2.5 貝塚
(1)貝塚は縄文時代を代表するような遺跡である.通常の貝塚は生活ごみの捨て場で,貝殻が主体であるが,貝殻以外に多様なものが発見される.例えば,
@骨:日本は酸性土壌が多く骨は保存されにくいが,貝塚では屈葬人骨をはじめ各種動物,鯨,魚の骨等がある.魚の骨には1m級までのマダイ,サメ,フグ,イワシ,アジ,サバ等があって,当時の漁労の状態を推測させる.
A多量の土器以外に,鹿の骨製の大型銛,犬の糞(犬の寄生虫)等が出ることがある.
(2)福井県鳥浜貝塚(縄文時代前期)は川の中の貝塚で,土砂の堆積によって有機物がよく残っている.木製品(漆塗りのものを含む),漆塗りの土器,弓の破片,栽培植物とその実・・・.
(3)縄文時代中期には温暖化が進み,大幅な海面上昇が起きたので,関東地方ではかなり内陸の方まで貝塚が見られる.また寒冷化の影響は貝塚の内容にも見られる.関東地方の貝塚の貝殻の断面から貝の採取季節を見ると,春から夏に集中している(潮干狩りの時期である).貝の大きさは小型化していて食料事情の見当がつく.
貝塚には動物の骨も多いが,主要なのは猪と鹿である.骨から動物の年齢がわかる.佐渡では猪の骨は3歳以下のものが多いので,弥生時代には絶滅したと考えられる.
(4)東京都北区の中里遺跡は縄文時代の貝の加工施設の遺跡で,周囲は貝塚である.浜辺に大きい穴(1.5m×1m×深さ0.5mとか)があり,底には粘土が敷いてある.中に焼けた跡のある礫が多数あった.海水が引き込める構造で,貝を入れ海水を引き込んでから焼けた礫を投入して貝の蓋を開かせてむき身にし,干し貝にして,交易用の保存食品に加工した施設で,個々の集落には隣接していないので複数の集落で共同使用されたものと見られている.この種の貝塚は縄文時代の産業廃棄物処理場といえる. |