「赤間剛・氏のフリーメーソン研究」



 「阿修羅」の SP' 氏の2001.4.24日付「第三章 日本フリーメーソンの内幕(赤間剛『フリーメーソンの秘密』三一書房)

 「アメリカにはメーソンは四百万人いますから、二億のアメリカ人口中、およそ二十人に一人の割合でメーソンがいます。フリーメーソンは秘密結社ではありません。そのように宣伝したのは戦前の軍国主義者でした。確かに一部に秘密があります。それは儀式の内容と入会者のメンバーをみだりに外部に明かさないことで、仲間うちだけにメーソンの兄弟だと通じるサインとか言葉などがあるのですね。

 フリーメーソンは個人の道徳性を高めるのが目的で、入会者の条件として、無神論者でなく、何かの超越的な神を信じ、家族を愛し、国家の合法的規約に従うという規約があります。メーソンになるには、まず二十歳以上の成人男子で、手足が不自由でない(儀式と“合図”のため)、酒を売る人は原則としてお断りするなどの規約がありますが、基本的にはジェントルマンであることが入会の条件ですね」(片桐三郎氏。某大会社役員。三十二位階。横浜ロッジ支部長)

 説明によると入会希望者は自分から進んで、「メーソンになりたい」との意志をのべ、ロッジのメンバー二人に推薦してもらう。するとロッジからフリーメーソンの願書(履歴書・身上書)が渡され、その資料を基にロッジから別の二人が面接調査する。そして、「家族のめんどうをみているか」とか「アルコール、賭博の常習者でないか」などの生活態度ほかを詳細に調べられる。しかし、実際には、「入社試験よりやさしいですよ」(片桐氏)という。このレポートにより、ロッジのメンバーが全員一致して賛成すれば入会が認められる。すると、全国のロッジに新人紹介の回状が廻るという。入会金は三万六千円、年会費が四千円と安いが、ロッジでの各種の催事などの費用は自前の持ち寄りが原則。会費を二年間滞納すると権利停止の資格剥奪を受け、またハレンチ罪や非合法な罪に問われると追放処分される。このような裁定は内部の審判員が公平に判断し、被告はメーソン仲間の弁護人を選ぶことも可能で、民主的である。
「フリーメーソンは国家の組織に似た制度を持っています。日本グランド・ロッジは諸外国のフリーメーソンと外交関係で相互条約を交し、友好条約を結びます。日本グランド・ロッジ内部では、司法・行政・立法の三権分立機構を持っています。統轄権を持つロッジ・マスター(支部長)、グランド・マスター(本部長)も民主的に選挙されます。
 各国のグランド・ロッジ間は独立国の関係と同じで平等です。日本グランド・ロッジはフィリピンのグランド・ロッジ傘下から一九五八年、独立しました。内部ではメンバーが除名されると傘下ロッジに回状が廻され、まあヤクザ組織と同じです。フリーメーソンの組織員は、変な意味でなくいうとヤクザ組織に似ていますが、崇高な目的があり、そこが違いますね」(安藤一夫氏。早大講師)

 以下、一問一答をした。
〈なぜ、秘密を持つのか?〉
「フリーメーソンの歴史は何千年も前に始まるメーソン(石工)の口伝を起源とします。中世の職人ギルドでは、その高度な技術が財産でした。メーソンは徒弟、職人、親方の三段階で一人前になります。その当時の石工はヨーロッパ各地をめぐる渡り職人でした。そのため各地のメーソンはギルド(同業者組合)の秘密的な暗号や儀式を踏み、仲間と認めてもらい修業したのです。
 一九一七年に近代メーソンが起ると、このメーソン組織の職業と思想が、近代人の精神になり、いわゆる“思弁メーソン”としてインテリやエリートの間に広まります。しかし、メーソンの秘密は残ったのです」(同)

〈2〉 複雑怪奇な内部組織

 さらにインタビューを続けてみよう。
〈フリーメーソンの内部はどうなっていますか?〉
「基本的には一〜三の位階を通過すれば、一人前のメーソンです(第二章のスコティシュ・ライトの図を参照するとよい)。四〜三十三位階を総称してスコティシュ・ライト(スコットランド・儀礼)といいます。この位階は上下の階級的関係でなく、いわばマスターする“学位”のようなものです。一〜三が一 般メーソンでブルー・ロッジ。四〜十四を十全会。十五〜十八をバラ十字会。十九〜二十九を神聖会。三十〜三十二を宗門会議。三十三を最高会議といい、それぞれブルー・ロッジを通過したメーソンが位階に応じてグループを作っています。
 一人前のメーソン(三位階)になるとスコティシュ・ライトの各グループがそれぞれの会にメンバーをスカウトできます。四位階以上からは縦の階級でなく、横一列の関係で、内部の勉強会と思って下さい。一〜三のプロセスがメーソンの基本型で四〜三十三はその枝葉です。しかも、いわゆる階級ではなくメーソンとしては三位階以上はみんな平等です。儀式と秘密はこの位階の昇進時に行なわれ、また年に何度かの聖書(旧約)にのっとって決められた日に行ないます。
 秘密はそれぞれの位階に応じてあり、メーソンの仲間うちでも自分が何位階か教えてはいけません。儀式はそれを通じての兄弟愛と真実をきわめるために行なうもので、一言でいうと人間修養のためのものです。
 勉学内容は、象徴や儀式であらわされ、時には芝居みたいな演技をします。ふつうおよそ六カ月で一人前のメーソンになりますね。この修養の内容を言うわけにはいきません。それが一番の秘密なのですからね。
 フリーメーソンは各ロッジで月に四回、集会を持ち、それぞれのグループで月例会、ミーティング、勉強会の日を決めます。集会日はふつう夕方の六時ぐらいから夜十時ぐらいまで、夕食会を催しますが、ロッジ内での飲酒は厳禁、集会中は政治や宗教、ビジネスの話は禁じられています。もちろん、メーソンは個人主義ですから、ロッジ外では全くフリーですし、兄弟愛を通じ、メーソン同士が仕事の助け合いや政治的理想を語るなども自由です」(片桐三郎氏)
〈外郭団体や人脈的に近い団体を教えて下さい〉
「スコティシュ・ライトでは、メーソンだけの慈善団体(註1)をもち、これをシュラインと呼びます。シュラインは回教儀式のテンプル(寺院)を集会所とし、主に身体障害者相手の病院を経営しています。アメリカではこのシュラインが盛んで、このメンバーになるのは非常に名誉なこととされていますが、日本では資金的な余裕も、メンバーも少なく盛んではありません。
 外郭団体としてメーソンの子弟たちのために『オーダー・オブ・デ・モレー』というボーイスカウトがあります。ふつう『デ・モレー団』と呼びますが、デ・モレーの名は十字軍時代の有名な聖堂騎士団の最後の総長、デ・モレーから由来するもので、第一次大戦後、アメリカのメーソンが青少年運動のために興しました。世界の本部はアメリカのミズリー州のカンサス市にあり、現在世界中に数十万の団員を持っています。日本では支部が東京、福生、沖縄の三カ所にあります。
 このガールスカウト版が『オーダー・オブ・レインボー・ガール』です。そしてメーソン家庭の夫人連の団体が『オーダー・オブ・イースタン・スター』(東方の星結社)です」(述事務局長)
〈日本グランド・ロッジと諸外国との関係を具体的に説明すると?〉
「日本グランド・ロッジはブルー・ロッジの管轄権を持っています。フィリピンから独立したとき、“既得権”としてすでに存在した英国やフランスのロッジは管轄外として認めましたが、今後は日本グランド・ロッジが日本のフリーメーソンの最高機関として、進出を許可します。
 交友関係にある外国グランド・ロッジは現在、百以上あり、国としては四十三カ国です。この相互友好条約が結ばれますと、互にメンバー同士を紹介したりします。諸外国のグランド・ロッジが集まって一般的問題を討議する場をグランド・マスターズ協議会(各州、各国のグランド・マスターが参加)といい、日本はワシントンでの会議に参加します。また、スコティシュ・ライトでは同じく世界最高評議会があります。
 日本のグランド・マスターはブルー・ロッジ(三位階まで)の最高指揮権をもち、スコティシュ・ライトとは上下の関係でなく、併行した二重の組織です。東京メソニック協会(財)はスコティシュ・ライトの組織です。日本グランド・ロッジは私的団体ですので、東京メソニック協会からビルを借り、家賃を払う形です。日本グランド・ロッジも慈善事業をしておりますが、厚生省の役人に似た二つの法人はいらないとされ、日本グランド・ロッジとフリーメーソンは私的団体とされたのです」(同)
〈メーソンになったらどんなメリットがあるのでしょうか?〉(註2
「世俗の物質的な利益はありません。フリーメーソンはそれを考えない団体なのです。ロッジはいわばメジテーション(冥想)の場で、精神的な向上だけを目指します。ただ、あらゆる階級、国籍、人種が異なるとしてもメーソンは皆兄弟ですから、非常に暖かい団体だといえますね」(安藤一夫氏)
 取材中、「フリーメーソンの正体は何だろうか」との問いが頭を悩ませた。この問題を、イタリア、イランの事例をひき、尋ねてみると、
「イランは情報がなく判りません。イタリアの例でもフリーメーソン自体は陰謀結社とされていません」
 との答えだった。また、「メーソンの仲間にも個人的にはいろいろいるでしょう。なかにはCIA的な人間もいるでしょうが、フリーメーソンを陰謀結社として利用はできない。フリーメーソンの陰謀説はナチスやローマ・カトリック側からむかしはいろいろやられましたがみんな嘘ですよ。最近でも、M資金の関係とか、我々の本部は“表メーソン”で実は“裏メーソンがある”とかいう人もいます。以前も、“裏メーソン”から聞いてきたという二人連れがやってきて、奇怪な話をするので『そんなことはない』と否定すると、“裏メーソン”を名のる人から、その否定が合図なのだ、と説明されたそうです。結局、どう答えても信じてもらえなくて困ります。
 最近、日本にカリフォルニアに本部をもつ『バラ十字会』と名のるメーソンの類似団体が進出してきて、我々と友好関係があるかのように訪問してきましたが、オカルチックな団体で本物のフリーメーソンではありませんので断わりました。フリーメーソンを真似た類似団体はアメリカやヨーロッパには多く、間違われるので困ります」(述事務局長)
 という。「何のメリットがあるか?」とさらに問うと、「結果論として」の前提で、
「たとえば外人と一緒にゴルフをしており、偶然互いがメーソンとわかったときには、ガラリと態度が変り、親密になります。何となくメーソンらしいと察したときには、“合図”や“サイン”がありますからテストできます。メーソンの兄弟と知ったときの親密感は同郷の出身者などの感情をさらに強くした感じでしょうね。相互扶助の義務がありますから、そういうことでビジネスにプラスになることも結果的にあるでしょう。
 しかし、相互扶 助だけが目的でフリーメーソンに入会するのじゃあない。私も困ったメーソンの何人かに職を紹介しました。メーソンは個人主義的ですので、困った仲間のメーソンが自力でダメなら助けてやるという順序になります」(片桐三郎氏)
「日本人として初めてピューリッツアー賞を受けたカメラマンの沢田教一氏がメーソンでしたが、彼はいつもメーソンの指輪をしていましてベトナム戦でもそれを見た米軍人メーソンがヘリコプターに乗せてくれたりいろいろ助けてくれたし、メーソンの仲間が世界中にいることがありがたい、と言ってました。いいメーソンでしたが亡くなりましたけどね」(安藤一夫氏)
 という。

〈3〉 入会者の話

 フリーメーソンが「秘密結社ではない」(註3)の証拠として、私は日本グランド・ロッジの殿堂に案内され、儀式の会場見学を許された。カトリック教会の厳粛さとまた全然違うエキゾチックな雰囲気だ。
 三人のメーソンが議長の席、会員の着席順、位置他を説明してくれる。儀式のときは、入口に門番の衣裳で槍を持った男が、謎の問いを発し、正しく答えないと入室できない、という。許しをえて、メーソンのエプロン、帽子ほか衣裳を身につけてみる。何となくテレ臭いが何となく愉快でもある。それで、「勲章とかエプロンとかにテレる人はいませんか?」と聞く。「いません」と心外そうだった。
 儀式のときは、真中の台座上にそのメーソンが信仰する“聖書”を開き、右手をおきメーソンの誓いを口にし、ひざまずく。日本人ならこの“聖書”は仏典でもよいが、ふつうは旧約聖書(ユダヤ教)だ。というのは、メーソンの行事は独自のメーソン暦からなるユダヤ教から由来しているからである。儀式の用語は今では日本語でよいが、儀式の行事などはあくまで古来からのフリーメーソン様式を踏まえるという。
 会場の模様は四方に黒い幕がおろされ、外光から遮断されている。中央に祭壇。三隅に奇妙な形のランプ、スイッチを入れると赤紫色の神秘的な光を発する。席は正確に東西南北に配置されており、東側に祭司長の席。その上には木槌がある。机の前に垂らした幕には、海に昇る太陽とメーソンとは切り離せない直角定規の刺しゅうがしてある。
 祭壇をはさんで西側の祭司補席には、山あいに沈む太陽と水準器。椅子の背もたれには、フリーメーソンの象徴である直角定規とコンパスの組み合わせた飾り、述事務局長らメーソンの説明によると、この道具立てのひとつひとつに意味があるのだと説明をしてくれる。たとえば、祭司長席後方の垂れ幕にある「G」の文字はジオメトリー(幾何)のG、ゴッド(神)のG、というようにだ。さらに直角定規とコンパスを組み合わせたマークのある帽子、位階を示す模様のついたカラー、直角定規と神の「眼」が描かれた羊皮製エプロンからなるフリーメーソン独特の服装など、ムード的にいうといかにも秘密結社的である。
 日本グランド・ロッジの殿堂内を訪問した外部のジャーナリストは、「あなたが初めて」といわれる。これはジャーナリストが知らないの意ではない。朝日、毎日、ジャパンタイムズなどかなりのジャーナリストが日本人メーソンだからだ。
 フリーメーソンは独自の図書館を持っている。それを「フリーメーソン・ライブラリー」といい、全世界のフリーメーソン関係の書物がある。
「フリーメーソンだけの印刷される書を総合すると聖書の発行部数を軽く越えるといわれます」(安藤一夫氏)
 この図書館を利用できるのはメーソンの会員のみだが、私は特別に資料を見せてもらった。メーソンの機関紙には『マソニック新聞』があり、各国ロッジの活動などが記載されている。図書館の書物はほとんどが英文で、機関紙も英語と日本文の半々だ。
 全国の会員名簿はなく、「各ロッジがそれぞれ持っている」が本部のグランド・ロッジ内にある「名前・生年月日・入会年月日・ロッジナンバー・死亡・退会年月日」という断片的なカードを閲覧する許可を与えられた。このデーターから著名なメーソンを割り出し、入会の動機やフリーメーソンについて取材してみた。



「阿修羅」のSP' 氏の1999.7.11日付投稿「アメリカ建国およびバチカンとの関係(赤間剛氏による)

 一八世紀にイギリスに誕生し、ヨーロッパ大陸に進出していったフリーメーソンリーの理想が、真の意味で現実化したのはアメリカにおいてであった。

 植民地アメリカにフリーメーソンリーが入っていったのは、一七二〇年代の後半である。

 一七三三年、ボストンに有名な「ファースト・ロッジ」が開かれ、ヘンリー・プライスがイギリス本国のグランド・ロッジの承認を得て、グランド・マスターになる。その後、またたく間にアメリカの十三植民地にフリーメーソンリーのロッジが広がった。

 一六二〇年十二月二十一日、メイフラワー号の巡礼父祖が上陸して、ピューリタンの信仰と自由と独立を求めた、という宗教的理由を柱にしたアメリカの“建国神話”があるが、これは事実に反する。現にメイフラワー号の乗客百二人のうち、分離派教徒はわずかに三十五人にすぎず、あとはヴァージニア植民地でひと旗揚げようとした国教会の信徒だったのである。巡礼父祖(ピルグリム・ファーザーズ)という言葉が使用されるようになったのは、メイフラワー号から二百年近くたってからつくられた“伝説”である。

 アメリカ憲法修正第一条は、国家宗教の樹立を禁止している。建国の父祖たちは理性の時代に生きていた。一七九六年、ワシントン大統領はトリポリ条約で、「いかなる意味においても、アメリカ合衆国はキリスト教国家ではない」と宣言している。アメリカ合衆国が「キリスト教国家」になるのは、二〇世紀に入ってからなのである。

 ヨーロッパからアメリカへ移住した大部分の人々は、宗教の自由を求めて海を渡ったのではなく、宗教からの自由を求めていたのだ。一九世紀半ば、一八五〇年の統計によると、当時のアメリカ人のうち、教会に登録していたのは人口の一六パーセントにしかすぎなかったのである。

 新大陸の人々をまとめていたのはキリスト教ではなく、フリーメーソンリーの理想だったのである。独立前のアメリカは、必ずしも一枚岩ではなかった。それらをまとめていたのが、フリーメーソンリーのロッジであったと、史家はいっている。

 一七七六年七月四日、アメリカ合衆国の「独立宣言」が採択される。起草の中心人物はトマス・ジェファーソンであり、ジョン・アダムスとフランクリンがそれに協力した。宣言は、人間は生まれながらにして「平等」であり、「生命」「自由」「幸福」追求の権利をもち、その権利を否定する政府・国家を否定する権利を有するとする。その主張は、ジョン・ロックの政治思想に源流を求めることができる。

 「いってみれば『独立宣言』は一八世紀のヨーロッパの一つの集結点であった。と同時に、それはまた正しい意味での近代の幕明けであったのである」(『フリーメイソンの歴史』)
 グルードの『フリーメイソンの歴史』では、この独立宣言に署名した五十六人のうち、三人を除き、そのすべてがメーソンだったという。
 
 当時のアメリカのメーソンを代表する人物は、ベンジャミン・フランクリンである。彼は一七三一年にメーソンとなる。稲妻と電気の関係を証明したことをはじめ、自然科学の分野で業績をあげている。彼は、イギリスのロイヤル・ソサエティと、フランスの科学アカデミーの会員にもなっている。

 自然科学はメーソンの思想の一部である。フランクリンは、フリーメーソンリーの人脈を巧みに利用して、独立戦争においてフランスをアメリカと同盟(一七七八年)、参戦させた功労者である。

 アメリカ建国の父、ジョージ・ワシントンもまた有名なメーソンであった。彼は、一七五二年にメーソンとなっている。彼の属するロッジは、ヴァージニアの上層階級のクラブであった。独立戦争が始まると、軍隊では盛んに「軍事ロッジ」が創設される。ワシントンは、この移動する軍事ロッジの先頭に立ち、メーソンの正装をし、行進した。

 ワシントンのまわりには、独立戦争で有名なメーソンが集まった。独立戦争は、サラトガの戦いでアメリカ側が勝利を収めたのを機に、戦況はしだいにアメリカ側に有利になっていく。

 フランクリンの活躍によってフランスが参戦すると、イギリスの劣勢が明らかになり、一七八一年に戦争は事実上の終結をみた。

 一七八七年にはアメリカ合衆国憲法が制定され、一七八九年にはワシントンが初代大統領に就任する。このときワシントンは、ニューヨーク・グランド・ロッジのグランド・マスターであった。

 一七九二年に着工された「ホワイト・ハウス」の設計者もメーソンである。

 一七九三年には、アメリカ政治の象徴となる議事堂の礎石を置く儀式が行なわれる。その儀式はフリーメーソンリーのロッジと提携して行なわれ、ワシントンは、メーソンのエプロンと記章をつけて儀式に臨んでいる。

 有名なワシントン記念塔も、メーソンの力で生まれたものだ。このオベリスクは一本石からは造られておらず、多くの石を組み合わせてできており、アメリカ合衆国の標語「多から一」を象徴的に示す建築物である。
 また一八八六年、フランス政府はアメリカ独立百周年を記念して「自由の女神」像を贈るが、その制作者フレデリック・バルトルディもメーソンである。

 アメリカ建国がフリーメーソンの精神であることは、アメリカ合衆国の国璽にもその象徴が表われていることからも明らかだ。とくにはっきり表れているのは裏側であり、未完成のピラミッドが描かれ、冠石の位置に「万物を見る眼」(フリーメーソンの象徴)が描かれている。この絵は一ドル紙幣の裏側にも描かれている。


 バチカンは、またの名をローマ教皇庁という。イタリアのローマ市郊外にある人口千人ばかりの小さな国である。だが、カトリックの総本山として、その信者九億六百万人を擁する、世界最大の宗教教団がバチカンなのである。

 バチカンは、宗教センターであるばかりではない。莫大な数の信者から集める寄付金をバチカン銀行にプールし、その財力を資金に企業や国家に貸し付けているのである。その巨大な資金は「世界経済の眼」とも呼ばれ、信者の数とともに世界情勢に及ぼす影響は極めて大きいのだ。

 また、バチカンは「反共陣営の大本山」(故・大宅壮一氏)とも呼ばれ、はっきりと反共主義を打ち出している政治的国家でもある。
 その政治力は、全世界を網羅する情報収集機関(教会)によって裏打ちされており、「世界最大の情報国家」(小松左京氏)との呼び名さえある。

 この強大な力を利用して、バチカンは全世界に多大な影響力をもっている。いやそれだけではない。バチカンは謀略をめぐらし、自らの手で、“世界帝国”の建設を目論んでいるとも考えられる(拙著『バチカンの秘密』三一書房、『バチカンの黙示録犯罪』廣済堂)。その意味で、バチカンはフリーメーソンリーに対抗しうる世界規模の「陰謀結社」でもあるのだ。

 では、そのバチカンが目指す世界帝国とは、どのようなものであろうか。
 むろん、それはカトリックの神学に基づいている。神の存在、キリストの復活、終末思想などをベースにしたキリスト教観による世界国 家がそれだ。

 バチカンとフリーメーソンリーは長い間、犬猿の仲だった。それがフリーメーソンのP2事件を境に、バチカン内部にP2会員、もしくはメーソンである聖職者が多数いることがわかり、世間を騒がせた。それも、バチカン内部の実力者が多数いたのである。

 現在の教皇ヨハネ・パウロ二世は、一九八一年三月二日、
「フリーメーソンおよび類似の秘密結社に入会した者は教会法により破門になる」
 として、新たな声明を発表した。
「私の子供たちよ。私は再びサタンの秘密結社に加わらないように、あなたたちに警告します。それはほんとうにサタンの会堂なのです。これらの秘密結社は、兄弟愛、博愛、人類同胞主義などのラベルを身につけています。しかし、私の子供たちよ。どんなことをいっても、あなたがたの信仰をくつがえそうとしているのです」
 しかし、現在すでにバチカン内部におけるメーソンの勢力は、計り知れないものがある。ざっとそのメンバーをあげてみよう。
 前国務長官(バチカンのナンバー・ツー、総理大臣に当たる)のアントニオ・カザロリ枢機卿(一九五七年九月二十八日入会)、セバスチアポ・バッキオ枢機卿(一九五七年八月十四日入会)、世界的にカリスマ制新運動を推進しているレオン・ジョセフ・スーネンス枢機卿(一九六七年六月十五日入会)、次の教皇候補といわれるバリス・ルトジンガール枢機卿、「すべての宗教の世界教会」運動を進めているピクメドオリ枢機卿、コエニング枢機卿などがいる。なお、元国務長官のジャン・ヴィロ枢機卿、バチカン銀行の総裁ポール・マチンクス大司教などもそうである。
 ほかに教会幹部聖職者の名前だけでも列挙すると、フィオレンゾ・アンジェリネ(一九五七年十月十四日入会)、パスクァレ・マッキ(一九五八年四月二十三日入会)、ヴィルジリオ・レヴィ(一九五八年七月四日入会)、アレッサンドロ・ゴッタルディ(一九五九年六月十三日入会)、フランコ・ビッフィ(一九五九年八月十五日入会)、ミッシェレ・ペリグリノ(一九六〇年五月二日入会)、フランシスコ・マルキサノ(一九六一年三月四日入会)、ヴィルジリオノエ(一九六一年四月三日入会)、アルバーアレ・ブーニーニ(一九六三年四月二十三日入会)、マリオ・ブリーニ(一九六九年入会)、マリオリッチィ(一九六九年三月十六日入会)、ピォ・ヴィトピント(一九七〇年四月二日入会)、アキレ・リーナルト、ジョゼ・グリヒ・リベラ、ミキュエル・ダリオ・ミランダ、セルギオ・メンデス・マトケオ、そしてフランシスコ修道会のフェリペ・クエト……などである。
 以上数えあげればきりがないが、バチカン内部にじつに百二十一名のメーソンがいるのである。『法王暗殺』(D・ヤロップ著)という本によると、前教皇ヨハネ・パウロ一世は、バチカン内部のメーソンを一掃する人事に手を染め、それで暗殺されたのだという。
 また『誰が頭取を殺したか』(ラリー・ガーヴィン著)によると、P2事件と教皇庁とは複雑なからみがあり、それでP2の中心人物、アンブロシーノ銀行頭取のロベルト・カルビが、一九八二年六月十日、ロンドンで“自殺”したことが記されている。
 また、一時期バチカン銀行と手を組み、金融帝国を目指したミケーレ・シンドーナの奇怪な死(獄中“自殺”)もある。

 フリーメーソンリーは、「人類が一致して信仰できる宗教」である。その信仰は、バチカンの教義と同じく、「この世のものではない」(『フリーメーソンの失われた鍵』マンリー・P・ホール著、吉村正和訳、人文書院)。
 しかし、バチカンは長い間、フリーメーソンリーを敵視してきた。現在もヨハネ・パウロ二世が前述のごとく排斥しているが、バチカン内部に及んだメーソンの勢力はすでに根強く、除去できないと思われる。バチカンでさえもそうなのだから、世界中にあるカトリック教団内部にも、メーソンが侵入していると思ってよいだろう。
 バチカンは一九六四年、「世紀の大改革」ともいうべき第二バチカン公会議を開き、これまでの独善的な姿勢を百八十度変えて、大方針を打ち出した。そこで注目すべきことは、エキュメニカル(教会一致)戦略とともに、ヒンズー教、仏教、イスラム教など他宗教にも「神の光」があるとする、宗教対話の精神を打ち出したことである。
 まず東方教会とプロテスタントは、今日、世界教会協議会(WCC)をもっており、すでにエキュメニカルを始めている。ここで重要なのは、プロテスタントの指導者の多くがメーソンであることだ。WCCの参加教団は約二百教団、約六億人の信者を有している。筆者が日本グランド・ロッジを取材したとき、元グランド・マスターの一人は、
「パウロ六世教皇もメーソンでした」
 という衝撃的な話をしてくれた。
 また英国のメーソンの一人は、
「英国では、プロテスタントの指導者の二五パーセントがメーソンだ」
 と言っていたのである。
 今日、フリーメーソンのバチカン支配が口にされているが、プロテスタントはすでにフリーメーソンに支配されているのだ。フリーメーソンリーの理想がエキュメニカルという方向で動いており、この大戦略を始めたのもプロテスタントのWCCである。
 エキュメニカル、宗教対話のバチカン戦略も、そもそもバチカン内部のメーソンがつくりだしたものかもしれない。こうした“神々の同盟”は一面、反共戦略を意味しており、フリーメーソンも反共であることには変わりがない。
 今日、西側の自由主義諸国のエリートはフリーメーソンであり、有神論者の人々を加入させている。そもそもメーソンになるには、「宇宙創造の神」を信じることだ。何でもいいから有神論者が入会の条件だ。
 フリーメーソンの信仰する神は、低位のメーソンは「宇宙創造の神」だが、高位のメーソンは、次の三つの神を信じる。
 JAH=エホバ、ヘブライの神
 BUL=バール、古代カナンの呪術的な神
 ON=オシリス、古代エジプトの黄泉の国の神
 このうち問題になるのは二つ目のバール神であり、この神は、古代イスラエルの民をエホバの神に帰依させるために戦った「邪神」で、「悪魔」だとされている。
 ここらあたりが、バチカンなどがフリーメーソンリーを忌避し、「悪魔の会堂」とするゆえんだろうか。(以上『秘密結社がわかる』赤間剛氏執筆の第五章より抜粋)


#NATOの旗は「コンパス」ですから(爆)。三つの神は『聖書の呪い』では、三神合体でJAHBULONとか。...『UFOS & SPACE』79年9月号によると、

 赤間剛 本誌8月号座談会に“UFO秘密兵器・謀略説”をふりかざして登場したフリー・ライター。専門は“支配学”で、UFO共同幻想論を展開し、「日本人がUFOを信じないのは、もう一つのUFOである天皇信仰のためであり、また日本民族が地球人類の中の宇宙人だからだ」と主張している。オカルト、宗教学など、人間における“神秘”をさぐり、遠い将来には、映画『ミクロの決死圏』のように、自己の中にUFOが秘められているのを誰で も知るでしょう、とまじめに話す。「大衆に明らかなものは明らかに誤り」との堅い信念のもち主である。1945年下関市生まれ、中央大学法学部卒。元読売新聞記者。著書に『ヒトラーの世界』、『UFOのすべて』(三一書房)など。



赤間剛  フリーメーソンの世界支配の戦略 「米ソ合意」のあとに来るもの 徳間書店
赤間剛  フリーメーソンの秘密 世界最大の結社の真実 三一書房
赤間剛  巨大財閥の秘密 ロックフェラーからロスチャイルドまで 三一書房 三一新書 1090
赤間剛  神々の陰謀_01 三島由起夫の死と天皇制の謎 時の経済社 ときのほん
赤間剛  神々の陰謀_02 世界を支配する影の戦略 時の経済社 ときのほん




(私論.私見)