.3

白浜−すさみ    48.7    50.5   46.7

尾鷲北−紀勢    53.9    55.7   52.5

紀勢−勢和多気J  57.0    55.9   56.4

四日市J−菰野   52.5    50.4   55.4

菰野−亀山J    49.8    47.2   53.3

亀山J−大津J   60.7    59.5   62.7

大津J−城陽    49.9    48.9   51.8

城陽−高槻第1J  45.6    45.4   45.9

高槻第1J−神戸J 48.4    49.1   49.1

名古屋南−高針J  46.2    45.8   46.6

亀山−亀山南J   47.2    42.7   49.3

小浜西−敦賀J   55.3    58.2   53.3

<中国横断自動車道>

播磨新宮−山崎J  45.8    44.4   47.0

佐用J−大原    44.5    44.7   44.4

智頭−鳥取     50.4    53.8   48.2

米子−米子北    40.2    40.0   40.2

尾道J−三次J   46.9    49.1   45.7

三次J−三刀屋木次 45.5    47.4   44.7

<山陰自動車道>

宍道J−出雲    47.3    48.6   46.4

<四国横断自動車道>

阿南−小松島    53.7    55.0   53.9

小松島−徳島J   48.0    50.0   47.1

徳島−鳴門J    45.8    46.6   45.3

須崎新荘−窪川   47.1    47.6   45.6

宇和島北−宇和   48.3    49.0   47.0

<九州横断自動車道>

嘉島J−矢部    47.3    48.0   46.5

<東九州自動車道>

小倉J−豊津    50.6    49.8   51.4

椎田南−宇佐    48.4    48.0   49.9

津久見−蒲江    49.3    50.4   48.5

蒲江−北川     50.9    52.5   48.8

門川−西都     56.1    56.8   55.6

清武J−北郷    47.4    47.6   46.6

北郷−日南     51.4    52.5   50.9

志布志−末吉財部  52.0    54.9   51.2 (11/28 15:16)



国交省、道路公団民営化で3案提示 建設推進軸に調整か

 道路公団民営化について、政府・与党協議会が28日午前、首相官邸で開かれ、国土交通省は債務返済を優先する案や、料金収入の一部を建設にまわし、新規路線の建設を重視する同省の独自案など3案を示した。額賀福志郎・自民党政調会長は「自民党の案として(料金)収入を建設にあてるべきだとの意見が大半である」と発言するなど、建設推進案を推す声が強く、この案を軸に調整が進むことになりそうだ。

 席上、安倍幹事長は「道路資産を新会社が取得するにはコンセンサスがいるのではないか」と指摘し、いったん分離される新会社と「保有・債務返済機構」の将来の一体化に疑問を呈した。12月中旬に再度、政府・与党協を開き、決定する。

 協議会後、安倍幹事長は記者団に対し、採算性の低い路線の多い整備計画(9342キロ)の未着工部分について「採算性だけでいいのかという問題も議論しなければならない」と指摘。冬柴幹事長は「国交省は(整備計画を)全部造るということで説明していた。(建設を)やめるとすれば法的な手続きが必要だ。そうでないと乱暴な話になる」と話した。 (11/28 13:19)


国交省、政府・与党に道路改革3案提示 公団も独自要望

 国土交通省は28日の政府・与党協議会に、道路公団民営化の骨格について複数案を提示する。道路建設では3案あり、道路関係4公団民営化推進委員会の意見書通り債務返済を優先する案もあるが、残り二つは新規路線の建設を重視する案。日本道路公団も新会社の自主性が確保できるよう、独自に要望をまとめたが、政府与党は高速道路整備計画(9342キロ)の完成を求める自民党道路族に配慮し、建設推進の案を軸に12月中旬にも決着させる見通しだ。

 国交省がまとめた3案は、資産と債務を持つ機構(独立行政法人)と、道路建設・管理を行う複数の新会社(株式会社)に道路公団を「上下分離」し、新会社が機構にリース料(道路使用料)を払う点では共通しているが、道路建設の仕組みが大きく異なっている。

 「A案」とされるものが最も推進委の意見書に沿った内容だ。民営化後の新会社が自主判断により道路を建設し、道路資産も保有する。国交省は「新規建設は極めて困難」としている。

 「B案」は新会社が資金を自己調達するが、道路の完成と同時に資産と負債は機構へ移し、負債は新会社がリース料を支払って返済する。民間の資金を使った社会資本整備である「PFI方式」の一種。資金調達の担保は料金収入としており、既存の優良路線の料金を見込んで新規路線を造る今の「料金プール制」と事実上変わらない。

 「C案」は建設が最も推進できる案で、新会社が機構にリース料を支払い、機構がその一部を道路建設費として新会社に回す仕組みだ。この案は推進委が「採用すべきでないケース」と明確に否定している。

 B、C案とも、一定範囲を経過措置として新会社の建設区間と定めており、道路建設における新会社の自主性は無視される仕組みだ。

 新会社の分割についても3案。推進委の意見書通り日本道路公団を3分割(本四公団はいずれかに統合)して首都高速と阪神高速は拡大して独立させる案と、道路公団を二つか三つのいずれかに分割し、首都、阪神、本四は別々に独立させる案がある。道路資産は、意見書通り新会社が10年後をめどに買い取る案と、新会社は買い取りをせず債務返済まで機構が持つ2案がある。 (11/28 03:10)



近藤総裁「推進委に沿い民営化」 道路公団改革

 日本道路公団の近藤剛総裁は、来年の通常国会に提出する民営化法案について、新会社が将来的に道路資産を保有する「上下一体」と、会社が道路建設を自主的に判断する権限を確保するよう政府に要請する方針を固めた。27日にも文書で国土交通省に申し入れる。国交省は「上下分離」し、国主導で建設を優先する案を中心に進めている。小泉首相が人選した近藤総裁が、根幹的な部分で国交省と対立する姿勢を示したことで、民営化法案づくりに影響を与えそうだ。

 近藤総裁は26日の参院予算委員会で「私の任務は、(道路関係4公団)民営化推進委員会の意見に可能な限り沿った形で民営化を実現していくこと」と明言。推進委が首相に提出した意見書で、道路の建設や管理を担う新会社と、道路資産と借金を引き継ぐ「保有・債務返済機構」に上下分離しながらも、民営化10年後をめどに会社が資産を買い取ることを明記したことについて「重要だと認識している。過渡的には分離であっても、将来的に上下一体でなければならないと固く信じている」と述べた。

 また、推進委が意見書で「今後の道路建設は、会社が採算性に基づき自主的に判断する」と打ち出したことについても、「自主判断権を最大限確保することが大変重要と考えている。道路建設についても、新会社の経営判断をしっかりと尊重した枠組みの中で、民営化をさせていただくことが重要」と語った。

 民営化法案は、国交省が今月末にも開かれる政府・与党連絡会議に複数の案を提示する予定。国交省は道路建設を重視する与党の意向に配慮し、推進委が無駄な道路建設を抑えるために求めた仕組みを採用せず、従来通り建設を優先する案を「本命」としている。 (11/27 06:20)



道路公団民営化、国交省「本命案」は建設優先

国交省「本命案」
国交省「本命案」

 日本道路公団など道路関係4公団について、国土交通省が準備している民営化法案の概要が明らかになった。道路の建設や管理を行う新会社と、道路を保有して債務返済を担う法人(保有機構)に「上下分離」したうえで、当初15年程度は新会社が機構へ支払うリース料を低く設定。高速道路の建設原資に多く回るようにする。民営化推進委員会が求めた借金返済を優先する仕組みを退け、これまで通り建設を優先する内容だ。

 国交省は今月末にも開かれる政府・与党連絡会議や来月初旬の推進委に複数の案を提示し、政治決着の形をとる。今回明らかになったのは、このうち国交省が「本命」としている案。道路建設を重視する与党の意向に配慮したものだ。

 それによると、組織上は推進委の意見書通り、新会社と機構に上下分離する。新会社は道路の建設、維持、管理のほか通行料の収受を担当。機構は新会社に道路を貸し、リース料を得て債務返済に回す。

 しかし、意見書のうち(1)4公団の約40兆円の債務は40年間で元利均等で返済(2)新会社は10年後をめどに道路資産を買い取る(3)新会社は早期に上場――など、無駄な道路建設を抑制するために求めた仕組みは採用していない。

 代わりに、債務返済期間は50年に延長。当初15年はリース料を意図的に低く抑え、借金返済に回す分を減らし、建設費を多めに捻出(ねんしゅつ)する。

 ただ、単純に新会社に利益がたまる形にすると法人税が大きくなる。このため、料金収入のうち建設費相当分は機構の取り分として課税されないようにし、新会社は徴収を代行する形をとる。その上で、新たな道路は機構と新会社が契約を結んで造る仕組みとし、高速道路整備計画(9342キロ)の完成を目指す。

 地域分割では、首都高速、阪神高速、本州四国連絡橋の各公団を別々に民営化。最大の日本道路公団は東西2社に分割する方向だが、高速道整備に地域差が出ないよう分割に反対する意見も残っている。

 国交省が提示する他の案の中には、推進委の意見書をできるだけ反映させたものも含まれるが、採用される可能性は極めて低いとみられる。

     ◇            ◇

◆国交省の「本命案」と民営化推進委の意見書との相違点

      国交省案          推進委の意見書

【債務返済】50年以内。当初は少なめ  約40年間の元利均等返済

【組織形態】機構が債務完済まで存続   10年後をめどに新会社と機構を一体化

【道路建設】機構が新会社に建設委託   新会社が自主的に建設

【株式上場】時期などは明記せず     早期の上場を目指す

【本四公団】独立して民営化       他の新会社と統合し民営化 (11/23 06:00)


【迷走・道路公団改革】
 
「左遷」の3人本社復帰へ 道路公団、藤井色一掃の動き

 日本道路公団が、「幻の財務諸表」作成に携わり地方に「左遷」された職員3人を、12月1日付で東京・霞が関の本社に戻す人事異動を決めたことが分かった。3人は6月16日付で異動したばかりで、異例の再異動となる。前回は藤井治芳総裁(当時)の意向が働いた人事とされ、藤井氏の解任と新総裁の就任を受け、「藤井色一掃」(公団幹部)の動きが出てきた。

 異動が内示された職員は、地方の支社や建設局に勤務する中堅ら3人。前回の異動前は、本社の経理課やプロジェクトチーム(民営化総合企画局に改編)の職員として、昨夏に財務諸表を作成した。

 3人は公団が今年6月に公表した「公式」の財務諸表の作成にも携わる立場にあったが、公表前に異動を内示された。いずれも、6月1日付で総務部調査役から四国支社副支社長に異動し、その後、月刊誌に内部告発して同支社調査役となった片桐幸雄氏の部下だったこともあり、公団内でも「改革派一掃人事」(幹部)と言われた。

 今回の人事には、「藤井氏の遺産」を排除したい国土交通省の意向も働いたとされる。公団と藤井氏に提訴された片桐氏の処遇について、近藤剛新総裁は20日、「人事担当からいきさつを聞いて判断したい」と述べた。藤井氏が設置した「コンプライアンス本部」や「改革本部」についても見直す考えだ。

(11/21 09:51)


公団は「会社更生法寸前」 道路公団・近藤新総裁が会見

会見する日本道路公団の近藤剛新総裁
会見する日本道路公団の近藤剛新総裁=20日午後、東京・霞が関で

 日本道路公団の新総裁に20日就任した近藤剛氏は記者会見し、公団の財務状況について「会社更生法適用に限りなく近い。よほど有利な条件が整わないと追加投資は難しい」と述べ、民営化後は道路建設がかなり抑制的になるとの見方を示した。ただ、国交省は民営化後もできるだけ計画路線を建設させたい意向で、今後調整が必要になりそうだ。また、藤井治芳前総裁が石原国交相との会談で明らかにした、いわゆる「イニシャル問題」については内部調査を行う方針を明らかにした。

 公団は05年度から民営化されるが、今後の道路建設を巡り、建設抑制を求める意見書を提出した道路関係4公団民営化推進委員会(推進委)と、建設推進の自民党道路族や国交省が対立している。近藤氏は会見で今後の道路建設について「採算性を無視して造ることはしない。採算が取れるかどうかが(建設の)判断基準だ」と採算性を重視する姿勢を明確にした。

 民営化法案を作る国交省は、高速道路整備計画(9342キロ)の完成のため、新会社に一定期間道路を建設させたい考えだ。近藤氏は「もう心は民営化された、という気持ちで国交省と話をしたい。(採算性重視の方針は)ご理解いただけると思う」と述べた。

 また、今後は透明性確保のため定期的に記者会見を行う意向も示した。

(11/21 00:29)


自民、国交部会長に渡辺氏内定 石原大臣との連携注目

 自民党は18日、日本道路公団の民営化問題などを扱う国土交通部会長に、無派閥の渡辺喜美衆院議員の起用を内定した。渡辺氏は経済・金融政策に詳しく、石原国土交通相らとともに「政策新人類」と呼ばれる。森政権時代、石原氏と一緒に、森首相や党執行部に批判的な「自民党の明日を創(つく)る会」を結成するなど、これまで政治行動をともにすることも多かっただけに、小泉改革の柱である道路公団改革で息のあった連係プレーがとれるか注目される。

 渡辺氏は総選挙中、道路公団改革に関連して、「有償資金を使う道路はコスト分析を行い、税金投入が必要な時は地方の判断を重視する。高コストの高速道路の料金体系を値下げし、一般道路は地方分権を徹底して整備する」などと主張していた。 (11/19 06:29)


6県知事が国交相に高速道路の早期整備要望

 地方の知事有志(岩手、岐阜、三重、和歌山、鳥取、高知)でつくる「これからの高速道路を考える地方委員会」は18日、石原国土交通相へ高速道路の早期整備を求める提言を提出した。今年度から国が建設する「新直轄高速」の路線が年末の国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)で選定されるのを前に、「必要な道路は国が整備を」と訴えた。

 新直轄以外の路線は道路公団を民営化した新会社が建設する。ただ、判断は新会社の経営陣に任される予定で、地方には「計画通り建設をしてくれるのか」という懸念が強い。

 鳥取県の片山善博知事は石原氏に対し「民営化ありきの議論は違和感がある。必要な高速道路整備は国がやるべきだ」と述べた。また、岩手県の増田寛也知事は「新直轄と民間のどちらが整備が早いのかが我々には重要。建設を待っていたのに地方負担が増えるのは困る」と要望した。

 石原氏は「必要な道路は10〜15年かけて税金で作る。国幹会議の前に意見を聞く期間を十分に取りたい」と応じた。 (11/18 19:23)


奥田経団連会長、道路公団人事で会員企業に異例のわび状

 日本経団連は18日、経済界が応援して参議院に送り込んだ近藤剛氏が道路公団総裁に就任することについて、奥田碩会長名で、約1600の全会員企業・業界団体に「突然の議員辞職は誠に残念。諸般の事情があるとしてもこのような事態になり、心からおわび申し上げます」というわび状を送付した。経団連が会員にわび状を出したのは初めてという。

 近藤氏の参院選挙では、企業トップらが応援演説をするなど会員が相当なエネルギーを投入しただけに、会員企業の異論、不満も少なくなく、異例の釈明をすることになったとみられる。 (11/18 19:09)


高速別納制度、70組合で不正利用15億円 検査院調べ

 高速道路の料金が最大で3割安くなる「通行料金別納制度」をめぐり、01、02年度分を会計検査院が調べたところ、同制度を利用している全国約千の事業協同組合のうち70組合が不正に割引を受けていたことがわかった。組合に加入していない約2000の業者がこの割引制度を利用していたという。不正に割り引かれた料金は両年度で計約15億円に上る。

 日本道路公団などは、会計検査院からの指摘を受け、同制度を不正利用していた組合に対し、割り引いた料金の支払いを求めていくという。

 同制度は日本道路公団と本州四国連絡橋公団が設けており、中小企業が集まってつくる事業協同組合などが対象。公団が発行するカードを利用して1カ月の通行料金を翌月にまとめて払い、利用額が増えるほど高い割引を受けられる。日本道路公団では、1万4000円を超える部分について5%の割引が適用され、700万円を超えた部分は30%引きになる。昨年度の利用実績は約8000億円で、割引額は約2200億円。

 検査院によると、同制度を利用している組合は全国で約千あり、この利用状況を調べた。

 この結果、70組合が同制度の利用を両公団に申し込んだ際、実際は組合に加入していないのに加入していることになっていた業者が約2000あったという。これらの業者にもカードが配布され、利用されていたという。これら不正に割り引かれた料金は両公団分をあわせて計約15億円に上るという。

 同制度をめぐっては、今年に入り、一部の組合で組合員の企業が新たに別納制度の利用者を獲得した際に払う手数料を架空計上していた脱税事件が起きるなど不祥事が相次いで発覚している。 (11/18 00:07)


近藤新総裁出身の伊藤忠、通行料別納利用の3組合に出資

 日本道路公団(JH)の新総裁に内定した近藤剛参院議員(自民、比例区)が常務を務めていた総合商社の伊藤忠商事が、高速道路の通行料金別納制度を利用する三つの事業協同組合に出資していることがわかった。3組合の別納制度利用額は年間90億円に上り、伊藤忠は組合員の管理業務の委託を受けたり、組合に信用保証したりして「委託料」や「保証料」を得ていた。

 伊藤忠が出資し、設立時からかかわっているのは、仙台市の「エムビー・ネットワーク」、広島市の「ビジネス交流センター」、福岡市の「ふべっく」の各組合。02年度の利用額は「ふべっく」が約40億円で異業種組合で全国4位、「ビジネス交流センター」が約39億円で同5位だった。「エムビー・ネットワーク」は02年6月期に約12億円を売り上げている。各組合ともJHから3割近い割引を受ける一方で、組合員の企業の割引は十数%に設定して差益を得ている。

 JHは大企業との均衡を図る目的で、中小企業の事業協同組合に対して高額割引を認めたが、80年代から割引が生む差益を目的にした組合が次々と参入した。割引額は年額2000億円に達し、JHの経営を圧迫、一部の組合で乱脈経営が発覚している。JHは別納制度のみを目的とした組合は認めていないが、伊藤忠がかかわった3組合とも、利益の9割以上を別納事業に頼っている。

 別納事業を利用する組合は、月額利用高の3倍に相当する額の支払い能力があることを銀行などに証明してもらい、銀行が出す「支払い保証書」をJHに提出する義務がある。伊藤忠は資金力の無い組合に代わり、「ふべっく」について15億円(最高時)、「ビジネス交流センター」について7億5000万円(同)を銀行に対して保証し、一定の割合で保証料を受け取っていた。いずれも保証額の0.2〜0.3%で最高で年に数百万円。

 また、伊藤忠は組合員の勧誘や別納制度にかかわる業務などを行う「受託者」や「代行センター」にもなっており、管理する組合員企業の通行料金から数%が「委託料」として支払われている。伊藤忠の関連会社数社も受託者になっている。

 代表理事や専務理事など各組合の要職に、伊藤忠の元幹部社員らが就いており、「ビジネス交流センター」では、理事9人のうち4人が伊藤忠や関連会社の出身。

 近藤議員は、伊藤忠在職当時に「エムビー・ネットワーク」の講演会で講師を務めたこともあった。

 伊藤忠OBの「ふべっく」の理事は「組合員企業のコスト削減を目的とした組合の健全な運営を、伊藤忠がお手伝いした。組合は自立してきており、近く保証もなくなる」と話している。

 廃止が決まった別納制度について、「ビジネス交流センター」は10月、JHに後納割引や組合が契約主体となる制度の存続を要望した。伊藤忠の元管理職で近藤議員とも面識がある同センターの理事は「別納制度が無くなると組合の存続が難しくなる。ただ、近藤新総裁の下で民営化が進むように望んでおり、同じ会社のOBだからといって特別にお願いするつもりはない」と話している。

(11/15 03:04)


近藤氏、道路公団総裁を正式受諾 経団連会長は不快感

 日本道路公団総裁への就任が内定した自民党の近藤剛参院議員は14日、任命権者の石原国土交通相を訪ね、就任の受諾を正式に伝えた。

 石原氏が「重大な決断をしていただいた。どんなことでも協力します」と述べたのに対し、近藤氏は「一生懸命、全力で命がけでやります」と応じた。

 近藤氏は議員辞職後、閣議了解を経て来週中に総裁に就く見込みだ。まず、民事訴訟に発展した公団内部の混乱の収拾に努め、不透明な経営が指摘される公団のファミリー企業の整理や、高速道路の建設コストの大幅削減などに取り組む。

 財界代表として01年に参院議員になった近藤氏は14日、後援会に対し、突然の議員辞職に理解を求めた。近藤氏は「基本的には『国のために全力でがんばってほしい』と励まされた」という。

 一方、日本経団連の奥田碩会長は14日、談話を発表。「民間および政界の経験を生かし、着実な成果を上げられることを期待している」とエールを送りつつ、冒頭、「経済界挙げて支援し、国政の場に送り出した人が任期の途中で、突然、議員を辞職することになったのは残念である」と指摘。改めて今回の人事に不快感を示した。 (11/14 20:57)





(私論.私見)