ゲーテ著「ファウスト」

 更新日/2020(平成31→5.1栄和改元/栄和2)年.8.3日



ゲーテ著「ファウスト」
 「ああ、わしはこれで哲学も法学も医学も、よせばいいのに神学まで骨おって研究しつくした。その挙句がこの通り哀れな愚かものだ。前よりちょっとも賢くなっていない。(中略) もうかれこれ十年もあげたり、さげたり、斜めに横に、学生たちの鼻をつまんで引っぱりまわしている。そして我々は何も知りえないのだということを悟っている。この胸が焼けてしまいそうだ」。
 (高橋健二訳/河出世界文学全集)

ゲーテの生涯履歴
 「ドイツの作家「ゲーテ」 彼が受けた刺激と与えた影響」、濱田 真氏著 『ヘルダーのビルドゥング思想』その他参照。
 本名は「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ」。(1749年8月28日~1832年3月22日)
 ドイツの詩人、小説家、劇作家。ドイツの詩人、小説家で、多くの名言を遺していることで知られる「ゲーテ」。ドイツを代表する文豪で『若きウェルテルの悩み』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』などの小説や、詩劇『ファウスト』など数々の作品を残した。

 1749年8月28日、フランク生まれ。フランクフルト・アム・マインの名家にして富裕層の市民の子として生まれた。。教育熱心な父によって、幼少期から家庭教師を呼んでは習い事を受けると言う生活を続けていた。乗馬やダンス、演奏などの習い事を受けた。特にゲーテの才能が発揮されたのは語学で、少年時代には英語やフランス語など、母国語以外にも6ヶ国語ほど習得している。幼少からゲーテの詩は評判で、8歳の頃に祖父母へ宛てて書いた詩が現存している。

 1770年、ライプチヒとシュトラースブルク大学に入学、法律を学ぶ。在籍期間は1年程度と短いものでしたが、この間、一流の文学評論家としても知られていたヘルダー(1704~1803)と出会い、ヘルダーはゲーテに大きな影響を与えた。 ゲーテは文学への意識に傾く。ヘルダーもまた後に哲学者として大成し、歴史に名を残す偉人になっていく。

 従来のロココ的で理性・形式を重んじる文学から脱却しようとするシュトゥルム・ウント・ドラング運動に従事する。シュトゥルム・ウント・ドラング運動とは、1770年から1780年にドイツで生じた文芸運動で、クリンガーの戯曲名が起源です。ヘルダーとの交流でホメロスやシェークスピアの真価や聖書、民謡について学び、ゲーテは作家・詩人としての基礎を身に着けていった。

 ゲーテとともに、ドイツのヴァイマル主義を代表する作家であるシラー(1759~1805)との出会いもゲーテに多大なる影響を与えている。シラーマールバハ生まれ、ドイツの劇作家、詩人は、軍医の父を持ち、軍人学校で法律や医学を勉強しています。書き上げた戯曲「群盗」の劇の演奏が上手くいき、劇作家として華やかなスタートを切ります。 戯曲や思想詩など多く世に出し文学者としての名声を高めましたが、短い生涯でした。主な戯曲作品に「たくらみと恋」、「マリア・スチュアルト」、「ドン・カルロス」などがあります。  

 戯曲「ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン」。

 25歳のとき、小説『若きウェルテルの悩み』を出版。ヨーロッパ中にその文名を轟かせた。

 その後ヴァイマル公国の宮廷顧問(その後枢密顧問官・政務長官つまり宰相も務めた)となりしばらく公務に没頭する。シュタイン夫人との恋愛やイタリアへの旅行などを経て古代の調和的な美に目覚めていく。

 シラーはゲーテの興味を詩作にも向けた立役者で、シラーの死を経た晩年も創作意欲は衰えなかった。1794年以後シラーとの交友を支えにして、ドイツ古典主義文学を揺るぎないものにする。公務や自然科学研究を続けながら『親和力(英語版)』、『エグモント』、『ヘルマンとドロテーア』、小説『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代(英語版)』、叙事詩『ヘルマンとドロテーア』、『西東詩集』など円熟した作品を成した。大作『ファウスト』は20代から死の直前まで書き継がれたライフ・ワークである。

 1774年前後に着手し始めた『ファウスト』は長らく手つかずの状態が続いていたが、シラーからの言葉で執筆を再開。後に「シラーと出会っていなかったら『ファウスト』は完成していなかっただろう」とゲーテは語っている。「時よ止まれ」の台詞で有名な「ファウスト」は、2部構成で、第1部は1808年、第2部は1832年に完成させています。

 ほかに旅行記『イタリア紀行(英語版)』、自伝『詩と真実』や、自然科学者として「植物変態論」『色彩論』などの著作を残している。

 1832年3月22日、ワイマール没。

 ゲーテが与えた影響

 『グリム童話』の編者として広く知られているヤーコブ・グリムはゲーテから影響を受けた一人で、グリムが作成した『ドイツ語辞典』にはゲーテの作品から多く引用されている。現代ドイツ語を完成させるピースとしてゲーテが大きな役割を担っていたと言える。マルクス主義で知られるカール・マルクスは「ゲーテは偉大な詩人であるだけでなく、最も偉大なドイツ人の一人である」と述べていて、マルクス主義の研究家でもあったソ連の政治家レーニンもゲーテを愛読している。日本でも、森鴎外によってゲーテが知られるようになり、島崎藤村、平田禿木、尾崎紅葉がゲーテの読者であった。ゲーテの代表作である『ファウスト』はまさに生涯を賭した作品となっている。彼の表現したものを細部まで理解している方はほとんどいない。彼が伝えたかったことは以下の書物で解き明かされています。


 「名言・格言『ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテさんの気になる言葉+英語』一覧リスト」。
A
A life without love, without the presence of the beloved, is nothing but a mere magic-lantern show. We draw out slide after slide, swiftly tiring of each, and pushing it back to make haste for the next.
愛のない生活、愛する人がいない生活、それは単なる幻灯機が映し出すショーにすぎません。私はスライドを、次々と引き出してみるのですが、どれをみても、すぐに飽きてしまって、それらを全部押し戻し、次のスライドを、急いで引っぱり出すのです。
A person hears only what they understand.
理解できないことは聞こえない。
A person places themselves on a level with the ones they praise.
人は自身のレベルで人々を賞賛する。
A really great talent finds its happiness in execution.

真に才能ある人間は(作り出す)行為に充実を感じる。

A useless life is an early death.

早死には生命の浪費だ。

All intelligent thoughts have already been thought; what is necessary is only to try to think them again.

知的な考えは全て既に考え尽くされた。だから難しいことではない、ただ思い出すだけ。

All the knowledge I possess everyone else can acquire, but my heart is all my own.

私の持つ知識は誰にも持てる物だが、私の心だけは自身のもの。

All theory, dear friend, is gray, but the golden tree of life springs ever green.

友よ、理論なんて物は無機質だが、生命力は若さのエネルギーで満ちている。

All things are only transitory.

この世の、すべてのものは、泡沫にすぎない。

All truly wise thoughts have been thought already; we must think them over again honestly.

どんな賢明なことでも既に考えられている。それをもう一度考えてみる必要があるだけだ。

As soon as you trust yourself, you will know how to live.

自分を信じる事ができたら、いい生き方もできる。

B
Be above it. Make the world serve your purpose, but do not serve it.

この世を超越せよ。この世を使いこなせ、使われるためじゃない。

Beauty is a manifestation of secret natural laws, which otherwise would have been hidden from us forever.

美は自然が見せたい神秘である、さもなくば目に留まることもない。

Behavior is the mirror in which everyone shows their image.

人の行動はその人が抱く思いを映し出す。

Between today and tomorrow lies a long time. Learn quickly to take care of things while you’re still fit.

今日と明日の間には、長い期間が横たわっている。君がまだ適応できるうちに迅速に対処することを学べ。

C
Certain defects are necessary for the existence of individuality.

欠陥のあるものは、その人の個性を形成するに不可欠だ。

D
Devote each day to the object then in time and every evening will find something done.

目的を持って日々を始めよう。そすれば、夕暮れには何か成果が見られる。

Divide and rule, the politician cries; unite and lead, is watchword of the wise.

「分裂と支配」は政治の常套手段だが、「結束と模範」が賢者の思い。

Doubt grows with knowledge.

知れば知るほど、疑問も涌く。

F
Few people have the imagination for reality.
この世の真相を想像できる人などほとんどいない。
First and last, what is demanded of genius is love of truth.

何よりも天才に必要なことは、真実に忠実であること。

For just when ideas fail, a word comes in to save the situation.

思い付けない時に、状況を打破してくれる言葉が浮かんでくる。

Fresh activity is the only means of overcoming adversity.

逆境に打ち勝つ唯一の方法は、新しい活動である。

G
Girls we love for what they are; young men for what they promise to be.
人は、少女に対しては今のままの姿を愛し、少年に対しては、彼がそうなるであろう未来の姿を愛す。
H
Happiness is a ball after which we run wherever it rolls, and we push it with our feet when it stops.

幸せとは、転がれば追っかけるが、止まれば足で蹴っ飛ばしてしまうようなボールだ。

Hatred is active, and envy passive dislike; there is but one step from envy to hate.

憎悪は能動的で、羨望は受動的だが、羨望から憎悪へは紙一重。

He is the happiest man who can set the end of his life in connection with the beginning.

自分の一生の終わりを初めと結びつけることのできる人は、最も幸福である。

He is the happiest, be he king or peasant, who finds peace in his home.

王様であろうと、百姓であろうと、自己の家庭の平和を見いだす者が、いちばん幸福な人間である。

He only earns his freedom and existence who daily conqueres them anew.

自由と存在は、日々それを新たに勝ち取る者のみが、受けるに値する。

He who enjoys doing and enjoys what he has done is happy.

活動が喜びであり、その結果もまた喜びとする者は幸せにすごせる。

He who moves not forward, goes backward.

前進をしない人は、後退をしているのだ。

I
I call architecture frozen music.
建造物は言わば凝固した音楽だ。
I can tell you, honest friend, what to believe: believe life; it teaches better that book or orator.
悩める友よ、何を信じればよいかって?人生を信じろ。本やアドバイザーよりよっぽどまともだ。
If a man or woman is born ten years sooner or later, their whole aspect and performance shall be different.

人は10年早く、または遅く生まれたら、大きく異なる人生を歩むことになる。

If children grew up according to early indications, we should have nothing but geniuses.
子供が小さい時見せる潜在能力を持って育ったら、天才ばかりになる。
If God had wanted me otherwise, He would have created me otherwise.

神様が違った生き方をせよとおっしゃるなら、神様はきっと別な私を作りたもうたと思うよ。

If you treat an individual... as if he were what he ought to be and could be, he will become what he ought to be and could be.

もし、成るべきまたは成れる姿で(既に)有るかのように接すれば、人はその者に変わる。

If you wish to know the mind of a man, listen to his words.

その人が何を考えているかを知りたければ、その人の言葉に注意を払え。

If you’ve never eaten while crying you don t know what life tastes like.
涙とともにパンを食べた者でなければ、人生の本当の味はわからない。
In the realm of ideas everything depends on enthusiasm... in the real world all rests on perseverance.
「思い」の世界では熱意が定めるが、「実在」の世界では根気強さが決め手。
It is the strange fate of man, that even in the greatest of evils the fear of the worst continues to haunt him.
人間の悲しい性(さが)だが、最悪の悲劇の中でさえも、更なる悪化を恐れ慄(おのの)く。
K
Know thyself? If I knew myself I would run away.

自分を知れって?とんでもない、自分を知ったら俺はきっと逃げ出すよ。

L
Let us not forget that a man can never get away from himself.
人間は決して自分から逃れられないのだということを忘れないようにしよう。
Love and desire are the spirit's wings to great deeds.
愛と欲望は精神の根源だ。
M
Magic is believing in yourself, if you can do that, you can make anything happen.
魔法使いになるには、要は自分が信じれるかどうかだ。信じられたら何事も可能だ。
Men show their character in nothing more clearly than what they think laughable.
人の性格は冷笑に付する事柄の中に最も顕著に現れる。
Merely to breathe freely does not mean to live.
自由に呼吸するだけでは、生きているとは言えません。
N
No one would talk much in society if they knew how often they misunderstood others.
もし人が他人をどれほど誤解しているかに気づけば、とても人前で話しなどできない。
None are more hopelessly enslaved than those who falsely believe they are free.
自由だと勘違いしている者より悲惨な奴隷にされる者はいない。
Nothing is more terrible than to see ignorance in action.
無知な人間の活動ほど、見るに耐えられない。
Nothing shows a man’s character more than what he laughs at.
人間は、何を滑稽だと思うかということによって、何よりもよくその性格を示す。
O
One can stand anything except a succession of ordinary days.
世の中のことは何でも我慢できるが、幸福な日の連続だけは我慢できない。
One cannot develop taste from what is of average quality but only from the very best.

審美眼は、最上の物からのみで、平凡な物では養えない。

P
Personality is everything in art and poetry.
絵画や詩では個性が全てだ。
Plunge boldly into the thick of life, and seize it where you will, it is always interesting.
躍動する暮らしに飛び込め、そしてやりたい事をやれ。世の中は興味ある事で満ち溢れている。
S
Science and Art belong to the world as a whole, and the barriers of nationality vanish before them.
学問と芸術は、世界全体のものであり、それらの前では、国境は消滅するのである。
Self-knowledge comes from knowing other men.
他人を知ることで自分自身の理解が深まる。
Some books seem to have been written not to teach us anything, but to let us know that the author has known something.
本の中には、それを読んで我々が学ぶためではなく、著者が何かを知っていたということを我々に知らせるために書かれたと思われるような本がある。
T
Talents are best nurtured in solitude; character is best formed in the stormy billows of the world.
才能は静けさの中で作られ、性格は世の激流の中で作られる。
The best government is that which teaches us to govern ourselves.
最高の政府とは国民自身が治める事を教える政治である。
The decline of literature indicates the decline of a nation.
文学の衰えはその国の衰えを反映する。
The formation of one's character ought to be everyone's chief aim.
個性の形成こそが各自の主目的であるべき。
The hardest thing to see is what is in front of your eyes.
最も見えにくい物は眼前に存在する。
The human mind will not be confined to any limits.
人の心には鍵はかけられない。
The right man is the one who seizes the moment.
出来る人とはその瞬間をつかめる人だ。
The unnatural, that too is natural.
神がかった出来事も自然の事象の一つだ。
There is nothing insignificant in the world. It all depends on the point of view.
何事もちっぽけな物はない。物は考えようだ。
Thinking is more interesting than knowing, but less interesting than looking.

考える事は知ることより楽しい、しかし見ることには及ばない。

Those who know nothing of foreign languages know nothing of their own.

外国の言語を知らない人は、母国語について何も知らないといういことだ。

To create something you must be something.
何かを創り出せるには、人はその前に何かでなければならない。
To the person with a firm purpose all men and things are servants.
強い目的を持てば、人や物は従う。
To witness two lovers is a spectacle for the gods.

愛し合う二人を見れば、神の創意が見える。

W
We are never deceived; we deceive ourselves.
人は騙されることなど有り得ない。騙せるのは当人のみ。
We must always change, renew, rejuvenate ourselves; otherwise we harden.
我々はつねに、自らを変え、再生し、若返らせなければならない。 さもなくば、凝り固まってしまう。
We usually lose today, because there has been a yesterday, and tomorrow is coming.
人が今日を損失するのは、昨日があり、明日が来ることを知っているからだ。
What is important in life is life, and not the result of life.
人生において重要なのは生きることであって、生きた結果ではない。
What is not fully understood is not possessed.
理解していないものは、所有しているとは言えない。
What is not started today is never finished tomorrow.

今日一歩踏み出さなければ、明日到達することはない。

Whatever you can do or dream you can, begin it. Boldness has genius, power and magic in it.
あなたにできること、あるいはできると夢見ていることがあれば、今すぐ始めなさい。向こう見ずは天才であり、力であり、魔法です。
When you lose interest in anything, you also lose the memory for it.

興味のなくなるところ、記憶もまたなくなる。

Where is the man who has the strength to be true, and to show himself as he is?
真実に忠実で、自分のあるがままの姿を見せられる強靭な人なんて何処にいる?
Which is the best government? That which teaches us to govern ourselves.
いかなる政府が最上の政府であるか?われわれ自身を治めることを教える政府がそれだ。
Y
You don’t have to travel around the world to understand that the sky is blue everywhere.

空はどこに行っても青いということを知るために、世界をまわって見る必要はない。

You’ll never speak from heart to heart, Unless it rises up from your heart’s space.
君の胸から出たものでなければ、人を心から動かすことは断じてできない。
その他
いかにして人は自分自身を知ることができるか。観察によってではなく、行為によってである。汝の義務を成さんと努めよ。そうすれば、自分の性能がすぐわかる。
ごとにつけても、希望するのは絶望するよりもよい。可能なものの限界をはかることは、誰にもできないのだから。過去を知らないで、現在を知ることはできない。希望するのは絶望するよりもよい。可能なものの限界をはかることは、誰にもできないのだから。
すべての人間が、自由を得るや、その欠点を発揮する。
強い者は度を超え、弱い者は怠ける。
なぜこのように悪口が絶えないのか。人々は他人のちょっとした功績でも認めると、自分の品位が下がるように思っているからだ。
ニつの平和な暴力がある。法律と礼儀作法とがそれだ。
偉大なことを欲する者は、心を集中しなければならない。制限の中に初めて名人が現れる。
仮説は、建築する前に設けられ、建物が出来上がると取り払われる足場である。足場は作業する人になくてはならない。ただ、作業する人は足場を建物だと思ってはならない。
我々の中に神自体の力が生きていなかったら、 どうして神々しいものが我々をうっとりとさせることができよう。
我々の犯す一つの大きな間違いは、 原因を結果の間近にあると考えることにある。
我々は高みに憧れるが、歩き出すことには無関心だ。 山々を望みながら、平らな道を歩きたがる。
革命前にはすべてが努力であった。 革命後にはすべてが要求に変わった。 革命は些細なことではない。 しかし、些細なことから起こる。
学術においても、実際は人は何も知ることはできない。つねに実践が必要である。
感覚は欺かない。判断が欺くのだ。
興味のなくなるところ、記憶もまたなくなる。
金銭を失うこと。それはまた働いて蓄えればよい。名誉を失うこと。名誉は挽回すれば、世の人は見直してくれるであろう。勇気を失うこと。それはこの世に生まれてこなかった方がよかったであろう。
キリストは仮説のうえに作られている。神の存在、聖書の権威、そんなものはみな疑問である。
苦しみが残して行ったものを味わえ! 苦難もすぎてしまえば、甘い。
現在というものに一切を賭ける。孤独はよいものです。
自分自身と平和のうちに生き、何か達成すべきしっかりしたことがあれば。
高尚なる男性は、女性の忠告によって、いっそう高尚になる。
支配したり服従したりしないで、 それでいて何者かであり得る人だけが、本当に幸福であり、偉大なのだ。
若い時は興味が散漫なため忘れっぽく、年をとると興味の欠乏のために忘れっぽい。
若くして求めれば、老いて豊かである。
小説では特に心情と事件とが現されねばならない。戯曲では性格と行為とが現されねばならない。
焦ることは何の役にも立たない。後悔はなおさら役に立たない。前者は過ちを増し、後者は新しい後悔をつくる。
常に時間はたっぷりある。うまく使いさえすれば。
人間の最大の罪は不機嫌である。
人間は、なんと知ることの早く、行うことの遅い生き物だろう。
能ある者はそっと黙っていよ。そっとしておいても自ずからあらわれてくる。どんなに装ってみても、結局は人の問題だ。
平和は人類最高の理想なり。
豊かさは、節度の中にある。
目が太陽のごときものでなかったら、どうして我々は光を見ることができよう?
ユーモアは天才の一要素である。しかし、それが勝ち過ぎると、天才の代用品に過ぎなくなる。それは、芸術の下落を伴い、ついには芸術を破壊し、滅ぼしてしまう。
世界は粥で造られてはいない。君らは怠けてぐづぐづするな、堅いものは噛まねばならない。喉がつまるか消化するか、二つに一つだ。
鉄の忍耐、石の辛抱。
よく見ると、およそ哲学というものは、常識をわかりにくい言葉で表したものに過ぎない。
試練は年齢と共に高まる。光の多いところには、強い影がある。目標に近づくほど、困難は増大する。太陽が照れば塵も輝く。
知恵の最後の結論はこういうことになる。自由も生活も、日毎にこれを闘い取ってこそ、これを享受するに値する人間といえるのだ、と。
キノコも同然に、根付いた場所で大きくなって、生きて働いた跡も残さず、そのまま腐って無くなるようでは、なんの人間に生まれたかいがありましょうか?
君の値打ちを楽しもうと思ったら、君は世の中に価値を与えなければならない。
ただ黙々と正しい道を歩み続け。他人は他人で勝手に歩かせておこう。それが一番良いことさ。
大事を小事の犠牲にしてはならない。
花を与えるのは自然であり、 それを編んで花輪にするのが芸術である。
偉大な人間というのは、世間の出来事に左右されるのではなく、 世の中を左右してしまう人間のこと。
もっと光を。

 『ファウスト』は、60年もかけて完成された1万2千行に及ぶ大作。ファウストは16世紀に南西ドイツに実在し、医師・錬金術師・占星家として知られた人文学者。生きているうちから、悪魔と手を結んで魔法に身をゆだねたという伝説ができ、本にまで書かれてヨーロッパ中で有名になった。ファウスト伝説は、しばしば文学・音楽・絵画の題材とされてきた。中でもゲーテの『ファウスト』は優れた作品といわれる。

★ ゲーテ『ファウスト』の(超おおざっぱな)あらすじ
あらすじを書くなんて無謀なんだけど・・・特に第二部は筋らしい筋もないし、ファウストがメフィストにあちこち連れ回されるものだから、読む方も迷路に入り込んだようになってしまいます。それでは、迷路にようこそ!

<第一部>
 老学者(といってもたぶん50代)ファウスト教授はあらゆる学問を極めつくしたが、結局「われわれは何も知ることができない」とわかり、失望する。自殺を企てるが、復活祭の鐘の音を聞き、感動して思いとどまる。メフィストフェレスが彼に近づき、奴隷として彼に仕え、「広い世界」のすべてのことを体験させようと言う。ファウストとメフィストは賭けをする。すなわち、ファウストが「瞬間」に向かって「とどまれ、おまえは美しい!」と言ったら、その時ファウストは死に、メフィストに魂をやらなければならない。こうしてファウストの人生遍歴が始まる。メフィストによって20代の青年に若返ったファウストは、グレートヒェンに一目惚れする。彼女は身も心もファウストに捧げるが、逢い引きするために母に飲ませた睡眠薬の分量を誤り、母を死なせてしまう。彼女の堕落(当時自由な恋は堕落なんですね)を怒った兄はファウストと決闘して殺される。ファウストの子を産んだグレートヒェンは気が狂ってその子を殺し、死刑囚として牢獄につながれる。当のファウストは、そんなこととは露知らず、メフィストに誘われてワルプルギスの夜に酔いしれる。しかし、そこで彼は、苦しむグレートヒェンの幻を見る。そして、メフィストの力を借りて彼女を牢獄から助け出そうとする。彼女は悪魔と手を結んだ彼の助けを拒み、牢獄にとどまりそして死ぬ。「女は裁かれた」というメフィストの叫びに対して、「救われた」という声が天上からひびいてくる。ファウストはメフィストにどこかへ連れ去られる。

<第二部>
 アルプス山中で眠り続け、生気を養ったファウストは、今度は行為の人として「大きな世界」での遍歴に入る。神聖ローマ皇帝の城。帝国の財政が破綻しかけているので緊急会議が開かれている。メフィストが新しい金融システムを吹き込み、破綻しかけていた財政問題は解決する。ファウストは神聖ローマ皇帝の命で闇の世界に下り、美の象徴ヘレナをよみがえらせ結婚するが、美は消滅してしまう。魔法の力で皇帝を助けて戦争に勝ち、報酬として海岸沿いの土地を得る。そして、この土地の干拓事業に乗り出す。事業はほぼ成功したかに見えるが、老夫婦を立ち退かせるのに失敗して、殺してしまう。ファウストは、「憂い」の霊に吹きかけられた息で視力を失う。建築工事のつるはしの音に聞こえるのは実は彼の墓を掘る音であるが、彼は仲間のために働くという最高の幸福を予感して、「時よとどまれ、おまえは美しい」と言う。たちまちメフィストとの賭けに破れ、彼は死ぬ。だがメフィストの手を逃れ、かつてグレートヒェンと呼ばれた少女の霊の取りなしによって、天高く上ってゆく。

★ 「ファウスト的人間」ってどんな人?
 key wordは内面的・努力・孤独・学問追求・真理探究・行動・・・。
 ファウストは決してひとつのところにとどまっていることはできない。現状に満足せず、常に現状を変えようと行動し、努力し続ける。こうした「ファウスト的人間」はヨーロッパ的人間の原型といわれる。 自我が世界の中心。世界や自然は自己と対立するものであり、それを理性の力で解明し、認識しようとする。(これに対し、東洋的ものの見方では、自我は世界の一部、世界や自然に融合する。)

★ 愛による「救済」
 第二部の終わりでファウストは、かつてのグレートヒェンの取りなしによって、天上に迎えられる。しかし、ファウストは敬虔な、神の意にかなう生涯を送ったから救われたのではない。また、自分の中の誘惑と闘いそれにうち勝ったわけでもない。ファウストは愛・恩寵によって救われるのである、第二部は「永遠にして女性的なるものがわれらを引き上げてくれる」という句で幕を閉じる。男性的行動の象徴みたいなファウストが女性的なものによって救われる……意味深なことですね。

 2018年01月05日初回公開日「ゲーテのファウストの名言「時よ止まれ、お前は美しい」の意味」。
 ドイツの文豪ゲーテの「ファウスト」は、「時よ止まれ、お前は美しい」の名言で知られた作品です。「時よ止まれ」は、流れてゆく時間のある瞬間に向かって、人に呼びかけるように口にした台詞です。「時よ止まれ」の意味や物語のあらすじなどをご紹介させていただきます。
 ゲーテのファウストの名言「時よとまれお前は美しい」の意味は?

 ドイツが生んだ文豪ゲーテの名は、ほとんどの人はご存知でしょう。作品は小説「若きウェルテルの悩み」や「ファウスト」がよく知られています。「時よ止まれ」の名言を生んだ「ファウスト」の戯曲は善と悪、人間の罪と欲望、神と信仰などがテーマで、人間の永遠の課題というべきものでしょう。 「時よ止まれ、お前は美しい」の台詞の意味は、最期の時を迎えた主人公ファウストは、「契約」を結んだ悪魔メフィストフェレスが、彼の死体を埋葬するための音を、領地を切り開く道具の音と思い違いして、人々の幸福のための貢献ができたと、その喜びから口にしてしまいます。 「時よ止まれ、お前は美しい」と、人生の最高に素晴らしいこの瞬間が、永遠に留まれとの願いから言葉にしてしまいます。

 「ファウスト」を生んだゲーテ

 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749年8月28日フランク生まれ~1832年3月22日ワイマール没)ドイツの詩人、小説家、劇作家、フランクフルト・アム・マインの名家に生まれ、ライプチヒとシュトラスブルクの大学で法律を学びますが、ヘルダーとの出会いをきっかけに文学への意識に傾きます。 シュトゥルム・ウント・ドラング運動に参加し、のちの戯曲「ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン」、小説「若きウェルテルの悩み」を発表し、文学者としての名声を高めました。 ワイマール公国の要職を歴任し、1794年以後シラーとの交友を支えにして、ドイツ古典主義文学を揺るぎないものにします。「時よ止まれ」の台詞で有名な「ファウスト」は、2部構成で、第1部は1808年、第2部は1832年に完成させています。

 ヘルダーとシラー

 ヘルダー(1704~1803)ドイツの思想家、聖職者は、シュトラスブルクでゲーテに出会い、大きな影響を与え、シュトゥルム・ウント・ドラング運動が拡大します。シュトゥルム・ウント・ドラング運動とは、1770年から1780年にドイツで生じた文芸運動で、クリンガーの戯曲名が起源です。 シラー(1759~1805)マールバハ生まれ、ドイツの劇作家、詩人は、軍医の父を持ち、軍人学校で法律や医学を勉強しています。書き上げた戯曲「群盗」の劇の演奏が上手くいき、劇作家として華やかなスタートを切ります。 戯曲や思想詩など多く世に出し文学者としての名声を高めましたが、短い生涯でした。主な戯曲作品に「たくらみと恋」、「マリア・スチュアルト」、「ドン・カルロス」などがあります。

 「時よ止まれお前は美しい」が出てくるあらすじと背景は?

 「時よ止まれ」の名言で知られる「フェウスト」は、「天上の序曲」で始まります。悪魔メフィストフェレスが主(神)に言います。あなたが作った人間は、理性ある人間とは言い難く、逆のことばかりしていると嘲笑いました。 主(神)は、常に自己を高めようと、懸命に努めている者の典型としてファウスト博士の名を口にします。今は秩序がなく乱れているが、いつかは道理にかなった道の方向に行けるようにしてやるのだと神は言います。 それを聞いて悪魔メフィストフェレスは、それではファウストを誘惑し、彼の魂を邪悪なる方へ引き込めるか賭けをしてみませんかと、主(神)に促します。主(神)は、人間は懸命に頑張るうちは、進む道を迷い続けるものだといい、賭けを許しました。 「時よ止まれ」を巡る魂の契約を結ぶきっかけとなるエピソードです。

 悪魔メフィストフェレスの登場

 「時よ止まれ」の台詞が印象に残る「ファウスト」の主人公ファウスト博士は、さまざまな学問の研究に身を捧げてきた高名な学者で、多くの人々から敬意を払われていました。 学識を高めましたが、いまだ明らかにできない多くの謎や、なお研究しなければわからない分野があり、人の知の限界を身に染みて感じます。人生をさまざまな学問の研究に捧げて、その最高峰に上り詰めましたが、ファウスト博士の心は空虚でした。 これまでの人生を振り返り、学問を忘れるほど本気で愛した女性の存在はなく、何でも打ち明けられる友人もいなかったと寂しさや虚無感を強く感じます。ファウスト博士は悲観して、自害しようとします。すると突然黒いむく犬が現れます。 ファウスト博士が、人生にこれほど後悔していなかったら、「時よ止まれ」がキーワードとなる魂の契約を結ばなかったでしょう。

 悪魔メフェストフェレスとの契約

 黒いむく犬は、悪魔メフィストフェレスが変身した姿でした。正体をあらわすと言いました。「人生を一から初めてみたくないか、その気があるなら満足させてやるよ」と、肉体が若返るという怪しい液体を見せます。 その報酬として、ファウスト博士が亡くなったら、魂をもらいたいと要求しました。ファウスト博士は、もし人生最上の時を迎えたその刹那に「時よ止まれ、お前は美しい」と口にしてしまったら、私の魂をくれてやろうと約束してしまいます。 ファウスト博士はこうして悪魔メフィストフェレスと、「時よとまれ」の契約を交わしてしまいます。彼にもし愛する妻や子供がいて、腹蔵なく話せる親しい友に恵まれていたら「時よ止まれ」の契約は決して交わさなかったでしょう。

 第一部

 若返りの魔法水を飲んで青年になったファウストは、グレートヘンを一目みて好きになり、メフィストフェレスに何とかしてくれと頼みます。メフィストフェレスは、グレートヘンがファウストに心を奪われて相思相愛になるように仕掛けます。 そして2人が密会できるように、グレートヘンの母親に飲ませる睡眠薬をファウストに渡しました。言われたとおりファウストは、グレートヘンに、母親に飲ませて眠らせるようにと指示します。このときファウストは「時よ止まれ」と言いたくなるほど幸福だったことでしょう。しかしグレートヘンの母親は死んでしまいます。 グレートヘンの兄は、堕ちた妹をたぶらかしたファウストに、悪魔の仕業と怒り、互いのどちらかが死ぬまで闘うことで決着をつけようとします。しかしメフィストフェレスが兄を殺してファウストを助けました。

 魔女の祭典

 ファウストの子を産んだグレートヘンは、精神状態がおかしくなり、赤ん坊に手をかけてしまいます。自分の子を殺した罪で牢獄に入れられ、死刑に処されます。 その頃魔女の祭典「ワルプルギスの夜」がひらかれていて、ファウストは、祭りの夜にすっかり我を忘れていい気分に浸っていました。この時彼は、グレートヘンの母親と兄を死なせてしまったのは自分で、殺したも同然だという自覚はなかったでしょう。 「時よ止まれ」と思わず口にしてしまいそうになるくらい妖しい夜に陶酔していたのでしょう。この時グレートヘンの苦しむ幻影を見て、ようやく我に返ります。





(私論.私見)