囲碁の替え歌

 (最新見直し2014.10.05日)

 (囲碁吉のショートメッセージ) 
 ここで囲碁歌、囲碁音頭その1を確認しておく。「お笑い囲碁替え歌」、「囲碁替え歌コーナー」その他を参照する。

 2014.04.25日 囲碁吉拝


 「囲碁の雑学 百人一首と、もじり棋歌」。

1番 天智天皇 秋の田の かりほの庵の とまをあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
もじり棋歌 敵の手さぐりの 石のさをにらみ わがみぎの手は 棋笥にふれつつ 
(「棋笥」は「碁笥」「ごけ」のことで碁石を入れる器)。
2番 持統天皇 春すぎて 夏きにけらし 白妙の 衣干てふ 天のかぐ山
もじり棋歌 程すぎて 待ったもいへず うろたへの こころぼそてふ あたまかくやま
3番 柿本人麻呂 足曳の 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 獨りかもねむ
もじり棋歌 駆け引きの 石取りの手の さぐり手の はらはらしさを ひとり黙然
4番 山辺赤人 田子の浦に うち出でて見れば  白妙の 富士の高嶺に雪はふりつつ
盤のうへに のび出て見れば 死に石の ふしぎや持つご まかされつつ
5番 猿丸大夫 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 聲きくときぞ 秋はかなしき
人の地に 無理に取りかけ ゆく石の とらるる時ぞ われは悲しき
(「取ろう、取ろうは取られの元」)
6番 中納言家持 鵲の 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
角番の 負けたるために 涌く胸の つらきを見れば 手ぞふるへける
7番 阿部仲麻呂 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
敵の腹 割り裂き見れば おろかなる すみすみ山に 打ちし筋かも
8番 喜撰法師 わが庵は都のたつみしかぞすむ 世をうぢ山と人はいふなり
わが腕は 都の仕込み こころ澄む 棋を打ちますと 人はいふなり
9番 小野小町 花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
顔の色は かはりにけりな 打つほどに わすれて死ぬる 石を見し間に
10番 蝉丸 是れやこの 行くもかへるも 別れては 知るもしらぬも 逢坂の關
あれやこの 死ぬも活きるも 缺かれては 打つもうたぬも おほかたは持
11番 参議小野篁 和田のはら 八十島かけて こぎ出でぬと 人にはつげよ あまの釣舟
敵の腹 桂馬をかけて つきとめぬと 覗きはつげよ あとを思ひね
12番 僧正遍昭 天津風 雲の通路 ふきとじよ をとめの姿 しばしとどめむ
まごつかせ 敵の逃げ道 おとしめよ 勝棋の姿 しばしながめむ
13番 陽成院 筑波嶺の みねより落つる みなの川 戀ぞつもりて 淵となりぬる
打つ石の そばより切れる ものとかは 誰れぞをしへて 愚痴となりぬる
14番 河原左大臣 陸奥の しのぶもぢずり 誰故に 亂れそめにし 我ならなくに
打つ癖の きのふ見しより それがゆゑに 打たれ取られし 石ならなくに
15番 光孝天皇 君がため はるの野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ
君がため 垂木に乗り出て 棋を囲む わが思ふ手に わこはのりつつ
(「垂木」は棟から軒に渡した材木のことで、縁台を指していると思われる)
16番 中納言行平 立別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとしきかば 今かへりこむ
勝ちわかれ 籠根の外の 影に吠ゆる 犬とし聞かば いまかへりこむ
17番 在原業平朝臣 千早振る 神代もきかず 龍田川 から紅に水 くくるとは
力振る かけ手もきかず 化の皮 わづかのうちに 首くくるとは
18番 藤原敏行朝臣 住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人めよくらむ
君の手の 奥にたくらみ 取るすべや 夢も忘れじ こころおらむ
19番 伊勢 難波がた 短き蘆の ふしの間も 逢はで此世を すぐしてよとや
思ふ方 みじかき冬の 暮れの間も 打たでその日を 過ごしてよとや
20番 元良親王 侘ぬれば 今はた同じ なにはなる みをつくしても あはむとぞ思ふ
まちぬれば 今方見えし 敵なる 夜をとほしても 打たんとぞ思ふ
21番 素性法師 今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待出でつるかな
いざこいと 打ちしばかりに 留めおきの ありたけの酒を 飲まれけるかな
22番 文屋康秀 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐と云ふらむ
ふくからに 彼の打つ手の 裏かけば うべ山師手を あやしといふらむ
23番 大江千里 月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど
敵見れば とみに胸こそ 躍りけれ こたびは白の 番にはあらねど
24番 菅家 此の度は ぬさも取あへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに
この度は 石もとりあへず こけの山 思へばおしき 口のまにまに
25番 三条右大臣 名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
控へをらば とりかへす手の ありながら 敵につられて 勝つよしもがな
( 時間をかけて、よく見て考えれば、いい手があったのに、敵の打つテンポに
つられて打ってしまった。こんな調子では勝てるはずがない」と嘆いている。
26番 貞信公 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今一度のみ ゆきまたなむ
時は今 かくして打たば 打ち込まば いまひと時の 相手またなむ
27番 中納言兼輔 みかの原 わきてながるる いづみ川 いつみきとてか 戀しかるらむ
敵の腹 割って見らるる 化けの皮 いつも来る手か をかしかるらん
28番 源宗于朝臣 山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人めも草も かれぬと思へば
こすみとは 智恵のさもしさ わかりける 桂馬も押しも 出来ぬと思へば
29番 凡河内躬恒 心あてに をらばやをらむ はつしもの 置きまどはせる 白菊の花
ちからあてに 切らばや切らぬ 初顔の 気をまどはせる はね出しの端
30番 壬生忠岑 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり うきものはなし
うちかけの 勝ちなく見えし 分かれより 打ち継ぐばかり 憂きものはなし
31番 坂上是則 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに よしのの里に 降れる白雪
朝ねぼけ わが運の尽きと 見るまでに よべの徹夜に あたまものうき
32番 春道列樹 山川に 風のかけたる 柵は 流れもあへぬ 紅葉なりけり
山師碁に 賭物をかけたる いきさつは よすによされぬ 涙なりけり
33番 紀友則 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
おほかたの 打手の強き その中に 恥づ色もなく われのをるらむ
34番 藤原興風 誰をかも しる人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
たれをかも 知る人にせん 棋仲間の 誰も昔の 友ならなくに
35番 紀貫之 人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける
あとはいざ 勝負もつかず 立去るは これぞ負棋の 習ひなりける
36番 清原深養父 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ
負けの棋は まだ半ながら 投げぬるを はたの人だに 惜しと見るらむ
37番 文屋朝康 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
白石に 黒のはげしく せまる手は しのぎもつかぬ さまぞ見えける
(「しのぎ」は、)
38番 右近 忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の をしくもあるかな
かすらるる 手をば気づかず くだしてし 石のいのちの 惜しくもあるかな
39番 参議等 浅ぢふの をのの篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の戀しき
あさ智恵の 敵の黒腹 見破れど 何のゑにしか 彼れの恋しき 
40番 平兼盛 忍ぶれど 色に出でにけり わが戀は 物や思ふと 人の問ふまで
しのぶれど 顔にでにけり わが胸は 勝ちや思ふと はたのいふまで
41番 【】戀すてふわが名はまだきたちにけり 人知れずこそ思ひそめしか「壬生忠見」
  だますてふその手はばれてしまひけり くるしみてこそ打ちし手なるが
だまそうと思って打ったのに、ばれてしまったので、苦しみながら打たないといけなくなっ
た。と、いうことかな。これを見ても判るように、あはっ、邪心は禁物。あるべき道「正道」
を行かないとね。
42番 【】契りきなかたみに袖をしぼりつつ すゑの松山波こさじとは「清原元輔」
  打ちてきなありたけ脳をしぼりつつ 末のひと山どんなものかは
ありそうな手は全てヨミつくしつつも、これからどれだけ沢山の手が出てくるんだろう。と、
いったところかな。時間制限のなかった時代のことですから、考える時間はいくらでもあっ
たんじゃないのかな。一局を打ち終えるのに1日がかりとかね。3日がかり。10日がかり、
1カ月がかり。半年や1年、あるいは3年がかりとかもあったかもね。
43番 【】逢見ての後の心にくらぶれば 昔は物を思はざりけり「権中納言敦忠」
  劫立ての種はあたりにかずあれば たつべきものをきかでやみけり
コウ立て「相手が受けてくれそうな所」は、そのコウの側に沢山あったので、相手が打っ
てきた箇所は全て受けていればいいものを、受けずに止めてしまった。かな。ううん、これ
は碁を打たない人に説明するのは難しいーーです。コウに勝って碁に負けた。と、いうこと
か。あるいは大局に影響がなかった。と、いうことなのかな。
44番 【】逢ふことの絶えてしなくばなかなかに 人をも身をも恨みざらまし「中納言朝忠」
  あの人のたえて来なくばかくまでに 時をもかねもつかはざらまし
【あの人】→【碁敵?】→【恋人?】が暫く来ないので、こんなに時間も金も使わない。
と、いうことかな。賭碁でも打っていたのかな?それとも恋人にプレゼントでもしていたのか
な?はたまた飲食でもさせていたのかな?
45番 【】哀ともいふべき人はおもほえで 身のいたづらになりぬべきかな「兼徳公」  
  変れども勝つべき筋はうちたえて あないたづらにをはるべきかな 
変化したけど、勝つ筋がなくなったので、べそをかいたままになっちゃった。と、いったと
ころかな。
46番 【】由良の門をわたる舟人かぢをたえ ゆくへも知らぬ戀の道かな「曾禰好忠」
  愚図の手を選ぶその人不心得 めさきも見えぬうつけものかな
あっはっはー これほど人をこけ下ろして喜んでいれば、愉快でしょうね。
47番 【】八重葎しげれる宿のさびしきに 人こそ見えね秋は来にけり「恵慶法師」
  八重桜しげれる山のにぎはひに 相手も見えぬ時は来にけり
みんな花見に出かけて行ったので、碁を打つ相手がいなくなった。あーあーつまんないな。
と、いったところかな。
48番 【】風をいたみ岩うつ波のおのれのみ くだけて物を思ふころかな「源重之」
  劫をいどみはねうつ敵の顔をのみ ながめてものをおもふけふかな
コウをしかけ、ハネて受けた相手の顔ばかり、眺めて長考するかな。と、いうことかな。こ
れはよくあることですね。対局中に時々顔を上げて相手の顔色を窺う。視線でどこを考え、
何を想っているのかピーンとくる場合もあるからです。
49番 【】御垣守衛士のたく火の夜はもえ 晝は消えつつ物をこそ思へ「大中臣能宣朝臣」
  高きより低く打つ手のあだなして すみはとりつつ負けをこそ思へ
中央より隅や辺を重視した手が悪く、隅を囲って負けてしまった。と、いうことかな。これも
よくあることです。形勢判断の誤りで気がついた時には既に遅し。全体的なバランスを考え
ながら打たないといけない。と、いう戒めですね。
50番 【】君がため惜しからざりし命さへ ながくもがなと思ひけるかな「藤原義孝」
  劫のため棄ててしまひし石でさへ なほ手もがなと惜しみけるかな
コウのフリカワリで棄ててしまった石だけど、何か手がないものかと惜しんでヨム。と、いっ
たところかな。碁を知らない人にコウを説明するのは難しいです。1コの石が取れるんです
が、取ると取る為に打った石が逆に取られる状態になるんです。循環形だから、そこだけ
打つと永遠に続くので取られた方は「コウダテ」相手が受けてくれそうな別の所に打ってか
らでないと取り返せないのです。句の場合はコウに勝ったんでしょうね。で、受けずに取ら
れた石を惜しんでいるのです。
51番 【】かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしも知らじなもゆるおもひを「藤原実方朝臣」
  投げるだに惜しき思ひのこのいくさ 石のみなみな活きあるものを
投了したくないほど善戦して、石は全て活きたのに、やっぱりダメか。悔しい思いの滲み出
てくる句ですね。
52番 【】明けぬれば暮るるものとは知りながら 猶恨めしき朝ぼらけかな「藤原道信朝臣」
  打ちぬれば勝負ありとは知りながら なほうらめしき負けいくさかな
「なほうらめしき」とは負けたのがよほど悔しかったのでしょうね。この気持よく解りますね。
53番 【】なげきつつ獨りぬる夜のあくるまは いかに久しきものとかはしる「右大将道綱母」
  かこちつつ相手待つ日の淋しさは いかにもつらき心地にぞある
前にも似たような句がありましたね。碁を打つ相手のいない悲しさ。よほど気の合う相手だっ
たのでしょう
54番 【】忘れじの行末まではかたければ 今日をかぎりの命ともがな「儀同三司母」
あの時のうれしき勝は忘れねど けふの手合の憂きこともがな
前に勝ったのは嬉しかったけど、今また打つのは憂鬱だな。かな。どうしたのかな。なにか
あったのかな。まあー誰にでも打ちたくない時は、あるにはあるんですね。
55番 【】瀧の音は絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れて猶聞えけれ「大納言公任」
  君がことはかねて久しく恋ひつれど うちて習ひておほしたひけれ
あはっ、この句は恋しい人と碁を打ったり、習ったりすることで、益々愛しくなった。と、い
ってますね。もしかすると、碁を打ったり、習ったりするのは好きな人に近づく術だったのか
も知れませんね。
56番 【】あらざらむ此世の外の思ひ出に 今ひとたびの逢ふ事もがな「和泉式部  いざ勝たむこれぞ番棋のおもひでに いまひといきの考えもがな
番棋は番碁のことで、例えば【三番手直り】→【3回打って3連勝するとハンディが増えたり、減ったりする】実力の差をはっきりさせる為に打つ碁のことです。
紫式部は和泉式部を評して【けしからぬところがある】と記しているのです。この時代の女性の恋愛はわりと自由なところがあったらしいのです。で、和泉式部の恋人の多さを嫉妬したのか、どうなのかな??」
57番 【】巡りあひて見しや夫ともわかぬまに 雲がくれにし夜半の月かな「紫式部」
  つつきあひてあとや負けともわかぬ間に 逃げかくれにし弱き敵かな
戦いの途中だから、まだ負けとも判らないのに、逃げたり、隠れたりする何と弱い敵なんだろう。と、いったところかな。この句を見ただけでも紫式部の実力は相当なものであったろうと想像できるかもね。あはっ、けどけど弱き敵かな。とはまたなんたる自信家なんでしょうね。
58番 【】有馬山ゐなの笹原風ふけば いでそよ人を忘れやはする「大弐三位」
  敵の山その黒き腹見破れば いかでか胆をとらでやはなる
相手の陰謀は見え見えなので、その魂胆を打ち砕いてやるぞ。と、いったところかな。
59番 【】安らはで寝なましものを小夜更けて かたぶくまでの月を見しかな「赤染衛門」
  寝不足で打つまじものを夜の更けて みにくきまでの負けを見しかな
寝不足だから打たねばいいのに、徹夜してコテンパンに負けてしまった。かな。あはっ、この人物は根っからの碁好きのようですね。
60番 【】大江山いく野の道の遠ければ まだ文も見ず天のはし立「小式部内侍」
  見ればいまいくさの道の多ければ まだ棄てもせず隅の劫立て
まだ戦いの場は沢山あるので、諦めないで隅のコウ立てを打つ。【コウ立て】→【コウを取り返す為に打つ手】闘志満々といったところかな。
 古月庵のもじり棋歌百人一首は【60番】までしか載っていませんので、【61番】からは【ゆうちゃんのもじり棋歌】私の創作とさせて頂きます。
61番 伊勢大輔  いにしへの 奈良の都の 八重櫻 けふ九重に 匂ひぬるかな
 いにしへの 京の都の 寂光寺 本因坊に 帰るかな
62番 清少納言  夜をこめて 鳥の空音は はかるとも 世に逢坂の 關はゆるさじ
 夜更けまで 石音は 響かせるとも 敵に策略の 隙はゆるさじ
63番 左京大夫道雅  今はただ 思ひ絶なむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
 今はただ 難解な手どころ とばかりに よみに耽るも よしとするかな
64番 権中納言定頼  朝ぼらけ 宇治の川ぎり たえだえに あらはれ渡る 瀬々のあじろぎ
 朝ねぼけ 囲碁の手のよみ たえだえに あらわれ浮かぶ 妙手の味わい 
65番 相模  恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 戀にくちなむ 名こそをしけれ
 恨みなげきし 碁敵にあるものを 負けて喜ばす 手こそを打ちにけれ
66番 大僧正行尊  もろともに あはれと思へ 山櫻 花より外に しる人もなし
 もろき壁に あらずと思へ 黒の石 我より外に しる人もなし
67番 周防内侍  春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立む 名こそをしけれ
 碁の読みの 夢ばかりなる 手筋に かなわぬ涙 ありこそを知りけれ
68番 三条院  心にも あらでうき世に ながらへば 戀しかるべき 夜半の月かな
 心にも 洗うべき邪心 ありしならば 改めしかるべき 正道の光りかな
69番 能因法師  嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の にしきなりけり
 取りゆく白石の 眼の枝や葉は 大河の水と 消えるなりけり
70番 良暹法師  淋しさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこも同じ 秋のゆふぐれ
 怪しさに 手をふと止めて ながむれば いづこも同じ 鶴の巣ごもり
71番 大納言経信  夕されば 門田のいなば おとづれて あしのまろやに 秋風ぞふく
 敵されば 負碁の反省 おとづれて 筋のわるさに 我ぞ気づく
72番 祐子内親王家紀伊  音に聞く たかしの濱の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ
 音に聞く 手筋の冴えの 見事さは カカリや袖の あきもこそすれ
【73番】高砂の尾上の櫻咲きにけり 外山の霞たたずもあらなむ「前中納言匡房」
  一間の飛びの悪手なしにけり 厚味の威力ぼけにありける


【74番】憂かりける人をはつせの山おろし はげしかれとは祈らぬものを「源俊頼朝臣」
  受かりける攻めをしのぎの筋おろし はげしかれとは祈らぬものを
【75番】契りおきしさせもが露を命にて あはれ今年の秋もいぬめり「藤原基俊」
  契りおきしさせしが初段を命にて あはれ今年の秋も去りにけり
【76番】和田の原こぎ出でて見れば久方の 雲ゐにまがふ沖津白なみ「法性寺入道前関白太政大臣」
  黒石の原こぎ出て見れば白石の 活路に出会い勝ちの碁なり

【77番】瀬をはやみ岩にせかるる瀧川の われても末にあはむとぞ思ふ「崇徳院」
  読みを分かつ道に悩むる筋川の われても末にたどるとぞ思ふ 

【78番】淡路島かよふ千鳥の鳴く聲に 幾夜ねざめぬすまの關守「源兼昌」
  碁打ち宿かよふ烏鷺の鳴く石音に 幾夜ねざめぬすみの攻防

【79番】秋風に棚引く雲の絶間より もれ出づる月の影のさやけさ「左京大夫顕輔」
  碁盤に響く石の絶間より もれ出づる読みの裏のおくぶかさ
【80番】長からむ心もしらず黒髪の みだれて今朝はものをこそ思へ「待賢門院堀河」
  長からむ読みもしらず浅知恵の みだれて敵は泣くをこそ思へ


【81番】ほととぎすなきつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる「後徳大寺左大臣」
  しらさぎの鳴きつる方をながむれば ただ妙手の冴えぞ残れる
【82番】思ひわびさても命はある物を うきにたへぬは涙なりけり「道因法師」
  思ひわびさても負けはある物を 勝ちにたへぬは涙なりけり

【83番】世の中よ道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも鹿ぞなくなる「皇太后宮太夫俊成」
  読みの中よ道こそなけれ思ひ入る 碁の奥にも光りぞなくなる

【84番】永らへばまたこの頃やしのばれむ うしと見し世ぞ今は戀しき「藤原清輔朝臣」
  永らへばまたこの頃やしのばれむ 憎しと見し敵ぞ今は恋しき



【85番】夜もすがら物思ふころは明けやらで 閨の隙さへつれなかりけり「俊恵法師」
  夜もすがら思案のころは明けやらで 負けの碁さへつれなかりけり

【86番】嘆けとて月やはものを思はする かこち顔なるわが涙かな「西行法師」
  嘆きとて碁や敵の勝ちとなりける くやし顔なる我が涙かな
【87番】村雨の露もまだひぬまきの葉に 霧たちのぼる秋の夕ぐれ「寂蓮法師」
  囲碁の道もまだきわめぬ内に 壁たちふさがる秋の夕ぐれ

【88番】難波江の蘆のかり寝のひと夜ゆゑ 身を盡てや戀わたるべき「皇嘉門院別当」
  攻防の筋の勝手読みになるがゆえ 碁に負けて悔しかるべき
【89番】玉の緒よたえなばたえね永らへば 忍ぶる事のよはりもぞする「式子内親王」
  逃げ石よ息たえだえに永らへば 勢かたむきて勝ち碁となりぬ
 

【90番】見せばやな雄島のあまの袖だにも 濡れにぞぬれし色はかはらず「殷富門院大輔」
  足ばやな布石のすきの合間にも 打ち込みぞ打ちし敵は勝ちえず

【91番】きりぎりすなくや霜夜のさむしろに 衣かたしき獨りかもねむ「後京極摂政前太政大臣」
  きりぎりになるや白石の惨めさに 心くるしき独りなやめむ
【92番】わがそでは潮干に見えぬ沖の石の 人こそしらねかわく間もなし「二条院讃岐」
  わが意志は無心にあれと願えども 神こそならぬ良き筋もなし

【93番】世の中は常にもがもな渚漕ぐ 海士の小舟の綱でかなしも「鎌倉右大臣」
  碁の中は常にもがくな正着の 棋士の心の隙でかなしも
【94番】みよし野の山の秋風小夜更けて ふる郷さむく衣うつなり「参議雅経」
  よみし碁の筋の難問解きあかし 石音たかく打ち下ろすなり

【95番】おほけなく浮世の民におほふかな わがたつ杣に墨染の袖「前大僧正慈圓」
  おぼろげな筋道の読みにたよるかな わが冴え脳に妙案の影

【96番】花さそふ嵐の庭の雪ならで ふりゆくものはわが身なりけり「入道前大政大臣」
  隙さそふ手筋の罠の問ならで 解きゆくものはわが身なりけり
97番 【】來ぬ人をまつほの浦の夕なぎに やくや藻鹽の身もこがれつつ「權中納言定家」
  打つ敵を碁盤の側の脇息に 待つや時間の身もこがれつつ
98番 【】風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける「従二位家隆」
  勝ちにけるこの碁の褒美ご馳走は 酒と肴の味見なりける
99番 【】人もをし人も恨めし味氣なく 世を思ふ故に物思ふ身は「後鳥羽院」
  打つもよし負けも恨めし味気なく 碁を思ふ故に物思ふ身は
100番 【】百敷や古き軒端のしのぶにも 猶あまりある昔なりけり「順徳院」
  石音や古き碁盤のしのぶにも 猶あまりある昔なりけり

「ふるさと」の替え歌
黒石追いし右上 白石逃げしかのスミ
夢は今もめぐりて 忘れがたき競り合い
 莵追いしかの山  小鮒釣りしかの川
夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷
如何に生きる黒石 恙なしや白石
雨に風につけても 思いいずる定石
(元歌)故郷

文部省唱歌
高野辰之詞
岡野貞一曲
志をはたして いつの日にか勝つらん
形は厚きわが石  忘れがたき碁がたき

有難や節
有難や有難や 有難や有難や 
黒地なければ くよくよします 石を取られりゃ 泣きまする
負けがこんだら セイムに行って 頭冷やして 寝るだけさ
有難や有難や 有難や有難や

有難や有難や 有難や有難や
強くならなきゃ 試衛に行って しごき耐えれば 強くなる
口は悪いが 試衛の館長 熱く語るはハンゲ一(いち)
有難や有難や 有難や有難や

氷雨
勝たせてください もう少し 今夜は少しばかり 調子よさそう
誰と打っても 勝てる気がするの そうよ打ち方変えた今では

マネしないでください 三々は ヘボだったあの頃を 思い出すから
戦いなしに 地を囲っていた ダメなあたし許してください

この碁戦いが まだ止まぬ すごい手の連続ね
負けがないわけじゃ ないけれど 終わりたくない
もっといじめたい 昔あの人が やってたように

いい湯だな
いい碁だな あははん いいコウだな あははん 下手相手に やりたい放題
まぁだやるかい あははん ど~こ打つの あははん 貴方は容赦ない いじめっ子

館長宣言
お前を弟子に する前に 言っておきたい 事がある 
かなり厳しい 話もするが おれの本音を きいておけ

おれより勝数 増やしちゃいけない おれより負数 減らしてもいけない
地を囲ってはならぬ 戦いを避けるな できる範囲で構わないから

忘れてくれるな ケンカのできない碁打ちに 勝利をかちとるはずなどないって事を 
おまえにはおまえにしか できない事もあるから 
それ以外は 口出しせずに 黙っておれについて来い

待つわ by あみん
1.手厚いふりしてこの石  わりとうすいんだねと
  封鎖されている白石  生きるのがつらかった
  ノゾいてツケて切り違い  やっと目ふたつの生き
  黒壁はがして生きるってことは  永遠の夢
  厚く、広い黒模様  だけど黒地じゃないわ
  中に打ち込む石は  攻められ からまれて

  私 待つわ  いつまでも待つわ
  たとえあなたが間違ってくれなくても
  待つわ  いつまでも待つわ
  黒がダメ詰め、黒壁がはがれる日まで

2.楽しいくせに黒は  いつも上手の前では
  つぶれてみせる道化師  手筋なんていらない
  わかりきっているウソ手を  平気で打ってみても
  ひとりよがりの悪手で  「あっ・・・」と悲鳴を上げる
  誰も 黒石全部  殺すことはできない
  だけど この石だけは  シノいでほしかった

  私 待つわ  いつまでも待つわ
  たとえあなたが間違ってくれなくても
  待つわ  いつまでも待つわ
  せめてあなたがつぶれていられるのなら
                      
(別案))

1.厚みのふりして黒は  わりとうすいんだねと
  言われ続けたあのころ  活きるのがつらかった
  ツケたりハネたり切り違い  あなたと私の石
  いつかどこかで目を持つなんてことは  永遠の夢
  黒く広い地模様  誰のものでもないわ
  軽く効かせる白に 攻められ絡まれて

  私 待つわ  いつまでも待つわ
  たとえあなたが二つ眼をくれなくても
  待つわ  いつまでも待つわ
  他のどこかで あなたが取られる日まで

乱れ髪 by 美空ひばり
 石の乱れに目をやれば
 シチョウアタリが風に舞う
 憎や悔しや わが碁のカタキ
 出たのに切れぬわが筋悪さ
 石が絡んで団子に絞る

 捨てたつもりの一団を
 逃げる碁打ちのサガ哀し
 辛や重たや わが石ながら  
 置きの手を見る上手の網を
 ツケて切りたいこのヘボの意地

 春は2子でも勝てた人
 3子置いても足らぬ秋
 暗や果てなや この碁の行方
 見えぬ死活を照らしておくれ
 一つ目小僧にしないでおくれ

横浜たそがれ by 五木ひろし】
揚げ浜 ダメ詰め 死活の小部屋 鼻ヅケ ノゾキが 手筋の基本
 スプルース くちなし 碁盤に涙 あの人は取って取ってしまった
 あの人は取って取ってしまった もうおしまいね

函館の女 by 北島三郎】
 はるばる出たぜ 追い落とし むかつくハメ手を乗り越えて あとは追うなと言いながら
 シチョウ読めずに逃げ出すキミを 思い出すたび おかしくて 取っても自慢が できなかったよ

関白宣言 by さだまさし 】
お前と囲碁を 打つ前に 言っておきたい事がある
 かなり厳しい 着手もするが 俺の打った手を 見て打ってくれ

 アタリの石は つがなきゃいけない  シチョウの石は 逃げてはいけない
 二眼うまく作れ いつも捕ろうとするな できる範囲でかまわないから

 忘れてくれるな アタリを見落とす男に 地を守ることなど できないってことを

 井目にはかなりの ハンデがあるのだから 余計なことなどせず 黙ってアタリについでくれ

関白失脚 by さだまさし 】
お前に指導碁 してもらってるけれど 言うに言えないことだらけ
 かなり淋しい話になるが 俺の本音も聞いとくれ
 多少のウソ手打ってもいいから 黒地も少し残しておいて
 上手に見てもらい 白のウソ手ばかり指摘される
 それじゃあんまり わびしいのよ
 忘れていいけど 欠け目も知らない俺だが
 精一杯がんばってんだよ 俺なりに それなりに

 こんなアキサン 作っちゃ駄目よと
 お前の石も 団子になってるの 解ってるぞ
 四隅の三々に しっかり入っておいて
 厚味がぼけたなどと よくまぁボヤけるなぁ
 手抜けない手抜き ムダな勝手読み
 本気で生きたきゃ あんなに手抜かなきゃいいのに
 それからあれだぞ そのシチョウアタり
 シチョウじゃなくて ゲタで取れてるぞ
 それぞれご不満も おありのことと思うが
 それでも7子になれて よかったと俺思ってるんだ

 そして今日も7子の面目守る為に 碁会所という名の戦場へ往く
 辺は削られ 中も消され
 人は私を哀れだというけれど 俺には四隅の地がある
 四つの隅の地のためなら 辺も中もいらないと誓ったんだ
 それだけは疑ってくれるな 心は本当なんだよ
 四隅も思いどおりに 生きられなかったけれど
 下手くそでも一所懸命 コウ付きで粘っている
 隅が死んだあと いつの日か 何かちょっと紛れそうな時にでも
 そっと思い出してくれたなら きっと死に石も幸せだよ
 がんばれ がんばれ がんばれ ヘボ碁
 がんばれ がんばれ がんばれ ザル碁
 ありません

本手宣言 -囲碁の替え歌
 お前と一局 囲む前に 言っておきたい事がある 
 かなりきびしい話もするが 俺の本音を聞いておけ
 俺より先にやめてはいけない 俺より後にやめてもいけない
 布石は見合いで打て いつも本手を打て 出来る範囲で構わないから
 忘れてくれるな 布石も打てない奴に 中盤が戦えるはずなどないってことを
 お前にはお前しか 打てない手もあるから 余計なことは考えず 黙って俺にかかってこい

 お前の黒と俺の白とどの石も 同じだ大切にしろ
 コモク星打ちかしこくこなせ たやすいはずだ無心に打てばいい
 人の着手かまうなきくな  それからつまらぬ やきもち焼くな
 俺は弱気は打たない たぶん打たないと思う
 打たないんじゃないかな ま、ちょっとはあるけど
 いい碁は二人で作るもので どちらかが苦労して つくるものではないはず
 お前は俺の処へ 命をかけてくるのだから
 帰る場所は無いと思え これから俺がお前の先生

 中盤過ぎて、ヨセになったら 俺について打ってはいけない
 例えばわずか一目でもいい 決して後手になってはいけない
 ついて打つな 俺の手につくな  マグサ場の中に 二目以上探せ
 お前のお陰で いい囲碁だったと 俺が言うから 必ず言うから
 忘れてくれるな 俺の言う本手は 本手の女は 生涯お前ひとり
 忘れてくれるな 俺の言う本手は 本手の女は生涯お前 ただひとり

 (元歌)
 「関白宣言」       さだまさし 作詞・作曲・唄
 お前を嫁にもらう前に 言っておきたい事がある
 かなりきびしい話もするが 俺の本音を聴いておけ
 俺より先に寝てはいけない
 俺より後に起きてもいけない
 めしは上手く作れ いつもきれいでいろ
 出来る範囲で構わないから
 忘れてくれるな 仕事も出来ない男に
 家庭を守れるはずなどないってことを
 お前にはお前にしか できない事もあるから
 それ以外は口出しせず 黙って俺についてこい

 お前の親と俺の親とどちらも 同じだ大切にしろ
 姑小姑かしこくこなせ たやすいはずだ愛すればいい
 人の陰口言うな聞くな
 それからつまらぬ シットはするな
 俺は浮気はしない たぶんしないと思う 
 しないんじゃないかな ま、ちょっと覚悟はしておけ
 幸福は二人で育てるもので 
 どちらかが苦労して つくろうものではないはず
 お前は俺の処へ 家を捨てて来るのだから
 帰る場所は無いと思え これから俺がお前の家

 子供が育って年をとったら 俺より先に死んではいけない
 例えばわずか一日でもいい 俺より早く逝ってはいけない
 何もいらない 俺の手を握り
 涙のしずく ふたつ以上こぼせ
 お前のお陰で いい人生だったと
 俺が言うから 必ず言うから
 忘れてくれるな 俺の愛する女は
 愛する女は生涯お前ひとり
 忘れてくれるな 俺の愛する女は
 愛する女は生涯お前 ただ一人

精霊流し by さだまさし
 去年のあなたは筋悪で 生きてる大石 死んでいました
 見るに見かねてお友達もが 集まってくれました
 あなたがこさえたなけなしの 唯一の財産 黒模様
 次の一手が見えますか 軽く消す手が

 定石どおりに あなたの手抜いた その石もついでに 咎めましょう
 そしてあなたの 逃げる石を 追ってゆきましょうう

 私の小さな初孫が 何も知らずに はしゃぎまわって
 この石もう活き筋はないと ほざいたのです

泳げ!タイヤキくん(あそべ!院生くん)
 まいにちまいにち ぼくらは対局と 詰碁でしごかれて いやになっちゃうよ
 ある朝ぼくは   師範代と ケンカしてそとに とびだしたのさ
 はじめてあそんだ ビルのそと とってもきもちが いいもんだ
 アタマの脳ミソが おもいけど そとは広いぜ   心がはずむ
 みどりの木々が  手をふって ぼくのあそびを  ながめていたよ

 やっぱりぼくは  院生さ すこし棋力ある  院生さ
 棋院で見知りの  先生が ぼくを憎らしそうに 叱ったのさ

長崎は今日も雨だった by 内山田洋とクールファイブ
 シノギ1つに 賭けた局 活きれば勝ちと 信じたの
 逃げて 逃げ続けて ひとり 中原をさまよえば
 行けど破れぬ 包囲網 ああああ~ 対局は 今日も負けだった~

 模様1つに 賭けた局 これで足りると 信じたの
 消しに 受け続けて ひとり ふと気付けば
 打てば打つほど 地が痩せる ああああ~ 対局は 今日も負けだった~

夕焼け小焼け
大ナカ小ナカで目が取れて ハマに打ち上げ彼が泣く
 あわててつないで皆死んだ この地も一気に殺しましょう

秋桜 by 山口百恵
 白黒の石たちが秋の日の 何気ない日溜まりに競っている
 このごろ先の碁にしてくれた父が 打ちながらひとつ咳をする
 
 縁側で板碁盤開いては わたしの幼い日のうまい手を
 何度も同じ話し繰り返す 独り言みたいに小さな声で

 こんな小春日和の穏やかな日は あなたの優しさが沁みてくる
 あした嫁ぐわたしに碁は教えたが 強くなってしまって婿殿を負かすのが
 心配だと笑った

 盤見つめ形勢を読みながら しばらくは楽しげにいたけれど
 突然石音高く打ちつけて 祝いの手だよと微笑む父
 
 こんな小春日和の穏やかな日は もう少しあなたと碁を打たせてください

【囲碁の替え歌/囲碁百人一首(替え歌)
 「囲碁の替え歌/囲碁百人一首(替え歌)」。
あきれたの かれこれ囲碁の 友を集め わがだまし手は つひに知れつつ  犬百人一首
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ  天智天皇(百人一首の一番)
布石過ぎて 中盤来にけらし 白妙の 風呂敷ひろげる アマの天狗山  アマ天狗
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山   持統天皇
アマの碁の 振り変わりみれば 悲しなる 二、三十目も足らぬ 局かも アマの仲好
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも   阿倍仲麻呂
 この歌には酒飲みの替え歌がある。
  あまの酒 ふりさけみれば かすかある みかさも飲まば やがて尽きなむ  詠み人知らず
 あちこちと つけては跳ねて 切りまくり 死ぬも死なぬも 乱戦の夜  空蝉   
 三連星 打つも打たぬも 広げては 知るも知らぬも 大風呂敷の碁   武宮太夫
 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関   蝉丸  
 隅奥のしのぶもぢずり それよりも 乱れそめにし 今日の右隅   乱れ星朝臣  
 陸奥のしのぶもぢずり 誰ゆえに 乱れそめに しわれならなくに   川原左大臣  
 陸奥の信夫もぢずり 乱れつつ 色に恋ひむ 思ひそめてき   藤原定家
 昔より 助言も聞かず 大甘碁 地をくれないの コミが出ぬとは    無茶門殷
 ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれないに 水くくるとは  在原業平朝臣 
 わびぬれば 今また同じ形なり 技尽くして も生きむとぞ思ふ   悪形天皇
 わびぬれば 6目半の大ゴミぞ 何が何でも 出さむとぞ思う   小寄せ名人 
 わびぬれば いまはた同じ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思ふ  元良天皇  
 那智黒に 千々に蛤 乱れけり 我が身一つの 臥所にあらねど  囲碁愛奴
 月見れば 千々にものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にあらねど  大江千里  
 切りをいたみ 防戦の戦始まりぬ 獲られて物を 思ふころかな  無力の朝臣   
 風をいたみ 岩打つ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな 源 重之
 大斜がけ 戦の道の多ければ まだ勝ちも見ず 無理な石立て  力自慢法師
 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天橋立  小式武内侍 
 悔しさに 盤を立ちいでて ながむれば あちらこちらに 屍るいるい  悪力法師
 苦しさに 盤を立ちいでて 眺むれば 煙草の煙 まなこにしみいる    弱虫太夫
 さびしさに 宿を立ちいでて ながむれば いづこもおなじ 秋の夕ぐれ  良暹法師  
 攻めをはやみ 目つくりせかるる中盤の 捌きの末は 生きんとぞ思う   捌きの輔
 瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末に あはむとぞ思ふ   崇徳院 
 死ぬは嫌 殺すはあじきなし 接待碁商談願ふゆえ 物思ふ身は   接待関白
 人もをし 人もうらめし あぢきなく世を思ふゆゑ 物思ふ身は   後鳥羽院
 名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで 来るよしもがな    三条右大臣

 (現代語訳)「逢って寝る」という名を持つ逢坂山のさねかずら。その蔓(つる)を手繰るように、人に知られずにやって来る方法がないものか。






(私論.私見)