「神」考

 白川静「常用字解」(平凡社、2800円)

 (最新見直し2008.8.31日)

 (れんだいこのショートメッセージ)


【「神」について】
 日本国語大辞典その他を参照し、「神」概念を解説すると次のようになる。
 宗教的、民族的信仰の対象としての神。日本神道では、天地万物に宿り、それを支配していると考えている。世に禍福を降し、人に加護や罰を与える霊威でもある。
 ユダヤ−キリスト教では、宇宙と人間の創造主であり、すべての生命と知恵と力との源である絶対者をいう。
 日本の幕末宗教の天理教では、宇宙と人間の創造主であり、すべての生命と知恵と力との源であると同時に八百万神的性格を持つ。
 日本神話上、人格神としても登場し、高天原王朝神話では、天皇、または天皇の祖先として位置づけられている。
 死後に神社などに祭られた霊。またその霊のまつられた所。神社。
 雷。なるかみ。いかずち。不思議な力、知るべからざるもの。「分からないもの」、「恐るべきもの」という意味を持つ。
人為を越えて、人間に危害を及ぼす恐ろしいもの。特に蛇や猛獣。
 
 

 日本神道的な意味合いでの「神概念」は多義的で、自然界の森羅万象に宿る超自然的存在を感じ取り、それに神名を附している。人為を越えたすべてのものに与えられた名称で、 語源は諸説あるが未だ定まっていない。

 記紀に登場する様々な人格神は、西欧のユダヤ−キリスト教的な絶対者ではない。先だった妻を忘れられずあの世まで追いかけていく神であり、母が恋しいと泣きわめく神であり、弟の乱暴に腹を立てて岩屋に閉じこもる神であり、変なものを食わせたといって他の神を殺す神である。きわめて人間的であり、欠点も多い。本質的に神と人が同じような感情を持つ存在として位置づけられている。

 同時に「さわらぬ神に祟りなし」という諺があるとおり、「神」と名をつけたからといって崇拝する対象になるとは限らない。他方、御利益信仰的要素で崇拝されている面もある。天皇制は、神々の外界との橋渡しをする祭祀王として天皇を位置づけており、ここに天皇が特殊崇拝される所以がある。

【「宗」について】

 宗教の「宗」は、おおもと、という意味。「宗教」は、おおもとの真理を教えるという意味。仏教では、「宗」=真理と説いている。宗教とは真理を求め、真理に基づいて生きるということ。

 科学の「科」は、区分、条(えだ、すじ)という意味。現実をしっかり見て真理を確かめるというのが科学。宗教はおおもとをズバッと見ようとする。科学はいろいろな出来事をきちんと見て真理を知ろうとする。


【「理」について】
 「理」というのは、宝石の模様の筋目を意味し、物事の筋道という意味になる。自然の法則を求める科学を理科という。神は分からないもの、理は分かるものの意である。





(私論.私見)