新潟中越沖地震に伴う柏崎刈羽原発の火災及び放射能漏れ考

 (最新見直し2007.8.19日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 新潟地震が天災なのか人工災なのか分からない。はっきりしていることは、柏崎刈羽原発事故が原発の安全性神話をぶち壊したことである。当局の説明がこれまでもデタラメであり、目下の弁明もデタラメであるということである。改めて恐怖を覚えた者はれんだいこだけではあるまい。

 2007.7.23日 れんだいこ拝


【柏崎刈羽原発事故発生】

 2007.7.16日午前10時13分頃、新潟中越沖地震が発生し、柏崎刈羽原発が壊滅的な被害を受けた。3号機原子炉建屋の電源トランス(変圧器)火災の模様を録画した映像が放映された。他にも使用済み核燃料貯蔵プールの水オーバーフロー、排気塔からのヨウ素他の排出が報じられた。

 7.17日、東京電力は、地震の影響とみられる50件のトラブルが全7基で確認されたと発表した。1〜6号機では放射性物質は検出されなかったが、7号機では放射性のヨウ素、クロム、コバルトが検出された。こうした放射性物質は主に原子炉の冷却水に含まれる。微量ながら大気中に放出されていたことも確認された。

 1〜5号機では、建屋の屋上などを通っている排気ダクトがずれているのが見つかった。さらに全7基で、使用済み燃料プールの水が作業用の床にこぼれていることが確認された。1、2号機の計5台の変圧器で、固定用ボルトの折損が見つかった。3号機の変圧器火災の原因は不明だが、ほかの変圧器でも火災が起きる可能性があったことになる。1、2号機は、建屋内外の計5か所で消火用水の配管の損傷が確認された。

 固体廃棄物貯蔵庫では、交換した配管や汚染した手袋などの低レベル放射性廃棄物を納めたドラム缶約100本が転倒し、数本はふたが開いていた。貯蔵庫内の床の汚染状況を調べた結果、17か所のうち1か所で微量の放射能が確認された。ドラム缶は全部で2万2000本あり、今後、転倒数は増える可能性がある。


【東電と国の責任考その1】
 既に1980年当時、発電所設置許可をめぐる行政訴訟が地元住民によって提起され、ここに活断層のあることは明らかにされていた。東電と国は「小さいから大丈夫」として、発電所を建設した経緯がある。チェルノブイリ事故では死者の数は7万人以上(ウクライナ政府発表)、半径30km以内がいまだに立ち入り禁止、その十数倍の広大な地域が農業不可となっている。

【東電と国の責任考その2】

 「阿修羅原発4」の2007.7.17日付け建築住&宅ジャーナリスト・細野透・氏の「柏崎原発の被災を許した大ポカ答弁書」の次のくだりを転載しておく。

 この事故でわたしの頭をよぎったのは、3年前、新潟県中越地震が起きた際に、当時の小泉総理が柏崎原発に関して提出した答弁書だった。今回の地震をまったく見逃した、いわば大ポカの答弁書である。

 木で鼻をくくった答弁

 2004年10月23日、新潟県中越地震が発生した。震源は新潟県のほぼ中央に位置する小千谷市で、マグニチュードは6.8。67人の死者と4800人の負傷者を出した。柏崎原発に被害はなかったが、新潟県選出の近藤正道参議院議員が11月18日に、「原子力発電所に関する質問主意書」を提出した。ポイントは2点だ。

 耐震設計審査指針では直下地震の規模をマグニチュード6.5と想定している。これは過小評価につながらないか
 耐震設計審査指針の定める地震の速度・加速度の算定式を改めなくてよいのか

 当時の小泉純一郎総理大臣は同年11月26日、扇千景参議院議長に次のような答弁書(内閣参質161第7号)を提出した。

 「敷地の直下または近傍に、マグニチュード6.5を超え、敷地に大きな影響を及ぼす可能性がある地震の震源となり得るような活断層がないことを確認している。マグニチュード6.5という直下地震の規模を見直すことが必要となるとは考えていない」。

 「耐震設計審査指針では、地震の速度・加速度の算定式を定めているわけではないので、お尋ねの点にお答えすることは困難である」。

 いわば門前払いである。この答弁書を小泉総理が自分で書いたとはもちろん思わない。それにしても、木で鼻をくくったような答弁は、国の原子力行政と電力会社の原子力発電事業への不信感を抱かせてしまう内容ではないか。

 10キロの「近傍」で812ガルを記録

 その答弁書から2年8カ月後の2007年7月16日、新潟県中越沖地震が発生した。地震の震源は、気象庁の発表によると、新潟市の南西約60キロ、深さ17キロだった。マグニチュードは6.8だ。今回の地震の震源は、本当は柏崎刈羽原子力発電所の北方10キロ程度と言った方が分かりやすい。

 マグニチュード6.8は、マグニチュード6.5のおおよそ3倍の大きさだ。柏崎原発から10キロ程度という距離は、はたして「敷地の近傍」に相当しないのだろうか。

 防災科学技術研究所の強震ネットワーク「K-NET」によると、柏崎市では実に812ガルの加速度を記録している。柏崎市の震度は6強と伝えられているが、812ガルならギリギリで震度7と言えなくもない数字である。

 今度の地震を経験して、我々が求めたいのは、きちんとしたデータの公開である。今回の地震で、原発では何ガル、何カインが記録されたのか。 今回の地震で原発にはどの程度のダメージがあったのか。変圧器は何ガル、何カインで設計されていたのか。変圧器はなぜ破壊したのか。

 また、前回、近藤正道参議院議員が提出した質問にも、誠実に答えてもらう必要がある。


 今回の地震は原発の「近傍」なのか、そうでないのか。 原発設計の最大速度は何カインで、最大加速度は何ガルなのか。 最大速度、加速度に襲われたとき、原発はどんな状態になるのか。


 もう、木で鼻をくくって済む段階ではない。

 日経BP建築&住宅ジャーナリスト 細野 透氏2007年7月17日
 http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ba/22/


【国際原子力機関が調査団派遣の意向を表明】
 7.18日、IAEA=国際原子力機関のエルバラダイ事務局長は、訪問先のマレーシアのクアラルンプールで記者会見し、柏崎刈羽原子力発電所で地震の影響で放射性物質を含む水漏れなどのトラブルが相次いだことについて日本から報告を受けていることを明らかにしたうえで「日本は原子炉の構造やシステムなどについて全面的な調査を行う必要がある」と述べた。そのうえで「IAEAは被害の検証と教訓を生かすために国際的なチームを通じて日本の調査に加わる用意がある」と述べ、要請があればIAEAの調査団を現地に派遣する考えを明らかにした。

【これは何だ、二酸化炭素圧入実証試験との因果関係を問え】
 「今回の地震と長岡の地下にCO2を圧入したこととの因果関係は?(低気温のエクスタシー)」が注目すべきことを指摘している。それによると、。2003.6.20日から、地球環境産業技術研究機構(RITE)が主体となって、新潟県長岡市の岩野原基地地下約1100mに工業用に製造されたCO2を圧入する二酸化炭素圧入実証試験を開始、1日約20t、約1年半かけて、合計約1万tのCO2を地中に圧入したと云う。

 この実験開始から1年後に新潟中越地震が発生し、そして4年後の今回、またもや大きな地震が発生した。中越地震の震源地と、中越沖地震の本震の震源地さらに余震の震源地と、CO2貯瑠実験の場所を線で結ぶと、ほぼ一直線になる。そしてその「ど真ん中」がCO2貯瑠実験の場所となると云う。こうなると、因果関係がないのかどうか、早急に調査されねばなるまい。

【長周新聞の反原発論】
 「長周新聞」の無2007.7.20日付け記事「日本壊滅の危機にさらした事故 地震に耐えられなかった柏崎刈羽原発」を転載しておく。
 新潟県の中越沖地震により、東京電力の柏崎刈羽原発では火災発生や放射能漏れなど緊急事態が発生した。柏崎刈羽原発は1〜7号機まで総出力821・2万`hあり、1カ所の発電所としては世界最大規模である。原子炉内の核燃料や運転によって蓄積された死の灰の量ははかり知れず、1歩間違えばメルトダウンや大爆発もありうる寸前であった。そうなればチェルノブイリ原発事故の何10倍という大量の放射能が放出され、日本国土全体が壊滅的な大惨事となる危険性をはらんでいた。民族の重大問題としてこれをあいまいにすませるわけにはいかない。

 放射性物質を大気中に放出

 今回の地震では、柏崎刈羽原発3号機から火災が発生し、約2時間にわたって黒煙を上げて燃え続けた。消火用水の給水管も破損し、水が漏れて、消火作業もままならなかった。また同6号機では使用済み核燃料貯蔵プールの放射能をふくむ水が海に放出された。緊急停止した7号機の主排気筒からも放射性物質が大気中に出た。ほかの6基の原発でも燃料プールがあふれている。また低レベル廃棄物入りのドラム缶約400本(当初は100と発表)が倒れて100本(当初数本と発表)のフタがはずれ、放射性物質が床から検出された。貯蔵庫には低レベル放射性廃棄物入りのドラム缶約2万2000本が保管されていた。

 東京電力の17日段階の発表では、50件のトラブルがあったということだが、実際にはそれ以上の事態が起こっていることは明らかであるが、全貌は発表されていない。現地の住民は「東電はこれまでもデータの偽造や事故隠しをやってきている。東電のいうことは信用できない。まだまだ重大な事態を隠しているに違いない」とみている。

 しかし、現段階でもいえることは、原子炉内の放射能が外部に漏れるというもっとも危険な事態が発生したことである。東電も国も「原発は地震が起きても放射能が漏れることはない。絶対に大丈夫だ」として、地震のさいの防災体制もとってこなかった。

 従来の国の原発の耐震基準はマグニチュード(M)6・5の直下型地震に耐えられるように設計し、地上で確認できる大きな断層を避ければよい、というものであった。しかし、2005年の宮城地震での女川原発でも、今年3月の、能登沖地震での志賀原発でも想定をこえた揺れが起こっている。また、中国電力島根原発近くで発生した鳥取県西部地震や新潟県中越地震ではそれまで知られていなかった断層が大地震を引き起こした。国の基準では実際にあわないことがかずかずの地震で立証されている。地震学者のあいだでは「今やどんな場所でも最大でM7程度の地震を想定しなければいけない」という共通認識になっており、すべての原発で早期に見直す必要性を強調している。

 東電の柏崎刈羽原発は7基ともM6・5の耐震構造しか持たなかった。今回の中越沖地震はM6・8の規模であり、想定した2・5倍もの揺れで、破壊力はすさまじい。使用済み核燃料プールの水が大きく波打ってあふれ、放射能をふくむ水が外部に漏れたことは当然起こるべくして起きたといえる。

 地震の際の原発事故で最悪の事態は、冷却水の配管が破損することである。冷却水が大量に失われると、メルトダウン(炉心溶融)という致命的な事故になる。冷却水が失われると、核分裂反応はとまるが崩壊熱による発熱のため、燃料集合体の温度は10〜60分後に数1000度になり、溶け落ちる。30〜120分後には原子炉の鋼鉄も溶かし、溶け落ちた燃料が水に触れると水蒸気爆発を起こす。この爆発で原子炉格納容器が破壊されれば、チェルノブイリを上回る大事故になる。

 原子炉内には大量の核燃料や使用済み核燃料、低レベル廃棄物なが蓄積されている。100万`hの原子炉を1年間運転すると、長崎型原爆1万発をつくれるプルトニウムと広島型原爆4万発分の死の灰が発生する。これが毎年蓄積されていく。柏崎刈羽原発では1〜5号機が1基110万`h、6、7号機が1基135・6万`hで合計821・2万`h。ウラン燃料は原子炉1基で100d以上は装填されている。これに使用済み核燃料プールが7基ともにあり、低レベル廃棄物のドラム缶が2万本以上も貯蔵されていた。7基を1年間運転するだけで長崎型原爆8万発分のプルトニウム、広島型原爆32万発分の死の灰がたまっていたことになる。

 今回の地震でも、冷却水用の配管が破損する危険性は十分にあった。そうなれば、原子炉内にたまっていた死の灰が外部に放出され、チェルノブイリどころでない大惨事になっていた。

 危険な55基の原発 どれも地震地帯に立地

 日本には現在55基の原発が稼働している。日本はすでに地震活動期に入っていると専門家は指摘している。現在とくに危ない地域として、東海、関東をあげ、とくに東海地震はM8クラスを想定している。浜岡原発がその震源中央に立地していることに警鐘をならし、柏崎、島根、伊方の各原発も要注意として警告してきた。また、日本列島が地球上でもっとも地殻変動が活発な変動帯であり、世界の地震の10%は日本列島とその周辺海域で起こっており、とくに日本の原発のほとんどが地震危険地帯に立地していることを強調して、早期に地震地帯での原発立地を見直すことを進言してきた。専門家の試算では、全国の原発を停止しても電力をまかなうことができるとしている。地震による原発事故で、生命、財産、産業などが犠牲になることを考えれば、原発をただちに停止することの方が国の利益になることは明らかである。

 今回の新潟中越沖地震では柏崎刈羽原発の直下に断層があったことが判明した。IAEA(国際原子力機関)なども「日本は原子炉の構造などについて、全面的な調査をおこなう必要がある」と重大視している。だが東電やマスコミは早早と地震による原発事故をかき消そうと必死になっている。東電などは、海に放出された放射能の濃度をごまかしたり、倒れたドラム缶の数を少なく発表したりし、この重大時に及んで隠ぺい体質丸出しにして、地元住民から厳重な抗議を受けている。現地入りした安倍首相も短時間の視察でお茶を濁しただけである。

 国の利益からみるなら、柏崎刈羽原発だけでなく、全国の稼働中の55原発を停止させなければならない。また新規立地計画はただちに白紙撤回すべきである。だが安倍政府は、「後は野となれ」という態度に終始している。

 憲法を改悪してアメリカのための戦争に日本人民を動員しようという安倍政府は、原発建設でも原爆の材料であるプルトニウムを生産し、核武装化を狙っており、日本人民の安全などはまったく念頭にはない。アメリカの戦争のために日本の若者を肉弾として差し出す道を切り開いた小泉政府の路線をひきつぐ安倍政府は、日本をアメリカの原水爆戦争の戦場にしようとしており、日本人民の生命、財産、国土も丸ごと差し出そうとしていることが今回の対応でも明らかになっている。

 柏崎市や刈羽村では、計画段階から原発建設予定地の直下に活断層が走っていることを指摘して原発建設に反対してきた住民は、東電への抗議行動を開始している。また「活断層はない」の判決を出して東電の原発建設を援護してきた東京高裁も追及し、全国的な原発反対の運動を巻き起こすかまえである。また、全国の原発立地点の住民も、今回の事態を重大視し、電力会社と国がぐるになり、「原発は国策」「原発は安全」とだましてきたことに怒りを燃やし、原発をやめさせる運動に全国で立ち上がろうと呼びかけている。

【(フィナンシャル・タイムズ記事の指摘】
 「阿修羅原発4」の2007.7.28日付け投稿「日本は絶対に原子力を手放さない(フィナンシャル・タイムズ)」を転載しておく。
 http://news.goo.ne.jp/article/ft/politics/ft-20070728-01.html

 (フィナンシャル・タイムズ 2007年7月26日初出 翻訳gooニュース) FT東京支局長デビッド・ピリング

 マグニチュード6.8の地震に見舞われた新潟県刈羽村の住民の多くは、家を失った。身内を亡くした人たちもいる。にもかかわらず、地震発生直後に多くの人たちが真っ先に気にしたのはひとつ。村の近くにあるあの原子力発電所から立ち上っている、巨大な黒煙はいったい何だ?――という一点だった。元町議会議員の武本和幸さんはそう言う。

 原発から黒煙がもうもうと立ち上るあの映像は、日本中を震撼(しんかん)させた。世界最大規模の巨大な柏崎刈羽原子力発電所で稼働中だった4つの原子炉は、設計どおりに自動停止した。しかし原子炉以外の部分では、安全対策と安全確保の手順に重大な欠陥があった。

 どたばた警察コメディではあるまいに、原発で初期消火にあたった4人は十分に火を消すことができなかった。その理由は、おっとびっくりまさかそんな、消火用水の水道管が地震で破損していたからだという。地元の消防隊は、被災者の救援活動に忙殺されていたため、出火から2時間近くたってようやく、原発に到着する始末だった。そしてその後の調査で、日本の電力供給の3割近くを担う原発全55基の内、消火体制の整っている原発はひとつもないことが判明した。

 ロンドンのハイド・パークの2倍強もの広さがある柏崎刈羽原発は、中越沖地震ほどの規模の揺れに耐えられる造りにはなっていなかった。設計時に想定した揺れの強さについては、1号機は273ガルだったが、実際の揺れは680ガルにも達した。

 その結果、放射性物質を含む水が海に漏れ出し、放射性物質が大気中にも放出されるなど、個別に発生した損傷や不具合などのトラブルは63件に上った。柏崎刈羽原発を操業する東京電力と、経済産業省原子力安全・保安院は共に、漏れた放射能の量は「極めて微量」で、人体はや周辺環境への影響はないと説明し、住民の不安を解消しようとしている。漏れ出した放射能の影響は確かにそうなのかもしれない。しかし東京電力は当初、放射能漏れはないと発表していただけに、彼らの言うことを信頼していいのかどうか。

 おまけに、おそらく何よりも心配なことに、今回の地震が起きるまで東京電力は、柏崎刈羽原発の間近くに断層はないと主張していたのだ。今回の地震で、震央(震源の真上)から原発までの距離は16キロ。さらに、余震などを分析した結果、地震の断層が、原発の地下まで延びている可能性が高いことも判明した。

 こうして次々と明らかになる新事実は、反原発派にとっては援護射撃のようなものだ。原発に反対する人たちは、地球上で最も地殻変動が活発な場所のひとつ位置する日本で原発を作るなど、狂気の沙汰だと主張しているからだ。神戸大学都市安全研究センターの石橋克彦教授(地震学)によると、日本は全国どこでも巨大地震に見舞われる危険があるのだという。6500人が犠牲になった1995年の阪神大震災は、それまで地震の危険は低いと信じられていた大都市を襲った。石橋教授は、地震と地震による核・放射能事故が引き起こす複合的災害(原発震災)で数百万人が犠牲になる危険があると警告している。

 地球上にある原発の1割を、地球上で最も地震の活発な地域のひとつに押し込めることは、果たして賢明なことなのか。原子力発電そのものが大嫌いだというわけでなくても、これにはいささか首をひねりたくなる。しかし原子力政策の担当者たちは、過剰反応はしないほうがいいと話す。まず第一に、中越沖地震から学ぶべき教訓は、原発の危険性ではなく、むしろその逆かもしれないという指摘だ。柏崎刈羽原発の設計想定よりも2倍以上の最大加速度で地面が揺れたが、原子炉は正常に自動停止した。トラブルが起きたのは部品は、基幹部分のものではなかった。大気中に漏れた放射性物質の量は、保安院などの発表によると、「東京〜ニューヨークを飛行機で往復する間に宇宙から浴びる放射線の1000万〜100万分の1の量」に過ぎなかった。

 国際的な原子力の専門家は、最新の設計技術を使えば、想像できる最大規模の地震にも耐える原発を造るのは可能だと話す。自動停止と冷却機能、漏えい遮断などの機能がある限り、チェルノブイリ型の事故はほとんど不可能なのだという。

 ポイントは2つある。第1は、規制・監督の問題だ。民間事業者はどう見ても、安全性について手抜きをしてきたし、地震発生の可能性をありえないほど低く見積もっていた。これまでのやり方を見ても、日本の経済界は本当のことを隠すのが得意だ。それだけに、政府が徹底的に監視し、積極的に監督機能を果たさなくては、事故防止のためあらゆる手を尽くしていると国民を説得できない。

 第2のポイントは、もっと根本的な問題だ。そもそも日本は原子力産業をもつべきなのだろうか? ここで問題になるのは、石油や天然ガスをほとんど持たない日本にとって、原子力発電のない生活は考えられないということだ。

 自分たちは資源の乏しい国。日本人が抱えるこの根深い強迫観念こそ、1930年代の日本を突き動かし、そして破滅へと追い込んだ帝国主義的野望の最大要因だった。自分たちには資源がないという日本人のこの強迫観念がいかに根強いものか、日本の外ではあまり理解されていない。たとえば海外の自由貿易主義者たちは、日本の農産物関税が高すぎると批判しているが、日本国内の議論はそれよりむしろ、カロリーベースで40%しかない食料自給率をどう引き上げるかに移りつつある。

 日本は資源に乏しい国だというこの強烈な恐怖は、実は一部で言われるほど、合理性を欠いたものではない。いったん危機が起きれば、国内に食糧とエネルギーが入ってこなくなるという、そういう弱点を日本は抱えているのだ。ということはつまり、日本政府はこれから、原発の安全性向上のために徹底した見直し作業に入るが、そもそも日本が原子力産業をもつべきかどうかは、これからも議論されないままということになる。
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Re:れんだいこのカンテラ時評323 れんだいこ 2007/08/19
 【2007.8.19日付け産経新聞正論の袴田茂樹「マスコミと電力会社は悪循環断て」の俗論考】

 2007.8.19日付け産経新聞正論は、青山学院大学教授・袴田茂樹の「マスコミと電力会社は悪循環断て」を掲載している。れんだいこがこれを読むのに、彼がいわゆる知識人とするならその俗物性を如何なく発揮していると判ずるので、れんだいこが筆誅しておく。

 袴田は次のように云う。

 概要「中越沖地震の際の柏崎原発事故は喧騒されるに及ばない程度の被害であったのに、何か冷静さを欠いた異常さで大騒ぎした。原発の安全性に於いて日本は世界最高技術を有していることを知り信頼すべきである。それなのに、一部のマスコミは事故を反原発キャンペーンに利用し、為に原発会社の隠蔽体制が強まるという悪循環が生じている。今最も必要なことは、問題の直視と冷静かつ客観的な報道であり、悪循環を断って風評被害を防ぐこと、今回の事故を生かし、今後の事故防止のため最善を尽くすことだ」。

 「安全性に関しては、原発関連の設備すべてに完全を求めるのは非現実的だ。自動車や航空機も、絶対の安全性を求めるとしたら、使用を禁止する以外にない。地球温暖化対策や世界のエネルギー戦略の動向を見ると、我が国でも風力、太陽熱、バイオなど新エネルギー開発と並んで、核エネルギーの利用は不可欠だ」。

 凡そ以上のように立論しているが、正論足りえるだろうか。産経新聞は正論として掲載しているのだろうが、れんだいこは暴論と断ずる。第一、袴田は、原発問題の深刻さを全く理解していないように思える。単にのうのうと体制派の原発政策を提灯する愚論を吐いているのではないのか。この程度の頭脳で大学教授として飯が食えるのは何とも羨ましいと云うべきか恥ずかしいことである。が、この程度の頭脳が大学教授の通り相場でもあるので袴田一人を責める訳にもいくまい。

 袴田よ、お前は、「マスコミ喧騒と原発会社の隠蔽悪循環」を対等批判しているが変調さに気づかないのか。原発問題は、「ニワトリが先か卵が先か論」や「どっちもどっち論」で済ませられる問題ではあるまい。先ず原発会社の臭いものに蓋をし続ける隠蔽姿勢が有り、マスコミが当然の責務として被害の一部を漏洩しているに過ぎない。れんだいこに云わせれば騒ぎ足り無さ過ぎる。こう踏まえるところ、お前は喧嘩両成敗式詭弁で済まそうとしている。俗論愚論の極みであろう。

 袴田よ、日本政府の原発安全能力を称賛し、「核エネルギー利用不可欠」説を唱えているがマジかよ。れんだいこは、「脱兎の如く原発から徹底せよ」と発信しようとしているが、なぜかくも主張が違うのだろうか。

 思案するのに、袴田は何と、「自動車や航空機も、絶対の安全性を求めるとしたら、使用を禁止する以外にない」と揶揄して原発推進政策を後押ししているように、自動車事故や航空機事故と同じような土俵で原発事故を理解しようとしていることが判明する。しかしこれは「ミソクソ同視論」であろう。自動車や航空機の安全性と原発の安全性とは決定的に質が違うのに同じ質で評している。凡そ「馬と鹿の区別ができない」輩であることを物語っていよう。袴田よ、申し訳ないが、お前は原発問題を論ずる素養が無さ過ぎる。この問題に関しては今後口を慎み、こたびの愚論を恥じ当分蟄居すべきだろう。

 れんだいこにも分かる原発問題には二つの安全性問題がある。一つは核エネルギー精製過程の安全性であり、後一つは核最終廃棄物処理の安全性である。そのどちらもが驚くほど危険なまま推進されている。

 今後の科学の発達でよしんば前者がより安全になるとしても、後者の安全性が全く杜撰なままに精製され続けている。核最終廃棄物は何と単に地下の地中深くに格納し貯蔵されるという何とも原始的な方法で管理されているのが実際だ。それしか方法がないという厄介なものであるということを知る必要がある。従来、岡山県の人形峠に格納されていたが、現在は青森県の六ヶ所村にある日本原燃(株)のウラン濃縮工場に移転され保管されている。ここも手一杯に成り、現在政府が全国の過疎村に補助金を餌に引き受け手を求めているのは承知のところである。

 問題は次のことにある。原発や地下埋蔵施設が地震や軍事テロで放射能漏出し、大気汚染、地下水汚染、土壌汚染に結びついたらどうなるか、これらの当然の心配を顧慮せぬまま原発政策が推進されている。その様は国債垂れ流しとよく似ている。この問題に比すれば、北朝鮮のテポドン如きで大騒ぎするのは全く芝居臭いものでしかない。こちらの方は飛びついて騒ぐのに、原発問題は騒がれない。松岡農相変死事件は本来マスコミの好餌であるのに報道管制が敷かれたのと同じである。

 袴田よ、お前は最終廃棄物処理の安全性について述べぬまま、「核エネルギー利用不可欠」説を唱えているが、どういう思考回路しているのか。お前がその安全性を論証し切るなら聞いてみるから述べて見よ。いや実は詳しいことは知らぬとは言わせないぞ。なぜなら、お前は「核エネルギーの利用は不可欠だ」と推進役をしているのだから。

 れんだいこが思うに、核最終廃棄物処理の安全性について述べぬまま原発政策推進の旗を振り続けるのは歴史的大逆犯罪である。れんだいこ史観によれば、大東亜戦争責任よりもなお罪が重い。戦後日本は、敗戦のツケにしてはあまりにも高すぎる代価で原発政策を推進させられている。これの始発の旗振りは読売の正力松太郎と中曽根である。この二人は全く戦時中も戦後も一貫してろくなことをしていない。この面では宮顕もよく似ており、そのポン友読売のナベツネも然りで、これらの人脈は奥の院で結びついている。実にケシカラン。

 袴田よ、原発がひょっとして日本民族ジェノサイド政策によりもたらされているものであるとしたら、その旗振りをする手前は何者ぞ。何やらソ連邦問題で一家言していたように記憶するが、原発問題でこの程度の知見をひけらかすようではどうせろくな仕事はしていまい。袴田批判はこれぐらいにして総合批判に移る。

 今や我々は、「原発から脱兎の如く撤退せよ」。れんだいこはこう強く主張したい。その理由を以下述べる。産業エネルギーは過去、木炭から石炭、石炭から石油、石油から原始核エネルギーと変遷してきているが、我々は、木炭から石油までの政策と原始核エネルギー政策との質の違いを弁えるべきである。石油エネルギーまでは進歩的だろう。だがしかし、原始核エネルギーとなると話が違う。分かり易く云えば、あれは悪魔科学の所産である。我々は、原始核エネルギーに手を染めてはならない。こう分別すべきである。

 核最終廃棄物処理の厄介さを考えれば決して安価ではなく、目先は良くても最終的には天文学的に高い代価を払わされることになろう。故に我々は目先の論理に騙されず、一刻も早く核エネルギーに依拠しないで済む自然環境適合型の代替エネルギーを模索し、その政策に転換せねばならない。

 付言すれば、日本の財閥系企業は今、現代世界を牛耳る国際金融資本帝国主義の下僕となって世界に原発を敷設する役目を引き受けつつある。が、これがワナだとすればどうなるか。局面が変われば、大東亜戦争の戦争賠償金など比較にならない莫大な損害賠償を課せられる可能性が強い。会社もろとも粉塵に帰することが予見される。一時は稼ぐが、結果的に元も子もなくすであろう。これが長年の養豚政策の果てに待ち受けるものである。日本の財閥系企業は今、そういう仕掛けられたワナの道に誘い込まれつつあり、近い将来泥沼の中でのたうち回ることになるだろう。それは、明治維新以来の好ネオ・シオニズム政策に悪乗りした当然のツケかも知れない。

 日本の財閥系企業が自滅するのは勝手である。勝手で済まないのは、日本列島内に米軍基地と同様に原発をあちこちに敷設され、それが攻撃の目標になり、あるいはそれとも関係なく自然劣化し、いずれにせよ大気汚染、地下水汚染、土壌汚染に至り、日本人民大衆が壊死し、生き残った者も国土を離れねばならない時の恐怖である。さしもの豊葦原の瑞穂の山紫水明の国もこれでお仕舞いにさせられてしまう。我々は、原発政策が科学技術の必然的発展として受け止めてはならない。現代世界を牛耳る国際金融資本帝国主義の飽くことなき金儲け主義と日本撲滅政策とが合体した仕掛けられたワナとして受け止めなくてはならない。我々は、このことを真剣に考えなければならない。ついでに誰が旗を振ってきたのかも見定めねばならない。

 それらを経て、れんだいこは、太陽光エネルギー政策に真剣に取り組むべきであると提言したい。水力、風力、地熱、潮力、火山灰土その他いろいろ考えられるが、考えられる研究を進めるべきであり、その中でも太陽光エネルギーの効率的開発こそ一番安上がりで環境適合するのではないかと思っている。れんだいこは科学者ではないので詳しくは述べられないが、思想哲学上はそう推断できる。

 もとへ。中越沖地震に伴う柏崎原発事故の教訓から学ぶべきことはこういうことであり、「原発から脱兎の如く撤退せよ」と云うことはあっても、袴田の如くな「核エネルギーの利用は不可欠」なる論を振り回すことではない。それは恐ろしいほどの知の貧困であり、体制御用化理論である。袴田はそれを、2007.8.19日付け産経新聞正論の「マスコミと電力会社は悪循環断て」で安上がりの知を好む言論士であることを自己暴露した。我が国のいわゆる知識人の知のレベルを示した。これ以上責めるのは酷なので後を控える。

 2007.7.19日 れんだいこ拝





(私論.私見)