46117 ドキュメント(7) NGO参加拒否問題騒動

【NGO代表アフガン復興会議に参加できず外務省批判】
 21日に開幕するアフガニスタン復興支援国際会議の前段として20日、「アフガニスタン復興支援に関するNGO(非政府組織)会議」(日本政府など主催)が開かれ、二つの有力NGOの代表(ジャパン・プラットフォーム・JPFとピースウィンズ・ジャパン・PWJ)の4名が、直前になって出席を拒否された。2団体はアフガン復興支援の中心的役割を担ってきた団体で、外務省との事前打ち合わせでは日本のNGOのまとめ役として出席することになっていた。17日には登録用紙も送られていた。JPFにはNGO16団体のほか、学者や外務省、経済団体の代表らが入っており、去年12月のアフガニスタン復興NGO東京会議を主催した。PWJも加盟団体。大西さんはJPF代表とPWJの統括責任者。

 NGO会議は21日からの本会議にNGOの意見を反映させるのが目的。出席したNGOは本会議の一部も傍聴できる。外務省は「適切なNGOを選んだ」と説明するが、2団体の責任者の大西健丞(けん・すけ)さんは「朝日新聞に載った私の政府批判に、代議士が怒っているという理由で断られた」と抗議した。内外のNGOは「日本政府はNGOの役割を理解していない」と批判している。

 判明する経緯は次の通り。19日、外務省幹部が電話してきて、今月18日付(一部地域は17日付)の朝日新聞・ひと欄で大西さんが「お上の言うことはあまり信用しない」と語っていることなどに自民党の鈴木宗男代議士が怒っていると指摘し、「彼に謝りの電話を入れてほしい」と言ったという。大西さんは電話せず、19日夜、会場の都内のホテルへ行って登録証を受け取ろうとすると、受付で外務省職員から保留されたという。翌日未明、外務省の宮原信孝・中東2課長が2回電話してきて、「政府に非協調的なNGOは出席いただくわけにはいかない。JPFには学者などNGO以外のメンバーが入っており、参加は断ることにした」と伝えてきたという。

 宮原課長は朝日新聞の取材に「NGOとは互いの信頼関係の上でやっていこうというのに、新聞報道などで信頼が崩れてきた。省として会議をやっていく上でふさわしいNGOを選んだ。だれが何を言ったかはコメントできない」と話した。

 鈴木代議士は「大西さんを出すな、などとは言っていない。どんな団体を呼んでいるか外務省から聞いた。アフガンはまだ危険で、NGOとはよく連携してくれと言っただけだ。外務省の判断したことに何で私の名前を出すのか」と話した。

 大西さんは20日、記者会見を開き、「大阪人気質として一般的なことを述べただけ。外務省とは非常にいい関係を続けてきたのに、突然態度を変えたのは外部の圧力としか考えられない。言論の自由の侵害だ。今後のアフガン救援活動にも影響が出る」と話した。

 NGO会議に参加した内外のNGOの代表らは20日夕、会場のホテルで記者会見し、外務省による2団体代表の排除を厳しく批判した。米国の貧困対策NGO、マーシー・コープスのエルスワース・カルバー副議長は「世界のNGOと政府が連携してアフガンの復興に取り組もうというせっかくの機会に、NGOの役割を理解しない今回の措置は残念で驚きだ」と話した。

 保健プログラム推進の国際NGO、マネジメント・サイエンス・フォー・ヘルスの藤崎智子・日本代表は、「2団体のアフガンでの活動の大きさを考えると、単にアフガン問題だけで終わらない、国際社会への日本政府からの後ろ向きで否定的なメッセージになるだろう」と警告。日本予防外交センターのキャメロン・ノーブル氏も「実力と実績のある日本のNGOが出られないのは本当におかしなことだ」と不満を表明した。

【アフガン復興会議開幕、小泉首相が5億ドルの支援表明】

 1.21日、アフガニスタンの再生に向け、国際社会が結束して後押ししようというアフガニスタン復興支援国際会議が東京都内のホテルで始まった。会議にはアフガン暫定政権と、支援する59カ国、EU、国際機関が参加した。コソボや東ティモールの国造りよりも難しいといわれるアフガンの国家再建に国際社会が取り組む第一歩となる。カンボジア和平に続いて他国の和平・復興に深くかかわる日本にとっては、かつてない規模の国際会議の開催となった。

 小泉首相はアフガニスタン復興支援国際会議の開会セッションのあいさつで、「和平プロセスがアフガン人自身によって順調に進められて初めて国際社会は復興への努力を進めることができる。テロを根絶するためには、テロが根付く素地をなくすことが重要。そのためにも平和で安定したアフガンを造ることが不可欠だ。日本としても最大限の支援を行っていく」と述べ、5億ドルの拠出や地雷除去などの日本政府の支援策を表明した。小泉首相は支援の重点方針に、「和平プロセス・国民和解」と「アフガンの将来を担う人づくり」の2点を示したうえで、具体的な分野として、「難民・避難民の再定住」、「教育」、「保健・医療」、「女性の地位向上」を挙げた。

 また、各分野を進める前提としての安全確保のため、「地雷・不発弾の除去に力を入れる」と述べ、緊急に必要な機材の整備や除去事業の支援、技術の開発などに力を入れることを表明した。復興資金の拠出については、アフガン暫定政権期間中の2年半に5億ドルまで、最初の1年で最大2億5000万ドルを支援する用意がある、と説明した。共同議長国の米国は第一弾として1年で2億9600万ドル、欧州連合(EU)は最初の1年に5億ドル(約5.5億ユーロ)、2年目にも相当額の拠出を約束した。サウジアラビアは3年間で2億2000万ドルの拠出を表明した。

 アフガン暫定政権のカルザイ議長(首相)は開会セッションでスピーチし、「この国は何もない。荒廃、戦争、野蛮な行為、貧困、はく奪。それしかない国だ」と切り出した。同議長は「信頼できる政府」と「効率的で競争力のある民間部門」「発達した市民社会」をつくりたいと表明。具体的分野として通貨安定や中央銀行の再興、教育制度、エネルギーや輸送などの社会基盤の再建、行政能力の確立、農業・牧畜、地雷除去、国軍や国家治安局の創設などを列挙し、「人材をつくることは大きな仕事だ。すべての女性に復興に参加して欲しい」と訴えた。そのうえで「透明性、効率性は約束するので、国際社会に再建を助けて欲しい。債務免除をして欲しい。来年度予算を編成するためには18億〜20億ドルが必要だ」と参加国に積極的支援を要請した。

 会議に備えアフガン、イラン、パキスタンを回ってきた共同議長の緒方貞子政府代表は「正式政権樹立までの2年半は、より恒久的な平和と安定を達成するうえで極めて重要だ」と強調。「ボン合意に始まる政治プロセスの強化」「人道支援から復旧、復興への継ぎ目のない移行」を重要な原則として指摘した。

 緒方氏は、アフガンで言葉を交わした帰還中の避難民家族が「家を建て直したい」「春に間に合うよう種まきを始めたい」と語っていたことを紹介し、「避難民の明確な言葉に、平和に向けた一歩を見た」と述べた。そのうえで、参加国の代表に「確固かつ寛大な」資金拠出の表明と、「多年にわたる継続的な関与」を呼びかけた。

 パウエル長官は「国家再建をリードするのはアフガン人であるべきだ」と述べ、難民帰還のためのインフラ整備、ケシに代わる農業生産などへの支援を表明。アフガン人による文民警察の早期立ち上げの重要性も強調した。「アフガン国民が安全になるまで米国はアルカイダへの追及の手を緩めない」とも語った。


(1/21)アフガン支援会議、参加求める決議・拒否されたNGO採択  

 20日に開かれた「アフガニスタン復興支援に関する非政府組織(NGO)会議」への出席を外務省から拒否された「ジャパン・プラットフォーム」は21日午前、加盟するNGOが集まり、復興支援会議への参加を求める決議を採択した。

 ジャパン・プラットフォームの大西健丞代表は「いろんなルートを通じて会議への参加を求めていく」とする一方、「外務省との信頼関係は損なわれているとは考えていない。これまで通り援助活動をしていきたい」とした。

 加盟するNGOの一つは「今回のことでプラットフォームの活動に影響しないか心配しているが、会議はまだ続いており、あくまで参加を求めていく」と話した。別のNGOは「今後の支援活動が第一と考えるが、そのためにも会議の出席を求める」と強調していた。

 20日の会議に参加したドイツのNGOのハンス・プロイスさんは、「日本では政府とNGOが良い関係を築けていないのか。欧州では考えられないことだ」とがっかりした様子だった。

(1/21)外務省方針転換、復興会議へのNGO参加認める  

 「政府に非協調的な発言をし、信頼関係を損ねた」などとして外務省が一部の非政府組織(NGO)のアフガニスタン復興会議への参加を拒否した問題で、同省は21日、方針を転換し、会議への参加を認めることを決めた。NGO側も同省の決定を受け入れ、22日の会議に参加することを表明した。


(1/22)アフガン復興支援会議、2団体参加一転認める・外務省が方針転換  

 政府に非協調的な発言をし、信頼関係を損ねた」などとして外務省が一部の非政府組織(NGO)のアフガニスタン復興支援国際会議への参加を拒否した問題で、同省は21日、方針を転換し、会議への参加を認めることを決めた。NGO側も同省の決定を受け入れ、22日の会議に参加することを表明した。

 NGO側は「アフガンではテントが足りず、こんなことで争っている場合ではない。外務省とともに援助活動を進めていきたい」と話している。

 参加を拒否されていたNGOの「ジャパン・プラットフォーム」代表で、「ピースウィンズ・ジャパン」の統括責任者をしている大西健丞さんによると、21日夜、外務省側から電話で「(参加を拒否されていた)2団体の参加を認める」との連絡を受けたという。

 これを受け、NGO側は記者会見し、「市民社会の助けを受け、本来あるべき姿に戻ることができた」などとする声明を発表。22日の会議に参加する方針を明らかにした。同時に、外務省に対し謝罪などは求めず、「事態を収拾してくれた多くの人に感謝している」としている。

 ただ、大西代表は「(外務省の政策について)いろんな意見を言う人はいるが、論理的ではない意見を採用した外務省に非があると思う」と外務省側の一連の対応を非難。21日の会議に出席できなかったことについては、「昨年12月のアフガニスタン復興東京NGO会議はアフガンのNGOと夜を徹してつくり上げたもので、会議で結果をアピールできなかったのは非常に残念」と話した。

 ジャパン・プラットフォームは一昨年8月、NGO主導の下、外務省、財界が協力して設立した緊急人道援助支援組織。国内のNGO16団体が参加している。ピースウィンズ・ジャパンは「プラットフォーム」に参加、アフガン支援活動などを行っている。

(1/22)アフガン復興会議、NGO大西代表会場入り  

 アフガニスタン復興支援国際会議への参加が一転して認められた非政府組織(NGO)「ピースウィンズ・ジャパン」のメンバーが22日、会議にオブザーバー参加するため会場入りした。

 会場を訪れたピースウィンズ・ジャパンの統括責任者である大西健丞氏は、外務省職員から会議の参加証を受け取って会場内に入った。大西氏は「こんなに入手するのが難しかった参加証は初めて。アフガンのNGOと話ができる絶好の機会なので、避難民の帰還支援計画などについて話し合いたい」と話した。

 20日に行われたNGOによる復興支援会議を巡って、外務省は「信頼関係を損ねた」として、大西氏が代表を務めるNGO2団体の参加を拒否した。

 参加を拒まれた「ジャパン・プラットフォーム」に加盟するNGOは外務省の決定に反発、21日午前、復興支援会議への参加を求める決議を採択した。外務省は同日夜になって方針を転換、両団体の参加を認めた。


【田中外相、NGO代表出席拒否問題で弁明】

 1.22日、田中外相は閣議後の記者会見で、アフガニスタン復興支援国際会議への出席を拒否されていた一部の非政府組織(NGO)が同日の会合にオブザーバー参加することを正式に発表した。外相によると、野上義二外務次官は「政治家の関与などいろいろあって、簡単じゃない」と難色を示したが、外相が「職を賭してそういうことを勝手にやるのか。2日目にはオブザーバーとして必ず来ていただきなさい」とNGOの参加を強く指示したという。

 1.23日、田中外相は、参院本会議代表質問で、外務省が自民党の鈴木宗男衆院議運委員長の働きかけを受け、アフガニスタン復興支援国際会議へのNGO(非政府組織)代表の参加を拒否したとされる問題で峰崎直樹氏(民主)の質問に答え、外務省がアフガニスタン復興支援国際会議の一部セッションにNGO(非政府組織)2団体の参加を拒否した問題について「私の承知しないところで、諸般の事情から出席不許可が通知されたことを後に聞いた」と弁明した。そのうえで「今後はNGOとの意思疎通がより円滑にいくよう事務方を指導していく」と述べた。「諸般の事情」については明らかにしなかった。

 1.24日、田中外相は、衆院予算委員会で、民主党の菅直人幹事長の質問に答え、「野上義二外務次官と話をしたが、事務次官が具体的に名前を言って認めた。次官が認めている」と述べ、鈴木氏の要請を踏まえ同省が参加拒否を決めたことを明らかにした。同時に、外相は「諸般の事情から出席不許可を通知したと後に聞いた」と述べ、事務方の「独断」ぶりを強調した。

 NGO代表が参加を拒否されたのは、日本政府などが主催したNGOの20日の会議。外相は「参加拒否」が報道された21日に事務次官に電話をかけ、鈴木氏の要請があったとの報告を受け、24日の衆院予算委前にも再度確認したという。
菅氏は「議運委員長という席にある人によって行われたのは重要だ。予算委に参考人か証人として呼ぶべきだ」と述べた。

 しかし、野上氏は、首相官邸で福田長官と協議した後、緊急の記者会見を開いて「外相との協議、24日朝の打ち合わせのいずれも鈴木氏からの働きかけについて説明したことはなかった。一部政治家から圧力があったというのは全くの誤り。キツネにつままれた感じだ。不条理だ。(小説家の)カミュの世界だ」と、外相発言を全面否定逆に外相から「『鈴木さんのところに毎日行っているんでしょう』と話があった」と、説明した。

 
鈴木氏は24日、国会内で記者団に外相は何か勘違いしているようだ。なぜウソをつくのか。外相はウソを言うクセがある」とまで述べて外相を批判。「野上次官から電話をもらった。外相が『今朝の(外務省の)幹部会で鈴木氏の話が出た』と答弁したようだが、鈴木さんの名前も政治家の圧力という言葉もまったく出ていない、と言っていた」と説明。「露骨に圧力をかけた事実はない。ただ、いろいろな意見を申し上げることはあるが、そういったものを圧力だと受け取られても非常に困る。モノを言うだけで圧力と言うなら、発言なんて何もできない」と語った。

 これに対し、外相は「ウソなんか言っていない。初めははぐらかしていたが、皆(鈴木氏の関与を)認めた」と重ねて言明した。


【外相と外務省の「言った、言わない」論争】

 1.25日、アフガニスタン復興支援国際会議へのNGO(非政府組織)の参加拒否に絡んで鈴木宗男衆院議院運営委員長が外務省に圧力をかけたとされる問題で、「圧力」を認めた田中外相の答弁をめぐって「外相と外務省の言った、言わない論争」が勃発した。田中外相と自民党の鈴木衆院議院運営委員長、野上義二外務事務次官のそれぞれの言い分が違う「薮(やぶ)の中」の様相を呈している。

 福田康夫官房長官は、安倍晋三官房副長官を通じ、外相に事態を説明に来るよう求めた。しかし、外相は美容院に行くことなどを理由に官邸には行かなかった。騒動は首相官邸も巻き込み波紋を広げている。

 外務省の相次ぐドタバタ劇に小泉純一郎首相は記者団に「どうなっているのかね。よく整理してもらいたい、記憶を確かめて。任したよ、もう、外務省に」とうんざり顔。与党内でも「日本外交のレベルを下げている」(野田毅保守党党首)などと辟易(へきえき)する空気が広がっている。

 自民党国会対策委員会は「言った」、「言わない」の調査に追われ、両論併記の調査結果を出す羽目に。肝心の真相は依然やぶの中で、決着は週明けに持ち越された。

 同日午前、田中外相は、国会内で自民党の大島理森国対委員長から「事情聴取」を受けた。大島氏は参加拒否に鈴木宗男議院運営委員長が関与しているとの認識を示した外相の24日の発言に関して、外務省の作成した前日の答弁勉強会の記録に該当するくだりがないと指摘、答弁の修正を求めた。それに対し、外相は、「野上義二(事務)次官が鈴木氏の名前を挙げた。私の発言は間違っていない」と繰り返し、野上氏や重家俊範中東アフリカ局長が鈴木氏の関与を外相に説明した、と改めて主張した。

 同席していた伊藤公介衆院議員は、外相が野上義二外務次官から鈴木氏の関与を聞いたとしている24日朝の答弁打ち合わせ会の議事録を取り出し、「この中には鈴木氏の名前は入っていない。(国会答弁を)直した方がいいのではないか」と指摘。外相は「大臣よりも次官の言ったことが正しいという判断をするなら、どうぞ」と反発した。

 一方、重家局長は同日の衆院予算委で「(鈴木氏から)NGOについて全般的な意見は言ってきたが、会議の参加不参加の具体的な話は一切なかった」と、鈴木氏の関与を否定。同氏の「意見」の内容については「アフガンの状況やNGOの安全問題。会議日程と政府の会議への考え方」と明言を避けた。野党は答弁が不十分として反発、審議は中断を繰り返した。(12:13)


 田中外相は部屋を出るなり、記者団に涙ながらに正当性を訴えた。「重家局長が具体的な議員の名前を挙げた」と重ねて鈴木氏の関与を強調。「残念です。役所の作ったもの、言うことは全部正しくて、国会議員のいうことは正しくないのか。一生懸命やっているのに」と述べた。

 一方の鈴木氏は同日、「(外相と外務官僚の)1対1の話なら、言った言わないとなるけれど、そういう状況じゃないんですから」。複数の外務官僚が外相答弁の内容を否定していることを強調した。

 衆院予算委では、民主党が、前日に「外相の勘違い」と発言した福田康夫官房長官や外務省の担当局長を攻め立てた。だが、局長は鈴木氏の圧力を否定しつつ、同氏との会話については明言を避け続けた。質疑は再三中断。自民党の津島雄二委員長も「しっかり答えて」と注意した。

 一方、審議中の第2次補正予算案を一日も早く通過させたい自民党国対は、外相と親しい伊藤公介予算委理事を間に立て、外相から再度聴取。事実関係をまとめた調査書づくりに追われた。

 夕方の予算委理事会で自民党は調査結果を提出した。しかし中身は「私の答弁に間違いはない」(田中外相)、「NGOの参加・不参加問題について具体的なことを申し上げたことはなかった」(鈴木氏)、「鈴木議員の名前が取り上げられることはなかった」(外務官僚)と、三者の言い分を並べるだけでお茶を濁すしかなかった。

 一連の騒動から距離を置いていた小泉首相は25日夜、相官邸で記者団に、田中真紀子外相が涙ぐみながら自らの発言が正しいと主張したことについて、「涙は女の最大の武器だっていうからね」、「泣かれると男は太刀打ちできないでしょう」とコメントした。

 予算案の採決では何とか与野党の合意にこぎつけたものの、野党は今後も追及する構え。この日、外相と会談し調整する意向を示していた福田官房長官は、外相と連絡が取れないまま。調整は来週に持ち越し、夕方には地元に。自民党内では「これで何度目の騒動か」(幹部)と外相批判が再燃しつつある。

 アフガニスタン復興支援国際会議への参加をいったん拒否された援助団体ピースウィンズ・ジャパンの大西健丞(けんすけ)代表は都内で記者会見し、「これまでの発表に誤りも訂正もない」と強調し、「言ったことには責任を取るつもりだ」と語った。大西氏は国会で鈴木宗男代議士の名をあげた田中外相が「うそをついた」とされ、答弁修正を求められたことについては、「政争に巻き込まれたくはないが、外相は正しいことを言っておられると思う」と話した。

 また、最初に外務省幹部から電話がかかってきたとき、「鈴木氏が怒っているので謝ってほしい」という内容だったことを改めて明かした。そのうえで「外務省が鈴木氏の圧力で、正当な理由も手続きもなく政策を突然変えた。積み上げてきたパートナーとの関係を裏切った」と話した。

 そして「国際援助という本業のためにも、私たちは外務省側に謝罪や釈明は求めなかった。それなのに野上義二事務次官の発言などを聞くと、その意図が理解してもらえなかったのかと非常に残念。良心に従って発言していただきたい」と外務官僚らに注文。鈴木氏には「NGOを誤解されているようだが、若い人がときに命を危険にさらして活動をしている。一度現場を見に来てほしい」と呼びかけた。


(1/26)田中外相「私の話は間違っていない」・NGO問題で応援仰ぐ  

 田中真紀子外相は26日、一部非政府組織(NGO)がアフガニスタン復興支援会議への参加を拒否された問題で、鈴木宗男衆院議院運営委員長の圧力があったと認めた自らの発言について「私の言っていることは間違いない」と重ねて強調した。この日、外相に電話した自民党の平沢勝栄衆院議員が都内で記者団に明らかにした。

 平沢氏によると、外相は「応援していただきたい」と協力を要請した上で「問題は言った、言わないという細かなことではない。今後、日本のNGOをどうするか外務省が方針を出さないといけない」と指摘した。

 平沢氏は記者団に「鈴木氏が外務省に働き掛けたのは事実だ。悪いのは鈴木氏ではなく、『分かりました』と方針を覆す外務省の方だ」と強調。さらに「外務省は顔を国民に向けているのか、鈴木氏に向けているのか分からない。日本の外相は鈴木氏で、野上義二外務事務次官は同氏の秘書になった方がいい」と批判した。〔共同〕


【野党各党の反応】

 野党各党は外務省がアフガニスタン復興支援国際会議に一部の非政府組織(NGO)の参加を拒否した問題で追及姿勢を強めている。田中真紀子外相が鈴木宗男議院運営委員長の関与を指摘、鈴木氏が否定したことについて「言葉の食い違いでは済まされない」として、鈴木氏の証人喚問を求める声も出ている。

 民主党の菅直人幹事長は25日の記者会見で「事実を検証していけばいずれかがウソをついていることになる。鈴木氏も参考人なり偽証罪がかかる証人の立場で自らの正しさを証明してもらいたい」としたうえで「ウソをついている人が職を辞するべきだ」との認識を示した。

(1/26)田中外相と鈴木氏対立は「低レベルの議論」・民主鳩山氏  

 民主党の鳩山由紀夫代表は26日、札幌市で開いた党道連大会であいさつし、アフガニスタン復興支援国際会議への一部の非政府組織(NGO)の参加拒否問題を巡る田中真紀子外相と鈴木宗男衆院議院運営委員長の対立について「下らない低レベルの議論で、本質ではない。外務省がいまだにNGOの存在を好ましく思っていない体質があることが問題だ。厳しく責任の所在を明らかにしていきたい」と述べ、厳しく追及する考えを示した。

 小泉純一郎首相の構造改革路線を巡っては「構造改革という同じ言葉の中でまるで似て非なる構造改革をするのであれば、当然のことながら打倒しなければならない」と強調した。

(1/26)鈴木氏が関与と見るのが自然・民主菅氏  

 民主党の菅直人幹事長は26日午後、甲府市内で記者会見し、アフガニスタン復興支援非政府組織(NGO)国際会議への一部のNGO出席拒否問題をめぐり、田中真紀子外相と鈴木宗男衆院議運委員長の発言が食い違っていることについて「NGOの代表や外務省の局長が勝手に代議士の名前を挙げることは考えにくい。(鈴木氏の)何らかの圧力や意向を受けて外務省が(出席拒否という)行動をしたと見るのが自然だ」との見方を示した。そのうえで「(議運委員長は)野党と一定の信頼関係がなくてはならない人だ。予算委員会できちんと説明し、従来の説明と違うことが明らかになれば本人が身を処すべきだ」と述べ、鈴木氏に予算委での参考人招致に応じるよう求めた。

 社民党の福島瑞穂幹事長も同日の記者会見で「国会議員が圧力でNGOを排除したのならどういう権限でやったのかという問題になる。鈴木氏の証人喚問は必要だ」と強調した。

 同日の衆院予算委員会の理事懇談会では、与党側が調査の結果、外相が「答弁に間違いはない」、鈴木氏が「NGO参加問題について具体的なことを言ったことはない」と回答してきたことを報告。野党側は2人の発言の食い違いや矛盾が解決しなければ、2月以降の2002年度予算案の審議でも鈴木氏と野上義二外務次官の参考人招致を改めて求める考えを伝えた。

 一方、鈴木氏は同日の議運委の理事会前に、昨年9月にパキスタン訪問を外相が拒否した際の発言などを掲載した「ウソ発言」メモを議運委理事に配布。鈴木氏と外相の「対決」はこの日も続いた。


(1/28)外相「(野上次官は)言語道断だ」  NGO参加拒否騒動で

 田中真紀子外相は28日午後の衆院予算委員会で、外務省がアフガニスタン復興支援会議に一部の非政府組織(NGO)の参加を拒否した騒動で、野上義二外務次官が同騒動でNGOに参加辞退を働きかけた担当課長の国会発言と違う発言を記者会見でしたことについて「言語道断だと思っている」と強い口調で批判した。また、野上次官の参考人招致については、理事会での決定があった場合は出席するように官房長に指示していることを明らかにした。原口一博氏(民主)に対する答弁。

 田中外相は、一連の騒動の顛末について説明。21日の午前8時15分ごろに、担当局長にNGO不参加の事実を電話で確認。同11時15分ごろに野上次官に対して事実を確認し、同NGOの出席を認めるよう指示したところ、野上次官は「(外務省に圧力をかけたとされる)鈴木さん(宗男衆院議員運営委員長)は難しいひとだ。(同NGOは)出席させられない」と応じ従わないため「職を賭して言っているのか」と詰問すると逆に「誰の責任で言っているのか」と恫喝されたなどとした。

 外務省の人事について「局長以上は官邸の担当事項になっている。人事の際には総理や官房長官にも協力を」と述べ、現在の幹部人事に不満を持っていることを示唆した。


(1/28)外務省局長、外相答弁を事実上認める  

 衆院予算委員会は28日午後、外務省の重家俊範中東アフリカ局長が答弁で、鈴木宗男氏が一部非政府組織(NGO)の出席拒否を働き掛けたとする田中真紀子外相の答弁を事実上認めたため、野党が一斉に反発し退席、審議がストップした。〔共同〕


(1/28)鈴木氏の「圧力」認める、外務省局長が答弁修正  

 外務省の重家俊範中東アフリカ局長は28日午後の衆院予算委員会で、アフガニスタン復興支援会議への一部非政府組織(NGO)の参加を同省が拒否した問題について「記憶は定かでないが、(田中真紀子)大臣の答弁の通りかと思う」と述べ、外相の指摘通り、鈴木宗男衆院議院運営委員長の「圧力」があったことを事実上認めた。

 野上義二事務次官ら外務省の事務当局はこれまで一貫して鈴木氏の関与を否定。重家局長も25日の衆院予算委で「鈴木氏から電話はあったが、参加、不参加の話は一切なかった」と答弁していた。外相もこの日の答弁で「言語道断だ」と事務当局の対応を強く批判しており、野上次官らの進退問題に発展する可能性も出てきた。

 野党側は「これまで虚偽の説明、答弁をしていたことは許せない」と一斉に退出。野上次官の予算委への出席を要求、与党側もこれを認め、同日夕再開された。

 重家局長の答弁に先立ち、外相は「21日朝、復興支援会議に向かう車中で重家局長に電話した。局長は(鈴木氏の)名前を出して事実だと言った」「野上次官にNGOに出席してもらうよう指示したが、次官は『鈴木さんは難しい人だし、前からの経緯もある』と言った」などと説明し、あらためて出席拒否は鈴木氏の「圧力」が原因との認識を示した。

 外相はさらに局長答弁を受け「政治不信を払しょくできるか、外務省改革をできるか、今日は決意して来た」と前置きし、「委員会が始まる前に重家局長に『偽証しないでください』と言った」「皆で口裏を合わせている。こんなことがあってはならない。ぜひ仕事ができるようにしてほしい」などと述べた。〔共同〕


(1/28)外相「偽証みたいなことするな」・局長発言撤回で“勝利宣言”  

 田中真紀子外相は28日午後の衆院予算委員会で、アフガニスタン復興支援会議に一部の非政府組織(NGO)の参加を拒否した騒動に関連して、当初は外相の発言とは違う趣旨の証言をしていた担当局長が言を翻して「大臣の答弁の通り」としたことに関連して、「きょうも勉強会で偽証みたいなことをしないでくれといったが、ちゃんと正しいこと言ってくれた」としたうえで、外部の干渉に屈して部下に偽証をさせると、外務省の事務方を強く批判した。原口一博氏(民主)に対する答弁。

 田中外相は、原口議員の質問に従い一連のNGO騒動での顛末(てんまつ)を詳細に証言した後に、担当の局長が前言を翻して「記憶が定かでないので大臣の答弁の通り」と証言したのを受けて、「今日はひとつの決意をもって臨んでいると」力強く切り出し「政治に対する不信払しょく、外務省改革ができるかどうか意を決してきている」と宣言。担当局長に同委員会前の勉強会で「偽証みたいなことをするな」と指導したことを紹介、同局長が発言を撤回したことから「たくさんのプレッシャーの中、よく言ってくれた」と評価した。そのうえで、「これが実態であることがわかったと思う」と述べ、この一事が外相と外務省事務方の混乱を示した過去の各種事件にも共通していることを象徴、責任の大半は自らを欺く次官らにあることを示唆した。

 田中外相はさらに、どこの省庁でも「外部からの意見やアドバイス、干渉はあるが、それに屈する次官。組織の長である私に言わず局長や課長らに違った発言をさせようとしていることにはあきれかえっている。こんなことは起こってはならない」とほとんど名指し同然に野上義二外務次官を強く批判した。


(1/28)幹部を集め外相が訓示  

 「このことが汚点になったのは慚愧(ざんき)に堪えない。なぜこうなったのかを国民に説明する義務がある」。田中真紀子外相は28日午後、外務省の幹部会を緊急招集し、同省がアフガン復興会議に一部のNGOの参加を拒否した問題についてこう訓示し、事実関係の解明を進める方針を強調した。

 幹部会は同日の衆院予算委員会の開会前に開き、野上義二次官をはじめ局長以上が出席した。外相は「政府の組織だけでは足りないのでNGOが必要というのが国際的な認識だ」と強調し、今後はNGOと緊密に連携するよう指示した。

 一方、野上次官はこの後の記者会見で「NGOの参加問題で一部に不手際があり、関係者に迷惑をかけた」と陳謝した。ただ、外相をはじめ関係者の発言が食い違っていることに関しては「今後、ガタガタし、根ほり葉ほりやるよりも前向きな形で対応したい」との考えを示すにとどめた。


(1/28)官房長官「NGO巡る鈴木氏関与問題、外務省内で意志疎通を」  

 福田康夫官房長官は28日午後の記者会見で、アフガニスタン復興支援国際会議への参加を巡り外務省が一部の非政府組織(NGO)の参加を拒否した背景に自民党の鈴木宗男衆院議員が関与したと見られる点を「言った言わない程度の話なら(外務省の)中で意志疎通をはかる努力をしたらいいのではないか」と距離を置く姿勢を見せた。田中真紀子外相は野上義二事務次官から鈴木氏の関与を知らされたことを国会答弁で繰り返し述べている。一方で鈴木氏や野上氏はこの点を否定し、外相発言を問題にしており、2001年度第二次補正予算の審議に影響を及ぼしかねない情勢になっている。

 今回の騒動を巡り、野党は政府の統一見解を求める動きが出ている。官房長官は「外務省で統一見解を出してくれれば1番いい」と述べ、事態の収拾に消極姿勢を見せた。また外相が同日の衆院予算委員会で野上氏を「言語道断」と批判した点は「どこのところを指して言語道断なのか事実関係を知らないと速やかに判断できない。国会の論戦で明らかになる」と静観する構えを崩さなかった。


(1/29)官房長官、官邸の静観姿勢は「一件落着と受け止めた」から  

 福田康夫官房長官は29日午前、閣議後の記者会見で、一部の非政府組織(NGO)がアフガニスタン復興支援国際会議の出席を外務省から拒否された問題に始まる一連の騒動について、首相官邸側が事態の収拾に乗り出さなかった理由を「一件落着と受け止めた」と説明した。外務省の判断により、復興会議の最終日には当該のNGOが出席できた点を挙げて「ああせい、こうせいということではなかった」と釈明した。

 田中真紀子外相に報告せず、事務方が当該のNGOに参加拒否を伝えた点は「そんな高いレベルの話という感じはしない」と指摘し、当初の外務省側の対応は問題がないとの見解を示した。大臣には内容によって報告しなくてもよいとの認識も同時に明らかにした。28日の衆院予算委員会は外相と事務方の答弁の食い違いを理由に審議が断続的に中断し、最終的には反発する野党欠席のまま2001年度第二次補正予算を強行採決した。野上義二事務次官の更迭を求める声も浮上しているが、官房長官は事実関係の解明や与党との相談を挙げて、消極姿勢を見せた。


(1/29)外務次官更迭論が浮上・野党、衆院本会議の開会を拒否  

 アフガニスタン復興支援国際会議で外務省が一部の非政府組織(NGO)の出席を拒否した問題で紛糾している国会は29日、2001年度第2次補正予算案を採決する衆院本会議の開会を巡って与野党の対立が続いた。与党側は同日の本会議で補正予算案を可決する構えだが、野党側は審議を全面的に拒否する方針だ。政府・与党内には、事態打開のために野上義二外務次官を更迭すべきだとの声も出ている。

 野党側は28日の衆院予算委員会で与党側が補正予算案の採決を強行したことについて「真相究明にふたをする暴挙だ」などと激しく反発。29日の国対委員長会談で、本会議開会に反対する方針を確認した。

 野党側は衆院議院運営委員会理事会で、NGO参加拒否問題の当事者とされる鈴木宗男衆院議院運営委員長が国会運営にあたるのは問題と抗議。本会議を開かないよう申し入れるとともに、鈴木氏に説明を求めた。今後の展開によっては、鈴木氏の不信任決議案を提出すべきだとの意見も出ている。

 与党側は「経済情勢の悪化もあり、景気対策としての補正予算を1日も早く執行するのが政治の責任だ」などとして同日の衆院本会議で補正予算案を通過させる方針を野党側に伝えた。

 綿貫民輔衆院議長は与野党の国対委員長に「政党間でよく話し合ってほしい。救急車のように議長があっせんに乗り出すのはいかがなものか」と表明。予定していた午後1時からの本会議開会はずれ込んだ。

 塩川正十郎財務相は29日の閣議後の記者会見で「NGOの参加を決めるときに、なんで外務次官が外相に相談しなかったのか。そんな大事なこと外務省の事務当局が外相に相談するのは当たり前だ」と厳しく批判。28日の衆院予算委員会の際に、津島雄二衆院予算委員長に野上次官の更迭を提案したとされることについて「提案ではなく、話をした」と述べ、野上次官の更迭に言及したことを認めた。


(1/29)官房長官、次官の責任は「今後の問題」  

 アフガニスタン復興支援国際会議への一部の非政府組織(NGO)の参加拒否問題を巡って国会が紛糾している問題で、29日の閣議後の記者会見で閣僚からの発言が相次いだ。

 福田康夫官房長官は「事実関係の確認は粛々と早急にしたい。野党の理解を得るべく最大限努力していくのは当然だ」と述べ、事実関係の解明を急ぐ考えを示した。野上義二外務次官の責任問題については「事実関係の解明とか、与党内の相談等の総合判断によって今後のことは考えることになるので、今軽々にそういうことを口にすべきでない」と述べた。

 田中真紀子外相は「これからの予算委員会や関連の委員会で明らかになると思う」と述べるとともに、野上次官の更迭問題に関しては「それぞれの立場の意見を言っている。それを注目していただきたい」と語った。重家俊範中東アフリカ局長の責任問題については「進行中なのでコメントしない」と述べるにとどめた。

 中谷元・防衛庁長官は「外務省の体質、仕事の仕方、改革が求められているが、外相はしっかりとした外務省に改革すべく、体を張って、政治生命をかけて取り組んでいる」と述べ、外相の立場を擁護した。


(1/29)財務相、外務次官更迭に言及  

 塩川正十郎財務相は29日の閣議後の記者会見で、アフガニスタン復興支援国際会議への一部の非政府組織(NGO)の参加拒否問題を巡り「NGOの参加を決めるときに、なんで外務次官が外相に相談しなかったのか。そんな大事なこと外務省の事務当局が外相に相談するのは当たり前だ」と外務省事務当局の対応を厳しく批判した。

 財務相は28日の衆院予算委員会が空転している際に、津島雄二衆院予算委員長に野上外務次官の更迭を提案したとの一部報道について「提案ではなく、話をした」と述べ、野上外務次官の更迭に触れたことを認めた。2001年度第二次補正予算の審議が遅れていることに関しては「与野党の国会対策に関することだが、財務省にとっては残念なことだ」と語った。


(1/29)首相「高みの見物」・与党から批判  

 28日の衆院予算委員会の混乱を横目に、小泉純一郎首相は与野党や外務省内の「調整待ち」の姿勢に終始した。

 首相は同日昼、田中真紀子外相と外務省幹部の答弁の食い違いについて「そんな大騒ぎする問題じゃない。外務省が内部で調整する問題だ」と強調。福田康夫官房長官も「国会のことは国会に任せる。こっちに主体性はない」。予算委の求めに応じて政府の統一見解を取りまとめたほかには、目立った動きを見せなかった。

 外相と事務当局の対立は昨年4月の政権発足以来、再三繰り返されてきた。今回は特に外交の本質とは異なる「言ったか言わないかという恐ろしくレベルの低い議論」(政府筋)だったこともあり、首相周辺が進んで解決に乗り出す機運は乏しかった。

 こうした受け身の姿勢には与党から批判が噴出。自民党の大島理森国会対策委員長が安倍晋三官房副長官に「首相が他人事のようなことを言っているのはけしからん。いいかげんにしてくれ」と不満を爆発させたほど。

 首相は29日未明、委員会採決の終了後に官邸を訪れた自民党の山崎拓幹事長らに「補正予算の衆院本会議採決や2002年度予算案の早期審議入りに努力してほしい」と指示した。


(1/29)自由党小沢氏「本来なら内閣はおしまい」  

 自由党の小沢一郎党首は29日午前、視察に訪れた東京都中央卸売市場食肉市場で記者会見し、田中真紀子外相と外務省幹部の国会答弁が食い違っている問題に関して「政府、そして最終的に小泉純一郎首相自身の問題だ。首相は人ごとのように言っているがとんでもない。本来ならこの場で内閣はおしまいだ。こんなあほな政府は世界中どこにもない」と述べ、首相の責任を追及する考えを表明した。


(1/29)NGO拒否問題、外相・事務方発言食い違い  

 NGO参加拒否問題では、2つの点を巡って田中真紀子外相と鈴木宗男衆院議院運営委員長、外務省幹部の発言が食い違っている。

 第一は、外務省が一部のNGOのアフガン復興会議への参加を拒否した際に、鈴木氏が外務省に参加させないよう「圧力」を掛けたのかどうかという問題だ。

 事の発端は、NGO「ピースウィンズ・ジャパン」の統括責任者である大西健丞氏が朝日新聞のインタビューで「お上の言うことはあまり信用しない」と発言したこと。アフガン復興会議を運営する外務省は「信頼を裏切られた」(重家俊範中東アフリカ局長)と反発し、重家氏がNGO会議前日の19日夕に大西氏に電話して「参加を辞退してくれないか」と申し入れた。この後、宮原信孝中東第二課長は大西氏に直接会って、同様の要請をした。

 最大の焦点はこの外務省の意思決定の際に鈴木氏の働き掛けがあったかどうかで、大西氏は記者会見で、外務省側は参加拒否を通告する際に「鈴木宗男さんが怒っている。出席させるのはけしからんと言われて困っている。謝りの電話を入れてくれないか」と話したと明言。外相も衆院予算委などで、同省幹部から大西氏の主張通りの報告を受けたと再三答弁している。

 一方、名指しされた鈴木氏は「外相はウソをつく癖がある。非常に不愉快だ」などと関与を全面否定。外務省も鈴木氏とNGO全般の話題を巡って意見交換したことは認めながらも、参加拒否問題で同氏から圧力が掛かったことは「一切ない」と説明している。

 第二のポイントは、鈴木氏の関与を巡って、外務省事務当局が外相に鈴木氏の実名を挙げて「圧力があった」と報告したのかどうかという点だ。

 外相の言い分は、24日朝に衆院予算委に先立つ国会内での事務当局との打ち合わせの際「野上義二次官は鈴木氏の名前を挙げながら参加拒否問題の経緯を報告した」というもの。しかし、野上次官は28日の記者会見で鈴木氏の名前を挙げたことを明確に否定。外相が国会答弁でウソをついたのかどうかがもう一つの争点となっている。


(1/29)政府の統一見解、内容歯切れ悪く  

 政府が28日夜の衆院予算委員会理事会に示したNGO参加拒否問題に関する統一見解は、事実関係や責任の所在を明確にしない歯切れの悪い内容となった。福田康夫官房長官が中心となってまとめたが、田中真紀子外相や外務省事務当局ばかりでなく与党幹部の意見も踏まえて作成しただけに、最大公約数的な内容にならざるを得なかったようだ。

 橋本派幹部は「あれ以外には書きようがなかった」と指摘。外相は「コメントできない」とだんまりを決め込んだ。与党幹部は「当初は野党側により踏み込んだ内容で内々に打診したが、それを野党側が突き返してきたので、野党が受け入れないことを前提にして提示した」と説明した。


国会:NGO拒否問題で混乱続く 与党単独で衆院本会議も

 国会は29日、外務省が一部NGO(非政府組織)のアフガニスタン復興支援国際会議への参加を拒否した問題で、混乱が続いた。与党は、田中真紀子外相と野上義二事務次官の説明の食い違いに関する政府の調査結果を野党に示し、事態の打開をはかった。しかし、野党は審議拒否の方針を崩さなかった。このため与党は、衆院予算委員会に続き、与党単独でも衆院本会議を開き、01年度第2次補正予算案を可決し、参院に送付する構えだ。

 政府は29日、野上次官ら関係者8人から聞き取り調査を行い、その結果を文書化した。聞き取りは、外相が24日朝の外務省勉強会で野上次官から鈴木宗男衆院議院運営委員長の関与の報告を受けたと述べている点にしぼって行われ、文書には外相の説明に沿う証言は得られなかったことが記された。外相は21日にも電話で同様の報告があったとも語っているが、この点についての聞き取りは行われなかった。

 これを受け与党は29日夕、自民党の大島理森国対委員長が野党側に文書を示し、同日中の衆院本会議での補正予算案採決を求めた。野党は4党国対委員長会談で「文書はまったく疑問にこたえていない」と了解せず、逆に(1)衆院予算委にこの問題に関するこれまでの政府作成資料の提出(2)衆院議院運営委での鈴木氏に対する質疑――を与党に要求した。

 与党は鈴木氏に対する議運委質疑は拒否、単独でも本会議採決を行うべきだとの強硬論が大勢になった。自民党の山崎拓幹事長は同日夜、国会内で記者団に「現下の経済情勢にかんがみ、補正予算が占める役割は非常に大きい。言った、言わないという水掛け論的な話で、成立が遅れるのは許しがたい」と語った。

 今回の発言食い違いをめぐっては28日夜、衆院予算委員会がストップしたことを受け、政府が事実上問題を先送りする「統一見解」をまとめた。しかし、野党は内容に反発して再開に応じず、与党は同日夜、野党欠席のまま補正予算案を可決していた。

 与党は29日、断続的に開かれた衆院議運委理事会で、参加拒否問題と補正予算案審議を切り離した対応を提案したが、野党は予算委の単独採決の無効を求めて拒否していた。

[毎日新聞1月29日] ( 2002-01-29-20:55


国会:野党、全審議欠席へ 第2次補正予算案の扱いめぐり紛糾

 外務省が一部NGO(非政府組織)のアフガニスタン復興支援NGO会議への参加を拒否した問題をめぐって混乱した国会は29日、与党が衆院予算委員会で野党欠席のまま可決した01年度第2次補正予算案の扱いをめぐり、与野党対立が続いた。与党は同日午後の衆院本会議での可決、参院送付を目指している。これに対し、野党は同日以降の衆院の本会議、全委員会に欠席する方針だ。

 29日午前の衆院議院運営委理事会で、与党は同補正予算案と参加拒否問題を切り離して対応するよう要請したが、野党は拒否した。

 与党3党は同日昼すぎから幹事長・国対委員長会談を開き、対応を協議した。これに先立ち、3党国対委員長が綿貫民輔衆院議長に28日の予算委の経過を説明、「経済情勢にかんがみ、29日中に円満に本会議採決を行いたい」と伝えた。議長は「まずは政党間で努力してほしい。政府にもきちんと対応してもらいたい」と述べた。

 一方、野党4党は同日午前の国対委員長会談で(1)予算委単独採決は認められない(2)田中真紀子外相と野上義二事務次官らの説明が食い違っていることを受け、政府が28日夜にまとめた「政府見解」は矛盾を解消していない(3)参加拒否問題に関与したとされる鈴木宗男衆院議運委員長は公正さに欠ける――の3点を確認。4党は綿貫議長に本会議を開かないよう申し入れた。


田中外相、泣く NGO拒否問題「役所全部正しいのか」

「鈴木氏の要請」認める NGO代表出席拒否で外相(1/24)

田中外相、NGO代表出席拒否問題で弁明(1/23)

特定NGO排除を批判 市民団体(1/21)

NGO代表アフガン復興会議に参加できず 外務省に批判(1/21)

1月18日「ひと」 NGO代表・大西健丞さん(asahi.comパーフェクトのご契約が必要です)

 
(1/25)官房長官「外相の事情聴取、別に慌てない」
(1/25)田中外相「私は間違っていない」・NGO問題で
(1/25)バトル再燃・田中外相VS鈴木宗男氏、首相はうんざり
(1/22)「政治家関与などあって…」外務次官の発言、外相明らかに
(1/22)田中外相、NGOのアフガン復興会議出席を強く指示
(1/22)アフガン復興会議、NGO大西代表会場入り
(1/22)アフガン復興支援会議、2団体参加一転認める・外務省が方針転換
(1/21)外務省方針転換、復興会議へのNGO参加認める
(1/21)アフガン支援会議、参加求める決議・拒否されたNGO採択
(1/21)アフガン支援NGO会議、外務省が出席させず・有力2団体に対し
(1/21)アフガン支援NGO会議、外務省が出席させず・支援活動へ影響も
[2001年の動き]

(12/29)台湾議員が田中外相発言を非難
(12/29)田中外相、「着工前解決は困難」
(12/27)台湾、田中外相発言に反発
(12/27)中国、台湾問題で田中外相発言を評価
(12/21)外相が省改革具体策、「省内公募制」を来年8月50ポストで導入
(12/21)田中外相、機密費巡る首相との対立を打ち消しに躍起
(12/21)審議官など省内公募・外務省が改革の具体策
(12/18)外相の「天皇」発言削除へ
(12/6)田中外相、民主佐藤氏の「指輪購入」追及にまた答えず
(12/5)田中外相「野上次官は天皇みたい」

1月29日
■ 田中外相 NGO排除問題の政府見解を了承
■ 野上次官更迭強まる NGO排除答弁、外相と対立解けず
■ 官僚側答弁、二転三転 外相と食い違いで修正
■ NGO問題 与党内に首相官邸への反発広がる
■ NGO出席拒否問題に関する衆院予算委での主なやりとり
■ NGO排除問題 衆院予算委理事会に示された政府見解=全文
1月28日
■ 統括責任者が出席拒否の経緯を証言 NGO排除問題
1月27日
■ アフガン支援会議NGO排除問題 「予算委員会で説明を」−−菅直人・民主党幹事長
1月26日
■ アフガン復興会議・NGO排除問題 議員圧力/外務省報告…二つの「?」ウソつき誰 
■ アフガン復興会議・NGO排除問題、真相解明先送り−−与野党「本予算審議で対応」
1月25日
■ 田中外相「鈴木氏関与」で予算委の審議混乱 
■ NGOの排除問題 野上次官、全面否定 外相「発言メモある」 
■ NGO排除、官房長官の呼び出しを田中外相が拒否
1月23日
■ ホテル代初公判 浅川元課長が全面的に起訴事実認める 
■ イラン外相「国内設備利用でNGOなどに便宜」 田中外相と会談
1月22日
■ 田中外相、カルザイ首相と会談 アフガン復興会議
1月19日
■ 自衛隊、英艦船にも燃料補給 合意文書交わす−−外務省
1月16日
■ 「伏魔殿」引っ越し 田中外相は旧庁舎に居座り
1月14日
■ 監察、本省に拡大 4月実施へ試験的に開始−−外務省
1月12日
■ テロ対策などで協力 スペイン首相と一致 田中外相
1月11日
■ スペイン外相と会談 印パ問題などで意見交換
■ EU議長国・スペインの首相と会談 テロ、麻薬対策協力で一致
■ 風邪で昼食会キャンセル スペイン訪問中
1月10日
■ 外相歴訪 最後の訪問国スペイン・マドリードに到着
1月8日
■ ポルトガル外相と会談 東ティモール支援で一致
■ 田中外相、ポルトガルに到着 大雪で大幅遅れに
1月5日
■ 外務省、改築で引っ越し
1月4日
■ 田中外相、欧州4カ国訪問へ出発
外務省改革要綱の要旨
2001年6月6日
外務省調査報告書全文
2001年1月25日



別添1別添2






(私論.私見)