国会審議の流れ |
個人情報保護:プロジェクトチーム発足 反対勢力に理解求め
自民党は19日の役員連絡会で、今国会で成立を目指す個人情報保護関連法案について、反対姿勢を強めているマスコミ業界や市民団体などに理解を求めるプロジェクトチーム(PT)を来週にも発足させることを決めた。法案作成にかかわった亀井久興衆院議員を責任者に、PTメンバーの同党国会議員が各団体を回り、法律の目的などに理解を求める。
同関連法案は、昨年3月の通常国会に提出されて以来、野党の強い反発などで審議入りすらできない状態が続いていたが、与党3党は25日の衆院本会議で趣旨説明を行い、大型連休明けから本格審議入りさせる構え。それを前に与党内からは「『メディア規制』という偏った見方だけ広まり、IT社会で最低限の個人情報を守るという法律の本来の趣旨や必要性が国民に十分に理解されていない」との意見が相次いだため、自民党としてPTを発足させて対応することにした。[毎日新聞4月19日] ( 2002-04-19-20:25 )
個人情報保護法案が衆院で審議入り |
個人情報保護法案の趣旨説明と質疑が25日午後、衆院本会議で行われた。内閣委員会に付託され、大型連休明けから実質審議に入る。政府・与党は今国会中の成立を目指しているが、野党は「表現の自由を侵す恐れがある」とそろって反対する構えで、後半国会の大きな焦点となる。 冒頭、竹中平蔵経済財政担当相が「高度情報社会の進展に伴い、個人情報が著しく利用されていることにかんがみ、個人情報の適正な取り扱いに関し基本原則、義務規定を定めることにより、個人情報の有用性に配慮した」などと趣旨説明した。 同法案は人権擁護法案、青少年有害社会環境対策基本法案と並ぶ「メディア規制3法案」の一つ。人権擁護法案は24日に参院で審議に入った。 個人情報保護法案は、すべての国民を対象とする「基本原則」で、個人情報の取り扱いに関して、「目的が明確にされ、必要な範囲内で取り扱わなければならない」「本人が適切に関与し得るよう配慮しなければならない」などの努力目標を課した。日本新聞協会などは「憲法で保障された『表現の自由』に政府が介入する道を開く」などと批判している。 政府・与党は同法案と人権擁護法案の2法案を今国会で成立させる構えだが、有事法制関連3法案など他の重要法案も多い上、公明党は表現や報道の自由を尊重する表現を盛りこむ修正を検討している。(朝日13:34) |
人権擁護法案、参院で審議入りへ 報道の自由の恐れ |
4.24日の参院本会議で、新たな人権救済機関の創設を柱とする人権擁護法案の趣旨説明と質疑が行われ、審議入りする。本会議後は法務委員会に付託される。 政府案が人権救済機関を法務省の外局に新設するとしているのに対し、民主党は「公正で実効ある救済」のために内閣府の外局とすべきだとする修正案を準備中だ。 同法案は「報道や取材による人権侵害」を救済対象の一つとし、個人情報保護法案と並んで表現・報道の自由を制約する恐れが指摘されている。(朝日19:50) |
個人情報保護法案:審議スタート 修正協議が焦点に
「表現の自由」に政府が介入する道を開くとの懸念が出ている個人情報保護法案の趣旨説明と質疑が25日午後、衆院本会議で行われ、審議がスタートした。与党側は今国会成立を目指す重要法案の一つと位置づけているが、野党側は、参院で24日審議入りした人権擁護法案とともに、「メディア規制につながる」と反発を強めており、今後の審議は難航が必至だ。自民、公明両党にも修正に柔軟な意見があり、与野党間の修正協議が進むかどうかが大きな焦点となる。
趣旨説明で、IT(情報技術)担当である竹中平蔵経済財政担当相は「高度情報通信社会の中、大量、多様な個人情報の利用は欠かせない。一方、人権尊重の理念のもと、慎重に扱われるべきものであり、保護の仕組みの整備は急務だ」と強調。この後の質疑で、小泉純一郎首相は「この法案は国民生活を守るのが狙いで、報道の自由、表現の自由を侵害するものではまったくない。メディアを規制する公権力による関与、罰則もまったくない」と答弁、「メディア規制」との懸念を否定した。
法案は、IT時代の到来と、国民を番号で一元管理する住民基本台帳ネットワークシステムが構築されるのを契機に作られた。デジタル情報のほか、カルテ、学習指導要録などの個人情報も保護対象とし、「適正な方法で取得」「透明性の確保」など5項目の基本原則を規定。ダイレクトメールの住所録などを取り扱う民間業者には、「本人の同意を得ないで第三者への提供を禁止する」など具体的な義務規定が定められた。
違反業者に対しては、所管官庁が勧告や命令を出すことができ、勧告・命令に応じない場合は6月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられる。
一方、報道機関、学術関係機関、宗教団体、政治団体については、こうした義務規定の適用は除外されたが、これらの機関が自ら苦情処理機関などを設置し、保護策を公表する「努力義務」規定を設けた。ただ、基本原則は適用されるため、取材や報道が規制の対象となるとの批判が出ている。また、フリージャーナリストや作家らが報道機関に含まれるかどうかなど報道機関、報道目的の定義のあいまいさも指摘されている。 【中澤雄大】
[毎日新聞4月25日] ( 2002-04-25-13:49 )
![]() 個人情報の取り扱いを定める個人情報保護法案の趣旨説明と質疑が25日の衆院本会議で行われた。竹中経済財政相の趣旨説明に続き、小泉首相は質疑の中で、「プライバシー侵害を防止し、国民生活を守るための不可欠の基盤だ」と述べた。 報道機関の取材活動に関しては、「報道分野は事業者に対する義務規定、主務大臣の監督の適用から除外している。メディアの活動を規制する意図は全くない」と強調した。 民主、自由、共産、社民の野党各党は同法案の廃案または抜本的修正を要求。民主党の山内功氏が「報道・表現の自由を侵害する法案だ」とし、自由党の武山百合子氏は「公権力の民間への不当介入を許すことになる」と述べた。 同法案は民間企業・団体の義務として、個人情報を取得した際の本人への利用目的の通知・公表を定めたほか、本人の同意を得ない第三者への提供を原則禁止している。この規定は報道機関と学術研究機関、宗教団体、政治団体には適用されないが、個人情報について<1>利用目的の明確化と目的外利用の制限<2>適法、適正な取得<3>本人の関与による透明性の確保――などの基本原則を報道機関にも努力規定として課している。 首相は報道機関の定義について、「フリーライター、小説家なども該当する。雑誌、写真週刊誌、ワイドショーも同様だ」と述べ、努力規定に関しては「基本原則で取材源開示の具体的な義務が課されることはなく報道活動の制限にならない。公権力の関与や罰則もない」と強調した。 今国会では、省庁などを対象とする行政機関個人情報保護法案などの4法案も一括して審議される。 (読売4月25日19:31) |
![]() 小泉首相は25日の衆院本会議で、個人情報の取り扱いを定める個人情報保護法案について、「プライバシー侵害を防止し、国民生活を守るための不可欠の基盤だ」と述べた。報道機関の取材活動に関しては「報道分野は事業者に対する義務規定、主務大臣の監督の適用から除外している。メディアの活動を規制する意図は全くない」と強調した。趣旨説明に対する質問に答えた。 民主、自由、共産、社民の野党各党は同法案の廃案または抜本的修正を要求。民主党の山内功氏が「報道・表現の自由を侵害する法案だ」とし、自由党の武山百合子氏は「公権力の民間への不当介入を許すことになる」と述べた。 同法案は民間企業・団体の義務として、個人情報を取得した際の本人への利用目的の通知・公表を定めたほか、本人の同意を得ない第3者への提供を原則禁止している。この規定は報道機関と学術研究機関、宗教団体、政治団体には適用されないが、個人情報について<1>利用目的の明確化と目的外利用の制限<2>適法、適正な取得<3>本人の関与による透明性の確保――などの基本原則を報道機関にも努力規定として課している。 首相は報道機関の定義について、「フリーライター、小説家なども該当する。雑誌、写真週刊誌、ワイドショーも同様だ」と述べ、努力規定に関しては「基本原則で取材源開示の具体的な義務が課されることはなく報道活動の制限にならない。公権力の関与や罰則もない」と強調した。 今国会では、省庁などを対象とする行政機関個人情報保護法案などの4法案も一括して審議される。 (4月26日00:27) |
個人情報保護法案:民主、徹底追及の構え
民主党の熊谷弘国対委員長は25日午前の記者会見で、同日審議入りする個人情報保護法案への対応について「有事法制関連法案と重なり合う問題であり、これらの法律が仮に成立した場合の情報公開の在り方を含め、大変疑義の多い法案だ」と述べ、徹底的に問題点を追及する考えを示した。
[毎日新聞4月25日] ( 2002-04-25-11:46 )
個人情報保護、人権擁護法案の今国会成立見送りへ
与党は7日、個人情報保護法案と人権擁護法案の今国会成立を見送る方向で調整に入った。複数の与党幹部が同日夜、明らかにした。
両法案に「国家がマスコミに介入することになる」などの批判が噴出していることに加え、同日から実質審議に入った有事関連法案をはじめ、医療制度改革関連法案、郵政公社関連法案など審議を優先する法案が多く、審議日程の確保が困難となってきたためだ。今国会では継続審議とし、次期国会以降で改めて成立を目指す方針だ。
自民党国会対策委員会幹部は7日夜、今国会での重要法案の扱いについて、「個人情報保護法案(の成立)は厳しい」と指摘。保守党幹部も「有事関連法案と医療制度改革法案を優先すべきだ」と述べ、個人情報保護法案と人権擁護法案の優先順位が低いとの意向を示した。
(読売5月8日03:01)与党内にも慎重論、個人情報保護法案と人権擁護法案
個人情報保護法案と人権擁護法案について、「報道規制につながる」と反対する野党だけでなく、与党内にも慎重論が出てきた。「政治とカネ」をめぐる不祥事で国会審議全体が停滞する中、与党内では、「これだけ世論の反発が強い法案を無修正で無理やり成立させるのは困難」(自民党幹部)との見方が強まっているためで、今国会では両法案を継続審議とし、次の国会以降で修正、成立させるべきだとの声も出ている。 ◆次期国会以降で仕切り直し有力◆ 与党内の慎重論を主導しているのは公明党だ。 神崎代表が大型連休中の外遊先で後半国会の重要法案として有事と医療制度改革の関連法案にだけ言及したのを機に、メディア関連2法案について、「時期が悪いし、継続審議もやむなし」の空気が広がった。 背景には、同党の支持母体の創価学会に「表現の自由を侵害する恐れがある」との懸念が根強いことがある。学会内では「官が民を縛るのはやめ、第三者機関が(報道機関などを)監督した方がいい」(幹部)などと法案の一部修正を求める声があり、神崎氏ら同党幹部も法案修正の可能性に言及している。 両法案への慎重論は、自民党内でも、「国民に何をどう報道するか、常にギリギリの判断をしている報道機関が法案に警戒感を持つのは理解できる」(参院議員)などと広まっている。このため、同党執行部は懸命に両法案の正当性を訴え、巻き返しを図っている。 4月には、両法案を批判しないよう指導する手引文書を全議員に配布。同月に設置したPRチーム(座長・亀井久興元国土庁長官)のメンバーも7人から16人に倍増した。大島理森国会対策委員長は、個人情報保護法案を担当する竹中経済財政相の海外出張を中止させ、15日の衆院内閣委員会での実質審議入りを目指す姿勢を示している。 自民党は1998年7月の参院選の大敗後、報道内容のモニター制度を作り、世論調査に基づく選挙の予測報道への抗議を連発するなど、政府・与党への批判報道に敏感になっている。同党の両法案への積極姿勢の理由にメディア規制の思惑を指摘する向きもある。実際、PRチームの7日の会合では、「マスコミが反対すればするほど、良い法案だ」との暴論も飛び出した。 10日には、両法案を取り上げたテレビ朝日の4月下旬の報道番組に対し、「一方的な観点からの批判だ」などと同社に文書で抗議を申し入れた。 しかし、公明、保守両党では、スキャンダル国会で与党が守勢に立たされていることを踏まえ、「政治とカネの問題にけじめを付ける意味でも、6月19日の会期末でいったん国会を閉じ、必要な時に臨時国会を開いた方がいい」(神崎氏)と今国会の大幅延長に否定的な声も出ている。 (読売5月12日00:41) |
5.12日読売
建設的議論を期待 |
「人権・プライバシーの保護」と「報道の自由」個人情報保護法案と人権擁護法案をめぐる国会の論戦は、報道とのかかわりを中心に長期化の兆しを見せている。読売新聞社が両法案の修正試案をまとめたのは、このような状況で、報道機関として、観念的な反対ではなく、具体的かつ建設的な提言を行う責任があると考えたからだ。 情報通信技術の発達に伴い、あらゆる分野で蓄積された個人情報が大量に、しかも瞬時に漏えいされる危険が高まっている。個人情報を保護する制度の整備は急務である。また、児童虐待や家庭内暴力、ストーカーなど、さまざまなタイプの人権侵害が起きており、迅速に被害者を救う新たな人権救済機関も求められている。 本社は、国民の暮らしを守るうえで両法案は基本的に必要だと考える。もともと本社は、報道の自由がすべてに優先する絶対不可侵の権利とは思っていない。「人権・プライバシー」と「報道」とがぶつかり合う場面では、人権の保護と報道の自由の調整が当然に必要になると考えている。 両法案に求められるのは「人権・プライバシーの保護」と「報道の自由」の両立である。それは確かに微妙な課題ではあるが、実現不可能なものでもない。 こうした観点から両法案を見ると、現状の政府案には、やはり問題がある。 個人情報保護法案は、取材源の秘匿という報道に特有の問題への配慮を欠いている。法案が規定する「透明性」の原則が報道分野にも適用され、取材源の秘匿が脅かされれば、取材に協力してくれる人は極めて少なくなる。 人権擁護法案は、「過剰な取材による人権侵害」を救済対象としたが、その規定の仕方が不適当で、その結果、許されるべき熱心な取材まで制約される危険がある。 また、不服申立制度がないことや、人権委員会の組織のあり方にも問題を抱えている。 本社の修正試案は、両法案のこれらの問題を解消するのに必要な修正として、個人情報保護法案に対しては2項目、人権擁護法案に対しては4項目の修正を提案した。 読売新聞社は、過去2度にわたって憲法改正試案をまとめ、その中で国民の基本的人権として「人格権」を憲法に新たに明記するよう提言した。 本社が提言した「人格権」の条文は、「何人も、名誉、信用その他人格を不当に侵害されない権利を保障される」「何人も、自己の私事、家族及び家庭にみだりに干渉されない権利を有する」というものだ。 一方、表現の自由について本社の憲法改正試案は「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と記している。 個人情報保護法案と人権擁護法案に対する今回の修正試案は、本社自らがまとめた憲法改正試案との整合性を念頭に置いた。 報道の自由のみを主張する余り、報道によって人権・プライバシーを侵害された被害者が救済を求める道さえも封じるような論調に、本社は同調しない。 読売新聞社の今回の修正試案が、「人権・プライバシーの保護」と「報道の自由」を両立させる法制を実現するための議論の助けとなることを期待する。 |
「報道の自由」と両立を |
政府が今国会で成立をめざす個人情報保護法案と人権擁護法案が論議を呼んでいる。情報通信技術が進展する中、個人情報を保護する法制の整備は急務であるし、新たな人権救済機関の設置も時代の要請にかなうものだ。しかし、その一方で、国民の「知る権利」を保障する「表現の自由」を損なうことがあってはならない。「人権・プライバシーの保護」と「報道の自由」という2つの重要なテーマの両立をどう図るべきか。読売新聞社は、両法案でこの「両立」を図るための修正試案を提言する。 法制の整備は急務本社の修正試案は、両法案のいずれについても、政府案の基本的な枠組みは保ちながら、取材・報道活動へ現実の影響が及ぶ個所に対し修正を求めるものだ。本社が提言する修正点は、個人情報保護法案に対しては2項目、人権擁護法案では4項目である。 個人情報保護法案は、個人情報の取り扱いに関し、刑事罰を伴う各種の義務規定と、罰則のない5つの基本原則を設け、義務規定については、報道、学術研究、宗教、政治の4つの分野への適用を除外したが、基本原則は報道を含むすべての分野の団体、個人に例外なく適用するとした。 基本原則とは、「利用目的による制限」「適正な取得」「正確性の確保」「安全性の確保」「透明性の確保」の5つで、特に透明性の原則が報道分野に適用されると、取材源の秘匿という報道の根幹を守ることが個人情報保護法違反になりかねない。報道分野に関しては、義務規定だけでなく、基本原則のうち「透明性の確保」の適用を除外すべきであると考える。 また、政府案には、主務大臣は表現の自由などを「妨げることがないよう配慮しなければならない」との規定がある。しかし、この条文では、行政に広い裁量の余地を与える恐れがある。そこで、表現の自由などを「妨げてはならない」と修正し、条文を一層明確化するよう求める。 一方、人権擁護法案は、強制調査権を持った新しい行政機関として人権委員会を設けようというものだ。 同法案は、「差別」「虐待」「報道による人権侵害」の3つを特別救済の対象とし、人権委が踏み込んだ調査や強い措置を行うこととした。報道による人権侵害は強制調査の対象からは除外されたが、救済措置については、差別や虐待と同等に勧告や公表の対象となり、人権委は報道機関に対し取材停止の勧告などを行うことができる。 政府案は、こうした特別救済の対象の一つに「著しく生活の平穏を害する過剰な取材」を挙げ、「過剰取材」に当たる行為として、「つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り、押し掛け、電話、ファクシミリ」を反復または継続して行うことと規定した。 問題は、この過剰取材の定義の仕方である。報道機関は、取材活動の中で、張り込みなどのほか、電話やファクシミリで取材への協力を要請することがある。政府案では、これら正当な取材行為まで違法な過剰取材と認識されかねない。 過剰取材の態様として通常の取材で行われる行為を列挙する規定は見直し、「取材を逸脱した行為」による人権侵害に限る規定に改めるべきだ。 また、表現の自由に対する配慮義務の条文の明確化は、個人情報保護法案と同様、必要である。 政府案には、人権委員会の調査や措置に対する不服申立制度が用意されていない。通常の行政処分には不服申立制度があるうえ、処分の取り消しを求める行政訴訟を起こすこともできるが、人権委の措置は行政処分ではないとされるため、行政訴訟の対象にもならない。表現の自由という重要なテーマを扱う以上、不服申立制度は不可欠である。 さらに政府案は、人権委を国家行政組織法第3条に基づく独立行政委員会とし、法務省の外局に位置づけている。だが、拘置所、刑務所、入国管理施設など、人権委の調査対象となり得る施設の多くが法務省の所管であることに照らせば、法務省の外局という位置づけは不適切だ。 しかも、いわゆる「三条委員会」は責任の所在があいまいで、国会のチェックも及びにくい。独立性と内閣による統括のバランスを図るよう、人権委員会は、国家行政組織法第8条に基づく「八条委員会」としたうえで、内閣府の内部機関とすべきである。 |
公明党の冬柴鉄三幹事長は13日の政府与党連絡会議で、個人情報保護法案について、「個人情報保護も必要だが、表現の自由も大事にしなければならないという接点を国民全体が考えることは非常に大事だ。与党3党で協議し、そういう線で成立させなければならない」と修正の検討を提案した。冬柴氏は具体的な修正内容は明らかにしなかったが、同党が法案修正の必要性を明確にしたのは初めて。小泉純一郎首相は、公明党の意向も踏まえ、15日の与党3党首会談で協議するとみられる。
同法案に関しては、自民党内でも麻生太郎政調会長が修正の必要性に言及するなど、政府案のまま今国会で成立させることに慎重意見がある。ただ、法案修正する場合には、なお時間を要することになり、国会の会期を大幅に延長しなければ日程的に成立は難しいとの見方が強い。 【平田崇浩】
[毎日新聞5月13日] ( 2002-05-13-20:24 )
個人情報保護法案、首相が修正を指示 読売案に言及 |
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小泉首相は13日、衆院内閣委員会で審議中の個人情報保護法案を今国会で成立させるため、具体的な修正作業に入るよう政府・与党関係者に指示した。12日付の読売新聞が「報道の自由に対する配慮」を盛り込んだとする独自の修正試案を掲載したのを機に決断したとみられる。「言論規制の恐れがある」などの批判が強い現状を踏まえ、「報道の自由」への配慮を強めることで国会審議を円滑に進める狙いがある。野党は同法案の今国会成立を阻止する構えを崩しておらず、会期の大幅延長なしに同法案が成立するかどうかは微妙だ。 小泉首相は13日の自民党役員会で、「読売新聞に個人情報保護法案の修正案が載っていたが、それも一つの考え方だ。修正を検討してほしい」と指示。首相は担当大臣の竹中平蔵経済・財政担当相や片山虎之助総務相らにも、同様の指示をした模様だ。 政府提出の法案は報道を含むすべての分野について、個人情報の「適正な取得」や「透明性の確保」などを求める基本原則を適用する内容になっている。基本原則に罰則はないものの、報道の委縮などを通じて「表現の自由」の侵害になりかねないとする反対論が強い。また、改善・中止命令を出せるなど個人情報取扱事業者に対する主務大臣の権限が強いことにも批判が出ている。 このため政府・与党内でも、(1)報道分野についてさらに基本原則に関する配慮規定など例外規定を設ける(2)「報道」の定義を明確化する(3)主務大臣の権限に第三者機関を関与させる−−などの修正点が浮上していた。 首相は、修正に前向きな公明党や、提出法案に批判を強めている野党にも配慮しながら、修正を図り、今国会での成立をめざす考えだ。 しかし、政府・与党は今国会の会期が残り40日を切る中で有事法制関連3法案や健康保険法改正案など重要法案を抱えており、この中で会期延長なしに個人情報保護法案の成立まで図るのは難しい情勢だ。(朝日03:03) |
個人情報保護法案、今国会成立を断念 政府・与党 |
政府・与党は6.6日、終盤国会の焦点である4大法案のうち、個人情報保護法案の今国会成立を断念した。複数の政府・与党幹部が認めた。「表現の自由を規制する」という世論の批判に加え、野党の抵抗によって審議が大幅に遅れていることや防衛庁の個人情報リスト問題で行政機関の個人情報保護に対する信頼が大きく損なわれたことから、会期延長しても成立は困難と判断した。政府・与党は同法案に見切りをつけ、郵政関連法案と医療制度関連法案の成立を最優先する考えだ。 同法案を継続審議とするか、廃案として仕切り直すかは、今後政府・与党内で調整する。ただ、継続審議とし、秋に予定される臨時国会で成立を目指すとしても、「防衛庁問題の発覚で時間をおいても成立は難しい」(自民党幹部)という見方が強い。 同法案は4月26日に衆院内閣委員会で審議入りした。しかし、小泉首相が委員会質疑に入る前に、読売新聞の修正試案発表を受けて所管大臣の竹中平蔵経済財政担当相らに修正の検討を指示し、野党が「国会軽視だ」と反発。たびたび審議が中断し、これまでに約7時間しか審議していない。 さらに、5月末の防衛庁問題の発覚以降、個人情報が目的外利用された場合、民間を対象にした同法案には懲役を含む罰則規定があるのに対し、「官」を対象にした行政機関個人情報保護法案には罰則がないことへの批判が高まり、野党の抵抗がさらに強まった。このため、個人情報保護法案の審議が混乱要因となって、首相が優先する郵政関連法案と医療制度関連法案の審議にも影響が出かねないとの懸念が広がっていた。 こうしたなか、福田康夫官房長官は5日、自民党の逢沢一郎衆院内閣委員会筆頭理事から審議状況を聴取。逢沢氏は会期延長しても衆院通過も困難な情勢を伝えた。これを受けて、首相周辺は6日夜、「重要4法案すべてを成立させるのは難しい」と述べ、今国会成立を断念する意向を示した。 一方、自民党の衆参国対委員長は6日までに、重要4法案のうち、郵政、医療制度両関連法案を優先し、有事法制については扱いをさらに詰めることで一致。これに関連して自民党幹部は6日夜、「個人情報は成立させる選択肢から落ちた」と語った。(朝日03:03) |