「ならの木」の歌

 (最新見直し2011.08.07日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 2011.8.3日、京阪神をドライブ周遊中、NHKラジオ番組で「ナラの木の歌」を聴いた。早速ネット検索で見つけた「全国の方言で「ナラの木」の詩を詠いたい」、高槻さんのブログがんばれナラの木、「東北応援の詩 『ナラの木』の波紋」その他を参照して、れんだいこなりに理解することにする。この歌を聞いて東北被災民が元気を振い立たせていると云う。元歌を方言で読み直して廻し読みしていると云う。確か戦後憲法でも方言版が流行っており、こういう動きはもっともっと強まれば良いと思う。

 2011.8.5日 れんだいこ拝


れんだいこのカンテラ時評№968  れんだいこ 投稿日:2011年 8月 7日
 【「ならの木」の方言翻訳に参加します】

 2011.8.3日、京阪神をドライブ周遊中の帰り、NHKラジオ番組で「ナラの木の歌」を聴いた。感動した。この歌を聞いて東北被災民が元気を振い立たせていると云う。元歌を方言で読み直して廻し読みしていると云う。確か戦後憲法でも方言版が流行っており、こういう動きはもっともっと強まれば良いと思う。

 帰宅後すぐにネットで高槻さんのブログがんばれナラの木」、全国の方言で「ナラの木」の詩を詠いたい」、「東北応援の詩 『ナラの木』の波紋を見つけた。今のところ東北の方言しか生まれていないので関西からも応募したいと思う。一番手として吉備太郎の岡山弁歌を紹介させて貰う。

 ★ナラの木(吉備太郎訳、岡山版男ことば編)
 でぇれぇ強ぇ風が、昼とのぅ夜とのぅ吹き荒れてのぅ
 ナラの木の葉っぱを吹き飛ばしてのぅ枝を折るわ、皮を剥がすわ
 ほんでのぅナラの木はとうとう耐えられず丸裸にされたんじゃ
 ほんでものぅナラの木は大地に踏ん張っていたんじゃ
 他の木はそこらじゅう倒れたのにのぅ、でえれぇやっちゃ
 弱うなった風が音をあげて聞いたんじゃ
 「おめえ、どがんして立っておるんじゃ」
 ナラの木は云うた
 「おめえはわいの枝を折ったり、葉っぱを吹き飛ばすことはできるじゃろう
 枝を揺らしたり、わいを吹き飛ばすこともできるじゃろう
 ほじゃけどのぅわいには大地に広がる根っこがあるんじゃ
 生まれてからこのかた、わいはのぅ次第に強うなっとるんじゃ
 おめえは、わいの根っこまでどうもこうもできまぁが
 わかろうが
 根っこはわいの一番深えところじゃからのぅ
 ほんとはのぅわいも今日までようはわからなんだんじゃ
 わいがのぅどこまで耐えられるかがのぅ
 ほんでもなぁ、今おかげでわかったんじゃ
 気づかしてくれて感謝云うでぇ
 わいはのぅわいが知っとるよりもっと強(つ)えんじゃ

 原文は次の通り。関西言葉でもどんどん続けば良いな。英語の勉強にもなるから中高校生も作ったらどうだろうね。

 THE OAK TREE

A mighty wind blew night and day
It stole the oak tree's leaves away,
Then snapped its boughs and pulled its bark
Until the oak was tired and stark.
But still the oak tree held its ground
While other trees fell all around.
The weary wind Gave up and spoke,
"How can you still be standing Oak?"
The oak tree said,
"I know that you Can break each branch of mine in two,
Carry every leaf away,
Shake my limbs, and make me sway.
But I have roots stretched in the earth.
Growing stronger since my birth.
"You'll never touch them,
for you see,
They are the deepest part of me.
Until today, I wasn't sure
Of just how much I could endure.
But now I've found,
with thanks to you,
I'm stronger than I ever knew."

 2011.8.7日 れんだいこ拝

 日本の3.11三陸巨大震災を知った米国人研究者・ダイアナさんから、クマ仲間のメーリングリストへ、Johnny Ray Ryder Jr.作「ならの木」(THE OAK TREE)の詩の紹介があった。これを、シカなどの野生動物を研究している麻布大学教授の高槻成紀さんが読んで感激し、すぐ日本語に訳して被災者を励まそうと投稿した。思いがけず、一人のひとから、庄内地方の方言に訳した詩が寄せられた。それをきっかけとして、いろんな人が盛岡、仙台、山形、福島、津軽、八戸などの地方の言葉で詩を訳し、人々に広がっているとのことである。

 翻訳者の高槻さんのブログがんばれナラの木は「ダイアナさんからのメッセージ」とその翻訳文を掲載している。これを転載しておく。
 Dear Taka-san,

After many days of helping with the fires in Mexico, a certain word has continued to resurface again and again as we try to strengthen each other to continue battling the blazes: ANIMO!

ANIMO in Spanish means to “encourage, to not lose heart, to keep fighting, to lift in spirit.”

We have lost many ranches, animals, and livelihoods. However, we continue to shout: ANIMO!

During these terrible fires, there has been much talk about Japan and how you all demonstrated your perseverance and strength during the crisis as we all watched you on television. In most other countries, everyone would have been in chaos, behaving badly toward one another. But because of what the world has seen in the Japanese people, it has been an encouragement to us in MEXICO! I heard ranchers who were losing their houses say “I have to be positive, because look at what Japan has lost, and they have stayed strong.”

After so much devastation and loss, I know that it is very difficult for Japan to maintain their strength, but please be encouraged – THIS TOO SHALL PASS. The debris will be cleaned, houses will be rebuilt, and orphans will be adopted into new families. It is so important at this time not to allow any individual to be alone, but to be adopted into new families whether they are young or old – Japan is a very large family.

One day Japan will again be strong, but now, Japan’s children are being impacted by your own courage and strength. Just like tiny acorns, those youngsters will then grow up to bring Japan into a new era of restoration, and THEY WILL BE VERY STRONG OAK TREES.

I was reading about acorn production in oak trees. After fires, the white oaks can produce acorns after only one year. The red and blue oaks may take up to 4-5 years, but they produce the most substantial acorns. The most critical time for bears here in Mexico after the fire is to simply ENDURE DURING THIS CRITICAL TIME WHEN THERE IS NO SUPPLY. If the bears can survive this bad year, then they will be able to make it in the future. We may have to provide the bears with a temporary support system until they can recover.

I also learned that the oak tree has very deep roots, but it also has an intricate surface root system that provides the tree with critical nourishment. Japan’s surface root system has been damaged, but we - YOUR FRIENDS - are your temporary support system to strengthen the surface roots and nourish the tree back to recovery.

Meanwhile, we need to just STAY STRONG. Every day the people must put one foot in front of the other, resist depression and the temptation to give up, and do SOMETHING GOOD every day to carry them to the next day. Every time they do something GOOD, it will make them feel better, and give them inspiration to continue with the next step. Day by day the tree will become stronger. Japan has done this once before, and they will do it again.

Part of the nourishment we send is in the form of Shelter Boxes, but we also send important nourishment in the form of a shout: ANIMO JAPAN! ANIMO!! DO NOT BE DISCOURAGED!

Taka-san, I have a very strong belief in my God and His power, and I know how much He loves the Japanese people. We have a strong prayer group called “New Country” where most of us are biologists and ecologists. We will continue to pray for the STRENGTH and SAFETY of the Japanese people, keeping the oak tree in mind. One famous quote in my bible says “I will weep with those who weep, and I will laugh with those who laugh.” One day soon I hope we will all be laughing together.

Please let me know if there is anything else we can do – I am sorry this letter is so long, but I am full of the emotion of the situation, and do not want to let my life be wasted on my own comfort when so many others are suffering.

I hope to meet you someday soon, and I would like to consider coming to Japan in the autumn to perhaps help clean up and rebuild.
ANIMO JAPAN! 
Arigato Taka-san!!

Diana

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 メキシコで起きた山火事で何日もお手伝いしているうちに、この惨禍と戦い続けようとお互いを励ましながら、あることばが何度も何度も浮かんできました。それはアニモ!。アニモはスペイン語で「高める気持ちをもって、心を失わないで、戦い続けるよう勇気づける」という意味です。ここメキシコではたくさんの牧場や動物や家畜が失われましたが、みんなで「アニモ!」と叫び続けました。このひどい山火事のあいだ、日本について、そしてテレビを見ながら、この災禍に対して日本の皆さんが示された忍耐力と強さについてたくさん話しました。たいていの国なら、みんながパニックになって互いに勝手なことをしたでしょう。でも日本の皆さんは違いました。その言葉をきいてメキシコ人は勇気づけられました!家を失った牧場主たちが言いました、「日本がなくしたもの、それに日本人がそれでも強いのを見りゃあ、前向きにならなくちゃな」。

 たいへんな惨状と喪失のあと、日本が強さを維持するのはとてもむずかしいと思いますが、がんばってください。これもまた必ず通り過ぎるのですから。瓦礫は片付き、家は再建され、孤児は新しい家庭に受け入れられるでしょう。この場合とても大事なことは、誰一人として孤独せずに、老いも若きも新しい家庭に受け入れられることです。日本は大きな家族なのです。いつの日にか日本は必ずまた強くなるでしょう。でも今、日本の子供たちは大人をみて、その勇気と強さに大きく影響されています。ちょうど小さなドングリのように、子供たちが育って、日本に新しい時代と復興をもたらします。「子供たちはとても強いナラの木になるでしょう」。

 私はナラの木のドングリ生産について書かれたものを読んでいました。山火事のあとホワイトオークは1年経たないとドングリを作れないそうです。レッドオ―クとブルーオークなら4、5年かかるそうですが、立派なドングリを作るそうです。メキシコのクマにとって、山火事のあと一番きびしいのは、まさに「えさがない難局を耐える」ことです。この凶作年さえ耐えれば、将来があるのです。だから私たちはクマが回復できるまで、なんとか支援する体制を作らないといけません。

 ナラの木はとても深い根を持っているだけでなく、災難のときに栄養を得る地表根系ももっているそうです。日本は地表根系を損ないましたが、皆さんの友達である私たちは、この地表根系を補強してナラの木に栄養補給をして回復させますよ。いずれにしても、「強くある」必要があります。毎日人々は少しでも歩みを進め、落ちこんだり、あきらめたいという誘惑に負けないようにし、一日一日「なにかよいこと」をして翌日につなげないといけません。いつでも何かよいことをすること、それで少しよくなって、次に進もうという気持ちにしてくれます。来る日も来る日も木は強くなります。日本はかつてそれを成したのですから、必ずまたできます。私たちが送る栄養は「避難箱」という形のものですが、同時に大きな声の形でたいせつな栄養を送ります。「アニモ、ジャパン!負けないで!」

 タカさん、私は神様とそのみわざをとても強く信じているので、神様がいかに日本の人々を愛しておられるかわかるんです。「ニューカントリー」という生物学者や生態学者のお祈りをするグループがあります。そして「日本の皆さんが、心にナラの木をもって、強く、そして安全でありますよう」と祈り続けます。聖書のよく知られたみことばに「私は泣く者とともに泣き、笑うものとともに笑うであろう」*というのがあります。いつの日にか私たちがみんなで笑いたいものですね。私たちができることがほかになにかあったら、なんでも言ってくださいね。長くなってごめんなさい。でも、この状況に胸がいっぱいで、こんなにたくさんの人が苦しんでいるときに自分だけがよいというようなことはしたくないのです。近いうちにお会いしたいです。秋に日本に行って片付けや再建のお手伝いをしたいと思っています。アニモ、ジャパン!

【ならの木】
 Johnny Ray Ryder Jr.作「ならの木」(THE OAK TREE)の原文は次の通り。
 THE OAK TREE

A mighty wind blew night and day
It stole the oak tree's leaves away,
Then snapped its boughs and pulled its bark
Until the oak was tired and stark.
But still the oak tree held its ground
While other trees fell all around.
The weary wind Gave up and spoke,
"How can you still be standing Oak?"
The oak tree said,
"I know that you Can break each branch of mine in two,
Carry every leaf away,
Shake my limbs, and make me sway.
But I have roots stretched in the earth.
Growing stronger since my birth.
"You'll never touch them,
for you see,
They are the deepest part of me.
Until today, I wasn't sure
Of just how much I could endure.
But now I've found,
with thanks to you,
I'm stronger than I ever knew."

 高槻成紀訳は次の通り。
 たいそう強い風が吹きました 昼となく夜となく
 ナラの木のすべての葉っぱを吹き飛ばし
 枝をびゅんびゅんと揺らし
 木の皮も引きはがすほどでした
 ついにナラの木は丸はだかになってしまいました
 それでも地面にしっかり立っていました
 ほかの木はみんな倒れてしまいました
 くたびれてしまった風は あきらめて言いました
 「ナラの木よ、どうしてまだ立っていられるのだい?」
 ナラの木は言いました
 「あなたは私の枝を折ることも
 すべての葉っぱを吹き飛ばすことも
 枝を揺らすことも
 私をゆさゆさと揺することもできます
 でも私には大地に広がる根っこがあります
 私が生まれたときから 少しずつ強くなりました
 あなたはこの根っこには決してさわれません
 わかるでしょう
 根っこは私のいちばん深い部分なのです
 実は今日まで 私はよくわかっていませんでした
 自分自身がどれだけものごとに耐えられるかを
 でも、今おかげでわかりました
 自分が知っていたよりも
 私はもっと強くなったのです

 吉備太郎訳は次の通り。
 強烈な風が、昼となく夜となく吹き荒れた。
 ナラの木の葉っぱをことごとく吹き飛ばした。
 枝をしならせ、皮をも剥がした。
 とうとうナラの木は耐えられず丸裸にされた。
 それでもナラの木は大地に踏ん張っていた。
 他の木が辺り一面に倒れていたにも拘わらず。
 弱弱しくなった風が降参し尋ねた。
 「あなたはどうしてまだ立っていられるのですか?」。
 ナラの木は云った。
 「あなたは私の枝を折ること、すべての葉っぱを吹き飛ばすことができるでせう。
 枝を揺らすことも、私を吹き飛ばすこともできるでせう。
 しかし私には大地に広がる根っこがあります。
 生まれてよりこのかた、私は次第に強くなりました。
 あなたは、この根っこにはどうすることもできません。
 わかるでしょう。
 根っこは私のいちばん深い部分なのです。
 実は今日まで、私はよくわかっていませんでした。
 私自身がどこまで耐えられるかを。
 でも、今おかげでわかりました。
 感謝申し上げます。
 私は、自分が知っていたよりも強いのです。

 各地の方言で訳されている。これを確認する。
津軽版、八戸版、盛岡版遠野版、仙台版、庄内版、山形県村山版、会津版福島県中通り版、福島県浜通り版、茨城版
 
★ナラの木(仙台版)
 ずいぶんと強い風が吹いだっちゃ
 昼間(しんま)どなく夜中(よなが)どなく
 ナラの木(ち)のみんな葉っぱばふっと飛ばす
 枝(いだ)っこをびゅんびゅんと揺らがすて
 木(ち)の皮もひきはがすんではねいがとおもった
 ついぬナラの木(ち)はすっぱだかになってすまった
 そんでも地面(ずめん)さすっかり立っていだっちゃ
 ほがの木(ち)はぜんぶ倒れてすまった
 つかれてすまった風は
 あぎらめで言ったっちゃ
 「ナラの木(ち)よ、どうすてまだ立っていられんのしゃ?」
 ナラの木(ち)は言ったつちゃ
 「あんだはおればのいだっこをへしょるごどもも
 ぜんぶの葉っぱばをふっと飛ばすごども
 枝(いだ)っこを揺らすごども
 おればをゆさゆさと揺するごどもでぎっちゃ
 んでも おれぬは土(つづ)さ広がる
 根っこがあるす
 おらが生まれた時(とじ)から
 少すずつ強くなるすた
 あんだはこの根っこさ決すて さわれねっちゃ
 わがんべ
 根っこはおれの一番(いずばん)深げいどころっしゃ
 実(ずづ)は本日(ほんずつ)まで
 おれはそんごとがよくわがんねでいだっちゃ
 おれ自信(ずすん)がどんだけかがまんでじるがを
 んでも、今すがたおかげでわかりすた
 おれが知(す)っていたよりも
 おれはずっと強くなったのしゃ
★ナラの木(岡澤敏男さん訳、盛岡地方版1)
 うんと強え風っこ吹いだのす
 昼まも よぴても
 ナラの葉っぱをみんな吹っとばし
 枝っこをびゅんびゅん揺さぶり
 木の皮っこも むげるくれぇであんした
 おしめぇに ナラはまるっきり裸であんしたが
 ほんでも地面さ すっかど立っていたのす
 ほかの木はみんなぶったおれあんした
 こやぐなって風っこは
 あきらめて聞いたのす
 「ナラっこ、なしてまだ立ってるのすか」
 ナラはしゃべった
 「おめぇはおらの枝っこ折ることも
 ずっぱり葉っぱを吹っ飛ばすことも
 枝っこ揺さぶることも
 おらをゆさゆさ揺することも
 できるべンど
 おらには大地さ広がる
 根っこがあるのす
 おらが生まれたときから
 やっこづつ強えぐなったのす
 おめぇさんは根っこさは なじょしても触れねぇのす
 わかるンべ
 根っこはおらのいずばん深けぇどこさあるンだべ
 ほんでも、今日まで
 おらもよぐわからねがったのす
 おらはどれくれぇのこと がまんでるべがと
 そだども、ありがてぃことに 今わかりあんした
 おらの知ってたよりも
 おらは強ぇぐなっていたのでがんすよ
★ナラの木(鳴海真澄さん訳、津軽版
 ずんぶ強ぇ風 吹いだもんだじゃ  
 昼まも ばげも
 ナラノギの葉っぱば みんな吹ぎ飛ばしてまって
 枝こば びゅんびゅど揺らして
 木の皮も剥がしてしまうほどだったんだぁ
 したっきゃ とうとうナラノギ 丸裸になってまったんだ
 したばって ナラノギ 地面さどっかど立ったままだったんず
 ほがの木はみんな 倒れでまったんだばって
 おたってまった風は あぎらめで しゃべった
 「ナラノギ なして まんだ立っていられるんだ」
 ナラノギ 答えだど
 「オメはワの枝こば折るごとも
 葉っぱばぜんぶ 吹ぎ飛ばすことも
 枝も幹もむつけら ワサワサど揺らがすごともでぎるっきゃ
 したばって
 ワには大地さ広がる根っこあるんだね
 ワは生まれだとぎがら
 わんつかずづ強ぐなってきたんだ
 オメがこの根っこさ絶対触られねずごと
 わがるべ?
 根っこはワの一番深けぇどごだぁ
 ほんとは今まで ワはよぐわがってねがった
 オメのおがげで わがったじゃ
 ワはワが思っていだより
 もっともっと強(つよ)ぐなったんだじゃ
★ナラの木(堤勝彦さん訳、津軽2
 うだでぐ つえ風っこ吹いだ
 昼間もばげもなぐ
 ナラの木の葉っぱこば みな吹ぎ飛ばしてまって
 枝っこばびゅんびゅんて揺らめがへで
 木の皮もなんもかも はぁ 引っ剥がすほどだったど
 しまいにはナラの木 丸はだがになってまったど
 したばって地面さ あづましぐ立っていだんだ
 ほがの木はみんな倒れでまった
 こえぐなってまった風っこは
 あぎらめで言ったど
 「ナラの木よ、どへばほしてまんだ立っていられるんだば?」
 ナラの木は言ったど
 「おめさは、わの枝っこば折るごとも
 葉っぱこばみな吹ぎ飛ばすごとも
 枝っこば揺らすごとも
 わばゆさゆさって揺するごともでぎる
 したばって わさは大地さ張った
 根っこがあるんだ
 わは生まれだどぎがら
 わんつかづづ つえぐなったんだ
 おめさはこの根っこば どしたって壊すごとはでぎね
 わがるべさ
 根っこはわの いぢばん ふけどごだんだ
 ほんとは今日まんで
 わはよぐわがってねがったんだ
 わが どったらごとさ耐えられるのが
 したばって、今おがげでわがった
 わがわがってるよりも
 わはもっとつえぐなったんだ
★ナラの木(鈴木美穂子さん訳、八戸版)
 たまげで 強い風が吹いだずぅ
 昼まも ばんげ も
 ナラの木の みんな葉っぱば吹き飛ばし
 枝っこば びゅんびゅんど 揺らして
 木の皮っこも はがすほどだったずぅ
 したきゃ とうとう ナラの木は
 丸はだがになってしまったずぅ
 そやって 地面さしっかり 立ってらずぅ
 ほがの木はみんな倒れでしまったずぅ
 つかれでしまった風は あぎらめで しゃべったずぅ
 「ナラの木よ なして立ってられんだ」
 ナラの木はしゃべったずぅ
 「あんだは おらの 枝っこば 折るごども
 みんな葉っぱば 吹き飛ばすごども
 枝っこば 揺らすごども
 おらを ゆさゆさど 揺するごども でぎるべぇ
 でも おらには 大地さ張った 根っこが あったんだぁ
 おらが 生まれだ どぎがら
 わんつがずづ 強ぐ なってきたんだぁ
 あんだは この根っこさば どやっても さわられねんでぇ
 わがるべぇ
 根っこは おらの 一番深いどご なんでぇ
 ほんとは 今まで おらさば よぐ わがって いながったぁ
 おら自身 どれだげものごどに たえらるがば
 でも 今 おがげで わがったぁ
 自分が知ってらったよりも
 おらは もっと 強ぐなったんだぁ
★ナラの木(岡澤敏男さん訳、盛岡1
 うんと強え風っこ吹いだのす
 昼まも よぴても
 ナラの葉っぱをみんな吹っとばし
 枝っこをびゅんびゅん揺さぶり
 木の皮っこも むげるくれぇであんした
 おしめぇに ナラはまるっきり裸であんしたが
 ほんでも地面さ すっかど立っていたのす
 ほかの木はみんなぶったおれあんした
 こやぐなって風っこは
 あきらめて聞いたのす
 「ナラっこ、なしてまだ立ってるのすか」
 ナラはしゃべった
 「おめぇはおらの枝っこ折ることも
 ずっぱり葉っぱを吹っ飛ばすことも
 枝っこ揺さぶることも
 おらをゆさゆさ揺することも
 できるべンど
 おらには大地さ広がる
 根っこがあるのす
 おらが生まれたときから
 やっこづつ強えぐなったのす
 おめぇさんは根っこさは なじょしても触れねぇのす
 わかるンべ
 根っこはおらのいずばん深けぇどこさあるンだべ
 ほんでも、今日まで
 おらもよぐわからねがったのす
 おらはどれくれぇのこと がまんでるべがと
 そだども、ありがてぃことに 今わかりあんした
 おらの知ってたよりも
 おらは強ぇぐなっていたのでがんすよ
★ナラの木(小野寺瑞穂さん訳、盛岡2
 てぇした強え風っこ吹きあんした
 昼といわず晩げといわず
 よっぴてナラの葉っぱこみんな吹っとばし
 木の枝も何(な)もびゅんびゅんと揺さぶり
 木の皮も むげるくれぇであんした
 終(すめ)ぇにナラはまるっぱだかになってしまいあんした
 ほんでも地面さ すっかりと立っていあんした
 ほかの木はみんなぶったおれてしまいあんした
 こえぐなってしまった風は
 あきらめで聞いたど
 「ナラの木よ、なしてまだ立ってるにいいのょ」
 ナラの木は答えたど
 「おめぇさまはおらの枝(いだ)っこ折るごとも
 葉っぱもみんな吹っ飛ばすことも
 枝っこ揺さぶることも
 おらのこどゆさゆさ揺するこどもでぎるンべぇ
 でも おらには大地さ広がった 根っこがあるのす
 おらが生まれたときから
 べっこづつ強えぐなって来(き)あんした
 おめぇさんはおらのこの根っこさ なじょしても触(さわ)れねえ
 わかるンべ
 根っこはおらのいずばん深けぇところにあるからなす
 ほんとは今日まで
 おらにはよぐわかっていねかったのす
 おれ自身(じすん)どれだけのことにがまんできるものなのか
 そんだども、今おかげでわかりやした
 おらが思(おべ)てたよりも
 おらはもっともっと強ぇぐなっていたったのス
★ナラの木(吉備太郎訳、岡山版男ことば編)
 でぇれぇ強ぇ風が、昼とのぅ夜とのぅ吹き荒れてのぅ
 ナラの木の葉っぱを吹き飛ばしてのぅ枝を折るわ、皮を剥がすわ
 ほんでのぅナラの木はとうとう耐えられず丸裸にされたんじゃ
 ほんでものぅナラの木は大地に踏ん張っていたんじゃ
 他の木はそこらじゅう倒れたのにのぅ、でえれぇやっちゃ
 弱うなった風が音をあげて聞いたんじゃ
 「おめえ、どがんして立っておるんじゃ」
 ナラの木は云うた
 「おめえはわいの枝を折ったり、葉っぱを吹き飛ばすことはできるじゃろう
 枝を揺らしたり、わいを吹き飛ばすこともできるじゃろう
 ほじゃけどのぅわいには大地に広がる根っこがあるんじゃ
 生まれてからこのかた、わいはのぅ次第に強うなっとるんじゃ
 おめえは、わいの根っこまでどうもこうもできまぁが
 わかろうが
 根っこはわいの一番深えところじゃからのぅ
 ほんとはのぅわいも今日までようはわからなんだんじゃ
 わいがのぅどこまで耐えられるかがのぅ
 ほんでもなぁ、今おかげでわかったんじゃ
 気づかしてくれて感謝云うでぇ
 わいはのぅわいが知っとるよりもっと強(つ)えんじゃ




(私論.私見)