震災直後に拘留中の容疑者58名釈放事件考 |
更新日/2020(平成31→5.1栄和改元/栄和2).1.19日
(れんだいこのショートメッセージ) |
ここで、「震災直後に拘留中の容疑者58名釈放事件考」をものしておく。 2015.08.06日 れんだいこ拝 |
【2020.3.9日、森法相発言】 |
2020年3月11日、朝日新聞「「震災で検察官が逃げた」森法相が国会での発言を撤回」その他参照。 2020.3.9日、森雅子法相が、参院予算委員会で、安倍内閣が閣議決定した東京高検検事長の定年延長をめぐって与野党が厳しく対立する中で、法解釈変更した理由について「社会情勢の変化」と説明。それに対し、野党統一会派の小西洋之氏(無所属)は「どんな変化があったか」と質問した。すると、森氏は国家公務員法に定年制度が設けられた1981年のときに比べての変化について、こう説明した。「例えば東日本大震災の時、検察官は、福島県いわき市から、国民が市民が避難していない中で、最初に逃げたわけです。そのときに身柄拘束をしている十数人の方を理由なく釈放して逃げたわけです。そういう災害のときも、大変な混乱が生じると思います」と答弁した。さらに続けて、もう1つの変化だと言いたかったとみられている次のような説明を加えた。「また、国際間を含めた交通事情は、飛躍的に進歩し、人や物の移動は容易になっているうえ、インターネットの普及に伴い、捜査についてもですね、様々な多様化、複雑化をしているということを申し上げておきたいと思います」。 委員会室は騒然とした。金子源二郎・予算委員長(自民)も「法務大臣、簡潔に」と森氏を注意した。審議がいったん中断した。しばらくして、金子委員長が、「答弁者は、質疑者の質問に的確、適切にお答えいただきますようお願いします」と森氏に苦言を呈すると、議場から拍手が沸いた。 3.11日、立憲民主党の山尾志桜里氏が衆院法務委員会でこの発言を取り上げ、「発言内容は事実か」とただすと、森氏は「事実です」と答弁した。山尾氏が「それは政権の見解か」と続けると、森法相は「『理由なく』と『逃げた』というところは個人的見解を申し上げた」、「私が野党議員時代に、当時の法務大臣が国会で『福島地検が被疑者の終局処分をしないまま釈放したことについて、地域の皆さんに大変ご心配をかけたことをおわびしなければならない』などと答弁したが、そのことに問題意識を持っていたことによるものだった」と釈明した。法務委は紛糾。審議が止まり、そのまま散会した。 この後、舞台が参院予算委に移った。森法相は午後の参院予算委で自民党議員の質問に答える形で、「あくまで私個人の見解を申し上げたものだが、予算委員会という場で、検察官の活動について、法務大臣が個人の見解であることを事前に示すことなく申し上げたことは不適当だった。撤回する」と表明した。ただ、当時の検察官たちの行動の事実関係を確認する立憲の石橋通宏氏の質問には正面から答えなかった。このため同委も審議が止まり、そのまま散会した。 山尾氏は記者団に「虚偽に基づいて検察の信頼をおとしめる発言をしている」と批判。国民民主党の玉木雄一郎代表は記者会見で「即刻職を辞すべきだ」と訴えた。共産党の穀田恵二国対委員長も会見で「法相の任にあたわず」と語った。 同日午後、菅義偉官房長官が記者会見で、「参議院予算委員会において、森法務大臣みずから撤回する旨の説明があったと思っている。いずれにせよ、閣僚は国会において緊張感を持って対応してもらいたい」と発言。ただ、検察官が逃げたという森氏の発言の事実関係を問われると、「政府として承知していない」と答えた。 こうした事態を受け、自民党の世耕弘成参院幹事長と立憲の福山哲郎幹事長が電話で協議。立憲の蓮舫副代表によると、世耕氏が「(森氏の)謝罪と撤回で委員会を動かしてほしい」と求めたが、福山氏は震災をめぐる問題発言で辞任した今村雅弘・元復興相や桜田義孝・元五輪相の例を挙げ、「今回は復興に関する失言の上、検察官を愚弄(ぐろう)して国会を軽視している」と伝えたという。蓮舫氏は記者団に「大臣としての資質はいま1ミリもない。判断するのは安倍晋三首相だ」と強調。 3.12日午前、森雅子法相が東日本大震災の際、検察官が福島県いわき市から「最初に逃げた」などと答弁した問題を巡り、立憲民主党など野党の国対委員長が会談し「検察官をおとしめる発言をした」として国会審議に応じない方針を決めた。立憲の安住淳国対委員長は会談後、記者団に「逃げたというのは全く事実無根だ。政府見解を出すべきだ」と述べ、政府に対応を求めた。安住氏はその後、自民党の森山裕国対委員長と会談。森山氏は記者団に「どういう解決方法があるか協議したい」と語った。また、立憲の芝博一参院国対委員長は記者団に「森氏に責任を感じ取ってもらいたい」と述べた。 国会は3.12日午前から全面的に審議が止まり、安倍晋三首相が森氏と面会し厳重注意したことを受け、同日夕から審議が再開した。 同日午後、菅義偉官房長官が記者会見で、森雅子法相について「国会で丁寧に説明し、職責を果たしてもらいたい」と述べ、辞任の必要はないとの認識を示した。 同日、日本共産党の志位和夫委員長は、国会内の記者会見で、森雅子法相が9日の参院予算委員会と11日の衆院法務委員会で東日本大震災の際に「検察官が最初に逃げた」、「(拘束していた十数人を)理由なく釈放した」と発言したことについて問われ、「法務大臣が自分の所管の下にある検察官について根拠のない発言をした」と厳しく批判し、「法務大臣としての資格はない」と述べました。さらに、「野党が法務省刑事局から直接聴取したところによると、『最初に逃げた』という答弁は『事実無根だ』といい、さらに『理由なく釈放』という答弁も『事実無根だ』と答えた」と指摘した。「事実無根の発言をして検察をおとしめた。これは法務大臣としての資格はない」と強調し、「政府がきちんとした対処をすべきだと求めていく。それが野党の一致した見解だ」と述べた。安倍晋三首相が森法相に「厳重注意をした」ことについて聞かれ、「注意してすむ話ではない」と述べた。 3.13日、森雅子法相は、午前の衆院法務委員会の冒頭で、東京電力福島第一原発事故の際に「検察官は最初に逃げた」とした自らの国会答弁について、「国会の審議に大変な迷惑を掛けた。心よりおわびする。答弁を撤回する」と陳謝した。「私の個人的見解を述べたが、検察を所管する法務大臣として検察の活動について個人的な評価を述べたことは不適切だった」とも語った。 |
森法相の「震災で検察官が逃げた」発言は野党時代からの持論であり、野党時代に国会で追及していたほどの持論だったことが判明した。森氏が野党時代にした国会質問を参院公式サイトで検索できる会議録で調べると、福島地検いわき支部が震災直後に「捜査遂行が困難」などの理由で勾留中の容疑者らを処分保留で釈放したことについて、何度も政府の見解をただしていた。例えば、森氏は、2011年11月24日の参院法務委員会では、福島県選挙区選出の立場から、「残念ながら、被災地で避難区域に政府が指定をしていないのに国家機関が住民を置き去りにして逃げた、その前提として多くの被疑者を処分保留のまま釈放した」などと当時の平岡秀夫法相に関係者の処分などを求めていた。 |
【森法相発言批判の変調】 |
【震災直後に58人の容疑者釈放考】 | |
「起訴前の容疑者31人を釈放 福島地検、震災の影響で - 朝日新聞」その他参照。 | |
2011.3.29日、福島地検は、県内各地の警察署の留置場に勾留していた容疑者のうち計58名(福島31人、仙台27人)を16日までに処分保留で釈放したと発表した。釈放されたのは同地検本庁と郡山、いわき両支部管内の警察署に勾留していた起訴前の容疑者。逮捕容疑は強制わいせつ、窃盗、覚醒剤取締法違反などで、容疑者は窃盗、覚せい剤取締法違反各4、強制わいせつ、公務執行妨害、住居侵入、器物損壊各1の計12名。同支部は地震のあった3.11日から16日にかけて釈放し、同16日以降、福島県いわき市の庁舎を閉鎖し職員が同地検郡山支部に移った。 震災の影響で死者や行方不明者が相次ぎ、水道などのライフラインも止まっていたことなどから「事件の関係者に取り調べを行うなどの捜査を遂行することが困難な状況にあった」と理由を説明した。但し、警察の留置施設そのものが被害を受けて勾留が難しいという状況ではなかった。同地検の小池隆・次席検事は「捜査の進み具合や個々の事案の内容などを考慮して釈放する容疑者を決めた」と説明、今後も捜査を続ける方針という。法務省側は「震災で取り調べなどの証拠収集が困難になり、刑事訴訟法に基づく手続きを経て釈放した」、「いずれの事件も軽微だった」と説明したが、釈放された中には、女子大生のアパートに侵入して手錠をかけて体を触った容疑者や、暴力団組員もいた。当時釈放した容疑者の一部は再犯している。 4.2日、産経新聞朝刊が、「福島・仙台地検、容疑者釈放 治安は本当に大丈夫か」とのタイトルで、《東日本大震災後、拘留中の容疑者を釈放した福島、仙台両地検の対応が波紋を広げている》《福島地検は一方的に釈放しており、福島県警は強く反発している》と報じている。 同年5.16日、法務省は、福島地検が東日本大震災後に拘留中の容疑者らを釈放した問題で、同地検の中村明検事正を最高検検事に異動させ、後任には飯倉立也鹿児島地検検事正が就く。これは事実上更迭とみられており異例の人事発令をした。 |
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2020.3.14日、「門田隆将氏が森法相の「検察逃げた」発言を解説 「事情知っていて出た言葉。完全な虚偽ではない」参照。
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【デヴィ夫人のさすがの当時のコメント】 | |
「デヴィ夫人」の日付ブログ「震災直後に釈放された58人の容疑者ら今どこに?」
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【元特捜部主任検事/前田恒彦氏のコメント】 | |
「元特捜部主任検事/前田恒彦」の2020.3.12日付けブログは次の通り。
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(私論.私見)