田中角栄式ハト派防衛論考

 (最新見直し2007.5.19日)

Re:れんだいこのカンテラ時評293 れんだいこ 2007/05/19
 【田中角栄式ハト派防衛論考】

 (れんだいこのショートメッセージ)

 最近手に入れた「田中角栄の国会演説と各党の代表質問上下巻」(会演説調査研究会、閣文社1990.5.20日初版)所収の所信表明演説と各党代表との質疑の中から見えてくる「田中角栄式ハト派防衛論」を確認したい。今日びのタカ派式防衛論とは様相がまるで違う。このことを明らかにさせ、日本国家及び民族の自立自存に思いを馳せたい。「田中角栄式ハト派防衛論」は、現下の憲法9条改正論議が踏まえるべき今もっての基準となるべきではなかろうか。れんだいこはそう思う。

 角栄の所信表明演説の最近のそれとの大きな違いは、内治外治の両面において満遍なく触れつつも、内治の方により多角的多岐精緻に言及していることである。しかも、より少なく言及されている外治のその過半が国交回復と国際友好親善と経済援助に充てられている。つまり、防衛論につき驚くべきほど寡言であるということになる。そういう事情からかどうか、四次防との絡みもあったのであろうが、各党代表は逆に「角栄の防衛論」を弱点として狙いをつけ質疑し、角栄が答弁するという構図が生まれている。これにより、奇しくも田中角栄式防衛論なるものが遺されることになったのは望外の成果と云えよう。

 れんだいこは、このやり取りをれんだいこ式に整理し、「田中角栄式ハト派防衛論」として纏め、世に打ち出したいと思う。現下の国会とマス・メディアによる二頭建て牽引によるタカ派防衛論に基づく憲法改正運動に棹差してみたいと思う。最近の主流である「中曽根−小泉式タカ派防衛論」に対して、かってこの国に存在した「田中角栄式ハト派防衛論」を対置させ、後者の方が真っ当でないかと問いかけ直す機会を提供したい。

 遠吠えするばかりの社共式対応で、特に日共の確かな野党論で状況に立ち向かうことは愚昧である。ああいうのは予定された反対運動であり、痛くもかゆくも無く改憲派の手の内にあり、タカ派支配に裏協力している恐れがある。

 思えば、ロッキード事件で揺れた去る日、それによって利益を得たのはタカ派であった。最も激烈に反角栄闘争を仕掛け、容赦の無い政界追放運動を牽引したのは日共であった。この両者に黒い糸の繋がりを見るのは、れんだいこだけだろうか。そういう史観を持つれんだいこの、「確かな野党論」による野党分裂政策に固執する日共を見る眼は冷たい。この党はどこまで腐っているのだと云う憤然とした思いがこみ上げている。

 それはともかく、ここで、「田中角栄式ハト派防衛論」を紹介する。憲法改正派に対してこれを武器にせよ、その値打ちは高い。それにしても、かような見解を保持していた角栄を極悪非道人として喧伝し洗脳し続けてきている日共の犯罪性は重い深いと云うべきだろう。日本政治の再生は、角栄の復権評価からしか有り得ない、れんだいこはそう思う。

 2007.5.19日 れんだいこ拝


【「田中角栄式ハト派防衛論概要」】
 「田中角栄式ハト派防衛論」は、日米同盟を受容している。その限りで、吉田内閣最初期の「東洋のスイスたる国際的中立」の立場には立っていない。角栄は、「東洋のスイスたる国際的中立論」に対して、それは理想であるとして却下し、我々は現実論に立つと述べている。思うに、角栄の「日米同盟受容」は、米ソ冷戦構造に於ける体制選択として、米側即ち資本主義陣営に与するという立場の表明であろう。その意義を、自由主義市場体制の擁護に求めていた形跡がある。今日の歴史は統制経済主義を志向したソ連側の体制崩壊を知らせており、「日米同盟受容」の選択の賢明さを教えている。

 「田中角栄式ハト派防衛論」は、その「日米同盟受容」を受けて、それが結果的に憲法前文及び第9条違反であろうとも、日米安全保障条約及びその関連諸法、自衛隊創設及びその関連諸法を受容している。これを日米安保体制と云う。この堅持については、ハト派とタカ派の相違はない。ハト派とタカ派の相違は、この次から始まる。

 「田中角栄式ハト派防衛論」は、「憲法前文及び第9条違反」の日米安保や自衛隊を認めるが、「憲法前文及び第9条」を重石として、極力整合的であるべきだとする。必然的に吉田内閣以来の解釈改憲を引き継ぐことになる。これに対して、タカ派は、「憲法前文及び第9条」を否定して、極力憲法改正すべきだとする。もはや解釈改憲を限界として、小難しい話を神学論争として一蹴していくことになる。つまり、「田中角栄式ハト派防衛論」は、護憲を前提にした軍事防衛論である。タカ派防衛論は、改憲を前提にした軍事防衛論である。一見似ているが、この違いは大きい。

 国防の基本方針は具体的には次のように定められる。その1は、日米安保体制に対する対応問題となる。ハト派は、米ソ冷戦構造に於ける体制選択としての資本主義陣営仲間入りという立場からのものであり、その限りにおいて盟主米国との繋がりを重視する。が、この体制下で憲法の明示する国際法の遵守、国際協調、国際平和創造に向かうというスタンスを採る。特徴的なことは、日米安保体制のくびきに置かれつつも、極力主権国家として振舞おうとするところにある。

 タカ派のそれは、米国を指導する国際金融資本の世界支配戦略に与し、日本を二等国家として存立せしめていくことが「国家百年の計」であるとする強度の日米安保体制深のめりスタンスを採る。ハト派の国防論を安保ただ乗り論として批判し、戦費の積極的負担に向かう。次に戦費のみならず自衛隊の派兵へと向かう。国際法は臨機応変のものとしてさほど重視せず、国際金融資本の論理と論法が正義だとして言いなりになる。そういう訳で、日本は隷従国家として振舞うことを辞さない。否、世界に先駆けての一番乗り支持を競う。

 その2は、自衛隊及びに軍事防衛費対する対応問題となる。自衛隊をどの程度まで育成発展させるのか、自衛隊の防衛区域はどの辺りまでかを問う。ハト派は、主権国家としての自衛の為に必要とする最小限度としての防衛力の漸進的整備を目指し、今後の経済運営に支障となることのない限りに於いてという制限を設ける。軍事防衛予算の「GNP1%枠」と「専守防衛枠」で歯止めをかける。タカ派は、その「GNP1%枠」と「専守防衛枠」を取り外し、国際責任論を唱えて国際金融資本の世界支配戦略の指図のままに世界各地の紛争への積極関与を目指す。現在、自衛隊の戦地派遣に続いて前線戦闘が画策されようとしている。

 その他3・米軍基地に対する対応問題、整理統合と負担問題、4・武器開発及び輸出禁止問題、5・非核三原則及び原子力開発問題、6・日米合同演習問題等々があり、それらいずれにおいても、ハト派の抑制に対してタカ派の積極という構図にあり、目下はタカ派の方針へと振り子が動いている。総じて、ハト派の目指すのは国際協調国家であり、タカ派の目指すのはネオ・シオニズム配下の好戦国家という違いになる。

【1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける「田中角栄式ハト派防衛論発言集」】
 最近世界的に緊張緩和の動きが見られるとはいえ、我が国が今後とも平和と安全を維持していくには、米国との安全保障体制を堅持しつつ、自衛上最小限度の防衛力を整備していくことが必要であります。このたび、政府が第四次防衛力整備計画を決定しましたのもこのためであります。(中略)

 戦後四半世紀にわたり我が国は、平和憲法のもとに一貫して平和国家としてのあり方を堅持し、国際社会との協調協和の中で発展の道を求めてまいりました。私は、外に於いてはあらゆる国との平和維持に努力し、内にあっては国民福祉の向上に最善を尽くすことを政治の目標としてまいります。世界の国々からは一層信頼され、国民の一人ひとりがこの国に生を受けたことを喜びとする国を作り上げていくため、全力を傾けてまいります。あくまでも現実に立脚し、勇気をもって事に当たれば、理想の実現は可能であります。私は、政治責任を明らかにして決断と実行の政治を遂行する決意であります。

 (1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説)。
 日本の防衛費が大きいかどうかという問題を例に挙げて申し上げます。防衛と云うものは、よその国の防衛なのではないのであります。自分を含めた国民全体の生命と財産をどう守るかというのであります。まず、その防衛体制が妥当であるかどうかという問題を考えるには、世界の国と比較することも一つの案であります。(中略)

 このように、各国はそれぞれ自国の防衛の為に相当の努力を払っておることを知らねばなりません。その意味から考えてみましても、わが国においても、この程度の負担をするのは止むを得ないことだと思うのでございます。非武装中立論を前提にして国防論や防衛論をする方々との間には意見の相違があることは止むを得ませんが、しかし、国防や防衛という問題をそのような観念論によって律することはできないのであります。(中略)

 日米安全保障条約を廃棄しなければならないというような端的な議論には与しないのでございます。(中略)自らの見識に於いて、自らの責任において、どうして自らを守るかという事については、数字に立って、現実を直視して、後代のためにも誤りの無いように努力すべきであると思います。

 (1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.30日の日本社会党成田委員長質疑に対する答弁)
 それから第三は、経済大国日本が軍事大国にならないかという問題でございますが、経済大国になりますと政治大国になるということは、これはもう当然でございます。日本が経済大国である。即ち、日本の輸出入の動向によって世界の情勢に影響を与えるということでありますから、好むと好まざるとにかかわらず政治的な影響を持つことは避けがたいのでございます。

 しかし、軍事大国にはならない。これは憲法が明定をしておるのでございます。国際紛争に対して日本は武力をもって解決できない、こういう大前提があるのでございまして、憲法を守ろうということを言う人は、特にこの事実を理解すべきでございます。でありますから、日本の防衛力がどのような状態になろうとも、侵略的なものとか軍事的な大国と云うものには絶対に無縁のものである。日本を守るという全く防衛一筋のものであるということを理解すべきでございます。

 (1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.30日の自由民主党桜内義雄質疑に対する答弁)
 アジアの平和構想を確立するため、日米安保を解消し、非軍事的な日米友好条約を結んではどうかとう御発言でございますが、毎々申し上げておりますとおり、日米安全保障条約は、日本の安全と独立を確保するために必要なものとして、これを廃棄するとか変更するとかという考えは全く持っておりません。(中略)

 我が国は、政治信条、社会体制のいかんにかかわらず、全ての国との友好的関係を維持してまいりますが、そのことが即等距離・中立の外交とはなり得ないのでございます。あくまでも自主外交でありますが、構造的に見ても、量的にみても、我が国の平和外交は自由主義陣営の一員として、これと密接な関係の上に立って進めることが、より効率的であると考えておるのでございます。(中略)

 なお、なぜこれほどの軍備増強をするか、日本に対する脅威の実体とは何かとか、自衛力の限界を示せ、兵器国産化は産軍複合体の危険がある、兵器輸出禁止法をつくったらどうか、こういういろいろな御指摘をいただきましたが、我が国国防の基本方針は専守防衛を旨とするものであり、四次防は、アジアの緊張を高めるような軍拡や軍備増強の計画では全く無いということは先ほど申し上げたとおりでございます。(中略)

 しかしながら、我が国の防衛力は、一次防以来の各防衛力整備計画によって逐次充実されており、今後どこまで伸びるかと云う問題に答える必要はあると思いますので、凡その整備目標を検討するよう防衛庁に指示をしているわけでございます。

 (1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.30日の公明党竹入義勝質疑に対する答弁)
 それから、きのうの桜内議員に対する答弁につきまして、私の真意に対するご質問がございましたが、私は速記録をみまして、十分私の真意を伝えていないような点もございますので、ここに改めて考え方を申しのべます。

 世界に類例の無い我が国憲法の平和主義を堅持してまいりますことは、申すまでも無いことでございます。その前提には変わりはないのでありますが、無防備中立の考え方と、最小限必要な自衛力をも持つという私どもの考え方とは合わないのであります。この際、明確にいたしておきます。(中略)

 独立国である以上、独立を保持し、その国民の生命財産を確保してまいるためには防衛力を持たなければならないということは、論の無いところでございます。理想的には、国連を中心とした集団安全保障体制が確立することが望ましいことでございます。しかし、現実の状態を見ますと、この機構は完備せられておりません。スエズが閉ざれても、これを開放する力もありませんし、御承知のアラブとイスラエルが毎日報復爆撃をやっておっても、これをとめることのできないような状態においては、最小限自分で自分を守るだけのことはしないければならぬのであります。

 そういう意味で、最小限度の防衛力を保持するということは当然んのことでございますが、しかし、もう一つの理想的な姿としては、自分だけで守るか、複数以上の集団安全保障の道をとるかということでございますが、これは東側、西側を問わず、自分だけで守ろうという国はないのであります。みんな複数以上で集団安全保障をとっております。日本だけがその例外になろうということは、それはできません。そういう意味で、国民の生命と財産を守らなければならない、しかし、国民負担は最小限度で理想的な防衛体制でなければならないというと、どうしても日米安全保障条約が必要になることは、過去四半世紀近い歴史に明らかなところでございます。(中略)

 それから、専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱら我が国土及びその周辺に於いて防衛を行うということでございまして、これは我が国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えると云うことは全くありません。なお戦略守勢も、軍事的な用語としては、この専守防衛と同様の意味のものであります。積極的な意味を持つかのように誤解されない−専守防衛と同様の意味を持つものでございます。

 (1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.31日の民社党春日一幸質疑に対する答弁)
 先ほど述べましたとおり、世界に類例の無い我が国憲法の平和主義を堅持してまいりますことは申すまでも無いことでございます。こういうことでございますので、ご了承を賜りたいと存じます。

 (1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.31日の日本社会党堀昌雄質疑に対する答弁)
 安保条約を廃棄せよ、沖縄の毒ガスを点検せよ、四次防を撤回せよ、四次防を国会にはかれという問題でございますが、安保条約の目的は、間々申し上げておりますとおり、我が国の安全を確保することにありまして、政府としては、これを堅持してまいるつもりでございます。同様の理由により、四次防を撤回する考えもございませんし、四次防は重大な問題でありますので、国会においてはもとより、広く国民各界各層において議論していただきたい、こう考えるのでございます。しかも、防衛問題に対する国会の審議機関としては、各党にもお願いを申し上げておりますが、安全保障に関する常任委員会のごときものを設けていただいて、十分国会でご審議いただくのが正しいと考えておりますし、政府もそうお願いをしておるのでございます。

 (1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.31日の日本共産党不破哲三に対する答弁)

【1973.1.27日の第71回臨時国会に於ける「田中角栄式ハト派防衛論発言集」】
 第二次世界大戦後、四半世紀の歳月が過ぎました。国際政治は、力による対立の時代を経て、話し合い、強調へと移行してきました。これは、緊張と混迷の中で多くの経験を積んだ人類の英知の勝利であります。我が国は戦後、世界に例の無い平和憲法を持ち、国際紛争を武力で解決しない方針を定め、非核三原則を堅持へ四、平和国家として生きてまいりました。これは正しい道であったと思います。

 今日、大きな経済力を持つに至った我が国は、国際政治、国際経済の転換期の中で、平和の享受者たるにとどまることなく、新しい平和の創造に進んで参画し、その責務を果たすべきであります。この際、平和を一層確実なものにするため、核を初めとする全般的な国際軍縮に貢献してまいりたいと考えます。(中略)

 この機会に、我が国の防衛について一言します。我が久那が必要最小限の自衛力を保持することは、独立国として平和と安全を確保するための義務であり、責任でもあります。しかし、自衛力の保持と合わせて、日米安全保障体制を維持しつつ、国際協調のための積極的な外交の展開、物心両面における国民生活の安定と向上、国民すべてが心から愛することのできる国土と社会の建設、これらがしっかり組み合わされる中に、我が国の平和と安全が保障されることを強調したいのであります。

 (1973.1.27日の第71回臨時国会に於ける所信表明演説)
 防衛費と攻撃性の強いT2改機などの問題について言及がございましたが、防衛費につきましては、世界の各国が必ず、自分を守るために防衛費を組んでおります。私も、今日勉強してまいりましたが、日本以外の国々で、歳出に占める防衛費で日本よりも小さい国は見当たりませんでした。しかも、一番大きいのは40%を越している国もございますし、30%を越している国もございます。四次防を含めて、我が国の歳出に占める防衛費は、わずかに7.1%、8%未満である事実も十分ご理解をいただきたいと思いまして、私は、やはりこの程度の負担は、日本の独立と自由を守るためには必要なものである、こう考えておるのであります。

 我が国の防衛力は、憲法に許容する範囲内に限られ、侵略的、攻撃的な装備は保有できません。これは、石橋さんご指摘のとおりでございます。四次防もこの制約に従ってつくられたものでございます。47年度の防衛予算の中にも、その意味で、攻撃的な装備は一切含まれておりません。FST2改支援戦闘機につきましてもご言及がございましたが、次得ての為に必要な装備でございまして、同機の行動半径は短く、攻撃的脅威を与えるようなものではないことは、ご専門である石橋さん、十分ご理解をいただきたい、こ思います。

 どこまで日本の軍事力を増強するのか、平和時に於ける自衛力の限界なるものについてご言及がございましたが、先ほども申し上げましたように、我が国の防衛力は、憲法の許容する範囲内で、国防の基本方針にのっとり漸進的に装備を進めておるものでございますが、昨年四次防を決定しました際、我が国の防衛力は今後どこまでも無制限に増加するのではないということを明らかにできれば、国民の防衛に関する理解を得るためにも幸いであると考え、平和時の防衛力として防衛庁に勉強、研究するように指示したものでございます。これは非常に難しい問題でございますが、防衛庁では真剣に研究をしてくれておるのでございます。戦犯その考え方につきまして説明を聞いたのでございますが、中間報告の段階でございまして、指す州的な説明を受けるに至っておらないわけでございます。現に勉強中とご理解賜りたいと思うわけでございます。(中略)

 日米安全保障条約と四次防の中止のご発言がございましたが、先ほども申し上げましたように、我が国の防衛力は、憲法を守り、必要最小限でなければならないということでございます。また、必要最小限の負担で独立と自由を守るためには、日米安全保障条約が不可欠なのでございます。そういう意味で、日米安全保障条約を維持しながら、最小限の負担で日本の独立、自由を守ってまいりたいという悲願をご理解賜りたい。

 (1973.1.27日の第71回臨時国会に於ける所信表明演説に対する1.29日の日本社会党石橋政嗣質疑に対する答弁)
 国の安全保障に対する基本的見解について御発言がございました。自国民の生命と財産を守らなければならないことは国の義務であります。そのため、国防の基本方針に基づいて、最小必要限の自衛力を漸進的に整備し、将来、国連が有効な平和維持機能を果たし得るに至るまで、どうしても日米安全保障体制を維持しなければならぬのであります。先ほどもお答えを申し上げましたが、最も合理的な負担に於いて専守防衛の実をあげておる日本としては、日本だけで平和と独立を守れないと云う状態でありますので、日米安全保障条約と合わせて、日本の完璧な安全を保障しておる、これは不可分なものであるということを十分ご理解いただきたいものでございます。

 言うなれば、日米安全保障条約というものがもし廃棄されて、日本だけで防衛を行うとしたならば、今のような四次防が大きいなどという考え方、そんなものでは日本が守れるものではないという事実を、十分ご理解いただきたい、こう思うのでございます。その意味で、国連が有効な平和維持機能を果たし得る日まで、日米安全保障条約を維持してまいる、こう申し上げておるのでございます。しかし、これらの問題だけで解決できるのではなく、国際協調のための積極的な外交、物心両面に於ける国民生活の安定と向上、国民が心から愛することの出来る国土建設等の内政諸施策を推進して、これらの努力の総合の上に、我が国の独立と安全が保障されると考えるのであります。

 先ほどもご発言がございましたが、我が国は、平和な島国に閉ざされて、恵まれた四半世紀を過ごしてまいりましたので、ややもすれば防衛問題に対する関心が薄いかも知れませんが、その当否はさておき、国会の内外において論議が重ねられ、国民の合意が得られるように、政府は努力してまいりたいと考えるのであります。

 (1973.1.27日の第71回臨時国会に於ける所信表明演説に対する1.29日の自由民主党倉石忠雄質疑に対する答弁)
 日米安保条約の解消論にお触れになりましたが、我が国と米国を含む自由主義諸国との雄渾関係は、現在のアジアに於ける国際政治の基本的な枠組みの重要な柱になっております。このような枠組みの中で、政治信条や社会体制を異にする諸国とも友好関係の積極的な増進がはかられておるのであります。日米安保条約を解消することは考えておりません。

 軍備増強政策等に対しての御言及がございましたが、我が国は、憲法を守り、必要最小限の自衛力で自由と独立を守っていくことは国としての義務であり、責任であります。我が国は無制限な防衛力の拡張など全く考えておりませんし、厳重な制約もあることを承知いたしております。

 平和憲法下に於ける自衛力の限界ということでございますが、平和時の自衛力の限界という問題のように思いますので、その意味でお答えをいたしますが、昨日もお答えを申し上げたとおり、防衛庁に、難しい問題であっても、四次防等、国民の理解を得るためには、研究、勉強して欲しいと云うことを望んでおるわけでございます。国会も再開されるに当たって、防衛庁長官から中間報告を聴取いたしましたが、まだ結論が出ておりませんので報告になっておりませんが、引き続いて開かれる予算委員会でもこの審議が当然行われるはずであるから、引き続き早急に勉強して欲しいということを私からも依頼をしてあるわけでございます。

 (1973.1.27日の第71回臨時国会に於ける所信表明演説に対する1.30日の公明党浅井美幸質疑に対する答弁)

【1973.12.1日の第72回国会に於ける「田中角栄式ハト派防衛論発言集」】
 (珍しいほどにこの時、田中首相は、「当面緊急を要する諸問題について所信の一端を申し述べる」として、石油危機、中東問題、物価騰貴等の諸問題に言及して、軍事防衛問題に全く言及していない)

 (1973.12.1日の第72回国会に於ける所信表明演説)
 防衛費の削減、四次防の計画を中止せよとのことでございますが、間々申し上げておりますとおり、日本の防衛力なさ最小限のものを目標としております。しかし、防衛は国の基本であり、国民の生命、財産を守り抜くため最も重要なものでございます。その意味で、四次防を中止する考えはございません。

 (1973.12.1日の第72回国会に於ける所信表明演説に対する12.3日の日本社会党勝間田清一質疑に対する答弁)
 私が内閣を組織致しまして依頼、中国とは国交を正常化し、ドイツ民主共和国、ベトナム民主共和国とも外交関係を設定し、社会体制を異にする国家との交流を通じ、東西間の緊張緩和に貢献することを我が国外交の基本の一つとしておるのでございます。

 南北問題につきましても、まさに相手国の立場に立ち、その発展と民生の向上に寄与することを前提にしなければならず、右を踏まえまして、近く東南アジアの諸国を訪問し、親善友好の実をあげたいと考えて居るのであります。

 平和憲法をいただき、平和外交の推進を外交の根幹とする我が国と致しましては、武力による領土の獲得及び占領は許容できないところでございます。これこそ歴代自民党政府の一貫した外交の柱なのであります。

 (1973.12.1日の第72回臨時国会に於ける所信表明演説に対する12.3日の自由民主党石田博英質疑に対する答弁)

【1974.1.21日の第72回国会に於ける「田中角栄式ハト派防衛論発言集」】
 自衛隊の施設及び在日米軍に提供中の施設、区域の周辺地区に於ける民生安定諸施策を抜本的に強化するため、新たな法律案を今国会に提出するほか、米軍が使用する施設、区域の整理統合についても引き続き真剣に取り組んでまいります。なお、昭和49年度に於ける防衛費については、当面する内外の情勢を十分勘案し、総需要抑制の見地からも、必要最小限の経費計上にとどめました。形状にかんな暗視、の居る(珍しいほどにこの時、田中首相は、「当面緊急を要する諸問題について所信の一端を申し述べる」として、石油危機、中東問題、物価騰貴等の諸問題に言及して、軍事防衛問題に全く言及していない)

 (1974.1.21日の第72回国会に於ける施政方針演説)
 第三は、米国の核の傘の下にある問題について言及されましたが、核軍縮のため大きな努力が払われておりますが、その実現が達成されていない現在の国際情勢のもとにあっては、我が国の安全を維持するために日米安全保障条約に依存する必要があることは、政府が間々申し上げておるとおりでございます。このことは国会決議にもとるものではなく、政府としては、核兵器の全面的な禁止という究極の目標に向かって引き続き努力を傾けてまいる所存でございます。

 (1974.1.21日の第72回国会に於ける施政方針演説に対する1.23日の日本社会党成田知巳質疑に対する答弁)
 第二次世界大戦に於ける日本の立場に対して言及がございましたが、当時の問題は歴史のかなたの問題でございまして、現在の日本は、新しい平和主義のもとに立って、国際協調の理念に従って行動しておることは、全世界の認むるところでございます。(中略)

 最後に、日米安全保障条約を廃棄するか堅持するか、もちろん堅持をするのでございます。日米安全保障条約を廃棄するような状態の中で真の民主的な日本が成長するとは思っておりません。日米安全保障条約を堅持することによって、国民の負担を最小限にとどめながら、独立と平和を守り、真の日本の民主政治を確立してまいりたい、これが政府の基本であります。

 (1974.1.21日の第72回臨時国会に於ける施政方針演説に対する1.24日の日本共産党金子満広質疑に対する答弁)
 最後に、防衛関係費等について申し上げますが、我が国防衛費の一般会計歳出予算に占める割合は、ここ20年間ほぼ一貫して低下しており、国民総生産に占める比率も諸外国に比してはるかに低位に置かれているのが実態でございます。総需要抑制の見地から、四次防の主要項目にかかる装備品の一部について調達を繰り延べることに致しましたが、四次防を中止することは考えておらないのでございます。

 なお、平和愛好国として我が国のイメージは定着しており、私が歴訪したいずれの国におきましても、日本が軍国主義復活のごときことは一切聞かれませんでした。だから、やはり日本人も自信を持って、私は、日本は真の平和愛好国家として世界の平和に寄与したい、こう言ったら、皆拍手しておるわけでございますから、平和に対しては自らが自信を持つことであります。そして、この大目的達成のために邁進をすること以外に無いということを申し上げて、答弁を終わります。


 (1974.1.21日の第72回臨時国会に於ける施政方針演説に対する1.24日の公明党竹入義勝質疑に対する答弁)




(私論.私見)