米国原子力潜水艦「グリーンビル」による「えひめ丸」衝突事件

 更新日/2017(平成29).8.9日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、「米国原子力潜水艦グリーンビルによるえひめ丸衝突事件」を確認しておく。

 2017(平成29).8.9日 れんだいこ拝


 関連サイト

 【「えひめ丸衝突事故事件」】
 2001(平成13).日本時間2.10日午前8時45分頃、ハワイ州オアフ島沖で愛媛県宇和島水産高等学校の実習船「えひめ丸」(499トン、35名乗組み)が、緊急浮上した米原子力潜水艦「クリーンビル」(6080トン、130人乗組み)に衝突され沈没、乗員35名中9名(内高校生4名)が行方不明になった。これを「えひめ丸衝突事故事件」と云う。

 「事故が起きた時、森総理は私にすぐ電話をくれて、『加戸ちゃん何でもやるから言ってくれよな』と連絡があった」と証言している。2017.7.29日、加戸「森総理が愛媛の為にえひめ丸事故で最善の努力をしてる姿を、愛媛県知事の私は記者会見で何回も言ったが、一行も報道されなった。今思うとこれが報道しない自由なんだと。日本って恐ろしい国だなと思った。今回の加計の件も私が言った事が報道されない。森総理の時と同じ」。

  米側はブッシュ大統領より森総理(当時)、パウエル国務長官より河野外務大臣(当時)に電話で謝罪した他、大統領特使ファロン海軍大将が大統領親書を携行して来日(2月27日~3月1日)し、愛媛県も訪問(2月29日)。米国はあらゆる面での責任を認めている。

 2002(平成14).1.10日、愛媛県は宇和島で「えひめ丸事故犠牲者合同慰霊式」を開催。小島前外務大臣政務官、中谷防衛庁長官、岸田文部科学副大臣、ベーカー在日米大使、藤崎外務省北米局長、チャップリン在日米海軍司令官他が参列。

 御遺族等の要望を受け、愛媛県はホノルル及び宇和島での慰霊碑の建立を決定。事故発生一周年となる平成14年2月10日(日本時間)、愛媛県等はホノルルで「えひめ丸慰霊碑除幕式」を開催。被害者9遺族25名、救出者4家族8名、植竹外務副大臣、ウィラード太平洋艦隊副司令官、加戸愛媛県知事、カエタノ・ハワイ州知事他が参列。なお、宇和島での「えひめ丸慰霊碑除幕式」は同月22日、宇和島水産高等学校において開催。

 February,11th,2001.「船乗りの発言/実習船衝突事故に思う」。
 日本時間、2月10日午前8時45分頃、ハワイ・オアフ島沖で愛媛県の宇和島水産高等学校の実習船「えひめ丸」(499トン:35名乗組み)とアメリカ海軍の原子力潜水艦である「グリーンビル」(6080トン:130人乗組み)が衝突した。TVやラジオのニュースで状況は知っているが、早急な救助活動をし、残る9名の行方不明者の早期発見を心から祈るばかりである。

 1965年から1975年までの10年間、商船で飯を食ってきた元船乗り、元海の男として、この衝突事故については考させられることが多い。

 結果的には、非常に不幸な事故であったと思う。そして、海員魂(シーメンズシップ)が問われる事故でもあったと思うのである。アメリカの潜水艦が「えひめ丸」と衝突した後に、潜水艦側が「えひめ丸」の乗組員の救助活動をせず、傍観していたとの報道を聞いたからである。目の前で衝突されて沈没して行く船と海上で救助を求めている日本人船員を救助しようとしなっかった米潜水艦は何をしていたのであろうか? 軍事的な行動であったとしても人が目の前で溺れているのを見ていただけとは言語道断、海で働くもの同士としては船員の風上にも置けないと避難されても仕方がないと思うのである。

 先日、JRの新大久保駅で線路に落ちた人を助けることで、自分の命を失ったという事故が報道された。自分の命を顧みず、人を救助することに専念した韓国の留学生の方と横浜のカメラマンの方の勇気ある行動は賞賛に値する。それに比べ、今回の衝突事故においては潜水艦側の行動がいかにも人命軽視に感じられ、海員魂はどこにいったのであろうかと考えてしまった次第である。日本もアメリカも英国流の船員制度を承継している。そうであれば、人命の安全や救助に関する教育は海軍であっても海員教育機関であっても十分になされているはずである。

 1912年4月14日、大西洋上でイギリスの「豪華客船 タイタニック号」(46,329トン)が氷山と衝突した後に沈没し、1513名の犠牲者を出したのであるが、それ以来、人命の救助が最優先されなければならないということで海上安全条約(正式名称:1914年の海上における人命の安全のための国際条約)が締結されたのであった。私が船舶通信士として乗船したのも、常に遭難船はいないか、緊急事態のある船舶はいないか、安全に問題があって航行に支障をきたしている船舶はいないかと24時間、遭難周波数である中波帯の500kHzや電話の中短波帯2182kHzおよびVHFの16chを傍受していたのもそのためなのであった。もし、遭難船があった場合は船長に報告して、救助の要請をしたものであった。

 アメリカの原子力潜水艦側としては母港の近くでもあるし、日常的に航行している海域で、自分の庭だと思っているために浮上するに当たっても手順の軽視、油断があったのではないかのかと想像しているところである。そのために、目の前で起きた日本の実習船との衝突事故が信じられない情景に映ったのであろう。何が起こったのかも実感できなかったのではないのだろうか。あり得ない事故が目の前で起きたのであるから無理も無いが、軍事秘密も絡んで傍観するしかなかったのかもしれない。

 たとえ、そうであったとしてもシーメンズシップがあれば潜水艦に搭載してあるゴムボートを使用してでも、人道的な立場から即座に救助活動に移るべきであったと思うのである。そうでなければ「えひめ丸」と衝突後、事故現場に引き返す必要はなかったのである。海軍の軍人であっても、商船の船員であっても、漁船や実習船の船員であっても、同じ海で生活する海の男として、シーメンズシップを思えば本能的に無条件に救助を開始するべきではなかったのかと思うと、まことに残念でならないのである。傍観は絶対に許すことはできないのである。昔から「板子一枚下は地獄」といわれている船乗り生活は現在でも変らないのである。であればこそ、海の世界ではお互いに助け合うのが常識となっているのである。

 確かに日本は第二次世界大戦でアメリカに占領された敗戦国である。アメリカ側から見れば属国であることは否定できない。それにしても人命の救助に関しては別問題であろう。海上安全条約「正式名称:1974年の海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」を批准している国同士であるから、何よりも優先して人命救助に当たるべきではなかったか、コーストガード(米国沿岸警備隊:日本では海上保安庁に該当)が来る前に救助活動をするべきであったと思うのである。(軍艦は別だというのであればどうしようもないが)。アメリカ政府が日本政府に時をおかずに謝ってきたことからしても当然のことなのである。えひめ丸の船長が本日の記者会見で語っていた「潜水艦側は縄梯子をおろしただけで何もしてくれなかった」との証言を聞いて耳を疑った次第である。潜水艦の艦長の常識を疑うばかりである。

 とうとう、アメリカ海軍の技量も落ちたものだと感じたのは私だけであろうか? 潜水艦長もアメリカ海軍ではエリートコースを歩んできたのであろう。それが災いしたのであれば追求することはできない。日本でも福岡県の判事や検事が不祥事を起こしているからである。エリート意識には勝てない。記者会見でのあの人を見下している態度を見れば明らかであろう。米国原子力潜水艦「グリーンビル号」の艦長も愛媛県の宇和島水産高等学校の「えひめ丸」を見下していたのであろうか? 

 私が商船の船員(船舶通信士)として乗船していた時代の海運界は、少なくても遭難船を見放すということは無かった。しかし、潜水艦が遭難船を見放すことはありえる。軍事秘密や自艦の位置を敵に知られないために行動し、いかに早く敵を殲滅、撃沈するかの訓練をし、人命の救助の訓練がおろそかにされているのであるから、当然の成り行きなのである。人を殺すことには慣れていても救助をする方法を知らなかったのであろう。グリーンビル号の艦長が傍観する態度を取らざるを得なかったとしても不思議ではない。

 海の男として、どうしての理解できないのは沈没した船の乗組員が救助を求めているのを知りながら、沿岸警備隊が来るまで何もしなかった艦長は別として、他の乗組員も同調していたことである。少なくとも浮き輪(救命ブイ)を投げる程度のことは出来たのではないのだろうか。それとも潜水艦は救助活動をしてはならないとの規則があったのであろうか、最新鋭の原子力潜水艦の軍事機密を守ることは重要であることはわかっているつもりであるが、疑問がのこる行動ではある。

 それにしても、日本政府の危機管理はお粗末である。首相はゴルフ、官房長官は遊説だったそうで、直ちに持ち場に戻らなかったとの報道がなされていた。それに、宇和島水産高校の関係者やえひめ丸の乗組員、実習生の父兄たちをなぜ政府専用機でハワイまで輸送しなかったのであろうか。渡航ビザの発給は当然であるが、民間の航空機を使って現地に運ぶのであれば、誠意がみられないと思うのである。政府専用機は首相等の外遊目的以外には使用できないのであろうか。外務省の外交支援室長が機密費を湯水のごとく流用していたのであれば、その一部の費用を使えば済むことではないのか?

 さらに言えば、今回、えひめ丸からの遭難信号を日本の海上保安庁がいち早くキャッチしたというが、その後の判断に誤りがなかったか、体制がうまく機能したかどうかに疑問がのこる。いかに電子・情報通信技術( I T )を駆使して正確に迅速に遭難情報を送・受信できたとしても、最後に情報を受け取るのは人間だし、その情報を判断するのも人間なのである。そして、遭難現場で救助活動をすることができるのも、やはり人間なのである。電子情報を利用したロボットが救助するのではない。遭難情報を的確に判断できる力量を持った人間を配置し、それに見合った危機管理体制の早急なる確立、見直しを図っていただきたい。

 オアフ島沖の「えひめ丸」の衝突海域には、日本の他の練習船や実習船が捜索に加わっていると言うのに、日本の航空自衛隊機の航空機や海上自衛隊、保安庁の艦船が現地に派遣されないというのも理解できない。確かにハワイまでは距離がありすぎるが、救助活動への協力体制だけでも整えておくべきだし、深海調査船や引き上げ船の準備をしておくのも無駄ではなかろう。それとも、日米共同作戦訓練以外は駄目だと言うのであろうか? アメリカの領海だからアメリカに任せておけば良いと言うのであろうか? インドの地震や台湾、トルコの大地震の時は災害派遣をしているではないか。それとも装備が完全なアメリカに任せて、連絡を待っているのが良いとでいうのであろうか? アメリカに要請をしていれば良いというのであろうか。

 ま、ここで嘆いていても始まらない。日本はいつでもそうであった。国は守るが、国民を守ってはくれないからである。今回の衝突事故もその例に漏れないのである。この事故以外にも「米兵が沖縄の女子高生のスカートをめくったワイセツ事件、沖縄米軍のヘイルストン沖縄地域調整官が稲嶺知事らを(ばかな弱虫)と中傷した事件、海兵隊員が飲食店街に放火した事件」が連続しておきている。それでも、日米地位協定があるために強く抗議できないでいる。米国防総省の言う「良き隣人政策」は名ばかりで、現場には浸透していないことがよくわかる。日米安保条約もあるが、冷戦構造が崩れた今、在日米軍の基地の縮小や海兵隊員の削減をアメリカ側に言うべき時ではないのだろうか。イエスとノーをはっきりと言っていかなければ両国の対等な時代は永遠にやってこない。アメリカに媚を売っている余裕はもうない。

 最後になるが、残る行方不明者の早期発見を祈ってやまない。そして、日本側の衝突事故関係者のご心労とご苦労は察しに余りがある。どうぞ気を落とさずに頑張っていただきたい。元船乗りとして、ハワイ近海で航行中の実習船、練習船および捜索に加わっておられる船舶の航行の安全と乗組員の健康を祈ってやまない。(了)

 02月10-20日、B. 02月21日~「Yellow Hiro の 独り言」の「TOPIC No.2-12d-2 実
習船沈没事故/米原子力潜水艦衝突
」。
 前艦長、部下のミス主張へ 原潜事故の査問会議で
 2001.03.04(22:11)asahi.com
 えひめ丸沈没事故をめぐる米海軍査問会議で、米原潜グリーンビルのワドル前艦長(41)が「海上の他船について担当者から報告がなかった」などと乗組員のミスを主な事故原因として挙げていくことが3日、査問関係者の話でわかった。乗組員側は「艦長の潜望鏡点検がずさんだった」などと反論するとみられ、5日から始まる査問会議は艦長と乗組員が非難し合う構図になりそうだ。 査問の対象とされたのは、前艦長のほかにファイファー副艦長(38)とコーエン哨戒長(26)。ワドル前艦長はこれまでの海軍の調べに対し、「必要な情報はもれなく艦長に報告せよという命令が守られなかったのが事故の原因」との見解を示した。査問会議でも「与えられた情報の範囲内で艦長としての職責は果たした」と主張するとみられる。前艦長が特に問題視しているのは、ソナー(水中音波探知装置)情報を解析する乗組員だという。「ソナー解析官がまったく報告しなかった以上、私にはえひめ丸の存在を知るすべはない」とその職務不徹底を指摘。「16人の民間人客で司令室がすし詰めになり、艦長に報告できなかった」という解析官の主張を否定する見込みだという。コーエン哨戒長についても前艦長は、「哨戒長に選ばれたばかりで不慣れ。仕事の仕方を一から指示しなければならなかった」などとこぼしているという。これに対し、乗組員側も前艦長を批判している。ファイファー副艦長はこれまでの調べに対し、「艦長は『潜望鏡で海域を確認できる位置まで5分以内に上昇せよ』と指示した。強引な指示だなと思った。もう少し慎重にやらないといけないと感じていた」と証言。「ふだんから艦長は十分に上昇していないうちに粗雑な安全確認をする癖があった」と述べた。コーエン哨戒長も「艦長が押しのけるようにして潜望鏡を奪い、自分の任務である潜望鏡確認が完了できなかった」と証言している。さらに前艦長の弁護士が2日明らかにしたところによると、前艦長は査問会議で証言に応じるのと引き換えに、そうした自分の証言が自分を起訴する証拠とされない「免責」を要求した。米国の刑事裁判で認められた司法取引のひとつで、解明に欠かせない重要情報を提供する見返りに不利な証言をもとにした本人への訴追はしないとの確約を求めるものだ。
 米沿岸警備隊、捜査打ち切る えひめ丸沈没
 2001.03.04(01:37)asahi.com
 ハワイ・ホノルルの米沿岸警備隊は3日、えひめ丸の行方不明者の捜索について、新たな状況の変化がない限り、米原潜との衝突事故発生から続けてきた捜索態勢を、2日夜の時点で事実上解除したことを明らかにした。米海軍主導のえひめ丸沈没地点付近の海底探査が2日に一応の区切りがついたため、これを支援する形で続けてきた沿岸警備隊の異例の長期捜索も、事実上打ち切られることになったとみられる。米側は、2月9日の事故発生以来、日本政府や行方不明者の家族らの強い要請を受けて3週間にわたって捜索を続けてきた。
 ワドル前艦長支援の声高まる 原潜事故で米国
 2001.03.04(00:44)asahi.com
米原潜グリーンビルの艦長だったワドル中佐(41)らに対する海軍の査問会議を前に、海軍の出世コースをひた走ってきた中佐を支援する声がカリフォルニア州などで高まっている。 「本物の感情の表れだと信じます」。中佐を支援する基金発起人の一人、同州サンタバーバラの医師ロジャー・ダナムさん(56)は2日、中佐がホノルルの日本総領事館を訪ねて「(えひめ丸の)家族に直接会っておわびしたい」と涙を流したという一件をこう説明した。支援基金も専従者を置く計画で、寄付集めは本格化している。事故後、中佐は人前に姿を見せていないが、ダナムさんとは電話やEメールで連絡を取り合っている。中佐は、えひめ丸の犠牲者や家族を思いやる心情を吐露し、気持ちもしっかりしている。査問会議にきちんと臨もうという態度がうかがえるという。ワドル中佐を支援するのは、カリフォルニア州の軍港サンディエゴから体験航海に招待された人が多い。「国防の質の高さを見せ、国に貢献してきた。彼だけを非難すべきでない」とダナムさんは強調する。
 原潜、衝突直前に蛇行 実習船事故/米安全委、航跡を初公表/浮上は急転換後
 2001.03.03【ホノルル2日=内藤泰朗】The Sankei Shimbun
 米海軍の原潜「グリーンビル」がハワイ・オアフ島沖で実習船「えひめ丸」に衝突した事故で、米運輸安全委員会(NTSB)は二日、米海軍が提出した原潜の航行記録などを基に、原潜がたどった詳しい航跡を分析した暫定調査結果を初めて公表した。それによると、進行方向を南から北に転換し事故直前に蛇行を繰り返して緊急浮上していたことや、潜望鏡で海上を確認できる深度まで浮上していた時間は全体で約一分半と短かったことネどが分かった。同乗の民間人を意識してショー的な航行を行っていた可能性もあり、五日から始まる査問会議に影響を与えるのは必至だ。航跡の分析によると、グリーンビルは事故直前、水深約四十五メートルの海中を南に向けて左右にジグザグ航行していたが、海上の様子を潜望鏡で確認するため、事故約五分前の二月九日午後一時三十八分(日本時間十日午前八時三十八分)に、いったん水深約二十メートルの位置まで浮上し、潜望鏡を海上に突き出して三六〇度回して最初の点検作業を行った。その後、さらに約一メートル浮上して潜望鏡による二回目の点検を実施した。二回の点検作業に要した時間はわずか約一分半だった。グリーンビルはその後、再度潜航を開始し、約二分半で水深約百二十メートルまで到達。今度は約五十秒間で一気に緊急浮上し、九日午後一時四十三分、海上を南南東の方向に向け、約十一ノットの速度で航行中のえひめ丸の船底部分に激突した。また、南の方向に航行していたグリーンビルは潜望鏡作業の後、潜航をしながら北の方角へ一八〇度向きを変えていったことが明らかになった。潜水艦がコースを変更してUターンしたことについて、米原潜の元艦長たちは「ソナーは潜水艦の前部にあり、潜水艦は自らが出すエンジン音などで後部の様子がわからない。そのため、すでに自分が航行してきた方角をソナーで探るために何度も航行のコースを変えることはある」と述べている。
 「謝罪は受け入れられた」 原潜事故で米特使が声明
 2001.03.03(18:40)asahi.com
 えひめ丸沈没事故に関して米海軍太平洋艦隊は2日、米政府特使として来日していたファロン海軍作戦副部長が「(えひめ丸の)犠牲者の家族は我々の謝罪を受け入れた」とする声明を発表した。副部長はワシントンへの帰路に当地に立ち寄った。声明では、日本では「ハワイの人々の思いやりに対する感謝を聞いた」とも報告。謝罪の気持ちを込めたブッシュ大統領の親書を日本側に渡したことなどについて「(特使としての)使命を果たした」とした。
  実習船引き揚げ「可能性ある」 専門家が報告
 2001.03.02(14:40)asahi.com
 米ハワイ沖で米原子力潜水艦に衝突され沈没した実習船えひめ丸の引き揚げについて、米国側と協議している日本の専門家ミッション(団長・佐藤博史外務省経済局海洋室長)は2日午前、首相官邸を訪れ、船体の引き揚げについて「可能性はある」との結論を報告した。さらに「600メートルの深海でこれだけ大きな船を引き揚げるのは世界的にも前例がない。技術的に相当難しく、チャレンジだ」としたうえで、引き揚げの時期については「早くても半年後で、すべてうまくいっても7、8カ月後ではないか」との見方を示した。佐藤団長は、引き揚げが可能だと判断した理由について(1)沈没した海底が平らな砂地で、船体が比較的安定している(2)船に大きな損傷が見られない――の2点を挙げた。専門家ミッションは今週末に再び訪米し、米国側による引き揚げの可能性についての調査の報告を受ける。米政府が最終的結論を出すのは3月12日以降になる見通しだという。
 えひめ丸引き上げ「結論まだ」 米国防総省
 2001.03.02(12:57)asahi.com
 米国防総省のクイグリー報道官は1日の記者会見で、米原潜と衝突してハワイ沖で沈没した日本の漁業実習船えひめ丸の船体引き揚げについて、技術的に可能かどうかの調査が依然現地で継続中で、結論はまだ出ていないことを明らかにした。クイグリー氏によると、現在は沈没した船体の周囲、計6平方マイルにわたる海底地形の測量調査が進められているという。こうした情報をもとに今後、「海軍の引き揚げ専門家と民間の引き揚げ会社の専門家が検討する」という。ただし「今回のような大きさの船を、あの深度から引き揚げた例はない」とも述べ、可能だとしても、実際の作業は決して容易ではないとの見方を示した。 関係者によると、技術的な検討作業は現在米国の民間引き揚げ会社の主導で進められており、8日にその結果が米海軍に伝えられ、12日に海軍としての結論を出す予定だという。


 
 ワドル前艦長の行方不明者家族への手紙、愛媛に届く
 2001.03.01(22:50)asahi.com
 実習船えひめ丸に衝突した米原潜のワドル前艦長が行方不明者の家族らにあてて、
望月義夫・外務政務官に託した愛媛県関係者への手紙計11通が1日夜、外務省職員の
手で松山空港に着いた。県職員に加戸守行知事あての手紙を渡した後、家族への手紙
を持って県立宇和島水産高校へ向かった。うち9通は堀田家孝校長を通じて行方不明者
の家族らに渡す。大西尚生船長あての手紙は、外務省職員が2日に広島県向島町の自
宅を訪ねて手渡すという。知事あての手紙は「査問会議が終わって私が行方不明者の
家族に謝罪できるようになる前に、謝罪の気持ちを伝えてほしい」と書かれていたという

 米特使が宇和島水産高校訪れ、行方不明家族に謝罪の言葉
 2001.03.01(20:30)asahi.com
 漁業実習船えひめ丸の事故で1日、来日中のファロン米政府特使がスミス国防次官補
代理らとともに愛媛県庁や県立宇和島水産高校を訪れ、加戸守行知事や行方不明者の
家族、救出された生徒らに直接謝罪の言葉を伝えた。同校では校長室で9人の行方不
明者の家族14人と会い、「心と心のあいさつがしたい」と一人ひとりに話しかけたという
。面談後、先に東京でファロン特使と会った実習生寺田祐介君(17)の父亮介さん(45)
は「必ずえひめ丸を引き揚げてくれると感じた」と話した。ファロン特使は会議室で救出
された生徒9人のうち2人や同校関係者らとも会った。実習生の篠藤大介君(17)、辻翔
次君(17)とは握手をし、「またハワイの海にきてほしい」と伝えたという。これに先立ち、
ファロン特使は県庁で加戸知事と会談し、謝罪した。

 「私の一部が死んだ」 ワドル前艦長が米誌に心境語る
 2001.03.01(19:46)asahi.com
 えひめ丸を沈没させた米原潜グリーンビルのワドル前艦長(41)が、米誌ピープルの
取材に応じ、「沈んでいくえひめ丸を潜望鏡で見た時、私の一部が死んだ」などと心境を語
った。2日発売の同誌に掲載される。事故後メディアの取材に応じたのは初めて。前艦長
は「衝突直後、えひめ丸の乗組員全員が救助されたと聞かされた」と述べ、その後に沿岸
警備隊から9人が不明と知らされたときは「胸から心臓がえぐり取られたような思いがし
た」と話した。父親も同誌の取材に答え、事故の数時間後に前艦長が艦内から電話をして
きたと明らかにした。前艦長は「自分で潜望鏡ものぞいたし、音波探知もさせた。でも(他
船は)何もなかった」と強調。「やるべきことは全部やった。教科書通りにきちんとやったん
だ」と打ち明けたという。前艦長は「衝突はあくまで事故。でも事故を引き起こしたのは私
の潜水艦だ」と責任を認め、「残りの人生を通じ、事故の重荷を背負い続けるしかない」と
淡々と語ったという。

 「緊急浮上は許せない」宇和島水産高校卒業式で校長
 2001.03.01(17:35)asahi.com
 実習船えひめ丸が米原潜に衝突されて沈没し、実習生ら9人が行方不明になっている
愛媛県宇和島市の県立宇和島水産高校(堀田家孝校長)で1日、卒業式があった。救助
された2年生9人全員が事故以来初めて登校したが、「出席は本人の意思にまかせる」と
いう学校側の配慮から、うち4人が式に出席し、3年生52人と専攻科7人の門出を祝った
。あとの5人は教室で待機した。午前10時からの式では、堀田校長が海洋漁業科など5
科の代表5人に卒業証書を渡した。その後の式辞でえひめ丸事故に触れ、「行方不明の
9人は海の男として生きている、と信じる。しかし、(潜水艦の)安全確認なしの緊急浮上
は絶対に許せない」と述べた。在校生代表として、海洋漁業科2年で生徒会長の山口太
志君(17)が「先輩たちがいなくなった後は不安だが、勉強やスポーツに励みます」と送
辞を述べると、海洋工学科3年の田中秀樹君(18)が答辞で「信じられない事故が起きた
が、在校生は私たち以上に傷ついたと思う。しかし今こそ水高魂を発揮してほしい」と応
じた。

 米原潜前艦長「家族におわびを」 日本総領事館で謝罪
 2001.02.28(23:25)asahi.com
 実習船えひめ丸が米原潜に衝突され沈没した事故で、米国家運輸安全委員会(NTS
B)の聴取を拒否していたワドル前艦長が27日夕(日本時間28日朝)、ホノルルの日本
総領事館を訪れ、望月義夫外務政務官らに「機会をいただければ家族に直接会っておわ
びしたい」と謝罪した。日本政府関係者が28日夜、明らかにした。それによると、望月氏
が「家族に会って直接謝罪してほしい」と求めたところ、ワドル前艦長は日本語で「はい」
と答えた。青森県三沢市で生まれたことや、初めて覚えた言葉が日本語だったことなど、
自らの生い立ちを説明したうえで「日本人を尊敬している。事故をおわびします。機会を
いただければ家族に会っておわびしたい」と涙を流しながら語った。外務省によれば、前
艦長は行方不明者9人の家族や森喜朗首相にそれぞれあてた書簡13通も望月氏に託し
た。前艦長は事故後、弁護士を通じて事故に対して「遺憾の意」を表明する声明文を発表
したが、事故原因を調査するNTSBの聴取を拒否。謝罪をしないことに、えひめ丸の家
族らから批判が出ていた。

 ファロン米特使が愛媛訪れ家族らに謝罪へ えひめ丸事故
 2001.02.28(20:37)asahi.com
 愛媛県立宇和島水産高校の実習船えひめ丸が米原潜に衝突され沈没した事故で、フ
ァロン米特使が3月1日、同県を訪れる。フォーリー駐日米大使やスミス国防次官補代理
らも同行する。県によると、午前11時から県庁で加戸守行知事らと会談した後、ヘリコプ
ターで同校のある宇和島市に向かう。午後2時ごろから同校で行方不明者の家族らと会
い、謝罪したうえ、船体の引き揚げなどについて説明するとみられる。

 米特使、えひめ丸引き揚げの姿勢示す 官房長官らと会談
 2001.02.28(12:54)asahi.com
 実習船えひめ丸が米原子力潜水艦に衝突され沈没した事故で、来日しているファロン
特使(海軍省制服組ナンバー2の作戦副部長)が28日午前、首相官邸で福田康夫官房
長官や扇千景国土交通相らと会談した。ファロン特使は、焦点となっている船体の引き
揚げ作業に米政府として着手する姿勢を示した。会談で衛藤征士郎外務副大臣が「米
政府として引き揚げに着手するのか」とただしたのに対して、ファロン特使は「その通り
である。米政府として政治的にコミット(関与)している」と明言した。またファロン特使は
「3月8日に米海軍が委託している引き揚げ会社から今後の進め方についての報告が
提出される。日本側と協議しつつ取り進めたい」と述べた。またファロン特使は、福田官
房長官が、原潜の緊急浮上がデモンストレーションだったのかとただしたのに対して、「
緊急浮上には(1)乗員の訓練(2)機器の点検(3)デモンストレーションの3つの側面が
あった」と述べ、事実上、民間人に対するデモンストレーションの側面があったことを認
めた。さらに「人に乗ってもらって、ただちに浮上できることを示すことが、潜水艦の信頼
性を理解してもらう上で必要だ」とデモンストレーションの意義を説明した。ファロン特使
の発言について福田官房長官は28日の記者会見で「予備的な調査は過ぎたと思う。(引
き揚げを)実行するという前提の調査をするのだろう」と述べ、米政府が引き揚げ作業に
とりかかることを約束したとの受け止め方を示した。

 えひめ丸引き揚げ最大の努力 米特使、森首相と会談
 2001.02.27(22:12)asahi.com
 米ハワイ沖で米原子力潜水艦が実習船えひめ丸に衝突した事故で、27日に来日した
米政府のファロン特使(海軍作戦副部長)は同日夜、首相官邸で森喜朗首相と会談した。
ファロン特使は謝罪の意を表明したブッシュ大統領からの親書を手渡したうえで、えひめ
丸の引き揚げについて「最大の努力を尽くす」と述べた。補償問題については「適切な時
期に取り組みたい」として、前向きに応じる姿勢を明らかにした。大統領の親書は、「米国
政府と米国民を代表し、謝罪と深甚なる遺憾の意を再度表明する」と謝罪の気持ちを改
めて表明。事故原因に関しては「十分かつ透明性のある調査を行うことを保証する」とし
、米政府として最大限究明に尽くす考えを強調した。そのうえで、ファロン特使は今回の
事故について「米国政府と米海軍が全責任をとる」と言及。引き揚げについては「困難な
仕事と聞いているが、一生懸命取り組んでいる」と述べ、最大限努力することを約束した
。森首相は、今後予定されている米海軍の査問会議での徹底的な原因究明に加え、補
償問題について「米側に配慮をお願いしたい」と求めた。これに対し、ファロン特使は「し
かるべきタイミングに詳細をつめる。適切な時期につめたい」と答えた。会談後、森首相
は官邸内で記者団に対し、えひめ丸の引き揚げについて「技術的に難しいということだ
ったとしても、民間の専門家の協力を得て日本政府だけでも引き揚げるくらいのつもり
でいる」と述べたうえで、「米国の結論についてそれだけ期待をしたいということだ」と改
めて米国側の努力を促した。会談には河野洋平外相が同席した。ファロン特使は28日
に東京都内でえひめ丸の行方不明者の家族代表らと面会するほか、福田康夫官房長官
ら関係閣僚にも改めて調査の進みぐあいなどを説明する。

 原潜事故で政府が調整室を設置 各省庁の対応一元化
 2001.02.27(19:17)asahi.com
 政府は27日、ハワイ沖の米原子力潜水艦と愛媛県宇和島水産高校の漁業実習船えひ
め丸の衝突事故に関する各省庁の対応を調整するため、「えひめ丸事故対策官邸調整
室」(室長=福田康夫官房長官)を設置した。内閣官房、外務省、防衛庁、国土交通省、
農水省、経済産業省、文部科学省の関係各省庁が参加。原因究明や再発防止のための
施策、捜索救助、船体引き揚げ、乗船者と家族への対応などの調整を進める。

 基地内での「さくらまつり」中止 横須賀市、事故に配慮
 2001.02.26(21:36)asahi.com
 神奈川県横須賀市は26日、米海軍横須賀基地内で4月に予定していた恒例の「日米
親善横須賀さくらまつり」を中止すると発表した。隣の三浦市の三崎港を拠点とする愛媛
県の漁業実習船が米原潜に衝突され、沈没した事故を受けて、「関係者の思いや国民感
情などを考慮した」と説明している。

 事故原潜の人間関係に関心 安全委、心理学者に分析依頼
 2001.02.26(14:40)asahi.com
 ハワイ沖で起きた実習船えひめ丸沈没事故を調査している米国家運輸安全委員会(N
TSB)高官は、「米潜水艦グリーンビル乗組員の人間関係に不可解な点がある」として、
心理分析の専門家にゆがみの解明を依頼したことを明らかにした。上官に必要な情報を
報告しなかったり、進言をためらったりしたことを分析するのが狙いだ。NTSBによると
、調査団に加わったのは、大事故につながった人的なミスの解析を専門とする米国の
行動心理学者。これまでの調査で、副艦長は「ワドル前艦長がした緊急浮上の準備が
性急すぎると思ったが、16人の民間人客の手前、異を唱えるのをためらった」と証言し
ている。NTSBは「部下の委縮」か「行き過ぎた気遣い」とみているが、進言しにくいほ
ど硬直した職場環境だったと述べた乗組員はほかにおらず、真相はわかっていない。
 ソナー(水中音波探知機)情報の解析技術官は、司令室が民間人ですし詰めになっ
て図面作製に支障が出ても、同僚に不満のひとつもぶつけていない。同解析官はまた
、えひめ丸の位置を1.8キロ先と算定したが、前艦長が「潜望鏡では何も見えない」と
言うのを聞くと、独断で距離を8キロに修正している。艦長への迎合か、それとも単なる
職務不熱心か、NTSB内部でもその解釈は割れたという。米原潜の艦長を5年余り務
めたジョン・ピータース氏(65)は、「潜水艦の任務では小さな人間関係のもつれが重
大な結果を招きかねない」と説明する。狭い空間に150人もの人間が入り、長い場合
は2カ月半も海中生活を強いられる。このため、原潜乗務志望者には体力試験とは別
に専用の心理試験を課し、不合格者は乗務できない。任務中にいざこざを起こした乗
組員を「良好な人間関係を維持できない」という理由だけで港湾勤務に配転したことも
あるという。ワドル前艦長は、米海軍のなかでもエリート視されていたが、知人らは「陽
気でおしゃべり好き。部下を抑えつけるような権力的な性格ではなかった」と話してい
る。

 狭さに驚き 米海軍原潜艦内を公開
 2001.02.26(12:49)asahi.com
 米海軍は25日朝、実習船えひめ丸を沈没させた原潜グリーンビルと同型の原潜コロン
ビアを、ハワイ真珠湾基地で日米報道陣に公開した。3月5日に迫った査問会議を前に、
艦内取材の要望が集中していた。司令室は30平方メートル余り。20畳ほどの室内に操
舵(そうだ)席や海図台、2台の潜望鏡が並び、すれ違うのもままならない。事故直前の
グリーンビルでは同じ狭さの司令室に、乗組員と民間人客あわせて30数人。文字通りす
し詰め状態だった。「ここに16人も訪問客を入れれば、乗組員が歩き回るのはもちろん
、上司に何ごとか機敏に報告するのも無理だったはずだ」。取材した米ABCテレビ記者
は狭さに驚いていた。

 米原潜の前艦長が行方不明者の家族らに遺憾の意表明
 2001.02.26(01:42)asahi.com
 AP通信が25日、ハワイ沖で日本の漁業実習船えひめ丸を沈没させた米原潜グリーン
ビルのワドル前艦長が弁護士を通じて発表した声明の全文を伝えた。前艦長は声明で、
日本国民や行方不明者の家族らに対して遺憾の意を表明した。しかし、事故の原因や責
任については直接触れず、3月5日に開かれる予定の査問会議で真相が明らかになるこ
とを切に望む、としている。声明文は以下の通り。日本のみなさま、特に、米原潜グリー
ンビルと実習船えひめ丸との衝突事故で行方不明になったり、けがをされたりした方々
の家族に対し、心から遺憾の意を表明したいと思います。事故が、行方不明になってい
る生徒さん、教師、乗員のみなさまの家族、さらに、宇和島水産高校、えひめ丸の大西
尚生船長、宇和島の地元市民のみなさま、そしてすべての日本人の方々に、想像を絶
する悲しみを与えていることは承知しているつもりです。愛する人を失った方々に対し、
適当なお悔やみの言葉も見あたりません。私も、ご家族の皆様と、皆様が受けられた大
きな喪失に対し悲痛な思いでいっぱいです。間もなく始まる調査によって、今回の事件に
関するあらゆる疑問や未解明な部分が明らかになることを望みます。 このような悲惨な
事故を2度と繰り返さないために、何が起きたのか、真実をはっきりさせたいと心から願
っています。こうした行動をとるのは、犠牲者やその家族の名誉のためにほかならないし
、ひいては私の家族と原潜の乗組員の家族の名誉のため、そしてさらには、米日両国の
名誉のためです。

 解析技術官の行動も焦点 原潜事故調査団長
 2001.02.25(03:43)asahi.com
 ハワイ沖で起きた実習船えひめ丸沈没事故で、米国家運輸安全委員会(NTSB)の
現地調査団長であるハマーシュミット委員は23日、朝日新聞と会見し、米原潜グリー
ンビルの音波情報解析技術官がとった一連の行動に不審な点が見られ、今後の調査
の焦点になると語った。米海軍筋も、3月5日に始まる査問会議に、決定ずみのワドル
前艦長ら3人に加えて新たに乗組員が召喚される可能性があるとしており、事故につ
ながった要因としての重大さからこの解析技術官が召喚される見通しが強まっている
。ハマーシュミット委員は、NTSBによる現地調査が23日で完了したのを受け、会見
で調査結果のあらましを説明した。解析技術官は、ソナー(水中音波探知装置)がとら
えた海上の船舶の情報を分析し、その速度や航路を図面や艦内コンピューター網に書
き込むのが任務。ところが同委員によると、技術官は「多数の民間人が体験航海してい
たために司令室内でわずか1メートル先へも進めなかった」と当時の状況を証言した。
 その一方で同委員によると、技術官は「艦長ら上官に必要な情報を伝えられないとい
う抑圧感はなかった」とも強調。供述態度にもあいまいな点が目立ったため、再び長時
間の事情聴取をしたことを明かした。同委員は、「技術官がソナー解析の仕事に15年
の経験がありながら、今回は注意力を欠いていたのではないか」と指摘。艦長ら他の
乗組員との意思疎通に支障が出ていたことを重視していると述べた。また同委員は、
司令室の前にあるソナー室の人員配置状況についての調査結果を明かした。勤務表
通りに有資格のソナー担当官1人と新人の訓練生、監督官の3人が勤務していたが、
米海軍は通常、無資格の訓練生をソナー室に配置しないことになっているため、「そも
そも勤務表が適切だったかどうか疑問が残る」と指摘した。NTSB現地調査団は24日
、ワシントンへ戻る予定。今後は、航空機のフライトレコーダー(飛行記録装置)に相当
する「ソナー記録」の分析を急ぐとともに、艦内の情報伝達のどこが問題だったかを探る
。事故原因についての最終的な調査結果を出すには1年以上かかるが、とりあえず事
実関係の詳細を早ければ3カ月後にも公表する予定だ。

 「だれか中国語話す人いないか」事故直後混乱の原潜艦内
 2001.02.24(23:15)asahi.com
 ハワイ沖で実習船えひめ丸を沈没させた米原潜グリーンビル艦内で、事故直後に乗組
員が「だれか中国語が話せる人はいないか」と探し回っていたことが23日わかった。衝
突したのを最初は中国の船と取り違えたらしい。事故調査当局によると、原潜に乗艦し
ていた民間人16人は衝突直後、司令室から階下の食堂へ移動させられた。そこへ乗組
員が慌ただしく下りてきて、16人のなかに中国語をわかる人はいないかと尋ねた。しば
らくすると再び乗組員が部屋を訪れ、今度は「日本語を使える人を探している」と呼びか
けた。「乗員に日本語がわかる人はいなくて困っている」という説明もあったという。調査
当局には「ひとりでも日本語が理解できる人が艦内にいれば、事故直後の救助態勢が違
っていたかもしれない」という声も出ている。

 外務省政務官に補償問題明言 米太平洋軍副司令官
 2001.02.24(13:50)asahi.com
 米原子力潜水艦に衝突され、沈没した漁業実習船えひめ丸の事故について、米太平
洋軍のトーマス・ケース副司令官は、23日午後(日本時間24日午前)、外務省の望月
義夫政務官と桜田義孝政務官らと会談し、「査問会議の目標は事故の責任の所在を明
確にすることと、再発防止策を講じることのほか、船の所有者や家族への補償問題にあ
る」と話した。米海軍の高官が日本政府側に正式に補償問題を明言したのは初めて。会
談は、桜田政務官の帰国にともない、望月政務官がホノルル入りしたため、引き継ぎとあ
いさつを兼ねて行われた。

 米原潜、ソナー探知情報を技術官が独断で修正 
 米紙報道
2001.02.24(12:41)asahi.com
 漁業実習船えひめ丸に衝突した米原潜グリーンビルのソナー(水中音波探知装置)情
報解析技術官が緊急浮上の直前、ソナーによる情報をもとに、えひめ丸とみられる船体
まで約1.8キロに迫っていたと分析していたが、独断で約8キロと修正し、警告を発しな
かったと、23日の米ワシントン・ポストが報じた。ワドル艦長(当時)が潜望鏡でのぞいて
も船体が見えなかったため、自分の計算違いだと判断したという。9日の事故発生以来、
米国家運輸安全委員会(NTSB)の事情聴取や米海軍の予備調査報告の内容が明らか
になるにつれ、事故原因解明の焦点は、衝突直前にえひめ丸を探知したソナー情報があ
ったのに、なぜ艦長が緊急浮上を命じたかという点に絞られつつある。ワドル氏の供述
は公にされていない。同紙は事故調査筋の話として、ワドル氏はソナー情報に基づいて
、船体を浮上させ潜望鏡で船体を探したが見えなかった、と報じた。一方、司令室では技
術官が原潜から約1.8キロのところに2隻の船がいると解析していた。しかし、艦長が船
体はないと話したため、技術官は自分が間違ったと思い警告しなかった。そして、えひめ
丸との距離を独断で約8キロに修正していた。この解析技術官はNTSBの聴取に対して
、民間人で込み合っていたために、正常業務が妨げられたと証言したことが明らかになっ
ている。しかしワドル氏は、民間人の存在は業務の妨げにはならなかったとしているとい
う。 3月5日に始まる海軍の査問会議に臨むワドル氏側は、緊急浮上の際に乗組員から
伝達された情報に基づいて適切に行動したという点を強調し、自らは重大な過失がなか
ったと主張するとみられる。

 米海軍作戦副部長を特使として日本へ派遣 原潜事故で米
 2001.02.24(12:00)asahi.com
 米国防総省は23日、原潜事故で日本に対し改めて謝罪の意を伝えるため、海軍作戦
副部長のファロン海軍大将を政府特使として来週、日本に派遣すると発表した。森喜朗
首相に会い、ブッシュ大統領からの親書を手渡す。具体的な日程は調整中だが、米国側
としては週明け早々にも訪問したい考えだという。発表によると特使派遣の目的は「米国
の政府、海軍、国民を代表して謝罪を表明するため」。査問会議を含め、米国で継続中
の原因調査の進ちょく状況について説明し、沈没した漁業実習船の引き揚げをめぐって
協議もするという。特使派遣は「米国が日本との安全保障関係、日本国民との友好関係
を非常に重視していることの表れだ」とも説明している。ファロン氏はワシントンの海軍省
に勤務する制服組のナンバー2。「現時点で、海外に出張できる最高ランクの人物」(日本
政府関係者)だという。米国側はすでに、大統領から首相への電話など、さまざまなチャ
ンネルを通じて日本に謝罪している。それに加えて今回、改めて特使を派遣することにし
た背景には、日本側での対米感情が予想以上に悪化していることや、今後の展開につい
て日本側から十分な理解を得たいためと見られる。

 民間人による米軍艦船などの操作を全面禁止 
 国防総省
2001.02.24(10:22)asahi.com
 ラムズフェルド米国防長官は23日、米原潜事故を受けて全軍に対し、あらゆる軍の
装備について民間の訪問者による操作を当面禁止する指示を出した。即日実施された
。 それによると、この新方針は「艦船、航空機、車両、兵器システムのあらゆる操作」を
含むもので、「軍関係者が、いかに注意深くその民間人を監督しているかどうかとは関
係なく実施する」としている。

 米原潜事故の予備調査報告書要旨
 2001.02.24(01:08)asahi.com
 米ワシントン・タイムズ紙が報じた米海軍の予備調査報告書の要旨は次の通り。
 一、原潜司令室内に何人かの民間人がいたことが、ワドル艦長(当時)らがソナー(水
中音波探知装置)情報解析技術官と対話するのに障害となった。民間人を分けて司令
室に入れ、潜望鏡周辺の人込みを少なくしていれば、状況は劇的に違っていただろう。
一、ソナー技術官は船舶の動きをチェックする作業を怠る基本的なミスを犯した。ソナ
ーで探知、「S13」と登録されたえひめ丸の航跡を追跡しなかった結果、えひめ丸が危
険なほど接近していると認識できなかった。一、艦長とソナー技術官の意思疎通が欠け
ていた。原潜が潜望鏡を上げる深度に浮上する前、同技術官はえひめ丸が3.6キロか
ら1.8キロに近づきつつあることを察知したが、艦長らに報告しなかった。 一、ワドル
艦長らの潜望鏡による確認作業は不十分だった。作業はおよそ2分間で、確認するには
難しい状態だった。潜望鏡の高さは海面から1.2―1.8メートルで、水平線を見るには
十分な高さではなかった。 一、ソナー室の人員配置は不適切で、1人は操作する資格
がなかった。 一、乗組員は不用意にも、ソナー分析装置を故障とみなした。司令室の
2つのモニターのうち1つは作動可能だった。艦長はえひめ丸のソナー信号に気づき、
乗組員もえひめ丸との距離を知ることができたはずだった。

 「民間人の手前」注意喚起はばかる 米海軍の報告書
 2001.02.24(00:06)asahi.com
 ハワイ沖で起きた実習船えひめ丸沈没事故で、米原潜の副艦長らが、司令室にいた
民間人16人の目を意識したため、緊急浮上を急ぐ艦長に向かって注意を喚起するの
をためらい、衝突につながったなどとする米海軍の予備調査報告書の内容が明らかに
なった。米紙ワシントン・タイムズが23日付で報じた。これまで「民間人の乗艦は事故
とは無関係」としてきた米海軍の見解に反する結論だ。同紙は報告書を入手していない
が、海軍関係者から報告書要旨を読み上げてもらったと説明している。同報告書は3月
5日に開かれる査問会議に提出される。
 報告書は、ソナー(音波探知装置)でえひめ丸の所在を覚知したソナー情報解析技術
官が、潜望鏡の周囲に乗組員と民間人客が集まりすぎたために、艦長だったワドル氏
との対話を妨げられ、えひめ丸の位置や航路を報告しなかったと指摘。「民間人を分け
て司令室内に入れ、潜望鏡周辺の人込みを少なくしていれば、状況は劇的に違ってい
たはずだ」と述べた。ファイファー副艦長は、艦長の緊急浮上準備が性急だと感じてい
たが、「16人もの民間人客の前で上司に意見するのをはばかり、結局何も注意喚起をし
なかった」と証言。これら部下との意思疎通を欠いた結果、艦長は最後まで自艦の約1.
8キロ圏内にまでえひめ丸が近づいたことを知らないままだったと指摘した。報告書はま
た、艦長が潜望鏡を使った確認作業をわずか2分ほどで切り上げ、潜望鏡も接近した艦
船をとらえるのに十分な高さまで上げられていなかったとして、艦長自身のミスを挙げた
。 報告書は、これら一連の失敗を詳述し、「プロ意識、監視能力、上官の指導力などい
ずれの点でも期待される水準を著しく外れていた」と結論づけているという。

 「えひめ丸船体引き揚げ実現性高い」日本側専門家が発表
 2001.02.23(23:29)asahi.com
 米原子力潜水艦と衝突して沈没した愛媛県の漁業実習船えひめ丸の引き揚げについ
て、米国側と協議している日本の専門家ミッションの佐藤博史団長(外務省経済局海洋
室長)が22日夜(日本時間23日午後)、ホノルル市内で記者会見し「基礎的な調査は
終わり、引き揚げの具体的な方法の協議に入る。実現性は高いと判断している」と話し
た。「最終的な決定は数週間先」としながらも、初めて公式に引き揚げの可能性を明言
した。専門家ミッションは21日にホノルル入りし、米海軍本部のサルベージ部局の専門
家らと協議を続けている。2日間にわたり、米海軍の無人潜水機の映像やこれまでに集
まった資料を、日本から持参したえひめ丸の船体構造図などとともに解析した。その結
果、米国側に海底の状況や潮流に関する追加データを求めたものの、具体的な引き揚

方法を検討するのに必要な基礎調査はほぼ終了したことで日米の認識は一致。引き揚
げの具体的方法について日米の専門家が協議して決めることでも合意したという。佐藤
団長によると、えひめ丸はサンゴの交じった平たんな砂地に沈んでいるという。今後は
米国側が委嘱する民間のサルベージ会社も交えて協議する。具体的な方法については
、船体の強度や潮流を解析しながら決める。船体をつかんで引き揚げる機械を特注した
り、船体の下にワイヤを通して持ち上げたりする方法などが考えられるという。えい航し
ながら段階的に引き揚げるか、一気に海面まで上げるかなども検討する。

 えひめ丸の行方不明者の家族ら、首相に船引き揚げを要望
 2001.02.22(22:23)asahi.com
 ハワイ沖で米原子力潜水艦に衝突され沈没した漁業実習船えひめ丸の行方不明者
の家族15人が、加戸守行・愛媛県知事らとともに22日、森喜朗首相とフォーリー駐日
米大使に会い、えひめ丸の引き揚げやブッシュ大統領との会見の実現を求めた。家族
のうち10人はホノルルからこの日戻って首相官邸に直行した。疲れた様子だったが、
会談時間は予定の倍近くに及んだ。家族の強い願いであるえひめ丸の引き揚げにつ
いて、森首相は「米国と協力しながら全力を挙げてやりたい」と答え、「補償問題につい
ても、最大限の努力をしたい」と述べた。フォーリー大使は「事故の責任は全面的に米
国にある」と謝罪した。

 原潜、えひめ丸を小舟と判断 米紙報道
 2001.02.22(13:18)asahi.com
 ハワイ沖の米原子力潜水艦グリーンビルとえひめ丸の衝突事故で、原潜側はえひ
め丸の船体を水中音波探知装置(ソナー)でとらえていたが、乗組員が「安全な距離
にある小舟」と判断していたと、21日の米紙ワシントン・タイムズ(インターネット版)
が米海軍筋情報として報じた。同紙によると、沖合約14キロにいた原潜はえひめ丸
とみられるソナー情報を探知した。米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査でわかっ
た衝突の約1時間10分前のソナーでの確認と一致するとみられる。ソナーが探知し
た反応が弱かったため、漁船などではなく小さな船と判断したという。その後原潜は
海中を航行し、緊急浮上訓練の態勢に移ろうとしたが、その際、「小舟」という判断を
基に原潜のいる海域にまでえひめ丸は到達していないとみた模様だ。 その後、水深
約17メートルにまでいったん浮上して、ワドル艦長(当時)自身が、潜望鏡でソナーが
探知した方向を特に確認しようとした。潜望鏡の明るさを増すため、艦内のテレビ画面
を消す措置なども講じたが、えひめ丸の船体を識別することはできなかったという。

 米原潜の対応を首相が「極めて遺憾」と批判
 2001.02.22(11:50)asahi.com
 森喜朗首相は22日午前、漁業実習船えひめ丸を沈没させた米原潜グリーンビルが
、衝突の1時間も前にソナー(水中音波探知装置)でえひめ丸を確認しながら航跡図
の作製を中断していたことなどについて「極めて遺憾だ」と批判した。森首相はそのう
えで、「ただ結論を急ぐだけでなく、いまの状態としては米国政府に対して、さらに徹
底した調査を求めるのは当然だ」として米国側の調査を見守りたいとの考えを強調し
た。首相官邸で記者団に語った。

 原潜、えひめ丸の航跡図作らず 艦長用ソナー画面も故障
 2001.02.22(00:22)asahi.com
  米原潜グリーンビルが漁業実習船えひめ丸に衝突、沈没させた事故で、原潜は
衝突の約1時間10分前にえひめ丸をソナー(水中音波探知装置)で確認しながら同
船の航跡図作製をやめ、艦長らが見るソナー画面も故障していたことが20日、米国
家運輸安全委員会(NTSB)の調査でわかった。同乗中の民間人16人全員が司令
室におり、担当乗員は民間人が邪魔になって航跡図を作るのをやめたという。「事故
と民間人の乗船は無関係」としている米軍の主張と反する形だ。

 20日夜(日本時間21日昼)、記者会見したNTSBのハマーシュミット委員は、乗組
員19人と民間人16人の計35人から衝突前後の状況などを聴いた結果と、潜水艦
の記憶装置に残っていた情報などを公表した。ワドル前艦長らは26日から始まる海
軍の査問会議の終了まで、事故に至る経緯についてのNTSBの聴取を拒否している
。 NTSBによると、9日午後零時32分ごろ、原潜はソナーで、えひめ丸のスクリュー
音を探知した。そのときは船名はわからず「シエラ13」と登録して注意を払っていた。
事故前に、ソナーの担当官は計5隻が周辺の海上にいることをソナーで探知し、短時
間で反応が消えた2隻を除き、えひめ丸を含めた3隻の動きを追っていた、という。ソ
ナー担当者3人のうち1人は訓練生で、事故当時、指導監督を受けながら聴音してい
たという。 通常はソナー情報を基にソナー室の横で別の担当者が航跡図を作る。だが、当時
は、司令室に多数の民間人がいたため、航跡図の作製作業をやめていたと担当者は
証言した。狭い司令室に人がひしめいて作業の邪魔になったが、「どいてくれ」とは言
わなかったと乗員は話したという。 航跡図はソナー情報から船舶の動きや位置を海図に示して作る。専門家によると、視覚で水上船舶の位置を確認できない潜水艦にとって重要な
情報という。また、ソナー室でどの段階まで、えひめ丸を追跡していたかはわかってい
ない。 ソナー情報はソナー室のほか、司令室付近にある画面(ソナーリピーター)に同
時に映り、艦長らが見ることができる。だが、この画面が故障していたという。 航跡図
も作らず、司令室の画面にも映らなかったため、艦長らには、接近してくるえひめ丸の
位置などの情報が伝わらなかった可能性がある。艦長は潜望鏡での水上確認の後に
潜航し、緊急浮上してえひめ丸に衝突した。NTSBによると、潜望鏡での確認の際、
民間人の1人はえひめ丸ではない船舶をモニター画面で見たと証言しており、艦長ら
の潜望鏡確認にも問題があった可能性がある。民間人からの聴取では、事故時の緊
急浮上訓練とは別に、原潜側が民間人全員を司令室に招いて、原潜が速いスピード
で方向を左右に変えたり、急角度で上下したりする動きを体験させていたことも分か
った。
    ◇    ◇
  米国家運輸安全委員会(NTSB)のハマーシュミット委員が20日行った会見の要
旨は次の通り。
 一、原潜のワドル前艦長、ファイファー副長、コーエン哨戒長の3人は衝突時の役
割について事情聴取を拒んだ。一、水中音波探知装置(ソナー)を扱うソナー員は午
後1時43分の衝突時間の約1時間前、午後零時32分ごろに続けて3つの音波を探知
した。2つが北、1つが西の方向だった。ほかにわずかな時間に2つ音波が探知された
。一、探知情報は担当者に伝えられ、船の速度や進む方向などの分析に使われた。一
、司令室に民間人がいたため、ソナーで探知した音波情報に基づき継続して作製しな
ければならない航跡図の更新を取りやめたと乗組員が証言した。 一、ソナー室には経
験のあるソナー操作員2人と監督者1人がいることになっているが、実際は操作員のう
ちの1人は訓練生だった。 一、原潜に搭乗していた民間人16人は、事故当時、司令室
にいた。一、司令室の潜望鏡近くにあるソナー室のソナー画面が映るソナーリピーター
といわれる計器が作動していなかった。

 「緊急浮上は民間人向けの遊び」NTSB報告に家族怒る
 
2001.02.22(00:20)asahi.com
 米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査報告が発表された20日夜(日本時間21日
午後)、漁業実習船えひめ丸の行方不明者の家族らは憤りの言葉を口にした。 生徒
の寺田祐介君(17)の父亮介さん(45)は「絶対に許せない人為的なミスだ。我々は
怒りと、言葉では言い表せない感情を米国に持ち続けることになる」と憤った。また、
愛媛県の加戸守行知事も「大変な怒りを感じる。ダブル、トリプルのミスだ。米国は軍
律が緩んでいるとしか言いようがない」と怒りをあらわにした。
    ◇
 宇和島水産高校の関係者も憤る。
 祐介君の伯父照生さん(59)は「緊急浮上のような、やらなくていいことはやって、
やるべき安全確認をしていない。民間人向けの『遊び』ではないか」と激しい口調で
話した。「最初は訓練だと言って、次にはデモンストレーションと言う。情報を小出し
にしているが、米軍などは、ソナー探知問題も含めてすべてを最初から知っていたん
じゃないか。『うまくいけば隠し通せる』と思っていたと疑わざるを得ない」
同校の奥
谷勝幸PTA会長(50)も「もう言葉もない。こんなことで大切な子どもたちが事故に遭
ってしまったと思うと、腹が立つ」と話した。救出された実習生篠藤大介君(16)が住
む寮の谷口祐次長(55)も「ここまで来ると『事故』ではなく、『事件』だ」と憤った。「ソ
ナーで探知していたはずと思っていた」という石橋寛久・宇和島市長は「これで明白
な過失がはっきりとした。艦長らが明確な形で責任を取ることを求めたい」と話した。

 行方不明者の4家族、22日に一時帰国 えひめ丸事故
 2001.02.21(21:52)asahi.com
 米原子力潜水艦と衝突した漁業実習船えひめ丸の行方不明者の家族のうちホノル
ルに滞在していた4家族10人は22日午後、成田着の米ユナイテッド航空機で、加戸
守行愛媛県知事らとともに帰国する。 家族は同日夕、加戸知事やすでに帰国してい
る不明者の家族とともに首相官邸を訪れ、森喜朗首相に船体の引き揚げや事故原因
の解明に日本も積極的に加わるよう求める要望書を提出する。フォーリー駐日米大使
にも会う予定。一部の家族は26日に開かれるワドル前艦長ら乗組員3人の米海軍の
査問会議を傍聴するため、再びホノルルに戻るという。一方、加戸知事は、帰国直前
の21日午前中に米太平洋軍のブレア司令官やファーゴ太平洋艦隊司令官と会談し、
捜索の継続やえひめ丸船体の引き揚げなどを要望する。

 米大使らに実習航海の安全確保を要請 水産高校長協など
 2001.02.21(20:15)asahi.com
 実習船えひめ丸の事故を受けて、全国水産高校長協会(大沼昭彦理事長)と全国水
産高校実習船運営協会(戸田政司理事長)、全国高校水産教育研究会(川村敏彦会
長)は21日、ハワイ沖などで実施される実習航海の安全確保を求める文書をフォー
リー駐日米大使や町村信孝文部科学相、河野洋平外相に提出した。文書は「実習船
教育は、多くが比較的海況の穏やかなハワイ南西沖で実施されている。寄港先のホ
ノルルも両国親善にとってもかけがえのない地」として、今回のような重大事故の再発
防止を求めている。

 米海軍の査問会議に海自舞鶴地方総監部幕僚長を派遣へ
 2001.02.21(19:43)asahi.com
 政府は21日、えひめ丸が米原潜に衝突されて沈没した事故の責任を問う米海軍の
査問会議に、海上自衛隊舞鶴地方総監部の小沢勇幕僚長をアドバイザーとして派遣
することを決めた。米側から要請されていた。また、えひめ丸の引き揚げの調査に協力するため、外務省の佐藤博史海洋室長を団長とする6人の専門家チームを同夜、現地に派
遣した。深田サルベージ建設の川上治男サルベージえい航部長代理や新来島どっく
の藤井一申構造計画課長ら民間人も含まれている。

 原潜艦長の聴取拒否、NTSBの調査に響かぬと国防総省
 2001.02.21(18:42)asahi.com
 米国防総省のクィグリー報道官は20日の記者会見で、日本の漁業実習船と衝突事
故を起こした米原潜の艦長が米国家運輸安全委員会(NTSB)の事情聴取を拒否し
たことについて、「NTSBの調査に影響を与えるとは思わない」と語った。クィグリー氏
は「拒否するのは、艦長の当然の権利の範囲内」としたうえで、「NTSBの調査はまだ
何カ月も続く。(艦長が証言する)査問会議の結果も当然踏まえるだろう。艦長は査問
会議が終わるまで、質問に答えるのは差し控えたいと言っただけだ」などと説明した。

 愛媛県知事がえひめ丸行方不明者家族らを訪問
 2001.02.21(16:33)asahi.com
 米原子力潜水艦に衝突されて沈没した漁業実習船えひめ丸の事故で、愛媛県の加
戸守行知事が20日午前(日本時間21日午前)、ホノルルに到着し、行方不明者の家
族らと会談した。家族らは知事に、森喜朗首相に直接会う機会をつくることなどを要
望。一方、加戸知事は、現在編成中の県の来年度予算に、家族が渡米して米当局に
陳情する際の費用を計上することを決めた、と家族に伝えた。金額や渡航回数など、
詳細は今後決定するという。加戸知事は「私の役割は、愛媛県を代表して米海軍に直
接要望をお伝えすることだ。日米の文化の違いで思うように進まないことも多いが、精
いっぱい尽力したい」などと話した。まず、家族の滞在先のホテルに向かい、この日正
午ごろの便で成田空港や関西空港に向けて帰国した乗組員瀬川弘孝さん(60)の妻
マツエさん(58)ら3家族6人と会談。瀬川さんが永年勤続表彰の該当者だったことに
触れ、「直接表彰状を渡せなかったことは残念です」などと述べた。続いてホノルル滞
在の続く10人と会い、「日米の文化の違いがあり、日本人と同じ尺度で物事を進める
のは難しい」などと話した。家族側は、行方不明者の家族の連絡態勢を整えるために
、人的・金銭的な負担などを要望した。

 2001年2月9日(日本時間10日)、米国ハワイ・オアフ島の南沖合で、実習中だった愛媛県立宇和島水産高校の「えひめ丸」が、米原潜「グリーンビル」に衝突され沈没。生徒と教員、船員の計9人が死亡した。原潜が民間人の体験搭乗中、デモンストレーションのため緊急浮上した際に起きた。ワドル艦長(当時)は戒告処分を受け、退役。米海軍などは、船体を浅瀬の海中まで引き揚げて8遺体を収容後、深海に沈めた。

 2006-03-10日、「えひめ丸事件5年―その隠された真実」。
 2001年(平成13年)2月10日(日本時間)、アメリカハワイ州のオアフ島沖で、愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船が急浮上してきたアメリカ海軍の原子力潜水艦「グリーンビル」に一方的に衝突され、水深600mの海底に沈没した「えひめ丸」事件から五年。乗っていた35人のうち、教員5人、生徒4人の9人が死亡しました。この事件がその後話題に上らなくなったのは、問題がすべて解決したからではありません。軍法会議も、一切の裁判も開かれず、補償問題の解決を急いだ背景になにがあったのか。『えひめ丸事件』(新日本出版社/出版年:2006年1月刊)の著者ピーター・アーリンダー氏のことば「外国の基地を置く国は本当の意味で自由になれない」が重く響きます。

 米海軍・日本外務省・愛媛県が「早期」の幕引きを狙ったのは何だったのか。当時、事故の第一報を聞きながらゴルフをやめなかった森首相が世間を憤激させたことは記憶に新しい。被害者家族や国民の真相究明の要求が『反米』につながることを恐れた日本政府、えひめ丸の構造上の問題点を問われることを恐れた愛媛県、潜水艦に「招待客ツアー」を押しつけた「責任」が表面化することをおそれた米海軍上層部それぞれが、「早期」の幕引きを共通目標としました。

 えひめ丸には年一億円のマグロ水揚げノルマがあり、船体構造も教育や安全性より漁獲高優先となっていました(北 健一「えひめ丸事件から5年―“利益相反”に潜む影」(「赤旗」2006.3.7)。生徒たちが普段集まっている場所(「生徒食堂」)は船底にあって、生徒は階段を2階分駆け上って脱出しなければなりませんでした。原潜の衝突後、非常電源がまったく作動せず、乗員は真っ暗闇のなかで、避難を強いられたのです。

 えひめ丸の船主・愛媛県は自身の県弁護団を33被害家族の人身被害の弁護団としても受注させました。北健一氏は「県弁護団に被害家族を相乗りさせる流れは、事故2ヶ月後の米海軍、外務省、愛媛県副知事の秘密会談と、その直後の宇和島での米海軍・愛媛県・県弁護団の合同説明会を契機として作られた」と書いています。この相乗りは、被害者と加害者の弁護を同時に引き受けてはいけないという“利益相反”のルールを犯すものでした。県はこうして自己の責任を問われることなく、またえひめ丸の構造上の問題点が議論されることもなく、事件は終わってしまったのです。さらに、愛媛県の主導によって、米海軍相手にどんな補償交渉の道があるかを、米海軍の弁護士たちによって被害家族に説明させると言うことがおこなわれました。米海軍の利益を最大限に守る責務を負った米海軍の弁護士が、他方で、被害者に対し十分な補償を得るための方法を説明するという“利益相反”の立場におかれたのです。

 潜水艦グリーンビルのワドル艦長は海軍のキャリアを失いましたが、彼は軍法会議にかけられたわけではなく、太平洋艦隊司令官の「審問委員会」にかけられただけでした。海上の安全を十分確認もせずに緊急浮上をおこなうなどといった「見せ物」的な操縦と「招待客ツアー」とは関係なかったのかも問われることはありませんでした。

 在日米軍の起こした事件は、日米安保条約と地位協定にもとづき、防衛施設庁が処理に当ります。同庁の姿勢は、しばしば「米軍」べったりと揶揄されます。安保の適用外のハワイで起きた「えひめ丸」事件では、県弁護団が防衛施設庁の役割を果たしました。「日本の政治や弁護士倫理のあり方を含め、問題をあいまいにしたままでは犠牲者たちは浮かばれません」、「外国の基地を置く国は本当の意味で自由になれない」という言葉をもう一度かみしめたい。

 2017.2.9日、米ハワイ沖で2001年、愛媛県立宇和島水産高の実習船えひめ丸が米原子力潜水艦に衝突され、9人が死亡した事故から16年となった9日(日本時間10日)、現場海域に近い米ハワイ・ホノルルのカカアコ海浜公園にある慰霊碑で追悼式典が開かれた。事故は01年2月9日(日本時間10日)に発生。実習生4人、教員2人、船員3人が亡くなった。亡くなった実習生らの後輩に当たる宇和島水産高の生徒4人も初めて参加。愛媛県の中村時広知事や事故当時の知事だった加戸守行氏も出席。式典に合わせ、宇和島水産高を含む愛媛県の全高校の生徒が、海の安全や慰霊碑の維持管理に関わる現地ボランティアへの感謝の気持ちを込めて千羽鶴計2万羽を準備した。

 また、愛媛県立宇和島水産高でも10日、犠牲者を悼み海の安全を祈る「追想の日」式典が開かれた。十七回忌に当たる式典には、在校生や学校関係者らが参加。えひめ丸から引き揚げられた鐘を発生時刻に合わせて打ち鳴らし、全員で黙とうした。






(私論.私見)