医療を超えて ―あなたを癒す全ての方法― 379
「オーサワにとっては、『料理は人生の工場である』」
記者:ジャン・パレスール
マクロビオティックはどんな病気でも治すための食事の芸術である。そして場合によっては原子爆弾による放射線から身を守る事までも保証している。その食養法は日本人であるオーサワ(その子弟らからは≪指導者≫または≪センセイ≫と呼ばれている)の主要な方法論からなり、東洋の哲学、宗教、科学そして文明が土台とする無双原理の日常生活での実践である。この原理を理解するために必要な本質的な事と二つの本質的な力の働きについては述べた(注1)。相反し、相補する陰と陽は宇宙で全てのものを支配する。
そして、今はマクロビオティックの具体的で実践的な部分を調べるにとどめておこう。まず明らかにしたいのは、───随分予想外であると、白状しなければならないが!───これは(西洋の)近代生理学が我々の神経系の研究に割り当てた仕事の中に支持を見つけるであろう事だ。誰でも知っているが、その神経系は二つある:我々の身体の中の全ての細胞と臓器の発達と発展にたずさわる交感神経系と、減退、補正させる要素をもつ副交感神経系である。≪センセイ≫によると、前者は求心的で陽性のエネルギーを伝え、後者は遠心的な陰のエネルギーを伝える。我々の身体はつまりその根本的に相反する二つの力の影響を受けている。陰と陽。それらは全ての臓器を動かす二つの不思議な手である。健康はその二つの相反するシステムのなかで調和を保つだけのことなのである。病気はつまり、その正反対の二つの力の間での一時的または慢性的な不均衡でしかない・・・。
そして彼は、フランス人の医師であるレイリー氏がパリの生物学系の会社で発表した革新的な理論を思いおこす。それによると交感神経系と副交感神経系が良いバランスを保っていれば、人間は完全に全ての病気に対して免疫であり、他にはばい菌や、ウイルスや無機の毒素などの特別な原因はないとしている。≪レイリー氏の説は極東の医学や哲学に対しての西洋医学的な一つのアプローチである≫、そして、オーサワがさらに加えて言う。「しかしその不均衡の原因はなんでしょうか。それは私たちの食生活である、という事はいうまでもない!過度の陰性の食物が交感神経系を支配し、過度の陽性の食物によって副交感神経系が優勢となる・・・」。「我々はその二つの神経系によって動かされている操り人形にすぎないんです。その意味で、我々はまったく自立してはいません。人生否定の源、運命論がそこにあります。しかし、もし我々が、そのバランスを日常の食物から制御することができるならば、わたしたちは自分自身の指導者となることができます。その二つの相反する体系の間で良いバランスを確立するために、私が食養法であなたがたに推奨しているのは食物の選択以外の何物でもないのです」。
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そのマクロビオティックの食養法の黄金律は、≪陰と陽の割合はいつでも5:1でなければならない≫というものである。しかしその≪指導者≫は厳格なやり方で尊重することは簡単ではないと認め、『東洋医学の哲学(注2)』の中で、我々のような西洋人のために、もっと明確な規則をゆだねている。
1.≪化学的な白砂糖や甘いものすべてを食べないこと≫、 ≪産業的、商業的につくられた化学的な砂糖は、人類の歴史のなかで比べるものがない第一の殺人者である・・・本当の悪の華である。戦争やアヘンよりも大変危険である。イエスキリストや仏陀や老子の時代には、この化学的、産業的な毒は存在しなかった。だから彼らがその事に言及しないのは当然の事である。しかし、彼らが今日、私たちの時代に生まれていれば、まずこの毒に対して警告をするに違いない≫
2.≪あなた達が存在するために必要最小限の水分量を求めること≫。彼はこう説明する。: ≪水無しには私たちは力がでない。力、陽性の活動は陰性である水からくる。陰が陽を生む。それではなぜ、水を飲んではならないのか? 身体は75パーセントの水を含んでいるが、あなた方の身体には10パーセント余計に水分がある。その10パーセントの水分を減らすためには飲むことを控えなければならない。≫
3.≪温暖な気候のもと、またはそれに近い場所にいる場合にはできるだけ動物性食品を控えること≫。それらの動物性食品のなかでも彼は特に牛乳を非難している。≪牛乳は子牛の食物で彼らの体質を形成するために用意されているもの・・・生理学的にも知性的にも劣っている動物の乳によって人間が栄養を取る理由は全くない・・・生理学的な見地からすると、乳は成人のための食物ではない。しかも、歯牙発生の後では世界中のいかなる動物も母親や養母の乳もしくは他の種類の動物の乳から栄養をとったり、それに依存したりはしない。動物の乳や乳製品への熱狂は近代の不条理な、快楽への欲望と、下等なもの、弱者からの搾取を隠蔽する迷信のひとつである。≫
4.≪工業的な製品を避けること、特に色のついた遠方から輸入された食品は、避けること!貿易の自由による経済は食料品界の中において宇宙の秩序を冒?し、その結果我々の健康を侵害する。フルーツを避けること。≫
5.≪あなた方のとる食物は60から70パーセントが穀物で、20から25パーセントが良く火を通した野菜またはフルーツであるべきである。(ジャガイモ、トマト、なすは避けること!)≫ フランス人の子弟にむけての講演のなかで、次のような詳細をもたらした。≪フランスにはおおよそ600種類の野菜があります。それらは、お金のために利益を優先する近代の耕作者ではなく、神によって栽培されています。フランスには米、麦があり、もしあなたがたが、かつてのようにソバを栽培すれば数百万キロも収穫することができ、昔のブルトン人のように≪頑丈な≫体質を得ることができます。もし私がお茶やあずき、ごまなどのような東洋の産物をすすめるとしたら、それらの産物に相応するようなものを、ここヨーロッパでまだ知らないというだけの事です・・・≫
6.≪特に熱帯性の気候のもとでは、塩で調味し、植物性の油を使うべきです!料理の下準備の仕方はフランス風でも、中国風でもインド風でもよろしい!(酢はつかわないこと)≫
7.≪できるかぎりかむこと、平均して一口に少なくとも30回ほど!≫。 なぜなのか。なぜなら、≪ひとくちごとに完全にかむことで、あなたのあごは疲れてしまい食欲がなくなってしまうので、自動的に食べるのをやめてしまうからです。≫ この最後の点は≪センセイ≫の見解ではとても重要である。彼は、確かに人間はその活動によって、一日に800から1000カロリーで足りると、見積もっている(アメリカの労働者は平均して6000カロリーを消費することを思い出してみよう!)。
───私は食料不足で苦しんでいる病人を一人としてみた事がありません、と彼は説明する。彼らは食欲を満足させるために、享楽に導かれて気をそそるものは何でも食べます。そしていつも極端なほど食べ過ぎるのです、つまりひとつの病気からまた別の病気へと。全ての病気は食べすぎによって発生すると高らかに宣言する事ができます。もしあなたが正しいバランスで食べていても、食べ過ぎる事によって病気にもなりえます。量は質を変えるのです・・・! ≪西洋人のほとんどが食事を快楽と考えています。そうではないのです:それは必要不可欠な、貴重な、神聖な生きるための行為なのです。食物は意識的に敬愛と感謝をもってとられるべきです。。。料理は人生の工場なのです!≫
最期に、彼は断食も勧めている。それは全ての東洋の宗教の固有の一部をなし、キリスト教、ユダヤ教、またイスラム教においても選択の余地はある。≪伝統がそれを望み、叡智が願い、理性が要求する。≫というが、そのような権威から押し付けられた命令によって実践することには反対である。彼は人間は≪羊のように何も努力をしないで誘導されるがままになる≫べきではない、と考える。
マクロビオティックは、自分で自分自身の行動や食物の選択の責任をとること、それらの影響と顛末を知る事を教えています、と強調する。つまり、ある者には一週間から2週間の1度限りの厳格なマクロビオティック(75パーセントから90パーセントの穀物、10パーセントから25パーセントの野菜)で十分であろう。;ある者には、12時間から24時間の飲み物の完全な節制を何度か繰り返す必要がある。;また別の者には、少しの水とあたたかい茶を24時間から48時間飲むだけの完全な食物の節制が必要になる・・・≪他のすべての動物のように、薬や他人の助けなしに、人間は自分自身で治すべきです・・・。≫
(注1) 『黒と白』の912号からを参照のこと。
(注2) (注2)パリ、ヴラン社より
(注)本記事は、原文をそのまま訳しているため、一部読みづらい箇所がございます。ご了承ください。