株主代表訴訟の東京地裁判決

 更新日/2022(平成31.5.1栄和改元/栄和4).3.11日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 

 2007.7.21日 れんだいこ拝


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 「阿修羅♪ > 原発・フッ素53」の「蒲田の富士山 日時 2022 年 7 月 14 日」投稿「東京電力の旧経営陣4人に13兆円賠償命令 株主代表訴訟で東京地裁判決 津波対策を放置「著しく不合理」(東京新聞)」。
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/189336?rct=national
 東京電力福島第一原発事故を巡り、旧経営陣が津波対策を怠ったことで東電に巨額の損害が生じたとして、株主が勝俣恒久元会長(82)ら5人に会社への22兆円の損害賠償を求めた株主代表訴訟の判決で、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は13日、勝俣元会長ら4人に計13兆3210億円の支払いを命じた。4人は勝俣氏のほか清水正孝元社長(78)、原発の安全対策の実質的な責任者だった武藤栄元副社長(72)、その上司だった武黒一郎元副社長(76)。原発事故で旧経営陣の過失を認定した司法判断は初めてで、裁判の賠償額としては過去最高とみられる。
 争点は、旧経営陣らが大津波を予見し、対策によって事故を防げたか。判決は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」と、これに基づき最大15.7メートルの津波の可能性を示した東電子会社の試算を「相応の科学的信頼性がある」と認定した。その上で、08年7月に試算の報告を受けた武藤氏が長期評価の信頼性を疑い、土木学会に検討を依頼して見解が出るまでの間、津波対策を放置したことを「対策の先送りで著しく不合理だ」と指摘。武藤氏の判断を是認した武黒氏に加え、09年2月の「御前会議」で敷地高を超える津波襲来の可能性を認識したのに対策を指示しなかった勝俣、清水両氏についても、取締役の注意義務を怠ったとした。原子炉建屋や重要機器室に浸水対策を行っていれば「重大事故を避けられた可能性は十分にあった」と判断。対策には約2年の工期がかかるとし、10年に取締役に就いた小森明生元常務については賠償責任を認めなかった。

 賠償額の内訳は▽廃炉費用1兆6150億円▽被災者への賠償金7兆834億円▽除染・中間貯蔵対策費用4兆6226億円。
 旧経営陣側は、長期評価には異論もあり信頼性がなく、防潮堤以外の津波対策は当時、一般的な知見ではなかったと主張していた。株主側は12年3月に提訴。弁論は62回にわたり、裁判長はこの間に3回交代した。昨年10月には原発事故の責任が問われた裁判としては初めて、裁判官による現地視察が行われた。東電は「個別の訴訟に関することは回答を差し控える」とした。被告5人はコメントを出していない。
◆「安全意識や責任感が根本的に欠如」 裁判長が東電を批判
 「7カ月かけて書いた判決です。最後までしっかり聞いてください」。朝倉佳秀裁判長は前置きしてから判決理由を読み上げた。約40分にわたる判決言い渡しで、朝倉裁判長は時に語気を強めながら、旧経営陣の主張を次々と退けていった。「(東電は)有識者の意見のうち、都合の良い部分をいかに利用し、都合の悪い部分をいかに無視し、顕在化しないようにするかと腐心してきた」。さらに「被告らの対応は東電内部では当たり前の行動だったかもしれないが、原子力事業者としては安全意識や責任感が、根本的に欠如していた」と厳しく批判した。
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 原子力企業の役員の責任を重視 13兆円賠償命令の東電株主代表訴訟 「ほかの訴訟にも影響与えるのでは」(東京新聞)2022年7月14日 06時00分

 https://www.tokyo-np.co.jp/article/189418?rct=national

 東京電力福島第一原発事故を巡り、旧経営陣4人に13兆円の賠償を命じた13日の東京地裁判決は、原発で万が一事故が起きれば甚大な被害を及ぼすことを踏まえ、原子力事業を担う企業の取締役の責任を重く見たものだ。

◆津波を巡る判断、刑事裁判や集団訴訟と異なる
 旧経営陣の責任を巡っては他に、勝俣恒久元会長ら3人を業務上過失致死傷罪で強制起訴した刑事裁判があり、一審は3人を無罪としている。判断を分けたポイントの一つは、巨大津波の到来を予見できたかどうかだった。2002年に政府の地震調査研究推進本部が公表した地震予測「長期評価」について、刑事裁判は専門家の間で意見が分かれていたことなどから信頼性を否定したが、今回の判決は「公的な機関や会議体で、相当数の専門家によって取りまとめられた」と科学的信頼性を認定。自然現象に関する知見は「全員の意見が一致するとは限らない」とし、異論があるからと否定するのは不当だとした。津波対策によって事故を防げたかどうかも異なる判断をした。原発避難者による集団訴訟の6月の最高裁判決は「実際の津波は長期評価に基づく想定よりはるかに規模が大きく、対策をしても防げなかった」と指摘した。原告側は「原子炉建屋の浸水防止策を講じていれば事故にはならなかった」と主張していたが、事故前は防潮堤設置が対策の主流で、浸水防止策の発想は一般的ではなかったとした。

◆「非常に高い注意義務求められた」こと示す
 一方、今回の判決は、日本原子力発電が浸水対策を取っていたことなどを挙げ、経営陣から指示があれば担当部署は「浸水対策を発想することは十分に可能だった」とした。安全対策の実質責任者だった武藤栄元副社長が、敷地の高さを超える津波の試算について報告を受けながら対策を先送りしたことを「社内の専門部署の意見に反する独自の判断」と批判した。勝俣氏ら最高責任者に対しても、速やかな対策を取ろうとしない武藤氏らの判断について「長期評価の信頼性が不明とする根拠は何か、なぜ何ら津波対策を講じないままなのかなどを確認すべき義務があった」と責任を厳しく捉えた。元刑事裁判官の水野智幸弁護士は「原発事故の影響を考えれば、専門外かどうかは関係なく、非常に高い注意義務が求められることを示した判決だ」とみる。刑事裁判は来年1月に控訴審の判決がある。刑事事件で被告の罪を問うには「合理的疑いを入れない程度の立証」が必要とされる。水野弁護士は「証拠の優劣で勝敗が決まる民事訴訟より一般的にハードルが高い」とした上で、「原発事故の因果関係の認定では民事、刑事に共通する点があり、刑事裁判の控訴審をはじめ他の訴訟にも影響を与えるのではないか」と話す。(小沢慧一)

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