「インテリジェンス(intelligence)」考

 白川静「常用字解」(平凡社、2800円)



【「インテリジェンス(intelligence)」という意味】
 (「もう一つの反戦読本」よりれんだいこが一部意訳)

 メディア情報は現代の貴重な情報発信源であるが、漫然とマスコミ情報を受け入れていると騙[だま]されたり足下をすくわれたり、思わず知らずにタコ踊りを踊らされてしまう。だから“情報”を吟味して真実に近づくための眼力なり嗅覚[きゅうかく]が必要になる。それが「諜報力[インテリジェンス]」に他ならない。

 「諜報(ちょうほう)」の「諜」という言葉には「相手の様子をさぐる」という意味がある。しかし「諜報活動」というのはスパイ映画に出てくるアクションヒーローのようなものとはだいぶ違う。基本的にはデータを収集して一つひとつ吟味し、個々のデータが示している意味や価値を評価して、知りたい相手の現況や全体像に迫るという、パズル解きのような知的作業なのである。

 この作業を意味する「インテリジェンス(intelligence)」という英単語は、「二つの事柄を区別する」という意味の「intellegere(インテッレゲーレ)」というラテン語に由来する言葉である。そしてさらにラテン語の「インテッレゲーレ」は、「〜のあいだ(inter-)」と「(木の実を)選んで拾い集める」という意味の「legere(レゲーレ)」が結びついて生まれている。食べられる木の実を拾い集めるときには、「これは食べられるかな? 食べられないかな?」と一個一個について選び、そうした評価や判断をも含んだ、最も基本的な意味での“知的分別”を表わす言葉である。

 情報洪水に流されて扇動に踊らされたくないなら、情報を吟味する「諜報力(インテリジェンス)」を、一人ひとりが身につけて行かなければならない。具体的には、つね日頃からいろいろなメディアの情報を見聞きして、それを自分なりに疑ってみたり不明な点や「何が伝えられ、何が伝えられていないか?」を考えながら、真実を知ろうとする生活習慣を心がけるということだ。念のために繰り返しておくが、「諜報力」とは、誰かを「敵」だと思って見張ることではなく、情報に踊らされないよう、情報を吟味して真実を知ろうとする“知的体力”や心がまえを自分のなかに確立することだ。





(私論.私見)