「山頂をきわめるには、政界でも実業界でも同じだけど、第一に敵の数をできるだけ減らすことだ。助けてやっても、彼らが味方になることは期待していない。いざという時、敵に回らなければそれで十分だ。第二は、自分に好意をもってくれる広大な中間地帯をつくることだ。世の中は嫉妬とソロバンだ。インテリほどヤキモチが多い。人は自らの損得で動く。だから、人の悪口は絶対に言うな。第三は、人間の機微、人情の機微を知ることだ。バカになってでも周りへの目配り気配りを忘れるな。他人の意見に耳を傾けてやれ。我を通すだけが能じゃないぞ。徹底した気遣いは無用な対立をなくあう。互いに背を向ける関係は回避すべし」。
注釈:田中は身近な秘書や運転手などにも常々こう言い聞かせていた。 |
「無理して作った味方は、いったん世の中の風向きが変われば、アッという間に逃げ出していく。だから、無理をして味方を作るな。敵を減らすこと。自分に好意を寄せてくれる人たちを気長に増やしていくしかない」。 |
「この世に絶対的な価値などはない。ものはすべて比較だ。外国人は物事を白か黒かと割り切ろうとするが、娑婆はそれほど単純じゃない。世の中は、白と黒ばかりではない。敵と味方ばかりでもない。黒と白との間に灰色がある。どっちとも言えない。このグレーゾーンが一番広い。真理は常に中間にありだ。そこを取り込めなくてどうする。天下というものは、このグレーゾーンを味方につけなれば決して取れない。グレーゾーンをいかに手元に引き寄せられるかどうかに天下取りがかかっている。このことを知ることが大事だ。その辺が分からん奴が天下を取れるワケがない」。 |
「相手が立ち上がれなくなるまでやっつければ、敵方の遺恨は永遠に去らない。対立関係にあっても、徹底的に論破してしまっては、相手が救われない。土俵際には追い詰めるが、土俵の外に押し出してしまう必要はないんだ」。
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「敵を完膚なきまでに叩きのめす必要はない。諸般の事情が変われば、喧嘩相手と手を握ることもある。引き際の心得を心得よだな」。 |