イラク特措法考 |
2003年7月26日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の小泉親司議員は二十五日、参院外交防衛委員会でイラク派兵法案について、自衛隊が米占領軍と一体となって、イラク国民に銃口を向けるものだと糾弾し、廃案を要求しました。
小泉氏は、公表された米占領当局(CPA)の機構図によると、国連決議一四八三によって派遣された国は国際調整評議会に参加することになっていることをあげ、「日本も参加するのか」とただしました。
川口順子外相は「そことも調整する」と答弁。小泉氏は、外務省が国際調整評議会を「CPAに属する」と説明していることをあげ、「ここと調整すれば必然的に米占領軍と一体となり、占領軍に属することになる」と批判しました。
政府は、日本は紛争当事者でなく、交戦国でないので、占領軍支援には憲法上の問題が生じないと説明しています。小泉氏は、衆院での参考人質疑で国際法学者が、イラク攻撃に参加したかどうかではなく、軍事占領の継続に役立つ行動を行えば交戦国になり、占領の継続を支援する行動はすべて交戦権の行使に該当し、イラクからの正当な攻撃対象になると述べていることを指摘し、政府の説明に道理がないことを批判。小泉純一郎首相は「日本は参戦国ではない」と従来の答弁を繰り返しながら、「そういう説もあるということだ」と述べざるをえませんでした。
小泉氏が「職よこせ」を訴えたイラク国民のデモに米軍が発砲していることを「合法と考えているのか」とただしたのに対し、川口外相は「当局の施政は正当であり、抵抗することは国際法上できない」と答弁し、イラク国民の抵抗を敵視。小泉首相も、川口答弁を「その通りだ」と追認しました。
イラク国民の抵抗に対する武器使用についても、小泉首相は「デモに自衛隊が発砲することはありえないが、攻撃してきたら正当防衛の権利がある」と述べました。
小泉氏は、普通のイラク人も抵抗闘争に立ちあがっていることを指摘し、イラク国民に銃口を向ける法案の危険性を批判。「イラクの復興支援は、軍隊派遣ではなく、国連を中心に非軍事的手段で行うべきだ」と要求しました。
2003年7月26日(土)「しんぶん赤旗」
派兵の具体化を許さないたたかいを/イラク派兵法の強行にあたって 志位委員長が談話
自民、公明、保守新の与党三党は二十六日未明、参院本会議でイラク特措法案の採決を強行し、賛成多数で可決、米英のイラク軍事占領を支援する同法は成立しました。日本が戦後初めて、現に戦闘が行われている戦場に自衛隊の陸上部隊を送り込む、憲法違反の暴挙です。小泉内閣にたいし二十五日午後、日本共産党など野党四党が衆院に内閣不信任決議案を提出しましたが、与党の反対多数で否決。日本共産党の穀田恵二国対委員長が賛成討論に立ちました。
参院本会議で、法案の反対討論に立った日本共産党の小泉親司議員は「戦地イラクへ派兵する究極の違憲法案が、きわめて不十分な審議時間で強行採決されたことを糾弾する」と強調。「自衛隊のイラク派兵を許さないためにさらに奮闘する」と表明しました。
本会議に先立つ二十五日午後の参院外交防衛委員会では、小泉純一郎首相出席で総括質疑を行い、野党が質問したあと、松村龍二委員長(自民)が一方的に質疑終局を宣言。傍聴におしかけていた与党議員が委員長席に殺到してとりまき、野党委員の抗議を押し切って怒号の中で強行採決しました。
同日午前の質疑では、日本共産党の吉岡吉典議員が、「満州事変」(一九三一年)を当時の政府の全閣僚が「沈黙」して容認し、戦争に突入していった歴史を紹介。「『沈黙の協力』を行ってはならない。かつての教訓を生かした判断を行わなければならない」と強調し、廃案を主張しました。
野党側は、委員会での強行採決に抗議し、松村委員長の解任決議案を提出。午後十一時から開かれた本会議は未明までかかりました。解任決議案の賛成討論に立った日本共産党の宮本岳志議員は「徹底審議し、法案の問題点を解明することこそ委員会の責務だった」と審議を打ち切った与党の姿勢を批判しました。
同日、野党四党は、イラク特措法案の成立を狙う小泉内閣の不信任決議案を衆院に提出。同日開かれた衆院本会議で与党側の反対多数で否決されました。
日本共産党の志位和夫委員長は二十六日、イラク派兵法の強行にあたり次の談話を発表しました。
◇
一、二十六日未明、政府・与党は、イラク派兵法の採決を参議院本会議で強行した。法案の無法性、危険性が、衆参の質疑をつうじて明らかになり、どの世論調査でも、国民の多数が反対するなかで、法案を強行した与党の暴挙にたいして、怒りをこめて抗議するものである。
一、派兵法は強行されたが、たたかいはこれで終わるものではない。イラクへの自衛隊派兵が具体化されるのはこれからであり、実際の派兵を許さないたたかいが重要である。
この法律は、幾重もの虚構のうえにつくられたものであり、自衛隊派兵をむりやり具体化すれば、深刻な矛盾が露呈することはさけられない。イラクは「全土でゲリラ戦争」といわれる事態となっており、自衛隊の派兵は、憲法違反の武力行使につながることは、火をみるよりも明らかである。
さらに、米英がイラク戦争の最大の「大義」とし、日本政府が戦争支持の最大の理由とした大量破壊兵器はいまだに発見されず、戦争の無法性、軍事占領の不法性は、いよいよ明りょうとなっている。
自衛隊派兵を強行するなら、不法・不当な米英の軍事占領に、日本が加担することになり、そのもたらす危険と矛盾はきわめて深刻なものとなる。
わが党は、憲法違反の自衛隊派兵の具体化をやめさせるため、ひきつづき国会内外で全力をあげて奮闘するものである。
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イラク復興特別措置法をめぐる国会論戦は、戦争の「大義」とされた大量破壊兵器の未発見問題と、イラク国内の治安悪化に野党の攻撃が集中した。「大義」を見失ったまま、危険な地域に自衛隊を派遣することの是非が問われたわけだが、政府は明確な説明をすることができず、小泉純一郎首相は最後まで「強弁」を連発した。初めて陸上自衛隊を多国籍軍支援のため派遣するという、歴史的な自衛隊派遣法は政府・与党による十分な説明を欠いたまま、強引に成立が図られた。
◆大量破壊兵器
大量破壊兵器問題で、小泉首相は「ないと断定できるのか。フセイン大統領が見つかっていないから、イラクにフセイン大統領がいなかったとは言えない」という「論点すり替え」の答弁をひたすら繰り返した。
首相が開戦当日の3月20日、小泉内閣メールマガジンで「大量破壊兵器を保有するイラク」と断定し、米英を支持した根拠にしたことを野党は再三追及したが、保有していると判断した理由について最後まで正面から答えられなかった。
米英支持について、福田康夫官房長官は国会審議終盤には「もう、支持しちゃったんですよ。それを取り消すことはできない」と答弁。さかのぼって支持の正当性を問うことは無意味、と言わんばかりの政府のホンネが出た発言だった。
◆非戦闘地域
イラクではフセイン残党の抵抗激化による治安悪化が進行しており、首相が参院の委員会可決段階の答弁で、自衛隊派遣見送りの可能性に言及する場面もあった。
ここにきてフセイン元大統領の2人の息子が22日殺害されたことで、イラク国内での対米軍攻撃が激しさを増す可能性さえ指摘されている。こうした状況下、自衛隊が派遣される「非戦闘地域」が果たして存在するのかという疑念が大きくなっているが、首相は「(私に聞かれても)分かるわけがない」と23日の党首討論で「放言」。これについて25日の参院外交防衛委員会でただされると「調査しないと分からない。この発言がおかしいと思う方がおかしい」との言い方で正当化。一方で「この法案は自衛隊をイラクに派遣しなければならない法案ではない」とも述べて、言いわけがましさもみせた。
危険が伴う自衛隊派遣は、「11月総選挙」の時期とかち合わない方がいいとの判断もあって先送りがとりざたされているが、小泉首相は「いつ選挙があるかは私も分からない。選挙と自衛隊派遣とはまったく別だ。関係ない」といら立ちも見せる場面もあった。【上野央絵】
[毎日新聞7月26日] ( 2003-07-26-12:46 )
イラク特措法成立:
「十分に調査し、派遣時期決定」 小泉首相
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小泉純一郎首相は26日未明、イラク復興特措法成立を受け「(国民の)理解は得られると思う。テロ(対策)特措法も当時は多くの理解を得られなくて、野党も反対したが、今は反対してない。後になれば良かったと思うようになる」と述べ、国民の支持は得られるとの考えを強調した。自衛隊の派遣時期については「これはじっくりと調査して、その後です」と語り、十分な現地調査を踏まえて派遣時期などを決める考えを示した。
参院での委員会採決に野党から強行採決との批判が出ていることには、「論点は尽きたと思う。十分審議された」と反論した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
福田康夫官房長官は同日未明、国会内で記者団に「イラク復興に必ず役に立つ。中東地域の安定、世界の平和に貢献でき、日本にとっても明るい展望が開ける」と同法の意義を強調した。
[毎日新聞7月26日] ( 2003-07-26-11:14 )
イラク特措法成立: 与野党7党が談話
イラク復興特別措置法の成立を受け、与野党7党は26日未明、談話や声明を発表した。 自民党(山崎拓幹事長) 国際社会はイラク国家再建の支援に乗り出している。わが国も参加すべきであり、野党が最後まで反対したのは残念だ。わが国が果たそうとする国際的責務に、国民は理解と支持を与えてくれると信じている。 公明党(神崎武法代表) 野党が反対に終始したのは残念だ。政府は新法を軸にイラクの復興、平和と安定へ向けて人道支援、技術支援、インフラ整備など幅広い国際貢献をめざし、積極的かつ重層的な対応を推進すべきだ。 保守新党 イラク復興支援への参加は国際的な責任であり、わが国が国際公約を果たせることを喜びたい。政府は調査団を派遣し、国際貢献の具体的方策を研究するとともに、復興支援に1日も早く参加できる体制を整えるべきだ。 民主党(菅直人代表) 与党の横暴で多くの国民世論の反発と野党の反対を押し切って成立した。大義が疑われる軍事行動の支援のための自衛隊派遣は将来に深い禍根を残す。欠陥法を強行成立させた小泉・自公連立政権の責任は重大だ。 自由党(藤井裕久幹事長) 強行採決で成立したことは誠に残念だ。憲法違反の疑いのあるイラク復興特措法を多数の国民の反対を押し切って成立させたことは、わが国の安全保障のあり方を国際社会の中で疑問視させるものだ。 共産党(志位和夫委員長) 法案を強行した与党の暴挙に抗議する。実際の派兵を許さない戦いが重要だ。自衛隊派兵を強行するなら、不法・不当な米英の軍事占領に日本が加担することになり、危険と矛盾は極めて深刻なものとなる。 社民党 世論調査などでも派遣反対が賛成を大きく上回り、議論が尽くされたと言えない中での強行採決と指摘せざるを得ない。イラクの復興支援とは名ばかりで、米軍支援のための自衛隊派遣だけを目的とした希代の欠陥法だ。 [毎日新聞7月26日] ( 2003-07-26-09:46 ) |
イラク特措法案: 野中元幹事長が批判を展開
「国そのものが壊れていくような気がして、私のような世代は不安で仕方がない」――。自民党の野中広務元幹事長は24、25の両日、テレビの報道番組に相次いで出演し、イラク復興特措法案批判を展開した。 25日午前は日本テレビの番組で「イラクに安全な場所は絶対にない。自衛隊派遣はあくまでも慎重にして、可能な限り別の国際貢献をやるべきだ」と発言。24日夜のTBSの番組では「衆院では十分な審議が行われたとは思わない」との認識を示し、「安易に重要法案が可決されていく。本当にこれで日本の国はいいのか」と語った。 野中氏はイラク法案の採決時に退席し、投票を棄権している。テレビ行脚はイラク新法の成立を前に、反対姿勢をアピールするとともに、自民党総裁選をにらんで小泉純一郎首相をけん制する狙いもあったようだ。 [毎日新聞7月25日] ( 2003-07-25-23:49 ) |
イラク特措法案:
陸自派遣仕切り直し 非戦闘地域 理解に差
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「イラク特措法案について英語のパンフレットを作って米軍に説明するように」。16日夜、石破茂防衛庁長官は、イラクへの派遣計画をめぐる庁内協議の席で、内局幹部、陸海空自衛隊の幕僚に指示した。今月初め、米中東軍司令部(フロリダ州タンパ)から「治安の悪いバグダッド北方のバラドで米軍を後方支援してほしい」との要望が伝えられたことに衝撃を受けたためだ。
バラドは米軍への襲撃が頻発している地域の一つ。法案で活動が禁じられた「戦闘地域」に当たる可能性があるうえ、武器使用に制約のある陸自にとって危険度が極めて高い。防衛庁幹部は「米国は日本の事情を理解していると思ったが違った。意思疎通ができていない状態で米軍支援に派遣するのはかえって危険だ」と述べ、自衛隊が活動できる「非戦闘地域」の認識の違いに驚きを隠さない。
16日深夜まで続いた庁内協議は、結論が出ないまま17日に持ち越された。石川亨統合幕僚会議議長らが出張予定をキャンセルして臨んだ協議の結論は、それまで検討していた米軍支援中心の派遣計画を白紙に戻し、人道復興支援にシフトするという方針転換だった。
イラク国内はバラドに限らず、米軍への襲撃が激しさを増しており、「治安が悪いというレベルを超えている」(防衛庁幹部)。陸自が米軍の後方支援を行えば「米軍と一体」とみなされる恐れがあることも考慮された。同庁は比較的治安のいいイラク南部に陸自部隊を派遣し、日本の政府開発援助(ODA)で建設された病院などで電力供給や給水活動を行うことを検討している。
ただ、自衛隊のイラク派遣はいわば対米公約。「米軍支援はしばらく待ってくれということで、米側が納得するだろうか」(同庁幹部)との懸念も強い。米側から突き付けられた「踏み絵」への対処に苦慮せざるを得ない状況だ。
◇対戦車用武器、装甲車 「戦場」想定の武装化
米中東軍司令官が「ゲリラ戦」と認めるイラク国内の治安状況。政府は「非戦闘地域」が安全とは限らないとの国会答弁を繰り返し、事実上の「戦場」派遣に備え、過去の国連平和維持活動(PKO)派遣より重武装化することを検討している。
イラク特措法案には派遣部隊の武器・装備が明記されておらず、国会に報告される基本計画に盛り込まれる。石破長官は「相手が何を持っているのかに合わせて(武器を)持っていく。制限があるものではない」と国会で答弁し、「何でも持っていけるという誤解を与えたとしたら、お詫びして訂正する」と翌日に陳謝する場面もあった。
陸自は過去のPKO派遣で経験のあるけん銃、小銃、機関銃に加え、対戦車用「84ミリ無反動砲」の携行を検討。相手からの攻撃に備え、重機関銃で武装した装甲車「82式指揮通信車」も持ち込む考えだ。派遣部隊の警備にあたる隊員はレンジャー、空挺団員ら陸自でも過酷な訓練を経験している者を中心に選抜し、銃撃戦に対応できるようにする方針だ。
航空自衛隊はイラク国内と周辺国との間で米軍の物資や兵員、陸自の物資などをピストン輸送するため、C130輸送機を最大3機派遣する計画。だが16日にバグダッド国際空港上空で米軍のC130が地対空ミサイルで攻撃されたことに防衛庁の衝撃は大きく、金属片や熱源を射出して相手ミサイルの照準をそらす「チャフ・フレアー」装置のついた機体を初めて海外派遣に用いることを検討している。
また、派遣する部隊が占領軍のイメージを持たれないように、イラク国民に対し、人道復興支援のために派遣されたことをアピールするチラシなどを事前配布することを計画している。当初は陸自隊員の服装を米軍と同じ砂漠用の迷彩にする予定だったが、「米軍と一体に見られる危険がある」として違う色にすることも検討している。こうした点でも米軍との差別化を図ろうと懸命になっている。
国会会期を延長してイラク復興特措法案の成立を急いだ政府・与党。しかし、実際の陸上自衛隊派遣は時期も活動内容もメドが立たず、11月以降にずれ込みそうだ。イラク国内では米軍への襲撃が激化する。米軍支援を行えば自衛隊も一緒に標的にされかねない危機感も募り、派遣計画の検討作業はイラク国民への人道復興支援に軸足を移す方向で仕切り直されることになった。それでも自衛官に犠牲が出る懸念は消えず、「戦場」を想定した重装備化の準備も進む。「本当に自衛隊を派遣できるのか」(防衛庁幹部)との不安を抱えたまま、イラク復興支援が動き始める。【宮下正己】
◇特措法成立 米は歓迎
【ワシントン佐藤千矢子】米ブッシュ政権はイラク特措法案が成立する運びになったことを歓迎している。開戦前の情報操作疑惑で「戦争の大義」に疑問が突きつけられる中、中東諸国と良好な関係にある日本のイラク復興への本格参加は、米軍主導の軍政の「正統性」強化に役立ち、さまざまな波及効果が期待できるからだ。自衛隊派遣は、米国にとって復興の「実質的需要」を満たしてくれるというよりは、「政治的意味」が大きい。
米軍は、米兵の間に長期駐留や治安回復の遅れにいら立ちが募っていることから、負担軽減のため、パキスタン、トルコなどと派兵交渉を継続中だ。だが仏独両国が派兵には新国連決議が必要と主張したり、インドが派兵見送りを決めるなど、支援国獲得作戦は順調ではない。こうした状況下で日本が自衛隊派遣を決定することについて、米スティムソン・センターのベン・セルフ上級研究員は「非キリスト教国で、中東地域から好感の持たれる日本の参加は、米軍の活動に正統性を与える。日本の参加には特別な意味がある」と説明する。
◇衰えぬ反米、耐えぬ攻撃 首都近郊ラマディ
「自衛隊が来て米軍に協力するなら、みんな殺してやる」。バグダッドの東約80キロにある小都市ラマディの飲食店主(57)は、首を切る仕草をしながら怒り始めた。話を聞く記者の周囲にたちまち人だかりができる。「占領軍は出て行け」「米軍は独裁者だ」。男たちは口々に米軍への怒りをぶちまける。元大統領の2人の息子の死亡が確認された後も、イラク国民の反米感情は衰えを知らない。【ラマディ斎藤義彦】
男たちのほとんどはフセイン元大統領を嫌いながらも、フセイン政権を倒した米軍の占領にも反発する。「旧政権の独裁で苦しめられたのに、米国も同じだ。イラク人を支配しようとしている」。イラク特措法案を審議する日本に対し、飲食店主は「米軍が去った後に来るなら日本も歓迎だ」と付け加えた。
ラマディは、旧政権で権力を握っていたイスラム教スンニ派が多数を占め、フセイン元大統領支持者も残る。先月末には、市中心部で米軍が警察官を募集中、歩道で待つ志願者の列に爆弾が仕掛けられ、20人以上が死亡した。
23日早朝には郊外の高速道路で地雷が爆発、米兵1人が死亡した。路肩の一部は黒く焦げて穴が開き、爆発の強さを物語る。現場を見た元イラク治安部隊員(32)は「米軍の車列がよく休憩しているのを知った上での狙い撃ちだ。米軍はこの辺で無差別に家宅捜索したり、部族の指導者を理由もなく拘束し、住民の怒りを買っている。米軍への攻撃は今後も続くはずだ」と話した。
市の中心部からは米兵の姿が消えている。米兵攻撃が目立ち始めたため、米軍は治安維持はイラク人警察官にできるだけ任せ、倉庫など一部重要施設の警備だけを行う方針に転換したのだ。
だが、ラマディ郊外に1万人規模の駐屯地を構える米軍への反発は衰えていない。米軍が監視を緩めたことで、市内で略奪などが増え、反米感情を高める結果も招いているのが実情だ。米陸軍のスポークスマンは「イラクはまだまだ危険な状態だ。兵士とイラク市民双方の危険を最小限にする最良の方法を探っているところだ」と話す。
[毎日新聞7月26日] ( 2003-07-26-00:14 )