放射性廃棄物処理問題考

 (最新見直し2007.7.22日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 原子力の世界では、ウランを採掘し、濃縮、加工して原子炉に装荷するまでの段階を「アップストリーム(上流)」と呼び、原子炉でウランを燃やしたあとの、再処理、廃物処理・処分を「ダウンストリーム(下流)」と呼ぶ。放射能による被曝の危険は「上流」で始まっている。科学がウランを採掘した段階から被曝が始まる。ウラン鉱山に由来する被曝には2つあり、1つは採掘に従事する労働者の被曝であり、もう1つは掘り出した鉱石、鉱滓および残土による環境汚染からの被曝である。人類は、 ウランを掘り出すかぎり人類は放射能による脅威を受け続けることになる。今日までの原子力行政はウラン利用の面しか考慮せず、危険性の後始末には関心を払わない。

 原子力利用とそれを推進する行政は、まさに悪魔の科学同盟である。人類史上、このような知性を探求するのは、例の連中しかいない。調べれば調べるほどますますこのことがはっきりするだろう。

 2007.7.26日 れんだいこ拝


【放射性廃棄物とは何か。処理問題の何がどこが問題か】
 2006.5.22日付け毎日新聞は、21面で中村牧生記者の「高レベル放射性廃棄物」の見だしで記事を掲載している。これを参照しながら、「放射性廃棄物処理問題」にコメントしておく。

 2000年、日本政府は、核燃料サイクル開発機構(現・日本原子力研究開発機構)が「放射性廃棄物の地層処分は技術的信頼性がある」と報告したのを受け、法律を整備し、実施を決定した。国の認可で「原子力発電環境整備機構」が実施を目指し、2002年末から候補地の立候補受付が始まっている。全国から処分候補地を公募しているが、未だに手を挙げた自治体はない。地層処分の場所が決まり、埋め立てが開始されるのは早くても2060年頃となる。

 原子炉を運転すれば、核分裂生成物や放射化生成物が生み出される。高レベル廃棄物とは原子力発電所で使用された燃料棒を再処理した際に、ウラン235が核分裂をして生じた核廃棄物のことを云う。半減期が長く、数千年をかけて保管、管理しなければならない。

 最終核廃棄物とは、使用済み強い核燃料を再処理して、放射能と熱を出す核分裂生成物である死の灰と呼ばれるウランとプルトニウムを抽出した後に残る高レベル放射能性の強い廃液を云う。これを科学的処理しようとすると厖大なエネルギーが必要となり、あるいは別の放射能が新たに生み出されてしまう。そういう訳で、核分裂生成物や放射化生成物の科学的処理が出来ない。そこで、生み出した放射能を地中深く埋める案しかすべが無い。それさえ安全の保証はない。これを称して、原子力発電所は「トイレのないマンション」と云われる。「下流」問題の深刻さがここにある。

 原子力廃液をガラス原料と混ぜてガラス固化体にさせ、ステンレス容器に詰め、使用済み核燃料再処理工場である青森県六ヶ所村の中間貯蔵施設などで30−50年間冷却貯蔵し放射能と崩壊熱の減少を待つ。六ヶ所村の再処理工場が本格稼動すると、ガラス固化体は年間で約1000本、40年間で約4万本を埋設する。他にも、日本が再処理を委託した英仏からの返還分2200本も加わる。

 中間貯蔵を終えた後に最終処分場に処理され、地中深く300m以上の地下に埋設する。地中では、周囲を厚さ約19センチの金属製の壁(オーバーパック)と約70センチの粘土で二重に囲む。この人工バリアを安定した地質という天然バリアで隔離する。オーバーパックの耐用年数は約1000年。それ以降は、地下水が浸透して放射能漏れが予想されている。 「1000年後とはいえ将来的に放射能が地上にしみ出す可能性があり、環境への影響を懸念する声もでている」。地震災害については未知であり、無責任極まりない。

 10万年以上にわたって岩盤が放射能を閉じ込めてくれることを期待している。再処理工場からアメリシウムなど超ウラン元素(TRU)を含む放射性廃棄物もドラム缶で年間8800本出るが、これもガラス固化体と一緒に「併置処分」する検討が進んでいる。

 2006.5.22日 れんだいこ拝
 原子力発電所の対応年数は40数年と言われており、現在炉心交換などで寿命延長などを図ってもコンクリートの対応年数が過ぎれば使用不可能となる。つまり長くても100年程度の使用しか出来ないのが発電所である。高レベル廃棄物は人が近付けば数秒で黒焦げになる。それを数千年単位で管理するなど不可能といわざるを得ない。

 2006.5.22日 れんだいこ拝

【仙経顕聖氏の高レベル放射性廃棄物の処理論】
 阿修羅原発4」の仙経顕聖氏の2007.2.4日付け投稿「高レベル放射性廃棄物の処理」を転載しておく。
 何よりも最大の産業廃棄物は原子力発電所から排出される高レベルの放射性廃棄物である。現在、原子力発電所の建設が発展途上国では、産業の発展からエネルギー需要が拡大し大々的に推進されているが、先進国では住民運動の抵抗や環境問題も絡んで大きく行き詰まりを起こしてきている。特に、各国とも放射性廃棄物の処理に有効な対策を講じることができずに、頭を悩ましているのが現状である。この放射性廃棄物には、気体、液体、固体のものがあるが、その中で、特に処理が面倒なのが固体のものであり、低レベルのものから高レベルの放射能を含むものまである。その処理方法は現在までのところ、次のようである。

 まず、低レベル固体廃棄物は、濃縮廃液などをコンクリートやアスファルトと一緒に混ぜ込んで、ドラム缶中に固化させてしまう方法であるが、この処分には海洋投棄と地中埋設がある。海洋投棄においては、魚や海草類に影響を与えず、将来の海底資源、開発にも支障を来さないように、人口の過密地域から遠く離れて、海流や地震等の影響が比較的少ないとされる地点を選んで、数千メートルの安定した大洋下の海底が有望視されている。しかし、現在のコンクリートやアスファルトの材質では極めて長期に亘って亀裂が入らないという保証は全くない。

 処分当局の以前の見解では、何十年か経過して、ドラム缶が腐蝕したり、コンクリートやアスファルトに亀裂が生じて、中の放射能が漏出して来ても、海洋中へゆっくり拡散して大量の水で希釈されるので、魚や海草等への影響は少ないとのことである。しかし、投棄に際して、ドラム缶の着底と同時に、水流や海底岩の為にコンクリートやアスファルトに亀裂が入らないとも限らないし、また、海洋の中央は、大陸縁辺部のように地表や水面上に出ている活火山は少ないものの、水面下の海洋底には無数の火山があり、それに海洋底は地殻内部からの熱の湧出が活発であり、地殻変動や各種気体や溶液の噴出がみられるところである。それに必ずしも周囲に一様に拡散するという保障もない。

 一方の地中埋設は、元来、粘土や砂や岩石が吸着能力やイオン交換能力を持っており、特にその特性を利用しようというものである。たとえ、何十年か経過して、ドラム缶内より放射能が漏出して来ても、周囲の厚い土に吸着されてしまい、井戸水や湧き水も厚い土の層を濾過されて来るので、人間の生活環境には、直接、放射能は浸出して来ないというものである。しかし、地中では地震等の地殻変動もあり、それに放射能の全てが土に吸着されて、一切地下水等に浸透しないという保証もない。

 また、以前の某国の調査では、地殻内部の深部断裂に近いほど、水中のヘリウムの多いことが判明した。これらの断裂上の水から、三〇〜五〇億年いや三〇〇〜五〇〇億年かかっても放射性元素の崩壊では溶け込めないほど大量のヘリウムが発見された。ヘリウムは断裂沿いに深部から上昇して来るが、その原因と源がどのようなものであるのかということは未だ解っていない。この事実は、地下深部から様々な物質を含むガスや溶液が絶え間なく流出している証拠と考えられており、工場や原子力発電の有害な廃棄物を地中深く埋めることの危険性を示す根拠ともなっているといわれる。

 次に、高レベル廃棄物処理であるが、これは量的には少ないものの放射能の濃度は極めて高くて危険である。これを封じ込めるのに、目下、多くの国で研究・採用されているのがガラス固化という技術である。これは、高レベルの廃液を加熱濃縮し、これをガラスの微粉末と混ぜて、高温(一〇〇〇〜一三〇〇℃)で溶融させる。それをキャニスターというステンレス製の容器に流し込んで固化させるというものである。そして安定した地層に深い穴を掘って地中埋設処分をすれば、高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化体、キャニスター、地層という三層の障壁によって封じ込められるというものである。

 しかし、これは高温で溶けるガラスを入れる溶融炉の方も、その高温での長期使用に耐えるものでなければならない。そうした耐熱性を有するガラス溶融炉の開発と同時に、電極も悪条件で酷使するだけに材質の選択にも慎重さを要する。更にガラスの成分組成も、高レベル廃棄物の化学成分に合わせて、溶けやすさや、固化した後の長期的安定性を考慮して、慎重に選択していかねばならない。こうした点から、各国の開発状況は必ずしも順調ではないようだ。

 投棄に当っては、現在、この地球上で適当なところは海洋底や地中への埋設しかないとしても、現在のコンクリートやアスファルトやドラム缶等のような物性では、将来に大きく禍根を残さざるを得ず、また現在のガラス固化技術では、種々の難点があり、極めてコスト高にもなりかねない。

 目下、日本は、エネルギーの柱の一角をなす原子力政策として核燃料サイクル路線を取っている。これは原子力発電所(原発)ではウラン燃料を使うが、一定期間燃やすと使用済み核燃料となる。この使用済み核燃料には燃え残りのウランと、新しく発生したプルトニウムが含まれている。核燃料サイクルでは、使用済み核燃料を再処理工場で再処理して、ウランとプルトニウムを取り出し、再び燃料に加工して利用する。エネルギー資源の乏しい日本でウラン資源を有効に使おうという発想から生まれたものである。

 因みに核燃料サイクル路線とは、貴重なウラン資源を有効に利用しようとするものである。まず、ウラン鉱山から採取したウラン鉱石をウラン濃縮工場に搬入して濃縮ウランを製造し、それを燃料加工工場に移送し、そこから燃料として原子力発電所に持ち込む。そして、使用済み燃料を再処理工場に搬入する。その後は、(一)再度、ウランをウラン濃縮工場へ移送する場合、(二)プルトニウムなどを燃料加工工場へ移送し、循環させて有効利用を図る場合があり、そして有効利用が終了した最後は、(三)ガラス固化体(廃液+ガラス燃料)として、即ち、高レベル放射性廃棄物として地下へ埋設することになる。

 某新聞報道によると、《再処理工程では、ウランとプルトニウムのほかに、核分裂によって生じた、高い放射能レベルの廃液が発生する。これをガラス原料と混ぜて固めた「ガラス固化体」が高レベル放射性廃棄物と呼ばれている。約一五〇リットル容量の固化体容器一本が、一〇万世帯の家庭で一年間全て原子力発電でエネルギーを得たときに生じてくる廃棄物の量となる。量としては少ないが、問題はその質で、強い放射線を出すため、人が近づかない場所に処分する必要がある。現在、ガラス固化体は、青森県六ヶ所村と茨城県東海村に七四二本が貯蔵され、処分を待っている。

 これまでの使用済み核燃料を全て再処理したとすると、高レベル放射性廃棄物はガラス固化体換算で、一万五五〇〇本分。今後も増え続け、二〇二〇年には累計で四万本に上る。ガラス固化体は三〇〇メートルより深い地層に処分することが決まり、処分を実施するために認可法人の原子力発電環境整備機構(原環機構)が二〇〇〇年に設立された。

 処分地の選定過程は、三段階で進められる。平成一〇年代後半頃に概要調査地区を選び、そのなかから精密調査地区を選定。その後、最終処分地を決め、平成四〇年代後半頃には最終処分地が始められるようにする。四万本の固化体を処分する施設を建設して操業する総経費は、約三兆円と見積もられ、電力会社など原発を持つ組織が拠出している。》

 これに関して、産業廃棄物全般の処理と同様に、火山灰利用新素材技術により、当該高レベルの放射性廃棄物の処理が可能となることが期待できる。先に指摘したように、現在、高レベル放射性廃棄物の処理はキャニスターと呼ばれる容器に収容してガラス固化するものであるが、容器の耐久性の問題もさることながら、その保管問題でも、地中処分か、地上処分かで意見がなかなか統一されず、一定の合意を見たとは言え、技術的には袋小路に陥っているのが現状であるだろう。これは日本のみならず、原子力を利用する先進諸国の共通の難題でもあると言える。

 そこで、今回、登場した火山灰利用新素材の構成成分や、製造技術上の特徴や、数々の優れた性能に注目すると、実に放射性廃棄物の処理にも極めて有望であり効果的であることが解る。即ち、新素材に用いられる天然火山灰の構成成分をみると、五〇〜七〇%程がガラス質成分の酸化珪素(SiO2)であり、また混入する混和材キラも九〇%余りがガラスの微粉末である。つまりガラス質が多いのである。

 そして製造技術上の特徴をみると、まず天然火山灰、セメント、混和材キラ、混和剤、水を適切な方法で調合して火山灰モルタルを作るのである。そしてこの火山灰モルタルを、空隙部を多数有して吸水性が高くて強度も弱い火山礫の表面に、くまなく濡らして強固な殻状体をつくり、振動を与えて混和剤の分散効果により、表面を微細な結晶状の密な物質にしてしまうのである。即ち、セメント中の遊離石灰と天然火山灰の珪酸とが反応して堅固な珪酸塩(カルシウムシリケート)を形成するのである。これは、一種のガラス固化とでも言えるだろうし、また岩石固化とも言えるものであろう。結局、現在のガラス固化とほぼ同様のガラス質成分により、非常に堅固な被膜形成処分が実現できるものと言えよう。

 新素材の表面が、二〇〇〇℃の溶接バーナーの燃焼に対しても何ら変化がなく、また三〇〇〇℃でも表面のみが劣化して内部にそれ以上進行しないのも、そして防水性や耐爆裂性や強度が優れているのも、実に結合凝固剤としてのセメント自体の諸性質が化学反応により変化し、表面にそのまま現出しない為である。何よりも何の特殊装置や高価希少な材料も使用せずに、常温常圧下で極めて簡単に早期固化できる点が魅力的である。

 この製造技術をみると、火山礫に代って放射性廃棄物を用いれば、同様に火山灰モルタルは、当該廃棄物の表面をくまなく濡して被覆し、堅固な殻膜体を形成して、放射能を外部に放出させないものと思われる。そして現在のガラス固化技術と比較しても、処理方法こそ大きく相違して極めて簡単で安価であるが、用いる材料は、SiO2(ガラス質)が主要成分であり、一種のガラス固化技術の変形とも言えるものである。もっとも、耐熱性が抜群であるとはいえ、長期に亘る封印の場合にはガラス質化が進行して、最後には全体が劣化することも有り得るから、何らかの放熱手段の対策や配慮が必要となるだろう。

 何よりも新素材の優れた諸性能は、様々な外的要因に対しても、極めて最小限の亀裂や腐蝕や劣化しか発生させないものと思われ、人工管理のできない海洋底や地中深部よりも、むしろ身近な地上における管理も可能となるかも知れない。また単に放射性廃棄物を極めて安全に封じ込める可能性があるばかりか、吸着性能に富む火山灰が、放射能への対応如何によっては、別の優れた性質を発揮し得るような可能性も秘められていると思われる。

 別に指摘するように、原子核反応によって生産された放射性廃棄物と、火山の爆発によって生産された火山灰とは、様々な面で類似しており、由来を同じにする同質の面が多いと思われ、放射性廃棄物の猛毒を制する何かが、天然火山灰の中に秘められていると思われる。この大自然界には、毒が変じて薬となり、薬が変じて毒となることが多く、どんな毒物でも、有効な存在価値を見出していけば、必ずどこかに優れた有益性を有しているものである。それ故に、現在の最大の嫌われ者の産業廃棄物の放射性廃棄物も、火山灰と同様に、今後、新たな活用も見出されていくこともあるだろう。

 こうして、放射性廃棄物の処理も火山灰モルタルの独特の調合によって可能と思われるが、単に新素材で予め容器を製作して、その中に当該廃棄物を流し込んで、新素材のフタや目地で密封することも効果的だと思われる。そして放射性廃棄物の処理が、特殊火山灰モルタルによって可能となれば、他の全ての産業廃棄物の処理も可能と思われ、様々な特性を発揮する新たな素材に生れ変ることも決して夢ではないと思われる。

 ふとした火山灰利用の新規混練技術から、高レベル放射性廃棄物処理というとんでもない可能性が見出されてくるようだ。当方の指摘したようなこの高レベル放射性廃棄物処理への可能性は、後述するように、当方の恩師であった聖心先生からのご指摘だった。これは、既に政府の研究機関にも伝えており、中にはアイデアを知って研究論文にも紹介されたが、その後、何にも進展していないようだ。また発明者にもアイデアが伝わって、特許明細書の中で指摘されたが、何ら具体的検証もしていなくて、単なる思い付きの域を脱していないように思われる。これは国家の総力を結集して実践するべき課題であり、一個人が売名や打算、功名争いで実現できるものではない。それでは天が邪魔して行き詰まるというものだ。これは恐らく外国によって挑戦的に研究開発されて、新たな未知の世界を切り開いていくことであろう。猜疑心旺盛な日本人では、特別な権力と権威が働かない限り、個人的レベルでの関心と理解、協力と実行を期待するのは無理であろう。

 そして更なる研究結果によっては、硬化処理した後の廃棄物は、新たな材料として新規な用途が発見できるかも知れないものである。これは火山灰の特殊な性状から予見できるとも言えよう。火山噴火の原理と合わせて、火山灰の物性を、原子力や物理、化学、材料組成等に係る各分野の専門家の協力により、国家的見地から解明していく必要もあるだろう。何よりも、現在、循環型経済社会の構築を目指している状況下で、多大なる産業廃棄物や放射性廃棄物の処理対策においては、厳しく制限したり取り締まりこそすれ、有効な技術的解決までは手が回らず、野放しになっている由々しき現状を、根本的に解決していけるものと思われる。

 http://www4.ocn.ne.jp/~mukzke98/daikaizo.html





(私論.私見)