事件その後1

 更新日/2018(平成30).11.18日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、「大阪中1少年少女殺人事件経緯2」を確認しておく。

 2015.08.22日 れんだいこ拝


【大阪中1男女殺害事件初公判までの事件の歩み】
 寝屋川中1男女殺害事件の主な経緯
【2015年】
8月13日 大阪府高槻市の運送会社駐車場で平田奈津美さんの遺体が見つかる
8月21日 同府柏原市内の竹林で星野凌斗さんの遺体が見つかる。府警は平田さんの死体遺棄容疑で山田浩二被告を逮捕
9月12日 平田さんへの殺人容疑で府警が山田被告を再逮捕
10月2日 平田さんへの殺人罪で大阪地検が起訴、死体遺棄容疑は処分保留
12月1日 星野さんへの殺人容疑で府警が再逮捕
12月22日 星野さんへの殺人罪で地検が追起訴、平田さんの死体遺棄容疑は不起訴に
【2016年】
9.30日
殺人罪で起訴された山田浩二被告(46)側が少女死亡への関与を認め、但し、殺意は否認する方針であることが関係者への取材でわかった。
10月 公判前整理手続きが始まる
【2018年】
5.10日
地裁は裁判の争点を整理する公判前整理手続きで精神鑑定の実施を決定。鑑定は昨年8月から今年1月まで行われ、この日、精神障害は認められない、但し障害の傾向があるという趣旨の指摘をし、それが「犯行の動機に影響した可能性がある」とも言及している。被告側は、鑑定結果を受け、刑事責任能力を争点とするか、慎重に検討するとみられる。精神障害は確認されなかったが、事件当時の刑事責任能力が裁判の新たな争点となる可能性が出てきた。
8月 2年半以上も続いていた接見禁止が解けた。
8.13日 事件発生から3年。特段の報道がない。
8月22日 第26回公判前整理手続きで、判決を含め計11回の公判期日が決まった。
10.16日 殺人罪で起訴された山田浩二被告(48)の弁護側が「熱中症と傷害致死」として殺害否認の方針を明かした。大阪地裁で11月1日に始まる裁判員裁判で、「男の子は熱中症で死亡した可能性がある」と主張し、女子生徒には傷害致死罪の適用を求める方針だという。殺害場所など事件の詳細は分かっておらず検察側にとって厳しい公判となる。
10.23日  2018.10.23日、殺人罪で山田浩二被告(48)が起訴された事件で、検察が殺害方法などについて起訴内容を変更していたことがわかった。当初の起訴内容では、星野くんの殺害方法や死因については特定されていなかったが、裁判を前に大阪地検は「何らかの方法によって首を圧迫し、窒息死により殺害した」などと起訴内容を変更する訴因変更を請求し、大阪地裁に認められたことが分かった。山田被告は27年8月13日夜、大阪府かその周辺で、平田さんの顔に粘着テープを何重にも巻き付けるなどして窒息死させて殺害し、同日ごろ、星野さんも何らかの方法で殺害したとして起訴されていた。
10月30日 公判前整理手続きが33回目で終了(「これまでに公判前整理手続きが計26回開かれた」との記事もある)
11月1日 大阪地裁で初公判
12月19日 判決公判(予定)
 ^ “『”名誉挽回”やるだけやって頑張る』寝屋川中1殺害事件の被告、知人への手紙に「裁判への意気込み」”. FNN.jpプライムオンライン. (2018年11月6日). https://www.fnn.jp/posts/2018110612163101KTV 2018年11月6日閲覧。

 
山田被告が裁判員裁判を前に知人に送った手紙には「I'm alone and Lonely…」と綴り、「検察は私を起訴・死刑にするのが仕事」、「裁判員に悪印象をもたれている。”名誉挽回”やるだけやって、裁判頑張るつもり」と裁判への意気込みなどが語られていた。一方で、これまでの取り調べで検察などに暴言を吐かれ国家賠償訴訟を検討しているとも明かした

【大阪中1男女殺害事件/公判前面会時の肉声】
 2018.10.26日付け「MBSニュース 」の「【特集】“面会200分”黙秘の被告が語ったこと 寝屋川中1男女殺害事件
 3年前、大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人が殺害された事件は、11月1日から、殺人の罪に問われている被告の男の裁判員裁判が始まります。被告は取り調べに対して黙秘を続けてきましたが、取材班は今年の8月からあわせて9回、拘置所で面会を重ねました。被告と交わした3時間以上にわたる面会記録から現在の被告に迫ります。
 逮捕から3年、初めての面会

 寝屋川市の中学1年生だった平田奈津美さん(当時13)と同級生の星野凌斗くん(当時12)。3年前の8月、駅前の商店街で行方不明となり、その後、別々の場所で遺体で見つかった。2人を殺害した罪に問われているのは、契約社員だった山田浩二被告(48)。これまでの取り調べに黙秘を続けてきた。一方で、2年半以上も続いていた接見禁止が解けた今年8月以降、山田被告は大阪拘置所で9回にわたってMBSの取材に応じた。

 初めて面会したのは、逮捕からちょうど3年となる8月21日だった。ドアの奥から警戒した様子で姿を見せた山田被告は細身で小柄、頭を丸刈りにしてマスクをかけていた。記者が名刺を見せると、山田被告はアクリル板に顔を近づけじっくりと確認したあと鋭い目つきで記者の顔を見据えながら座り、自分のノートに記者の名前を書き記した。山田被告が面会室に持ちこんだ大量のファイルには、事件に関する複数の新聞記事が挟まれていた。そして山田被告は壁に貼ってあったカレンダーに目をやると、落ち着いた口調で語り始めた。「きょうで捕まって3年ですよね。先週が命日です。面会は最初はするつもりはありませんでした。逮捕されてから弁護士の指示で黙秘しているので、伝えたいことがいっぱいあります」(山田浩二被告)。

 山田被告は弁護士の指示で黙秘していると説明した。記者が事件について尋ねようとすると…「今はそれは言えません。遺族のこともあるので、あまり世間を騒がせたくない。そっとしてほしい」(山田浩二被告)。事件については口をつぐむ一方、今の生活に関する不満を漏らした。「家族友人知人が面会に来てくれないし、差し入れもない状態。せやから服もここで借りたやつ」(山田浩二被告)。そしておもむろに立ち上がると、3年前から履いているという破れた下着を見せてきた。

 被告からの手紙

 この最初の面会の後、山田被告から一通の手紙が届いた。「平成最後の8月も終わりましたが、まだまだ厳しい残暑が続いています。如何御過ごしですか?」(山田被告からの手紙より)。一枚の紙が特徴のある文字でびっしりと埋め尽くされ、黄色いマーカーがひかれているところもあった。「公判でも黙秘を通すのか、それとも私の口から事件に対しての詳細やご遺族の方に謝罪の言葉を言うことになるのか等は今の段階では何とも言えません。私も今後罪と向き合う人生を歩みます。ご存じの通り、今回の事件は重大事件であり日本中の世間が注目するほどの公判になります。ましてこれまで完全黙秘を通してきてるだけに私の発言に対しても注目されるでしょう」(山田被告からの手紙より)。

 事件について口を閉ざす被告

 3年前の8月13日、大阪府高槻市の駐車場で寝屋川市の中学1年・平田奈津美さんが遺体で見つかった。平田さんには刃物で切られたような傷が30か所以上あり、粘着テープで顔を巻かれ手も縛られていた。この8日後、警察は2人が最後に確認された場所の防犯カメラの映像に映っていた不審な車から山田被告を割り出し、平田さんの遺体を遺棄した疑いで逮捕した。そして、山田被告が逮捕前に車で立ち寄った柏原市の竹林で同級生の星野凌斗くんも遺体となって見つかった。山田被告は逮捕直後の警察の取り調べに対しこう供述した。「同乗者が後部座席で女の子を殴り、知らないうちに死んでいた。同乗者の情報は言いたくない」(山田浩二被告・逮捕直後の取り調べ)。この翌日から山田被告は黙秘に転じ、事件について口を閉ざした。大阪地検は山田被告が単独で2人を殺害したとみて殺人の罪で起訴したが、これまでの捜査では犯人を特定する直接的な証拠は得られておらず、事件の経緯はほとんどわかっていない。

 真相は司法の場で明らかになるのか?

 面会を重ねるうち、山田被告は事件について少しずつ話し始めた。10月2日、6回目の面会。Q.逮捕直後の取り調べで「同乗者が女の子を殴った」などと話したのですか? 「あれはまあ…。しゃべったことはしゃべったけど、事実ではないですね」(山田浩二被告)。そして、急に小声になった。「いろいろ言われたんです。逮捕されたあとの移動の車の中で。どうしたらいいかわからなくて、言ってしまったんです。こわくなって自分でも何で言ったのかわからない」(山田浩二被告)。Q.同乗者は結局いたのですか?。「それは言えない」(山田浩二被告)。

 この日もこれ以上答えなかった。山田被告が逮捕された日。未明から捜査員が山田被告の車を追跡する中、星野くんの遺体が見つかった柏原市の竹林に立ち寄っている。いったいなぜ、星野くんの遺体があった場所に自ら行ったのか。8回目の面会となった10月12日、記者が切り出すと…Q.柏原の竹林に寄ったのはなぜですか?。「うーん」(山田浩二被告)。Q.なぜ寄ったんですか?。「具体的には話せませんけど」。

 こちらの質問には答えず、逮捕直前、除染作業に従事していた福島県から大阪まで戻ってきた理由を話しはじめた。「福島で報道を見ていたら全然違う。8月13日に被害者と私の間であった出来事は違うんですよ」(山田浩二被告)。被害者との間に一体何があったのか。結局、最後まで詳しく聞くことはできなかった。関係者によると、裁判で山田被告の弁護側は平田さんについては殺意を否認したうえで傷害致死罪にとどまると主張、星野くんについては熱中症で死亡した可能性があると主張する方針だという。事件の真相は司法の場で明らかになるのだろうか?

(私論.私見)
 このレポートの重要性は末尾の「QアンドA」にある。これを確認する。
「逮捕直後の取り調べで『同乗者が女の子を殴った』などと話したのですか?」。
「あれはまあ…。しゃべったことはしゃべったけど、事実ではないですね」、「いろいろ言われたんです。逮捕されたあとの移動の車の中で。どうしたらいいかわからなくて、言ってしまったんです。こわくなって自分でも何で言ったのかわからない」。
「同乗者は結局いたのですか?」。
「それは言えない」。
「柏原の竹林に寄ったのはなぜですか?」。
「うーん」。
「なぜ寄ったんですか?」。
「具体的には話せませんけど」。

 公判でも同様の質問があり、この時の発言と同様の陳述をしている。してみれば、こたびの「QアンドA」が模擬演習の役割を果たしていることになる。これを偶然と看做す向きもあるだろうが、私は、「これがマスコミの生態としての模擬演習の役割」を疑惑する。

【大阪中1男女殺害事件/初公判】
 2018.11.1日午前10時、3年2カ月前の2015(平成27)年8月に、大阪寝屋川市の中学1年生の同級生男女2人(平田奈津美さん(13)、星野凌斗さん(12))が遺体で見つかった事件で、殺人の罪に問われている山田浩二被告(48)の裁判員裁判が大阪地裁(浅香竜太裁判長)の大阪地裁で最も大きい201号法廷で開かれた。地裁には朝から傍聴券希望者が大勢集まり、地裁によると、一般傍聴席51席に対し435人が列を作った。

 明るい緑色のつなぎ姿で入廷した山田被告は大きく息をつき、被告席に座った。裁判長に「証言台の前にどうぞ」と促されて席を立った。そのまま証言台を通り過ぎ、検察官席の横にある仕切り板の前へ歩み寄り、突然土下座した。仕切り板の向こうには、被害者参加制度に基づいて公判に参加している平田奈津美さんと星野凌斗(りょうと)さんの遺族がいるとみられた。突然、「時間もらっていいですか、ご遺族の人いますね?」と話し出し、開廷後の冒頭で、遺族が座っているとみられる検察側席のついたてに向かって土下座し、涙を流しながら、「このたびは経緯はどうであれ、死の結果を招いてしまい、申し訳ありませんでした。ずっと謝りたかった」と謝罪した。裁判長が、「山田さん、またそういう機会があるから」とやめるよう再三注意したが、山田被告はさらに「本来ならご遺族の顔を見て謝罪すべきだが、遮蔽されているので、できません。けど声なら届くと思うので、もう一度言います」、「始まる前に、ずっと3年前の夏から伝えたくて」などと述べ、裁判長の「座りなさい、元の席に」の制止も聞かず、「病院に連れていけば良かった。ごめんなさい。本当にごめんなさい」と5分ほど、泣きながら遺族への謝罪発言を続けた。「山田さん、またそういう機会はあるから」と促されても「ずっと、お詫びがしたかった」と土下座し続けた。裁判長から「山田さん! 戻りなさい」と警告を受けても言葉を重ねた。裁判長が、指示に従わない場合は退廷を命じることを告げ、「そんなことしていると法廷にいられなくなっちゃうよ」と厳しく言われると、ようやく被告人の席に戻った。

 冒頭手続きが始まった。罪状認否で、裁判長が「平田さんの関係はどうですか?」と尋ねると、平田奈津美さんについて「(二人を)殺すつもりはありませんでした。ただ気が付いたら、私の手が平田さんの首に触れていました。そのときには亡くなっていたように思う」と説明、起訴内容を否認した。裁判長が、「星野君の関係はどうですか?」と尋ねると、「星野凌斗さんについては、熱中症で死んだ可能性がある。起訴状には殺人とあるが、殺意は全くありませんし、そのような出来事もありません」(「殺人とかなんだかんだありますけど、そんなことはありません」)と述べ殺意を否認した。

 検察側の起訴状によると、被告は同13日午後7時ごろから同11時10分ごろまでの間、大阪府またはその周辺で、平田さんの首を手などで圧迫するか、顔に粘着テープを何重にも巻いて、鼻や口をふさぐかして窒息死させた。同日ごろ、星野さんも何らかの方法で頸部を圧迫し、窒息死させた。その上で、他人の体液などを放置したと主張した。検察官が起訴状を朗読すると、山田被告はハンカチで口元をおさえて、すすり泣くような声をあげた。

 冒頭陳述によると、被告は15年8月13日朝、京阪寝屋川市駅近くの弁当屋で面識のなかった2人と出会い、車に乗せ大阪府柏原市へ向け移動。その後同市内のコンビニで粘着テープを購入。同日午後9時頃までに星野さんを殺害し、星野さんの遺体を大阪府柏原市の山中の雑木林に遺棄した上、午後10時半以降、同府高槻市内の運送会社の駐車場に侵入し、平田さんの遺体を他人の車の下に置き、刃物で切り付けてそのまま放置したと主張した。二人の遺体から睡眠導入剤の成分が検出されていたことを明かし、被告のスマートフォンには、「(睡眠導入剤の)ハルシオン、子ども、効き目」、「DNA鑑定、汗、死体」などというキーワードが検索されていた履歴が残っていたとして、犯人は山田被告以外にないと訴えた。だが、山田被告はその後、「殺すつもりはありませんでした」と起訴内容を否認した。

 弁護側は、女子生徒に関しては傷害致死罪、男子生徒については体調不良で死亡したとして保護責任者遺棄致死罪の適用を求め、刑事責任能力についても争う姿勢を示した。平田さんの死因をめぐって、家出を心配して声をかけると「遊びに連れて行って」と車に乗ってきたと説明。平田さんはその後も「家に帰りたくない」と騒いだため、被告が後部座席で口をふさぎ、気付くと手が首にあった。平田さんを頸部(けいぶ)圧迫で死亡させたことは間違いないが、こうした経緯で動かなくなったものであるとした。平田さんの体に刃物による傷が複数あったことについては「生き返らせたいと思い、ショック療法を思い出して、カッターナイフで切りつけた」としている。これにより、殺意はなく殺人罪より量刑が軽い傷害致死罪にとどまるとした上で、「被告は犯行当時、精神障害により心神耗弱状態だった」と主張した。

 星野さんの死因をめぐって、検察側は山田被告が首を圧迫して窒息死させたと主張。これに対し、山田被告が「車内で星野さんがたくさん汗をかいていることに気付き、平田さんの助言で睡眠導入剤を渡した後、何らかの体調不良で亡くなった」としていることを受け、弁護側は、「星野さんは被告の車内で体調が悪くなり、けいれんを起こし、動かなくなった。気付いたら息をしていなかった」と「何らかの体調不良で亡くなった」とし、救護措置をとらずに死なせた保護責任者遺棄致死罪の成立が相当と述べ、殺人の罪が成立しないと主張した。星野君の遺体を大阪府柏原市の山林に遺棄した際、8日後に発見された星野君の遺体は腐敗が進んでいて、死因は不詳。他殺かどうかもわからない状態だった。大阪府警は星野君の生前の健康状態を調べ、専門医の所見等から病死の可能性を否定することで、何とか他殺と断定するに至った。被告は、星野君の遺体の傍にコンドームやティッシュを周辺に置くという偽装工作をしたとされる。男子の服からは、死亡後に採取されたとみられる容疑者とは別人の体液が見つかっていたことも判明している。府警は、容疑者が第三者の関与を偽装しようとした可能性があるとみて調べているようであるが、未だ出てこない「第三者の関与」の方こそ本ボシである可能性が強い。
 さらに山田被告の弁護士は、事件の経緯をこう説明した。「深夜に2人を見かけ、友達にでもなろうかと『何してるの』と声をかけた。平田さんが『雨宿り』といい、帰る様子がなかったため、もしかして家出かなと思った。そこで、2人の写真を撮って話すネタにしようと思った。2人の家まで送ろうかと聞いたら、平田さんから『遊びに連れてってほしい』とせがまれた。そして、2人が車に乗り込んだ。平田さんは『京都に行きたい』と言い、星野君も賛同。だが、刑務所に行く用事があったので『無理、行かれへんから家まで送る』というと平田さんは『帰りたくない』と頑なに拒否。リアルに家出だと思った。平田さんは『寝屋川には戻りたくない、帰ったら車にむりやり乗せられた、おっちゃんにレイプされたって言うよ』と脅され、帰宅を拒否。そこで犯行となってしまった」。さらにこんな滑稽な主張を続けた。「平田さんの口をおさえ、クビに手をやると気を失ったので、仕事のためのカッターがあるのを思い出し、切ってショックを与えた。生き返るワケないなと、切るのをやめて戻った」。

 審理終了間際、立ち上がって裁判長に「ありがとうございました」と告げ、何かを言いたそうにしたが、制止され「すみませんでした」と頭を下げていた。
 8.21日、大阪府警が山田被告を平田さんに対する死体遺棄容疑で逮捕した。その後、9月、平田さんに対する殺人容疑で、12月、星野さんに対する殺人容疑でそれぞれ山田被告を逮捕した。但し、大阪地検は平田さんへの死体遺棄罪での立件は見送り、2人に対する殺人罪で起訴している。検察は、二人が死亡するまで一緒にいたのは山田被告以外あり得ず、被告しか二人の殺害に関与した人物はいないと立証する構えを見せている。これまでの公判前整理手続きは33回。12月19日の判決まで、計11回の公判が予定されている。

 捜査段階では事件の経緯がほとんど解明されていない。山田被告は平田さんについての死体遺棄容疑(嫌疑不十分で不起訴)での逮捕直後から完全黙秘を続けている。二人を殺傷させた凶器、二人のスマートフォンやバッグなど行方不明時の所持品等の物証が発見されていない。即ち山田被告が殺害したと示す直接証拠がない。目撃証言も乏しく、山田容疑者が二人に接触した時間や場所が特定されていない。事件の詳しい状況は明らかになっていない。殺害の動機も不明
である。平田さんの遺体を、すぐに発見されるような場所に遺棄した理由も分かっていない。二人の殺害順序も解明されていない。よって、「真相解明までの道は険しい」。検察側は防犯カメラの映像や山田被告の車から検出した血液反応といった状況証拠を積み上げ、犯人は山田被告以外にありえない、山田被告以外の第三者の関与が確認できないなどとと立証していく見込みだが、専門家は「殺人罪のハードルは高い」と指摘する。中学生2人の命が失われた事件の真相が、裁判でどこまで明らかになるのか注目される。近畿大の辻本典央(のりお)教授(刑事訴訟法)は「防犯カメラの映像などによると、被告は亡くなった2人と直前まで一緒にいたようだ」とした上で、「ただ、何らかの形で死亡に関与したのは間違いないだろうが、殺人罪で有罪とするには足りない。故意や殺害する動機を検察側が明らかにする必要がある」と指摘する。裁判員は事実認定と量刑判断を廻る難しい選択を迫られている。

 弁護側は、平田奈津美さんについては死亡にはかかわっていたものの殺意を否定し、傷害致死罪にとどまると主張。星野凌斗さんは何らかの体調不良により亡くなった可能性を挙げるなどして刑事責任は保護責任者遺棄致死罪の範囲に限定される、としている。
 被告人質問では、男子生徒の遺体近くに他人の体液が付いたティッシュを置いた目的を検察官に聞かれると数十秒絶句。「その時は他人のせいにしたいという気持ちが強かった」と釈明した。逮捕直後に「車の同乗者が女の子を殴った」と供述していたことに関して、公判では「頭が混乱していた。出頭するつもりだったのに逮捕されてパニックになり、そう答えてしまった」と説明、一転して虚偽だったと認めた。2人が死亡した状況について、「汗をかいて震え出した。反応がなくなった」、「大声を出され、口を押さえた手が首にいった。急に動かなくなった」との説明を繰り返した。論告で検察官から「荒唐無稽な弁解。(謝罪は)形だけのパフォーマンス」と非難されても、山田被告は「当時の記憶に基づいて本当のことを話した」と強調した。「果たして正しいのか、葛藤があった」。逮捕後、弁護士の指示で黙秘したことに対し、当時の心境を語った山田被告。事件を振り返り、「(被害者に)声を掛けなければこんなことにならなかった」と話した。
 その後の公判でも「拘置所でも2人のことを考え、月命日に手を合わせている」と強調。だが、遺族らはその弁明に怒りを覚えていた。

【山田被告の拘置所内証言】
 拘置所にいる山田被告はマスコミ取材班の問いかけにも事件についてほとんど語っていない。メッセージとして次のように述べている。
 「罪と向き合う気持ちで過ごしています。お祈りの本とかを読んでいます。事件のことはいっさい話せない。現時点では黙秘。黙秘イコール言えないことをやっているという世間のイメージもあるけど、そうじゃない」。

【大阪中1男女殺害事件/2回目公判】
 11.2日、2015年8月に大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害したとして、殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の裁判員裁判の第2回公判が大阪地裁であった。亡くなった2人の母親に対する証人尋問が行われ、事件の遺族が公の場で初めて発言した。2人の母親は法廷とモニターでつながれた別室で証言した。

 平田奈津美さんの母親は、検察側の質問で、事件3か月前の母の日、一緒にスーパーに出かけたことを振り返り、「『ママ、カーネーション買おう』と言ってくれた。天真らんまんで優しい娘だった」と振り返り、夜中に出歩き、事件に巻き込まれたことには、「普段から注意していたが、もっと言っておけばよかった」と悔やんだ。遺体の顔に多数の切り傷などがあり、粘着テープが何重にも巻かれていたことについて、「あの男は最低です。人間じゃないです」と強く非難した。弁護側が、声をかけられた平田さんが、山田被告に「遊びに連れていって」と応じたと主張していることに対して、「娘は人見知りで、知らない人とは話さない」と反論した。

 星野凌斗(りょうと)さんの母親は涙声で事件当時の状況を語った。星野さんが中学校でテニス部に所属するなど「持病はなく健康だった」と証言。体調不良とする弁護側の主張に対し、「事件前日も普段通りの様子で、体調に問題はなかった」と説明した。一部が白骨化した状態で見つかった遺体と対面した際の心境について「私の思っている凌斗じゃなかった。やっと帰ってきてくれたけど、望んでいた結果じゃない」と話し、すすり泣いた。

 平田さんの遺体は15年8月13日深夜に同府高槻市内の駐車場で見つかり、左肩から左腕にかけて多数の切り傷がつけられていた。被告の殺意を否認する弁護側は1日の冒頭陳述で、被告が口をふさぐなどして動かなくなった平田さんを「ショックを与えれば生き返る」と考えてカッターナイフで切った、と説明した。母親は平田さんの発見当時の遺体の写真を初めて見たのは、初公判を控えた今年10月になってからだったと説明。「かわいそうで、ずっと見られなかったが、あの子がどうやって命を奪われたのか親として知るべきだと思い、見ることを決意した」と振り返った。写真を見た時の心境を「口では言い表せない」とし、語気を強めて「あの男(被告)は最低です。人間じゃないです」と話した。

 尋問の間、山田被告は時折ハンカチを顔にあてて嗚咽(おえつ)の声を漏らした。


【「記者が感じる不可解」考】
 本事件担当記者が、「寝屋川中1男女殺害公判、現場の記者らが感じる『不可解』」記事を発信している。しかし、その内容たるや噴飯お粗末もので、そちらの方こそ不可解としたくなる代物でしかない。それによると、記者は、「全体的にお芝居じみていました。それも、出来損ないの三文芝居でしたね」と感じたと云う。この感じ方は良い。問題は芝居じみて感じた内実の方にある。その論調によると、弁護側の減刑作戦に対して違和感を述べているようである。即ち、平田さんの死に対して傷害致死罪の適用を求め、星野さんの死に対しては熱中症による病死と主張して争う姿勢を見せている。この「弁護士シナリオ」に違和感反応を吐露している。その違和感反応は良い。問題はその内実の方にある。

 本来は、山田被告の犯行であり得るのかどうかを疑うべきだろう。山田被告は、どういう事情によってかどうかまでは分からないが、本当の犯人の身代わりで容疑者請負をしている可能性がある。弁護士が本来の弁護業務に忠実であるなら、事件のこの闇の解明に向かうべきだろう。しかしながら、山田被告の犯行であることは明白とした上で減刑作戦に興じている。その意味では、検察側も弁護側もマスコミも「山田被告の犯行である」とする同じ土俵に上っていることになる。「本当の違和感」は、「山田被告の犯行である」とする同じ土俵の設定にこそある。この「事件及び裁判シナリオ」に対する違和感を覚えるなら分かるが、「山田被告の犯行である」とする同じ土俵の上で、無罪ないしは刑の減免を求める「弁護士シナリオ」に対してだけ違和感を覚えるものではなかろう。そのように感じる記者のお粗末さが透けて見えてくる話しでしかない。
 但し、後半の次の下りは良い。それによると、弁護士法第1条「弁護士は(中略)社会正義を実現することを使命とする」。弁護士職務基本規定第5条「弁護士は真実を尊重し、信義に従い誠実かつ公正に職務を行うものとする」。刑事訴訟法第1条「公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的とする」の条文を知らせ、次のように結んでいる。概要「弁護士が依頼人の要請に応えることは当然の義務であるにせよ、弁護士は真実追求の義務・公益に応えねばならない。黙秘は、被告の権利であるが、真実を知りたいと願う遺族の切実な思いも踏まえ、ゲーム感覚の駆け引きはやめ、公判が司法のあるべき『真実追求の場』であってほしいと切に願う」。これは真っ当な見解だろう。

【「土下座は十八番の鬼畜」考】
 2018.11.4日、「寝屋川中1男女殺害 山田被告の刑務所仲間が激白「土下座は十八番の鬼畜」【裁判ルポ】〈dot.〉」。
 大阪府寝屋川市の中学1年の男女生徒2人を2015年8月に殺害したとして、殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の裁判員裁判の公判が11月1日から大阪地裁で始まった。冒頭、検事が罪状を読み上げ、裁判長が山田被告に認否を尋ねると、山田被告は証言台の後ろでいきなり土下座。「このたび、経緯がどうであってもすいませんでした。ずっと謝りたかった」、「本来ならご遺族の顔を見て謝罪すべきだが、(山田被告が遺族の姿が見えないように)遮蔽されてできません。けど、声なら届くと思う」、「すぐに病院に連れていけばよかった。ごめんなさい」。こうして5分ほど、泣きながら遺族に謝罪した。裁判長から「山田さん、またそういう機会はあるから」と促されても「ずっと、お詫びがしたかった」と土下座し続ける山田被告。「そんなことしていると、ここにいられなくなりますよ」。裁判長が厳しくいうと、ようやく被告人の席に戻った。

 山田被告の起訴内容は、2015年8月13日午後7時~同11時10分ごろ、寝屋川市の中学校に通っていた平田奈津美さん(当時13)の顔に粘着テープを巻き付けるなどして窒息死させ、同日、同級生の星野凌斗(りょうと)君(同12)の首を何らかの方法で圧迫して窒息死させ、殺害したという罪だ。争点は平田さんへの被告の殺意の有無、星野君の死因と被告の殺意の有無などに絞られている。

 また、2人からは睡眠導入剤が検出されていたことを明かし、山田被告のスマートフォンには、「睡眠導入剤」「死体」「あせ」などというキーワードが検索されていたとして、犯人は山田被告以外にないと訴えた。だが、山田被告はその後、「殺すつもりはありませんでした」と起訴内容を否認した。

 弁護側は被害者2人について、それぞれ傷害致死罪と保護責任者遺棄致死罪の適用を求め、「被告は犯行当時、心神耗弱状態だった」と主張した。山田被告は平田さんについては、「気が付けば手がクビにまわっていた」と弁解し、殺人ではなく傷害致死罪だと主張。星野君については、熱中症で死んだ可能性があると無罪主張を展開した。

 さらに山田被告の弁護士は、事件の経緯をこう説明した。「深夜に2人を見かけ、友達にでもなろうかと『何してるの』と声をかけた。平田さんが『雨宿り』といい、帰る様子がなかったため、もしかして家出かなと思った。そこで、2人の写真を撮って話すネタにしようと思った。2人の家まで送ろうかと聞いたら、平田さんから『遊びに連れてってほしい』とせがまれた。そして、2人が車に乗り込んだ。平田さんは『京都に行きたい』と言い、星野君も賛同。だが、刑務所に行く用事があったので『無理、行かれへんから家まで送る』というと平田さんは『帰りたくない』と頑なに拒否。リアルに家出だと思った。平田さんは『寝屋川には戻りたくない、帰ったら車にむりやり乗せられた、おっちゃんにレイプされたって言うよ』と脅され、帰宅を拒否。そこで犯行となってしまった」。さらにこんな滑稽な主張を続けた。「平田さんの口をおさえ、クビに手をやると気を失ったので、仕事のためのカッターがあるのを思い出し、切ってショックを与えた。生き返るワケないなと、切るのをやめて戻った」。

 山田被告は、同月2日の第2回公判で、星野君の母親が生前の思い出を語ると、またタオルを目にあて天を仰ぎながら号泣。その声が法廷に響き渡った。だ

 が、山田被告と徳島刑務所で同じ工場、部屋だった元受刑者はこう話す。「法廷で土下座とニュースで見ました。またやっとるなというのが正直な印象です。徳島刑務所でも、勝手に人のモノを盗んで、山田が詰められて『お前の犯行やろ』と刑務官から言われていた。最初はずっと否定するも、そのうちこらえきれなくなりいきなり土下座して『すいません。ごめんなさい、許してください』と泣きながら言うのです。そんなことが何度もありました。山田は土下座したり泣いたりするのは十八番。そして、土下座した後は、平然としている。鬼畜ですよ。法廷で土下座のパフォーマンスをして、死刑を逃れたいのでしょう。裁判所、裁判員は騙されないでほしい」。

 検察によると、山田被告は、2人を殺害した後、大阪市北区の同性愛者が集うサウナ「D」に出かけ、なぜか他人が使ったコンドームやティッシュを持ち出した。星野君の遺体を大阪府柏原市の山林に遺棄した際に、コンドームやティッシュを周辺に置くという偽装工作をしたとされる。「山田被告はずっと取調べには黙秘。だが、過去の山田被告の犯行から他人に押し付けるため、同性愛者の仕業に偽装しようと置いたとみられる」(捜査関係者)。山田被告の法廷でのパフォーマンスが功を奏すのか? 初公判の翌日、証言した平田さんの母親は「あの男は最低、人間のクズ」と怒りをぶつけた。12月19日に判決は言い渡される。


【大阪中1男女殺害事件/3回目公判】
 2018.11.6日、大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害したとして、殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の2015大阪中1男女殺害事件裁判員裁判の第3回公判が大阪地裁(浅香竜太裁判長)であった。星野凌斗(りょうと)さん(当時12歳)の遺体の写真などを鑑定した法医学者2人の証人尋問があった。星野さんの遺体は長時間屋外に放置されて損傷が激しく、司法解剖では死因が特定できなかった。ただ検察側は起訴後、首の圧迫による窒息死と具体的に殺害方法や死因を示す内容に訴因変更した。解剖結果や遺体の写真を鑑定した近藤稔和・和歌山県立医科大教授は、星野さんの歯や頭蓋骨(ずがいこつ)について、首の圧迫などによる窒息死の際に特徴として表れるピンク色への変色があったと指摘した。この変色現象を研究してきた池田典昭・九州大大学院教授も、歯と頭蓋骨がはっきりピンク色になっていたと証言し、同様に首を圧迫されて窒息死した可能性を強調した。両名共に「首の圧迫による窒息死の可能性が高い」(「首を圧迫されたことによる窒息死と考えられる」)と証言し、「(星野さんは)車内で汗をかき始め、けいれんを起こして息をしなくなった」として熱中症などの体調不良で死亡したなどという弁護側の主張を否定した形となった。池田教授は「熱中症などでは頭部の鬱血は確認されにくい」と否定した。

 一方、車の下に置かれていた平田奈津美さん(同13歳)の遺体の左半身にあった約50カ所の切り傷について、弁護側は「生き返らせたいと思い、ショック療法として、カッターナイフで傷つけた」としていたが、近藤教授は「死後に車の下で切りつけられた可能性が高い」と証言した。

 起訴状によると、山田被告は大阪府内かその周辺で、27年8月13日午後7時ごろから同11時10分ごろまでの間、平田さんの首を手などで圧迫し、顔に粘着テープを何重にも巻き付けるなどして窒息させて殺害。同日ごろ、星野さんの首を何らかの方法で圧迫し、窒息死させたとしている。


【大阪中1男女殺害事件/4回目公判】
 2018.11.7日、殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の寝屋川中1殺害裁判員裁判の第4回公判が大阪地裁で開かれた。熱中症の専門家への証人尋問があり、専門家は星野さんについて、熱中症で死亡した可能性を否定した。弁護側は、星野さんは熱中症など「体調不良で死亡した」と主張。これに対し、出廷した帝京大の三宅康史教授(救急医学)は熱中症に関するデータや事件当日の府内の気温がそれほど高くなかったことを挙げた上で、星野さんは健康で、夏休み中も屋外で部活動をしていたと指摘。山田被告が星野さんらを乗せた車もエアコンが正常に作動する状況だった点などを踏まえ、「熱中症の危険性はほぼなく、命に関わるほどの熱中症に罹患(りかん)した可能性はない」と述べた。

【大阪中1男女殺害事件/5回目公判】
 2018.11.14日午前10時開廷。山田浩二被告の裁判員裁判の第5回公判が、大阪地裁(浅香竜太裁判長)で開かれた。山田被告はこの日、これまでより短くした丸刈り姿で出廷。1日の初公判では突然土下座し、裁判長の制止も聞かずに涙ながらに遺族らに話しかける場面があったことから、裁判長はこの日、証言台の前のいすに座るよう促した際、「山田さん証言台の前に座ってもらうんだけど、山田さん、この前のようなことはしてはダメですよ」と初公判で見せた“土下座パフォーマンス”を制止し、山田被告は「はい」と応じ、ゆっくりと証言台に向かった。

 被告人質問が行われた。次のようなやり取りになった。
 事件以前の状況については、福島県で除染作業員として働いていたが、盆休みを利用して大阪に帰省。事件当日は、夜遅くなったため実家には帰らず未明に寝屋川市駅に向かった。事件当日の15年8月13日未明、京阪電鉄寝屋川市駅の商店街付近で、事件で亡くなった平田奈津美さん(当時13)と星野凌斗(りょうと)さん(同12)を見かけた。
山田被告  「スマートフォンで写真をとるなどして声をかけた」、 「写真はアニメ好きとか、共通の趣味がある友達にこんな女の子がいると後でネタにするために撮った。女好きなところがあって」。「何をしているのかな、家出かなと思った」。
 事件当日に2人を車に乗せた経緯について、「(その後、家出かと思い、外は雨だったし、ちょっと家まで送ってあげてもいいなという思いで)家に送ろうか」と声をかけた。平田さんに「どこかに連れて行ってほしい」と言われたため「話の流れ」で2人を車に乗せた。車内に乗せてからは平田さんが「家には帰りたくない。京都に行きたい」と言い出した。だが、山田被告はその日、大阪刑務所での知人の面会の用件があり「難しい」と断った。これを拒否すると「警察に言う」と言われた。それでもせがむので、堺市の大阪刑務所で知人と面会後に京都に行くことにして用件が終わってからならと合意した。主に会話は平田さんと交わした。
 さらに、平田さんが無料通信アプリ「ライン」で友人とやり取りをしていたので「(警察に)通報されていると思って怖くなった」。「今から京都に遊びに行く」などと山田被告自身が考えた文面を打つように平田さんに頼んだ。
 星野さんの件について
 刑務所に向かう道中、星野さんの容態がおかしくなった。「暑いのに震えていたので、大丈夫かと何回か声をかけた。だが、平田さんが疲れているだけ、寝ればよくなると言うので、ハルシオン(睡眠導入剤)をもっていたので、それを飲むように3錠渡した。
 大阪刑務所で、山田被告は星野さんの様子が気になり、面会を短時間で切り上げて戻ってきた。車を移動させると、ほどなく平田さんが、「星野さんが息していない」と山田被告に星野さんの容体を告げたという。
弁護側  「車内での男の子の様子はどうでした?」。
山田被告  「体調が悪そうで、汗をかいていた。汗をガンガンかいていて、急に震えだして、寒くもないのに。平田さんに『寝たら治る』と言われ睡眠導入剤の錠剤を渡した。その後、星野さんは大量の汗をかいて震えだし、ぐったりした。女の子が『動いていない』と言ってきた」。
弁護側  「死んだとは思わなかった?」。
山田被告  「バックミラーで見て、息をしていない、死んだかなと思った」。
 普通なら病院に連れて行くか、119番通報をするのだが、山田被告はこう言った。「やばいと思って、病院行こうかと平田さんにいうと、大丈夫、連れて行ったらアカンといわれた」。
山田被告  平田さんから「隠したらどうか。私も手伝う」と言われて、車を大阪府柏原市の山中に走らせた。「(遺体を)(大阪府)柏原市内に隠そうと思った」。
弁護人質問  星野さんの遺体に粘着テープを巻き付けた理由は何ですか。
山田被告  「(遺体に)テープを巻いたりしたら(遺体が透明になって)消えてしまうと思い、コンビニで粘着テープやポリ袋を買った」。それで星野さんの両手を縛るなどして、雑木林に遺体を遺棄した。「一人でやったほうが早いと、平田さんの両手も縛った。だが、星野さんを引きずって遺棄しようとしたが、テープが外れたりしたので、平田さんにも手伝ってもらい隠した」。
山田被告  その後、平田さんの両手を再度、縛って車を寝屋川市に向かって走らせた。車中、平田さんと山田被告は会話したという。 「平田さんから一人にせんとってと言われた。星野君が初めての彼氏でずっと一緒にいたかったと話していた。一人にするなら、おっちゃんにレイプされたと無理やり車に乗せられたと警察に言うといわれ、そのうち平田さんが興奮して大きな声をあげはじめた」。
山田被告  そして、山田被告は高槻市の駐車場での平田さんの殺害状況について語りだした。「平田さんが声をあげるので、最初は指を口元において、シーってやっていた。だが、興奮してきて声が大きくなるので、自分の手を平田さんの口元にあてた。それを平田さんが体を左右に揺らせて、振り払う。そんなことが続き、何度目かの時、手が平田さんの口から、クビにいって、それで気が付くと動かなくなっていた」。山田被告は平田さんの遺体を横に駐車していた乗用車の下に隠したという。
山田被告  山田被告は、星野さんの遺体周辺に第三者の体液が付着したティッシュを置いた理由を「他人のせいにしたかった」と述べた。
検察側  山田被告が二人と出会った翌日、スマホで、「DNA鑑定」、「処理」などを検索し ていたことにつき、「検索記録があるけど、覚えていますか」。
山田被告  「記憶はないです」。
検察側  「そのあと、死体処理に関するサイトを閲覧した記録もありますが、記憶はありますか?」。
山田被告  「覚えていません。DNAのサイトを見ているうちにタップしたのではないですか」。
検察側  「体調不良で死亡したのなら、他人のせいにする必要があるのか」。
山田被告  「疑われたくない気持ちだった」。
 平田さんの件について
 被告人質問は弁護側から実施された。
山田被告  「高槻市の駐車場に着き、女の子に『帰ろう』と云う話はしましたが、『帰りたくない』と云われて、どんどん女の子の声が大きくなって、手で口を塞ぎました。そうこうしているうちに手が首に行ってました。急に動かなくなりました」。
山田被告  「ショック療法で生き返ると思い、カッターナイフで切りつけました。傷つけてショックを与えたらよみがえるんじゃないかと思った。よみがえれという一心だった」。
検察側  「生き返れと思ったなら、生き返ったか確認するのではないですか」。
山田被告  「見てないです」。
検察側  「平田さんの顔にガムテープが貼ってあるなら、生き返っても息ができる状態ではないですね?」。
山田被告  「そこまでは考えてなかった」。
 数日後、平田さんの顔には約50カ所もの傷がつくという無残な姿で発見されている。その後、山田被告は当時の勤務先、福島県に戻り除染の仕事を再開させた。そして8月20日、再度、大阪に戻ってきた。そして、星野さんが遺棄されている柏原市の現場に向かう。その前に山田被告が立ち寄ったのが、大阪市内の男性専門のサウナ「D」。「そこで、ごみ箱から他人の精液が入ったコンドームやティッシュをひらいました。柏原市の現場では、星野くんのズボンにコンドームを入れようとしたが、腐敗が進んでいたので、近くにコンドームやティッシュペーパーを置くだけにした」。
 検事からなぜ、そのような行動をしたのかと問われると、山田被告はいったん「無我夢中だった。ワケがわからず、遺体を置いてその場を離れた」と答えたが、再度の質問に30秒以上沈黙。1分近く黙ったまま。ようやく口を開いた。「他人のせいにしたいという気持ちが強かった」と“偽装工作”を認めた。

【大阪中1男女殺害事件/6回目公判】
 11.15日、殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の裁判員裁判の第6回公判が大阪地裁(浅香竜太裁判長)であった。山田被告の精神鑑定をした医師2人の証人尋問があり、弁護側が事件に影響したと主張している発達障害の有無について、見解が分かれた。

【大阪中1男女殺害事件/7回目公判】
 11.19日、山田浩二被告(48)の裁判員裁判の第7回公判が大阪地裁(浅香竜太裁判長)で始まった。被告人質問が行われ、検察側が「わいせつ目的で2人に声を掛けたのではないか」と質問したが、山田被告は明確に否定した。

 被告人質問で、逮捕直後に「車内に同乗者がいた。同乗者が女の子を殴るなどした」などと供述したことについて、検察は山田被告が2015年8月21日に逮捕された時の取調べでの発言についてこう切り出した。
検察  「平田さんの死体遺棄で逮捕された直後、その時に車の中にもう一人の男の同乗者がいて、女の子を殴ったり、セックスしていた。その人物の犯行だ。女の子は知らないうちに死んでいたという供述しましたね」。
山田被告  「結論として、そう言ったことは間違いない。ウソを言ってしまった」。「共犯者はいない、単独犯行だ」。「当時は頭の中が混乱していた。出頭するつもりだったのに逮捕されてパニックになった。(取り調べでは)自分でも何と答えていいか分からず、そう答えてしまった」。供述が虚偽だったと認めた。
 大阪府柏原市内の竹林に星野さんの遺体を放置する際、スマートフォンで「DNA鑑定」などと検索していたことについて、「自分のよだれが星野さんの服に付いたから」と説明した。

【大阪中1男女殺害事件/8回目公判】
 11.20日、山田浩二被告(48)の裁判員裁判の第8回公判が大阪地裁(浅香竜太裁判長)で始まった。遺族の意見陳述があり、平田さんの母親が次のように述べた。(「寝屋川市の中1男女殺害事件 遺族「謝罪するくらいなら娘を返して」」参照)
 「奈津美はとても動物が好きな娘でした。ハムスターをとてもかわいがっており、餌をあげたり、かごを洗ってあげたりしていました。外食に行くにも、外出用の小さなかごに入れてハムスターを連れて行っていたくらいです。毎年、奈津美の誕生日には、好きな手巻きすしを作ってあげていました。それをおいしそうに食べてくれる姿は、もう見ることができません。それでも、奈津美の誕生日には「食べたがっているかな」と思い、手巻きすしを作ってあげています。小学校で親子レクリエーションがあったときに、手作りのクッションと手紙をもらいましたが、恥ずかしかったのか「読んだらダメ」としまってしまいました。事件の後、その手紙が出てきました。「ママありがとう、ママの子供で良かった、そしてこれからもよろしく」と書いてありました。涙が止まりませんでした。もう何もしてあげられないのにと思うと、苦しくて、悲しくて、悔しい、とこみ上げてきました。中学校に入学して制服を着たとき「上着の袖が長い」と言いました。私は「3年生まで着るから、その頃までにはちょうど良くなるから」と言いましたが、その制服も3年間着ることはできませんでした。本当に辛いとき、とても会いたい時、制服を抱きしめて娘の名前を呼びます。「なっちゃん、まだまだいっぱいしたいことがあったよね、学校にも行きたかったよね、家に帰ってきたかったよね、本当に悔しかったよね」。そう言って娘によく話しかけるんです。毎日毎日あの娘のことが思い出されます。事件から3年間、奈津美のことを思い出さない日は1日もありませんでした。そして、これから先もずっと同じような毎日を過ごすのだと思います」。
 「奈津美を奪ったあの男は本当に憎い。言葉には言い表せないくらいです。奈津美がいなくなって2、3日後、奈津美と会いました。冷たいベッドの上に寝ていました。「なっちゃん、なっちゃん」と何度も声をかけましたが、何も言いませんでした。その時は、なぜ、なぜ、そういう思いだけでした。その後、私は弁護士についてもらいました。あるとき、弁護士から、奈津美の遺体の写真などを見るかと聞かれました。迷いましたが(見ることを)決心しました。奈津美のためにもという気持ちでした。そして、遺体が見つかったときの状態、あの男が奈津美にしたこと、全部見ました。それらを見ようと決心するまでの私の気持ちが分かるでしょうか。写真で見た顔には、何重にも何重にも巻かれた粘着テープ。体の左側には数え切れない切り傷があり、特に左腕の傷は大きく裂けていました。ショックを受けると同時に、怒りがこみ上げてきました」。
 「奈津美は私たちにどれだけ助けを求めていたのでしょうか。ママ、パパ、助けて、助けて、と何度も心の中で叫んでいたと思います。奈津美は、あの男にも言っていたかもしれません。心の中で「助けてください」、そう叫んでいたかもしれません。でもあの男は、奈津美を殺しました。私はこの裁判で、奈津美があの男にされたこと、そして奈津美がどういう風にして亡くなったのかを知ってもらいたいのです。あの男のしたことは、人間のすることではありません。あの男は殺す気はなかったとか嘘ばかり言っています。私は、絶対にあの男を許すつもりはありません。謝罪をしてほしいとも思いません。謝罪するくらいなら、私の奈津美を返してほしい、元気だったあの頃の姿にして今この場所に連れてきてほしい、それだけしか望みません。

 裁判が始まった日、テレビであの男のイラストを見ました。土下座して涙を流していた、ごめんなさいと言っていたと知り、さらに腹が立ちました。あの男のしたことは、少しでも自分の罪を軽くしたいためのただのパフォーマンスです。その後の主張も、本当に腹が立つばかりでした。自分に都合の悪いことをすべて奈津美のせいにしています。まったく罪の意識、反省の心がありません。せめて、「私が2人の命を奪いました。死をもって償います」と言ってくれたら、真実を話してくれたら、私たちにも伝わってきたと思います。私は、あの男に死刑判決がくだされることを強く強く望みます。できれば、私たちの手で奈津美がされたのと同じことをしてやりたいと思います。裁判官と裁判員の皆さんには、私たちの思いと奈津美の無念を分かっていただきたいです」。


 星野さんの母親は「(子供を)ただ返してほしい」と悲痛な様子で訴えた。主な内容は以下の通り。
 「凌斗は本当に優しいお兄ちゃんです。私が夕方に仕事から帰ると、妹と遊んでくれていました。事件が起きた後、妹たちから初めて聞いたのですが、夜、先に子供たちが同じ部屋で寝るとき、凌斗が幼い次女の体をトントンして寝かしつけていたそうです。そんな妹思いの凌斗は今はいません。家に居がちだった凌斗が、夏休みの少し前から少しずつお友達と外で遊ぶようになり、うれしく思っていました。お友達の家でのお泊まりも、このころから少しずつ行くようになりました。お泊まりするときは必ず私に伝え、必ず帰ってきました。私も、凌斗が約束を守るのであればお友達との時間も大切だと思い、夏休み中は、お泊まりすることを許していました。それが、まさかこんなことになるなんて全く考えていませんでした。8月12日の夜、奈津美ちゃんに会いに行った凌斗を送り出しました。凌斗は普段と変わらない笑顔でした。これが私の見た凌斗の最後の笑顔です。15日、高槻の事件を知りました。それでも、凌斗とすぐには結びつきませんでした。周りからの色々な情報に「凌斗と関係ない」と自分に言いきかせました。凌斗のことで頭がいっぱいになり、眠ることもできなくなりました。霊能者の所も尋ねました。とにかく元気に帰ってきてほしいという一心でした。16日、高槻の事件の女の子が、奈津美ちゃんだと分かりました。凌斗が同じ目にあっていないか、怖い思い、痛い思いをしていないか。それでも私は、凌斗は生きていると信じ続けました。私は帰ってからの凌斗との生活のことばかり考えていました。いや、考えるようにしていたのだと思います。ここから先の記憶は無くなっています。自分が何をしていたのか、何を考えていたのか。凌斗を警察に迎えに行ったことは覚えています。私が迎えに行ってあげないと。その思いだけです。そして、凌斗が私の元に帰ってきてくれたことに、本当に安心しました。変わり果てたわが子を、それでもいとおしかった。本当に帰ってきてくれたと喜びさえ感じました。でも、それは私自身が崩壊していたのです。日を追うごとに、こんな結果なんて望んでいなかった。生きて帰って来ることしか望んでいなかったのに、という思いがこみ上げてきました。地獄の始まりです。朝、子供たちの名前を順番に呼び起こします。思わず「凌斗」と呼んでしまいます。それが、当たり前だったのですから。日常に、当たり前にわが子の名前を呼ぶことさえ、あの日から奪われました。これがどれほどの苦しみか。私は生きていることの方が苦しいです。なぜ? なぜ凌斗だったの? 3年間が、その繰り返しです。凌斗がいれば、高校1年生。高校生を見かけたら探してしまいます。凌斗がいるんじゃないかと。法廷に立っている今も凌斗が帰ってくるのではないかと、どこかで思っているのです。凌斗の夢をみて目が覚めることがあります。夢なのか現実なのか分からなくなります。目が覚めてからの現実につぶされそうになります。事件のことを何も聞きたくない、知りたくない。これが本音です。被告人の言い訳だけを聞かされることは苦しみでしかありません。私が事件の内容を聞いたからといって、結果が変わるわけではありません。私が裁判に出ているのは、私が母親として今できることは裁判に出ることしかない、という思いからです。ただ凌斗の母親でいたいんです。初公判の日に被告が土下座をして謝ったことを後で知りました。私はその場にいなかったのです。そのことを聞いて、被告はただただ自己愛が強い人間で、自分が満足するためだけのパフォーマンスをしたとしか思えず、全く心に届くものではありませんでした。被告の言い訳は被害者への配慮が全くなく、自分のことしか考えていません。勝手な話を聞く度に、嘘をついているという思いが強くなりました。苦しみに終わりはありません。時間など解決してくれません。私の心の穴は、凌斗という穴なのです。凌斗以外に埋めることなどできないのです。「返してほしい」それ以外、何もありません。本当に、ただ、返してほしい。それ以外、考えられません」。
 この日は3日目となる被告人質問が行われ、山田被告は「自分が2人に声を掛けなければ、こんなことにならなかった。申し訳ありませんでした」と改めて遺族に謝罪した。

 弁護側の被告人質問では、山田被告が取り調べの違法性を訴えた。逮捕後に刑事や検事らから「死ね」などの暴言を浴びせられた、「逮捕されて警察の車で、刑事から脅されたというのか『お前しばらく出られへんぞ、取調べ、徹底的にいったるから』とか『大阪府警の前はマスコミいっぱい、明日のニュースはお前のことばかりや』と言われて、テンパってしまった。大阪府警の前で写真のフラッシュたいていた光がすごかった。なんでこんなことなったのかと思い、ウソを答えてしまった」と主張し、「一言でいえば違法」、「ごっついひどいことを言われた」、「思い出すのもつらい」と述べた。弁護側は公判でこれまで違法捜査などは主張していない。逮捕後は弁護人の指示で黙秘したと明かし、「それが正しいのか葛藤があった」と当時の心境も語った。一方、検察側は、被告が事件後も通天閣や千葉県のカレー店を訪れたと指摘。山田被告は、過去に未成年者を監禁するなどの事件を起こしたことを問われると、「どんな事件かも記憶にない」などと述べた。
 公判で検察は山田被告の過去の前科、犯歴を捜査報告書として明かした。1991年から2002年にかけて、山田被告は少なくとも7回に渡り、自分より年下の未成年の男性に対して、わいせつ事件を起こしているという内容だ。2002年には2月から3月にかけて5件も連続して、わいせつ事件を起こしている。例えば2002年3月30日の事件は、大阪府寝屋川市で道を聞くふりをして、14歳の男性を自分の自動車に誘い込んだ。カギを閉めて車を発進させ、手錠をかけた。果物ナイフを突きつけて、現金を奪い、顔にガムテープを巻き付け目隠しをして着衣を脱がせて下半身を写真撮影するなどし、3時間半にわたって監禁したというもの。検察が明かした犯行は多くが通りすがりの未成年者に声をかけ、言葉巧みに車に連れ込み、暴行したりナイフなどで脅し、ガムテープなどで動けなくして監禁。金品を奪い、わいせつ行為に及ぶという似た手口だ。今回の事件も、2人の遺体の顔はガムテープが貼り付けられていた。山田被告が車にカッターナイフやガムテープを所持していたこともわかっている。それを踏まえて検察は山田被告に「今回ね、平田さん、星野さんに声かけた、あなたは心配だったからと言いましたね。危害を加えるつもりで声かけたんじゃないですか?」と問うと、山田被告は「そそそそそ…」とどもるばかりで、答えが出ない。ようやく「それはないです」と答えた。さらに検察に「2人にわいせつ行為をしようとしたのでは?」と問われると、山田被告は「ありません」と答えた。

【大阪中1男女殺害事件/9回目公判】
 11.21日午前10時頃、大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害したとして殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の寝屋川中1殺害事件裁判員裁判の9回目公判。これが結審となった。上下緑色の服装で入廷した山田浩二被告は、裁判長の方を向いて深々と一礼すると、落ち着いた様子で検察側の論告に静かに聞き入った。

 検察側は、論告求刑で、山田被告が初公判で土下座して謝罪をしたことを「形だけのパフォーマンスにすぎない」と突き放し、概要「山田被告の供述は荒唐無稽。身勝手な犯行で、強い非難に値する。犯行は極めて残虐かつ悪質」として死刑を求刑した。検察側論告では、遺体のうっ血の痕跡や歯や骨の変色から、2人の死因は首の圧迫による窒息死と説明。「被告は首の圧迫を死の危険性が高い行為だと認識していたはずで、殺意は明らかだ」と主張した。犯行動機の解明につながる証拠は乏しかったが、星野さんについて、事件当日に知り合ってある程度の時間を一緒に過ごしたことから「何らかのトラブルが生じたことは合理的に推認できる」と指摘。男子生徒が突然死したとする山田被告の主張を「被告人の供述はウソで、到底信用できない。何らかのトラブルが起こり、殺害したと考えるのが合理的」と強調。遺体の写真を鑑定した法医学者2人の所見を引用し、「殺意をもって首を数分間しめ続けたことに合理的な疑いはない」と述べた。

 平田さんについては「平田さんを帰せば星野さん殺害がバレる。星野さん殺害を隠す口封じのため、殺害したと合理的に推認できる」とした。量刑については、被告に発達障害の傾向はあっても完全責任能力があったとして精神障害が犯行に影響を与えたとする弁護側の主張も否定した。「生命への敬意がみじんも感じられず、2人を殺した中でも極めて重い部類」のケースだと非難。「被告は荒唐無稽で矛盾に満ちた答弁を続け、更生は困難」、不合理な弁解で「責任逃れに終始している」として極刑を求めた。また被害者参加制度に基づき、各遺族を代理する弁護士もそれぞれ死刑を求める意見を述べた。

 一方、弁護側はこの日午後に最終弁論を行った。山田被告のASD(自閉症スペクトラム)こそが問題と主張。星野さんについては「体調不良で亡くなった」として無罪、被告が救護措置をとらなかった保護責任者遺棄致死罪に当たると反論。平田さんについては、車内で「自宅に帰りたくない。帰るなら警察に言う」と大声を出されたことなどから、「口をふさぐうちに誤って首を押さえてしまったとして、殺意はなく傷害致死罪にとどまる」、「ASDのパニック障害により、計画性なく偶発的な犯行によるものだ」と主張し、山田被告の罪は殺人ではなく心神耗弱状態での傷害致死罪の適用を求め、懲役12年が相当と訴えた。さらに、出廷した精神科医の証言などを踏まえ、犯行当時は心神耗弱状態だったと主張し、今月1日の初公判で土下座して謝罪した被告は被告人質問でも改めて事件の反省と遺族への謝罪を表明するなど反省を深めているとして、寛大な刑を求めた。弁護士が最終弁論中、何度も天を仰ぎ涙した。

 山田被告が「もう一人の男がいて、その人物の犯行だ」と供述し、共犯者の有無が大きな謎だったが、検察は山田被告の単独犯行と断定し、殺意があったと主張した。検察は、山田被告が2015年8月21日に逮捕された時の取調べでの発言についてこう切り出した。「平田さんの死体遺棄で逮捕された直後、その時に車の中に同乗者がいて、女の子を殴ったり、セックスしていた。女の子は知らないうちに死んでいたという供述しましたね」。すると、山田被告は、「結論として、そう言ったことは間違いない。ウソを言ってしまった」と述べ、「共犯者はいない、単独犯行だ」と認めた。

 2015年8月21日、山田被告は福島県の除染作業の仕事から大阪に戻ってきた。「ニュースでも事件のことが出ていて、高槻署に出頭しようとしたが、一人で決めれないので当時、交際していた女性に相談した。それが彼女と一緒に車に乗っていた時に大阪府警に逮捕されたので、出頭できなくなった」とパニック状態に陥ったのが、ウソをついた理由だと主張した。そして、山田被告はこうも反論した。「逮捕されて警察の車で、刑事から脅されたというのか『お前しばらく出られへんぞ、取調べ、徹底的にいったるから』とか『大阪府警の前はマスコミいっぱい、明日のニュースはお前のことばかりや』と言われて、テンパってしまった。大阪府警の前で写真のフラッシュたいていた光がすごかった。なんでこんなことなったのかと思い、ウソを答えてしまった」。大阪府警の「脅し」もウソの供述につながったと訴えた。

 また、大阪府警の取調べについて、「ごっついひどいこと、言われた。一言でいうと、違法な調べだ」とも述べ「違法捜査」とも反論した。

 検察は、山田被告の過去の前科、犯歴を捜査報告書として明かした。1991年から2002年にかけて、少なくとも7回に渡り、自分より年下の未成年の男性に対してわいせつ事件を起こしている。2002年には2月から3月にかけて、5件も連続してわいせつ事件を起こしている。例えば2002年3月30日の事件は、大阪府寝屋川市で道を聞くふりをして、14歳の男性を自分の自動車に誘い込んだ。カギを閉めて車を発進させ、手錠をかけた。果物ナイフを突きつけて、現金を奪い、顔にガムテープを巻き付け目隠しをして着衣を脱がせて下半身を写真撮影するなどし、3時間半にわたって監禁した云々。今回の事件も、2人の遺体の顔はガムテープが貼り付けられていた。山田被告が車にカッターナイフやガムテープを所持していた。それを踏まえて検察は、山田被告に、「今回ね、平田さん、星野さんに声かけた、あなたは心配だったからと言いましたね。危害を加えるつもりで声かけたんじゃないですか?」と問うと、山田被告は「そそそそそ…」とどもるばかりで、答えが出ない。ようやく「それはないです」と答えた。さらに検察に「2人にわいせつ行為をしようとしたのでは?」と問われると、「ありません」と答えた。

 2人の遺族は、意見陳述で山田被告の初公判の土下座の謝罪についてこう話した。「土下座はパフォーマンスだ、(遺族の)心に届かない」、「悲しくて、悔しくて、死刑にしてほしい。山田はまったく反省がない」と悲壮な声で訴えた。

 山田被告は、死刑求刑にも表情を変えなかった。裁判長から「最後に述べたいことは?」と促されて述べた最終意見陳述では、「述べたいことを言います」と小声で切り出した。証言台で数分間、うつむきながら話した。ハンカチを左頬に添え、「平田さん、星野君に対しては、申し訳ない気持ちでいいい、いっぱいです。昨日(20日)と2日目(2日)のご遺族の方の話を聞いて、2人のお子さんが本当に、あ、あ、愛されているとよく分かりました」と話した。遺族に対しては「聞きたくない話ばかりだったと思う」、「表現の仕方が悪かったところもあった」としながらも、「法廷では当時の記憶にもも、基づいて本当のことを話しました」と強調した。「最後に、本当にももも申し訳ありませんでした」と、吃音症患者のように、しどろもどろで改めて謝罪の言葉を口にした。自らの公判供述を「表現の仕方が悪かった」と弁明した。吃音症患者のように、しどろもどろで謝罪した。山田被告は普段、冗舌にしゃべる一方で、主張したいことが多すぎて頭の中の整理がつかないためなのか、「まままま…間違いないです」、「そそそそ…それはない」などと話す場面もあった。判決は12月19日に言い渡される。

 山田被告が最終意見陳述をして結審した。目撃者のいない密室で敢行された殺人の判決は12月19日に下される。


【山田被告の朝日新聞記者面会時の発言】
 (「『一審で終結「無理でしょ』 死刑の被告、判決前に語る」参照)

 12.7日、山田被告は、大阪拘置所(大阪市都島区)で、朝日新聞記者の面会に応じ、自らに下される判決の見通しをこう語った。
 「『判決は死刑か無期か、有期のどれかだと思う』。面会時間は30分。法廷ではたびたび言葉を詰まらせた被告は、落ち着いた様子で淡々と話した。大量の証拠書類のファイルを面会室に持ち込み、時折いすから立ち上がって記者に書類を示すこともあった。

【山田被告の読売新聞記者面会時の発言】
 12.12日、山田被告は大阪拘置所(大阪市)で読売新聞記者と面会し、「公判でうそは言っていない」ことを強調した。逮捕後はほぼ黙秘し、11月1日の初公判では遺族に向かって土下座した。検察側から「パフォーマンスだ」と批判されたが、「あふれる思いがあったからだ」と反論していた。

【今西憲之記者の面会報告】
 「死刑判決の山田被告 獄中で土下座真相を激白「パフォーマンスやない」 寝屋川中1男女殺害〈dot.〉」参照。

 12月中旬の頃、今西憲之記者が、山田被告が収容されている大阪拘置所で複数回、面会した。多くのマスメディアが山田被告に面会を求める中、回数は1日1回。法廷と同じ、上下緑色の作業着のような姿。椅子があるにもかかわらず座らず立ったまま。マスコミ報道の記事のコピーを差し出した。ニュースで報じられている内容が気に入らないようで、ひたすらマスコミの悪口をまくしたてた。厚生労働省の元次官で大阪地検特捜部に逮捕されるも無罪となった村木厚子さんの戦いを記した今西憲之記者の著作「私は無実です 検察と闘った厚労省官僚村木厚子の445日」(朝日新聞出版)を手にしてこう筆者に求めてきた。「検察の取調べはひどい。どうせ死刑だとか平気でいう。取調べは録音録画されており、それ見てくれたら違法な調べがわかる。この本のとおり、検察はひどいので、それを書いてくれ」。村木さんの無罪と同列に論じるのは「到底、無理だ」と説明すると、「結局は検察や警察の言いなりか」と怒りを露わにした。山田被告が落ち着いたところで、初公判で土下座したことを尋ねてみた。「テレビのバラエティー番組とかでは、土下座の絵まで描いて放送しているそうだ。それがパフォーマンスやっていうんや」、「パフォーマンスを狙ったわけじゃない。ポーズ、演技と言われて事件が事件やし、仕方ない。自分の思いを伝えようとああいう形になったわけ。自分の思いをぶつけただけ」。土下座の最中、裁判長が何度も制止したのだが、覚えていないという。「あの時、必死の気持ちばかりでまったく裁判長が止める声、聞こえなかった」。

 面会を重ねると、ようやく事件について断片的に語りだした。逮捕後、警察や検察の取り調べには黙秘を貫き、裁判ではじめて事件について語った山田被告。事件の「真相」について法廷の被告人質問では星野さんは熱中症か病気で死亡し、遺体を遺棄。平田さんは、口論になり口をふさごうとして、手が首にかかり、殺害してしまったと説明した。だが、その主張は2人の遺族にとって納得ができるものではなく、山田被告を厳しく批判していた。法廷についてはこう語った。「十分に説明できたかどうか、わからない。自分は緊張して弁護士の質問に答えるのがいっぱい、いっぱい。法廷が終わって何をどう答えたか覚えていない」。

 裁判では、山田被告の責任能力が大きな争点の一つとなっている。「裁判では精神病とか、なんとか障害とかわけわからんこと言われていい迷惑。そんなことどうでもいいんや」。自らの責任能力について、興味がなさ気に主張した山田被告。何度か面会を重ねても、山田被告の話の大半は立ったままのマスコミ批判の独演会だった。そして必ず、面会時間が終盤にさしかかるとこう要求した。「面会にくるのは、弁護士とマスコミだけや。裁判はじめるとマスコミは来なくなった。ワシ、マスコミに差し入れ目的で会うのやない。けど、だれも差し入れてくれん」。さらにはこんな注文もした。「ネットで山田浩二、裁判員裁判とネット検索してプリントして差し入れて」。インターネットなど自分自身がどう書かれているか。エゴサーチしているようだ。「マスコミやネットなど外部のことより、まずは自分自身の裁判に全力投球した方がいいのではないか」。筆者がこう話しても、山田被告は変わらなかった。師走の大阪拘置所で、今回の判決をどう受け止めているのだろうか?



【判決前に裁判員3人解任】
 12.13日、 関西テレビ 寝屋川中1殺害事件、判決前に…『裁判員3人解任』」その他参照。
 12.13日、平成27年8月に大阪府寝屋川市の中学生2人を殺害した罪に問われた男の裁判員裁判で、大阪地裁(浅香竜太裁判長)が、判決を前に裁判員ら3人(裁判員1人と補充裁判員2人)を解任していたことが、地裁への取材で分かった。3年前、寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害した罪に問われている山田浩二被告(48)の裁判には、10月に6人の裁判員と4人の補充裁判員が選任され、先月11.21日、検察が死刑を求刑して結審した。12.19日に言い渡す判決までの間、裁判員は有罪か無罪かなどを裁判官と議論するが、結審した日以降、裁判員と補充裁判員合わせて3人から辞任の申し出があり、大阪地裁が、補充裁判員2人を11.21日と同30日付けで、裁判員1人を12.3日付けで解任していた。法律では裁判員らが健康上の理由などで職務を続けることが難しい場合、辞任を申し立てることができ裁判所が認めれば解任される。3人の辞任申し立て理由については明らかにしていない。交代要員の補充裁判員2名が全員辞めたことにより補充できず、12.3日、大阪地裁が追加で裁判員を選任した。これにより今月19日に予定されている判決に影響はないというが、追加裁判員の選出方法は明らかにされていない。
 寝屋川事件の裁判員裁判で、大阪地裁判決を前に裁判員ら3人(裁判員1人と補充裁判員2人)が辞任し、交代要員の補充裁判員2名が揃って辞めたことにより補充できず、12.3日、大阪地裁が追加で裁判員を選任した云々。辞任理由、追加裁判員の選出方法は共に明らかにされていない。ワイドショーが好みそうな異例づくめ展開であるが恐らくボツにされている。なぜか。ここに事件の闇がある。我々は注視しよう。

【大阪中1男女殺害事件/大阪地裁判決】
  グッディ! 寝屋川中1男女殺害事件 死刑が言い渡されるまでの91分…山田被告の様子を中継リレーで徹底解説」その他参照。

 12.19日午後2時、大阪・寝屋川市の中学1年平田奈津美さん(当時13歳)と同級生の星野凌斗さん(当時12歳)を殺害したとして殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の裁判員裁判の判決公判が大阪地裁(浅香竜太裁判長)の最も大きい201号法廷で開かれた。被告は丸刈り頭に、いつも通り上下とも緑色の作業着のような姿で、周りを5人の刑務官が囲む形で入廷した。弁護士に頭を下げ、隣の席に座った。この日は一般傍聴席48席を求めて559人が列を作った。

 公判での主な争点は、「量刑・殺意・責任能力」の3点にあった。自白や目撃証言などの直接証拠はなく、検察側が積み上げた状況証拠に対する評価も注目されていた。

 争点①の量刑については、弁護側は、平田さんについては傷害致死罪にとどまり、被告は懲役12年が相当としていた。星野くんについては熱中症などの体調不良で死亡したとして無罪もしくは懲役12年が相当と主張した。検察側は、「面識のない二人を会ったその日に殺害しており、極めて残虐・悪質で生命の軽視は著しい。更生の可能性はみじんもない」と主張し、いずれも殺人罪が相当として死刑を求刑した。

 判決は、山田被告は15年8月13日夜、大阪府内かその周辺で平田さんの首を手などで圧迫し、窒息させて殺害。同日、星野さんについても何らかの方法で首を圧迫し、窒息死させたとして、二人の殺害を認定した上で、「計画性は認定できない」とする一方、「面識のない中学生2人を会ったその日のうちに次々に殺害される、まれに見る重大事案。刑事責任は極めて重大で、極刑の選択はやむを得ない」とした。さらに被告が未成年7人に対する逮捕監禁罪などで服役した約10か月後に事件を起こしていたことから、「犯罪傾向は深化している」と言及。被告の公判供述を虚偽と断定し、「罪に向き合っておらず、更生はかなり困難だ」として死刑が相当と結論付けた。


 争点②の殺意については、弁護側は、平田さんについては、「無理やり車に乗せられたと警察に言う、などと大声を出され、パニックになり、口をふさいでいるうちに手が首にずれ、急に動かなくなった」。星野くんについては、車に乗せた後、「車の中で体調が悪化し汗をかいて震えだした。平田さんに“寝たら治る”と言われ睡眠薬を渡したが死亡してしまった」とし、殺意はなかったと主張した。検察側は、平田さん、星野くんともに死因は窒息死であり、山田被告に殺意があったと主張した。

 判決は、星野凌斗さんの遺体に歯や骨の変色といった窒息死の特徴があるとした医師の証言は信頼できると指摘。山田被告は公判で、星野さんは体調悪化で死亡し、平田さんもいつの間にか動かなくなっていたと主張したが、星野さんの生前の健康状態や遺体の状況などから、「あり得ない事実を前提とした、成り立ちようがなく、作り話だ」、「重要な点が虚偽で全体として信用できない」と指弾した。平田奈津美さんに対しても殺意があったのは明らかだとして、平田さんに大声を出された経緯も「成り立ちようがなく、作り話だ」と切り捨てた。二人の殺害順序は特定しなかった一方、動機は「1人目は身勝手とか自己中心的なことしか考えられず、2人目は口封じ」と認定した。一緒に行動していた被告が二人の首を圧迫し窒息死させたととして2人の殺害を認定した上で、「強固な殺意に基づく残忍で冷酷な犯行。うその供述を繰り返し、極刑はやむを得ない」と述べた。

 争点③の山田被告の責任能力については、弁護側は、山田被告に自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)があり、心神耗弱状態だったと主張した。検察側は、「ASDの特徴は見られるが、犯行に直接影響したのは攻撃性などの“人格の偏り”」とし、刑事責任能力に問題はないと主張した。判決は、鑑定医の意見を踏まえ、弁護側が主張する発達障害の影響は限定的で、完全責任能力があったと判断した。

 午後2時、判決公判開始。判決公判でまず注目されていたのは、裁判長が冒頭で主文を述べるか否か。主文が後回しになり判決理由が先に述べられると、被告にとって厳しい判決が予想される。

 午後2時6分、裁判長が、「1時間あまり後に主文の言い渡しをします」と判決主文後回しを告げ、判決理由の朗読から始めた。法廷内が緊張感に包まれる。山田被告は天井を見つめたり時折、首を傾けたりして静かに聞き入った。

 午後2時8分、殺害認定。裁判長が、平田さんに対しては「殺意を持って頸部を圧迫して死亡させた」、そして星野さんに対しても「殺意を持って頸部を圧迫して殺害した」ということで、2名に対して殺人罪を適用しますという話があった。その瞬間、山田被告は特に表情を変えることもなく、手拭いで顔を押さえてはいましたが、涙を流すなどの変わった様子もなく裁判長の方を見つめていた。

 午後2時11分、責任能力。山田被告に責任能力が完全にあったと言い渡した。責任能力について、「(検察側の主張は)合理的な説明であり、この診断は十分に認めるに足る」とした。

 判決は亡くなった2人を「夢や幸せを追い求め、人生を謳歌(おうか)しようとした矢先に未来を断たれた」とおもんぱかり、「遺族の悲しみは深く、癒えることのない思いを抱き続けている心中は察するに余りある」と遺族の心情に言及した。

 午後3時31分、1時間半後、裁判長に促されて証言台の前へ。主文言い渡しで「主文、被告人を死刑に処す」と死刑判決を下した。山田被告は、言われた瞬間も、裁判長の方を向いたまま特に動きはせず、取り乱すことなかった。

 裁判長は、判決理由を述べる前に、「有期刑はありません。無期か死刑、これでもって考えました」と発言した。何度も「死刑を回避する理由にこれはあたりません」、「被告人に対して有利なことも考えましたけど、これもこれもこれも死刑回避の理由にはなりません」と繰り返し。「年齢差がある子供を自分の支配下に置いて、しかも関係性がないにも関わらず、その日のうちに殺意を抱いてその直後に2人を殺害しているということは、極めて重大で生命軽視著しい」。「自ら犯した罪に向き合うことができない」と極刑の理由を説明した。

 山田被告は、退廷の時には裁判長、検察側、そしてパーテーションのおそらく遺族の方に向かって計5回深々とお辞儀をして退廷した。「最後は刑務官に引っ張られながら退廷した」との記事もある。


【大阪中1男女殺害事件/即日控訴】
 山田被告の弁護人の鈴木一郎弁護士は判決後、「事実誤認は明らか。裁判所は『疑わしきは被告人の利益に』という観点が十分ではない」と記者に言い残して退廷し、即日控訴した。
 大阪地裁が19日、死刑判決を言い渡したことを受け、大阪地検の畝本(うねもと)毅(つよし)次席検事は「事実認定・量刑ともにおおむね検察の主張が認められ、妥当な判決だ」とコメントした。

【大阪中1男女殺害事件/裁判員記者会見】
 判決後、裁判員と補充裁判員を務めた計6人が記者会見に応じ、殺害への関与を示す直接証拠がない中での判断にして「人1人の命に関わることなので難しかった」と口をそろえた。男性裁判員(30)は、「重かった。だからこそ真剣に考えないといけないと思って、熟考できた」と死刑を選択すべきか悩んだといい、20代の女性は「議論して一つの結論を出せた。貴重な機会だった」と振り返った。補充裁判員の50代女性は「証拠が少ない中での判断で難しかった」と打ち明けた。






(私論.私見)