イソップ物語集1 |
(最新見直し2010.04.18日)
(れんだいこのショートメッセージ) |
イソップ童話の傑作品を採り上げておく。 |
れんだいこ選NO1、ウサギとカメ |
【兎にまつわる話(ウサギとカメ)その1】 |
ある日のこと、ウサギがカメを、足が短くてのろまだと嘲笑った。するとカメは笑みを浮かべてこう答えた。「確かに、あなたは、風のように速いかもしれない。でも、あなたをうち負かしてみせます」。 ウサギはそんなことは、無理に決まっていると思い、カメの挑戦を受けることにした。キツネがコースとゴールの位置を決めることになり、両者はそれに同意した。競争の日が来た。二人は同時にスタートした。カメは、遅かったが、一瞬たりとも止まらずに一歩一歩着実にゴールへと向かった。ウサギは、道端でごろりと横になると眠りこんだ。しまった! と思って、目を覚ましたウサギは、あらん限りのスピードで走ったが、カメはすでに、ゴールインして、気持ちよさそうに寝息を立てていた。 |
(寓意) |
ゆっくりでも着実な者が勝つ、と云う寓意。 |
【兎にまつわる話(ウサギとカメ)その2】 | |
亀と兎が足の速さで言い争った、それでは勝負しましょうと言うことになった、兎さんは自分が速いのをしっていたから真剣に走らずに道から外れて眠り込んでしまったとさ。亀は自分が遅いのを百も承知していたから弛まず走り続け眠り込んでいる兎の横を通り抜け勝利のゴールした。 |
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(寓意) | |
素質も磨かなければ努力に負ける時もある。油断は大敵に繋がるとこの話は言っている。 |
【兎にまつわる話(ウサギとカメ)その3】 | |
(直訳) 亀と野兎が速さに関して論争しました。そして、そこで指定された日と場所を立てて、解散しました。一方野兎は本性の速さの故に、早く走ることを怠けた。道の側に倒れて眠った。しかし、亀は自分が遅いことを自覚していたので休まないで走った。そして、野兎がまだ寝ているのを走りすぎ勝利の栄誉の上に到着した。 |
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(意訳) 亀と野兎が言い争って喧嘩になりました。日時と場所を決めて何方が先に行けるかで決着する事にしてその日は別れました。野兎は走ることには大変自信があったので、亀に負けるはずがないと考えました。亀を馬鹿にしてこれ見よがしに道端に横になっていました。そうしていつの間にか眠りに落ちていきました。一方亀はよくよく自分の欠点を知り抜いていました。定められた日までに未だ間があったのに、その場所に向かってたゆみなく走りました。ほどなく寝ている野兎の側を通り抜け早々と約束の場所に着いてしまいました。こうなっては野兎が約束に間に合っても勝ち目はありません。 | |
(寓意) | |
この言葉は示す、しばしば天性は不注意で努力が勝つ。この話は「どんなに才能があっても努力がなければ無駄になる」ことを教えています。 |
れんだいこ選NO2、ヒツジ飼の少年とオオカミ |
【ヒツジ飼の少年とオオカミ(悪ふざけをしたひつじ飼い)その1】 |
少年は、村の近くで、ヒツジの番をしていたのだが、退屈すると、「狼だ!」、「狼だ!」と叫ぶことがよくあった。村人たちが駆けつけると、少年は、皆の慌てた様子を見て笑った。そんなことが何度も続いた。ところが、ついに本当にオオカミがやって来た。少年は恐怖に駆られて叫んだ。 「お願だ。助けてくれ! オオカミがヒツジを殺してるんだ!」。しかし、少年の声に耳を傾ける者は誰もいなかった。こうしてオオカミはヒツジを一匹残らず引き裂いた。 |
(寓意) |
嘘つきが本当のことを言っても信じる者は誰もいない、日頃の信用が一番と云う寓意。 |
【ヒツジ飼の少年とオオカミ(悪ふざけをしたひつじ飼い)その2】 |
村から少し離れたところへ、ひつじの群れを連れ出していた羊飼いが、こんな悪ふざけばかりしていました。「ひつじがオオカミに襲われる」と大声を上げて村人に助けを求めたのでした。村人たちは、びっくりして飛びだしましたが、だまされたとわかって村へ帰りました。ところがとうとう本当にオオカミがやってきてひつじを襲いました。羊飼いは村人たちに大声で助けを求めました。村人たちは、またいつもの悪ふざけだとたいして気にもとめなかったのです。羊飼いはひつじを失ってしまいました |
(寓意) |
「オオカミが出た」の有名なお話。うそをついてばかりいるとほんとうのことをいっても信じてもらえない。 |
【ヒツジ飼の少年とオオカミ(悪ふざけをしたひつじ飼い)その3】 |
(直訳) |
羊飼いが引き出していた、彼の群れを村から前の方に。止まっていた、気晴らしを利用することに。そして、村人たちに「たすけて」と叫んで言った。「羊たちに狼らが入りこんだ」。そして二度三度、驚いて村を出た、そして飛び出した。その上、笑って解散した。 最後が起きた。真実に狼が臨んだ。そして引き裂いた彼らの群れを、そして羊飼いは助け求めた。村人たちを呼んだ。その人々は彼に答えて何時ものようにふざけた。関心を示さなかった。そして、こうして彼らの羊たちが奪われることが起きた。 |
(意訳) |
羊飼いが羊を村の囲から放牧地の方に連れだす時に、よく悪ふざけをした。それは「助けてくれ!狼が羊を襲っている」と言って村人を驚かして、駆けつけた人を馬鹿にすることであった。しばしば騙されていた村人も次第に馬鹿らしくなっていた。そんなときに突然、狼の群れが出てきて羊に襲いかかった。羊の群れは散々に食い荒らされた。羊飼いは慌てふためいて村人たちに叫び助けを求めたが、誰一人耳を貸すものはなかった。そうしてとうとう羊飼いは群れの羊を全て失ってしまった。 |
(寓意) |
この話が教えているのは「いつも嘘をついているひとは、真実を話すときにも信じてもらえない」と言うことです。 |
れんだいこ選NO3、北風と太陽(The Wind and the Sun) |
【北風と太陽その1】 |
北風と太陽が、どちらの力が強いか「勝負しよう」、ということになりました。そこへ一人の旅人が通りかかりました。旅人の服を脱がせたほうが勝ち、ということにしました。 北風は、簡単なことだと言って、風を激しく旅人に吹きつけました。旅人は、しっかりと服を押さえたので、さらに一層、強く吹きました。たまらなくなった旅人は、もう一着服を着込みました。ついに北風は吹きつかれてしまいました。次は太陽です。 太陽ははじめおだやかに照らしました。すると旅人は、よけいな服を脱ぎ捨てました。するとこんどはもっと強く照りつけました。とうとう旅人は暑くてたまらなくなり、服を全部脱ぎ捨てたのでした。 |
(英訳) The Wind and the Sun were disputing which was the stronger. Suddenly they saw a traveller coming down the road, and the Sun said: "I see a way to decide our dispute. Whichever of us can cause that traveller to take off his cloak shall be regarded as the stronger. You begin." So the Sun retired behind a cloud, and the Wind began to blow as hard as it could upon the traveller. But the harder he blew the more closely did the traveller wrap his cloak round him, till at last the Wind had to give up in despair. Then the Sun came out and shone in all his glory upon the traveller, who soon found it too hot to walk with his cloak on. Kindness effects more than severity. |
(れんだいこ和訳) |
風と太陽がどちらが強いか言い合っていた。不意に彼らは、ある旅人が通りかかるのを見た。太陽が云った。「我々の論争に決着付ける案が浮かんだ。我々のうちどちらがあの旅人の服を脱がすことができるか。脱がした方がより強いということを認めることにしよう」。 あなたからどうぞ、そう云って、太陽は雲の中へ隠れた。風が旅人にあらん限りの力で吹きつけにかかった。しかし、風が強く吹けば吹くほど旅人は彼の服を強く掴み始めた。遂に風は吹きつかれてあきらめねばならないことになった。 次に太陽がやって来て、旅人をおだやかに照らし始めた。するとまもなく旅人は暑くてたまらなくなり、服を脱いで歩き始めた。やさしさは苛酷さよりも効果があるんだな。 |
(寓意) |
イソップ物語の中でも有名な寓話で、「やさしさは苛酷さよりも効果がある」の諭しとなっている。仕事、世間づきあい、政治等々諸事全般に云えるたとえ話ではなかろうか。 |
【北風と太陽その2】 | |
北風と太陽、どちらが強いかで争った。旅人の服を早く脱がせたほうが勝ちにすることにした、北風君から始めた、こんなものはわけはないことと一気に強く男に風を吹きつけた、ところが.....旅人はマントを強く体に巻き付ける、北風は顔を真っ赤にしてより強く北風を吹きつけると男は益々マントをより強く巻き付けて離さない。今度は太陽君が旅人に始めは陽射しの軟らかな光で包み徐々に暖かさを増していった、ある温度に達するや旅人堪らずにマントをかなぐり捨てたとさ! | |
(寓意) | |
強制より説得や暖かさが人間を動かす最上の手段と物語は語る。 |
【北風と太陽その3】 | |
(直訳) | |
北風と太陽が力について論争した。そして彼らのどちらかの上に勝利を置くことにした。それは彼らで人間の旅人の服を脱がせたどちらかに。そして北風が酷く始めた。すると、人間は着物を硬く持った。彼はさらに吹き下ろした。そして風をこらえようともがいたより一層。そしてより一層強く服を引き寄せた。収まるまで。 北風は太陽に彼を引き渡した。すると彼は先ず初めに穏やかに照らした。すると人間は豊かな着物を離して置いた。非常な熱を彼は落とした。避けれなくなるまで、耐える力が無くなるまで。脱いで、側を流れる川に洗うために行ってしまった。 |
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(意訳) | |
寒い北風と太陽が実力を競い合った。初めは論争であったが、力試しをして、旅人の服を剥がした方を勝者にすることが決まった。先ず、北風が登場して、酷く吹き回した。すると旅人はそれに対抗して着物をしっかりとつかんだ。すると北風は益々激しく吹きつけた。そうすると旅人も必死になって服を飛ばされまいと頑張った。しばらくそのままであったがとうとう北風はあきらめて吹くことを止めて太陽に交代した。 登場した太陽は早速、旅人の上に日を降り注いだ、すると忽ち旅人は服を脱ぎはじめた。太陽がさらに激しく強く照り輝いたので旅人は等々裸になった上に、道の横に流れていた川に飛び込んで溢れ出た汗を流した。 |
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(寓意) | |
世の中では時として力で承服させるよりも言葉が良くなし遂げることがある。「力で人を屈伏させるよりも、言葉で納得させるほうが有効だ」と云う寓意。 | |
(れんだいこ悟り) | |
支配者たるものは強権政治を得手としているが、慈愛に導かれねばならないの教え。 |
れんだいこ選NO4、アリとキリギリス |
【アリとキリギリスにまつわる話(蝉と蟻たち)その1】 |
冬の季節に蟻たちが濡れた食糧を乾かしていました。蝉が飢えて彼らに食物を求めました。蟻たちは彼に「なぜ夏にあなたも食糧を集めなかったのですか」と言 いました。と、彼は「暇がなかったんだよ。調子よく歌っていたんだよ」と言いました。すると彼はあざ笑って、「いや、夏の季節に笛を吹いていたのなら、冬には 踊りなさい」と言いました。(イソップ寓話集 岩波文庫 山本光雄訳) |
(寓意) |
とある解説に、「この物語は、苦痛や危険に遇わぬためには、人はあらゆることにおいて不用意であってはならない、ということを明らかにしています」とある。少し違うような気がする。 |
【アリとキリギリスにまつわる話(蝉と蟻たち)その2】 | |
(直訳) | |
冬の季節(雨期)に穀物が湿ったので蟻たちが乾かしていた。そこで飢えた蝉が彼らに養ってくれと要求した。すると蟻たちは彼に言った。「収穫の間に取り入れもしないで、養えだって?」。彼は言った。「暇がなかったのでね。歌と宴会でね」。すると彼らはあざ笑いながら言った。「なんと、収穫時に笛を吹くのなら、冬に踊るがいい」。 | |
(意訳) | |
冬の晴れ間に、貯えていた穀物が嵐ですっかり湿気てしまったので、蟻たちが乾燥させていた。するとそこに飢えて死にかけている蝉がやって来て、「一冬でいいからおれを養え」と要求した。そこで蟻たちは「長い収穫時期があったのに、何もしなかったあんたをどうして俺たちが養わなければならないのかね」といった。すると蝉は答えた「なにしろ、社交音楽会で歌うのに忙しくてそんな暇があるわけがないだろう」。すると蟻たちがあざ笑いながら言い返した。「へえー、収穫時を気にせずに笛が吹けるなら、寒さも気にせず踊ったらどうかね」。 |
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(寓意) | |
この寓話が明らかにしているのは、「全ての行為において何かを見下さないことが必要です。酷い苦痛や危険にあわないために」。「大事ではないと思っていても、先ずやらなければならないことをしないと、酷い目に合わなければならないと言うことです。 | |
(れんだいこ悟り) | |
よく働きよく遊ぶでなくてはならない、遊んでばかりいて困ったときに人に援助を頼むのは虫が良すぎる、誰も助けてくれない、自らツケを払わねばならない、との教えと思う。 |
れんだいこ選NO5、ろばを売りに行く親子 |
【ろばを売りに行く親子その1】 |
ろばを飼っていた粉ひきの父親と息子が、ろばを売りに行くため、市場へ出かけた。二人でろばを引いて歩いていると、それを見た人が言った。「きみたち おばかさんだねぇ。せっかくろばを連れているのなら乗って行けば良いのに。乗りもせずに歩いているなんてもったいない」。なるほどと思い、父親は息子をろばに乗せた。しばらく行くと別の人がこれを見て言った。「おい、おい。元気な若者が楽をして親を歩かせるなんて、ひどいじゃないか。子供を甘やかしてどうする」。それもそうだと思い、今度は父親がろばにまたがり、息子が引いて歩いた。しばらく行くと、また別の者が見て、「自分だけ楽をして子供を歩かせるとは悪い親だ」。親子は考えた末に二人でろばに乗って行くことにした。すると、別の者が見て、「二人も乗るなんて、重くてろばがかわいそうだ。酷い親子だ」。親子はまた考えた。名案として、こうすれば楽になるだろうと、ちょうど狩りの獲物を運ぶように、1本の棒にろばの両足を棒にくくりつけて吊り上げ、二人で担いで歩くことにした。これで誰にもとやかく云われないで済むだろう。ところが、もうすぐ市場に到着するという頃、不自然な姿勢を嫌がったろばが暴れだした。不運にもそこは橋の上であった。暴れたろばは川に落ちて流されてしまい、結局親子は、苦労しただけで一文の利益も得られないままとぼとぼと帰って行った。 |
(寓意) |
この寓話が教えているのは、人の意見ばかり聞いて、それに左右されて主体性のない行動を取れば、時としてひどい目に遭うと云う寓意。 |
れんだいこ選NO6、こぼれたミルク |
れんだいこ選NO7、オオカミと仔ヒツジ |
ある日のこと、オオカミは、群とはぐれて迷子になった仔ヒツジと出会った。オオカミは、仔ヒツジを食ってやろうと思ったが、牙を剥いて襲いかかるばかりが能じゃない。何か上手い理由をでっち上げて手に入れてやろうと考えた。そこで、オオカミはこんなことを言った。「昨年お前は、俺様にひどい悪口を言ったな!」。仔ヒツジは声を震わせて答えた。「誓って真実を申しますが、私はその頃、まだ生まれていませんでした」。するとオオカミが言った。「お前は、俺様の牧草を食べただろう!」。「いえいえ、私はまだ草を食べたことがありません」。するとまたしてもオオカミが言った。「お前は、俺様の井戸の水を飲んだな!」。仔ヒツジは悲鳴を上げて答えた。「いえ。まだ水も飲んだことがありません。……だって、お母さんのお乳以外は、まだ何も口にしたことがないのですから……」。「ええい! もうたくさんだ! お前がなんと言おうとも、俺様が、夜飯を抜いたままでいるとでも思っているのか?」。オオカミはそう言うと仔ヒツジに襲いかかった。 |
(寓意) |
暴君は、いかなる時にも、自分に都合のよい理由を見つけるものである、とある。 |
れんだいこ選NO8、ライオンの御代 |
野や森の動物たちは、王様にライオンを戴いていた。ライオンは残酷なことを嫌い、力で支配することもなかった。つまり、人間の王様のように、公正で心優しかったのだ。彼の御代に、鳥や獣たちの会議が開かれた。そこで彼は、王として次ぎのような宣言をした。「共同体の決まりとして、……オオカミと仔ヒツジ、ヒョウと仔ヤギ、トラとニワトリ、イヌとウサギは、争わず、親睦をもって、共に暮らすこと……」。 ウサギが言った。「弱者と強者が共に暮らせるこんな日を、私はどんなに待ちこがれたことか……」。ウサギはそう言うと死にものぐるいで逃げていった。 |
(寓意) |
地上の楽園などこの世にはない、とある |
れんだいこ選NO9、ネズミとカエル |
陸に棲むネズミが、水に棲むカエルと友達になった。これが、そもそもの間違いだった。ある日、カエルは、自分の足にネズミの足をしっかりとくくりつけ、自分の棲む池へと向かった。そして、水辺へやってきた途端、池の中へ飛び込んで、善行を施しているとでも言うように、ケロケロ鳴いて泳ぎ回った。哀れネズミは、あっという間に溺れ死んだ。
ネズミの死体は水面に浮かんだ。一羽のタカがそれを見つけると、鈎爪でひっつかみ、空高く舞い上がった。ネズミの足には、カエルの足がしっかりと結ばれていたので、カエルも共にさらわれて、タカの餌食となった。 |
(寓意) |
害を成す者は、また、害を被る者なり、とある。 |
れんだいこ選NO10、竜と農夫 | |
川の水嵩が減って動けなくなってしまった竜が、農夫に、自分を縛りロバの背に乗せて、住処まで運んでくれるように頼んだ。そうしてくれるならば、お礼にありとあらゆる富と幸運をもたらすと約束した。農夫は快く承知すると、竜を縛ってロバの背に乗せると、彼の住処へと運んでやった。そして、農夫は竜の縄をほどいて地面に下ろして自由にしてやってから、約束の報酬を要求した。「お前は、俺様をきつく結んだ・・・・」。竜はそう言って更に続けた。「それなのに、今度は金銀を要求するのか?」。農夫が言った。
「あなたが自分で縛るように言ったのではないですか」。竜が「俺は、腹が空いたのでお前を食ってやる」と言った。農夫は抗って、この件をキツネの裁決に委ねることにした。 農夫がその通りにすると、キツネがこう言った。「では、彼をロバの背中に乗せて、あなたが見つけたところへ戻して来て下さい、そして縛ったまま置いて来るのです。そうすれば、彼はあなたを食べられませんからね」。それから農夫は、キツネの助言通りのことを行った。 |
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(寓意) | |
れんだいこ選NO11、二匹のいぬ |
神様はいぬを二匹飼うことにされました。一匹は猟犬として育て、一匹は番犬にしました。猟犬は狩りに出て、獲物をとってくると、神様は番犬にもわけあたえました。おかげで番犬は食べる心配をすることなくいつものんびりと門番をしていました。それに腹を立てた猟犬は、番犬に文句をいいました。「外へ出ていって、いつも苦労ばかりしているのは私だ。それに比べておまえはいつも、楽している」。 番犬は答えた。「私を責めるのは筋違いだ。あんたの稼ぎで食うように教えたのは神様なんだから、文句があれば、神様に言え」。こうして猟犬と番犬は争いが絶えなくなった。 |
(寓意) |
現代社会では「夫」と「妻」の夫婦関係において、職場では上司と部下、あるいは製造部門と営業部門といった部門間に葛藤といわれる言葉でしばしば起こります。 |
れんだいこ選NO12、ごま塩頭の男と二人の愛人 |
白髪の混じった頭の男に愛人が二人いました。一人は若い女で、もう一人は年配の女でした。年よりの女は、「自分より若い男とつきあっているのは恥ずかしい」と思い、男がその女のもとにくるたびに、男の髪の、黒い毛を引き抜いていました。若い女は、「年老いた男の愛人だ」と思うといやになり、男の髪の、白い毛を引き抜きました。こうして男はかわるがわる、毛を抜かれているうちに、はげ頭になってしまいました。 |
(寓意) |
不つりあいは身を滅ぼす、というお話。 |
(私論.私見)
ワシとキツネ
ワシとキツネが仲よしになり、おたがいに近くに住んで、もっとしたしくつきあうことにしました。そこで、ワシは高い木の上に巣をつくり、キツネはその根もとのやぶ《ヽヽ》にはいって、子どもをうみました。
ある日、キツネがえさ《ヽヽ》をさがしに出かけたあとのことです。食べ物がなくてこまったワシは、やぶのなかにはいって、キツネの子どもたちをさらい、自分の子どもたちにも分けて、食べてしまいました。やがてキツネがもどってきて、そのできごとを知り、子どもたちの死を悲しみました。そして、それより、ワシにかたきうちができないことを、もっと悲しみました。キツネは地上の動物で、空を飛ぶ鳥を追いかけることはできません。キツネは遠くから、敵を呪うだけでした。無力な弱いものには、そんなことしかできないのです。
しかし、ほどなく、ワシは友情をやぶった罰をうけることになりました。人びとが野原でヤギを殺して、神にささげる儀式をしていたときに、例のワシが飛びおりてきて、燃えているヤギのはらわたを祭壇からかすめとり、自分の巣に持ってもどったのです。
ところが、風がはげしく吹きつけて、はらわたについていた火が、巣の古いわら《ヽヽ》にうつり、巣は燃えあがりました。ワシのひな《ヽヽ》はまだ羽がはえそろっていなかったので、焼けて地面に落ちました。キツネはさっそくかけよって、ワシの見ている前で、そのひなをみんな食べてしまいました。
◆友情をやぶると、相手が弱いせいで、仕返しをうけないでも、そのうちに天罰がてきめんというわけ。
ワシとカブト虫
ワシがウサギを追いかけていました。ウサギは、助けがほしかったものの、カブト虫〔コガネムシ科に属していて、けもののふん《ヽヽ》を玉にして運ぶタマオコシコガネなどがあり、その生態はファーブルの『昆虫記』でゆうめい〕が一ぴきしか見つかりませんでした。カブト虫は、しっかりしろとウサギをはげまして、追ってきたワシにいいました。
「わたしにすくいをもとめているこのウサギを、さらっていかないでください」
しかしワシは、なんだ、このちびめが、とカブト虫をばかにして、目の前でウサギを食べてしまいました。
それからというものカブト虫は、ワシにうらみをいだいて、ワシの巣をたえず見張っていました。そして、ワシがたまご《ヽヽヽ》をうむと、そのたびに飛んでいって、たまごをころがして割ってしまうのでした。
ワシは、どこに巣をつくってもカブト虫におそわれるので、とうとうゼウス〔ギリシア神話のオリンポス十二神の主神。宇宙の支配者〕にすがりました。というのは、ワシはゼウスにつかえている鳥だったからです。ワシはゼウスに、安心してたまごをうめる場所をつくってください、とねがいました。そこでゼウスは、自分のひざの上でたまごをうんでいいと、許可しました。
そのことを知ったカブト虫は、けもののふん《ヽヽ》でまるい玉をつくり、それをゼウスのひざの上に落としました。ゼウスは、ふんの玉をはらいのけようと立ちあがりましたが、そのひょうしに、ワシのたまごを地上に落としてしまいました。そのときから、ワシはカブト虫があらわれる季節には、巣をつくらなくなったそうです。
◆どんなものでも、あなどられた仕返しをしないほどの弱虫はいない。
ワシとカラスとヒツジ飼い
ワシが高い岩の上から舞いおりて、子ヒツジをさらっていきました。それを見ていたカラスは、うらやましくなって、よし、おれもまねをしてやろう、と思いました。で、大きな羽音をたてて、一頭の雄ヒツジに飛びおりたところ、つめ《ヽヽ》がヒツジの巻毛にからまって、ぬきとることができなくなりました。羽をばたばたやっていると、ヒツジ飼いがそれに気づいて、走ってきてカラスをつかまえ、羽のはしをちょんぎってしまいました。
夕方になり、ヒツジ飼いはそのカラスを子どもたちのみやげに持って帰りました。子どもたちが、それはなんという鳥なの、たずねたので、ヒツジ飼いは答えました。
「わしにいわせりゃ、まちがいなしのカラスだがね。ご本人は、自分は『ワシじゃ』と、おっしゃるだろうよ」
◆身のほど知らずのふるまいは、なんにもならないばかりか、ひどいめにあって、もの笑いにされるということ。
1.善と悪(No1)
直訳
悪の下に善が迫害されて病気のようになっていた。そして(善は)天に登っていった。そして善はゼウスを問いただした。「どうしたら人間たちと一緒におられるのか?」すると彼は言った「全てが一緒には無理だ。一人が人間一人に対してなら行き着けるよ。」こう言うわけで一方で悪は人間たちに押し迫っている、近くにいて到着している。他方善は遅れている。天を出で下るので。
こう言うわけで善を成す者達はすぐにはめぐり合う事はない。悪を成す者達は互いが互いにつながっているからだ。
意訳
悪に迫害された善はすっかり弱ってしまった。そこで善は天に登って最高神のゼウスにお願いすることにした。そうして尋ねた。「どうしたら人間たちの所に留まって良い影響を与えられるのでしょうか?」神は答えられた。
「皆で同じように善い影響を与えるわけにはいかない。善はそれぞれの状況に合わせて個別に影響を与えるなら、何とか人間たちの所に留まれる」
こんな事が昔にあったので、善は天に逃げ去ったままなのです。その後は悪が地上を占領し、何時でも何処でもしたいほうだいなのです。反対に善は人間の世界では一向に見あたらないし、善を行うには大変な時間が必要なのだ。なにしろ注文が来てから天を出るし、その到着を待たなければならないのだから。
こう言うわけで人が幾ら善を行なおうとしても簡単に行えない。それは悪が絡み合って自分の縄張りである地上にひしめいているからだ。
4.羊飼いの悪ふざけ(No318)
直訳 羊飼いが引き出していた、彼の群れを村から前の方に。止まっていた、気晴らしを利用することに。そして、村人たちに「たすけて」と叫んで言った。「羊たちに狼らが入りこんだ。」そして二度三度、驚いて村を出た、そして飛び出した。その上、笑って解散した。
最後が起きた、真実に狼が臨んだ。そして引き裂いた彼らの群れを、そして羊飼いは助け求めた。村人たちを呼んだ。その人々は彼に答えて何時ものようにふざけた。関心を示さなかった。そして、こうして彼らの羊たちが奪われることが起きた。
この言葉が示しているのは、この事を受ける、嘘つきはまた真実を言うときも信じられない。
意訳
羊飼いが羊を村の囲から放牧地の方に連れだす時に、よく悪ふざけをした。それは「助けてくれ!狼が羊を襲っている」と言って村人を驚かして、駆けつけた人を馬鹿にすることであった。しばしば騙されていた村人も次第に馬鹿らしくなっていた。そんなときに突然、狼の群れが出てきて羊に襲いかかった。羊の群れは散々に食い荒らされた。羊飼いは慌てふためいて村人たちに叫び助けを求めたが、誰一人耳を貸すものはなかった。そうしてとうとう羊飼いは群れの羊を全て失ってしまった。 この話が教えているのは「いつも嘘をついているひとは、真実を話すときにも信じてもらえない」と言うことです。