三笠記(「神載山書記」)

 (最新見直し2013.08.15日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 「みかさふみ 解読ガイド」その他を参照する。

 三笠記(ミカサフミ)は、ホツマ伝えと「割りウルリ(瓜)」とも称せられる文献であり、内容的にも近似している。恐らく下敷きにした原書があり、この原典Xは発見されていないが、これをホツマ伝え風に三笠記風にと纏めたのではなかろうかと思われる。これにより互いに互いの読解に必要な文献となっている。いわゆる合わせ鏡文献と云ってよいと思われる。三笠記に先行して「アメノミチ」を記す「カグノフミ」があったようであるが、これはまだ発見されていない。フトマニも同系の書である。

 三書ともホツマ文字と云われる図象文字、同文体で書かれており同時代性が認められる。作成時期は出雲王朝の御世と思われる。その根拠は、「こゑ十二の后立つ文 」の次の記述である。「これ昔 スクナヒコより ヲオナムチ 我に授けり」。「春宮の文」の「去年より向かふ ソサノヲと アマノミチネと 御供して」も然りである。

 ホツマ伝えについては別サイトで論ずるので、そこで確認するとして、三笠記は現在のところ9アヤ(章)分が発見されている。また、江戸時代なかごろの研究者の出版物などに残簡文もある。三笠記(ミカサフミ)、フトマニによって判明するのは、ハラミの宮が富士山の南麓であったことである。他にも実に多くある。

 監修・松本善之助、編者・池田満「みかさふみ・ふとまに」(展望社、平成11.11.1日初版)によると、三笠記の8アヤ分とフトマニは、琵琶湖の西海岸の景勝地・滋賀県高島郡高島町の旧家の土蔵に保管されていた。これを「野々村立蔵本」と云う。野々村立蔵の子孫で、同地在住の野々村直大(ただひろ)氏所蔵の「神戴山書紀」と記された3冊、7アヤ分も存在する。江戸時代中期、和仁こ安聡(わにこやすとし)がホツマ伝えと共に写本している。漢訳文も添付している。

 2013.08.15日 れんだいこ拝


 くになつかのふ           クニナツが陳(の、展)ぶ
 かみかよの とほこのみちも ややさかふ     上が代の 経矛の道も やや離ふ
 かれおをさむる やまとたけ     枯れを治むる ヤマトタケ
 かみにかえさの のこしふみ     神に還さの 遺し文
 きみはみはたお そめませは           君は御機を 染めませば 
 とみもみかさの ふみおそむ        臣も三笠の 文を染む 
 をおたたねこも ほつまふみ そめささくれは       オオタタネコも ホツマ文 染め捧ぐれば 
 みくさのり そなふたからと みことのり 三種法 具ふ宝と 御言宣
 しかれとかみよ ゐまのよと           然れど上代 今の代と 
 ことはたかえは みちさかる         言葉違えば 道離る  
 これもろいゑの つたえふみ       これ諸家の 伝え文
 いまのてにはに なつらえて           今のてにはに 擬(なづら)えて
 かたちとわさと  そのあちお          形と技と その味を
 とくとゑされは みちのくお        とくと得ざれば 道奥を 
 ゆきたかふかと おそるのみなり         行き違ふかと 畏るのみなり
          
 まきむきの ひしろのゐそみ    マキムキの ヒシロの五十三年
 としつみゑ ほつみはつひに     年ツミヱ 八月初日に
 みかさとみ いせのかんをみ     三笠臣 伊勢の神臣
 をおかしま ふもゐそなとし ささくはなをし オオカシマ 二百五十七歳 捧ぐ餞押
        
 みかさふみ ささけたまふお     三笠文 奉げ給ふを
 みわのとみ みちほめいわく     三輪の臣 道褒め曰く
 あめつちも ひらけてかみも めをもわけ            天地も 開けて神も 陰陽も分け
 ひもつきもなり こよのほし      日も月もなり 九世の星   
 あめとこたちと わのそひも   アメトコタチと 地の十一も 
 あしかひひこち とこたちの       アシガヒヒコチ トコタチの 
 みよはみほかみ ふたはしら        御代は陰陽神 二柱
 まつるとほこの みちあれと             祀る経矛の 道あれど
 あまてるかみの やたかかみ       天照神の ヤタ鏡
 つくりみくさの かんたから          創り三種の 神宝
 あめのみまこに とおさつけ           天の御孫に  経を授け
 やまとをさむる         ' ヤマト治むる
 みかかみは こやねにさつく     御鏡は コヤネに授く
 かみのむね ほこのみなもと をこのかみ     神の宗 矛の源 大国の神
 しかれとみちも もろいゑに つかさたかえは   然れど道も 諸家に 仕さ違えば
 ほつまふみ あらわすときに         ホツマ文 著す時に
 あつたかみ つけてきみには     熱田神 告げて君には
 かくみはた をさせたまへは    橘御機 押させ給へば
 かかみとみ ふもとやしろの ふみささく     鏡臣 麓社の 文奉ぐ
 われもあくれは みことのり         我も上ぐれば 御言宣  
 みくさのみちの そなわりて    「三種の道の 具わりて 
 さちゑるいまと のたまえは        幸得る今」と 宣給えば 
 おのおのみをや まつるへし       各々御祖 祀るべし 
 ほすえさかえる そのみちは みかさふみなり 穂末栄える その道は 三笠文なり
 あまてらす かみよりさつく     天照らす 神より授く
 みちのくの ふみうやまいて ともにささけつ     道奥の 文敬いて 共に奉げつ
 をおみわの たたねこかとし ふもみそよ    大三輪の タタネコが歳 二百三十四 
 つつしみのへて そえるはなをし        謹み陳べて 添える餞押

 きつよちのあや  起尽四方の文
 みかさやに あまのこやねの とくふみは ミカサ社に アマノコヤネの 説く文は
 たてにぬきおる まつりこと 経に緯織る 祀りごと 
 よちひとくさお をさむなり 四方人草を 治むなり
 もしやみちきく こころさし もしや道聞く 志 
 あらはとあけて さつくへし   あらば戸開けて 授くべし 
 こもりのいわく    コモリの曰く
 とあけなは かみのみことや あからさま 「戸開けなば 神の見事や 明らさま」
 こやねこたえて  コヤネ応えて
 みちはわち はやくおそきも こころあり 「道は曲道 早く遅きも 心あり
 たつねきたらは われあひて 尋ね来たらば 我会ひて
 そのみちのくお かたるへし その道奥を 語るべし」   
 きみのまつりも すみやかに 君の政りも 速やかに  
 もつれおたたす かみのみち もつれを正す 神の道
 かたちとつとめ みちとみと  形と務め 道と身と 
 よつのをしえも たたひとち 四つの教えも ただ一道 
 をこぬのかみの このよつお ヲコヌの神の この四つを
 あわとにしれる ひとのみの 天地人に統れる 人の身の 
 よつおつつしむ はたのみち  四つを謹む 機(はた)の道
 つかさのかみは くにをさむ  司の上は 国治む
 なかにはしめる しもはたす かれにいまとく   中庭統める 下端治す 故に今説く
 よかのはた したえはういに みおをさむ 四方の機 慕えば結に 身を治む
 そらなるものは ちちきけと   空なるものは 千々聞けど
 みのみはしらお ゆきぬけて  身の実柱を 行き抜けて 
 こえおちかえの たなはたの こえおち返えの 棚機の
 そらひのおとは みにつかす 空杼の音は 身に付かず 
 きくとのほほと のたまえは 聞くとのほほと 宣給えば 
 こもりこきみも もみことも コモリ九君も 百(も)命(みこと)も 
 みちひこもみな うなつけは 三千彦も皆 頷けば 
 さるたはみちの ういおとふ  サルタは道の 初を問ふ
 こやねこたえて コヤネ答えて
 きつのなお をしえのはつと なすゆえは 東西の名を 教えの初と なす故は
 いまわれうめる たらちねの  今我生める タラチネの 
 さきのみをやも ことことく あめのたねなり 先の御祖も ことごとく 陽陰の種なり
 そのかみの あめつちひらけ その神の 天地開け
 なるかみの みなかぬしより  現る神の 御中主より
 はかりなき ひとくさわかれ 計りなき 人種分かれ
 たうときも みこともひこも 貴きも 命も彦も
 なるみちお をさめおさむる なる道を 治め収むる
 ひとのみは ひつきのふゆに やしなわれ  人の身は 日月の映に 養われ 
 めくみしらせん そのために  恵み知らせん そのために 
 いているきつお をしゆなり  出で入る東西を 教ゆなり
 まさにきくへし ふたかみの   正に聞くべし 二神の 
 あのあわうたに くにおうみ 天の陽陰歌に 国を生み  
 わのあわうたに ねこえなる 地の陽陰歌に 音声成る  
 のちにひひめお うむときに  後に一姫を 生む時
 ひるなれはなも ひるこひめ 昼なれば名も  ヒルコ姫
 としおこゆれは たらちねの 年を越ゆれば タラチネの
 よそふみそみの をゑくまも 四十二三十三の 汚穢・隈も
 めはたをはらに あたらしと 女はタ男はラに 当らじと 
 すつおかなさき おもえらく  捨つをカナサキ 思えらく
 このはやかれの いたみおも 子の早枯れの 傷みをも 
 ちおゑしなすか わすれくさ 乳を得し合すが 忘れ種
 ひらうひろたの みやつくり  拾う廣田の 宮造り
 そたてあくまて  かなさきの 育てあぐまで カナサキの 
 つねのをしゑは  みことのり 常の教えは 御言宣
 (誰の御言宣かは不明だが、次行からはその御言宣の内容ということになる)

 きつのはしめの あわうわや き(起)つの始めの アワウワや 
 てふちしほのめ うまれひは 長ぢし初のめ 生れ日は 
 かしみけそなえ たちまひや 炊食備え 立ち舞ひや 
 みふゆかみあけ はつひもち あわのうやまひ 三冬髪上げ 初日十五日 陽陰の敬ひ (一月一日・十五日)   
 ももにひな あやめにちまき 桃に雛(三月三日) 菖蒲に茅巻(五月五日)
 たなはたや ここくりいわひ 棚機や(七月七日) 菊・栗祝い(九月九日・十三日)
 ゐとしふゆ をははかまきる 五歳冬 男は袴着る (十一月)
 めはかつき ことはおなおす 女は被衣 言葉を直す
 あわうたお つねにをしゑて アワ歌を 常に教えて
 あかはなま いきひにみうく  『アカハナマ イキヒニミウク
 ふぬむえけ へねめおこほの フヌムエケ ヘネメオコホノ
 もとろそよ をてれせゑつる モトロソヨ  ヲテレセヱツル
 すゆんちり しゐたらさやわ スユンチリ シヰタラサヤワ』
 あわのうた かたかきうちて ひきうたふ 陽陰の歌 カダカキ打ちて 率き歌ふ 
 おのつとこゑも あきらかに 自づと声も 明らかに
 ゐくらむわたを ねこゑわけ 五臟・六腑を 根・隅分け
 ふそよにかよひ よそやこゑ  二十四に通ひ 四十八声  
 これみのうちの めくりより これ身の内の 巡り優り
 やまひあらねは なからえり 病あらねば 長らえり
 すみゑのをきな これおしる   スミヱの翁 これを知る
 わかひめさとく かなさきに ワカ姫聡く カナサキに
 きつさねのなの ゆゑおこふ  東西南北の名の 故を請ふ  
 をきなのいわく  翁の曰く
 ひのいつる かしらはひかし  日の出づる  頭(かしら)は東  
 たけのほる みなみるみなみ 猛昇る 皆な見る南 
 ひのおつる にしはにしつむ  日の落つる 西は熟沈む
 よねとみつ かまにかしくは ひかしらや 米と水 釜に炊ぐは 火頭や 
 にゑはなみなみ にゑしつむ  煮え花皆な見 煮え静む
 ゑかひとたひの みけはこれ 回日一度の 食はこれ
 ふるとしふより つきみけの ひとはもよろに 経る年古より 月三食の 人は百万に
 つきむけの ひとはふそよろ 月六食の 人は二十万
 いまのよは たたふよろとし  今の代は ただ二万年
 いきなるる みけかさなれは よわひなし 生き均るる 食重なれば 齢なし
 かれにわかきみ つきのみけ にかきはほなや 故に我が君 月の三食 苦きハホ菜や
 みなみむき あさきおうけて なからゑり  南向き 朝気を受けて 長らえり
 みやのうしろお きたといふ 宮の後を 北と言ふ
 よるはねるゆゑ きたはねそ 夜は寝る故 北はネぞ
 もしひときたり ことわけん もし人来たり 応わけん
 あわねはきたよ あふはひて 会わねば北よ 会ふは日方
 みなみにことお わきまえて おちつくはにし 南に事を 分きまえて 落ち着くは西 
 かえるきた ねよりきたりて ねにかえる 帰る北 北より来たりて 北に返る
 きははるわかは なつあおは 木は春若葉 夏青葉
 あきにゑもみち ふゆおちは これもおなしく  秋熟えもみぢ 冬落葉 これも同じく 
 ねはきたに きさすひかしや 根は北に 萌す東や
 さにさかゑ つはみにつくる 南に栄え 西は実に尽くる
 をはきみの くにをさむれは ヲは君の  地治むれば
 きつをさね よもとなかなり 東西央南北 四方と中なり
 きはひかし はなははみなみ 木は東 花・葉は南
 このみにし みおわけおふる 木の実西 実を分け生ふる
 きのみゆえ きみはをめあふ あるしなりけり   木の実故  キ・ミは男女和ふ 主なりけり
 さるたとふ むねとみなもと きつたらも  サルタ問ふ 宗と源 キツタラも
 こやねこたえて コヤネ答えて
 よろはたの むねみなもとは 「万機の 宗・鄙下は
 よかみとち よろはぬふかつ はたはをる 四方みとち 万は貫ふ数 機は織る
 ころものたては かたちなり 衣の経は 形なり  
 ぬきあやおふも かみのむね 貫・紋帯ぶも 上の宗  
 うるほすたては よよのみち 潤す経は 弥々の道
 ほこのをきては みめくみに 矛の掟は 御恵みに
 よこまほろほす はたのぬき 横曲滅ぼす 端の抜き
 むねみなもとの たてぬきの 宗・鄙下の 経・貫の
 やすちたたしく みおをさむ 八筋 直しく 身 を治む
 やたみをさむる よちのわさ  八民治むる 四方の業
 ほねはたのたね ししはらに 骨はタの種 肉はラに
 うまれひつきの うるほいに 生まれ日月の 潤いに
 ひとなりそなふ よかひちの 人態備ふ 四方一内の
 かたおもちいて みおをさむ 型を用いて 身を治む  
 めくみしらねは かたちなし 恵み知らねば 形なし
 たらのそたつも うるほいも タラの育つも 潤いも
 てるきつさねの なかにいて 照る東西南北の 中にいて
 きみのをさむる まつりこと 君の治むる 祀り事
 よろはたすへて よちおそなへり 万機すべて 四方を備えり

 さかのりのあや   酒法の文
 さほひこの いさわにきけは サホヒコの イサワに聞けば
 わかみやの ちちひめめとる そのときに 若宮の チチ姫娶る その時に
 たかきかみきの あやこえは  タカギが酒の 謂請えば
 かみのをしえは あめつちうひの いにしえの   神の教えは 天・地・泥の 古(いにしえ)の   
 きはなきに きさしわかるる あうのめを 際無きに  萌し分かるる アウの陰陽 
 をはあめとなり ひのわなる 陽は天となり 日輪なる
 めはくにとなり つきとなる 陰は地となり 月と成る
 かみそのなかに あれまして 神その中に 現れまして
 くにとこたちの とこよくに クニトコタチの 常世国  
 やもやくたりの みこうみて 八方八下りの 御子生みて
 みなそのくにお をさめしむ  皆その国を 治めしむ
 これくにきみの  はしめなり これ 地君の 始めなり
 よつきのかみは くにさつち 世嗣の神は クニサツチ  
 さきりのみちお うけされは サキリの道を 受けざれば 
 さつちにをさむ やみこかみ サツチに治む 八御子神
 おのおのみこお ゐたりうむ 各々御子を 五人生む
 やものよつきは とよくんぬ 八方の世嗣は トヨクンヌ
 きみとみたみと たみもみつ わさわけをさむ  君・臣・民と  民も三つ 業分け治む(農民・匠・商人)
 みくたりの かみはもふその みこありて 三件の 神は百二十の 御子ありて 
 あめなるみちは めもあらす みつよをさまる 陽陰なる道は 女も現らず 三代納まる
 ままさかきの うゑつきゐもに みつるころ 真榊の 植え継ぎ五百に 満つる頃 
 よつきのをかみ うひちにの 世嗣の男神 ウヒチニの 
 すひちおいるる さいあひの スヒチを入るる 幸の  
 そのもとおりは こしくにの その本在は 越国の  
 ひなるのたけの かんみやに ヒナルノ岳の 神宮に
 きのみおもちて あれませは 木の実を持ちて 現れませば  
 にわにうえおく みとせのち 庭に植えおく 三年後
 やよいのみかに はなもみも 三月の三日に 花も実も
 ももなるゆえに もものはな 百成る故に モモの木 
 ふたかみのなも ももひなき ももひなみなり 二神の名も モモヒナキ モモヒナミなり
 ひなはまた ひとなるまえよ ヒナはまだ ヒト成る前よ
 きみはその きのみによりて 君は その 木の実によりて
 をかみはき めかみはみとそ なつけます  男神はキ 女神はミ とぞ 名付けます
 ひとなるのちに やよいみか 人なる後に 三月三日
 みきつくりそめ たてまつる 酒造り初め 奉る 
 ももとにくめる みきにつき うつりすすむる 桃下に酌める 酒に月 映り勧むる
 めかみまつ のみてすすむる 女神まず  飲みて勧むる
 のちをかみ のみてましわる とこのみき 後男神 飲みて交わる 床の酒
 みあつけれはや あすみあさ さむかわあひる  身暑ければや 翌三朝 寒川浴びる
 そてひちて うすのにこころ またきとて 袖浸ぢて  大小の濡心 全きとて
 なもうひちにと すひちかみ 名もウヒチニと スヒチ神 
 これもうひにる ふることや これも泥濡る 振る事や
 おおきすくなき うすのなも 大き少なき 大小の名も
 このひなかたの をはかむり うおそてはかま この雛形の 男は冠  大袖・袴
 めはこそて うはかつきなり 女は小袖 上被衣なり
 このときに みなつまいれて やそつつき この時に 皆な妻入れて 八十続き
 もろたみもみな つまさたむ 諸民も皆な 妻定む 
 あめなるみちの そなわりて  陽陰なる道の 具わりて 
 たくひなるより としかそえ  類なるより 年数え  
 ゐもつきあまの まさかきや  五百継天の 真榊や
 ゐつよのかみは おおとのち おおとまえなり 五代の神は 大殿内 大門前なり
 つのくゐは おおとのにゐて ツノクイは 大殿に居て
 いくくいお とまえにあひみ つまとなす イククイを 門前に会い見  妻となす
 かれをはとのそ めはまえと やもつつきまて 故男は殿ぞ 女は前と 八百続き詣で
 むよのつき おもたるのかみ  六代の嗣ぎ オモタルの神
 かしこねと やもおめくりて たみおたす カシコネと 八方を恵りて 民を治す
 をうみあつみの なかはしら ヲウミ安曇の  中柱 
 ひかしはやまと ひたかみも 東はヤマト 日高見も
 にしはつくしの  あしはらも 西は筑紫 葦原も 
 みなみあわそさ きたはねの 南阿波・ソサ 北は根の
 やまとさほこの ちたるまて ヤマトサホコの チタルまで  
 およへともよほ つきこなく  及べど百万年 嗣子なく 
 みちおとろひて わいためな  道衰ひて 弁別無
 ときにあめより ふたかみに 時に天より(中央政府) 二神に 
 つほはあしはら ちゐもあき ツボは葦原 千五百秋 
 いましもちひて しらせとて ととほこたまふ 汝用いて 領せとて 経と矛賜ふ 
 ふたかみは うきはしのゑに さくりうる 二神は うきはしの上に 栄くり得る
 ほこのしつくの おのころに みやとのつくり  果の雫の オノコロに 宮殿造り
 おおやまと よろものうみて 央ヤマト 万物生みて
 ひとくさの みけもこかひも みちなして 人草の 食も繭醸も 道なして
 わいためさたむ いさおしや 弁別定む 功や
 あめのかみより ふたかみの 天の守より 二神の 
 ななよのみきも  とほこのり  七代の幹も 経矛法
 こおととのふる とこみきの のりもていわく   子を調ふる 床酒の 法以て曰く
 このさけは とこよいのくち やまかけの この酒は トコヨ イノクチ 山陰の 
 すくなみかみの たけかふに スクナミ守の 竹株に
 とりのついはむ これおみて 鳥のついばむ これを見て
 はしめてつくり かれささけ 始めて造り 故笹笥 
 やよいみかもて ここのくみ またしほりさけ 三月三日以て 九の酌み また搾り酒 
 そさのをの いつもにはしめ つくるこれなり  
ソサノヲの イヅモに初め 造るこれなり

 ひめみをのあや 一女三男の文
 ふもとやに のふるはむかし 麓社に 宣ぶるは昔
 あめきよく たかまにまつり はかるのち  天地清く タカマに政り 議る後 
 つわものぬしか ふたかみの  ツワモノヌシが 二神の  
 ひひめみをうむ とのゐつつ  一姫三男生む 殿五つ
 とえはかなさき こたうるに 問えばカナサキ 答うるに
 みうえふたかみ つくはにて みめくりとえは 太上二神 筑波にて 身周り問えば 
 めのみには なりなりたらぬ めもとあり 女の身には 生り成り足らぬ 陰没あり
 をかみのなりて あまるもの   男神の成りて 余るもの 
 あわせてみこお うまんとて 合わせて御子を 生まんとて
 みとのまくはひ なしてこお 凸凹の交はひ 為して子を 
 はらみてうめる なはひるこ 孕みて生める 名はヒルコ
 しかれとちちは すすよそほ 然れど父は 鈴四十穂
 はははみそひほ あめのふし 母は三十一穂 陽陰の節
 やとれはあたる ちちのをゑ 宿れば当たる 父の汚穢 
 をのこはははの くまとなる 男の子は母の 隈となる
 みとせいつくし たらされと 三年慈くし 足らざれど
 いわくすふねに のせすつる 斎奇船に 乗せ捨つる 
 をきなひろたと にしとのに 翁「拾た」と 西殿に
 ひたせはのちに ふたはしら 養せば後に 二柱 
 うきはしにゑる おのころの うきはしに得る オノコロの
 やひろのとのに たつはしら 八紘の殿に 立つ柱
 めくりうまんと ことあけに 回り生まんと 言挙げに
 めはひたりより をはみきに 女は左より 男は右に
 わかれめくりて あふときに 分れ 回りて 会ふ時に
 めはあなにえや ゑをとこと 女は「あなにえや 愛男子」と
 をはわなうれし ゑおとめと  男は「わな嬉し 愛乙女」と
 うたひはらめと つきみてす ゑなやふれうむ 歌ひ孕めど 月満てず 胞衣破れ生む
 ひよるこの あわとなかるる  ヒヨルコの 泡と流るる
 これもまた このかすならす これも未だ 子の数ならず
 あしふねに なかすあはちや 葦船に 流す淡路や
 あるかたち あめにつくれは ある形 天に告ぐれば
 ふとまにお あちはえいわく  フトマニを 味わえ曰く
 ゐよのうた ことおむすはす 「五・四の歌 言を結ばず
 ことあけも めはさきたてす  言挙げも 女は先き立てず
 とつきとは めのにわなふり  婚ぎとは 雌のニワナフリ
 をゆれなく をとりなきさる 尾搖れ鳴く 雄鳥鳴き去る
 またあるひ をとりよそおふ またある日 雄鳥装ふ
 めかしりて あひましわれは 雌が知りて 合ひ交われば
 あめよりそ とりにつけしむ とつきのり   天よりぞ 鳥に告げしむ 婚ぎ法」
 さらにかえりて ふたかみは あらたにめくり 新に返りて 二神は 新たに回り
 をはひたり めはみきめくり 男は左 女は右回り
 あひうたふ あめのあわうた 会ひ歌ふ 天の陽陰歌
 あなにゑや うましおとめに あいぬとき 『あなにゑや 美し乙女に 会いぬ時』
 めかみこたえて 女神応えて
 わなにやし うましをとこに あひきとそ  『わなにやし 美し男に 会ひきとぞ』
 やわしてあわお ゑなとして 和してアワを 胞衣として 
 やまとあきつす あはちしま ヤマト秋津洲 淡路島 
 いよあわふたな おきみつこ 伊予阿波二名 隠岐三子 
 つくしきひのこ  さとうしま 筑紫吉備の児 佐渡大島
 うみてうみかわ  やまのさち 生みて海・川 山の幸
 きをやくくのち かやのひめ 木祖ククノチ 茅の姫  
 のつちもなりて あわうたに  野槌も生りて 陽陰歌に
 をさむはらみの みやにいて 治むハラミの 宮に居て
 すてにやしまの くにうみて 既に八州の 地生みて
 いかんそきみお うまんとて ひのかみおうむ 如何んぞ君を 生まんとて 日の神を生む
 そのみなお うほひるきまた その御名を 大日霊貴また
 あまてらす をおんかみとそ たたえます   天照らす 大御神とぞ 称えます
 くにうるはしく てりとほる 地麗しく 照り徹る 
 くしひるのこは ととめすと  貴日霊の子は 留めずと      
 あめにおくりて あめのきと  天に上くりて 天の記と   
 みはしらのみち たてまつる 御柱の道 奉る
 かれにはらみお  おおひやま  故にハラミを 大日山 
 たまきねかかえ わかひとの いみなおささく  タマキネ考え ワカヒトの 斎名を捧ぐ 
 ふたかみは つくしにゆきて 二神は 筑紫に行きて
 うむみこお つきよみのかみ  生む御子を 月読の神
 ひにつけと あめにあけます  日に継げと 天に上げます
 このさきに をゑくまにすつ ひるこひめ この先に 汚穢・隈に捨つ ヒルコ姫 
 いまいつくしに たりいたる 今慈しに 足り至る
 あめのいろとと わかひるめ    天の愛妹と ワカヒルメ
 そさにゆきうむ そさのをは  ソサに行き生む ソサノヲは
 つねにおたけひ なきいさち くにたみくしく  常にお猛び 鳴き騒ち 地民挫く 
 いさなみは よのくまなすも わかをゑと  イサナミは 「世の隈 成すも 我が汚穢」と
 たみのをゑくま みにうけて 民の汚穢・隈 身に受けて 
 まもらるために  くまのみや 守らるために 隈の宮 
 かくみこころお つくしうむ かく御心を 尽くし生む  
 ひひめみをかみ うみてよの 一姫三男神 生みて世の
 きみとみのみち  とのをしゑ  君・臣の道 調の教え
 さかりもとらは  ほころはす  逆り惇らば  綻ろばす
 このふたはしら  うむとのは この二柱 生む殿は 
 あまのはらみと つくはやま 天のハラミと 筑波山 
 あはちつきすみ くまのこれなり 淡路・ツキスミ 隈野これなり  
 つわものか はしらにくらふ ツワモノが  柱に比ぶ
 ゆえとえは  をきなこたえて 故問えば 翁答えて
 たまはたて ぬきはうるほす 玉はタテ 貫は潤す
 ほこもたて よこまほろほす  ふたはしら 矛もタテ 汚曲滅ぼす 二柱
 ゆききとりゐの ふたかみと 行き来鳥居の 二神と 
 ききておのおの をしてそめけり 聞きて各々  ヲシテ染めけり
 「経矛法」統治原理の二本柱である「経の教」と「矛」を 二神に擬えている。(イサナキが "経の教" イサナミが "矛")  ここで「玉(瓊)」は「経の教」で、これは「たて(立て・掟・法)」。「矛」は「断つもの」であり、これもやはり「たて(断て・絶て)」。同時に「経」と「矛」は「たて(主体・軸・骨格・柱)」である。  「貫」は、二つの「たて(主体・軸・骨格・柱)」の「経」と「矛」を 連絡して協調させるものであり、「貫(副体・添えもの)」である。 「貫(副体・添えもの)」は「たて(主体・軸・骨格・柱)」に潤いを与える。二本の柱を連結協働させて初めて「汚曲」を滅ぼすことができるのである。同様に鳥居の「玉(柱石)」と「矛(柱)」は「たて(主体・軸・骨格・柱)」 であり、それを連絡するのが「貫(副体・添えもの)」である。

 こゑそふのきさきたつあや    こゑ十二の后立つ文
 みかさはに よるももとみの ミカサ端に 寄る百臣の
 しめくにの まつりたたして   統め国の  政り直して   
 さるたひこ こゑおひのての サルタヒコ こゑを日の出の
 ゆえとえは こやねこたえて 故問えば コヤネ答えて
 これむかし すくなひこより これ昔 スクナヒコより
 をおなむち われにさつけり ヲオナムチ 我に授けり
 かれむかし たかみむすひの やそきねと かれ昔 タカミムスビの ヤソキネと
 ちゐものこらに をしえには  五百の子等に 教えには
 としたあめみや こゑのみち トシタ天宮 こゑの道
 みおまたくして なからえり 己を全くして 長らえり
 こかいもおなし くわのきは 蚕飼も同じ 桑の木は 
 よもにさかえて ゑたもねも 四方に栄えて 枝も根も  
 みつまたなりて そふほすえ 三又なりて 十二穂末
 みもむそゐかの ひのめくり  三百六十五日の 日の回り
 ひとせになりて はるあきと よつにわかるる  一年に成りて 春秋と 四つに分かるる 
 くわのねも つきはそふたひ 桑の根も 月は十二度
 ほしにあい なるそふつきは そふほすゑ 星に合い 成る十二月は 十二穂末
 むかしあまかみ ねおはみて 昔天神 根を食みて 
 みのししめくり さめまたく 身の肉恵り 冴め全ぐ
 いちこおはみて うるほえは イチゴを食みて 潤えば
 なからひよよに たのしみて  長らひ世々に 楽しみて 
 つくれはかえす みはよもつ  尽くれば還す 身は黄泉
 こころはあめに かえうまれ 心は天に 還え生まれ
 ゐくたひよよに たのしめは 幾度世々に 楽しめば 
 ひとのうまれは ひのてなり 人の生まれは 日の出なり
 まかるはいるひ こゑのみち  罷るは入る日 こゑの道 
 おほゑうまるは ひのてなり 覚え生まるは 日の出なり
 あめなかぬしの もはかりよ 天中主の 百ハカリ齢 
 あめのめくりの もよとめち 天の周りの 百万トメチ 
 うまれまかるも ひとめくり 生まれ罷るも 一回り
 ももよろとしの ことふきも ひのひめくりそ 百万年の 寿も 日の一回りぞ 
 ひとくさの ならしふよほも 人草の 均し二万年も
 ひめもすの もものふたきれ  終日の 百百の二切れ
 なかみしか いわすつらつら おもみれは 長短か 言わずつらつら 思みれば
 みなかぬしより ゑのみよに 御中主より ヱの御代に
 ましへりたひ とのよにも 増し減り一度 トの代にも
 ことふきかわり くにみこと 寿変り 地命 
 よたひかわりて とこたちの  四度変りて トコタチの 
 みよはかわらす もはかりよ 御代は変らず 百ハカリ齢
 うひちによりそ いさなきに ウヒチニよりぞ イサナキに
 みかわりいまの ひとくさの 減変り今の 人草の
 ひひたへますお つつしめと 日々食べますを 慎めと
 このなからえお おほすゆえ 子の長らえを 思す故 
 みちをしえるも あまかみの 道教えるも 天神の
 くわにめくらす はらのなの 桑に周らす ハラの菜の
 にかきにかたち かたくなし 苦きに形 頑くなし 
 もよことふきお まもるへらなり  百万寿を 守るべらなり
 あまてらす きみおこゑちに なからゑと 天照らす 君をこゑ道に 長らえと 
 ををひやまさの としたみや 大日山下の トシタ宮
 さらにつくりて ふつなるお  新に造りて 悉成るを
 あめにつくれは ふそひすす 天に告ぐれば 二十一鈴
 ももふそむゑた としさなと   百二十六枝 年サナト
 やよいついたち あめみこは 弥生一日 天御子は
 ひたかみよりそ うつります 日高見よりぞ 移ります
 ふたかみゐめお みことのり 二神斎侍を 御言宣
 たかみむすひと やそきねか タカミムスビと ヤソキネが
 もろとはかりて くらきねか 諸と議りて クラキネが
 ますひめもちこ ねのすけと マス姫モチコ 北のスケと  
 そのとめはやこ こますひめ ねのうちきさき その妹姫ハヤコ コマス姫 北の内后
 やそきねの おおみやみちこ きのすけと ヤソキネの オオミヤミチコ 東のスケと
 たなはたこたえ きのうちめ さくらうちかめ    タナハタコタエ 東の内侍 サクラウチが姫
 さくなたり せおりつほのこ さのすけに サクナタリ セオリツホノコ 南のスケに 
 わかひめはなこ さのうちめ ワカ姫ハナコ 南の内侍 
 かなさきかめの はやあきつ カナサキが姫の ハヤアキツ 
 あきこはしほの やもあひこ アキコは潮の 八百会子
 つのすけうちは むなかたか  西のスケ・内は 宗像が
 おりはたおさこ おしもめは オリハタオサコ 乙侍は 
 とよひめあやこ かすやかめ  トヨ姫アヤコ  カスヤが姫 
 いろのゑあさこ さのおしも イロノヱアサコ 南の乙侍 
 かたかあちこは ねのおしも  カダがアチコは 北の乙侍   
 つくははやまか そかひめは  ツクバハヤマが ソガ姫は
 きのおしもそと つきによせ 東の乙侍ぞ」と 月に因せ
 みこはあまひの くらゐのる 御子は天日の 位乗る
 ひのやまのなも おおやまそ 日の山の名も 大山ぞ
 かれおおやまと ひたかみの 故大ヤマト 日高見の
 やすくにのみや きつさねの 靖国の宮 東西南北の
 つほねはかわり みやつかゑ 局は替り 宮仕え 
 そのなかひとり すなおなる その中一人 素直なる 
 せおりつひめの みやひには セオリツ姫の ミヤビには  
 きみもきさはし ふみおりて   君も階段 踏み下りて 
 あまさかるひに むかつひめ 天下がる霊に 向つ姫 
 つひにいれます うちみやに 遂に入れます 内宮に 
 かなやまひこか うりふひめ カナヤマヒコが ウリフ姫 
 なかこおすけに そなえしむ ナカコをスケに 備えしむ
 みなをりつつり みさほたつ 皆な織り綴り 操立つ
 これおこよみの うりふつき これを暦の ウリフ月
 かれこゑくにの きみとたたゑり  故こゑ国の 君と称えり
 さるたより もものつかさも ひのてえるかな サルタより 百の司も 日の出得るかな

 はるみやのあや 春宮の文
 これきみは こゑやすくにの みやにます これ君は こゑヤスクニの 宮に坐す 
 これはそのかみ とのみこと これはその神 トの命
 もはかりをさむ みおほらに 百ハカリ治む 身を洞に 
 かみもとあけに かえますお 神元明に 還えますを
 みをやことのり ほしとなす 御祖言宣り 星となす
 あめにかかりて このひとつ 天にかかりて 九の一つ
 かれにとしたの あめのみや   故にトシタの 天の宮
 なかくをさめて みやつより 長く治めて 宮津より
 はやきしとへは あまひかみ 早雉飛べば 天日神
 いそきまなゐに みゆきなる  急ぎマナヰに 御幸なる 
 ときにたまきね あひかたり  時にタマキネ 会ひ語り
 むかしみちのく つくさねは 昔道奥 尽くさねば
 ここにまつとて さつけまし ここに全つとて 授けまし 
 もろかみたちも しかときけ  諸神達も 確と聞け  
 きみはいくよの みをやなり  君は幾代の 御祖なり  
 これとこたちの ことのりと これトコタチの 言宣りと
 ほらおとさして かくれます 洞を閉ざして 隠れます
 そのうえにたつ あさひみや その上に建つ 朝日宮 
 きみねんころに まつりして  君懇ろに 祀りして
 のちかえまさん みてくるま 後帰えまさん 御出車 
 ととむるたみお  あわれみて 留むる民を 憐みて   
 みつからまつり きこしめす  自ら政り 聞し召す
 おもむきつける ききすにて  趣告げる 雉にて    
 むかつひめより ことのりし 向津姫より 言宣りし  
 たかみにまつる とよけかみ 高見に祀る 豊け神 
 もちこのすけと はやこうち モチコのスケと ハヤコ内(侍) 
 あちことみたり はやゆけと アチコと三人 はや行けと 
 まないのはらの みやつかえ マナヰの原の 宮仕え 
 ことのりあれは  かとてして   言宣あれば 門出して   
 みやつのみやに あるときに 宮津の宮に ある時に 
 きみのみかりに ちたるくに 君の恵りに チタル国 
 みちおさためて をさむのち  道を定めて 治む後  
 やそきねのおと かんさひお ヤソキネの弟 カンサヒを
 ますひとにねの しらうとと かねなめさしむ  マスヒトに根の シラウドと 兼ね嘗めさしむ
 またおとこ つわものぬしと こくみそえ また乙子 ツワモノ主と コクミ副え 
 つほねととめて かえらんと 局留めて 帰らんと 
 こそよりむかふ そさのをと 去年より向かふ ソサノヲと
 あまのみちねと おともして アマノミチネと 御供して
 ゐとせのうもち かえります   五年の四月十五日 帰ります
 のちひわひこに みことのり 後 ヒワヒコに 御言宣   
 なんちくにゑお うつすへし 汝国絵を 写すべし
 やまとめくりて みなゑかく ヤマト巡りて 皆な描く  
 きみはみやこお くにのさに 君は都を 国の南に  
 うつすはやたみ ううくため 移すは八民 潤くため
 おもひかねして つくらしむ オモヒカネして 造らしむ  
 なりていさわに みやうつし 成りてイサワに 宮移し 
 ここにゐませは むかつひめ ここに居ませば 向津姫
 ふちおかあなの おしほゐに フチオカ穴の オシホヰに
 うふやのみみに あれませる おしほみのみこ 産野の耳に 生れませる オシホミの御子
 おしひとと いみなおふれて オシヒトと 斎名を告れて
 かみありの もちゐたまえは たみうたふ 神生りの 餅飯賜えば 民歌ふ
 さきにもちこか うむみこは 先にモチコが 生む御子は
 ほひのみことの たなひとそ ホヒの尊の タナヒトぞ 
 はやこかみつこ ひはたけこ おきつしまひめ  ハヤコが三つ子 一はタケコ 沖津島姫 
 ふはたきこ ゑつのしまひめ  二はタキコ ヱツノ島姫 
 みはたなこ いちきしまひめ  三はタナコ イチキ島姫
 しかるのち あきこかうめる 然る後 アキコが生める
 たたきねは あまつひこねそ タタキネは アマツヒコネぞ
 しかるのち みちこかうめる 然る後 ミチコが生める
 はらきねは いきつひこねそ ハラキネは イキツヒコネぞ
 とよひめは ねのうちめにて 豊姫は 北の内侍にて
 ぬかたたの くまのくすひそ  ヌカタダの クマノクスヒぞ
 みこすへて ゐをとみめなり 御子すべて 五男三女なり
 さのとのに たちはなうゑて 南の殿に 橘植えて
 かくのみや きにさくらうゑ 橘の宮  東に桜植え
 うおちみや みつからまつり きこしめす 大内宮 自ら政り 聞こし召す  
 あまねくたみも ゆたかなり 遍く民も 豊かなり
 みこおしひとお はるみやと  御子オシヒトを 春宮と 
 なすはいきいく はるこころ  なすは生き活く 春心   
 たみいつくしむ みをやなりけり 民慈しむ 御祖なりけり





(私論.私見)