漫画『大奥』にも、その名が登場、ジェンナーさん
ジェンナーは、天然痘ウイルスのワクチンの原型を作った人です。
よしながふみ先生の『大奥』でも、作中のキーとなる「赤面疱瘡」の解決方法を探る過程で、彼の名がチラっと出てきますね。具体的にいうと10巻です(単行本派→Kindle版もあります)。
まぁ、それはさておき、ジェンナーが天然痘と闘うまでの経緯から見ていきましょう。
まず、当時のイギリスでは天然痘がたびたび流行していました。
中世の暗黒時代ほどではなかったにせよ「お偉いさんの肖像画を描くときに、天然痘の痕を描かない」のが常識になっていたくらいですから、”たまに流行る病気”くらいの身近さではあったのでしょう。
年頃の女性にとっては、結婚に関わることという意味でも脅威でした。
未婚であれば嫁ぎ先を見つけることも難しくなりますし、既婚であっても愛想を尽かされてしまうかもしれません。
メアリー・モンタギューという女性も、その一人でした。
軽症の患者から膿を採取し皮膚に塗れば大丈夫!?
彼女はオスマン帝国駐在大使の夫人で、イギリスにいる間に天然痘にかかり、運良く生き残りました。
親族を天然痘で亡くしたこともあったので、彼女にとってこの病気は心底恨めしく思えたことでしょう。
幸い夫は彼女を見限ることはなく、赴任先にも連れて行ってくれました。
彼女の手紙には、オスマン帝国の女性の美しさや気配りについても書かれているそうですので、痘痕を気にせず外出することもできたのでしょう。
そんな中で、メアリーはオスマン帝国で行われている、天然痘への対策法を知ります。
「軽症の天然痘患者の発疹から膿を採取し、感染していない人の皮膚につける」というものです。
これを知ったメアリーは、さっそく自分の子供にこの「人痘」を受けさせました。そしてロンドンへ戻った後、人痘を積極的に広めようとします。
しかし、医学界からは「東洋の野蛮な民族のやることなんて、アテにならないに決まってるだろwww」(※イメージです)と言われて、なかなか信用や協力を得られませんでした。
わずかな医師がメアリーに賛同し、7人の囚人へ人痘を受けさせる治験を実施。今やったら人体実験として大問題になるところですね。
運良く、このときの7人は全員生存します。
また、この方法にときのイギリス王妃・キャロラインが賛同し、自らの娘、つまり王女たちに人痘を受けさせます。
これにより一般の人々も人痘への恐怖感が薄れ、少しずつ広まっていきました。
牛痘ならばもっと多くの人を救えるのでは?
ジェンナーが生まれた1749年頃には、既に世間一般で人痘への抵抗感は少なくなっていたものと思われます。
しかし、人痘は完全な予防法ではなく、数%の確率で通常通り発症してしまうことがあり、命を落とす人もいました。
ジェンナーはこの数%をなくすべく、新たな方法を考えます。
そこで耳に入ったのが「牛痘」という天然痘によく似た病気でした。
文字通り牛の病気なのですが、牛の世話を農家の人がたびたびかかるもので、しかも「一度牛痘になると、天然痘にかからずに済む」といわれていたのです。
ジェンナーは「これ、うまくやれば天然痘の予防に使えるんじゃないか」と考え、研究を始めます。
そして18年もの間あれこれと試行錯誤し、1796年に初めて使用人の子供に摂取しました。
若干症状は出たものの、その子供は無事治りました。さらにその後、同じ子供へわざと天然痘ウイルスを接種しましたが、発病することはありませんでした。
牛痘が安全かつ効果があるということが証明されたのです。
1798年にジェンナーはこれを発表し、4年ほどでイギリス議会から賞金を贈られるほど認められました。
が、やっぱり医学界ではなかなか認めようとしませんでした。頭が固いなあ(´・ω・`)
この時点でも、イギリスの天然痘による死者は4万5000人くらいいたなんですけどね。
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