モーゼの概略履歴

【モーゼのプロフィール】
 モーゼは、古代イスラエル期の最大の宗教的預言者にして指導者である。彼の履歴は旧約聖書「出エジプト記」、「民数記」に記されている。

【モーゼの出生とその後の成長】
 それによれば、モーゼは、レビの血流を出自としている。出生後ナイル川の葦の原に捨てられていたところをエジプトの王女に拾われ、王女はその子をモーセと名付けて育てた。モーゼは王宮で成人した。

【モーゼのユダヤ民族主義】
 モーゼはエジプト王宮で成長していったが、長ずるに及びユダヤの民としての自覚を強めた。ある日のこと、彼は同胞のところへ出て行き、彼らが重労働に服しているのを見た。そして一人のエジプト人が、同胞であるユダヤの民に暴行を加えているのを見た。モーセは辺りを見回し、だれもいないのを確かめると、そのエジプト人を打ち殺して死体を砂に埋めた。ある日のこと、今度はユダヤの民同士が喧嘩している場面に遭遇した。モーセが、「どうして同じ民族同氏が争うのか。仲間ではないのか」とたしなめると、「誰がお前を我々の監督や裁判官にしたのか。お前はあのエジプト人を殺したように、この私を殺すつもりか」と言い返された。

【モーゼが逃亡し、潜伏する】
 ファラオはこの事を聞き、モーセを殺そうと尋ね求めたが、モーセはファラオの手を逃れてミディアン地方にたどりつき身を隠す。ミディアンの祭司の娘ツィポラと結婚した。彼女は男の子を産み、モーセは彼をゲルショムと名付けた。

【モーゼに「主の啓示」が下される】
 それから長い年月がたち、エジプト王は死んだ。その間イスラエルの人々は労働のゆえにうめき、叫んだ。労働のゆえに助けを求める彼らの叫び声は神に届いた。神はその嘆きを聞き、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こされた。神はイスラエルの人々を顧み、御心に留められた。

 或る時、ホレブの山(シナイ山)で神ヤハウェの召命を受け、エジプトで捕虜か奴隷の地位で苦役を強いられていたユダヤの民のイスラエル帰還を啓示される。概要次のように託宣された。「私はあなたの父の神である。アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。私は、エジプトにいる私の民の苦しみをつぶさに見、追い使う者のゆえに叫ぶ彼らの叫び声を聞き、その痛みを知った。それゆえ、私は降って行き、エジプト人の手から彼らを救い出し、この国から、広々としたすばらしい土地、乳と蜜の流れる土地、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の住む所へ彼らを導き上る。見よ、イスラエルの人々の叫び声が、今、私のもとに届いた。また、エジプト人が彼らを圧迫する有様を見た。今、行きなさい。わたしはあなたをファラオのもとに遣わす。わが民イスラエルの人々をエジプトから連れ出すのだ。さあ、行って、イスラエルの長老たちを集め、言うがよい。『あなたたちの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である主が私に現れて、こう言われた。私はあなたたちを顧み、あなたたちがエジプトで受けてきた仕打ちをつぶさに見た。あなたたちを苦しみのエジプトから、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の住む乳と蜜の流れる土地へ導き上ろうと決心した』と。彼らはあなたの言葉に従うであろう。あなたはイスラエルの長老たちを伴い、エジプト王のもとに行って彼に言いなさい。『ヘブライ人の神、主がわたしたちに出現されました。どうか、今、三日の道のりを荒れ野に行かせて、私達の神、主に犠牲をささげさせてください』。しかし、私は、強い手を用いなければ、エジプト王が行かせないことを知っている。私は自ら手を下しあらゆる驚くべき業をエジプトの中で行い、これを打つ。その後初めて、王はあなたたちを去らせるであろう」。

【モーゼとアロンが「主の啓示」をユダヤの民に宣べ伝える】
 モーゼは帰山する。モーゼの他にアロンも「主の啓示を」受け、二人三脚でユダヤの民にこの託宣を伝える。長老会議でこれを討議に付した。しかし、ユダヤの民は受け入れなかった。

【モーゼとアロンが「主の啓示」をファラオに宣べ伝える】
 二人はファラオのもとに出かけて行き、主の御言葉を伝える。ファラオは、「主とは一体何者なのか。どうして、その言うことをわたしが聞いて、イスラエルを去らせねばならないのか。私は主など知らないし、イスラエルを去らせはしない」と答えた。二人は言った。「ヘブライ人の神がわたしたちに出現されました。どうか、三日の道のりを荒れ野に行かせて、私達の神、主に犠牲をささげさせてください。そうしないと、神はきっと疫病か剣で私達を滅ぼされるでしょう」。エジプト王は彼らに命じた。意訳概要「モーゼとアロン、お前たちは自分の労働に戻るがよい」。

 二人のファラオとの対談は数次にわたって為されたが、決裂した。ファラオは、「引き下がれ。二度とわたしの前に姿を見せないよう気をつけよ。今度会ったら、生かしてはおかない」と宣告し、モーセも又「よくぞ仰せになりました。二度とお会いしよ うとは思いません」と返答する結末となった。

【「主の啓示」とファラオとの闘争】

【ユダヤの民の「出エジプト」決定される】
 主の御技が自然災害や疫病を引き起こし、遂に、エジプト人は、ユダヤの民をせきたてて、急いで国から去らせようとし始めることになった。

【ユダヤの民「出エジプト」】
 かくて、ユダヤの民はラメセスからスコトに向けて出発した。一行は、妻子を別にして、壮年男子だけでおよそ六十万人であった。そのほか、種々雑多な人々もこれに加わった。羊、牛など、家畜もおびただしい数であった。イスラエルの人々が、エジプトに住んでいた期間は四百三十年であった。

「葦の海」(紅海)の奇跡
 こうして、モーゼとアロンは、ユダヤの民一族を出エジプトさせる。「葦の海」(紅海)に辿り付いた時、エジプト軍の追っ手が迫った。この時、モーゼが主に授けられた魔法の杖をかざすと、「葦の海」が二つに分かれ、海の中に乾いた通路が生まれ、ユダヤの民はこれを通路として渡海することができた。追っ手のエジプト軍は溺れ死んだ。ユダヤの民は、主の御業を見た。 主を畏れ、主とその僕モーセを信じた。「主こそいくさびと、その名は主。主よ、あなたの右の手は力によって輝く。 主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く。あなたは大いなる威光をもって敵を滅ぼし 怒りを放って、彼らをわらのように焼き尽くす」と称えられている。

ユダヤの民の不平と主の諭し
 モーゼとアロンに率いられたユダヤの民はシナイ半島に入った。エリムからシンの荒れ野に向かった。この道中の艱難辛苦がユダヤの民に不満を生んだ。彼らは、モーセとアロンに向かって次のように述べ始めた。概要「ここまでの苦労とこれから先の不安を思えば、我々はエジプトの国にとどまっていた方が良かった。少なくとも、食べることには困らなかった」。主はモーセに言われた。概要「私の戒めと教えを更に守れ。私は、天からパンを降らせ、必要な食料を確保する。今は試しの期間である」。

合議制の採用
 主の命令により、ユダヤの民は、シンの荒れ野を出発し、旅程に従って進み、レフィディムに宿営したが、そこには民の飲み水がなかった。この頃、モーセのしゅうとが駆けつけて合流した。彼は言った。概要「モーゼ一人の権能で導く遣り方は拙い。あなた自身も、民も、きっと疲れ果ててしまうだろう。このやり方ではあなたの荷が重すぎて、一人では負いきれない。わたしの言うことを聞きなさい。助言をしよう。以降、あなたは指針に関わる重要な案件について権限を持ちなさい。あなたは、民全員の中から、神を畏れる有能な人で、不正な利得を憎み、信頼に値する人物を選び、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として民の上に立てなさい。平素は彼らに民を裁かせ、大きな事件があったときだけ、あなたのもとに持って来させる。小さな事件は彼ら自身で裁かせ、あなたの負担を軽くし、あなたと共に彼らに分担させなさい。もし、あなたがこのやり方を実行し、神があなたに命令を与えてくださるならば、あなたは任に堪えることができ、この民も皆、安心して自分の所へ帰ることができよう」。モーセはしゅうとの言うことを聞き入れ、その勧めのとおりにし、全イスラエルの中から有能な人々を選び、彼らを民の長、すなわち、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長とした。

モーゼに「十戒」下される
 ユダヤの民は、エジプトの国を出て三月目、レフィディムを出発して、シナイの荒れ野に着き、ここに天幕を張り宿営した。モーセがシナイ山の頂山へ呼び寄せられた。この時、主がモーゼに語りかけて次のように言われた。「ヤコブの家にこのように語り イスラエルの人々に告げなさい。今、もしわたしの声に聞き従い わたしの契約を守るならば あなたたちはすべての民の間にあって わたしの宝となる。 世界はすべて私のものである。あなたたちは、私にとって 祭司の王国、聖なる国民となる。これが、イスラエルの人々に語るべき言葉である。私は主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。次のことを命言する」。

 その1、あなたには、私をおいてほかに神があってはならない。あなたはいかなる像も造ってはならない。あなたたちはわたしについて、何も造ってはならない。銀の神々も金の神々も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。わたしは主、あなたの神。わたしは熱情の神である。わたしを否む者には、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問うが、わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える。

 あなたは、わたしのために土の祭壇を造り、焼き尽くす献げ物、和解の献げ物、羊、牛をその上にささげなさい。わたしの名の唱えられるすべての場所において、わたしはあなたに臨み、あなたを祝福する。しかし、もしわたしのために石の祭壇を造るなら、切り石で築いてはならない。のみを当てると、石が汚されるからである。あなたは、階段を用いて祭壇に登ってはならない。あなたの隠し 所があらわにならないためである。

 その2、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。

 その3、安息日を心に留め、これを聖別せよ。六日の間働き仕事をすることができる。何であれあなたの仕事をし、七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。安息日には、あなたたちの住まいのどこででも火をたいてはならない。六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを創造し、七日目に御業をやめて憩われたからである。主は安息日を祝福して聖別されたのである。最も厳かな安息日を守りなさい。それは、あなたたちにとって聖なる日である。それを汚す者は必ず死刑に処せられる。だれでもこの日に仕事をする者は、民の中から断たれる。イスラエルの人々は安息日を守り、それを代々にわたって永遠の契約としなさい。これは、永遠にわたしとイスラエルの人々との間のしるしである。

 その4、あなたの父母を敬え。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる。

 その5、殺してはならない。

 その6、姦淫してはならない。

 その7、盗んではならない。

 その8、隣人に関して偽証してはならない。

 その9、隣人の家を欲してはならない。

 その10、隣人の妻、男女の奴隷、牛、ろばなど隣人のものを一切欲してはならない」。

 主はシナイ山でモーセと語り終えられたとき、二枚の掟の板、す なわち、神の指で記された石の板をモーセにお授けになった。

「モーゼ律法」定まる
 その他社会生活上の諸律法を定めた。祭祀の要領についてこまごまと指図した。

 あなたの豊かな収穫とぶどう酒の奉献を遅らせてはならない。あなたの初子をわたしにささげねばならない。

 この地で改めてヤハウェと契約を結び「十戒」が授けられた。

 モーセは戻って、主のすべての言葉とすべての法を民に読み聞かせると、民は皆、声を一つにして答え、「わたしたちは、主が語られた言葉をすべて行います」と言った。モーセは主の言葉をすべて書き記し、朝早く起きて、山のふもとに祭壇を築き、十二の石の柱をイスラエルの十二部族のために建てた。彼はイスラエルの人々の若者を遣わし、焼き尽くす献げ物をささげさせ、更に和解の献げ物として主に雄牛をささげさせた。モーセは血の半分を取って鉢に入れて、残りの半分を祭壇に振りかけると、契約の書を取り、民に読んで聞かせた。彼らが、「わたしたちは主が語られたことをすべて行い、守ります」と言うと、モーセは血を取り、民に振りかけて言った。「見よ、これは主がこれらの言葉に基づいてあなたたちと結ばれた契約の血である。」モーセはアロン、ナダブ、アビフおよびイスラエルの七十人の長老と一緒に登って行った。

 主はモーセに仰せになり、ユダヤの民の人口を調査させ、登録させ、各自は命の代償を主に支払わねばならない、とした。登録を済ませた二十歳以上の男子は、主への献納物としてこれを支払う。豊かな者がそれ以上支払うことも、貧しい者がそれ以下支払うことも禁じる。

 これ以降、ユダヤの民は、ヤハウェの民としての結束を強めることになった。

モーゼの主への諌め
 主は更に、モーセに言われた。「私はこの民を見てきたが、実にかたくなな民である。今は、私を引き止めるな。私の怒りは彼らに対して燃え上がっている。私は彼らを滅ぼし尽くし、あなたを大いなる民とする」。モーセは主なる神をなだめて言った。「主よ、どうして御自分の民に向かって怒りを燃やされるのですか。あなたが大いなる御力と強い御手をもってエジプトの国から導き出された民ではありませんか。どうしてエジプト人に、『あの神は、悪意をもって彼らを山で殺し、地上から滅ぼし尽くすために導き出した』と言わせてよいでしょうか。どうか、燃える怒りをやめ、御自分の民にくだす災いを思い直してください。どうか、あなたの僕であるアブラハム、イサク、イスラエルを思い起こしてください。あなたは彼らに自ら誓って、『私はあなたたちの子孫を天の星のように増やし、私が与えると約束したこの土地をことごとくあなたたちの子孫に授け、永久にそれを継がせる』と言われたではありませんか」。主は、御自身の民にくだす、と告げられた災いを思い直された。

モーゼの粛清
 モーセはこの民が勝手なふるまいをしたこと、アロンが彼らに勝手なふるまいをさせて、敵対する者の嘲りの種となったことを見ると、宿営の入り口に立ち、「だれでも主につく者は、わたしのもとに集まれ」と言った。レビの子らが全員彼のもとに集まると、彼らに、「イスラエルの神、主がこう言われる。『おのおの、剣を帯び、宿営を入り口から入り口まで行き巡って、おのおの自分の兄弟、友、隣人を殺せ』」と命じた。レビの子らは、モーセの命じたとおりに行った。その日、民のうちで倒れた者はおよそ三千人であった。

 モーセは言った。「おのおの自分の子や兄弟に逆らったから、今日、あなたたちは主の祭司職に任命された。あなたたちは今日、祝福を受ける」。翌日になって、モーセは民に言った。「お前たちは大きな罪を犯した。今、わたしは主のもとに上って行く。あるいは、お前たちの罪のために贖いができるかもしれない」。

 モーセは主のもとに戻って言った。「ああ、この民は大きな罪を犯し、金の神を造りました。今、もしもあなたが彼らの罪をお赦しくださるのであれば‥‥‥。もし、それがかなわなければ、どうかこのわたしをあなたが書き記された書の中から消し去ってください」。主はモーセに言われた。「わたしに罪を犯した者はだれでも、わたしの書から消し去る。しかし今、わたしがあなたに告げた所にこの民を導いて行きなさい。見よ、わたしの使いがあなたに先立って行く。しかし、わたしの裁きの日に、わたしは彼らをその罪のゆえに罰する」。主は民がアロンに若い雄牛を造らせたので、民を打たれたのであ る。

モーゼの幕屋政治、祭政一致政治
 モーセは一つの天幕を取って、宿営の外の、宿営から遠く離れた所に張り、それを臨在の幕屋と名付けた。主に伺いを立てる者はだれでも、宿営の外にある臨在の幕屋に行くのであった。モーセが幕屋に出て行くときには、民は全員起立し、自分の天幕の入り口に立って、モーセが幕屋に入ってしまうまで見送った。モーセが幕屋に入ると、雲の柱が降りて来て幕屋の入り口に立ち、主はモーセと語られた。雲の柱が幕屋の入り口に立つのを見ると、民は全員起立し、おのおの自分の天幕の入り口で礼拝した。

 主は人がその友と語るように、顔と顔を合わせてモーセに語られた。モーセは宿営に戻ったが、彼の従者である若者、ヌンの子ヨシュアは幕屋から離れなかった。

 主は彼の前を通り過ぎて宣言された。「主、主、憐れみ深く恵みに富む神、忍耐強く、慈しみとまことに満ち、幾千代にも及ぶ慈しみを守り、罪と背きと過ちを赦す。しかし罰すべき者を罰せずにはおかず、父祖の罪を、子、孫に三代、四代までも問う者。」モーセは急いで地にひざまずき、ひれ伏して、言った。「主よ、もし御好意を示してくださいますならば、主よ、わたしたちの中にあって進んでください。確かにかたくなな民ですが、わたしたちの罪と過ちを赦し、わたしたちをあなたの嗣業として受け入れてください。」主は言われた。「見よ、わたしは契約を結ぶ。わたしはあなたの民すべての前で驚くべき業を行う。それは全地のいかなる民にもいまだかつてなされたことのない業である。あなたと共にいるこの民は皆、主の業を見るであろう。わたしがあなたと共にあって行うことは恐るべきものである。わたしが、今日命じることを守りなさい。見よ、わたしはあなたの前から、アモリ人、カナン人、ヘト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い出す。よく注意して、あなたがこれから入って行く土地の住民と契約を結ばないようにしなさい。それがあなたの間で罠とならないためである。

 あなたたちは、彼らの祭壇を引き倒し、石柱を打ち砕き、アシェラ像を切り倒しなさい。あなたはほかの神を拝んではならない。主はその名を熱情といい、熱情の神である。その土地の住民と契約を結ばないようにしなさい。彼らがその神々を求めて姦淫を行い、その神々にいけにえをささげるとき、あなたを招き、あなたはそのいけにえを食べるようになる。あなたが彼らの娘を自分の息子にめとると、彼女たちがその神々と姦淫を行い、あなたの息子たちを誘ってその神々と姦淫を行わせるようになる。あなたは鋳像の神々を造ってはならない。

 年に三度、男子はすべて、主なるイスラエルの神、主の御前に出ねばならない。

主の新たなる啓示「カナンの地へ」
 主はモーセに仰せになった。「さあ、あなたも、あなたがエジプトの国から導き上った民も、ここをたって、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓って、『あなたの子孫にそれを与える』と言った土地に上りなさい。わたしは、使いをあなたに先立って遣わし、カナン人、アモリ人、ヘト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い出す。あなたは乳と蜜の流れる土地に上りなさい。しかし、わたしはあなたの間にあって上ることはしない。途中であなたを滅ぼしてしまうことがないためである。あなたはかたくなな民である。」民はこの悪い知らせを聞いて嘆き悲しみ、一人も飾りを身に着けなかった。主がモーセに、「イスラエルの人々に告げなさい。『あなたたちはかたくなな民である。わたしがひとときでも、あなたの間にあって上るならば、あなたを滅ぼしてしまうかもしれない。直ちに、身に着けている飾りを取り去りなさい。そうすれば、わたしはあなたをどのようにするか考えよう』」と言われたので、イスラエルの人々は、ホレブ山をたって後、飾りをはずした。

【モーゼ没す
 そして荒野をさまようこと40年、飢えと渇きと疲労に不満を募らせるユダヤの民を苦悩の末、「乳と蜜の流れる」約束の地カナンに導き、自らはその地に足を踏み入れるなく没した。

モーゼの「出エジプト」の考証
 近年の研究の結果、聖書の語るこれらの出来事はその大筋において歴史的真実性が確認されつつある。なお、荒野の旅のルートについては、北のルートと南のルートの二説に分かれている。「出エジプト」の時期については諸説あるが、第19王朝ラメス2世統治下の紀元前1290年頃と推定されている。




(私論.私見)