大庭証言、供述調書疑義問題 |
(最新見直し2013.03.04日)
(れんだいこのショートメッセージ) | ||
「嘱託尋問採用問題」の胡散臭さを見てきたが、「大久保、伊藤、桧山、若狭、大庭被告の供述調書疑義問題」も避けて通れない。これを検証する。果たして、マスコミの終始一貫無批判の「検察寄り報道」は適切だったのだろうか。れんだいこには大いに疑問がある。 2007.5.26日号週間現代のヤメ検・田中森一の独占手記「人は私を悪徳弁護士と呼ぶ」は次のように述べている。一部引用する。
2007.6.2日号週間現代のヤメ検・田中森一の独占手記「東京地検の罠と我が潔白」は次のように述べている。一部引用する。
田中森一の内部証言は、ロッキード事件期のものではない。しかし、ロッキード事件期にも同じような取調べ体質があったと推定でき、その意味で貴重な証言となっている。それはそれとして、「最初に検察が作り上げたストーリー」がミソである。一体、誰がシナリオを拵えるのだろうか。田中森一は一兵卒検事なので、そこが説き明かせていないのも止むを得ない。実際には、シナリオ作成者を見定めるのが肝要であり、その黒幕、その奥の院こそが詮索されねばならない。 2005.3.7日 2007.5.23日再編集 れんだいこ拝 |
【大久保被告の供述書疑義問題】 |
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6.22日、丸紅前専務の大久保利春が偽証容疑で逮捕された。これが突破口となる。吉永主任検事の指揮の下、村田恒検事が取り調べに当たった。逮捕から12日目の7.4日、「検事さん、立会い事務官を外して二人きりにしてもらえませんか」とポツリと語り、そこから一気に事件の真相を語り始めたと伝えられている。その内容は次のようなものである。
これを仮に「大久保供述」とする。この大久保証言により、「航空機導入の話しをまとめるために、金を使って、田中前総理に5億円渡した」という事件構図ができあがった。この供述から、「最終ターゲットは田中角栄」という方針が決まったとされている。 |
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そういう重要な役割を担ったのが「大久保供述」であるが、大久保専務の供述を突破口として立件されていったのか、検事の作文に大久保専務が同調したのか、角栄追い落としのための検事-大久保専務共同の共謀供述工作であったのか、未だ解明されていない。 大久保証言に基づき5億円授受の実態が問われることになり、伊藤証言へと繋がって行く。そういう意味で、大久保証言の占める地位は大きい。「大久保供述」の信憑性を廻るやり取りについては「ロッキード裁判の経過」で検証するが、当事者の桧山との現場証言が大きく食い違っており、本来は、大久保証言と桧山証言のどちらが真実なのか徹底的に問うべきであった。にも拘らず、マスコミは朝野挙げて「大久保証言」を誉めそやし、桧山証言は掻き消された。結果的に、大久保証言は、ロッキード事件立証の幕開け的「お役目ご苦労」的立場で済まされてしまった。悪意ある事件捏造の際の典型的事例であろう。 2007.2.28日 れんだいこ拝 |
【伊藤被告の供述書疑義問題】 | |||||
7.2日、丸紅常務の伊藤宏が逮捕された。松尾邦弘検事が取り調べに当たった。伊藤宏は、「大久保供述」を請けて5億円授受の具体的な様子を供述していった。これを仮に「伊藤調書」とする。
伊藤調書を廻って、検察と弁護側が厳しく応酬していくことになった。1・5億円授受場面陳述の不整合、2・5億円報酬の支払い時期の遅延、3・5億円授受の伊藤・榎本間の打ち合わせの不整合について質疑されている。 伊藤調書は、まことしやかに「榎本と伊藤間の五億円のワイロの受け渡し場面」を供述している。具体的な授受の様子は後述するが、ここにきて様々な角度から伊藤調書に対する疑義が噴出し始めている。既述した木村喜助弁護人の「田中角栄の真実――弁護人から見たロッキード事件」は、明確に次のように断定している。
2001年2月号「諸君」での田原総一朗氏の「田中角栄は『無罪』だった!」でも、論文の冒頭で次のように記している。
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これは、読み取る力さえあれば通常は爆弾発言である。問題は、この爆弾発言が、政界と司法界に何ら衝撃を与えないという知的貧困ぶりにある!「カエルのツラにションベン」とはこのことか。「馬の耳に念仏」とはこのことか。 |
【5億円授受疑問その1、伊藤の受渡し証言の杜撰さ】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
伊藤調書では、田中の受託収賄罪の核心部分の一つになる榎本と伊藤間の五億円のワイロの受け渡し場面がまことしやかに記述されていた。以下略述する。ロッキード社は、大久保に「5億円を一度に支払うのは無理なので、4回に分けたい」と提案し、丸紅側はこれを呑んだ。そして現金を受け取るたびに、〝ピーナッ〟、〝ピーシズ〟などの領収書を書くことになった。一ピーナッ、一ピーシズが100万円を意味していた。
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宮崎学・氏は、「民主主義の原価」で次のように疑問を投げかけている。
ほかにも検事の作文調書と言い切っている個所が、この本にはいくつもあり、木村氏の主張どおりなら、事件全体が作文で固められたフィクションということになってしまう。木村喜助氏は検事から弁護士に転じたヤメ検上がりの弁護士で、今になってわざわざこのことを主張する法益は無いことも考え合わせると、我々はこの木村氏の指摘にもっと関心を寄せても良いだろう。 仮にこの通りだとして、金銭授受に関わったのは伊藤宏とその運転手松岡、榎本とその運転手笠原の4名である。笠原運転手は取調べ直後に自殺とされる変死を遂げている。そのうち榎本と松岡は、テレビ朝日昭和58.2.11日放映の田原総一朗、高野孟(はじめ)らのインタビューで、次のように語っている。
つまり、当事者とされている二人ともが金銭の授受行為を否定するという爆弾発言をしたことになる。松岡運転手は、その後あるゴルフ場で、原因不明のまま急死している。ちなみに、伊藤も公判では、「4回の時と場所について、はっきり覚えがない」と調書陳述を翻している。桧山被告の弁護人は、最終弁論の際、「個人的な意見で申し上げるが、問題の金銭の授受は、検察の言う時と場所では行われなかったものと確信する」と述べている。当然桧山本人の言が代弁されたものである。 |
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伊藤供述書の「ホテルオークラの駐車場のホテルサイド玄関先での金銭授受」は何やら暗示的ではなかろうか。従来、これを「荒唐無稽にも」と云う線で読んできた。しかし今気づいた。ホテルオークラはアメリカ大使館は隣接しており、秘密の地下通路があると云う。そういう曰くつきのホテルでの金銭授受ストーリーを拵えていることになる。その意味するところは、「これはアメリカ大使館絡みの国際シナリオである」と云う裏メッセージなのではなかろうか。日頃、国際金融資本に飼われて立身出世したシオ二スタン組合員一同は、「ホテルオークラ絡みの事件」と聞いただけで直立不動となり、後は云いつけに唯々諾々となるのではなかろうか。そういうことだったのかと今にして思う。 この発想を得たのは、「★阿修羅♪ > Ψ空耳の丘Ψ61」の愛国日本氏の2013.3.4日付け投稿「日本の将来、世界の将来はどうなるのか (小石泉の礼拝説教集)」の次の文章からである。感謝申し上げておく。
小泉牧師紹介のこの証言の真相はさておき、「ホテルオークラとアメリカ大使館は隣接している」は動くまい。そういう意味で、「ホテルオークラ絡みの事件」にはアンテナを働かせておきたい。その芸能版が「六本木ヒルズ絡みの事件」なのではなかろうか。 2013.3.4日 れんだいこ拝 |
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【5億円授受疑問その2、5億円報酬の支払い時期の遅延について】 | ||
ところで何と不自然なことに、検事誘導調書の言うように仮に5億円授受が為されていたとしても、支払い時期が大幅に遅延している。その理由を述べた伊藤の陳述は人を食ったような論旨で次のように述べている。
ところが、公判では、桧山氏、伊藤氏とも「事前謀議」を為したことを否定している。ということは、これも又検事の作文であるということになるが、マスコミも含めてこの問題を不問にしている。 実際に5億円の支払いが遅れた理由を木村弁護人から質されると、「私には今もって分かりません」と答えている。他方で、児玉誉士夫については日を置かず13億円支払われたことになっているが、児玉に支払った時期に総理に支払っていない不自然さを突かれて、木村弁護人の「あり得べきことと思いますか」の質疑に、「常識的にはあり得べからざることと思います」と答えている。ちなみに二審判決では、「ほとぼりが冷めるまで受け渡しを延ばす配慮」として遅延理由を推測するという迷文を書き残している。田原氏は、概要「そういう証拠も気配もない。裁判官の憶測に過ぎない。まるで説得力がない」と指摘している。 5億円の支払いを8ヶ月間も放置して後、「榎本敏夫が73年6月末に催促してきたため支払うことになった」と検事調書は記しているが、木村弁護人の質疑に答えた榎本氏は、催促を為したことを否定し、検事の取調べでも一貫して否定していることを明らかにした。つまり、「検事の取調べでも、公判でも一貫して催促を否定」したことになった。 田原氏は、「誰かが嘘をついている」論文で次のように述べている。
その他重要な点での不整合が際立つ答弁が為されているが、マスコミも含めてこの問題を不問にした。 |
【5億円授受疑問その3、5億円授受に於ける伊藤・榎本間の打ち合わせの不整合について】 |
検事調書によると、72.8.25日と11.16日伊藤と榎本は赤坂の料亭「木の下」で、伊藤から「おかげさまで全日空はロッキードに決まりました。これは些少ですが、丸紅からのお礼として総理に渡してください」と云って、現金1000万円を渡したこと、その席で、5億円の授受方法等について話し合いが為されたとある。 ところが、公判では、伊藤が丸紅の秘書課長から受け取ったところまでは認めたものの、「総理に渡してくださいといって1000万円を榎本に渡した」発言を「そんなことは申し上げていない」と全否定した。6人の政治家への3000万円の中から1000万円を捻出したとの調書内容についても、「全て検事さんのストーリーに合わせた」と検事作文であることを明らかにした。何と第103回公判では、伊藤を取り調べた松尾検事自身がそのことを認めざるを得なかった。 榎本は、会食の事実を認めたものの、世事全般の四方山話をしたきりで「ロッキード社とかトライスターなどという話は全くでなかった」、「当然1000万円は貰っておらず」、「(伊藤氏が渡したと言い張るのであれば)伊藤さんと(法廷で)対決させてくれれば全て明らかになる」と主張した。この1000万円については、田中・榎本弁護団のみならず丸紅側弁護団も、伊藤の供述を疑惑して、伊藤が着服したのではないかと推定されている。 |
【5億円授受疑問その4、5億円の運び先について】 |
5億円は、判決では田中の私邸に運び込まれたとされている。しかし、越山会の佐藤昭子の伝では佐藤を素通りして私邸に直接運び込まれるなぞ例が無いということと、必然性が無いと主張している。 |
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以上、1・伊藤の受渡し証言の杜撰さ、2・5億円報酬の支払い時期の遅延、3・5億円授受に於ける伊藤・榎本間の打ち合わせの不整合、4・5億円の運び先についての4点から「5億円授受問題」の不自然さを検討した。「それでもあなたは5億円授受を信じるのか」、れんだいこならずともそういう疑問を覚えるべきだろう。 2005.5.22日 れんだいこ拝 |
【田原総一朗と田中森一の対談「検察を支配する悪魔」の暴露する5億円授受ストーリーの内情】 | |||
田原総一朗と田中森一の対談「検察を支配する悪魔」(講談社、2007.12.6日初版)が次のように記している。
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【桧山被告の供述書疑義問題】 | ||||||||||||||||||
桧山は7.13日、逮捕された。桧山の人となりは次の通りである。
桧山の取り調べは安保憲治・検事が当たった。8.10日、桧山の供述検事調書が作成されている。この時の「桧山自供ストーリー」が次のようにまことしやかに公報されている。それによれば、頑なに調書作成を拒否していた桧山が、安保検事の身の上話を聞くことにより恥じるところとなり、積極的に真実を述べるに至ったという。桧山は公判で、安保検事作文によるこの「お涙シーン」の信憑性について真っ向から否定し、詮議されるところとなった。 公判で、石黒検事と角栄の間で、この時の請託の質疑が為されている。要約すると次のようになる。
こうして、田中は、桧山からの請託も、5億円を受け取る話も、終始一貫して否定し続けた。田原氏の「誰かが嘘をついている」は、驚愕の事実を明らかにした。桧山を取り調べ調書を作成したのは安保憲治検事であったが、80.10.8日の堀田力検事の尋問に答えて為した「桧山自供ストーリー」が、捏造の疑いが強いことを明らかにしている。「桧山自供ストーリー」とは、桧山調書が作成される契機になった「お涙シーン」のことを云う。 それによれば、頑なに調書作成を拒否していた桧山が、安保検事の身の上話を聞くことにより恥じるところとなり、積極的に真実を述べるに至ったという逸話が為されていた。
かく検事の作文経過を暴露したことを明らかにしている。これが実際であったとすると、この一点からでも、当の検事のみならず検察トップに責任が及ぶのが必死というべきであろう。 |
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れんだいこの「左往来人生学院」に、2005.2.19日付で「kinlaw」氏の「安保憲治氏について」が投稿された。これを転載しておく。
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【若狭被告の供述書疑義問題】 | |
秦野章・氏の「角を矯めて牛を殺すなかれ」は次のように記している。
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【大庭被告の供述書疑義問題】 | |
若狭被告の検察批判を相殺する形で大庭が登場している。若狭被告は、全日空のロッキード社のトライスターL1011機種選定につき、田中首相の介入を否定したが、大庭被告は、その若狭被告の人格批判をする形で検察側有利な証言をする役割で登場している。 この大庭の胡散臭い「全日空M資金事件」を確認しておく。「全日空M資金事件」その他を参照する。
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【「雑感日々思うこと」の2011.1.23日付けブログ「事件のひな型&記事のひな型」の指摘考】 | |||
「雑感日々思うこと」の2011.1.23日付けブログ「事件のひな型&記事のひな型」が次のように指摘している。参考になるので転載しておく。
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(私論.私見)