井山裕太の囲碁哲学論考

 更新日/2022(平成31.5.1栄和改元/栄和4).3.26日

 (囲碁吉のショートメッセージ) 
 ここで、「井山裕太の囲碁哲学論」を確認しておく。

 2017(平成29).12.7日  囲碁吉拝


井山裕太名言】
 「囲碁棋士 井山裕太の名言_bot 」。
 囲碁は全体を見て判断する力、どう進めていくかという構想力の要素が大きいと思います。
 形勢が悪いときこそ、じっと我慢してチャンスを待つこと。どんな強い相手でもミスはしますから。挽回(ばんかい)しようと焦りが出ると、特に強い相手には通用しません。苦しいときでも焦らず、自分を信じてやるのが、自分の長所だと思います。
 自分では強いと思わないんですが……。こういう局面ではこういう風に打つという決まった形(定石)があるんですけど、自分は他に打ちたい手があればどんどんチャレンジします。打つ手が予想できないとよく言われるのですが、それが強さというか、特徴だと思います。
 自分が勝つと見えた瞬間はなんともいえない。この手を打てば優勝というような時は手が震えますね。将棋の羽生(善治)さんは、自分の勝ちが見えたときに、ほかの駒をはじくぐらいに手が震えるそうなんです。すごく人間らしいですよね。
 自分の場合、力が入りすぎるとよくないことが多いので。自然体で普段通りにやれば勝てると自分に言い聞かせ、思い込んでやる。そういう気持ちって、結構大きいんです。
 たとえ定石とは違っても、ここに打ちたいという“第一感”に任せて打つこともある。相手が誰であっても自分は変わらない。好きなように攻めて勝ちたい。
 負けたときほど自分の課題が見えやすい。負けを逆に強くなれるチャンスにできるかどうかが大切。
 2013.10.12「井山裕太九段に聞く!強くなるための囲碁勉強法」(「NHK囲碁講座、2013年9月号」より)。
 碁をたしなむ人であれば、誰もが「強くなりたい」と考えるもの。ではどのように勉強すれば強くなれるのだろうか。棋聖・本因坊・天元・王座・碁聖の五冠を保持する井山裕太九段に聞いた。碁が強くなるためには、どのような勉強をしたらいいですか? 
 これは、碁を打つ方なら誰もが一度はプロに聞いたことがあるか、少なくとも聞こうとしたことがある質問だと思います。そして、この質問に対する答えは決まって、次の3つのうちのどれかです。1、詰碁を解く。2、棋譜を並べる。3、実際に対局する。「詰碁を解くことがいいですよ」と答える人は必ずいます。いえ、最大勢力かもしれません。もちろん詰碁は読みを鍛えるために必須なものです。しかし、詰碁は好きな方にとってはよい上達法ですが、アマチュアの皆さん、特に初級者のうちは詰碁を解くことが苦手な方が多いでしょう。小さな子供たちなどは読みを鍛えると目に見えて強くなり、成長を実感することができるのでいいのですが、大人の皆さんは苦労している方が多いようですね。 

 詰碁を勉強するときのコツは、少し考えれば簡単に解けるような問題、いえ、一目見れば分かるような問題でいいですから、繰り返し解くことです。理想としては毎日少しずつ解くのがいいでしょう。勉強というよりは頭のトレーニングですね。野球選手のキャッチボールと同じような感覚で詰碁を解いていれば、それがプラスになることはあっても、マイナスになることはありません。無理に難しい問題に挑戦して、詰碁を解くことに苦痛を感じてしまうのがいちばんよくありません。気楽にやりましょう。 

 棋譜を並べるのも詰碁と同じです。プロの正しい感覚を身に付けるための勉強なのですが、そもそもプロの棋譜を並べて、一手一手の意味を考え、さらにすべてを理解するというのは難しいことです。かなりの実力がなければ、棋譜並べを完璧に理解することは難しいでしょう。棋譜の数字を探すことが苦痛になるようでしたら、やはりお勧めできません。 

 私は実戦が9割、残りの二つが1割くらいの勉強で上達しました。皆さんでしたら実戦だけでも構わないと思います。本書を読んでいる方の中に碁を打つことが嫌いな人はいないでしょう(笑)。実戦の中から学んでいくことはとても多く、特に初級者の時期には一局一局が糧になります。 

 ところが、「負けるのが嫌なので、対局はしたくありません」という方がいます。「負けるのが嫌」という気持ちはとてもよく分かります。私も本当に負けるのは嫌ですから。しかし、碁が強くなるためには負けたときこそ大切です。対局をして負けたときに、1か所だけでも何がよくなかったのかを振り返ってみてください。本当に負けて悔しいと思うなら、負けの原因となったそのミスは決して忘れないはずです。振り返ることをしないと、いつまでも同じミスを繰り返すことになってしまいます。また、本で勉強しただけの手筋はすぐに忘れますが、実戦で上手に決めることができた手筋や、逆に相手に決められた手筋は決して忘れません。

 「勝ちきる頭脳 」。
 意訳概要「囲碁というゲームは、200手を超えて終盤を迎えた場面でも、たった一手のミスで優勢をフイにしてしまうことがあります。人間である以上、ミスを100%防ぐことはできません。どんな名手、高手でも、その確率を減らすことはできても、いつかどこかでミスをしてしまうものなのです。それを踏まえたうえで、『後で後悔するような手だけは打たない。常に自分が納得できる手だけを打つ』と、自分に対する決まりを作りました」。
 意訳概要「トップ棋士ともなると、形勢が悪い時の踏み込みが抜群に鋭い訳です。その人たちを相手にして楽に勝てるはずがありません。『少しくらい形勢が良くても、逃げ切りの手は打たない、緩まず、自分が打ちたい手を打つ』ように心掛けています」。
 意訳概要「一局の碁において、一度も自分が悪くなることなく勝ちきれることは極めて稀な出来事です。これを逆に云うと、ここが大切なのですが、逆の立場で、自分が劣勢となってしまっても、一度くらいはチャンスが来ると云う理屈になります。そうした極めて曖昧なものの上に漂っている勝敗を、どうやって自分の方へ微笑ませるか? 勝負勘と云われますが、その『センサーを働かせる』ことがここが肝腎です。少しだけ形勢不利という状況ならば、僕は基本的にじっと辛抱して追走することを選択します。もしチャンスが訪れなかったら、それは相手褒め称えるべきです。その状況を続けているうちに相手が少しでも隙を見せたら、見逃さずに一気に衝いていくのです。形勢不利の際にもう一つ大事なことは、『相手に決め手を与えない』ことです。結果を出せる人は例外なくこの『決め手を与えない術』に優れています。つい逆転ホームラン狙いの勝負手を打ってしまいがちですが、それを咎められたら致命傷を負い負けが決まってしまいます。そうではなくて、形勢が悪いことを素直に受け入れ、嫌な状況であつても辛抱することが大切です。このこととは逆に、優勢な時にリスクを含んだ手を打つことも必要で勇気が要ります。でもそこで、リスクを承知で前に進んでみたら、安全第一の手を選択するよりも良い結果になることが多いです。この経験を経て、その道が一番勝ちきれることが分かってきました。それはどういうことかと申しますと、安全第一の手を打つと、それをきっかけにリズムが狂ってしまい調子が悪くなります。大差で優勢の場合にリスキーな手を打つのは愚かですので、この辺りは『センサーを働かせる』ことが必要です」。





(私論.私見)