ドキュメント(8) 外相辞任考

 田中氏と野上氏。普通なら省運営の「車の両輪」となる大臣と事務次官は、すでにまともな会話も交わせない状態だった。「決定的衝突」の気配を感じた岡本行夫内閣参与が28日に田中氏と外務省事務方の和解に動いたが、不発に終わった。田中氏は、対立を深める野上氏と黒白をつけようと、一気に賭けに出た。


野上義二事務次官の更迭を求めて一気に勝負に出たが、「返り討ち」に遭った末の予想外の解任。

(1/30)首相、混乱収拾へ決断・外相更迭、両刃の剣
  

 小泉純一郎首相は29日夜、国会の混乱収拾のため看板閣僚である田中真紀子外相の更迭を決断した。構造改革の浮沈がかかる通常国会冒頭での混乱を重く見て、世論をにらみながら賭けに出た。ただ周囲の根強い反対を押し切ってまで起用した外相の早期更迭に追い込まれたことは、首相にとって痛手となる。

(1/30)罷免か辞職か、外相は辞表に署名せず・官房長官「依願免職」
  

 罷免か、辞職か――。小泉純一郎首相は30日午前の持ち回り閣議で、田中真紀子外相の辞任を承認したが、田中前外相の「更迭」の手続きを巡って当事者間の見解が分かれている。

 「辞表は書いていない。(辞表への)署名はしていない。私が更迭された理由が何なのか、もう少し落ち着いて考えなければ。すぐ半日や1日で済むという理由はない」。田中前外相は同日昼、東京・芝公園の外務省仮庁舎で記者団にこう強調した。同時に「辞職願を出すことが辞任になる」と指摘し、“罷免”されたとの認識を示した。

 一方、29日夜に前外相に辞表への署名を求めて「今日はいたしません」と拒否された福田康夫官房長官は、30日午前の記者会見で「罷免ではなく、依願免職だ。首相の要請に対して前外相から否定的な言葉はなく、大変潔い判断をされた」と説明。そのうえで「個性を発揮されて、我々の考えつかない分野にも色々手を付けられた。出色の外相だった」と振り返った。

アフガニスタン復興支援国際会議への非政府組織(NGO)の参加問題に端を発した国会を舞台にした騒動は、田中真紀子外相と野上義二外務次官、鈴木宗男衆院議院運営委員長がそろって退くことでひとまず幕を閉じた。



 2002.1.30日、

 1.31日、小泉首相は、小泉内閣メールマガジンのコラム「らいおんはーと」で田中真紀子前外相の更迭について「補正予算、来年度予算を一日も早く成立させることができるよう、やむを得ないものであった」と記し、理解を求めた。
田中外相の更迭をめぐって、辞職を決めた鈴木宗男衆院議運委員長の議員会館の事務所をはじめ、自民党本部にも抗議の電話が相次ぎ、31日には自民党の大島理森国対委員長あてに白い粉入りの封書が届くなど余波が続いている。

 1.28日、田中氏は、衆院予算委員会で、これまでにない過激な表現「言語道断」でNGO排除問題での野上氏の対応を批判、「野上氏更迭」に照準を絞った。同日の国会の混乱を受けて、田中氏の狙い通り、政府・与党内には野上氏更迭論が浮上した。勝利はほぼ田中氏の手中にあるように思われた。

 外相更迭当日の29日。「野上氏更迭」の動きが決定的になるのを待つ田中氏に、自身の更迭が忍び寄っていることを察知した気配はなかった。霞が関の旧庁舎で午前は2月2日の日露外相会談の準備を急いだ。午後は軽く仮眠を取ったという。

 同日深夜の首相執務室で首相から「更迭」を通告された田中氏が「いつですか」と尋ねたところ、首相は乾いた声で「今だ」と語った。


1.30日、田中外相更迭:衆院議運委員長、鈴木宗男氏の後任に鳩山邦夫氏

 一部NGO(非政府組織)のアフガニスタン復興支援国際会議参加排除問題で、辞任した鈴木宗男衆院議院運営委員長の後任に、自民党の鳩山邦夫元労相が就任することが30日内定した。2月1日の衆院本会議で選任される見通し。鈴木氏の後任をめぐっては党執行部が当初、伊吹文明元労相に打診したが、伊吹氏は断った。

 ■鳩山 邦夫氏(はとやま・くにお)首相秘書、文相、労相。東大法卒。比例東京。当選8回。53歳。無派閥。


2002年02月01日

後任外相:川口氏が就任 緒方氏固辞受け首相が決断

 小泉純一郎首相から田中真紀子氏の後任外相に就任を要請されていた緒方貞子アフガニスタン支援政府代表は1日、現在就いている民間の仕事を優先したいとして、固辞する考えを福田康夫官房長官に伝えた。福田氏が同日午前の記者会見で明らかにした。これを受け、小泉首相は川口順子環境相に外相就任を要請、川口氏も受諾した。田中前外相の更迭で国民の反発が強まる中、首相は国際的にも信頼感と知名度が高い緒方氏に絞って後任外相への就任を説得してきたが、最終的に拒否されたことで、小泉政権はさらに厳しい状況に追い込まれた。川口氏の後任には大木浩元環境庁長官が8日付で就任する。

 政府が「緒方外相」にこだわったのは、田中氏更迭で内閣支持率の低下が避けられない中、田中氏に匹敵する目玉の人材が必要だったためだ。また、田中氏と外務官僚との確執で機能不全に陥っていた外務省の外交機能を立て直すためには、外交を熟知する本格派の起用が不可欠だった。

 このため、政府は「拝み倒すしかない」(外務省幹部)との姿勢で、福田官房長官や森喜朗前首相が電話で緒方氏の説得に当たるなど、さまざまなルートで折衝を続けてきた。1月31日には緒方氏の夫で元日銀理事の四十郎氏が緒方氏の滞在するニューヨークに出向き話し合いを持った。

 ただ、後任人事を緒方氏1人に絞ったのは「危ないかけ」(外務省幹部)とも言えた。福田長官が「大変立派な方で素晴らしい外交手腕を発揮して下さるのではないか」と最大の賛辞を贈った緒方氏が固辞すれば、それ以外の誰を充てても陰りの見え始めた小泉人気を再浮上させる人事とはならないからだ。

 首相が1月31日夜、「(人事の)経過は言わない方がいい」と慎重姿勢を見せたのも、そうした事情からだった。

 小泉首相は、看板閣僚の田中氏を「けんか両成敗」の形で切らざるをえず、緒方氏説得にも失敗したことで、構造改革を本格化させる前に人事面で大きく頓挫した。高い支持率に支えられ「抵抗勢力」と対峙する従来の政治スタイルから、自民党など与党との調整を重視する手法への変質は避けられない情勢だ。

[毎日新聞2月1日] ( 2002-02-01-16:48



後任外相:AP、ロイターも速報

 田中真紀子前外相の後任に川口順子環境相が内定したことをロイター通信とAP通信は1日午前10時20分すぎ東京発で、相次いで至急電で伝え、関心の高さをうかがわせた。

 ロイター電は、日本のメディアを引用する形で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の緒方貞子・前高等弁務官が外相就任を辞退したと報道。小泉純一郎首相は、田中氏更迭に伴う支持率の下落を食い止めるために緒方氏に要請していた、と伝えた。 (共同)

[毎日新聞2月1日] ( 2002-02-01-11:49


 2002.2.10日毎日新聞「中谷長官「外相更迭ああ無情」

 中谷元・防衛庁長官は、9日、高知市で開かれた自民党高知県連の大会で挨拶し、更迭された田中真紀子前外相へり外務省の対応について、「外務省を去る田中氏に外務(事務)次官らの見送りも無く、事務方の対応はあまりにもお粗末」と手厳しく批判した。田中氏の親衛隊を自任する中谷氏は、外相更迭について「政治は非常に難しい。『レ・ミゼラブル(ああ無情)』という言葉を感じた」。更に、「大臣発言は国民の声であり、国会で大臣と官僚が違った答弁をすること自体がおかしい。外務官僚は謙虚に事態を受け止めてもらいたい」などと述べ、田中氏が川口順子外相への事務引継ぎを求めていることについて、「事務手続きをきちんとやらないと組織は良くならない」と訴えるなど、田中氏への「後方支援」を展開した。


 2001年10月30日

田中外相:手書き辞令で更迭求める 人事課長問題 

 「秋の園遊会」の対応をめぐり田中真紀子外相が外務省の斎木昭隆・人事課長の更迭を求める騒動が起き、30日も手作りの辞令を省に持参するなど、野上義二事務次官ら事務方との対立構図を強めている。重要政策決定から外される中、埋没をおそれた外相はテロ対策支援法成立を境に「抗争」の封印を解き、巻き返しを図ったようだ。ただ、省内の混乱が増せば逆に内閣改造による早期の外相更迭論を加速させ「やぶへび」となる可能性もある。

 【確執】

 「組織防衛の温床は人事と会計」。外相は30日の記者会見で改めて斎木課長更迭の意向を強調。「事務次官と官房長の決裁がいると説明されている」として「(決裁の)書類をください。小町さん、お願いします」と会見に同席した小町恭士官房長に書類提出を求めた。その後、手書き辞令のコピーを秘書官経由で野上次官に渡した。野上次官らは官邸を訪れ福田康夫官房長官らと対応を協議。野上氏は外相が作成した手作り辞令について「子ども銀行(のお札のよう)だ」と記者団に苦々しげに語った。

 【発端と背景】

 騒動の発端は26日に、外相が来月1日の天皇・皇后両陛下主催の「園遊会」への出席を斎木課長から打診されたことだ。外相によると、ほかにも外務省分で14人(夫妻で28人)の出席者の枠があるが、8月6日時点で宮内庁から打診があったにもかかわらず、外相が知った際は全員内定済みだったという。人選にある程度閣僚が関係することは政界で暗黙の了解だけに、調整のカヤの外に置かれたことに「お手盛りだ」と怒ったのだ。このため29日夜、人事課の内側からカギをかけ2時間にわたりたてこもり、斎木課長を更迭する辞令の作成を職員に求める異例の騒動に発展した。

 川島裕前事務次官時代に飯村豊前官房長と並び「反外相」ラインを築いた斎木課長に外相の警戒は強く、再三交代を迫った経緯もある。外相自ら当初は「円満関係」を強調した野上次官も、米テロ事件をきっかけに「外相外し」の省運営が目立っていただけに、不満がたまっていたようだ。

[毎日新聞10月30日] ( 2001-10-30-18:11 )


外務省批判の「真紀子節」高らか・対話集会デビュー

 田中真紀子外相が3日、和歌山市で開かれたタウンミーティングに初登場し、「真紀子節」を披露した。幹部人事をめぐる官僚との対立や外国要人との会談に遅刻する騒動で更迭論がくすぶる外相だが、この日は参加者から多くの声援を受け、外務省や永田町批判を展開した。外相はここ数日自ら民放テレビにも出演しており、国民に「窮地」を訴えて、狭まる包囲網を打破する作戦に転じたようだ。

 外相は強い意欲を示していた国連総会、主要国(G8)外相会合出席が前日、与野党の「待った」で取りやめになっただけに、関係者から「対話集会を欠席するのでは」との懸念も出ていたが予定通り出席した。途中までは、環境問題で持論を主張、教育問題に絡め「(日本は)同じモノサシで人間を測る」など社会批判程度に収めていたが、会場の参加者から「外務省の取り締まりをしてほしい」「魔物が住む伏魔殿をきちんとしてほしい」と声援や外務省改革の要求が相次ぐと次第にヒートアップ。〔共同〕


田中外相の更迭求める 民主・菅幹事長

 民主党の菅直人幹事長は2日の記者会見で、田中真紀子外相がイラン外相との会談に遅刻するなどした一連の問題について「数限りない外相の資質(問題)、現実に外務省が機能していない。これ以上国益を損なうような外相をその場にとどめておくことは、小泉純一郎首相の責任問題だ」と述べ、田中外相の更迭を求めた。

 また、与党3党の衆院選挙制度見直しの1年先送り合意に伴い、衆院選挙区画定審議会の勧告を受けた区割り法案提出が凍結されることついて「1票の格差是正は審議会にいわば委任していることで、その案が出れば法案として国会に提出すべきだ。妨げるようなことを与党がすれば、1票の格差是正を邪魔していることになる」と語った。

[毎日新聞11月2日


田中外相:外遊許可を求め与党国対委員長に嘆願書

 田中真紀子外相は5日、嘆願書を携え、国会に自民党の大島理森国対委員長ら与党3党の国対委員長を訪ね、与野党が認めないことで合意した米・ニューヨークでの主要国(G8)外相会議や国連総会の出席について再考するよう直訴した。

 与野党合意後も外相は「せめてG8に出たい」と11日に予定されるG8出席に意欲を示し、12日予定の予算委員会に欠席する代わりに外交問題に関する集中審議を行うことで、出席を許可するよう求める嘆願書を作成、提出したが、大島氏は「方針は変えない」と外相に伝え、直訴は実らなかった。

 外相はこの行動について「小泉純一郎首相に3日朝電話したら『最後の最後まで与党の先生に頭を下げて歩いてみたらどうか』とアドバイスされた」と説明した。

[毎日新聞11月5日] ( 2001-11-05-19:33 )


外相をめぐる混乱 本質は権力闘争

◆混乱の本質は権力闘争

田中真紀子外相の外務省人事課長への更迭要求をきっかけとする今回の騒動は、政界で孤立した外相が逆に米ニューヨークの国連総会出席をストップされるなど、小泉純一郎首相との溝を改めて露呈、外相は八方ふさがりの状況に置かれた。小泉首相は宮沢喜一元首相を国連総会に代理出席させるが、「外相VS事務方」の従来の構図は外相の資質論議に焦点が移っている。首相の対応はびほう策に過ぎず、混乱は今後も続くことは間違いない。

 「もうファイナル(期限)よ。スピーチの原稿も、できているんだから」――。7日朝、あくまで国連総会出席を求め与党への調整を外務省幹部らに迫る外相の声がむなしく大臣室に響いた。外相は8日の国会答弁で「外務省が外交を放棄した」と根回しに動かない幹部を改めて批判した。

 今回の混乱劇は米同時多発テロ事件をきっかけに政策決定から外され続けた外相が、かねて対立している斎木昭隆・人事課長の更迭要求をテコに発言力の回復を図った権力闘争。秋の園遊会の事前連絡を口実に課長更迭を求めたのは、先月29日のテロ対策支援法の成立日。懸案がなくなり満を持しての反撃だった。

 しかし、人事こそ省掌握の根源と知る外務官僚はしたたかだった。野上義二事務次官は福田康夫官房長官と協議、外相の更迭要求拒否をすぐに確認した。かつて外相と対立した川島裕前事務次官が幹部人事騒動でやはり福田長官と連携、外相の動きを封じたパターンが忠実に再現された。

 外相の誤算は「園遊会」騒動や、指輪をなくし事務秘書官に買いに行かせてイラン外相との会談に遅刻するなどの行動から、政界に資質論議が再燃したことだ。国連総会出席は外相にも理があるはずの論議だが政界に援軍はなく、首相も宮沢氏出席による混乱回避が精いっぱいだった。

 騒動は海外メディアでも取り上げられ、国連総会演説をはさみアフガニスタン和平・復興外交が活発化するニューヨークの舞台に日本は外相抜きでのぞむ。外務官僚は首相の対応について「早期更迭へのサイン」と期待半分にみるが、与党内では「たとえ混乱してもメディアに露出することが外相の力の源泉。政界と国民の世論は違う。その意味では逆に復権した」(幹部)という見方もある。【人羅格】

[毎日新聞11月9日]


田中外相 「外交以前の問題が問題」と批判 共産党委員長

 共産党の志位和夫委員長は8日の会見で、田中真紀子外相について「イラン外相がお見えになってるのに遅刻するとか、あまりにも外相として常軌を逸した行動がひどすぎる、外交以前の問題が問題になっている」と批判した。志位氏はさらに、「与党側が国連総会にもG8にも出せないと判断するような人を外相に置いておくのは根本的な矛盾だ、任命権者である小泉首相がよく考えるべきだ」と述べた。

[毎日新聞11月9日


小沢党首が田中外相を批判 「反省」が必要

 自由党の小沢一郎党首は7日の会見で、田中真紀子外相のG8外相会議などへの出席問題について「外相出席は必要であるにもかかわらず『あんたはいかなくてもいい』とみんなに言われていることを反省すること(が必要)じゃないか」と述べ、外相の姿勢を批判した。小沢氏はさらに「官僚の不祥事をただすのはいいが、肝心の仕事をしないとだれも言うことを聞かない」と述べた。

[毎日新聞11月8日]


G8出席「決着している」−−福田官房長官

 福田康夫官房長官は7日午前の記者会見で、田中真紀子外相が希望する主要国(G8)外相会議への出席を与野党が認めていない問題について「今朝までの動きでは(与野党の主張通り)決着したと思っている」と述べ、出席はあきらめざるを得ないとの認識を示した。一方、田中外相は同日の衆院外務委員会で「国際情勢を勘案しても出席は義務だ」と述べ、改めて出席に意欲を示した。

[毎日新聞11月7日


「外交は二の次」…米メディア、田中外相を酷評

 【ワシントン佐藤千矢子】田中真紀子外相が米ニューヨークでの国連総会と主要国(G8)外相会議への出席を与野党に拒否されたのを受けて5日、米紙ワシントン・ポストなど複数の主要メディアは外相にやや批判的なトーンで一斉に報道した。「園遊会」「指輪紛失」事件など相次ぐ騒動に米メディアの外相への見方も厳しくなっているようだ。

 ワシントン・ポストは国際面で「日本の外相をめぐる騒動。同僚とのけんかのエスカレートで田中外相にとって外交は二の次」との見出しの記事を掲載。外務省改革に取り組む外相と、リーク(情報漏えい)で対抗する官僚という対立に言及してはいるものの、最近の言動に関連して外相に批判的な意見を主に取り上げた。

 米AP通信は「外相の国連総会欠席は88年に宇野宗佑外相が天皇陛下の病状悪化を理由に欠席して以来のこと」と指摘し、外相が紛失した指輪を探していてイラン外相との会談に遅刻したとされる問題などを「失策」と表現した。英ロイター通信は中立的に騒動を報じたが、「政治的メロドラマ」と見出しをつけた。

 バウチャー米国務省報道官は同日の会見で記者から「日本の外相が外相としての仕事をしていないという多くの報道についてコメントはあるか」と聞かれ、「ノー」と答えただけだった。

 この問題では1日付の米紙ニューヨーク・タイムズも1ページを割き、官僚に批判的なトーンで、外相と官僚の確執を紹介している。

(毎日新聞2001年11月7日東京朝刊から)


田中外相は直感力鋭い人・官房長官、持ち上げる

 「田中真紀子外相は感性、直観力の鋭い方。直観力は怖い、すぐ真贋(しんがん)を見分ける」――。福田康夫官房長官は10日、千葉市で開かれたタウンミーティング(対話集会)で参加者から、官房長官の外相への態度を問われ、感想を述べた。「本当に個性豊かな方ですばらしい特質を持っている」と持ち上げ、「あの感性をご本人も大事にして、我々も大事にしないといけない」と述べた。

 官房長官はタウンミーティングに初めて参加。終了後の記者会見では、内閣で危機管理担当を務めているため地方開催では出席できなかったことを説明し、タウンミーティング終了間際での初参加は「職務に忠実だったから」と釈明した。ただ直接市民と対話したことで「(市民は)小泉内閣に好意的ではないかなと思った」と自信を深めたようで、「できれば(終わらせるのではなく)続けたらいいというのが私の感想だ」と話した。(日経)


「個性豊かな方」 福田官房長官が田中外相をほめちぎる

 「率直に言って、本当に個性豊かな方だ」−−。10日、千葉市内でのタウンミーティングに出席した福田康夫官房長官は、外務省人事などをめぐって対立してきた田中真紀子外相をほめちぎった。外相更迭を引き金に内閣改造につなげようとする与党内の動きを警戒し、更迭論に水を差しておきたかったようだ。

 「田中外相について、官房長官の本音を聞きたい」。会場の男性から単刀直入な質問が飛ぶと、福田長官は苦笑して「すばらしい特質を持っている。感性というか、直感力の鋭い方」と、言葉を選びながら評価した。

 さらに「個性を十分発揮されるのはいいことだ。あの感性をご自身も大事にしなきゃいかんし、我々も尊重しなければいけない」。次々と騒動を起こす外相や、更迭を求める勢力に、やんわりと慎重な対応を求めた。(18:54) (朝日)

参院予算委で田中外相に集中砲火 民主の「真紀子たたき」に与党が問責決議案期待

 民主党が14日の参院予算委員会で、田中真紀子外相に集中砲火を浴びせたことが、「外相交代論」と絡んで憶測を広げた。国民的人気から代えにくい外相に対して、参院で野党が問責決議案を提出することへの期待が与党内にあり、この日の民主党による「真紀子たたき」がこうした思惑と結びついたものだ。

 「紛失した指輪を秘書官に買って来いと命令したのか」。民主党の長谷川清氏は同委員会で、イラン外相との会談に遅刻するなどした一連の騒動を取り上げ、30分間近く外相をただした。衆院予算委での補正予算審議初日は外相の答弁機会が3回しかないなど、「真紀子外し」の印象が強く、この日の徹底追及はそれだけに耳目を引いた。

 外相をめぐっては、民主党内に更迭すべきだとの議論が出ていることをとらえ、同党による問責決議案提出への期待が自民党内にある。同決議に法的拘束力はないが、98年に額賀福志郎防衛庁長官が辞任した例もあり、自民党中堅議員の1人は14日、「外相辞任となれば、小泉純一郎首相は弱体化する」と語った。

 一方、小泉首相を支える森派幹部にも、問責決議案をめぐって与党内がゴタゴタすることで、「外相が自発的に辞任してくれないか」との期待がある。外相に対する政界での評価と外相人気の落差に戸惑い、表向きは沈黙を守っているが、一連の外相の言動に、与党内には「うんざりムード」が充満している。

 民主党の鳩山由紀夫代表はこの日の会見で、問責決議案について「国対と相談したい」と述べるにとどまった。外相追及についても、参院国対幹部は「外相の『適格性』を見過ごせば、民主党の姿勢が不明確になる」と説明しただけ。外相の国連総会欠席を与党と合意したことで、抗議電話の矢面に立たされたばかりだけに、軽々に与党の思惑に呼応する気配は今のところない。外相の人気がどの程度か、などを慎重に見極めて対応を決める考えのようだ。

●14日の参院予算委員会では、田中真紀子外相がイラン外相との会談に遅刻するなどの一連の「外相の資質」問題が議論となった。同問題をめぐる民主党の長谷川清氏との主な質疑は次の通り。

 長谷氏 10月29日夜、人事課に鍵をかけて職員に辞令をタイプするように求めたのは事実か。

 外相 人事課に行き、辞令を作ってもらおうとしたのは事実だ。

 長谷川氏 官房長は部屋に入れなかったのか。

 小町恭士外務省官房長 当時、外相と連絡を取ろうとし、連絡を取れなかったのは事実だ。

 長谷川氏 ドアの鍵がかかっていたからか。

 官房長 中に入れる状況ではなかった。

 長谷川氏 指輪をなくして、イラン外相との会談に30分遅れたという報道がある。

 外相 この日は爆弾テロ防止条約の審議が午後6時半まであり、会談まで30分しかなかった。法案が通ったので委員長や理事にあいさつし、その後、議員に呼び止められて相当、時間がたった。大臣車に乗る前に報道各社から質問があり、それで20分ぐらいかかった。

 役所の人は私がすぐに(会談に)行くと思っていたらしい。私は、眼鏡をかけたり、頭もぼうぼうになっており、初めて外相に会うのだから「私物も大臣室に置いてあって、身繕いをしようと思っており、コートも取りに行かないと」と言ったら、「私物は紙袋に入れてここにある」と言われ、「えーっ、どっちにしても眼鏡替えたり、髪もとかさないと。鏡も見なきゃいない」と言った。

 出る時にブレザーに入れた指輪がなくて、役所に行って「どうなったか」という話はあった。結局、眼鏡はかけたまま、頭だけとかして会談に行った。会話は機微にわたるいいお話だった。

 長谷川氏 秘書官に「代わりの指輪を買ってこい」と指示したのか。

 外相 私にとっては記念のものだし、委員会審議がある時に公務を入れる時は30分で全部というのは、そういうことはトータルでスケジュールは秘書官にやってもらわないといけないということは言った。

 長谷川氏 (民放テレビが報じた秘書官とのやりとりの資料を示し)認識はあるか。

 外相 自分が忙しい仕事をしていて、何時何分にどういう発言したか、全部自分では記憶していない。それができれば人間業ではないと思う。

 長谷川氏 秘書官が指輪を購入に行ったのは事実か。

 外相 そういうことには、お答え申し上げません。

 長谷川氏 代金はだれが払ったのか。

 外相 お答え申し上げません。

 長谷川氏 自分で払ったのか。

 外相 予算委員会で、お答えしません。

[毎日新聞11月15日]


外相、「空爆中止要求」の報道を否定=民主、自発的辞任迫る−参院予算委

 
田中真紀子外相が1日のハラジ・イラン外相との会談で、ラマダン(断食月)中のアフガニスタンへの空爆中止を米国に求める考えを事実上示していたとの一部報道をめぐり、民主党が15日午前の参院予算委員会で、田中外相に“集中砲火”を浴びせた。外相は「断じてない」と否定したが、同党は外相の「資質」も追及し、執ように辞任を迫るなど、対決姿勢を鮮明にした。


田中外相、「国会あるから」とイラン訪問招請を拒否

 田中真紀子外相が1日にハラジ・イラン外相と会談した際、イラン訪問の招請を国会日程を理由に断っていたことが16日、明らかになった。

 衆院議院運営委員会で野党側が一部報道の事実関係の調査を要求。与党側が外務省に確認したところ、田中外相はイラン側の招請に対し、「訪問したいが、国会が開会中なので難しい」との趣旨の答えをしたという。

 閣僚の外遊は、議運委の許可を得れば国会開会中も可能。招請を直接的な表現で断ることは外交儀礼上、極めて非礼とされる。

 このため、与党側は外務省に対し、「国会の事情に触れる場合は誤解のないように発言してほしい」と注文。藤井孝男委員長も「外相に限らず、国会に責任を押しつけるような発言は慎むべきだ」と述べた。(20:54)


世論調査:「外相支持」は依然高支持率

 毎日新聞の世論調査によると、田中真紀子外相を「支持する」と答えた人は70%で、今年5月調査の80%から10ポイント減少したものの、これも依然、高支持率だった。一方、小泉純一郎首相が外相を更迭した場合、「小泉内閣を支持する」と答えた人は60%で、今回の内閣支持率より15ポイントダウンすることもわかった。与野党で外相の更迭論が強まっているが、国民感情とのズレは大きいようだ。

 外相の支持率を男女別に見ると、男性66%、女性73%。「外相が辞めさせられた場合、小泉内閣を支持するか」の質問では、特に30代女性で不支持(49%)が、支持(47%)を上回った。外相が外国要人との会談をキャンセルするなど「外相としてふさわしくない」との批判が出ていることに対しては、「そう思う」が22%だったのに対し、「そうは思わない」が70%と大きく上回った。

 「外務省の混乱について最も責任があるのは誰か」の質問には、外務官僚=50%▽自民党幹部=19%▽田中外相=16%▽小泉首相=10%の順だった。

[毎日新聞11月18日] ( 2001-11-18-18:59


首相「外相は抵抗勢力も味方と思って欲しい」

 「田中真紀子外相は(自分が)嫌いな人でも味方と思わないといけない。私も抵抗勢力を味方だと思っている」――。小泉純一郎首相は18日午後、都内で開いたタウンミーティングで、外務省と対立を深める田中真紀子外相に対し、信頼関係の醸成を指示していることを示した。与党内にも外相の更迭を求める意見が出ているが、首相は「私は内閣改造を当面考えていない」と否定し、外交機能が働くように双方の努力を求めた。

 内閣改造については「(外務官僚に対しても)1年で変わると思ったら大間違いだ、と言っている」と言及。「いじめたりしたら(外相が)ぼろを出す、と思ったら大間違いだ」と述べて、両者の連携を毎日取るように指示していることを明かした。また米ニューヨークで開かれた国連総会や主要8カ国外相会合への出席を求め、国会対策委員長に直訴した経緯について、外相が首相の指示で来た点には不満を見せ、「自分で頭を下げ、自分で来たという雰囲気を出さなければいけない」と指摘した。外相には「出すべき事、内輪で言うべき事に注意してくれと言っている」と注意したという。(日経)


田中外相:指輪問題で答弁拒む、参院外交委審議一時中断

 参院外交防衛委員会で20日、田中真紀子外相が1日のイラン外相との会談を前に秘書官に「指輪」を買いに行かせた問題が取り上げられた。佐藤道夫氏(民主)が経緯をただしたのに対し、外相は「答弁を差し控える」と繰り返し、審議の一時中断をはさみ20分近く、押し問答を繰り広げた。

 佐藤氏は小泉純一郎首相がタウンミーティングで「嫌いな人でも味方と思え」などと外相に苦言を呈したことを取り上げ「こども扱いされている」と感想を質問。外相は「首相から直接、話を聞いたことはない。素直な心で受け止めている」とかわした。

 さらに佐藤氏は「外相は生来、気が短いのではないか。人間として問題だ」と外相を批判しつつ、紛失した「指輪」を買いに行かせた経緯を聞いた。これに対し外相は「委員会審議にふさわしくない」と説明を拒み、再三の佐藤氏の質問にも「ここは裁判所ではない。ふさわしい質問とは思えない」と逆に佐藤氏の質問も批判したため、審議は中断。再開後、武見敬三委員長の指示を受け外相は陳謝したが、指輪問題では「(説明は)簡単ではない。答弁は差し控えたい」との姿勢を最後まで崩さなかった。

[毎日新聞11月20日] ( 2001-11-20-18:11


外相の遅刻、事務方の責任ではない 外務事務次官

 野上義二・外務事務次官は19日の記者会見で、毎日新聞の世論調査で田中真紀子外相の支持率が依然として高水準だった点について感想を聞かれ「特にありません」と述べるにとどめた。また、他のメディアの調査でも外務省の一連の混乱について外務官僚に責任があるとの回答が多かったことについては「(会談への)遅刻がぼくら(事務方)の責任だというのでは困りますね」と語った。

[毎日新聞11月19日


「外相支持」は依然高率 毎日新聞世論調査

 毎日新聞の世論調査によると、田中真紀子外相を「支持する」と答えた人は70%で、今年5月調査の80%から10ポイント減少したものの、これも依然、高支持率だった。一方、小泉純一郎首相が外相を更迭した場合、「小泉内閣を支持する」と答えた人は60%で、今回の内閣支持率より15ポイントダウンすることもわかった。与野党で外相の更迭論が強まっているが、国民感情とのズレは大きいようだ。

 外相の支持率を男女別に見ると、男性66%、女性73%。「外相が辞めさせられた場合、小泉内閣を支持するか」の質問では、特に30代女性で不支持(49%)が、支持(47%)を上回った。

 「外務省の混乱について最も責任があるのは誰か」の質問には、外務官僚=50%▽自民党幹部=19%▽田中外相=16%▽小泉首相=10%の順だった。

[毎日新聞11月19日]


ベーカー米大使が田中外相と会談 対米支援基本計画に満足感

 ベーカー米駐日大使は16日、外務省に田中真紀子外相を訪ね、テロ対策支援法に基づく基本計画について「非常に迅速にタイムリーに行われたことに満足している。基本計画によってさらに両国の協力が進むことを期待している」と述べた。また両氏は、同計画による日本から米軍等への物品提供について「国連憲章と両立する活動に使う」「日本側の事前同意なく第三者に移転しない」ことを条件とするとの交換公文に署名した。


(毎日新聞2001年11月17日朝刊から


田中外相:パキスタン外相と会談 復興会議に参加の意向を歓迎

 【イスラマバード中川佳昭】パキスタン訪問中の田中真紀子外相は24日夕(日本時間24日夜)、サッタル外相と会談した。サッタル外相は、来年1月に日米などが共同議長として東京で開催される閣僚級のアフガニスタン復興会議に参加したい意向を表明、田中外相も基本的に歓迎する姿勢を示した。

 また、アフガン和平プロセスに関連して田中外相は、ブラヒミ国連事務総長特別代表が提唱する5段階の政権構築プロセスへの支持を強調し、パキスタン側の理解を要請した。サッタル外相も同調し、幅広い基盤を持った政権が樹立が望ましいとの考えを示して「北部同盟も新しい政権の一部であるべきだ」との姿勢を明確にした。

 また、会談に同席したアジズ財政歳入相は、経済制裁解除に伴い先に日本政府が決定した今後2年間で総額3億ドルの無償資金協力への感謝と、早期実施を要請した。

 これに先立ち田中外相は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のグランディ地域調整官と意見交換した。

 外相はアフガン難民支援について「特に女性、子どものメンタルケアが必要ではないか。難民が生きていく気力をどう与えるかが課題だ」と難民帰還支援への意欲を強調。グランディ氏は「アフガン難民は400万と言われるが、20%の80万人が帰還するにしても大変なことだ」と難民帰還の困難さに言及した。

[毎日新聞11月25日] ( 2001-11-25-01:18


田中外相、難民キャンプ視察・サッカーボールなど贈呈

 【ペシャワル(パキスタン北西辺境州)25日=佐藤賢】パキスタン訪問中の田中真紀子外相は25日、同国北西部のペシャワル郊外にあるシャムシャトゥ難民キャンプを視察した。外相はパキスタン女性が着る黒の衣装に白のスカーフをまとい、職業訓練学校や女子小学校、診療所を見て回った。小学校では算数の授業などを見学した後、サッカーボールやバドミントンの器具、クレヨンを贈呈した。

 難民キャンプは、1979年にソ連がアフガニスタンを侵攻、大量の難民がパキスタンに流入したことを受けて1980年ごろに開設されたもので、難民数は約5万3000人。子供たちからアフガン国歌を歌ってもらうと、涙ぐみながら「百聞は一見にしかずで、同じ人間としてつらいものがある。何ができるか、最善を尽くしたい」。滞在時間は予定の1時間を大きく越え、約2時間にわたった。

 この後、難民の居住地などで栄養教育や家族計画指導を実施しているパキスタン家族計画協会に日本政府が約8万6000ドル(約930万円)を供与する「草の根無償資金協力」の署名式にも出席した。


外務省の裏金総額2億200万円、328人を処分
 田中真紀子外相は30日夕、外務省で記者会見し、外務省職員がホテル代の水増し請求などで捻出した剰余金を裏金としてプールしていた問題に関する最終報告を発表した。裏金の総額は1995年4月からの6年半で合計約2億200万円に達し、そのうちの約400万円を私的に流用した職員2人を懲戒免職処分としたほか、関係者計328人を処分した。

 裏金のうち約1億6000万円は既に外国要人の接待や職員同士の懇親費、弁当代などに使われ、約4200万円は使われずに残っている。裏金を捻出していたのは外務省の全課室119のうちの約6割にあたる計71の課室で、ホテルやハイヤー会社など12社にプールしていた。私的に流用したのは9人で、合計で約1000万円。2人を懲戒免職、3人を懲戒停職(15日)、4人を懲戒減給(20%、3カ月)とした。既に使われた裏金とその利子分は、OBを含む課長補佐級以上の職員で弁済し、使われていない約4200万円も国庫に返納する。弁済額は事務次官、外務審議官、官房長、大使の50万円を最高に、局長級が40万円、課長級が30万円か20万円、課長補佐が3万円など。


外相、人事異動の凍結を解除

 田中真紀子外相は30日、凍結していた外務省の11月分の人事異動を解除した。外相は「外務省改革を進めるためには斎木昭隆人事課長の更迭が不可欠」との理由から、82人の異動を決済する条件として人事課長の交代を求めていたが、事務当局が交代に難色を示す中、異動の対象者から苦情が来ていたことに配慮したものとみられる。ただ、外相は引き続き人事課長の交代を求める構えで、事務当局との対立は続きそうだ。


田中外相、省幹部の夫人と歓談

 田中真紀子外相は7日夕、外務省の局長級以上の幹部職員の夫人を外務省に招き、お茶やお菓子をもてなしながら歓談した。外相は突然の懇談会について「ご主人たちと仕事をさせていただいているが、奥さま方とお茶飲み話をしながら労をねぎらいたい」と、記者団にその趣旨を説明。「同級会ではないが、家庭婦人として個人的に親交を深めたい。折を見て頻繁にやりたい」と、今後もこうした会合を開きたい考えを示した。事務方との対立が絶えない外相が気配りを見せた格好だ。

 約20人の局部長以上の職員のうち、16人の夫人が参加。会談は予定の1時間を約20分上回り、女性同士の会話は盛り上がりをみせたようだが、今回の懇談会が外相と事務方との融和の一助となるのかどうか?〔共同〕


田中外相、幹部夫人らと懇親会 省内で執務時間中

 田中外相は7日、外務省に部局長級幹部の夫人ら16人を招いて懇親会を開いた。「夕方は奥様方が出づらい」と、執務時間中の午後3時半ごろから約1時間談笑。外相は「ご主人の労もねぎらいながら、個人的に親交を深めたい」と話し、「全員を呼べなかったので、また折を見て頻繁に」。

 夫人らにはお茶とお菓子が振る舞われたが、公費からの支出かどうかは「わからない」(外相秘書官)。人事問題や不祥事への対応で外相が批判している野上義二事務次官の夫人は、都合がつかず欠席した。

(23:40)(朝日)

米のイラク攻撃想定しシミュレーション 外務省

 外務省は、米国がかりにイラクを攻撃した場合、政府としてどのような対応をとるべきかについて、内々の検討を始めた。ブッシュ政権が現実にイラクにも戦線を広げるかどうかは、政府内でも見方が割れているが、自衛隊による米軍支援の可能性も含め、対応措置を考えておく必要があるとしている。

 外務省は、米国がイラクを攻撃する場合の理由として3つ考えられると指摘する。(1)テロ支援国家(2)大量破壊兵器の開発疑惑に対する査察拒否(3)テロ事件におけるオサマ・ビンラディン氏やアルカイダとの具体的なつながり――だ。

 国務省の「テロ支援国家リスト」にイラクが含まれていることだけを理由に攻撃に踏み切ることは考えにくいが、もしそうなれば、日本としては「支持」はできず「理解」にとどめるという案が有力だ。

 フセイン政権が国連による兵器査察を拒否したことが攻撃の根拠となる場合は、「支持」の可能性が高そうだ。「査察拒否は安保理の湾岸戦争停戦決議の違反。安保理はそれに先立ち武力行使の容認決議をしている」ので、「支持」は国際法上も妥当だ、というのが、外務省の見解だ。

 ただ、いずれの場合も9月の同時多発テロへの対応に限ったテロ対策特別措置法の適用はなじまない。自衛隊の米軍支援は難しい。

 問題は、米政府が、イラクがビンラディン氏やアルカイダのテロ行為に関係していたと結論づける場合だ。テロ特措法の枠内なら、自衛隊による米軍支援の活動地域は「無限定」(小泉首相)とされている。提示される証拠の説得力にもよるが、「証拠が明白なら、支援しない理由を探すのが難しい」と外務省幹部はいう。自民党内にも「基本計画を作り直し、イージス艦も同行して、万全の態勢で行かなければならない」(加藤紘一元幹事長)との声がある。

 外務省や防衛庁では、「米側の対イラク発言は、大量破壊兵器問題に対するけん制球の意味合いが強い。そもそもイラク攻撃は国際社会の支持を得られない」との見方の一方で、「展開している部隊をイラク攻撃に差し向けることは、軍事的効率性から見て十分あり得る」との指摘もある。

 ただ、パレスチナ情勢の緊迫で、日本の判断が難しくなる可能性は高い。イスラエル寄りの姿勢を見せる米国がイラクを攻撃すれば、アラブ諸国の猛反発が予想される。日本はこれまで、イスラエルとパレスチナ自治政府の双方と一定の関係を保ってきただけに、対アラブ外交の面でも厳しい選択となる。(09:14)(12.9朝日)

「事務次官は天皇みたいなもの」 衆院外務委で外相発言
 田中真紀子外相は5日の衆院外務委員会で、外務省のプール金問題に関連し、野上義二事務次官について「次官がこういうところ(国会)に出てこないというのは、(出席を禁止する)法律があるわけでもありませんのに」と不満を示したうえで「なぜか、各役所(事務)次官というのは守られていて、事務次官というのは天皇みたいなものですからね」と述べた。野上次官の一連の対応をただす質問が出たのに対し答えた。

 外相はまた、外務省が各課別の裏金を公表しなかった経緯について「内向きなことでけしからんと思っている。よく(話を)聞く。事務次官も、こういう不祥事がある時には責任者が出てきて話さないといけない」などと語った。

[毎日新聞12月5日


田中外相と会談したウズベキスタン首相、イニシアチブを支持

 田中真紀子外相は5日、外務省でウズベキスタンのスルタノフ首相と会談した。スルタノフ首相は、アフガニスタン情勢に関連して「(ウズベキスタンは)中央アジアで日本の利益代表として行動する用意がある。日本の外交のイニシアチブを支持している」と述べた。田中外相は日本が93年から計約600億円の経済支援を続けていることを踏まえ、「経済的に厳しい状況にあるが、支援はしていきたい」と語った。

[毎日新聞12月6日


田中外相の「天皇」発言、「不適切だった」 福田官房長官が会見

 福田康夫官房長官は7日の記者会見で、田中真紀子外相が5日の衆院外務委員会で「事務次官というのは天皇みたいなもの」と発言したことについて、「委員会の発言として適切な表現ではなかった」との認識を示した。

(毎日新聞2001年12月8日東京朝刊から


青年海外協力隊員から指輪 思わぬ贈り物に田中外相上機嫌

 「コートジボワールまで指輪のことが伝わっていたなんて」ーー。10日外務省で行われた青年海外協力隊員への感謝状授与式で、帰国した男性隊員が外相に「指輪」をプレゼントするハプニングがあった。

 外相はイラン外相との会談を前に、なくした指輪を秘書官に買いに行かせ遅刻したことが問題化した。式典のあと、コートジボワールから帰国した隊員が「指輪をなくしたと聞いたので」と派遣先で購入した銀色の指輪を渡した。

 思わぬ贈り物に機嫌をよくした外相は予定時間を大幅に越えて隊員たちと歓談。記者団にも「指輪はまだ出てきてないのよ」と語るなど、この件について一切ノーコメントを通す国会答弁とは対照的だった。

(毎日新聞2001年12月11日朝刊から


田中外相 事務次官天皇発言で説明を検討

 田中真紀子外相は11日の閣議後会見で、衆院外務委員会で「事務次官という方は天皇みたいなもの」と答弁したことについて「(自民)党内とか官房長官が心配してくれているようで、検討しなければと思う。いろいろな要望が来ており、もう一度議事録をきちっと確認したい」と述べ、何らかの説明を検討していることを明らかにした。外相答弁については福田康夫官房長官が不適切との見解を示している。

[毎日新聞12月11日]


田中外相 「天皇みたい」発言の削除を申し入れ

 田中真紀子外相は12日、先の衆院外務委員会で「事務次官という方は守られていて天皇みたいなもの」と答弁したことについて、関連答弁の議事録からの削除を同委に申し入れた。18日に同委理事が対応を協議する。

 次官批判に皇室を引き合いに出したことで自民党の大島理森国対委員長が問題視し、福田康夫官房長官も「不適切」と外相答弁を批判していた。

[毎日新聞12月13日


アフガン復興:両副外相が首相に800億円程度の支出を要請

 杉浦正健、植竹繁雄両副外相は13日、首相官邸に小泉純一郎首相を訪ね、来年度予算案編成にあたりアフガン復興支援支出が見込まれる政府開発援助(ODA)への配慮を要請した。この中で両副外相は、「アフガン関係で700億から800億円ぐらいに追加支出がありそうだ」と述べ、外務省見積もりを初めて明らかにした。

 ODAの外務省所管分について、同省は今年度比9%減の約5000億円を概算要求している。杉浦氏らは「700億円を5000億円に含めるのは難しい」と、アフガン支援分に関する特例措置を求めたが、首相は「財務省とよく話し合ってほしい」と述べるにとどめた。

[毎日新聞12月13日] ( 2001-12-13-12:40 )


田中外相、緒方氏の積極財政論けん制

 「財政は大変厳しい。あまり大ぶろしきを広げて政府が立ち往生しても困るので、確実なものから取り組みたい」。田中真紀子外相は14日の緒方貞子・前国連難民高等弁務官との会談の冒頭でこう切り出し、アフガニスタン復興への積極的な財政支援を主張している緒方氏をけん制した。

 一方、緒方氏は「22日に発足する暫定政権には職員に給与を支払う財政的基盤がない。暫定政権が十分に機能する支援が重要だ」などと強調した。

 来年1月に日本で開くアフガニスタン復興支援閣僚級会議の共同議長を外相か緒方氏のどちらが務めるかは決まっておらず、復興策策定の主導権を巡ってさや当てを演じた格好だ。(日経)


外相「イスラエルの姿勢は厳しい」

 田中真紀子外相は18日、来日中のイスラエルのシートリト法相と外務省で会談し、イスラエルによるパレスチナへの軍事行動について「イスラエルの最近の姿勢は厳しいのではないか」と指摘し、自制を求めた。法相は「アラファト・パレスチナ自治政府議長ではコントロールできなくなっている。パレスチナ人によって選ばれたリーダーと今後、話し合いを行っていきたい」と語り、アラファト氏を和平交渉の相手としない立場を強調した。


探偵軍団ニュースウオッチ(2002.2..12日)


宗男と真紀子の気になる関係 〜宗男のすべて〜

 ■自民党内でも批判を浴びる鈴木宗男氏
鈴木宗男

 前外相の更迭で小泉内閣の支持率が急落する中、自民党は5日、所属国会議員のテレビ番組での発言の規制を強化する方針を打ち出した。執行部は既に田中氏と鈴木宗男・元北海道沖縄開発庁長官にテレビ出演の自粛を求めており、一連の“発言封じ”には党内外から反発が出でている一方で、自民党内部では今回の更迭騒動で「鈴木宗男は自民党を潰す気か!中川さんの地盤を引き継いだだけで大きな顔をしている。このような状態が続くなら、今後自民党を離れて無所属で活動しようか」(自民党県連関係者)と大荒れの状況のようだ。

 その一方で田中真紀子前外相が更迭された外務省で、更迭時まで秘書官を務め、前外相から指輪を買いに行かせられる騒動に巻き込まれた上月豊久氏は、専門分野のロシア課企画官に本年2月1日付で就任した。これを受け関係者筋では、前外相時に進展がなかった北方領土問題に進展があるのではないかと期待が高まっている。


 ■鈴木宗男がなぜそこまで田中真紀子に敵意を燃やすのか 

 その一つに、この北方領土返還に対する考え方で意見の対立があるといわれている
鈴木宗男

 鈴木氏は歯舞、色丹の2島先行返還論者とみなされ、国後、択捉も含めた四島の帰属を解決させることが先決と考える田中元外相とは意見を異にすると言われてきた。

 鈴木氏は「2島先行返還はマスコミの造語」と反論はしているが・・・「プーチン大統領は、平和条約締結後に歯舞群島、色丹島の二島を日本に引き渡すことを明記した1956年日ソ共同宣言の有効性を確認し、北方領土問題解決への意欲を示しています。その最終目標に至る過程で、とりあえず問題をできるところから解決し、それから最終目標に向けて進む「段階的アプローチ」を取る可能性も真剣に考える必腰があります。」
                               (鈴木宗男 HP)

 昨年6月20日に、外務省ロシア課長の人事を巡り、鈴木氏の関与が外務委員会を舞台に話題となったが、これについては「人事は役所の専管事項で、一切関与していない。私と東郷(和彦前欧州局長)さんが二島先行で、それに四島一括の小寺さんが逆らってとばされたといわれるのは全くの作り話だ。もし人事介入したというなら、いつどこでだれにどんな働きかけをしたか示してほしい」(鈴木宗男 HP)


 ■なぜ鈴木宗男は北方領土2島返還に積極的なのか

 「鈴木氏との関係の深い業者が歯舞、色丹の2島の旧島民の土地所有権を買い占めている」(自民党関係者)というのである。北方4島の土地登記簿を管理する釧路地方法務局根室支局に事実確認をすると「現在は所有者の死亡による相続以外は、所有権の移転はできないが、登記簿の閲覧は可能です」との回答であった。では、どうやって売買しているのかというと、「登記簿を閲覧し地権者を割り出して直接交渉する。内々に売買契約書を取り交わし、返還後に一斉に登記簿を書き換える」(雑誌記者)という。

「しかしこの件は決して表には出てきません。なぜなら、売却した旧島民はその一部金を受け取り、残金は返還が本決まりになりそうな段階で清算ということになっている。つまり、その残金を受け取るまでは、誰もしゃべらないでしょう」(同記者)

 北方利権がなぜそんなにおいしいのかというと、「建前上、島が返ったときに温泉が出そうなのでリゾート開発する計画と買付け業者は説明している」(同記者)そうだが、北方4島には水産のみならず、石油、天然ガス、ウランなどの手をつけていない地下資源が豊富に眠っておりその返還後の利権ねらいというのが真相のようだ。確かにサハリン大陸棚では地下資源開発のプロジェクトがロシア政府と日本やアメリカの民間企業の間で進行中であり、今回の2島に関してもロシア政府が地質調査している可能性が高い。ロシアとのパイプが太いS氏であればこの辺の情報を早期に得ていたとしてもおかしくない。

 参考資料 サハリン大陸棚における石油・天然ガスの開発と環境

 この件が表に出てくれば、北方問題特別委員会理事、元北海道開発庁長官という関係上、鈴木氏の政治生命は危ういのだが・・・

ちなみに、この件に関して、鈴木氏は全面的に否定しているそうだ。


(探偵軍団)2002/02/06

鈴木宗男氏離党表明・記者会見全文

鈴木氏
離党届を出した後の記者会見でハンカチで目もとをぬぐう鈴木宗男氏=15日午後2時37分、東京・永田町の自民党本部で

鈴木氏
大勢のカメラマンを前に記者会見にのぞむ鈴木宗男氏=15日午後2時30分、東京・永田町の自民党本部で

 鈴木宗男氏が15日、自民党本部で行った離党記者会見の内容は以下の通り。

 私はただいま山崎幹事長に会って離党届を提出して参りました。

 今回、私の政治活動や言動につき、また私設秘書の件について、様々なことが国会などで指摘され、私自身深く反省すると同時に、このままでは党に大変な迷惑をかけると思い、離党を決断いたしました。

 中でも、北方領土返還運動の一環として私が取り組んだ北方四島支援事業について、国民のみなさまに多くの疑念をもたれたことについて、大変申し訳なく思っています。また、私と外務省など役所の関係、いわゆる政と官のあり方の中で、私の言動が圧力ととられ、国民の皆様の厳しい批判を受けていることについても、深くおわびと反省をするものです。

 ただ、私は私なりに11日の証人喚問で、精いっぱいお答えさせていただいたつもりです。

 しかし、外務省という役所は、田中(真紀子)大臣が更迭された後、今度は6年前、7年前の一方的なメモが次々と使われ、私の排除といいますか「つぶし」といいますか、なにがしかの意図や思いがあって今の事態に至っているなと、こんな風に考えています。

 特に、私は政治家として、北方領土返還運動をライフワークとして取り組んで参りました。その私が北方領土不要論という言葉は使うわけもなければ、ない話なんであります。それが「地元の中にこういう声もありますよ」と言ったのが、一方的に「鈴木宗男が言った」と、こう表現されたメモが出て参りましたが、今ここにいるお集まりのみなさま方も、私自身一生懸命、北方領土返還に向けて行動してきたことはおわかりいただけるものと思いますし、また政策的に私は齟齬(そご)があったというわけではないと、このことだけはあえて強調したいと思います。

 一方的な思惑や、あるいはメモというのは、書いた人のメモ能力やまた主観で残されては、私は公平ではないと思っております。その点、私は国民の悲願である北方領土返還を実現するためにも、ぜひともみなさん方に私のとってきた行動だけはおわかりをいただきたい。こんな風に考えております。

 私自身至らず、また反省すべき点、今も多々あると思っておりますが、私は反省すべきは反省しながら、おわびすべき点もしっかりおわびをしながら、また、私の立場で私の役割を果たしていきたいとこう思っています。

 私は国会での質疑等を見るときに、これ以上、党に、また多くのみなさんに迷惑をかけるのは申し訳ないとこう思って私は離党いたしました。この私の離党が自由民主党の改革や外務省の改革になるのなら、私なりにそれなりによかったという方向付けが出ることを心から願ってやみません。

 私はいま、昭和58年(83年)、最初に国会に出るべく、手を挙げた時を思い起こしながら、一からスタートしたいとこう思っております。ただこの間、多くの後援者やまた自由民主党党員のみなさま方にお世話になってきました。心から厚く、お礼と感謝を申し上げます。

 同時にこの1カ月、厳しい中にあっても絶えず私を励まし、激励してくれた心ある仲間の先生方や、あるいは全国各地の私の後援者のみなさん、とりわけ選挙区のみなさま方は一喜一憂しながらも私を見守ってくれました。改めて厚くお礼と感謝を申し述べたい。

 また何十年と家庭を顧みなかった私ですが、この1カ月、家内や子どもたちがしっかりと支えてくれました。改めて家族のきずなを知っただけでも私はよかったかな、とこんな風に思っています。

 また、うちの事務所の秘書のみなさんは、嫌がらせの電話やいろんな心ない電話がかかってきても、必死に受話器をとって、丁寧に対応してくれておりました。この仲間の秘書のみんなに私は感謝をしたいと、こんな風に思っております。

 以上、自由民主党を離党した報告をさせていただきました。

 (具体的に反省すべき点はどういう点か)すべて指摘されている点を反省していきたいと思っております。

 (違法行為があったと考えるか)私自身、悪いことをしているという認識で政治をやってきたことはありません。

 (議員を辞めることを考えるか)私は今、与えられた立場でその中で反省おわびをしながら、与えられた中で私の責任を果たして参りたいと、こう思います。(19:09朝日)

鈴木氏の離党、「本人の判断尊重する」 小泉首相

 小泉首相は15日夕、鈴木宗男氏が自民党を離党したことについて「ご本人の判断ですから、尊重すべきだと思います」と感想を述べた。野党提出の議員辞職勧告決議案には「執行部、また委員会にお任せしている」と判断を避けた。首相官邸で記者団に語った。

 首相はそのうえで「今後、政と官のあり方とか政治とカネの問題、秘書の問題、外務省改革の問題、政治改革の問題、こういう建設的な改革の方向に資するような形で考えたい」と前向きに取り組む姿勢を示した。(20:27朝日)

「鈴木的な人、ほかにもいる」 田中真紀子氏がコメント

 田中真紀子前外相は15日、鈴木宗男氏が自民党を離党したことについて談話を発表した。「残念ながら、今の自民党には鈴木的な人あるいは予備軍はほかにもいる」と党の体質を批判し、「官邸機密費の問題や北方四島問題など長年にわたって鈴木氏らの行動を是認・醸成してきた官邸、外務省高官、及び党幹部の責任は極めて重い」と指摘した。(20:41朝日)


秘書給与問題 小泉首相巻き込み、泥仕合−−田中前外相、激しく“逆襲”


 田中真紀子前外相の秘書給与流用疑惑は17日、小泉純一郎首相を巻き込んだ泥仕合の様相を呈してきた。「疑惑はない」と否定する田中氏に、首相と山崎拓幹事長は「証拠を出せ」と要求。反発した田中氏は「総裁や幹事長も週刊誌で疑念を持たれている」と逆襲に転じた。これに首相が「人のせいにするな」と応酬し、ほとんど、ののしり合いの状況だ。外相更迭が支持率の急落を招き、田中氏の首相批判も聞き流してきた小泉首相だが、「政治とカネ」の問題で弱腰は許されない。ジレンマの末に「小泉VS真紀子」のバトルが再燃しかねない雲行きだ。

 首相は同日、飯島勲秘書官を通じ「事実無根のものは明快に否定し、資料に基づいて事実関係を明らかにしてほしい」とする文書を田中氏に届けた。田中氏が15日、首相と山崎氏に「週刊誌の記事に動かされて党政治倫理審査会が動き出すのはおかしい。総裁としての所感を説明してほしい」と抗議文を突きつけたのに対する回答だった。

 抗議文とは別に、田中氏は16日、党政倫審の林義郎会長に口頭で「秘書給与は一度(田中氏のファミリー企業の)越後交通に持っていったが、そのまま秘書に渡した」と説明。「疑惑には当たらない」と主張した。

 党執行部は17日、林氏から報告を受けたが、「シロはシロ、だからシロです、というのは説明になってない」(町村信孝幹事長代理)と判断。18日にも山崎氏から文書を届け、当時の秘書らの給与明細書など物的証拠の提示を求めることを決めた。

 首相や執行部からの追い打ちに、田中氏の怒りが爆発。記者団に「党幹部も週刊誌で疑念を持たれている。なぜ率先垂範してそうしないのか。『隗(かい)より始めよ』ではないか」と非難した。首相が「週刊現代」に親族企業の口利き疑惑を指摘され、山崎氏も「週刊文春」で愛人問題を報じられながら、共に「疑惑はない」とのコメントで済ませているのを突いたわけだ。

 これには、首相もムッとしたらしい。記者団に「人のせいにしないで、自分のことをやるべきですね」と言い返した。

 田中氏は「党内の政争だ。私を目障りと思っているのか知らないが、フェアではない」とボルテージを上げる一方。攻撃の矢は、外交機密費の首相官邸への上納問題にも向かい、「外相当時は、ないと言わざるを得なかった。どう官邸が対応するか、忘れてはいけない」とすごみを利かせた。

 首相や執行部にとって、田中氏のペースに乗せられるのは一番避けたい展開だが、28日の参院新潟補選で地元出身の田中氏の影響を最小限に抑えつつ、田中氏の人気に配慮しながら、疑惑追及でも毅然(きぜん)とした態度を示さなければならないという三重苦に陥っている。【中山裕司】

(毎日新聞2002年4月18日東京朝刊から)





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