韓国の明知大学囲碁学科20年の歩み考

 更新日/2022(平成31.5.1栄和改元/栄和4).8.29日

(囲碁吉のショートメッセージ)
 ここで、「韓国の明知大学囲碁学科史」を確認しておく。

 2018(平成30).11.9日 囲碁吉拝


【韓国の明知大学囲碁学科20年の歩み考】
 1997(平成9)年、韓国の明知(ミョンジ)大学(京畿道龍仁市処仁区南洞山38-2)に世界史上初の囲碁学科が設置された。正式名称は「明知大学校・芸体能大学囲碁学科」。前年の1996年、李昌鎬9段が初めて富士通杯で優勝している。以降、韓国が国際棋戦を席巻し始め、続く中国棋界の隆盛、中韓決戦へと続く。明知大学囲碁学科史はその時期と重なる。

 同学部の1学年は凡そ20名、学部全体で4学年100名ほどを受け入れる少数精鋭制を敷いている。韓国人だけでなく中国、トルコ、ヨーロッパ等々の世界各国からの学生もいる。大学院では修士号、博士号を取得することができる。学生たちは、囲碁の技能のみならず、囲碁史、囲碁教育論、囲碁文化論などを学び、将来の囲碁界リーダーを期待されつつ研鑽を続けている。同学科教授は韓国棋院所属棋士でもある南治亨(ナム・チヒョン)、鄭寿鉉教授はじめほか数名。中国の上海外国語大と交流が深い。

 囲碁学科を卒業すると雑誌やインターネットの記者、囲碁道場の運営をする人などが多い。韓国では囲碁を専門に教える高校もある。日本に商業高校や工業高校があるのと同じ。日本棋院などの囲碁関連団体、文科省などを連携して、もっと囲碁の普及に系統的に取り組まないと益々世界に立ち遅れてしう。(「立ち遅れている日本の囲碁!」)
 2022.12.9日、囲碁人口の減少を理由に、囲碁学科の廃止案が同学の委員会で議決された。今回の決定は「学則改正」に当たる為、内部の教務委員会、大学評議員会、法人理事会の順で了承を得ることになる。この過程で、学生と教職員らの同意も必要となる。その後、学校側が政府の教育部に最終案を提示し、承認されれば正式に廃止が決定する。

 韓国棋院所属棋士310名、大韓囲碁協会、韓国女性囲碁連盟、全国の大学囲碁連盟所属の囲碁部などから反対運動が起こっている。明和大学の姉妹校である中国上海建橋大学、ドイツ、カナダ、米国、スペインなど世界15カ国の囲碁連盟からも懸念の声が上がっている。サウジアラビアは現在、「囲碁、ブリッジ、チェス」によるマインドスポーツプログラム構築を国家プロジェクトとして進めている。「囲碁は国際オリンピック委員会(JОC)による種目採用の審議が大詰めの段階」と訴えている。

 イ・ホンリョル/朝鮮日報囲碁専門記者「【朝鮮日報コラム】世界唯一の「囲碁学科」、無念の廃止手続き」参照。
 近世、韓半島でも囲碁がかなり盛り上がりを見せた。しかし、中国や日本と違ってお茶の間の暇つぶし程度にとどまっていたため、競技力で両国に太刀打ちできなかった。1980年代末に初めて世界大会が開かれた時、韓国からはわずか1、2人しか招待されないほど冷遇されていた。多くの逆境を乗り越え、世界の囲碁最強国になった過程は不思議に近い。さまざまな要因がある中で、明知大学囲碁学科の存在は欠かせない。1997年に創設されたこの世界で唯一の学科が、国内外の囲碁界の求心点として浮上し、大きく貢献した。そのような基盤のないライバル国は羨望(せんぼう)のまなざしを隠せなかった。

 その明知大学囲碁学科が、学科廃止の手続きを踏んでいる。それなりの事情はあるだろうが、これまでの華やかだった成果を自ら否定する感は拭えない。明知大学の「ランドマーク」として君臨してきた囲碁学科が、なぜ要石から廃石へと転じたのか、残念でならない。




(私論.私見)