諸賀(もろが)礼子猟奇殺人事件考

 (最新見直し2014.11.12日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、「諸賀(もろが)礼子猟奇殺人事件」を確認しておく。怪しげな臭いがするからである。小野 一光「福岡OL死体遺棄事件〉被害者宅で密かに発見されていた猟奇的な“あるもの”とは」その他を参照する。

 2010.05.10日 れんだいこ拝


【福岡能古島(のこのしま)女性切断遺体事件】
 2010(平成22)年、3.15日、福岡市西区能古の能古島(のこのしま)で、3月6日から行方不明となっていた福岡市博多区堅粕5の会社員諸賀(もろが)礼子(32歳、以下単に「М」と記す)の切断遺体が見つかった。福岡県警のDNA鑑定で身元が判明した。見つかった部分は、胴体から足の付け根まで鋭利な刃物で切断された後、司法解剖で殴られたような跡(お尻の痕の事かどうかは不明)、綺麗な切り口(発見者談)新品の?2種類の刃物、右尻の上下に500円玉くらいのあざ2つ(生体反応あり)、死後に切断、遺体は損傷が少なく袋などに入れられていた可能性もある。

 4月9日、福岡市中央区の福岡競艇場の遮蔽壁の内側で、清掃作業中の職員が、レース場の水面上に流れ着いた黒いビニールゴミ袋の中から諸賀の両腕を発見する。

 4月14日、福岡市中央区の須崎埠頭(ふとう)付近の海中でМの腹部から首付近までの胴体の遺体が発見される。

 4月15日、胴体が発見された場所から70メートル離れた海上で頭部が発見される。それらの遺体はいずれも死後に鋭利な刃物で切断されており、手の甲には生前、防御の際にできたと思われるアザが残り、頭蓋骨には数箇所のヒビが入っていたという。

 この事件を仮に「福岡能古島(のこのしま)女性切断遺体事件」と命名する。現在も未解決な事件となっている。

【事件の伏線】
 Мが勤務していた医薬品卸会社の代理人弁護士が明らかにしたところによると、Мは同市内の男性会社員と交通事故を巡ってトラブルを抱えていた。それによると、昨年11月11日午後9時頃、同市博多区内の交差点で、Мが自家用車で直進中に右折しようとしていた男性(以下単に「C」と記す)の250㏄バイクと接触事故を起こした。事故相手はМと年齢が近い海運会社に勤める男性。通常の事故ではあったが、Cのその後の行動が尋常ではなかった。Мは12月末のSNS(インターネット交流サイト「ミクシィ」の日記)に次のように記している。
 「実は先月、会社からの帰りに交差点内で私は直進で、相手は右折対向でバイクと事故をしました。お互いに少し言い分が違うという事で第三者事故調査機関に入ってもらい、また最終的に相手が診断書を提出したらしく物損から人身に変わり、誕生日の日に博多警察署へ出頭。私は被害者扱いの事情聴取。その後、第三者機関の公平な判断割合も私が15%で向こうが85%(※註:の過失)。相手の方は任意保険に入ってないらしく、バイクの修理を全部私の方の保険で負担して欲しいと言う相手の方と私の保険会社とは当然話が折り合わず、しまいには私の家まで行くと言い出したそうなので、弁護士を立てました」。

 Мは、保険会社を通じて男性と話し合いを進めていたが、過失の割合について交渉が難航。Cは保険会社の担当者に大声を出すなどしたため、М側は弁護士に対応を任せることにしたという。Мは11月下旬、上司に「男性から携帯電話に直接電話があり怖い」などと相談していた。男性は読売新聞の取材に対して「事故について話し合いをしたいと思い事故の2日後に電話したことはある。Мの家は知らない」と話している。被害女性からの相談受けた勤め先の会社は防犯ベルを渡していたと云う。Мの自宅玄関は施錠されていたが、窓ガラスが内側から割られていた。
 2009年(平成21年)12月、次のように書いている。
 「家の門前に本人らしき人がうろついているのを見た。その後もかなり警戒して帰ってきています」
 「今週の月曜に家の門前にチャリで本人らしき人がうろついてるのを見たから、月曜はいろんな人を巻き込んで帰りが遅くなってしまい、その後もかなり警戒して帰ってきてます。最近の私は本厄女全開ですよ仕事も色々追われている中で、中堅営業員として失敗もしてしまい、ホントにヘコンデマス。マジで疲れてます」。
 2010年(平成22年)1月3日、この相手からの迷惑電話に悩まされていることを記載している。
 事件直前の様子は次の通り。女性宅前を男が自転車でうろついるのを目撃されている。大晦日10回、元旦7回、2日3回、3日2回のワン切り電話が女性宅にかけられている。失踪2、3日前に被害者アパートを指さしながら話をする2、3人の男たちが目撃されている。

 3.3日、約1時間に渡って被害者のアパート入口や廊下で男女の言い争う声を近隣住人が聞いている。

 3.5日、職場から帰宅。19時半ごろに女性の叫び声、女性を引き留めるような男の怒鳴り声が証言されている。
 3.6日未明、Мの自宅アパートから、女性の肩を抱えるようにして出てくる男の姿が目撃されている。女性はぐったりした状態だったという。福岡県警は、Мが抵抗できない状態で拉致され、殺害された疑いがあるとみて男の割り出しを急いでいる。

 3.6日午前2時頃、男が女性の肩を抱いてアパート玄関から出てきたのを近くの人が目撃していた。女性は足元がふらつき、まっすぐに歩けない状態で、男に引っ張られるようにして、アパート前の道路を南東の方向へ歩いていったという。その後、男が車で戻ってきてアパートそばの駐車場に停車。男は車を降り、諸賀さんが住んでいたアパートの2階に駆け上がったが、短時間で車に戻り、そのまま走り去った。助手席には、この女性が乗っていたという。
 3.6日、早朝、同僚が迎えに来るも応答なし。参加予定だったゴルフコンペに女性は不参加。携帯も通じず。自宅は玄関は施錠されており、ベランダの窓ガラスが内側から割れていた。(ゴルフバック転倒理由は不明)普段持ち歩くバッグ(玄関に置かれていた)財布、車の鍵、仕事用の携帯、車はそのまま荒らされたような跡はなし。被害者宅に血痕、尿の反応なし土足の形跡もなし。

 3.7日、家族が捜索願を出した。
 CはМの遺体発見後、当然ながら事情聴取を受けている。福岡県警担当記者Yは言う。
 「A子さんが生前に不安を訴えていたこともあり、捜査本部も入念に調べていました。とはいえ、Cは遺体を運搬する際に不可欠な車を所有しておらず、レンタカーや友人からの貸与の有無についての捜査を実施したところ、該当する結果は出なかった」。
 4.28日、事件発覚から約1か月後、Мの時計を質入れしていた福岡市在住の30代の男性Dが、別の物品についての窃盗容疑で逮捕された。捜査本部は沸き立ったが、Dは「パソコンを質入れしようとした際に、(時計を質入れしたのとは)別の質店の前で拾った」と証言し、その内容に矛盾がなく、Мとの接点もないことなどから事件とは関係ないとの結論が出された。
 以降、福岡県警は10年12.15日から1年間の期限を設け、懸賞金300万円(上限額)をかけた情報提供の呼びかけを始めた。このチラシには「福岡OL死体遺棄事件」との文字が大きく記されており、〈平成22年3月5日(金)の夜から、行方不明であった福岡市内居住のOL××さん=原文実名(当時32歳)が、3月15日以降、福岡市能古島、博多湾内において遺体で発見されました〉と書かれ、〈事件解決のため情報をお寄せください〉とある。画像としては遺体発見場所の地図と、A子さんの写真3枚が添付され、写真のうち1枚は防犯カメラ映像と思しき、グレーのパンツスーツ姿で財布を手に歩く彼女の全身写真で、キャプションには〈平成22年3月5日(金)/被害者が最後に目撃された際の服装/グレー系のパンツスーツ姿/体格162㎝・中肉・黒髪〉とある。この「公費懸賞金制度」の対象には、1年後の11年12月にも再指定されたが、有力な情報が寄せられることはなく、翌12年12月に再指定されることはなかった。
 2014.2月、交通事故の相手だったCが、Мとの交通事故の示談書1通を偽造したとして、有印私文書偽造・行使の疑いで逮捕された。この際もCの自宅が家宅捜索を受けているが、それ以上の新たな動きには繋がっていない。

【Мの身上書】
 被害者の父は元警察官、6人兄弟の長女。被害者は医療品会社の営業勤務で成績は優秀だった。

【事件現場の怪】
 Мの室内の状況について、風呂場の扉ガラスとベランダの窓ガラスの一部が割れていたことを除けば、室内は目立って荒らされておらず、とくに血痕や尿の付着は確認されていない。ところが、実際には室内で“あるもの”が発見されていたという。福岡県警担当のZ記者は言う。
 「М宅の浴室に、部位や大きさはわかりませんが、内臓の破片があったそうです。ただしその破片は、血液反応が出ないほどに洗われているとのこと。捜査本部では彼女が殺害されたときの内臓の一部と見ています。つまり、Мは自宅で殺されたと考えられるが、血液の反応が出なかったのです。室内からの排水管、土管などを徹底的に調べたけど、血液反応は出ず、殺して短期間でそこまで洗えるのかどうか疑問ではあるが、そうとしか考えられない、ということでした」。

 つまり、行方不明になった3月5日の夜から一晩の間に、Мが何者かによって室内で殺害され解体されたとすれば、室内に血液反応がなく、下水の配管などからも痕跡が残されていなかった、という奇怪さが生じている。
 合同捜査本部は、遺体発見時の潮流を計算して、遺体が漂着した地点から予測される投棄が行われた場所を割り出している。そこでも興味深い結果が出ていた。Z記者は明かす。
 「投棄されたのは博多湾に流れ込む御笠川だという見方がされています。お気づきだと思いますが、御笠川といえば、Мの自宅アパートのすぐ近くを流れています」。

 Мの自宅アパートから御笠川は、1本の道が隔てているだけの距離しかない。当初、メディアは、Мが室内から連れ出され、いずれかの場所で殺害、解体され、遺棄されたと見ていた。そのため犯行には、車両が必要不可欠であるとの思いもあった。しかし、М宅が殺害、解体の犯行現場であれば、車両を使わずとも目の前の御笠川から投棄が可能となる。そのことは車を持っていないCに対して疑いの目を向ける理由にもなる。ところが、これまで二度にわたる家宅捜索で血液反応などは検出されていない。

 この事件の今後の展望について、取材をしてきたZ記者が捜査員の心情を代弁する。
 「捜査については、これまでにやれることはやり尽くしたというのが、正直なところです。新たになにか別件で引っかかって、その犯人が自供しないかぎりは無理ではないか、という見方がされています」。








(私論.私見)