「1977.4.7日第080回国会 法務委員会 第5号」

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 2009.1.29日 れんだいこ拝


【1977.4.7日第080回国会 法務委員会 第5号】
 第080回国会 法務委員会 第5号
 昭和五十二年四月七日(木曜日)午前十時九分開会
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  出席者は左のとおり。
委員長 田代富士男
理 事 大島友治君、平井卓志、寺田熊雄、宮崎正義
委 員 高橋雄之助、佐々木静子、橋本敦、下村泰
発議者 佐々木静子
国務大臣 法務大臣・福田一
政府委員 法務大臣官房長・藤島昭、法務省民事局長・香川保一、法務省刑事局長・伊藤榮樹
最高裁判所長官代理者 最高裁判所事務総局人事局長・勝見嘉美
事務局側 常任委員会専門員・二見次夫
説明員 大蔵省証券局資本市場課長・小粥正巳、通商産業省産業政策局産業資金課長・植田 守昭君

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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○証人等の被害についての給付に関する法律の一
 部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律案(佐々木静子君外
 一名発議)
○社債発行限度暫定措置法案(内閣提出)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (裁判官の罷免に伴う司法行政上の問題等)

    
    ―――――――――――――
○委員長(田代富士男君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。質疑のある方は順次御発言願います。

○佐々木静子君 それでは、私から、最高裁判所に対しまして、昨日の裁判官会議で、本日の新聞報道によりますと、鬼頭判事補事件に関する監督責任者に対する処分が決まったというふうに報ぜられておりますが、そのとおりでございますか、どのような処分が最高裁で決められたのか、お述べいただきたいと思います。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) いわゆる鬼頭判事補問題につきまして、監督者責任を昨日いたしたわけでございます。その内容につきまして申し上げますと、最高裁判所事務総長寺田治郎、大阪高等裁判所長官宮川種一郎、京都地方裁判所長山内敏彦、以上三名に対しましては最高裁判所厳重書面注意、名古屋地方裁判所長・元東京地方裁判所八王子支部長安藤覚、東京高等裁判所判事・元東京地方裁判所八王子支部長鰍沢健三、東京地方裁判所八王子支部長吉沢潤三、以上三名に対しまして最高裁判所書面注意、最高裁判所事務総局事務次長矢口洪一、同じく人事局長私勝見に対しましては最高裁判所事務総長厳重書面注意、以上でございます。

○佐々木静子君 これは非常に広範な方々に対する処分で、特に最高裁直接の下級裁の監督責任者だけではなしに、最高裁の御関係者にも処分がなされたと、こういう先例はあるのかどうか、それからこれはどういうことからそういう処分になったのか、これを述べていただきたいと思います。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 過去におきまして、最高裁判所の長官から口頭注意ないし書面注意というケースがございましたが、最高裁判所から厳重書面注意という例は初めてでございます。

○佐々木静子君 まあ人事局長もその対象のお一人で非常にお尋ねしにくいのでございますけれども、これは最高裁という立場でお答えいただきますと、最高裁のどういうことでどういう考え方からこういう処分をとられたか、その趣旨といいますか、おわかりでしたら述べていただきたい。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) いわゆる鬼頭判事補問題につきましては、すでに御承知のとおりでございます。その結果といたしまして、昨日の最高裁判所発表にもございますように、全国の裁判官全体に対する姿勢について国民の疑惑を招いたわけでございまして、ひいては裁判所全体に対する威信を失墜したということでございまして、裁判所にとりましては非常に重大な事件だというふうに受けとめまして、この際、最高裁判所の名において、事務総局の者も含めまして、昨日、けさほど報道されたような、私先ほど申し上げましたような処分ということに相なったというふうに考えております。

○佐々木静子君 この法律上の根拠というものは、どういうことになるのでございますか、裁判所法の八十条によるものですか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 仰せのとおりでございます。

○佐々木静子君 そうすると、最高裁が「下級裁判所及びその職員を監督する」と、そういう立場の裏返しということでこういう処分をされた。つまり、最高裁も総ざんげされるというその形のあらわれという御趣旨に承ったのでございますが、実際問題として、これは最高裁とすると前例のない思い切った処分ということだと思いますが、これでもうこうした問題は二度と絶対に起こらないとか、あるいはこうした問題が完全に防げるとか、そういうふうな点についてはどのようにお考えになりますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 私も含めまして先ほど申し上げましたような処分を受けたからといって、それだけで事が済むものではないと考えます。私どもも含めまして、いわば監督者の立場にある者、先輩、同僚、それぞれ自粛自戒してこのようなことがないようにすべきだというふうに考えている所存でございます。

 なお、立ちましたついでに申し上げさしていただきますと、最高裁判所の裁判官会議におきましても、やはり最高裁判所自体で責任を感ずべきであるという御趣旨で昨日の最高裁判所発表ということになりまして、最高裁判所裁判官一同がその責任を痛感していただいて、将来このようなことのないように努めたいということで最高裁判所発表文になりましたことをつけ加えさしていただきたいと存じます。

○佐々木静子君 そうすると、実は全国の千四百名余りの弁護士の方々から公開質問状が最高裁に出ていると思うのでございますけれども、その中で特に三点要望されている。貴裁判所は今回の事件の本質を鬼頭判事補の個人的な奇行、性格にとらえているのですかどうかという点ですね、その点はどのように御判断なすったわけですか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) このたびの鬼頭判事補の問題につきましては、いろいろなことが報道され、かつ私どもの調査の対象となったわけでございます。事務総長からも申し上げてあるところでございますが、職務外の行為というものが多かったわけでございますが、この種の行為が裁判所のいわゆる体質から生じたものであるかどうかということにつきまして、私どもは、もしそういうことがあるとすれば、それこそ大いに反省いたしまして、先ほど申し上げましたように、同僚、先輩、後輩、裁判官一同各自自粛自戒していかなければならないというふうに考えておりまして、ただいまの御指摘の裁判所の体質から生じたかどうかということにつきましては、私は必ずしも明確にお答えできないわけでございますが、もし仮にそういうことがあるということになるとすれば、十分考えなければならないし、その対策も考えなければならないというふうに考えておる次第でございます。

○佐々木静子君 この新聞報道によりますと、上司の監督責任が問われた鬼頭元判事補の行動は、テープ持ち込みと無断海外旅行というふうになっておるようでございますが、このテープ持ち込みの件についても監督責任が問われたことについてのいま御答弁も含まれていると思うのでございますけれども、さらに、名古屋地裁での不法退廷問題とか、あるいは名鉄バスむち打ち障害補償要求事件とか、日本航空の手荷物チェック補償要求事件、あるいは大阪地検捜査介入事件とか、あるいは網走刑務所の身分帳閲覧謄写事件、いまの五点、この点についてはどういうことになっているのでございましょうか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 結論的に申し上げますと、ただいま御指摘の事実につきましては、監督者責任を問わなかったわけでございます。順次申し上げたいと存じますが、いわゆる法廷から飛び出した行為ということにつきましては、当時の所長はすでに退官されております。高等裁判所長官まで監督責任を負うべきかどうかはさておきまして、高裁長官も退官されております。それからいわゆる名鉄バスの事故の関係におきましては、この時点におきます地裁の所長はすでに亡くなられております。それからこの点も高裁長官まで監督責任を負うべきかどうかはさておきまして、高裁長官も亡くなられております。

 次に、羽田のいわゆる羽田事件といいますか、羽田空港でのトラブルの件でございますが、これは当時新聞で報道された事実でございますが、報道された事実、私どもで調査した事実等を総合いたしまして、果たして裁判官として妥当な行為であったかどうかについては確かに問題があるかと存じますが、当時におきましても、いわゆる監督責任を問うまでもない行為ではないかということで何らの措置をしなかったというふうに考えます。このたびの監督者責任を考えました際に、この事実も省いたわけでございます。

 次に、大阪地検の問題でございますが、大阪地検の問題が報道された時点におきまして私どもの調査が進行中であったわけでございますが、鬼頭元判事補からいわゆる資料開示の請求がありまして、私どもの方で、それはできないと、拒絶するということを言いましたところ、その後鬼頭判事補は大阪地検の問題についても一切言うわけにいかぬということで、彼自身の供述、弁解というものを結局得ずじまいであったわけでございまして、結論といたしまして、私どもといたしましては、いわゆる大阪地検の事件介入事件につきましては真実を解明できなかったということになろうかと存じます。

 
次に、網走刑務所の問題でございます。すでに報道されておりますように、この問題は入手したこと、それからそれを流したかどうかということ、二つに分かれるかと存じます。鬼頭元判事補から網走で入手した資料が流れているのかどうか、この点につきましては、私ども結局解明できずじまいであったということでございます。なお、入手の事情につきましては、当初から私どもの前で述べていること、それと、その後訴追委員会の席上で当時網走刑務所で録取した録音というものが新聞で報道されたわけでありますが、そのこともあわせ考えさしていただきまして、鬼頭元判事補の資料入手の行為について監督責任を問うまでもないという考えでこのたびの対象事実から省かさせていただいた次第でございます。

○佐々木静子君 これは裁判所が責任を国民に対して痛感されて、特にいままで処分の対象になったことのない事務総長とか、あるいは高裁長官とか、あるいは局長とか、いわゆる高位の立場にある方々がいろいろとこういう処分を受けられたということは、最高裁の総ざんげの姿勢をあらわされたものだと思うのですけれども、また、逆に考えてみるならば、裁判所法の八十条で最高裁が「下級裁判所及びその職員を監督する」と。これで監督権限を非常に強化するのではないか、そしてまた、下級裁判所においてもその監督権者が個々の裁判官に対する締めつけというものが非常に強くなり、かつまた、下級裁判所に対する最高裁当局の締めつけというものが勢い強化されるのではないかということが一面非常に心配されるわけですけれども、その点については最高裁はどういうふうに考えておられるのですか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 御承知のとおり、裁判官に対する監督という問題につきましては、従来具体的な形で検討されたことはまずなかろうかと存じます。それは、裁判官の職務の独立ということに淵源しているものというふうに私は考えます。申し上げるまでもございませんが、それぞれの監督者の立場で各裁判官に対する締めつけとか、ましてや職務上の独立した職務に対する介入という形で監督ということをするというようなことは毛頭考えておりません。もうすでに御承知のとおりでございますけれども、われわれの出勤の状況、あるいは休暇のとり方等につきましても、従来はいわば自主的に行われてきておりましたが、現在の時点におきまして、そういう形で行うことはやはり妥当ではないということで、高裁長官の申し合わせということで将来けじめをつけようというような形をとらしていただいておるわけでございますが、そのようなことにあらわれておりますように、私どもの方から締めつけという形でそのようなことを行うつもりはございません。十分裁判官全体の自粛自戒をまつように私どももいろいろ考えさせていただくということに、そのように考えておる次第でございます。

○佐々木静子君 これは鬼頭判事補という人によってまあ氷山の一角があらわされたいまの司法行政のあり方そのものに問題があるという意見が非常に多く伝えられておるわけでございますけれども、いわゆる左に向いての締めつけが強くて、その反動として右寄りといいますか、右的な思想を持っている人たちを温存さした、放任したという最高裁の姿勢というものが当委員会においても鬼頭問題をめぐって何度も論議されたわけでございますが、実は今度の新任の裁判官の採用につきましてもやはりそういうふうな傾向が顕著に出ているのではないか。実は、昨日も、司法の独立と民主主義を守る会、関係諸団体、あるいはそれに関連する諸政党の集まりがあったわけでございますけれども、やはりそういう事柄について、この鬼頭問題を契機として必ずしも最高裁の姿勢が民主化されたというふうには受け取れない面があるというふうな議論が多かったのです。まあたまたま私もきのうことしの新任の裁判官の採用を拒否されたという方にお会いしたわけですが、その方も、修習地が京都で、しかも教官は鬼頭判事補であったと。そして、研修所の方ではまた女性差別発言でいま問題になっている教官であったと。考えてみると非常な不運なめぐり合わせで、しかも裁判官の任官を拒否されたという話も伺ったわけでございますけれども、そのあたり、少なくとも鬼頭判事補を教官にして、これは修習生の方から教官を選べないわけですから、鬼頭判事補のもとで指導を受けた修習生、そしてまた、女性差別発言で問題になっている教官のところで勉強をして、これも自分が選んだわけではないわけですけれども、そして採用拒否になっている。こうした問題が、どうも、外部の国民の目から見ると、これはいろいろな原因があって御採用にならなかったのだと思うのですけれども、何かそこにひっかかるものを感ずるわけなんですね。そうした国民が何かすっきりしないものをそういう話の中に持つ、鬼頭判事補が修習生の指導に当たっておったと、そういうことについて、そのもとで修習を余儀なくされて巣立っていく法曹に対して、最高裁はどのような責任を感じておられるのか、ちょっとその点もお述べいただきたいと思うわけです。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 御指摘のとおり、京都地方裁判所は修習生の実務のための配属庁になっております。その際に、一線の裁判官にそれぞれの部についてもらいまして、その部の裁判官からいろいろ指導を受けるということに相なっているわけでございまして、その点は申し上げるまでもございませんが、特に京都の地裁におきまして鬼頭元判事補の部ないし彼の事件だけから外す積極的な理由がなかったので鬼頭元判事補についたというふうなことに相なろうかと存じます。私どもといたしましては、実務修習につきましては、司法研修所それから現地の裁判所にお任せ申し上げているところでございますが、ただいま御指摘の不採用になった修習生が鬼頭判事補の指導を受けたと、あるいは研修所の教官が女性差別発言で問題になっている教官だとの御指摘でございますが、たまたまその不採用になった方が鬼頭元判事補のもとにいわば配属され、かつ研修所の教官が佐々木委員御指摘のような教官であったからということにつきましては、その因果関係といいますかにつきましては私ども的確に承知しておりませんけれども、そのようなことはあってはならないことでございますし、そこにいわば因果関係というものは私どもないものというふうに考えております。

 なお、立ちましたついでに申し上げたいと存じますが、本年度の判事補採用は、現在まだ内定の段階でございますが、すでに新聞でも承知かと存じますが、三人不採用になっております。

○佐々木静子君 それでは、もう時間がございませんから、最後に、繰り返すようでございますが、この鬼頭問題を単なるたまたま起こった突発的な、裁判所にとっても思いがけぬ不幸な事件ということで処理してしまわれるのではなしに、今後この問題を契機として司法行政のあり方を根本的に御検討いただくということを特に要望いたしまして、私の質問は終わりたいと思います。

○橋本敦君 最高裁が、この鬼頭問題に関して、事務総長を初めとして、裁判所内部の最高首脳部を含めた行政監督上の処分をしたということ、このことは最高裁として本当に鬼頭問題についての責任を国会、国民並びに社会に明らかにしたことになるのかどうかという点について私は一つの重大な疑問を持ちます。その第一の疑問は、鬼頭史郎の行動について、そしてまたその事実と背景について、最高裁は調査委員会を設けて調査したわけですが、完全にこれは解明をされたとはとうてい言えない状況にある。まず、この点について、人事局長は、完全に解明されていない事実は率直にお認めになりますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) そうおっしゃられたとおりだと思います。特に、先ほども具体的に申し上げました網走刑務所の宮本資料問題につきまして、その資料が鬼頭元判事補から流れたものか、あるいは流したものかということ等につきまして、御指摘のとおりであろうと考えます。

○橋本敦君 その網走問題についてはまた聞きますけれども、たとえば調査が十分であるかどうかについて一点伺いますが、先ほども問題になった昭和四十五年三月六日、これは名鉄バスでむち打ち症になったという補償要求をして、五十二万円の示談金を鬼頭史郎が名鉄バスから受けたという事件ですね。これは昭和四十五年です。問題なのは、乗っていた人はだれもむち打ちというようなことはないのですが、彼だけだったという点、これが一つ問題ではありますが、特にこの五十二万円の内訳の中に、同判事補の一カ月分の休業補償が入っている、こういうことが弁護士会の調査でも明らかであります。最高裁は御存じと思いますが、最高裁は彼に対して一カ月分休職を命じ、そして無給として処置した事実がありますか。私はこういう事実はないはずだと思います。この点はいかがですか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) それは御指摘のような事実はございません。

○橋本敦君 そういたしますと、彼は休業補償名目でまさに一カ月分の給与相当額を詐欺的に取ったというようなきわめて悪質な行為である。この点について最高裁の調査はどうなっておりますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この名鉄バス事件につきましては、いわゆる示談が成立したわけでございますが、示談金は約五十万弱でございます。その内訳は、治療費、入院費、これが二十万余、それから入院雑費として三万六千余、それから慰謝料等として二十五万というふうな調査に相なっておりまして、ただいま御指摘のような休業補償という名目はないと思います。

○橋本敦君 それは、その示談書それ自体から正確な資料に基づいての答弁ですか。名鉄バスから事情を聞かれましたか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) ただいま申し上げましたのは、当時の地裁の調査をした者が名鉄バスから聞いたことに基づくものでございます。

○橋本敦君 その点も私は正確だとは思わないのですが、そういたしますと、最高裁は当時地裁からそういう報告は受けて、少なくとも昭和四十五年三月六日の事件発生後こういう事件があったということは、これは最高裁は知っていたわけですね。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 当時、その旨を名古屋の高裁の事務局長から報告がございました。

○橋本敦君 そのときに、裁判所としては、この示談解決ということに持っていく鬼頭判事補の諸行動、たとえば自分が泊まっているナゴヤキャッスルホテルに事故当日からすぐ二日間泊まり込み、名古屋に自宅がありますよ、そこに帰っていない。それから聖霊病院に通院をした。その翌日には特等室に今度はその病院に入院をして十九日間在院した。まあ言ってみれば、大げさな奇怪な行動があった。そして五十万弱の補償金を取った。これは相当だと最高裁は考えていましたか、彼のとった行動と解決は。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 当時最高裁としてどう考えたかということでございますが、このたびの事件の調査に当たりまして、改めて名鉄バスその他関係者に当たりまして確認したわけでございますが、この行為について裁判官として妥当でない行為であったというふうに考えます。

○橋本敦君 そうなんですよ。全く妥当でないんですよ、この一つをとってみてもね。そうしますと、四十五年に、いまから七年前ですが、彼がこういう妥当でない行為をとったということが一つあった。ところが、この問題については、報告までさせながら何ら処置をしなかった。

 その次に、四十七年の十二月十八日の日本航空でのボディチェックを拒否して大問題を起こして、そうして裁判官だということで彼はいばり散らして役員を呼びつける。こういうことの問題でも、これは私は裁判官として妥当な行為とは思われませんが、この事件が起こった四十七年十二月、この直後あたりに報告は裁判所になされておりますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この点につきましては、新聞で報道されまして、鬼頭判事補のいわば意見その他につきまして調査をいたしております。

○橋本敦君 調査した結果、彼のとった行動は裁判官として妥当だととうてい思われないと私は思いますが、そう判断されたことは間違いないでしょう。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 羽田空港のケースにつきましてこれをどういうふうに評価するかという問題につきましては、いろいろな意見があろうかと存じますが、私どもの当時得ております資料を見ましても、まず空港側ないし日航側の態度といいますか応接――いや、その前に、まずボデーチェック自体が果たしてどうであったかということはやはり一つの問題であろうかと存じますが、あるいはその後の具体的な応接態度に裁判官としての行動としては慎重な配慮を欠いておったのではないかというようにも考えられます。

○橋本敦君 だから、これも妥当でないんですよ。当然ですよ、日航に私ども国会議員が乗る場合でもボデーチェックを受けますよ。裁判官だから人権侵害だ、こんなことを言うのは非常識きわまりますよ。これも四十七年に起こっている。最高裁判所は報告を受けてそれも承知だ。

 そしてまた、四十九年になりますと、先ほども議論に出ましたが、彼は八王子からわざわざ大阪地方検察庁へ出かけて、わが党の神崎敏雄氏が告訴をした自由新報に対する名誉棄損告訴事件について、彼は地検に行って介入をしている。この事実についても調査をされたと思いますが、これは鬼頭氏がものを言わなかったということで事案の真相がきわめられなかったと人事局長はおっしゃいましたが、しかし、これについては検察庁あるいは法務省から事実関係の連絡と報告は最高裁にあったはずだと私は思いますよ。その点はいかがですか、連絡はあったでしょう。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 周辺の事情につきましては、私どもなりに調査をいたしました。

○橋本敦君 わかりました。その調査の結果、彼が、担当検察官に対して、この自由新報が書いた記事の資料は信用できる公安情報だからこれは正確なんだと、名誉棄損罪は成立しないんだ、こういうのを起訴すれば共産党が喜ぶだけだと、こういうように担当検事に申し向けたという事実は間違いありませんか。周辺調査で明らかになっていますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) そこまで私どもとしては解明できておりません。

○橋本敦君 この話を直接に受けた担当検察官から事情を伺えばそれは明らかになることですから、それは事情を伺いましたか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 直接には伺っておりません。

○橋本敦君 間接に文書その他で報告を受けて事情を知っていると、こういう意味ですか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 仰せのとおりでございます。

○橋本敦君 それでは、鬼頭は担当検察官にどういうものの言い方をしたのか、私がいま指摘したとおりでないとすれば、どういうものの言い方をしたのか、概要をおっしゃってください。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 具体的にどういう会話があったかについては、解明できておりません。

○橋本敦君 解明不十分に過ぎませんか。現職の裁判官が自分の勤務地からはるか離れて、そしてこのような名誉棄損罪の捜査に介入行為をするということは、これは訴追委員会は時効その他の関係で不訴追になったけれども、裁判官のあり方としては断じて許されないことですよ。これが共産党の神崎敏雄氏が名誉棄損で告訴をしているということだから、わざわざ彼は出ていったんです。全国にたくさんある告訴事件について彼が介入したという事実はないですよ。これですよ、問題は。まさにここに彼の反動的背景なり思想の問題がある。これを、いま局長がおっしゃったように、不十分な調査のままで終わらして最高裁はよろしいですか。担当検察官に当時どういう話があったかお伺いすればすぐにでもわかることではありませんか。なぜこれをやらないんです、最高裁は。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この問題につきましては、ただいま御指摘のような御批判があることは十分承知しております。先ほどから申し上げておりますように、本人のいわば弁解、意見を聞く機会をとうとう得ずじまいでございましたので、御指摘のとおり、いわば周辺の事実調査につき不十分であったという御批判は甘んじて受けさしていただきますが、また、結果的には不十分ではないかという御指摘でもございますが、私どもなりにこの事件につきましては結局解明できずじまいということに相なったわけでございます。

○橋本敦君 いま、調査が不十分なことは認められましたが、調査をする積極的熱意がないとしか私は思えませんよ。これはやれるんですから。現に鬼頭が行った事実は間違いない。これは間違いないでしょう、局長。これは認定されているでしょう。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 現実に大阪地検に行ったかどうかにつきまして、まず、当時の八王子支部に問い合わせましたが、この件については八王子支部の資料としては出かけたことをいわば証明する資料はございませんでした。

○橋本敦君 周辺事情から……
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) その辺の周辺事情は、先ほどから御指摘のとおり、大阪地検側の情報といいますか調査でありますと、本人が参ったという大体新聞報道どおりの事情であるというふうには伺っておりました。

○橋本敦君 ですから、鬼頭が大阪地検に出かけた事実は裁判所もこれは否定できないんですよ。このことをなぜ不十分な調査のまま終わらせるか。鬼頭がとやかく言って最高裁の調査に応じない。ならば、なおさら担当検察官に人事局長は調査員を派遣するなり、あるいはあなた自身が出向かれるなり、調査を遂げるべき性質のものですよ。いま、あなたは、批判は甘んじて受けるとおっしゃったが、そういう甘んじて受ける姿勢がまさに鬼頭の行動を甘やかしているのじゃないですか。これが事実とすれば、現職裁判官が検察官の捜査にしかも反共を目的として介入するなんということは断じて許されませんよ。これはまさに分限を逸脱した行為どころか、明々白々の政治的介入行為ですよ。私は改めてこの問題について今後二度と裁判所内部でこういうことが起こらないというそのことを、処分という形で示すのではなくて、このことを徹底的に調査することによって示してもらいたい。このことについて調査をやるということを最高裁は約束すべきだと思いますが、どうですか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この事件に関する報道は、的確な記憶でございませんが、大分あとになって報道された事実でございます。先ほど申し上げましたように、私どもとしてはできるだけのことをやるということで調査を続けたわけでございますが、その後訴追の申し立てをいたしました。それからほかの方々からこの件に関する訴追の申し立てがございまして、訴追委員会の方にいわば事実調査が実質的に移った。一方、鬼頭元判事補に対する事情聴取も、先ほど申し上げましたような事情からどうしても本人から聞くことができなかったというような事情がございます。それから新聞報道によりますと、この事件については不起訴になり、また検察審査会に対する申し立てもあるように聞いております。そのようなことがございまして現在に至っているわけでございます。

○橋本敦君 再調査はおやりにならないということですか、局長。私の質問はそういうことです。やればやれるんですよ。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 現在、私どもといたしましては、この事件は遺憾ながら不解明のままで調査は打ち切らしていただくつもりでおります。

○橋本敦君 けしからぬですよ。訴追委員会が訴追しなかったのは、訴追委員会側の理由がある。それはそれでよろしいです。最高裁として調査委員会をわざわざ設けながら、そしてまた罷免の訴追までしておきながら、この点について批判を甘んじて受けるというようなことを言いながら、十分な調査を遂げず、また調査をしないという姿勢は、本当に私は最高裁自身が鬼頭問題について国民の前に深く反省を示した姿勢とはとうてい受け取れませんよ。鬼頭をかばっていることになるんですから、客観的に。最も重大な監督責任を負う裁判所がこのような形で客観的に鬼頭をかばうような姿勢を示しながら、一方で事務総長以下の表向きの処分をしたって、私どもは納得できませんよ。

 さらに、網走の身分帳の閲覧問題について言うならば、先ほど人事局長は鬼頭の行動に対して微妙な表現をお使いになりましたね。もう少し正確に言ってもらいたいのですが、これはなぜ鬼頭に責任がない、こう判断されたのですか。法務省の録音テープ、訴追委員会で録音テープも出たような事情も云々ということをおっしゃって微妙な言い回しをなさったように私は伺ったのですけれども、裁判所がこの問題について鬼頭に責任がないと、したがって監督責任もないと、こう考えられた理由をもう少し明確におっしゃってください。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 資料入手のいきさつにつきましては、すでに当委員会にも御報告申し上げたと存じますが、私どもの調査ではすでに申し上げたとおりでございます。当時法務省側の調査と大分食い違っておりまして、真実が那辺にあるのかどうかということについては十分解明できずにおったわけでございますが、その後、先ほど私から申し上げました訴追委員会において鬼頭元判事補がテープを聞かせたというような報道がございまして、その新聞報道を見まして、私どもの前で述べたことと総合いたしまして、その入手経路については監督者責任を問うまでもない事案であるというふうに考えた次第でございます。

○橋本敦君 そこのところを具体的に言ってほしいというんです、最高裁の見解を。つまり、こういうことですか。鬼頭史郎が身分帳という極秘の文書を閲覧したについては、刑務所長もしくは大きく言えば法務省側の了解、承諾を得てやっているというように裁判所は考えると、こういうことですね。だから、したがって、鬼頭史郎には問題はないと、こう考えたと、こういうことですか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) きょうこの段階できのうのいわゆる処分問題について申し上げますことは、監督者の責任を問うまでに至らない事案であったというふうに御理解いただきたいと存じます。

○橋本敦君 大変言葉を濁らせておっしゃるのですが、もう処分もあなた方自分でやっておられる事件だし、調査はこれで終わるという調査委員会を解散された事件だから、ざっくばらんにおっしゃってくださいよ。裁判所側の考えは、鬼頭が身分帳を閲覧したのは、いいですか、これは職権乱用だとかあるいは職務上の違反行為だとかいうようなことではなくて、法務省あるいは刑務所側の了解を得てやっている行為だと、いいですね、了解を得てやっている行為だと、こういう意味で、鬼頭の言い分はそういう言い分だし、裁判所もそう思うと、そう判断すると、これが基礎になって監督上の処分の必要もないと、こういうことでしょう。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 申し加えさしていただきたいと存じますが、この網走の件につきましては、いわゆる準起訴手続もあることでございまして、私どもといたしましては、現在、先ほど申し上げました監督責任を問うまでには至らない事案であるというふうに重ねて申し上げたいと存じます。

○橋本敦君 何遍聞いても肝心なところの答弁を局長は避けて通られますね。それじゃ、こう聞きますが、よろしいですか、彼が網走へ行ったのは、これは職務上の出張という行動ではないことは事実。たまたま裁判所の出張ということで出かけてそのついでに出かけた。彼は、自分がかねがね、かねがねですね、治安立法問題について研究をしているので、その研究に資するためにこの書類を閲覧したかったのだという、そういう動機と目的を彼は言っておる、これは間違いありませんか。彼が閲覧した動機と目的をどう言っているかです。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 私どもの調査に対しましては、戦前の治安維持法の研究のため宮本顕治氏の記録を見せてほしいという趣旨であったと思います。

○橋本敦君 そこで、戦前の治安維持法の研究のためと彼は言ったというんです。裁判所にお伺いしますよ、いいですか、裁判官という身分であれば、戦前の治安維持法の研究ということで、刑務所が門外不出、見せてはならない極秘文書、これでも見るということは通常できますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この種の資料につきまして法務省側がどのような扱いをしているかは的確に承知しておりませんが、簡単に見れる資料ではないというふうに調査の過程で知ることができたわけでございます。

○橋本敦君 
簡単に見れる資料どころか、絶対に見れない資料です。学者が戦前の治安維持法を研究するからといって絶対に見せませんよ。松川事件で御存じのように民事賠償訴訟で裁判所が提出命令を出しても、刑務所側は出さなかった。これは人事局長御存じのとおりですよね。それぐらいの書類ですよ。それを鬼頭氏が裁判官という身分にあって、そして戦前の治安維持法の研究をするんだと、こういうことでこれがやすやすと刑務所側の了解を得られたということも摩訶不思議ですけれども、彼が一体そういうことを言ってこの身分帳を閲覧したというその行為は裁判官の私的研修なり研究なりということで相当と思われますか。裁判官はみずから研修し学習をし教養を高める、それ自体裁判官として大事なことですね。そういうみずからの裁判官の研修ということの一つとして、本来見てはならない、見せてはならないものまでわざわざ北海道へ行って見に行く。これは裁判官の自己研修のあり方として、普通の裁判官がだれ一人やっていないことですよ、こんなことは。相当だと思われますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 見てはならない、見せてはならない資料かどうかにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、まあ議論になりますけれども、見せてはならないものを一方の当事者がいわばみずから解除して見せたというようなケースであったとすればいかがかと存じますが、いずれにいたしましても、御指摘のとおり、このような方面の研究というものにつきまして研究している裁判官がほかにいるかどうかにつきましては承知しておりませんが、いわば非常に例外的な研究であるとすれば例外的な研究だと思います。

 ただ、この行為が裁判官として妥当であったかどうかというお尋ねでございますと、ある意味では的確にそこまで私ども結論を出すだけの事情が解明されていないというふうに申し上げざるを得ないと思います。その点につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもの調査ではある程度筋道の立った簡単な供述だけでございまして、あとは当時の応対した刑務所側の職員がどういうふうに受け答えをしたかということにかかっているわけでございます。そのようなことで、またおしかりを受けるかもしれませんが、私どもといたしましては、現在のところ、これが妥当であったかどうかということについては、ひとつ結論は遠慮さしていただきたいと思います。

○橋本敦君 人事局長、当時稻葉法務大臣がそこにおられて、あなたも並んでおられて、この問題が質問されたときに、稻葉法務大臣も法務省側も、これは閲覧を許可するような性質の文書でないことをたびたび言われていますよ。あなたもお聞きになっているでしょう。いまになってそういう答弁されるということは、責任回避の一つの姿勢としてしか私は思えませんよ。

 しかも、鬼頭史郎彼が戦前の治安維持法問題の研究をやっておった、そういう研究をずっと続けておったという状況は裁判所は知っていましたか。さらに、彼はこの研究をもとにして司法研修所あるいは裁判所部内の研究発表を文書でやったことがありますか。一回もないでしょう。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) その種のいわゆる研究をしておったかどうかについてはわかりません。なお、司法研修所におけるいわゆる司法研究その他について研究を命じたことはございません。

○橋本敦君 裁判所は彼がこういう研究をやっていたことも知らないんですよ。つまり、彼は、戦前の治安維持法の研究だということを口実にして、実際は研究なんかしていないんですよ。研究発表もしていない。口実にして資料を見に行った、こう見るのが事案の真相に近づく道ですよ。最高裁はこの点を全く調査の観点をそういうところに置かないで、まさに責任回避していますよ。さらに、彼が身分帳を写しとったその診断書の一部が、春日民社党委員長が東京新聞に提供したあの文書と、そして刑務所側が鬼頭史郎に送った文書とは、これは同一物であると法務省側が断定をしたという事実、これは局長も御存じですね。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 承知しております。

○橋本敦君 そうだとすれば、
松本明重に資料が流れた問題、あるいは民社党春日委員長所持の資料、これは鬼頭氏のところへまず行ったということと全く同一の書類ですから、これは一体どういう経路でそう流れたか、徹底的に究明する必要がありますよ。たとえば、あなた方は、鬼頭の罷免訴追でも、あのテープを読売新聞に持ち込んだという事実を重視して訴追請求をしましたね。今度の処分でも、テープ問題を理由にして監督責任をみずから問いましたね。そうでしょう。それと同じことですよ。入手した秘密の資料を、いいですか、これを彼が松本明重氏に渡す、あるいは春日委員長に渡るようにし、持っていくということをやったとすれば、まさに読売新聞社にテープを持ち込んだ行為事実そのものと全く同一性質じゃありませんか。なぜ徹底的にこちらを調べないのですか。テープだけを問題にしてこちらを調べない理由は何もありませんよ。その点をはっきりしてください。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 大変失礼でございますが、ただいまの御質問の中に、もし流したとすればということでございました。確かに、流したとすれば、これこそ重大な問題だと思います。私は、これも何回も申し上げたとおりでございますが、当初からよそにいわゆる流す意図で網走刑務所に参りまして入手して、そしてかつ流したとすれば、一連の行動を総括して考えれば、それこそ裁判官としてあるまじき行為であるというふうに考えます。しかし、私どもの調査の能力は遺憾ながらそこまで解明できなかったというのが私どもの見解でございまして、現にいわゆるにせ電話で起訴されておりますが、果たして、検察庁で網走事件についても立件したというふうに聞いておりますが、その検察庁の捜査の過程でどの程度解明されているのかどうかにつきましても、私もちろん存じませんが、かつ現在準起訴手続がこの流した事実まで含まれているかどうか、これも私はよく承知しておりませんけれども、準起訴手続であるいは解明される事案ではなかろうかというふうに考えます。

 重ねて申し上げますが、流した事実、流れた事実については、むしろその後半部分といいますか、その方こそ重要な問題であるというふうに私どもは考えまして、私どもなりにできるだけの調査をいたしたのでありますけれども、結局解明できなかったというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。

○橋本敦君 つまり、重要性は認識をするけれども、調査能力に限界があって解明できなかったというお話ですね、結局のところね。その解明できなかったということで、それじゃ責任が果たされるか。現に裁判所の職員どころか判事補である鬼頭氏がやった行動に関する調査で最高裁が調査委員会まで設けながら解明できなかったというのは、これは私は能力の限界というよりも、本当に調査が適正にやられたかどうかということにかかわる重大な問題だと思いますよ。最高裁がどの程度どういう人に会って調査をされたか、私は一々ここで詳しくお伺いするつもりはありません。するつもりはありませんが、客観的に同一文書だと法務省自身が断定し、裁判所もそれを承知している。それじゃ、流れたと推定するということは合理的な推定ですよ。そういう流れたという合理的推定について、一体どれだけ真剣に最高裁が調査をされたのか、私は重大な疑問があると思う。たとえば鬼頭史郎氏がこの問題についてどう言っていますか。自分は流さなかったと、こう言って否定をしている。あなたはそういう答弁もなさいました。じゃ、なぜ同じものがあそこに行ったと彼は説明していますか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 朝日新聞であの例の書類の筆跡云々という問題が出ましたのは大分前でありますが、その後御指摘のような事情が新聞で報道されましたことは大分後の時点だったと思います。その時点におきましてはいわゆる資料開示問題で私どもの具体的な調査には応じないという鬼頭元判事補の態度であったわけでございまして、その後、いわば鬼頭元判事補から直接聞くすべはなかったと言わざるを得ないと思います。その意味で、結局その点につきましては解明できずじまいであったわけでございますが、なお、その同一資料があるところに流れていると、このいわば推定力といいますか、これをどう考えるかというお話でございましたけれども、まさにそうであるからこそ、果たして鬼頭元判事補から流れたものかどうか、さらに慎重に検討すべき問題だというふうに現在では思っております。

○橋本敦君 現在そのとおり思っておられるとおり重大な問題なんですよ。鬼頭が調査に応じなかったからということで鬼頭の言い分さえ聞き得ていないという調査は、私はこれは調査の名に値しないと思いますよ。現在その問題はやっぱり重大だと局長もいま答弁されたとおりだとすれば、これについても継続的に調査をする調査委員会は解散したけれども引き続き可能な限り調査をするという姿勢で最高裁は臨むべきじゃありませんか。いかがですか。

○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この点につきましては、先ほども申し上げましたように、準起訴手続としてどの程度の事実が含まれておりますかどうか、私は必ずしも全面的には承知していないのでございますが、現在の私どもの能力をもってしては、この資料の流れた問題につきましては一応打ち切らせていただきたいというふうに考えております。

○橋本敦君 これもまたけしからぬですよ。重大だという認識をいまも持っていると言いながら、諸般の状況によっては重大な関心を持って調査を継続するというなら話はわかるが、これでもう打ち切りだと。まさに、今度の事務総長ら八人に対する処分は、鬼頭を国会が弾劾裁判所で罷免した、そして一方、検察庁は起訴をした、そしてまた、その他の手続もある、最高裁はこれで鬼頭問題は全部首が切られて終わりだと、あとは自分たちの監督責任ということで名目的処分をして、そして調査は全部打ち切らせてもらいます、これで終わりだと。これで、一体、局長ね、この大問題、司法の信頼、威信をはなはだしく傷つけたこの鬼頭問題、これに対する最高裁の姿勢としてそれで果たしてよろしいのですか。私はそうは思いませんよ。私は、この点について、最高裁の現在のあり方について厳しい批判的意見を申し上げる。青法協加入の裁判官志望者が拒否されたという問題も新聞に出た。鬼頭問題に関連をして、最高裁は左に辛く右に甘いそういう司法行政体質を持っていたのじゃないか、それがこの鬼頭を生み出したのではないかと根本問題が問われようとしているときに、調査不十分のまま終わらせ、徹底的な調査を今後やるという意欲もなく、これで責任をとったと果たして言えますか。この点について、私は、事務総長に直接にお越し願ってこの問題についてはさらに究明しなければ、司法行政に対する問題として重大な問題が残りますから、きょうは質問はこれで終わりますが、質問は留保して、いずれ事務総長にお越し願って、改めて最高裁のあり方を問います。
 以上で終わります。

○委員長(田代富士男君) 本日の調査はこの程度にとどめます。本日はこれにて散会いたします。午後零時五十分散会




(私論.私見)