川崎市の聖マリアンナ医大病院は、去年2月のクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」の集団感染からコロナ患者の受け入れを始め、現在は重症化した患者を中心に受け入れている。コロナ患者の対応は1年半になるが、これまでに院内感染を起こしていない。
同救命救急センターのコロナ患者の画像診断医、松本純一医師(50)。発熱と咳がある患者が救急搬送され、 防護服を身にまとった医療スタッフが男性を救急車からストレッチャーごとCT室へ移動させる。症状があっても、一般の救急患者とコロナ患者の違いを見極めるのは難しい。PCR検査は結果がでるまでに時間が掛かる。そのため、患者の肺のCT画像を撮り、コロナ患者特有のすりガラス状の白い影があるかでコロナ患者かどうかを見極める。一般病棟にコロナ患者が紛れ込むと院内感染が起こる可能性が高まるため「ダイレクトCT」とPCR検査を掛けあわせてコロナ診断をしている。
CT室とガラス板で隔てられた診断室から松本医師が患者を見つめる。「ダイレクトCT」スキャンが始まると端末に男性のCT画像が即座に表示される。画像を見ながら松本医師が「A」「B」「C」と書かれた手作りの札で判定する。「A」はコロナではない、「B」はどちらとも言えない。「C」はコロナが強く疑われるという意味。松本医師のスマートフォンにメールが届く。タイトルは「緊急依頼」。別の病院からの画像診断要請だ。松本医師のチームでは全国300あまりの病院から送られてくるCT画像を見てコロナかどうかを助言している。一日20件ほどの依頼にボランティアで応じている。見極めに要する時間は平均20分。診断が終わると、端末に、画像診断医の所見を記入する。所見は「1」~「5」の数字で記入するが、コロナが疑わしい場合は「5」、コロナではないと診断すれば「1」。膨大な画像データで学習したAI(人工知能)がコロナかどうかを診断する試みも行われている。ただ、松本医師は、「本物を見逃さない感度は専門医に近いが、偽物も拾ってしまう可能性もある。AIですべてを診断するのは、まだ難しい」と話す。松本医師は聖マリアンナ医大病院だけでなく、30キロ以上離れた東京・立川市の病院へも車で移動する。移動中にも依頼があれば、車を停めて、画像診断する。 |