日本の軍事防衛費用考、「GNP(ないしはGDP)1%枠」考

 (最新見直し2013.10.12日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、「日本の軍事防衛費用考、GNP(ないしはGDP)1%枠考」をものしておく。

 2006.6.16日 れんだいこ拝


「GNP1%枠」考

 日本の防衛費は「GNPの1%枠」の規制を受けている。GNPに対する防衛費は1952年度予算の2,78%から徐々に減少を続け、1961年度以降は1,2%で推移していた。1967年度以降はGNPの急上昇により1,0%を切っている。1970年には0,79%まで下がった。1976.11月、三木内閣の防衛計画大綱で、防衛政策を推進する毎年度の予算枠として「国民総生産(GNP)の1%枠」(「当面、(防衛費は)国民総生産(GNP)の100分の1に相当する額を超えない」)が閣議決定された。三木以降の歴代内閣も予算編成にあたってこの枠を維持したが、アメリカから同盟国へ防衛力の増加を求める要求が強まり、1986.12月、第3次中曽根内閣の時、撤廃を决め、翌年の昭和62年度予算編成から総額明示方式へと転換した。総額明示方式とは、長期計画による防衛費の総額を明示して軍備拡張の歯止めにするというものである。

 但し、政策の撤廃後も防衛費がGNP比1%を超えたのは1987年度からの3年度連続でしかない。その数値は1,004%、1,013%、1,006%と僅かな超過にとどまっている。
 

  GDPとGNI(GNP)の違いについて

 GDP(Gross Domestic Product)=“国内”総生産
 GNP(Gross National Product)=“国民”総生産
 ※ 93SNAの導入に伴い、GNPの概念はなくなり、同様の概念として“GNI(Gross National Income)=国民総所得”が新たに導入された。

 GDPは国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額。 “国内”のため、日本企業が海外支店等で生産したモノやサービスの付加価値は含まない。一方GNPは“国民”のため、国内に限らず、日本企業の海外支店等の所得も含んでいる。以前は日本の景気を測る指標として、主としてGNPが用いられていたが、現在は国内の景気をより正確に反映する指標としてGDPが重視されている。

 〔参考〕
用語解説 > 国内(Domestic)概念と国民(National)概念
 〔参考図表〕
SNA関連指標の概念の関係
 日本のGDPの推移を見ると、失われた20年状態に入っていて、GDPはなかなか上がらず、防衛費も一貫して1%枠内に抑え込まれている。2002(平成14)年などはSACO関係費、米軍再編関係経費を含めたベースで涙ぐましくも0,999%となっている。中曽根内閣で防衛費1%枠を撤廃しても現実には“見えない原則”が働いていて実際には撤廃されていないことが現実の数字が雄弁に物語っている。
  質問本文情報

 昭和六十年十二月十三日提出 質問第二二号
 防衛費のGNP一%枠に関する質問主意書

 右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年十二月十三日

  
提出者  春日一幸
 衆議院議長 坂田道太 殿

 防衛費のGNP一%枠に関する質問主意書


 昭和五十一年十一月、当時の三木内閣は、「当面の防衛力整備について」の閣議決定を行い、「防衛力整備の実施に当たつては、当面、各年度の防衛関係費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする」との方針を決定した。この文章は、「当面」という言葉で「暫定性」を表し、「めど」という表現で「弾力性」を示しており、なお当時の坂田防衛庁長官は、「当面」とは「三、四年のことだ」と語つていたと伝えられるが、いつしかこの「一%枠」があたかも「絶対的なもの」のように扱われているようである。しかしながら、もともとGNPは変動するものであり、かつ、GNPと防衛費との間に常に一定の比例関係があるべきはずのものではないから、防衛費の歯どめとして両者間の比率を一定枠にとどめるということには、なんら理論的な根拠がないと考えられる。ついては、以下列記する各項目につき、政府の見解をできる限り明確に示されたい。
 一 GNPについて
 1 GNPは一年間に生産された最終財及び最終サービスの市場価格を合計したものを指すとされるが、それは何を意味し、何に利用するために作成されるものであるか。
 2 GNPの推計は、どのような基礎統計や経済指標に基づき、どのようにして行われるのであるか。
 3 GNPの数字は経済実体を正確に反映するという正確性を要請されるが、推計の仕方如何により伸縮するものと思われるので、その推計精度はどのくらいであるか。
 4 各年末に発表される翌年度のGNPの数字は将来の見通しに過ぎず、経済(消費、投資、貿易)の情況により変動は避けられないから、年度終了後八ヵ月後に公表される確報や年度終了後二十ヵ月後に公表される確報改訂とは一致することがないのではないか。
 5 GNPの数字を推計する際の基準は五年に一回改定されているが、なぜ改定しなければならないのか。
 6 基準が改定されると、旧基準の数字は新基準の数字に計算し直すことになるが、過去何年間にわたつて上方修正あるいは下方修正することになるのか。
 二 防衛費について
 1 専守防御を基本とする我が国の防衛力は、自衛のために必要な最小限度において整備されるべきであるが、そのために必要な防衛費は国際情勢、脅威の有無、軍事技術の水準等に応じて変化するものと考えるがどうか。
 2 毎年度の防衛費はその中味が大切であり、その総額は中味に応じて決定されるものと考えるがどうか。
 3 防衛費に対する歯どめとして、シビリアン・コントロールの諸制度を一層強化する必要があると考えるがどうか。
 三 GNPと防衛費の関係について
 1 GNPは経済計画や経済政策の立案等のために作成されるものであり、防衛費は防衛政策によつて決定されるものであるから、両者の間にはなんら必然的な関係はないと考えるがどうか。
 2 GNPの数字は変動するものであるが、この変動する数字に対して何%という割合を定め、その範囲内で防衛力を整備するというのは、本末転倒と考えるがどうか。
 3 防衛費のGNPに対する割合が何%というのは結果的な数字として現われてくるべきものと考えるがどうか。
 右質問する。
 答弁本文情報
 昭和六十年十二月二十七日受領 答弁第二二号

 内閣衆質一〇三第二二号 昭和六十年十二月二十七日
 内閣総理大臣 中曽根康弘
         衆議院議長 坂田道太 殿
 衆議院議員春日一幸君提出防衛費のGNP一%枠に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 衆議院議員春日一幸君提出防衛費のGNP一%枠に関する質問に対する答弁書

 一の1について
 GNPとは、一国において一年間に生産された最終財及び最終サービスを市場価格で評価した合計額に、海外からの要素所得(純)を加えたものであり、国民経済全体の規模を示す代表的な指標である。
 また、GNPを含む国民経済計算は、適切な経済運営の前提として、当該国民経済の規模、構造、経済成長の速度等を正確に把握するために作成されるものである。
 一の2について
(一) GNPを含む国民経済計算は、国連で定めたガイドラインに沿つて推計される支出、生産、所得の分配・再分配、貯蓄投資バランス、資金循環、国民貸借対照表等の多面的な体系となつている。そのうち支出面(需要面)からのGNPの推計は、財貨・サービスを品目ごとに集計し、主としてコモディティー・フロー法という手法により行われる。
(二) なお、政府及び非営利団体が生産するサービスについては、各種決算書や非営利団体調査結果を基に推計する。
(三) GNPは、コモディティー・フロー法で求めた家計最終消費支出、総固定資本形成及び在庫品増加を合算し、さらに政府及び非営利団体の最終消費支出及び家計への販売額並びに国際収支表を基に推計する輸出を加えたものから、輸入を控除して求められる。
 一の3について
 我が国においては、GNPを含む国民経済計算の推計基礎となる統計の整備水準が高いほか、推計に当たつても国連のガイドラインによる概念規定に沿つてコモディティー・フロー法等の国際的に確立された手法を用いており、その推計精度は高いものと考えている。
 一の4について
 政府は、毎年度の経済見通しの作成に当たり、可能な限りの努力を行つているところである。
 しかしながら、我が国経済は民間活動がその主体をなすものであること、また、特に国際環境の変化には予見し難い要素が多いことにかんがみれば、見通しの数字はある程度の幅をもつて考えられるべきものである。
 この点については、従来から政府経済見通しの本文で述べているところである。
 一の5について
 GNPを含む国民経済計算の推計に当たつては、各種の経済統計を基礎データとして利用しているが、この基礎データの中には産業連関表、国勢調査のように、五年ごとに公表される膨大な統計がある。このため、国民経済計算では、これらの統計調査の結果がまとまるのを待つて、毎年の推計とは別に、五年ごとに名目値の改定作業を行い、精度の向上を図ることとしている。
 また、国民経済計算における「実質値」は、特定年次の価格で評価されているが、その基準年次を五年ごとに改めることにより、可能な限り最近の経済実態を反映した価格体系を基礎に実質値を算定することとしている。
 一の6について
 国民経済計算の名目の諸計数が基準改定により、既公表の計数と比較して上下どちらの方向に、いつからそ及して改定されるかは一概には言えない。すなわち、毎年の推計に利用できない基礎統計が公表されるまでの間に推計に利用している統計データの動きと、五年に一度実施される産業連関表、国勢調査等のデータの動きとの関係により、国民経済計算の基準改定における改定の方向、程度、期間も決まつてくるものである。
 なお、実質値については、基準改定により基準年次を改定した場合には、可能な限り、過去にそ及して改定することとしている。今回の五十五年基準改定では、現行の国民経済計算概念により推計が行われている初年度の昭和四十年までさかのぼつて改定を行つた。
 二及び三について
(一) 我が国は、現在、防衛計画の大綱に従い、これに定める防衛力の水準の達成を図ることを目標に防衛力の整備を行つているところであり、その際、国際情勢、周辺諸国の軍備の動向、諸外国の技術的水準の動向等を考慮し、これに対応し得る効率的な防衛力の整備を図ることとしているところである。
(二) 防衛力の整備の具体的実施に際しては、我が国防衛上の必要性という見地から具体的な整備内容を検討するとともに、その時々における経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつこれを行うこととしている。
    昭和五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針は、かかる観点に立つて、当面の各年度の防衛費のめどについて、政府としての総合的な見地から定めたものである。
(三) 防衛力の整備は、適切な文民統制の下に実施されるべきものであることは当然であり、今後とも文民統制の一層の充実を図る観点から、中期防衛力整備計画を国防会議及び閣議で決定し、これを国会へ報告したところである。右答弁する。

【防衛関係費の内訳】

 防衛関係費の内訳
 (ttp://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2003/2003/html/15233100.html)

 防衛関係費は、隊員の給与や食事のための「人件・糧食費」、装備品の修理・整備、油の購入、隊員の教育訓練、装備品の調達などのための「物件費」とに大別される。物件費は、過去の年度の契約に基づき支払われる「歳出化経費1」と、その年度の契約に基づき支払われる「一般物件費」とに分けられる。

 ■keystoneML1999-12
 (ttp://www.jca.apc.org/keystone/K-ML9912/2220.html)

 2000年度の政府予算案が12月24日閣議決定。防衛関係費は一般会計歳出84兆9871億円の5.8%に相当する4兆9218億円で、対前年度比0.03%増(17億円)。国内総生産比は0.98%。三自衛隊の指揮・通信、情報機能、教育訓練の充実や隊員の処遇改善で所要額を確保。

 ■keystoneML2000-07
 (ttp://www.jca.apc.org/keystone/K-ML200007/2926.html)

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は一九七○年代からの日本の物価、賃金の高騰を受けて、七八年度に米軍基地で働く日本人従業員の福利費を負担したのが始まり。


国家予算に於ける防衛費の比率考

 防衛省は2012年度予算の概算要求で、前年度比0・6%増の4兆6906億円を求めている。

 先進国の軍事費は2006ベースで下記の通り。

 リンク
 http://www.afpbb.com/article/politics/2239380/1691328


米国5300億ドル
英国592億ドル
仏国531億ドル
中国495億ドル
日本437億ドル(4.3兆円)
独国370億ドル
露国347億ドル

*データの解説、
・日本の国家予算80兆円(一般会計)とした場合、軍事費は5%、これに対し、米国の国家予算2兆9,000億ドルとした場合18%で絶対額、予算に占める比率とも米国が圧倒していることが読み取れる。核兵器を保有していない国の中で、日本は最大の軍事費大国。
・軍事費の内訳は概ね下記
人件・食糧費 44.0%(2兆1015億円)
維持費など  21.4%(1兆 221億円)
装備品等購入費18.1%  (8733億円)
基地対策費   9.7%  (4499億円)
施設整備費   2.3%  (1327億円)
(金額合計は若干の誤差あり)

・なおこれだけ高額な予算にも関わらず、「物価の違いにより、購買力平価換算軍事支出では、中国の1/12、ロシアの1/3規模であり、それを反映して自衛隊の規模は両国軍の1/6〜1/8規模であり、独力での国防は困難なので日米安保条約に大きく依存している」という意見もある。


2013年度防衛予算の内訳
 「米日の国防費」を参照する。

 米国の2013年度防衛予算は6310億ドル。米国議会は2013年の国防予算総額を6310億ドルと承認した。そのうち5522億ドルは基盤に充てられ、885億ドルは現在進行中のグローバル戦争に用いられる。

 日本の2013年度防衛予算は4兆7500億円(522億ドル)。日本は1月29日、2013年度防衛予算案の概要を発表した。2013年の国防予算は4兆7500億円(ドル換算で約522億ドル)に達し、対GDP比は約5.1%に達する。

2003年度防衛予算の内訳

 [歳出予算分] 

人件・糧食費 2兆2188億円
歳出化経費 1兆7839億円
一般物件費 9238億円
1_維持費______ 3691億円
2_基地対策経費等 4258億円
2.1周辺環境整備、住宅防音 1148億円
2.2在日米軍駐留経費負担 1739億円
(思いやり予算)
3.1.1特別協定による負担 1416億円
3.1.2提供施設の整備(FIP) 29億円
3.1.3基地従業員対策等 293億円
3.2.3施設の借料補償経費等 1371億円
3.3研究開発費 236億円
3.4装備品等購入費等 220億円
3.5施設整備費 103億円
3.6その他 730億円

[後年度負担分] 正規分 1兆7617億円
正面 7523億円(正面装備費)
後方 1兆94億円
規定分 1兆1804億円
2兆9421億円

【大正初期〜昭和初期の一般会計歳出及び軍事費】
 ttp://www2.ttcn.ne.jp/~kazumatsu/sub227.htm
陽暦年 和暦年 一般会計歳出額 一般会計軍事費 割合(%) 備考
1915 大正4 583,269 182,168 31.2 欧州大戦(第一次大戦)
1921 大正10 1,489,855 730,568 49.0 シベリア出兵の最盛時
1926 昭和 1 1,578,826 434,248 27.5 ソビエト政権承認の翌年(北樺太撤兵)
1931 昭和 6 1,476,875 454,616 30.8 満州事変
1936 昭和11 2,282,175 1,078,169 47.2  日支事変の前夜(満鉄利益が歳入の半額)
2008 平成20 83兆613億円 4兆7796億 5.8

【戦後日本の防衛費予算史】
 資料19 防衛関係費(当初予算)の推移」を、れんだいこが理解し易いように編集し直す。
西暦 和暦 政権 防衛相 国防費 前年対比 国家予算 比率 前年対比 GDP GDP比
1955 昭和30 1349 −3.3 8.915 13.61 75.680 1.78
1965 昭和40 3014 9.6 36.581 8.24 281.600 1.07
1975 昭和50 19.273 21.4 212.888 6.23 1.585.000 0.84
1985 昭和60 31.371 6.9 524.996 5.98 3.146.000 0.997
1995 平成7 47.236 0.88 700.871 6.65 4.028.000 0.959
1996 平成8 48.455 2.58 751.049 6.45 4.960.000 0.977
1997 平成9 48.414 1.86 773.900 6.39 5.158.000 0.948
49.475 2.1 6.39 0.950.
1998 平成10 49.290 −0.3 776.692 6.35 5.158.000 0.948
49.397 −0.2 6.36 0.959
1999 平成11 49.201 −0.2 816.601 6.01 4.963.000 0.991
49.322 −0.2 6.03 0.994
2000 平成12 49.218 0.0 849.871 5.79 4.989.000 0.987
49.358 0.1 5.81 0.989
2001 平成13 49.388 0.3 826.524 5.98 5.185.000 0.952
49.559 0.4 6.00 0.956
2002 平成14 49.395 0.3 812.300 6.08 4.962.000 0.995
49.560 0.4 6.10 0.999
2003 平成15 49.395 0.0 817.891 6.02 4.956.000 0.988
49.560 0.0 6.06 0.993
2004 平成16 48.764 −1.0 821.1099 5.94 5.006.000 0.974
49.030 −1.0 5.97 0.979
2005 平成17 48.301 −1.0 821.829 5.88 5.115.000 0.944
48.584 −1.0 5.91 0.949
2006 平成18 47.905 −0.8 796.860 6.01 5.139.000 0.932
48.139 −0.9 6.04 0.937
2007 平成19 47.818 −0.2 829.099 5.77 5.219.000 0.916
48.016 −0.3 5.79 0.916
2008 平成20 47.425 −0.8 830.613 5.71 5.269.000 0.900
47.795 −0.5 5.75 0.907
2009 平成21 47.028 −0.8 885.490 5.31 5.102.000 −0.8
47.741 −0.1 5.39 −0.1
2010 平成22 46.825 −0.4 922.992 5.07 4.752.000 −0.4
47.903 0.3 5.19 0.3
2011 平成23 46.625 −0.4 924.116 5.05 4.838.000 −0.4
47.752 −0.3 5.17 −0.3
2012 平成24
2013 平成25

 昭和60年度まではGNP、平成7年度以降はGDPの当初見通し。安全保障会議費については平成20年度より組換えしているので防衛予算費には含まれていない。


 資料19 防衛関係費(当初予算)の推移

資料19防衛関係費(当初予算)の推移図表







(私論.私見)