228 使用者責任論

 2003.10.30日、1995年京都市で、暴力団抗争事件を警戒中の警察官が、暴力団山口組の下部組織組員に誤って射殺された事件をめぐる損害賠償請求訴訟で、警察官の遺族が、渡辺芳則組長や実行犯らを相手に計約1億6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪高裁で下された。判決は、「渡辺組長は下部組織の対立抗争を指揮監督できる地位にあった」として、民法の定める使用者としての責任を認定。実行犯二人と直属の組長の3名に計約8千万円を連帯して支払うように命じた一審判決を変更し、渡辺組長を含めた4名で同額を賠償するよう命じた。

 暴力団の抗争事件を廻り、上部組織の組長の使用者責任が高裁判決で認められたのは初めて。広域暴力団のトップに賠償を命じた司法判断の前例は無く、弁護団は「暴力団抗争事件に対する抑止力になる」と評価している。

 林裁判長の下した判決法理は、まず、@・暴力団の非合法活動に対しても、民法の定める「事業執行での使用者責任を問える」とした。その上で、A・山口組では渡辺組長の意向が下部組織の組長を通じて末端の構成員にまで及ぶ構造になっている。B・下部組織や構成員は他団体との対立抗争を速やかに総本部に報告しなければならないとされている。よって、C・渡辺組長が、実行犯である組員らを指揮監督できる使用者の地位にあった。D・「発砲事件は、組織の維持拡大に直接かかわる行為で、渡辺組長の事業と密接に関連している」としている。

 直属の組長に対しては、「組員に対立抗争を避けるよう、指導する注意義務があったのに怠った過失がある」と指摘し、実行犯2名との共同不法行為責任を認めた。昨年9月の京都地裁判決は、実行犯と直属の組長の共同不法行為責任を認定していたが、渡辺組長の責任については責任を否定し、請求を棄却していた。

 10.31日、渡辺芳則組長が、判決を不服として、最高裁に上告した。上告手続きの書面が30日、同高裁に提出された。





(私論.私見)