甚句

 (最新見直し2013.03.28日)

【甚句】
 甚句(じんく)は日本の伝統的な歌謡の一形式である。詳細は不明だが江戸時代に発生したと見られる。歌詞が7、7、7、5で1コーラスを構成するのが特徴。様々な歌詞が生み出された。5、7、7、7、5となる場合もある。全国各地の民謡にこの形式が多い。メリスマ型もシラブル型も有る。囃子言葉が挿入されたり前後に付く場合が多い。ヤンキードゥードゥル等、外国曲にこの形式の歌詞を当てはめたものもある。 有名曲は次の通り。花笠音頭木更津甚句箱根八里越中おわら節正調博多節鹿児島おはら節茅ヶ崎甚句郡上甚句

【相撲甚句】
 相撲甚句(すもうじんく)とは邦楽の一種。大相撲の巡業などで披露される七五調の囃子歌である。歌詞は7、7、7、5の甚句形式。詳細は「都々逸#七・七・七・五という形式について」を参照。土俵上で力士5〜7人が輪になって立つ。輪の中央に1人が出て独唱する。周囲の力士たちは手拍子とどすこいほいあ〜どすこいどすこいといったような合いの手を入れる。起源、発祥についての定説は無いが、享保年間には流行歌として定着したものと見られている。現在では、相撲教習所の教養科目として必須科目に取り入れられている。幕下以下の力士が相撲甚句を披露する場合、大銀杏を結うことが許されている。幕内経験者では、大至や春日錦などが上手であった。現役力士では勢翔太が得意としている。有名な物は「花づくし」、「山づくし」、「出世かがみ」である。そして最後に「ごあいさつ」で締めくくる。

芋屋
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 今度この町に芋屋が出来たヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 お芋の看板十三里
 川越本場の赤芋で
 栗よりうまいと書いてある
 その芋食べたと聞いたなら
 いえいえ私の食べたのは
 十里のお芋でございます
 そりゃまた何故にと問うたなら
 芋は生焼けでヨーホホイー
 アー アアアアー
 ゴリゴリ(五里五里)だヨー
浮雲
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 勝てば極楽 負ければ地獄ヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 とかく浮世は罪なとこ
 負けちゃならぬと思えども
 俺もやっぱり人の子か
 流れ流れる浮雲に
 行方定めぬ旅空で
 遠い故郷偲ぶたび
 熱い涙がついほろり
 と言うて戻れる訳じゃなし
 ここが我慢のしどころよ
 どんと大地を踏み締めて
 一押し二押し三に押し
 押せば目も出るヨーホホイー
 アー アアアアー
 花も咲くヨー
【江戸の花】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 ままになるなら 横綱張らせヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 まわしの模様は隅田川
 百本杭には都鳥
 東雲鴉が二羽三羽
 かすかに見えるは富士の山
 「ストトコトンと」打ち出す太鼓は
 向こう両国国技館
 明日は初日のことなれば
 主さんと地取りがヨーホホイー
 アー アアアアー
 してみたいヨー
【数え唄】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 一から十まで甚句に詠めばヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 ものの始めを一という
 車に積むのを荷(二)という
 女の大厄産(三)という
 子供の小便シー(四)という
 「碁盤の上で」白黒競うを碁(五)という
 昔の侍禄(六)という
 物の出し入れ質(七)という
 泣きっ面には蜂(八)という
 貧乏すること苦(九)という
 焼きごてを水に入れたらヨーホホイー
 アー アアアアー
 ジュー(十)というヨー
【キュウリとカボチャ】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 キュウリとカボチャが相撲見に行けばヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 そこへ木戸番飛んできて
 キュウリに相撲は見せますが
 カボチャに相撲は見せられぬ
 そこでカボチャが腹を立て
 同じ畑に住む者を
 何故にわしだけ相撲見せぬ
 聞いて木戸番申すには
 キュウリの酢揉みは聞いたけど
 カボチャの酢揉み(相撲見)はヨーホホイー
 アー アアアアー
 わしゃ知らぬヨー
【新生日本】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 世界第二のあの戦いもヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 遂に昭和の二十年
 月日も八月十五日
 畏(おそ)れ多くも畏(かしこ)くも
 大和島根の民草(たみくさ)に
 大御心(おおみこころ)をしのばされ
 血涙しぼる玉音に
 停戦命令は下りたり
 血をもて築きし我国も
 無情の風に誘われて
 今は昔の夢と消ゆ
 されど忘るな同胞(はらから)よ
 あの有名な韓信が
 股をくぐりし例(ためし)あり
 花の司(つかさ)の牡丹でも
 冬は薦(こも)着て寒(かん)凌(しの)ぐ
 与えれたる民主主義
 老いも若きも手を取りて
 やがて訪る春を待ち
 ぱっと咲かせよ ヨーホホイー
 アー アアアアー
 桜花ヨー
【神仏】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 あなたと添いたさに儂ゃ神々に頼むヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 一に伊勢の大神宮
 二では日光東照宮
 三に讃岐の金比羅さん
 四にまた信濃の善光寺
 五つ出雲の大社
 六つ村々鎮守様
 七つ成田の不動尊
 八つ八幡の八幡宮
 九つ高野の弘法さん
 十で豊川お稲荷さん
 十一馬頭の観世音
 十二霧島弁財天(べざいてん)
 これほど心願込めたとて
 もしも添えないその時は
 裁判所へと訴えて
 お上のご威光で ヨーホホイー
 アー アアアアー
 添いとげるヨー
【立つ物づくし】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 立つ物集めて甚句にとけばヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 正月門には松が立つ
 「二月初午」お稲荷さんで幟立つ
 三月節句で雛が立つ
 四月八日にゃ釈迦が立つ
 五月は男の節句で鯉が立つ
 六月祇園に神輿立つ
 七月七夕さんで笹が立つ
 八月お盆で仏立つ
 九月は秋風吹くので埃立つ
 十月出雲に神が発つ
 十一月も早や経って
 十二月ともなったなら
 どこの家でも同じこと
 借金取りが角に立つ
 借りた覚えはあるけれど
 返すその時ゃ ヨーホホイー
 アー アアアアー
 腹が立つヨー
【ちゃんこ鍋】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 
相撲言葉を甚句に詠めばヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 ご贔屓筋はタニマチで
 
太った力士はアンコ型
 
痩せた力士はソップ型
 
丁度良いのは中アンコ
 
貴女と私は国者(くにもん)で
 
相撲料理はちゃんこ鍋
 
何故にちゃんこと問う人に
 
お答えしましょうちゃんことは
 
昔、料理の番長は
 ロートル力士の受け持ちで
 
禿げた頭の鉢巻が
 鳥や魚を調理する
 
若い力士がそれを見て
 
田舎の父ちゃん偲びつつ
 
父ちゃん詰めてちゃんと呼ぶ
 
親しみ込めた愛称で
 
力士の作る手料理が
 
何時の間にやらちゃんことなる
 
今は庶民(みんな)がヨーホホイー
 
アー アアアアー
 
舌鼓ヨー
【鶴と亀】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 鶴と亀との縁談話ヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 鶴さんが亀さんにプロポーズ
 亀さんすげなく断った
 そこで鶴さん申すには
 首の長いのが嫌なのか
 口の長いのが嫌なのか
 脚の長いのが嫌なのか
 そこで亀さん言うことにゃ
 首の長いも嫌じゃない
 口の長いも嫌じゃない
 脚の長いも嫌じゃない
 世の諺にもあるとおり
 鶴は千年 亀万年
 もしもそなたが死んだなら
 九千年もわしゃ後家よ
 それが悲しゅうてヨーホホイー
 アー アアアアー
 添わりゃせぬヨー
【東京名所】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 東京名所を甚句にとけばヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 芝か上野か浅草か
 春は花咲く向島
 隅田川には都鳥
 九十六間架け渡し
 あれが名代の両国か
 ひと際目に立つ国技館
 千代に八千代にヨーホホイー
 アー アアアアー
 二重橋ヨー
【花づくし】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 花を集めて甚句にとけばヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 正月寿ぐ福寿草
 二月に咲くのが梅の花
 三月桜に四月藤
 五月あやめにかきつばた
 六月牡丹に舞う蝶や
 七月野山に咲く萩の
 八月お盆で蓮の花
 桔梗 かるかや 女郎花
 冬は水仙 玉椿
 あまた名花のある中で
 自慢で抱えた太鼓腹
 しゅすの締め込み馬簾つき
 雲州束ねの櫓鬢
 清めの塩や化粧紙
 四股踏み鳴らす土俵上
 四つに組んだる雄々しさは
 これぞ真のヨーホホイー
 アー アアアアー
 国の華ヨー
 花づくし 作詞・多賀之丞                                                           
        (ハァー ドスコイ ドスコイ)
♪ハァーエー
        (ハァー ドスコイ ドスコイ)
花を 集めて 甚句にとけば ヨー 
        (ハァー ドスコイ ドスコイ)
ハァー 正月寿(ことほ)ぐ 福寿草
 二月に咲くのが 梅の花
 三月桜や 四月藤
 五月あやめに かきつばた
 六月牡丹に 舞う蝶や
 七月野山に 咲く萩の
 八月お盆で ハスの花
 桔梗かるかや おみなえし
 冬は水仙 玉椿
 あまた名花の ある中で
 自慢で抱えた 太鼓腹
 繻子(しゅす)の締め込み バレン付き
 雲州たばねの やぐら鬢(びん)
 きよめの塩や 化粧水
 四股踏みならす 土俵上
 四つに組んだる 雄々しさは
 これぞ誠の ヨーホホホイ
 ハァー 国の華 ヨー
        (ハァードスコイ ドスコイ)
【一人娘】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 一人娘を嫁にとやるにゃヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 箪笥、長持、挟箱
 あれこれ揃えてやるからにゃ
 二度と戻るな出てくるな
 そこで娘の言うことにゃ
 父さん母さんそりゃ無理よ
 西が曇れば雨とやら
 東が曇れば風とやら
 千石積んだる船だとて
 港を出るときゃまともでも
 風の吹きよで出て戻る
 ましてや私は嫁じゃもの
 ご縁がなければヨーホホイー
 アー アアアアー
 出て戻るヨー
【身延さんと金毘羅さん】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 身延さんと金毘羅さんが
 「日本銀行へ」
 金借りに行けばヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 そこで銀行の言うことにゃ
 身延さんには金貸さぬ
 金毘羅さんにも金貸さぬ
 それで二人は腹を立て
 そりゃまた何故にと問うたなら
 聞けば銀行の言うことにゃ
 身延さんなら甲斐の国
 金毘羅さんなら讃岐の国
 甲斐讃岐(返さぬ気)の人にはヨーホホイー
 アー アアアアー
 金貸さぬヨー
【夢】
 アーア~ アーア~ アー ア~アアエー
 夕べ見た見た大きな夢をヨー
 ア~ア~ ア~ア~
 千石船をば下駄に履き
 そのまた帆柱杖につき
 奈良の大仏腰に下げ
 東海道をひとまたぎ
 比叡山枕に昼寝して
 あまり喉が渇くゆえ
 近江の湖水を掬いあげ
 「一口二口」
 三口半にと飲み干して
 何やら喉にかかるゆえ
 「えへん」えへんと咳をすりゃ
 瀬田の唐橋がヨーホホイー
 アー アアアアー
 飛んで出たヨー

【神輿甚句(どっこい)】
 「神輿甚句(どっこい)」。



一で相州一ノ宮
二また日光東照宮
三で讃岐の金比羅さん
四また信濃の善光寺
五つ出雲の大社
六つ村村鎮守様
七つ成田の御不動さん
八つ八幡の八幡宮
九つ高野の弘法さん
十で船橋はヨー龍翔會


年の初めの新玉や
松を楽しむ正月や
二月に咲いたる梅の花
三月盛りの八重桜
四月は上から下がり藤
五月の梅雨に咲く花は
あやめの名代にかきつばた
六月牡丹に蝶が舞う
七月空に咲く藪に
八月蜂刺すタンコ切り
今年よく見る九月菊
十月紅葉に鳴く鹿の
十一月の枯れ山に
踊る坊主じゃないけれど
ほんにめでたや皆の衆


春に花咲く坂田山
秋は紅葉のその中で
聞いて下さい皆様よ
五郎さんと花子さんの物語
東京静岡その中で
いかにも遠い仲なれど
愛という字は筆で書き
恋という字は墨で書く
例え両親許さずも
二人の心があったなら
神や仏が許すのも
死んでー花見がヨー咲くじゃなし


惚れた病を治すには
六畳一間の真中で
六枚屏風を立て並べ
二つ枕に三つ布団
好いて入れたるその時は
足でからめて膝のつる
お手手ぴったり抱きしめて
汗は水仙玉椿
エッサホイサのかけ声で
ひと汗かかねばヨー
なおりゃせぬ


頃六月田植え時
姉と妹が田植えする
姉は妹な負けまいと
一生懸命バチ飛んできて
妹のオツムにちょいと止まる
姉ちゃん姉ちゃん取ってくれ
取ってやるのは良いけれど
昔の偉人の言うことにゃ
穴バチゃー他人の手にかわる


娘十七、十八嫁入りざかり
タンス長持ちハサミ箱
これだけ持たせてやるからにゃ
二度と戻ると思うなよ
父さん母さんそりゃ無理だ
西が曇れば雨とやら
東が曇れば風とやら
千石積んだる舟でさえ
波風荒けりゃヨー
また戻る


恵比寿大国福の神

睦月祝って鶴が舞う
梅に鶯如月の
弥生桜に酒の汲み
卯月踊る若鮎が
流れに挑む伊達姿
八十八夜の五月晴れ
芍薬牡丹に水無月の
蛍飛び交う文月の
葉月日照りに雨乞いの
長月実りの秋祭り
月が招く神無月
傘させ裾させ霜月よ
藪の富士の伊達姿
松を恋しとよ雪化粧

【茅ヶ崎甚句】
 「茅ヶ崎甚句」。茅ヶ崎甚句は江戸時代、若い衆の粋のよさを示す遊び歌であった。茅ヶ崎独特の旋律に民謡、歌曲を歌いこんで、即興的にアレンジした。禊祭(みそぎのまち)が近ずくと、新町の藤川屋(仕立て屋)は、半纏(はんてん)を店頭に掛けておく。そこへほとんど毎晩のように、稲岡栄さん、吉野さんたちは地回りになっていて、襦袢は半纏はと、押しかけて甚句をうなる。藤川屋のすぐ前が天又という料理屋で、女中が始終3~4人いて、甚句に興味を示す。女を酔わせる男歌だ。それが楽しみで新町へ行く。茅ヶ崎甚句は茅ヶ崎一円で発祥した。茅ヶ崎甚句は茅ヶ崎だけに残る文化だ。須賀甚句相模甚句(さがみじんく)は茅ヶ崎甚句をまねた新たな甚句だ。さて、甚句の別格名人は南湖の加藤力(つとむ)さんだ。美声と間合いのの良さ。そして三橋誠さん、飯田久仁一さん 、矢畑の竹之内豊一さん、円蔵の吉野一三さん、英雄さん、矢畑の田代寿一さん、柳島の青木靖行さん内藤詮安さんたちは茅ヶ崎甚句の横綱だ。十間坂の小島弘さんは、甚句の研究・発掘に余念がない 自らも考案する力量新たな即興甚句が人気を呼んでいる。
♪セエー私しゃ茅ヶ崎荒波育ち 波も荒けりゃ気も荒い
♪セエー茅ヶ崎名物茅ヶ崎名物 左富士 
     上り下りの東海道 松の緑と吹く風は
     昔も今も変わらねど 富士の高根と男伊達
     相模おのこの晴れ姿
♪セエー好いた お方と 添いたいために
     1で相州一ノ宮
     2で日光の東照宮
     3で讃岐の金毘羅さん
     4又 信濃の善光寺さん
     5つ出雲の大社
     6つ村々鎮守さま
     7つ成田のお不動さん
     8つ八幡の八幡さん
     9つ高野の弘法さん
    10で東京の名高い招魂社
       これだけ神願掛けたのに 好いたお方と
       添えぬなら 神や仏は要らぬもの

        ※これは おもなものです。

【相州神輿甚句】
 「相州神輿甚句」。

 ♪細の提灯 南湖と染めて 平塚通いの ほどの良さ♪ 好きな甚句の一つである。甚句は仕事唄とも言われているが、冒頭の細の提灯や、♪白鷺見たよなお方に惚れて♪などからは、艶っぽい都都逸も連想され、三味の音にも合うような文句でもあり、遊び唄とも思える。 ひと仕事終えて、日が落ちた頃合、細の提灯に火を灯し、ほろ酔い機嫌で三々五々、川向こうへ通って行く男達の姿が思い浮かんでくるような甚句だ。 昔は酒席などでも唄われたが、最近ではもっぱら神輿を担ぎながら唄う甚句である。相撲甚句や相馬甚句のようにメジャーではないが、茅ヶ崎、須賀、大磯辺りを中心に唄われる。神輿を担ぎながら唄うのは、いつ頃からのことか定かではないが、今ではかなり広範囲に唄われている。我が菅谷神社他、寒川辺りでは1975年頃、浜降祭が復活した頃に盛んになってきた。しっかりと皆の肩が合って、「どっこい」「どっこい」「どっこいそーりゃ」と、ゆったりと担いでいるとき、渋い声で甚句が聞こえてくると、つくづく、「いいなあ、最高!」と、思うのである。阿波踊りの特に男踊りの人が、恍惚とした顔で踊っているが、リズムは違うものの、同じ様な気分だろうなと思って、いつも観ている。

せぇー 私ゃ茅ケ崎 荒波育ち  波も荒けりゃ 気も荒い
せえー 注いだ盃  中見てお呑み 中にゃ鶴亀 五葉の松
せえー  惚れて通えば 相模の橋も 長い廊下と 諦める
せぇー 白鷺みたよな お方に惚れて 烏みたいに 苦労する
せぇー 娘十七・八 蝶々がとまる とまるはずじゃよ 華じゃもの
せぇー 花が蝶々か  蝶々が花か 咲いてチラチラ 迷わせる
神輿担ぐような  いなせな いなせな 姉さんと ともに苦労がしてみたい
せぇー  色で売り出す 西瓜でさえも 中にゃ苦労の 種がある
せぇー  信州信濃の 新蕎麦よりも 私ゃあなたの 側がいい
§神仏§
せぇー 好いた御方と 添えたい為に
一で相州一之宮  
二で日光の東照宮さん
三で讃岐の金毘羅さん  
四また信濃の善光寺
五つ出雲の大社
六つ村村鎮守様
七つ成田の御不動さん
八つ八幡の八幡さん
九つ高野の弘法さん
十で東京で名高い招魂社
これだけ心願かけたのに 好いた御方と添えぬなら 神や仏はいらぬもの
§嫁入り§
せぇー 娘十七・八  嫁入りざかり 箪笥・長持・鋏箱
これだけ持たせてやるからにゃ 二度と戻ると思うなよ
そこで娘の言うことにゃ 父(とと)さん母(かか)さんそりゃ無理よ まして私は嫁じゃもの
縁があったら戻らぬが 西が曇れば雨とやら 東が曇れば風とやら
千石積んだる船でさえ 港出る時ゃまともでも 波風荒けりゃ又戻る
§坂田山心中§
せぇー 大磯名代は 春は花咲く坂田山  秋は紅葉のその中で 聞いてくだされ皆様よ
五郎さんと八重子さんの物語 東京・静岡その中で なるほど遠い仲なれど 汽車の線路じゃあるまいし
恋と言う字を墨で書き 愛と言う字は筆で書く たとえ両親(ふたおや)許さぬも 
神や仏が許すもの 死んで花実が咲くものか
せー  赤羽根山から  近場を見れば 西に大山一のもん 
東のお方を眺めれば  相模の海に江ノ島と 遥か遠くに大島と  一際目立つ烏帽子岩
西の大空見てやれば 日本一の富士の山 眺めよければ実も多い
義理と人情の厚いとこ これぞおいらの故郷の村
せー 頃は六月  頃は六月田植え時
姉は妹に負けまいと 妹は姉に負けまいと 一生懸命に田植えする
すると遥か向こうの彼方より 一羽の穴蜂飛んできて  妹のおそそにチョイト留まる
姉さん穴蜂とってくれ 穴蜂取るは良いけれど 昔偉人の言うことにゃ 穴蜂ゃ他人の手にかかる
せー  惚れた病を  惚れた病を治すには  六畳一間の真中に 六枚屏風を立て並べ
二つ枕に三つ布団 スイッと入れたるその時にゃ 貴方上から下がり富士 私ゃ谷間の百合の花
足は絡ませ藤の蔓 お手手しっかり抱き茗荷 口は水仙よ玉椿 
エッサホイサの掛け声で  一汗かかねば治りゃせぬ
せー 相州茅ケ崎  茅ケ崎名物 左富士 上り下りの東海道
松の緑に吹く風は 昔も今も変わらねど
富士の高嶺と男伊達 相模おのこの晴れ姿
せー  思い寄せても  届かぬ恋は
たかが漁師の子倅が 及ばぬ恋の滝登り
私ゃ浮気で言うじゃない ほんに貴方がすきなのよ
せーどこで染めたか 船頭衆の浴衣
せなに帆を上げ裾に波 錨という字の紋をつけ どこの質屋に入れたやら
相模の川へ流すとも 錨おろせばながりゃせぬ
♪せぇ~さてはこの場の 皆様方よ
年の初めの新玉の 松を楽しむ正月や
二月に咲いたる梅の花
三月盛りの八重桜
四月上より下がり藤
五月の梅雨に咲く花は
菖蒲名代に杜若
六月牡丹に蝶が舞う
七月野原に咲く萩に
照らす八月たもと脱ぎ
心地よく見る九月菊
十月紅葉に鳴く鹿の
十一月の垂れ柳
小野道風じゃないけれど  蛙見つめりゃ切りがない
 

【壁塗(かべぬり)甚句(相馬甚句) 福島県民謡】
 「壁塗(かべぬり)甚句(相馬甚句) 福島県民謡」。
 ハァ~相馬中村の 新開楼が焼けたナ~ ナンダヨー
 (ハ イッチャ イッチャ イッチャナット)
 焼けたその名で サイショ 花が咲くナ~ ナンダヨー
 (ハ イヤサカ サッサ)

 相馬相馬と 木茅もなびく なびく木茅に 花が咲く

 相馬中村は 石屋根ばかり 瓦ないので 人が好く

 飛んで行きたい あの山越えて 恋し相馬の 中村に

 私ゃ竹の子 まだ親掛かり 止めたい雀も 止められぬ

 お前そうまで 想うてくれりゃ 嬉し涙が 流れ山

 *歌詞は、「日本の民謡東日本編」(長田暁二、千藤幸蔵編著、教養文庫)より

http://www.city.soma.fukushima.jp/kanko/sound/jinku.wav
壁塗甚句を聴くことができます

 「壁塗甚句 」。【作詞】(多分)統一劇場 【作曲】福島県民謡

 1.ハァー 朝も早よから 弁当下げて ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ
   日がな一日 サイショ 壁を塗る ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ

 2.ハァー 裸一貫 ヘラしかないが ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ
   親父ゆずりの サイショ 心意気 ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ

 3.ハァー 力いっぱい 一の字書いて ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ
   正直もんだよ サイショ 壁ぬりは ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ

 4.ハァー 物は高うなる 手間賃は安い ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ
   土産まんじゅうの サイショ 数が減る ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ

 5.ハァー ねってねられて こね上げられて ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ
   シャンと立ってる サイショ 一文字 ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ

 6.ハァー 立った白壁 見上げる空に ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ
   今日も夕陽あ サイショ あかあかと ナンダネ
   ハ イッチャ イッチャ イッチャネ






(私論.私見)