「テロ資金供与防止条約」考察 |
難民支援:
テロ資金供与防止法でカンパも処罰 国会内で論争
パレスチナ民衆支援のカンパや寄付が、処罰される? 99年12月に国連総会で採択された「テロ資金供与防止条約」(今国会で批准)の関連法案をめぐり、国会で“カンパ処罰論争”が起きている。「テロ」の定義が困難なため「捜査機関の解釈次第で、街頭カンパも処罰の対象になり得る」との意見が出ているためだ。法案は衆院で可決され、成立が確実視されているが、国際協力関係のNGO(非政府組織)十数団体が5月下旬、共同で反対声明を出すなど不安視する声が広がっている。
法案の正式名は「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律案」。市民や国、外国政府などを脅迫する目的で行われる殺人やハイジャック、公共施設での爆破行為などを知りながら資金を提供したり、資金を受け取った者に対し、10年以下の懲役や罰金を科す。
テロに関係する法律なのに、「テロ」という言葉を使わないのは、国連でもテロの定義で論争中だからだ。アラブ諸国は、パレスチナなど民族自決の抵抗をテロの定義から外し、イスラエルのような正規軍による「国家テロ」も対象に加えるように主張し、西側諸国と対立している。
法案は処罰の対象者について、「情を知って、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で資金を提供した者」と規定する。政党で唯一反対する社民党は、委員会審議などで「『情を知って』とはどんな場合か。非常にあいまいで、カンパ先の団体がテロを実行した場合、摘発され得るのではないか」と主張した。つまり、街頭でカンパしたお金が結果的にテロ組織に流れた時、カンパした人が処罰されるかどうかだ。
法務省は「カンパ時点で、テロ行為が行われることを知り、犯行を望む意図がなければ罰することはない。『自爆テロを応援しましょう』とカンパを呼びかける団体はないでしょう。法案の趣旨は国際社会の公約の実行だ」と反論する。
衆院では「捜査権の乱用がなされないように配慮すること」との付帯決議をした。近く参院で本格審議が始まるが、こんなカンパをめぐる議論が戦わされる見通しだ。 【伊藤正志】
[毎日新聞6月2日] ( 2002-06-02-03:01 )