「酒鬼薔薇事件」書類の処分考

 (最新見直し2008.11.12日)

 (れんだいこのショートメッセージ)


 2004.3.19日 れんだいこ拝


 2022.10.20日、神戸新聞「少年Aへの歴史的判断を裏付ける文書「廃棄の理由不明」 尋常じゃない分量のはずが 神戸家裁」。

 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件で、神戸家裁が殺人容疑で逮捕され少年審判を受けた当時14歳の加害男性(40)に関する全ての事件記録を廃棄していたことが20日、同家裁への取材で判明した。

諸沢英道・元常磐大学長(被害者学)の話

 遺族らの活動の成果もあり、刑事罰の対象年齢が16歳以上から14歳以上に引き下げられるなど、少年法改正につながった歴史的な事件だ。後世に残すべき重要な記録を廃棄したことは重大なミスと言わざるを得ない。神戸家裁以外でも同様の事態が起こっている可能性がある。どのような事件を永久保存の対象とするのか、保存方法も含めて議論していく必要がある。

 「少年A」の逮捕から今年で25年。少年法を改正する契機になった神戸連続児童殺傷事件の記録が、全て「廃棄」されていた。神戸家裁によると、事件に関する文書は「一切残されていない」という。あの重大事件の記録が、永久保存となる「特別保存」にされなかった理由は分からない。最高裁は廃棄を認めつつ、経緯が不明として見解を明らかにしない。なぜ、保存する内規が存在したのに膨大な記録を捨てたのか。最高裁も神戸家裁も、調査する意向を示していない。 失われた事件記録は、ほかの文書に紛れてしまうような量ではなかった。取材に応じた神戸家裁の職員は「記録庫に行けばすぐ目についたんじゃないかと容易に想像できる」と語った。  神戸家裁で少年Aの審判を担当した井垣康弘元判事(今年2月に死去)が、退官後に著した「少年裁判官ノオト」によると、検察庁から送られてきた記録に限っても「書類だけで段ボール4箱、積み上げると高さ2メートル以上」あったという。少年Aの付添人(弁護人)の一人だった兵庫県弁護士会の工藤涼二弁護士(72)も「分量が尋常じゃない。5段程度の書庫がいっぱいだった」と話す。  そこには、一体どんな記録があったのか。  関係者によると、捜査関連書類だけでも、捜査復命書(報告書)▽供述調書▽実況見分調書▽押収物目録▽勾留状や逮捕状-などがあった。成人事件の場合は、検察官が選別して法廷で証拠申請するが、少年事件では取捨選択せず、全ての捜査記録を家裁に送るのが原則だ。  家裁で作成された資料も含め、保存されていれば文字通り、一連の捜査と少年Aに関する調査を詳細に検証できる記録だった。      ◇  神戸家裁は「所在不明」ではなく「廃棄された」とする。そう断言できるのは、事件記録を管理する「事件簿」の存在がある。家裁によると、神戸連続児童殺傷事件が起きた1997年の事件簿は、保存期間の20年が満了し、2019年2月25日に廃棄された。事件簿に記された事件記録の全てが廃棄済みでなければ、事件簿そのものを廃棄できない。97年の事件簿が廃棄されたのなら、連続児童殺傷事件の全記録が廃棄されたと判断できるという。  ただ、その事件簿が存在しないため、事件記録自体の廃棄時期は不明だ。少年Aが26歳に達する2008年までは保存されていたはずと、家裁職員は言う。「そうでなければ規定(内規)違反になりますから」  事件当時は既に、最高裁通達によって、重要な記録を永久保存する「特別保存」が運用されていた。通達には、その例として「全国的に社会の耳目を集めた事件」や「世相を反映した事件で史料的価値の高いもの」などが挙がる。連続児童殺傷事件がこれに当たらないのか。神戸家裁の職員に尋ねると「厳しい質問だ」と言葉を濁した。  神戸地検で、同事件の主任検事を務めた男性(69)=現在は弁護士=は記録の廃棄について「内規が掲げる永久保存の対象を見る限り、該当すると思われ、内規に抵触している恐れがある」と述べた。      ◆  改正少年法を考える連載「成人未満」の第3部は、少年事件の司法文書と保存のあり方を考えたい。  神戸連続児童殺傷事件の記録の廃棄が分かったのは、家裁に開示請求時の対応を尋ねたのがきっかけだった。公開が原則の裁判だが、少年審判は例外的に非公開だ。「ブラックボックス」の開示請求はどのように拒まれるかを確かめる趣旨だったが、「全記録廃棄」の事実は衝撃だった。  少年Aに対する歴史的判断を裏付ける文書の数々は、なぜ失われたのか。(霍見真一郎)
時計2022/10/20 12:41神戸新聞NEXT


 神戸市須磨区で1997年に、小学生5人が襲われ、2人が殺害された連続児童殺傷事件で、14歳で逮捕され、少年審判を受けた「少年A」の全ての事件記録を神戸家裁が廃棄していた問題で、家裁の担当者が20日、報道各社の取材に応じた。廃棄に至った経緯については不明としたうえで、当時の判断について「適切ではなかった」と改めて説明した。

 一般的な少年事件の捜査書類や審判記録は、少年が26歳に達するまで保存するよう規定。史料的価値や参考資料となるべきものと判断した事件については、最高裁の内規や通達で永久に保管する「特別保存」が定められている。

 神戸家裁の担当者は、廃棄された書類の詳細について「廃棄されているので不明」としつつ、一般的には、警察や検察から送付された捜査書類などが含まれるとした。廃棄の時期や判断理由、検討の過程などについても「不明」と繰り返した。

 その一方で、特別保存としなかった判断については「現在の運用からすると、(廃棄の判断は)適切ではなかった」と述べた。同家裁における特別保存の適用例は、家庭内の紛争などを取り扱う「家事事件」で3件あるが、少年事件ではないという。

(霍見真一郎、篠原拓真、小川 晶)

【神戸連続児童殺傷事件】1997年2~5月、神戸市須磨区の住宅街で小学生5人が次々と襲われ、2人が殺害された事件。中学3年で当時14歳だった「少年A」が殺人容疑などで逮捕された。刑罰の対象年齢を引き下げる法改正のきっかけとなった一方、犯罪被害者の支援に目が向けられる契機にもなり、2001年施行の改正少年法では、被害者に記録の一部の閲覧・コピーを認め、08年施行の改正法では、重大事件の被害者や遺族に少年審判の傍聴を認めた。兵庫県では心の教育を見直そうと、98年から中学2年での職場体験学習「トライやる・ウィーク」が始まった。

 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の全事件記録の廃棄について、神戸新聞は最高裁に事実関係を確認し、受け止めも取材した。最高裁の広報担当者への主な質問と、それに対する電話での回答は次の通り。(霍見真一郎)

 -神戸連続児童殺傷事件の記録が廃棄されていたことは、どの程度重く考えているのか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況は不明であり、当時の神戸家裁における廃棄の判断が適切であったかどうかについて、最高裁として見解を述べることは差し控えさせていただきます」

 -最高裁は、この事件の記録を廃棄するかしないかについて、神戸家裁から相談を受けた可能性を示す記録などはないか。

 「最高裁には、当該記録などはありません」

 -最高裁通達には、「世相を反映した事件で史料的価値が高い」「全国的に社会の耳目を集めた事件」「少年事件に関する調査研究の重要な参考資料になる事件」などとある。これらは、特別保存(永久保存)が適切に運用されるよう出した通達において、各裁判所が判断しやすいように挙げた基準と思われるが、間違いないか。もし違うのであれば、具体的にどこが違うのか指摘してほしい。

 「それらは、それぞれ特別保存に付して保存期間満了後も保存する必要があるか-の検討対象とするものの例示として挙げられたものです。事件記録等保存規程の運用通達で例示されている事件の記録に当たれば全て2項特別保存に付するという規律ではなく、あくまで保存裁判所が保存期間の満了後も保存するのが必要であると判断したものについて、2項特別保存に付するという趣旨です」

 -通達の基準は、神戸連続児童殺傷事件に当てはめた場合、最高裁として特別保存対象に該当すると考えるか、考えないか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況については不明であるため、最高裁としては見解を述べることは差し控えさせて頂きます」

 -今回の廃棄行為は、規程ないし通達違反の恐れはあるのか、ないのか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況については不明であるため、最高裁としては見解を述べることは差し控えさせて頂きます」

 -廃棄の経緯が「不明」であること自体が、最高裁として問題とは考えないのか。

 「個々の記録の廃棄の判断は、記録を保管する各裁判所において行っており、また、廃棄したことを記した記録を保存すべき取り扱いを定めた通達などはありません。したがって、神戸家裁において、本事件記録の廃棄年月日を記載した事件簿や廃棄に関する書類などが残っていないため、特別保存に付されなかった理由や廃棄された当時の状況が不明であることについて、最高裁として問題があったとは考えておりません」

 -廃棄は訟廷管理官が立ち会うことなどが定められており、こういった職員名だけでなく廃棄した可能性がある期間の神戸家裁の所長名も明確に分かる。当時の担当者や管理者に聞き取り調査する考えはないか。

 「特別保存の認定は、司法行政上の裁判所が行うことになりますので、仮に当時の職員に聴取したとしても、あくまで個人の記憶や見解の範囲にとどまるものと考えています」

 -最高裁として、神戸連続児童殺傷事件の記録廃棄は、「当時の運用」において、廃棄が不適切であったと考えるか、考えないか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況については不明であり、当時の神戸家裁における廃棄の判断が適切であったかどうかについて、最高裁として見解を述べることは差し控えさせて頂きます」

 「なお、現在各裁判所で定められている特別保存の運用は、以前重要な憲法判断が示された事件などの記録が、全国の裁判所において廃棄されていたことが広く報道されたことも踏まえ、最高裁が情報提供した特別保存に付すべき事件記録などの選定手順などが具体的に定められた運用要領も参考にして令和2年以降に定められたものです」

 「本事件記録が保存されていた当時は、事件記録等保存規程、および少年調査記録規程、並びにそれらの運用通達により、特別保存に付すための仕組みはあったものの、現在のような特別保存に付すべき事件記録等の選定手順などが具体的に定められた運用要領はありませんでした。当時、そのような具体的な運用要領がなかったことは問題であると考えられるため、そのような運用要領がない中で行われた本事件についての記録の保存の運用も適切ではなかったものと思われます」

時計2022/10/20 05:50神戸新聞NEXT


 明らかになった神戸連続児童殺傷事件の全記録の廃棄。最高裁は自らが永久保存の内規を作ったにもかかわらず、神戸家裁による廃棄の是非について「見解を述べるのは差し控える」と言及を避けた。さらに、廃棄の経緯が不明である点も「問題があったとは考えていない」とし、背景究明に消極的な姿勢を示した。

 最高裁によると、史料的価値が高い記録の永久保存を義務づける内規や、その運用を定めた通達は事件当時から存在した。通達は、永久保存の事例として「全国的に社会の耳目を集めた事件」などを挙げるが、最高裁は「検討対象の例示であり、該当すれば全て特別保存するという規律ではない」と説明。連続児童殺傷事件が永久保存に当たるかどうかを示さなかった。

 また、廃棄の記録を保存するよう定めた通達などはないとして、廃棄のいきさつが不明であること自体に問題はないとした。

 そのため、神戸家裁の当時の担当者に聞き取りなどを行う調査にも否定的な考えを示し、最高裁の広報担当者は「仮に当時の職員に聴取したとしても、あくまで個人の記憶や見解の範囲にとどまると考える」と述べた。(霍見真一郎)

     ◇

最高裁の通達違反は明らか

事件記録の保存や公開を求める運動を続けるジャーナリスト江川紹子氏(64)の話】あれだけの重大事件の記録がなくなったとは、本当に信じられない。50年後、100年後に日本の少年事件を振り返ったとき、この事件の記録は必ず必要になったはずだ。少年法を厳罰化していく流れを作った事件でもある。永久保存対象の基準に当てはまらないわけがなく、最高裁通達に違反しているのは明らかだ。司法文書は国民共有の歴史財産であるという認識が、裁判所の関係者に乏しいのではないか。「経緯は不明」で済む話ではない。外部の目も入れて、当時の担当者などに経緯を聞き取り調査し、どこに問題があったのか、きちんと明らかにすべきだ。

少年事件記録、原則保管を

司法文書の管理に詳しい龍谷大学の福島至名誉教授(69)の話】特別保存に認定されず、機械的に廃棄されたのではないかと推察できる。記録の保存は、原則非公開である少年審判で、手続きが適正に行われているということを担保する意義だけでなく、歴史的公文書として、広く後世の人が使えるようにする意義もある。神戸連続児童殺傷事件は、家族関係や報道のあり方も含め、社会に大きな影響を与えた。少年法改正前の手続きを検証する上でも記録は必要だったはずだ。記録は、決して法律家だけのものではない。現在、少年事件記録は、裁判所の内規で保存手続きが運用されているが、記録を原則保存と定める法律が必要ではないかと感じる。

 2022.10.20日、土師淳くんの父親・守さん『驚愕したとしか言いようがない…』神戸家裁が事件記録廃棄。
 25年前に神戸市内で起きた連続児童殺傷事件について、神戸家庭裁判所が少年審判を受けた「少年A」の全ての事件記録を廃棄していたことがわかりました。  1997年、神戸市須磨区の住宅街で当時11歳だった土師淳くんら5人の小学生が殺傷され、当時14歳だった「少年A」が逮捕されました。少年Aはその後、神戸家庭裁判所での少年審判を経て医療少年院に送致され、2004年に仮退院しました。  神戸家庭裁判所によりますと、少年審判の処分決定書や警察・検察の供述調書、精神鑑定書など、全ての事件記録を廃棄していたということです。中には非公開の審議過程を検証できる資料も含まれていたということです。  少年事件の捜査書類などは少年が26歳に達するまでの保存が定められていますが、最高裁の内規では史料的価値が高い場合や社会の耳目を集めた事件は永久保存を義務付けています。  今回の問題を受けて土師淳くんの父親の守さんがMBSの取材に応じました。  (土師淳くんの父親・守さん)  「最初に聞いた時はびっくりした驚愕したとしか言いようがないですよね。特殊なこういう事案においては、やはり後で検証が必要になってくることが多いと思うので、そういうためにも資料を保存しておくということは非常に重要なことだと思っています」  神戸家庭裁判所は、廃棄した時期や理由は不明とした上で、「当時の本事件の記録保存の運用は適切ではなかったと思われる」とコメントしています。当時の職員への聞き取り調査はしておらず、今後も実施する予定はないとしています。 
 神戸連続児童殺傷事件の全ての記録を神戸家裁が廃棄していた問題を受け、神戸市の久元喜造市長は
20日の定例会見で、同事件の記録について「当然、永年保存されるべきものだった」との考えを示した。同事
件に関し、久元市長は「世間を震撼させ、神戸市民に非常に大きな衝撃を与えた」と指摘。最高裁が史料的価
値の高い記録を永久に保存するよう通達を出していたことに触れ、「最高裁の考え方によれば、永年保存され
るべきだった。知りうる機会が永久に失われることについては大変遺憾で、ショックだ」と話した。(三島大一郎)

2022/10/27 22:22神戸新聞NEXT

【更新】少年A事件の全記録 2011年2月末に廃棄か 神戸家裁、旧システム調査で判明

1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件で逮捕された「少年A」=当時(14)=に関する全ての事件記録が廃棄されていた問題で、神戸家裁は27日、記録が廃棄されたのは2011年2月28日とみられると明らかにした。事件を管理する旧システムの複製データに、廃棄の日付が記録されていたという。

 神戸家裁は、当時の担当職員らに対する調査や被害者遺族への説明について「最高裁の有識者委員会の意見を踏まえて対応したい」とした。この問題では、神戸新聞が同事件の記録廃棄を今月20日に報じ、各地の家裁で重大少年事件の記録廃棄が判明。最高裁は25日、有識者委でこれまでの記録保存の運用を検証する方針を示している。

 家裁によると、旧システムのデータには97年~19年の9万件を超える少年に関わる事務的な事件の記録があり、25日に連続児童殺傷事件の廃棄日とみられる日付が分かったという。

 最高裁の内規では、一般的な少年事件の記録は、少年が原則26歳に達するまで保存すると決められ、史料的価値の高い記録などは事実上の永久保存となる「特別保存」とするよう定めている。連続児童殺傷事件の少年Aは08年に26歳になっていた。

 神戸家裁は20日に同事件での全記録廃棄を報道陣に説明したが、廃棄した時期や理由は「不明」としていた。同家裁は旧システムのデータについて「正式な書類ではないが、記録された日が廃棄日時の可能性が高い」と説明した。

 最高裁は重大少年事件記録の相次ぐ廃棄が分かり、全国の家裁に確認して特別保存された事件記録が15件あることを確認した。一方、連続児童殺傷事件のほかにも、00年の愛知県豊川市の夫婦殺傷事件や、04年の長崎県佐世保市の小6女児殺害事件など、各地で複数の重大事件の記録が廃棄されていたことが分かっている。(篠原拓真、小川 晶、井上太郎)

【少年事件記録の廃棄】1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件など、全国各地の家庭裁判所が、重大な少年事件の記録を廃棄していた問題。少年事件の記録は一般的に、審判の処分決定書に加え、検察や警察による供述調書、精神鑑定書、家裁調査官の報告書などが含まれる。成人の刑事裁判と異なり少年審判は非公開で、事件記録が失われると、審議過程の検証ができなくなる。少年事件記録は、保存期間が内規で原則「少年が26歳に達するまで」と定められ、それを過ぎると廃棄される。ただし、最高裁は運用に関する通達で、史料的価値の高い記録は永久保存(特別保存)するよう義務づけている。






(私論.私見)