鬼頭判事補の宮顕身分帳転写事件考
「1976.10.29日第078回国会 法務委員会 第5号」

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 2009.1.29日 れんだいこ拝


【1976.10.29日法務委員会質疑第5号】
 第078回国会 法務委員会 第5号
 昭和五十一年十月二十九日(金曜日)午前十時三十九分開議
 出席委員
委員長 大竹太郎
理事 小島徹三、田中覚、保岡興治、稲葉誠一、諫山博
委員 塩川正十郎、塩崎潤、福永健司、松永光、森美秀、早稻田柳右エ門、綿貫民輔、青柳盛雄、沖本泰幸
政府委員 法務大臣官房長・藤島昭、法務省矯正局長・石原一彦
委員外の出席者 法務省刑事局公安課長・石山陽、最高裁判所事務総長・ 寺田治郎君、最高裁判所事務・総局人事局長・勝見嘉美、法務委員会調査室長・家弓吉己

     ――――◇―――――
○大竹委員長 これより会議を開きます。お諮りいたします。本日、最高裁判所寺田事務総長、勝見人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
○大竹委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。諫山博君。

○諫山委員 最高裁の人事局長に質問します。最高裁が鬼頭裁判官にいろいろ事情聴取をしたとき、
鬼頭裁判官は、網走刑務所の身分帳などを写し取ってきたことは認めた、しかしそれを外部に漏らしたことはないと説明した、これが前回までの最高裁の説明ですね。この問題について鬼頭裁判官は、外部に漏らした人はほかにいるんだ、これは法務省関係の人だ、こういう説明をしなかったでしょうか。

○勝見最高裁判所長官代理者 そういうはっきりしたことで説明を受けたかどうか、記憶定かでありませんが、いろいろなことを言っていたことはございます。ただ、昨日でございましたか、朝日の記事、それから前々日の赤旗の記事等にそのことに触れた、彼自身がそのようなことを言っているという記事がありましたので、次の機会にはその点について的確に彼の言うことを聞いてみたいというふうに考えております。

○諫山委員 
網走刑務所の資料を漏らしたのは法務省の高官であるということを鬼頭がしばしば言っているようですが、それに類したことを最高裁判所で話したのじゃないでしょうか。

○勝見最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、その点につきまして、どういうふうに、だれから、その言われているところに流れたかというようなことを盛んに言っておりましたけれども、彼の供述がいわば多岐にわたっておりまして、私どもとしては、彼の供述がとにかく一切見せてないというようなことが前提でございましたので、先ほど申し上げたようなお答えになったわけですが、確かに御指摘のとおりその後の報道に出ておりますので、次の機会にはぜひその点について彼の言うところを聞いてみたいと思っております。

○諫山委員 いまの説明に納得できません。
鬼頭裁判官は、宮本顕治氏の資料を漏らしたのはほかにいるといろいろ説明したわけでしょう。どういう人が漏らしたのだということまで説明したでしょう。どうですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 前回も申し上げましたとおり、鬼頭判事補が網走刑務所で写した記録の標目については言わないということが前提でございました。それで、その一件記録の中に問題の判決書きはなかったというようなことでございまして、その彼が写してきた記録をよそに流したことについて、御指摘の法務省云々の点につきましてははっきりはいたしませんでした。

○諫山委員
 身分帳に限らず、宮本顕治氏のいろいろな訴訟記録類も含めてこれを漏らした者はほかにいる、自分は知っている、それは法務省のだれそれだという説明をしたと思いますが、いかがですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 その点につきましては、先ほども申し上げましたように、いろいろなことを言っておりました。しかし、私どもといたしましては、その点につきまして納得のいくことでもありませんでしたので、その点の供述につきましては記憶に定かでないわけでございます。

○諫山委員 それは私はとうてい信用できません。
宮本顕治氏の資料がどういうルートで流れたのか、だれから漏れたのか、これは裁判所が最も関心を持たなければならないことでしょう。この点の説明があったのに記憶に定かでないというようなことはあり得るはずはありません。鬼頭は特定の人を挙げて、この人たちから漏れたんだと思うと言わなかったですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 自分が刑務所で写してきた資料については、そういうことについては言ったかどうかについてはっきりした記憶がございません。

○諫山委員 じゃ、鬼頭が写してきた資料と別に、宮本顕治氏のさまざまな裁判資料ということならどうですか。もっと具体的に聞くと、これは法務省の現職のある局長が漏らしているんだ、こう言わなかったですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 私どもが聞きましたときは、身分帳のことを聞いたわけですが、いま御指摘のその他の資料等につきまして話がもちろん出たと思いますけれども、その点について、いま御指摘のような形ではっきりした供述をしたかどうかについて定かな記憶がないという趣旨で申し上げている次第でございます。

○諫山委員 定かな記憶がないと言うけれども、調査するとすれば最も関心を持たなければならない事項なんでしょう。あなたはこの点を知るために何時間も鬼頭を調べたわけでしょう。その場合、鬼頭は、自分が漏らしたことは否定しながら、漏らした人はほかにいるんだ、こう言ったことは間違いありませんか。

○勝見最高裁判所長官代理者 自分が流したことはないといういわば積極否認の裏として、ほかの人が漏らした。ただし、先ほどから申し上げておりますように、私どもといたしましては、具体的な書類の内容というものを残念ながら全然的確に把握できなかったわけでございますので、その他宮本氏の関係資料がどのようなものであるのかどうかについては、私ども正確な認識を持っておりませんでしたが、
彼が刑務所に行って写してきたであろうその書類以外のことについてなのか、あるいはその書類そのものについてなのか、いろいろ私ども書類の中身が確知し得ませんでしたので、その辺の供述については、先ほども申し上げましたように、記憶に定かでないというふうに申し上げた次第でございます。

○諫山委員 記憶に定かでないというのは、鬼頭自身が記憶に定かでないという意味ですか、あなたがよく記憶していないという意味ですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 私がでございます。したがいまして、次の機会には、御指摘のような新聞報道もございましたので、ぜひ確かめたいというふうに申し上げた次第でございます。

○諫山委員 鬼頭がよく覚えていないというのなら私は納得しないこともありません。しかし、数日前特定の目的を持って鬼頭を調べたあなたが、鬼頭がどういう説明をしたか記憶に定かでないというのは私はとうてい納得できません。

    〔委員長退席、小島委員長代理着席〕

 これは隠しているとしか思えないわけです。
私たちのところに集まってくる情報では、鬼頭は、ある特定の法務省の高官の名前を挙げて、この人から漏れているはずだと言っているはずですが、記憶喚起しませんか。

○勝見最高裁判所長官代理者 事が非常に重要でございます。次の機会にぜひ鬼頭判事補本人にその点を確かめたいというふうに考えております。

○諫山委員 私が聞いているのは、鬼頭の言っていることが本当かうそかは聞いてないのです。鬼頭が何を言ったかを聞いているのです。鬼頭は、法務省の現職のある局長が漏らしているはずだと言ったでしょう。どうですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 その点につきましては、先ほどから申し上げておりますように、現在私記憶に明らかでございません。 〔小島委員長代理退席、委員長着席〕

○諫山委員 事務総長に質問します。いまの問答を聞かれたと思います。私が聞いているのは、
法務省のある現職の局長が宮本顕治氏の資料を漏らしたと鬼頭は説明したのではないか。この質問に対して、そういう説明があったかどうか記憶していません。これで納得できましょうか。そういう説明があったとすれば、大問題なんですね。法務省の現職の局長が漏らしたとなれば、これはある意味では鬼頭事件以上の大問題なんです。そういう問題について、説明があったかなかったか記憶しません。事務総長は御承知のはずだし、もっと責任のある立場ですから、この点は周囲のことを余り顧慮せずに御説明いただけると私は思いますが、どうですか。

○寺田最高裁判所長官代理者 諫山委員のお話を伺っておりまして、私もごもっともに存ずるところが多々あるわけでございます。ただ、私自身は人事局長から、その点についてはいまここで問答を聞いた次第でございますが、私の聞いております範囲では、あの当日、非常に長時間にわたって事情聴取をいたしたようでございますけれども、鬼頭判事補は非常に雄弁、能弁でありまして、ある一つの質問をすると、何かいろいろなことをごたごた言うようでございますが、そういうところから、彼の言わんとする真意をくみ取るために、局長も課長もずいぶん苦労いたしたようでございます。そういうところがございますし、また人事局長も、大体は終始列席したはずでございますが、月曜日などは席を外したこともあるようでございますので、そういうところで、あるいは鬼頭判事補の申しましたところを的確に把握していない面があるのではないか、私いま伺っておりまして、かように感じまして、早速、鬼頭判事補に何らかの方法で詳細に事情聴取をして御報告する、かように取り計らいたいと思います。

○諫山委員 やはり事務総長も、人事局長の説明はどうも不合理だ、信用されないという疑いを持っていると思うのですよ。法務省の現職の局長が漏らしたんだということを鬼頭が言ったとすれば、これは忘れようにも忘れるはずのない問題なんですね。

 私、要望します。
私たちのところには、香川民事局長が漏らしたのではないかという情報がしばしば入ってくるわけです。鬼頭も同じようなことをいろいろな人に話しております。私、真偽のほどはわかりません。しかし、もしそうだとすれば、事はきわめて重大ですから、直ちに調べて報告していただきたいと思いますが、どうでしょう。

○勝見最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、昨日の朝日の報道、それから前々日の赤旗の報道にありましたので、御指摘のとおり重要なことでございますので、なるべく早い機会に本人にそのことを聞くつもりでおります。

○諫山委員 これに関連して、青柳盛雄議員にちょっと関連質問を認めさせていただけませんか。

○青柳委員 私自身、怪しげな電話の主から、昨年の十一月中のことでありますが、香川民事局長の名前を聞かされて、半信半疑でおりました。ところが、最近鬼頭判事補の名前が言われるようになりましてから、
あるマスコミの方からの情報によりますと、いま諫山議員が言われたように、宮本委員長に関する診断書とかその他の書類というのは、自分は渡したことはないが、香川民事局長が渡したんだと言ったと言われるので、昨年の十一月ころの電話の主というのが同一人物ではなかろうか、つまり鬼頭裁判官ではなかろうかという推測をした事実があります。

 と申しますのは、昨年の三月時分でございますけれども、私の住所を発信人の場所といたしまして、発信人の名前は青柳虎之助、これは実際私の兄で、もと裁判官をやっており、現在名古屋で弁護士をしております。まだ生きております。こういう人物の名前で、衆議院議員会館内の青柳盛雄あての書留郵便を受け取りました。

 電話の中身は、近々におまえのところの社長の名誉に関することが新聞その他雑誌の記事になって出る、大変なことであるというお話で、社長とはだれを指すのですかと言ったら、わかっているではないか、それは宮本委員長のことだよというお話でございます。どういう内容ですかという質問に対して、近々に出るからわかるよ、これに協力しているのは法務省の元官房長だよ、現在は局長だよという話で、そうなりますと、香川さんのことに間違いありませんから、香川さんのことですかと言ったら、そうだというきわめてぞんざいな返事でございました。

 私は、そのときに、一体何者だろうかと思ったのでありますが、先ほどの手紙を思い出しまして、手紙の主がぴったり合っておりますから、この手紙の主というのはやはり電話の主と同じであろうというふうに考え、これは一体何者だろうかと思っておりましたら、先ほどの新聞記者からの情報などによりますと、鬼頭そのものである。これほど符節を合する事実というものはそう俗にはないわけです。それが一つ。

 それから、文芸春秋に「日本共産党の研究」という題で立花隆氏の論文のようなものが載りまして、その付録に新しい資料として、判決文と鑑定書が載っておりました。これが新しいものでも何でもないんだということは、私ども共産党にはよくわかっておったのでありますが、そのことに関連して、私の戦前からの同僚の弁護士である森長英三郎君が、宮本委員長の弁護人でもありましたので、あちらからこの判決が出たかどうか、多分彼は戦災で焼失したということを言っておったのが記憶にありますので、あちらから出たかどうか、そうでないとすると相弁護人の方から出たかどうか、そういうことを私は確かめようと思いまして、森長弁護士に電話をかけて聞いたところが、あれは君も知っているとおり戦災ですっかり焼いてしまった、それから、もう一人の弁護士の方から出たというふうには自分は考えない。なぜかというふうに私が聞きましたら、実は現職の役人があの判決のことについて話をしていたことがあると。そこで、私は香川民事局長のことが頭にありましたから、電話で聞いておりましたから、その名前は言わずに、元裁判官で現在は法務省の役人になっているような人かと言ったら、森長君は言葉を濁しまして、元かどうか知らないが現在役人だというような怪しげな返事です。検事なのかと言ったら、いや検事ではない。じゃ裁判官かと言ったら黙ってしまいました。彼は、鬼頭裁判官にその当時ある話を持ちかけられて名前はよく知っておるから、私に率直に話してくれればよかったのですが、鬼頭裁判官の名誉を重んじて言わなかったと思います。そのこと自体私は彼をとがめるつもりは毛頭ありませんけれども、ただ、その際にその人物は森長君に対して、あなたは判決書を持っていないそうだけれどもおれのところにあるんだ、だからそのうちに写しを上げましょうと言ったから、それじゃくださいと言ったけれども、それきりくれない。こういうことを言ったそうであります。

 こういうのを照らし合わせてみますと、もういろいろの点で鬼頭裁判官があれこれのことを言っておる。しかも、きょう質問の中心になりました香川民事局長の名前をあからさまに出して言っておる。非常にこれは重大な問題ではないかと思いますので、やはりその真偽のほどを鬼頭に対してただすとともに、場合によったら法務省の方にも照会をするというようなことも必要になってくるのではないかというふうに思いますので、引き続き厳重な調査を進めていただくように私からも要望して私の質問を終わります。

○諫山委員 いまの質問に人事局長、答えてやってください。

○勝見最高裁判所長官代理者 法務省の局長の件につきましては、私どもの方からも法務省にもお伺いいたしたいと思いますし、本人にも先ほど申し上げましたようにぜひ確かめたいというふうに思っております。なお、森長弁護士の件につきましても、新聞報道に出ておりましたので、また改めてその点も聞きたいというふうに考えています。

○諫山委員 私も、青柳さんにしても、民事局長が漏らしたと断定しているわけじゃないのです。いま青柳委員の発言にもありましたように、もう一年ほど前から香川さんの名前が私たちのところに届いていたことは事実です。私はことしの三月ごろ鬼頭裁判官のことを調査するために網走刑務所に行きました。これは法務省御承知のとおりですが、その当時も鬼頭裁判官という名前と同時に民事局長という名前が私の頭にあったのも事実です。そして、いろいろな情報が、鬼頭問題が表面化して以来民事局長に集中して集まってきている、これも事実なんです。だから、私たち何も断定はしていないのですが、やはり非常に濃厚な嫌疑があるという立場で、ぜひ最高裁判所の方で鬼頭を中心に調べていただきたい。法務省については後でまた要望します。事務総長、その点いかがでしょう。

○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま法務省の香川局長の名前が出ました。きわめて重要な問題でございますので、十分に鬼頭から事情を聴取いたしたいと思います。

○諫山委員 きょうは法務大臣がおられませんから、矯正局長からこの問題に限って何か知っていることがあったらお聞きしたいと思うのです。

○石原政府委員 ただいま諫山議員の御質問の趣旨は十分拝聴いたしました。私自身初めて聞くことでございます。しかも、私自身も現職の法務省の局長でございまして、ただいまの御質問中に、あたかも香川民事局長が不法なあるいは違法な行為があったかのごとき御発言がありましたことにつきましては、きわめて重大なことであろうかと思います。私は、香川官房長のときに、短い期間ではございましたが、秘書課長としてお仕えもいたしております。きわめて公正な、また物事のけじめをはっきりする方でございます。いかなる根拠に基づいての御発言かはある程度青柳議員がおっしゃいましたけれども、はっきりしないことにつきまして、現職の者のお名前を出して聞かれるからにはいかなる資料が渡ったのか。また、他というのはどこであるのか。あるいは、もし他とすれば、その者との接触のことをおっしゃるのだろうと思いますけれども、そういう点を明確にしてお聞きになるべきではなかろうかと私は思います。もちろん議員の免責特権等があることは私も十分存じてはおりますけれども、香川民事局長の職責の重要性にかんがみまして、もしはっきりした御根拠がないならば、それは単なる情報だ、あるいはうわさだというふうにおっしゃっていただきたいと存じます。

 この事件をめぐりましては、多くの情報が乱れ飛んでおりまして、私のところにもいろいろなことを言われてまいります。その真偽いずれであるかということは十分調査しなければならないと思っておりまして、その意味でわれわれも徹底的な調査をいたしておるところでございます。われわれも、そうした情報についてのお名前を国会等で申し上げることについては十分差し控えているのでございまして、その点を篤と御考案の上御質疑等を煩わしたいと存じます。

○諫山委員 私にしても、青柳議員にしても、議員の免責特権に隠れて無責任なことを言っているのではありません。だからこそ私は、人事局長が鬼頭裁判官に質問したときにそれらしい発言が鬼頭からなかったのかと繰り返し繰り返し聞いたわけです。ところが、人事局長は否定はされません。記憶がありませんと言われるだけです。これはロッキードの証人喚問でも問題になったように、忘れることと忘れないこととあるわけです。現職の法務省の高官が漏らしたというような発言があったのかなかったのか、これは忘れようにも忘れ得べきことではないのです。この点で人事局長がきわめてあいまいな答弁をされた。私は嫌疑をますます強くしたわけです。そして、人事局長の答弁が奥歯に物のはさまったようなものであったということは、恐らくさっきの事務総長の答弁でも裏づけられていると思います。これだけのことを私いま話したわけですが、いま言ったような趣旨のことが鬼頭から人事局長に説明されませんでしたか、それともやはり記憶が定かでありませんか。

○勝見最高裁判所長官代理者 私のお答え申し上げることは前のとおりでございますが、事確かに重大でございますので、先ほどから申し上げておりますように、鬼頭本人にぜひその件につきまして確かめ、かつその結果、機会がありますれば御報告申し上げる所存でございます。

○諫山委員 矯正局長が先輩の香川局長を大変弁護されましたが、いまの答弁はやはり納得いかないでしょう。どうですか、まじめに聞いてみて。私は非常に具体的に、現職の法務省の高官が漏らしたと言わなかったのかと聞いたわけですよ。言いましたという答弁が出てくるのか、言わなかったという答弁が出てくるのか、どっちかでなければいかぬはずですよ。しかし、イエスともノーとも言われない。もっと調査しましょう、記憶に定かでない。これに疑惑を持つのは当然じゃないですか。あなたはいまの答弁を聞いてどう思いますか。

○石原政府委員 勝見局長がいろいろお伺いなされてそのことは聞かれたと思いますが、先般来の勝見局長のここでの御答弁を拝聴しておりますと、きわめていろいろなことを言われた、本筋のところにくると逃げる答弁を鬼頭判事補がされたというふうに私は了解いたしております。そうすると、そのいろいろなことを言われたという点につきましては、当面の問題についての御調査の範囲と必ずしも一致していないことでございますので、その点について御記憶がないという点はこれはあり得べきことではないかと私は思います。

 なお、香川局長は先ほどの御質問の中にありましたように官房長でございます。私自身、秘書課長といたしまして多くの方々と接触いたしました、各党にも出入りもいたします、いろいろな人にもお会いいたします。そういう点がありまして、仮に香川官房長あるいはその後におきまして人と接触されましても、それをもって直ちに不法な行為である、あるいは違法らしい行為とまで断定されることは私はいかがかと存じます。

○諫山委員 そう言われると、もっと私は聞かざるを得ないのです。私は初めから言うように、何も断定してないのですよ。非常に有力な情報が集中的に集まってくるということを前提に、人事局長に確かめたわけです。ところが人事局長の説明は隠しているとしか思われません。とてもまじめに答弁してないです。そして、これがなかなか言いにくい問題であるということはわかります。しかし、これだけ事は公になっているのだから、私は、個人的な気持ちはやはりこの場合捨てて、率直に国民の前に真実を語るということを希望するわけです。本当に、繰り返しになりますが、法務省の高官という青葉が鬼頭の口から出たでしょう。

○勝見最高裁判所長官代理者 繰り返して申し上げますが、記憶に定かでございませんが、事重大でございますので、確かにそういうことを彼がよその場においても私の前においても言ったかどうかにつきまして、言ったかどうかというよりもそういうことを彼自身が考えておったかどうか、またその根拠ということ等につきまして、十分本人に聞きたいというふうに思います。

○諫山委員 きょうは公開の場ですから、真実が何であるかというのは国民が判断してくれるでしょう。しかし私は、勝見さんが法務省をかばっているというふうにしか思われません。もっとも、鬼頭が言ったからといってそれが直ちに本当とは言えませんよ。また私は、鬼頭が漏らしてないとも思ってないのです。しかし、この点はやはり速やかに徹底的に調査する。法務省に要望することは、香川さんは人格者だからこんなことをするはずがないという立場ではなくして、真実はどうだったのかという、検察官が真実追及のために努力するような態度で事実を調べてもらいたいと思いますが、事実調査はいかがですか。

○石原政府委員 私は、かつて上司であった方をかばうようなことを申し上げていたのではございません。真実そう思うからこそ申し上げて、御発言には十分な御注意を煩わしたいと申し上げたのでございます。ただいまの点につきましては、詳細私もメモをとっておりますし、本省に帰りましてから次官にも御報告申し上げ、調査をいたすように連絡をいたします。

○諫山委員 ほかの問題に移ります。矯正局長、きのう参議院で矯正管区の森律夫さんを呼び出して調べるというふうに言われましたね。すでに来ているそうですか、事情聞きましたか。

○石原政府委員 ただいま事情を調査中でございます。

○諫山委員 網走刑務所の人が鬼頭裁判官に資料を見せた。これが森律夫だけの連絡で見せたのか、それとももっとほかの上の方からも連絡があったのか、その点では供述の食い違いはないのですか。

○石原政府委員 目下調査中でございますのではっきりしたことは申し上げられませんが、昨日参りまして私のところにあいさつに来ました。その際概略を聞いたのでございますが、ほかからの連絡その他はないというのが自分の記憶であるということでございました。

○諫山委員 網走刑務所長と庶務課長の説明ではその点どうですか。

○石原政府委員 前回もここで詳しく御報告申し上げましたとおり、管区からの電話があったという点は事実であります。その点は詳細に聴取いたしまして御報告を申し上げましたが、一方の部分について聞いておりませんでしたので、昨日呼び出し、きょうから事情聴取を始めたのでございまして、何らかの連絡があったという点は事実でございますが、その際の詳細な事情については今後の調査にまつべきものと思います。

○諫山委員 いま鬼頭裁判官のいままでの言論、執筆活動というのがいろいろマスコミなんかでも取り上げられています。その中の一つに、鬼頭裁判官が右翼雑誌として有名な「全貌」にペンネームで執筆している。たとえば昭和四十八年九月号の「問題裁判官の問題判決をみる」、昭和四十九年四月号の「機密漏洩をめぐる最高裁判所の黒い霧」、こういう裁判所の内部に通じている人でないと書けないような反共論文を発表しているということがいろいろ問題になっていますが、これは調査しましたか。

○勝見最高裁判所長官代理者 調査いたしました。

○諫山委員 調査の結果はどうだったでしょう。

○勝見最高裁判所長官代理者 ただいま調査いたしましたというのを訂正させていただきます。御指摘の論文については読ましていただきました。それからそのペンネームが実は鬼頭判事補であるという報道を承知いたしまして、これが本当に鬼頭判事補の書いたものかどうかについては、これから調査いたします。

○諫山委員 三木総理に対する電話が法律の専門家でないと話せないようなきわめて専門的な内容だったということが、鬼頭裁判官に嫌疑のかけられる一つの根拠になっております。いま私が指摘した「全貌」の論文というのは、まさに裁判所の内部事情に通じている人、裁判所の人脈、全司法という労働組合の問題、あるいは自由法曹団とか総評弁護団とか青年法律家協会とか、こういう内部事情に通じている人でないと書けないような論文だということは、読んでみてお認めになりますか。

○勝見最高裁判所長官代理者 常識論としてはそうであろうかと思います。

○諫山委員 きのう参議院でわが党の橋本議員が、日共リンチ殺人事件という言葉の入った原稿をコピーしたということを指摘して調査を求めました。それと同じような観点で、「全貌」の論文というのを現職裁判官が書いたとすればきわめて重大だと思うわけです。それは言論の自由でしょうが、読んだ感想はどうですか、現職裁判官が書いた文章だとすれば。

○勝見最高裁判所長官代理者 仮定の上での御質問でございますが、現職裁判官が書いたとすればはなはだ穏当を欠くものであるということについてはおっしゃるとおりだと思います。

○諫山委員 私、一つ持ってきたのです。驚くべき内容ですが、人事局長どういう点が穏当でないと思いましたか。

○勝見最高裁判所長官代理者 コピーを持参いたしませんでしたけれども、全体的に見ても、たとえば個々の裁判官のことを書いてございますので、申し上げるまでもなく穏当を欠いていると思います。

○諫山委員 裁判所と「全貌」というのは昔からずいぶん因縁が深くて、かつて最高裁判所が「全貌」に載った似たような反共論文を全国の裁判所に配付したということがあったはずです。これが労働組合からも問題にされるし、いろんな弁護士の中からもけしからぬといって問題になったことがありますが、御記憶ですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 御指摘のような事実については、私承知いたしておりません。

○諫山委員 寺田事務総長は古いから御記憶じゃないでしょうか。昭和四十二年ごろ、青年法律家協会あるいは進歩的な法律学者、弁護士、こういうものに対する誹謗、中傷を並べ立てた「全貌」を最高裁判所が買い取って、全国の裁判所に頒布したという事実があったはずです。これは非常に有名な出来事だと思いますが……。

○勝見最高裁判所長官代理者 先ほどお尋ねの内容は、反共論文を集めたものを特に配付したというようなお尋ねにお伺いいたしましたので、承知いたしておりませんというふうにお答え申し上げた次第ですが、ただいま御指摘の昭和四十二年ごろ「全貌」を配付したということにつきまして、当委員会で当時の松本委員から最局裁判所に対しましてお尋ねのあったことは存じております。

○諫山委員 反共論文と言ったからそんな事実はなかったと答えたようですが、では、どういう論文を全国の裁判所に配付したのですか。

○勝見最高裁判所長官代理者 私どもきょうこちらに参ります前に、「全貌」のことについて頭にありまして、先ほどのお尋ねが、特にまた別の特殊な論文を編集して何か別なものを配付したようなお尋ねに私認識いたしましたので、そのようにお答えいたした次第でございます。

○諫山委員 寺田事務総長は、もっと古くからのことを御記憶だと思いますが、最高裁判所が「全貌」という右翼雑誌を裁判所の費用で購入して全国の裁判所にばらまいた。その中には問題になる裁判官とか学者とかいろんな人のことがいっぱい書かれておったでしょう。そういう御記憶はありませんか。

○寺田最高裁判所長官代理者 大筋においていまお話しのような事実があったことを記憶いたしております。

○諫山委員 これは恐らく鬼頭裁判官がまだ関係しなかったころだと思うのです。しかし、最高裁判所が裁判所の費用で「全貌」という雑誌を購入して全国の裁判所に頒布した。これは恐らく、いろいろな意味で活用しなさい、読みなさい、こういう立場だったと思うのですが、この内容は、いま私が鬼頭が執筆したのではないかと言っている論文と非常に似通った、基本的には共通の内容だと思いますが、いかがでしょう。

○寺田最高裁判所長官代理者 私、その雑誌の内容について余り正確に記憶いたしておりませんので、余りはっきりしたことを申し上げられませんが、何でも裁判官に関することが掲載された雑誌が出ておるということを新聞の広告か何かで見まして、それで裁判官のことがいろいろ書いてあるので、一応裁判所において参考にする必要があるのではないかということで、資料費か何かで購入いたしまして、各庁一部ぐらいでしたかを送ったような記憶でございます。

○諫山委員 最高裁判所が全国の裁判所に配った「全貌」のコピーがここにあります。見出しは、「裁判所の共産党員その後この人たちは何をしているか」という表題です。「〃伊達判決〃躍り上った日共」「「青法協」かげの指導者」、そして青法協と全司法の悪口を書いている。「青法協裁判官会員名簿」というようなものが掲載されている。まさにこれは、人事局長が、裁判官が書くとすれば問題だと言われた論文と基調を同じくする論文なんです。こういうものをかつて最高裁判所が全国の裁判所にばらまいた、読みなさいと言って配った、この底流が、現職の裁判官である鬼頭が人事局長としても当然是認できないようなとんでもない論文を響いて公表した底流、背景になっているのではないかということを私たち疑わざるを得ないわけです。「全貌」という雑誌がどのくらい名うての反共雑誌であって、特定の立場に立った雑誌かということは公知の事実ですね。私は、鬼頭裁判官のこのたびのきわめて反動的な、右翼的な、反共的な行動があらわれてきたというのは、こういう最高裁判所の体質と無関係ではなかったのではなかろうかということをこの問題を通じて疑うのですが、最高裁の事務総長いかがですか。

○寺田最高裁判所長官代理者 今日におきまして「全貌」という雑誌がいかなる雑誌であるかということを私どもも十分承知をいたしておりますが、いまお話しの問題は恐らく十年くらい前のことではなかったかと思います。私どもとしては、当時「全貌」という雑誌の性格等については余り十分承知していなかったような記憶でございますが、ただ、その中に裁判官のことあるいは裁判所の職員組合のこと等がいろいろと出ておりますので、やはり司法行政を担当いたします所長等としてはそういう記事が出ておることを一応承知しておる必要があるのではないか、こういうような観点から配ったわけでございまして、決して「全貌」に書かれておることを鼓吹するとかそういう趣旨で配ったものではないことは、たしか当時の当法務委員会においても御説明申し上げていると存じます。そういうことが世上、雑誌に載っておるということも所長等としては一応念頭に置いて司法行政を担当しなければいけないのではないかという趣旨で配ったわけでございますが、いろいろ当委員会でも御議論ございましたし、またそういうことをいたしますことがいろいろな誤解を受けることになる面もございますので、それ以後は一切そういうことはいたしておらないわけでございます。

 私、今回の鬼頭問題につきましては、前回の委員会でも申し上げましたとおり、まことに申しわけないことであると存じておるわけでございますが、それが裁判所に全体的にある一つの底流と申しますか、そういうもののあらわれというふうにはいまのところは受け取っておりません。今後調査しなければならないことでございますけれども、やはり特殊な人間の特殊な行為であるというふうに受け取れざるを得ないんじゃないか、かように考えておる次第でございます。

○諫山委員 矯正局長に別な問題を質問します。
私はこの委員会で何回か「日共リンチ殺人事件」という著書について質問しました。どうしてかというと、網走刑務所にしかあってはならないはずの資料がこの著書に引用されているからです。私はどういう経過でこの著書に引用されるようになったかということをぜひ法務省にも調査していただきたいということを要望しておりました。最近の私たちの調査によりますと、この執筆者は松本明重氏ではなくして、出版社の垣友出版の斉藤社長が責任者となったプロジェクトチームだということが判明しました。そして、この資料というのは民社党の春日一幸氏から渡されているに違いないという有力な証拠を私たちはつかむことができました。そうすると、春日一幸氏がどういう手続でこの資料を持っているかということがやはり問題になるわけですが、春日一幸氏は東京新聞の中で、こういう資料を持っている理由を、「何人にも連絡せず、何人にも相談せず、ボクの調査能力を駆使して、一年半がかり」で集めたんだ、みずから網走刑務所まで足を運んで集めたものだ、こう語っております。みずからの調査能力を駆使し、みずから網走刑務所に足を運んでこういうのを手に入れることができるでしょうか。その点は矯正局長としてどう考えますか。

○石原政府委員 網走刑務所に、鬼頭判事補以外の方で身分帳の閲覧あるいは話を聞きに来る等いろいろな状況があるわけでございますが、そういうことがあるかないかということをただいま調べております。なお、御指摘の松本明重氏の著書につきましても目下調査中でございます。ところが、任意調査にはおのずから限界と困難性が存することは諫山委員みずからおわかりだろうと思いますが、ただいまの有力な情報という点につきまして、お差し支えなければ院外におきましてでも私の方にお知らせ願いたいと思います。

○諫山委員 私たちは、どういうルートでこういう資料が出回っているのかをぜひ知りたいということでいろいろ調査しているわけですが、春日一幸氏から「日共リンチ殺人事件」の資料が提供されたらしいという点をぜひ重視して調査していただきたい。同時に、春日一幸氏には鬼頭から渡されたのではないかという疑いが依然として強いわけですが、この点もぜひ春日一幸氏に当たって聞いていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

○石原政府委員 伺って聞くことは容易でございますが、そうすると、また妙な情報を入れたのではないかというお疑いをかけられても困りますので、まず慎重にやる必要があるかと思います。先ほどもちょっと申し上げましたが、任意で調べる場合に、ストレートな御質問を申し上げてもイエスかノーかの答えしか出てこないのであります。私どもが程田、南部の二人を調べるに当たりましても、その当時におけるいろいろな事情を調べた上で記憶喚起の方法をとったのでございまして、容易に――むずかしい。結論が見えていることをただ聞くということは、私どもも調査する以上、そしてまた事案の真相を明らかにするために調査する以上は慎重な態度をもって向かうべきだと思います。もし簡単に聞けるということであれば、たとえば宮本委員長に復権証明書がおありになるはずだから出してくれということも言えるわけでございまして、任意調査のためには相当な資料を収集した上でお伺いするのが適当だと考えます。

 なお前回の御質疑の際にも御指摘のありました、春日委員長初め民社党関係者と網走刑務所との関係、それから立花論文と診断書との関係、松本明重氏の著者における診断書との関係につきましては、われわれといたしましても重大な関心を持っているところでございまして、今後とも調査を続行するつもりでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、いまは管区の関係の分を重点に調査いたしておりますので、いましばらく時間をちょうだいしたいと思います。

○諫山委員 最高裁の事務総長に質問します。鬼頭裁判官が証人喚問に応じなかったですね。これはどう考えても正当な理由がないと思うし、犯罪行為じゃないかと思うわけです。また、来週呼ばれるわけですが、正当な理由がなければ犯罪行為になるのは当然で、この点は最高裁判所として鬼頭に出頭するように指導すべきではなかろうかと思うのです。その点どう考えていますか。

○寺田最高裁判所長官代理者 鬼頭判事補の証人喚問問題につきましては、前回当委員会で勝見人事局長から、最高裁としての基本的な態度について御説明申し上げたと存じますが、何と申しましても現職の裁判官が国会で証人として呼ばれるということは初めてのことでございまして、いわば国政調査権と司法権とのきわめて重要な問題と受けとめまして、私どもとしても慎重に検討いたしたわけでございますが、今回の問題については、裁判官の職務と全然関係のないばかりでなしに、いわば政治的な面にかなり足を踏み出しておる。真相はわかりませんけれども、大なり小なり政治の面に足を踏み出しておるものであるから、これは国政調査権の対象にならないと考えることは相当ではなかろう。つまり私どもは、国会で証人としてお呼びになることについて何らかのお言葉を差しはさむべき筋のものではないと基本的には考えたわけでございます。ただ、当時の時点では、裁判官会議の関係とか調査の関係とかいろいろございまして、若干の御猶予をいただけばというようなことも一部申した向きもございますが、最終的には、今週の水曜日の裁判官会議で御了承を得ましたし、国会の御都合その他で国会において証人としてお呼びになることについて根本において異存はないわけでございます。

 鬼頭判事補自身が出てまいりませんでした理由等は、私、新聞紙上等で承知いたしておる程度でございまして、診断書についても必ずしも明確でないものがある、あるいは診断された医師のお話を聞いても、必ずしも明確でないものがあるというようなことも新聞紙上で拝見いたしておりますけれども、要するに、国会がお呼びになった証人と国会との関係ということでございますので、私どももそれについて不出頭が違法であるとかどうとかということを判断すべき立場に現在のところないわけでございます。これがたとえば告発か何かございまして裁判事件としてなってまいりますれば、裁判所として当然その点について判断をいたすことになる、かように考えるわけでございます。

○諫山委員 最後に。私きょう香川民事局長の問題を名前を出して質問したのですが、私、本当は自分で名前を出すつもりはなかったのです。勝見さんの方からむしろ何らかの具体的な答弁が出るのじゃなかろうかと思ったわけですが、出ませんでしたから、明らかにするために名前を出したわけですが、本当に繰り返しますが、私たちは民事局長が漏らしたと断定しているわけじゃない、この点はやはりはっきりしておきたいと思います。ただ、いろいろ疑惑のある情報が集まってくるから調査してもらいたい、これが私たちの立場です。できるなら名前を出さなくても調査していただける条件ができればそれが一番望ましかったわけですが、きょうの委員会ではそうならなかったということをお断りしておきます。

 それから、仮に民事局長のところから外に流れたとしても、鬼頭が流さなかったということではない。その点は私たちの立場ははっきりしておきたいと思います。いろいろなルートで流れたかもわからないし、私たちは鬼頭が漏らしたに違いないということを一番強く疑っております。しかし、鬼頭がそういう説明をしているということも明らかですから、念のために調べてもらいたいということを言っているわけです。

 いろいろ矯正局長から、名前を出すなどはげしからぬじゃないかという趣旨のことも言われたようですが、以上のような経過であって、何も私たちが断定しているわけではないという点は、現職の高級の役人の人ですから、そのことだけをつけ加えまして、質問を終わります。

○寺田最高裁判所長官代理者 いま諫山委員からもお話がございましたが、私、先ほど来の問答で、少し私の立場において補足して説明申し上げておいた方がいいのではないかと存じます。勝見人事局長の答弁がやや明確を欠きましたことについていろいろお話がございました。御質問者の立場においてさようにおっしゃいますこと、私もよくわかるわけでございます。だが、いまお話がございましたように、きわめて問題は重大でございます。勝見局長も、きわめて長時間にわたって尋問し、また必ずしも常に在席したわけでもございませんし、また、先ほど申し上げましたように、鬼頭判事補はきわめて能弁で、直接に関係のないこともいろいろしゃべりまくるわけでございます。で、一体それが本当の意味でどういうことを言っているのかということを的確に把握できない。

 裁判官としてそんなことができないわけないじゃないかとお考えになるかもしれぬが、私自身が、実は別室におりまして、勝見君が聞いたことを聞いて、それではよくわからぬからもう少しこういうふうに聞き直してみないかとかいろいろサゼストしたこともございます。一度、これはいずれ国会でも証人として御喚問になっておりますから、おやりになりますとおわかりいただくと思います。ここに大分マスコミの皆さんお見えになっておりますが、そういう方々も、鬼頭君と接触するごとに、これは鬼頭君を決して悪く言っているわけではなく、ある意味では非常に雄弁だと言っているわけでございます。マスコミの諸君も接触するごとにその感を非常に深くしておられまして、これは恐らく、新聞紙上でも大なり小なりそのことは出ております。そういうことで、何といいますか、そんな一週間ぐらいのことを忘れたはずはないじゃないかとおっしゃられればそのとおりでございますが、事は重大でございますから、やはり的確な資料と的確な材料に基づいてここで御説明申し上げませんと、そのために鬼頭本人のある意味では名誉を傷つけ、もとより香川局長の名誉にも関することであります。そういう面で、本日の答弁はやや不十分な点がございましたが、早急に調査いたしましてはっきりしたことを御説明いたしたい、かように考えますので、ひとつ御了解いただきたいと思います。

○大竹委員長 次回は、来る十一月二日午前十時理事会、十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午前十一時四十四分散会




(私論.私見)