46162 ドキュメント(2)

テロ対策「総力を挙げ防止を」 警察庁警備対策本部が初会議

 米国の同時多発テロに伴う警察庁警備対策本部(本部長・佐藤英彦次長、約100人)の初会議が10日、東京・霞が関の同庁であり、佐藤本部長は「国内の治安維持の第一義的責任を有する警察が、総力を挙げて重大テロの未然防止に取り組むように」と訓示した。

 国内警備については、自衛隊の活用が検討されたが、今国会に提出された自衛隊法改正案では、自衛隊の警備対象は在日米軍などに限定され、首相官邸や原発など、その他の重要施設の警備は、警察が責任を持って行うことになった。

 同対策本部は先週末から庁内横断的な組織として拡充され、(1)テロ関連情報の収集(2)ハイジャック防止対策の徹底(3)サイバーテロに関する情報収集――などを指示する次長通達を9日付で全国の警察本部に出している。

[毎日新聞10月11日]


「テロ資金供与防止条約」早期批准に向け検討

  テロ資金対策を各省庁横断で協議する「テロ資金情報・対策作業部会」の初会合が10日、財務省で開かれた。テロ資金供与者については、未遂を含めて処罰する「テロ資金供与防止条約」を早期に批准するため、来年の通常国会をめどに関連法案を提出する方針で検討を進めることになった。

 同部会は、6日の先進7カ国財務相・中央総裁会議(G7)がテロ資金根絶で合意したことを受けて、財務省と法務省、金融庁など関係省庁の情報交換を目的に設置。今後、条約批准に向けた国内法整備のあり方を検討していく。

[毎日新聞10月11日]


テロ対策支援法案 福田官房長官が趣旨説明

 10日の衆院本会議でテロ対策支援法案の審議が始まり、担当閣僚として福田康夫官房長官が趣旨説明を行った。

 日本が対外的行動を行う法案だけに、外相が担当するのが普通だが、田中真紀子外相の答弁を不安視した官邸と与党が、法案を内閣府提出としたことで、福田長官の異例の登板となった。

 ただ福田氏自身も、当選4回で官房長官就任前に閣僚経験がないことから、本格的な国会答弁は事実上初めてで、特別委員会での答弁は今後の試金石となりそうだ。

[毎日新聞10月11日]


憲法調査会 テロ事件踏まえ集団的自衛権など論議へ

 衆院憲法調査会(会長・中山太郎元外相)は10日の幹事会で「国連と安全保障」をテーマに今月25日に調査会を開くことを決めた。米同時多発テロ事件を踏まえ、集団的自衛権の解釈や戦争放棄、戦力不保持を定めた憲法9条などを取り上げ、幅広く議論する予定だ。

 幹事会では、野党側がテロ事件で注目されている最中に憲法9条や安全保障問題を取り上げるのことに難色を示したが、中山会長が「粛々と進めるべきだ。憲法調査会は議論が足りないとの指摘もある」と説得し、開催を決めた。

 また、今後の議題・日程について、首相公選制を含めた統治機構全般(11月8日)▽憲法裁判所の設置、教育、環境問題を含めた人権問題(同29日)で合意した。

[毎日新聞10月11日]


「武器・弾薬の輸送は慎重に」 小泉首相

  テロ対策支援法案など対テロ関連法案の審議が10日の衆院本会議で始まり、小泉純一郎首相はテロ対策支援法案で認めている武器・弾薬の輸送について、「他国の領域では慎重に行うべきだ、との指摘は同感」と表明、実際の運用では慎重に対応する方針を明らかにした。公明党の田端正広氏の質問に答えた。首相の答弁は武器・弾薬輸送に慎重論がある同党に配慮したものだ。

 ただ、「法律上、輸送を可能にしておくことが必要だ」と強調、民主党の法案修正要求には否定的な考えを示した。また、「同意を得た他国の領域で行えるようにしておく」とも述べ、陸上での輸送の可能性に含みを残した。

 首相は自衛隊の武器使用の防護対象として同法案が規定した「自己の管理下に入った者」について「ともに現場に所在し、自衛隊の指示に従うことが期待される関係にある者」との定義を示し、自衛隊の診療所や輸送中の傷病兵、被災民など具体例を挙げた。中谷元・防衛庁長官は携行武器の種類について「不測の事態に対処できる必要最小限のもの」と、重火器は想定していないことを示唆した。

 一方、民主党が求めている自衛隊派遣の際の国会承認について首相は、「米同時多発テロの撲滅に限定した法案で、法案を認めてもらえば対応措置の実施も同意いただけたとみなす」と、否定的な見解を示した。自衛隊が対米支援などを行う法的根拠については「憲法の前文と98条の国際協調主義」と指摘、「確立された国際法規を誠実に遵守する」との同条の規定を基盤にしていることを明らかにした。

[毎日新聞10月11日]


テロ対策支援法案:
修正協議合意の見通し 与党3党と民主党

 与党3党と民主党のテロ対策支援法案をめぐる修正協議は12日、自衛隊派遣に関する基本計画を、民主党が求める「国会承認」事項とする修正を行うことで合意する見通しとなった。武器・弾薬の輸送に関しては、法案修正はしないものの、「海上輸送に限定する」などの付帯決議をつける方向だ。これにより、同法案は民主党も賛成する可能性が強まり、早ければ16日にも衆院を通過する見通しとなった。

 修正案は周辺事態法と同様、基本計画は国会の事前承認を得ることを原則とし、緊急の場合には事後の承認とするとの規定を盛り込むことで調整が進んでいる。

 民主党はこのほか、武器・弾薬の輸送を法案から除外することや、武器使用要件を緩和しないことなども与党側に要求しているが、党内では、付帯決議などで一定の歯止めをかけ、法案に賛成すべきだとの意見が強まっている。

 小泉純一郎首相は11日の衆院国際テロ防止・協力支援活動特別委で「武器・弾薬輸送のみならず、自衛隊派遣では、戦闘行為にならないか、武力行使にならないか、慎重に配慮しなければならない」と述べ、民主党の慎重論に配慮する姿勢を示した。

[毎日新聞10月12日] ( 2001-10-12-11:35 )


15日夜に党首会談、テロ法案修正の決着目指す
 小泉純一郎首相は14日昼、首相公邸で自民党の山崎拓幹事長と会談し、テロ対策特別措置法案の修正をめぐり、首相が日帰りの韓国訪問から帰国する15日夜、鳩山由紀夫民主党代表ら野党各党党首と個別に会談、法案成立に協力を要請することで一致した。

 与党と民主党の修正協議は(1)自衛隊派遣の「実施」を国会の事前承認事項とする法案修正を行う(2)武器・弾薬の輸送は付帯決議などで政府が慎重に対処する姿勢を明確にする―方向で調整が進んでいる。政府、与党は民主党の協力を得て、16日に衆院通過、週内に参院へ送付する方針だ。

 首相との会談で山崎氏は「もう時間がない。われわれも乗り出してバックアップしたい。早急に(修正内容を)詰めて、できるだけ早く党首会談を開き、採決にもっていきたい」と早期決着の必要性を強調。首相は「民主党に賛成してもらいたい」と民主党との合意に強い意欲を表明した。〔共同〕


田中外相、「アフガン復興会議」開催に意欲
 田中真紀子外相は15日の衆院テロ対策特別委員会で、アフガニスタンでの和平実現後の取り組みについて「関係機関と協力して、東京でアフガン和平復興会議を開催する用意がある」と表明した。復興後の政治体制をめぐっては「永続的な平和へ、アフガン国民の支持を得た政権が基本になるべきだ」と述べた。


田中外相、APEC閣僚会議欠席
 野上義二外務次官は15日の記者会見で、17日から上海で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会議への田中真紀子外相の出席を取りやめ、代わりに植竹繁雄副大臣が出席すると発表した。テロ対策特別措置法案の国会審議を優先すべきだとした与党側の意見を踏まえた措置。


PKF参画へ武器使用緩和を・官房長官
 衆院テロ対策特別委員会は15日午前、福田康夫官房長官ら関係閣僚が出席して一般質疑を行った。福田長官は現在は凍結されている国連平和維持軍(PKF)本体業務に関連して「日本らしい貢献という範囲で、PKFもやらせてもらえるようにしたい」と述べ、凍結解除に意欲を示した。解除の際には「武器使用規準でふさわしいものが必要だ」とも指摘、テロ対策特別措置法案と同等の規準緩和をしたいとの意向を示唆した。

 長官は日本の国連平和維持活動(PKO)の現状について「全世界で4万人が活動しているなかで日本の要員は0.1%に過ぎない」と指摘。その原因として「日本がさぼっているのではなく、(活動が)制限されているからだ」と説明し、PKOの軍事部門であるPKFへの参画で停戦監視活動などに活動の幅を広げる必要性を強調した。PKO協力法で正当防衛などに限っている自衛隊の武器使用については、被災民や外国の傷病兵など「管理下に入った者」も防護対象に加えたテロ法案並みに規準を緩和すべきだとの認識を示した。自民党の米田建三氏への答弁。


(10/15)首相、韓国大統領に「反省とおわび」表明・緊密な連携確認
  

韓国を訪問し、金大中大統領と握手する小泉首相=15日午前、青瓦台(韓国大統領官邸)〔共同〕

 【ソウル15日=犬童文良】小泉純一郎首相は15日午前、韓国を訪問し、ソウルの青瓦台(大統領府)で金大中大統領と会談した。首相は歴史教科書や靖国参拝問題でぎくしゃくした日韓関係修復への強い意欲を表明。過去の植民地支配に関しても韓国国民への「反省とおわび」の気持ちを伝えた。首相はこの会談を修復への糸口にしたい意向だが、予定していた韓国国会訪問が野党の反対で中止になるなど両国関係は依然として厳しい状況が続いている。

 日韓首脳会談は首相就任後初めて。両首脳は午前10時半から約2時間会談。その後、大統領主催の午さん会でも意見交換した。

 会談で、首相は日本が過去の一時期、韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め「痛切な反省と心からのおわび」を表明した1998年の日韓共同宣言の歴史認識を確認。「二度と戦争を起こさない」と訴えた。

 教科書問題を巡って、首相は事実関係を吟味するが、歴史認識の評価はしない日本の教科書検定制度の仕組みに理解を求め、教職員レベルの日韓交流の推進を訴えた。

 米同時テロについて、両首脳は米軍などのアフガニスタン攻撃への支持で一致。首相は自衛隊の米軍などへの後方支援を可能にするテロ対策特別措置法案を国会提出したことなど日本の対応を説明。テロ対策では日米韓、とりわけ日韓の連携が重要との認識を伝える。来年のサッカー・ワールドカップ(W杯)でのテロ防止も含め両国の情報交換を進めたいとの意向も表明した。

 北方四島周辺水域での韓国漁船などによるサンマ漁を来年から禁止することで日ロ両国が基本合意したことを巡って、大統領は「日ロの領土問題とは全く関係なく、単なる商業的問題だ。韓国の利益が損なわれてはならない」と配慮を要請。首相は、円満な問題解決のため、日韓漁業共同委員会などを通じて真剣に協議を進める考えを示した。

 大統領が進める朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への「太陽政策」(包容政策)を支持する考えも明確にした。


(10/15)歴史認識めぐる首相の発言要旨
  

 小泉純一郎首相が15日午前、西大門独立公園の歴史展示館の視察後に記者団に語った歴史認識などをめぐる発言の要旨は次の通り。

 一、日本の植民地支配が韓国国民に対して多大な損害と苦痛を与えたことに心からの反省とおわびの気持ちをもって色々な展示や施設を見た。首相としてというよりも1人の政治家、1人の人間として苦痛と犠牲を強いられた方々の無念を忘れてはいけないと思った。

 一、外国の侵略、祖国の分断、同胞との戦いなど大きな想像を絶する苦しみに耐えて、民主主義社会として力強く発展していることに心から敬意を表したい。

 一、過去の歴史を踏まえ二度と苦難の歴史を歩まないように協力していかなければならないことを痛感した。

 一、歴史を直視しつつも新しい未来に向かって日韓両国の友好がアジアの発展、世界の安定に寄与できるような友好協力関係ができればいい。

 一、日本と米国は過去に戦争を起こしたが、今や世界で最も友好関係を維持、発展させている。日韓を日米に劣らない素晴らしい友好関係にしたい。(ソウル=犬童文良)

トップページへ戻る

テロ対策:
原発、基地の所在地に機動隊応援派遣へ 警察庁

 警察庁は18日、原子力発電所、米軍基地などを抱える青森、福井、長崎県警に対し、今月中に機動隊計数百人を応援派遣することを決めた。青森には、米軍三沢基地や核燃料サイクル施設、福井には敦賀原発、長崎には米軍佐世保基地の関連施設が多数ある。

 同庁は同日現在、米軍や日本の重要施設約580カ所の警戒を関係都道府県警に指示。米英軍による報復攻撃が始まった今月8日からは、米軍施設が集中している沖縄県警に、中部、九州管区機動隊計約450人を派遣し警戒を強化している。

[毎日新聞10月18日] ( 2001-10-18-18:06 )


対テロ法案:
衆院通過を米政府、「同盟の証」と高く評価  

 【ワシントン佐藤千矢子】米ブッシュ政権は、テロ対策支援法案の衆院通過を高く評価している。空爆が続く現状では、日本の実務的支援への期待というよりは「日米同盟の証(あか)し」を示したという政治的な意味合いが大きい。だが今後、地上部隊の投入、長期戦というシナリオが現実になれば、日本の後方支援に対する要請が強まることも予想される。

 与党と民主党が対立した「国会承認」問題について、米国内では「緊急事態には事後承認で迅速な対応が求められる」(ブリアー国際戦略研究所日本部代表)との受け止め方が大勢。米国が最も気にかけているのは「自衛隊の支援内容を柔軟にしてほしい」(日米関係筋)という点だ。現時点では、米軍が「武器・弾薬の輸送」などを自衛隊に要請する事態は考えにくいが、長期戦を想定して支援内容に柔軟性を確保しておきたいというのが本音だ。

 米国内では「国際テロ封じ込めには憲法9条だけを論じてもらちが明かない」(キャンベル元国防次官補代理)「米国が同盟国への協力要請を強めるのは当然だ」(リンゼー・ブルッキングス研究所研究員)「日本がイージス艦を派遣してくれれば有効だ」(ブリアー氏)など、日本の積極的関与を求める声が強まっている。

[毎日新聞10月18日] ( 2001-10-18-18:54 )


対テロ法案、衆院を通過 野党は反対 月内に成立へ

 米同時多発テロに対する米国などの軍事行動や避難民救済を自衛隊が支援するテロ対策支援法案は18日、衆院本会議で、「国会の事後承認」などを盛り込んだ一部修正案を自民、公明、保守の与党3党などの賛成多数で可決、参院に送付された。また自衛隊の「警護出動」や防衛秘密を漏えいした者への罰則強化を定めた自衛隊法改正案は与党3党と民主党など、不審船への発砲を可能とする海上保安庁法改正案は与党3党と民主、自由、共産各党などの賛成多数で可決された。

 テロ対策支援法案は、米同時多発テロに対する米の軍事行動に対し、自衛隊の外国領域での支援活動などを可能にする内容で、2年間の時限立法。派遣地域は「戦闘が行われていない地域」などに限られ、米軍への物資補給や輸送、傷病兵の治療、避難民の生活支援などが実施できる。武器使用基準も緩和され、難民や外国部隊の傷病兵も防護対象とした。

 政府案に対し、与党3党は、自衛隊派遣後20日以内に国会の「事後承認」を求め、外国での武器・弾薬の輸送は陸上を含まない――とする修正案を提出した。

 野党は民主党がシビリアンコントロール(文民統制)の観点から国会の「原則事前承認」を求める対案を提出。自由党は「法案は解釈改憲」、共産党は「憲法の平和原則に反する」、社民党は「米軍の攻撃は新たな憎しみを生み出す」としていずれも政府修正案に反対した。

 衆院通過を受け、参院は19日に本会議で趣旨説明と質疑を行う。外交防衛、国土交通など3委員会の連合審査による委員会審議入りは23日にずれ込むことになり、法案は月内に成立する見通し。

[毎日新聞10月19日]


野中、古賀氏が退席 対テロ法案採決 起立投票に抗議

 自民党の野中広務、古賀誠の両幹事長経験者が18日の衆院本会議でテロ対策支援法案の採決を起立投票で行ったことに抗議して採決前に退席した。野中氏は採決前に「日本の方向を大きく変える重要法案に対し、自らの氏名を明らかにしないのは政治家のとるべき態度ではない」と記名投票を要望していた。

 本会議で野中氏に続いて退席した古賀氏は「自分の父親は赤紙一枚で召集された。この手の法案には憶病になる」と述べた。

 重要法案採決の与党議員の退席は異例の行動で、「民主党の混乱を突いた橋本派の戦略」(党幹部)という見方が出ている。しかし野中氏は政局がらみの憶測を強く否定し、「重要法案で記名投票を要求してきた民主党がなぜ今回だけ起立を要求するのか」と民主党を批判した。

 一方、民主党ではともに保守系の後藤茂之氏が同法案に賛成、小林憲司氏が採決時に退席した。後藤氏は本会議後、記者団に「今回の新しい枠組みに賛成することが必要だと考えた」と説明した。

 開会直前の代議士会で、鳩山由紀夫代表は「この悔しさをぶつける機会が必ず来る」と冷静な対応を求めていた。保守系議員を中心に鳩山代表と小泉純一郎首相の党首会談の決裂に反発がでていただけに、造反者を最小限に食い止めた形ではある。自衛隊法改正案については旧社会党系の今野東氏が党方針に反し、反対した。

[毎日新聞10月19日]


森前首相をインド特使として派遣へ 小泉首相

 小泉純一郎首相は18日、首相官邸で森喜朗前首相と会い、国際的なテロ包囲網づくりの環境整備のため、首相特使としてインドを訪問するよう要請した。森氏は首相在任中の昨年、インド、パキスタン両国を訪問しており、要請を了承した。来週中にも訪問する。テロ事件関連での特使派遣は、橋本龍太郎元首相などに次いで5人目。

 インドに特使を派遣するのは、同国が、米国の軍事攻撃の要衝であるパキスタンと緊張関係にあるため。両国の関係が不安定になれば、米国などが描くアフガニスタン・タリバン政権崩壊後の戦略に影響が出ることも避けられない。首相は17日、パキスタンのムシャラフ首相と電話で協議し、インドとの緊張緩和に努力するよう要請しており、森氏の訪問はそれを踏まえたものとなる。

 首相は森氏に対し「インドは地理的に大事だ。南西アジアの立場で話し合ってほしい」と要請した。

[毎日新聞10月19日]


テロ対策支援法案 参院で審議入り

 参院は19日の本会議で、米軍などの軍事行動や避難民救済を自衛隊が支援するテロ対策支援法案の政府修正案の趣旨説明と質疑を行い、審議をスタートした。

 小泉純一郎首相は、米同時多発テロに対する日本の対応について、20日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で「わが国の立場を各国首脳に理解いただき、日本として国際社会の責任を果たしていくことを明らかにする」と述べ、テロ対策支援法案に基づく自衛隊派遣に関し、各国の支持を得る考えを強調した。

 質疑では、自民党の加藤紀文参院政審副会長が、APEC首脳会議で「アジア太平洋のテロ包囲網」を強化するよう要望。生物化学兵器がテロ行為に使用される事態に備えて、01年度補正予算での対処を求めた。

 参院は23日に外交防衛、国土交通、内閣の3委員会による連合審査会を開き、本格的審議に入る。月内に成立する見通しだ。

[毎日新聞10月19日]


海自中心に来月派遣 自衛隊活動基本計画 米後方支援

 政府は18日、テロ対策支援法案の月内成立が確実になったことを受け、自衛隊の活動内容を定める基本計画の策定準備に入った。米軍への物資輸送・補給など後方支援を柱とし、具体的にはインド洋の英領ディエゴガルシア島に海上自衛隊の艦船が派遣される見通しだ。9月段階で派遣が見送られたイージス艦も、同法案を根拠に派遣艦船に含める。パキスタンでの医療支援や難民キャンプでの活動は、米国や国連から要請があった段階で対応できるようにする。政府は同法成立後直ちに関係国に調査団を派遣、来月中の基本計画決定と自衛隊派遣を目指す。 

 政府はすでに岡本行夫・内閣官房参与を米国に派遣するなど、基本計画作りを想定して米側と事実上のすり合わせに着手している。20日に中国・上海で行う日米首脳会談では、小泉純一郎首相が支援策の具体化を急ぐ姿勢をブッシュ米大統領に伝える。

 基本計画には、自衛隊の活動内容、派遣地域や期間、部隊の規模、構成、装備などが盛り込まれ、閣議決定を経て、国会に報告される。米軍の展開が流動的なため、計画上の活動期間は「3カ月前後」(政府筋)を軸に検討し、必要に応じて変更される見通し。

 米軍等への支援にあたる協力支援活動は、米軍の行動拠点であるディエゴガルシア島への物資輸送や、同島とインド洋上に展開する米空母部隊の間の燃料、水などのピストン輸送が想定されている。部隊規模は海上自衛隊の補給艦、護衛艦4隻程度で総勢1000人規模になる。政府は9月に最新鋭のレーダーを持つイージス艦を防衛庁設置法に基づく「調査・研究活動」として派遣しようとしたが、与党内から慎重論が相次いだことから見送られた。政府内では同法案に基づく「補給」のため派遣する補給艦を護衛する形での派遣を検討している。

 難民支援を中心とする被災民救援活動では、パキスタン政府や国連の要請に基づき同国への生活救援物資の輸送を中心に検討する。相手国の同意を前提に、航空自衛隊の輸送機や海自の輸送艦でイスラマバードや港湾都市・カラチまで運び、陸路輸送はパキスタン軍が行う案が出ている。基本計画には米兵などの捜索救助活動も盛り込まれる見込みだ。

 政府内では、対米後方支援を柱とする基本計画を先行させ順次変更する考えと、「計画変更のたびに閣議にかけるのは手間がかかる」との理由で当初から包括的な計画を策定する考えと両方があり、今後調整が進む見通しだ。

[毎日新聞10月19日]


諮問会議、補正予算3兆円規模に
 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は19日、2001年度補正予算の骨格を決めた。歳出総額は約3兆円で、このうち雇用対策の充実など「改革先行プログラム」に伴う予算に約1兆円を充てる。首相は諮問会議に先立つ政府・与党政策懇談会で「テロで生じる混乱を見極めないといけない。デフレスパイラルなど危機的な状況になれば、柔軟かつ大胆に対応しなければならない」と述べ、第二次補正予算の編成に含みを残した。

 政府は補正予算の規模を2兆7000億円程度とする原案をまとめていたが、与党から規模や配分を巡って不満が相次いだことにも配慮し、内容を見直した。改革先行プログラムに関連する予算のうち、雇用対策関連の経費を当初予定の5000億円から5400億円程度に増やす。国内テロや狂牛病への対策費としては新たに500億円以上を計上する方針で、最終的には700億円を超える公算が大きい。


小泉首相、タリバン後へ布石 周辺国に特使派遣 外交面で米支援狙い

 小泉純一郎首相は上海での日米首脳会談などを通じて、アフガニスタンをめぐる(1)軍事プロセス(2)政治(和平)プロセス(3)復興プロセス――の3段階のうち、政治、復興両戦略で日本が積極的に貢献すると表明した。だが政府はすでに、アフガン周辺国に首相・外相経験者らを首相特使として派遣。タリバン政権が崩壊した後に始まる外交交渉への布石を着々と打ち始めている。

 政府が「タリバン後」の新政権作りへの積極的な関与を打ち出したのは、アフガン和平が21世紀の国際政治の動向にとって重要な意味合いを持っていることに加え、これまで中央アジア地域に足場を持っていなかった米国を補完することで、日米同盟をより強固にする狙いがあるためだ。

 米同時多発テロ事件の発生後、首相はまず9月下旬に杉浦正健副外相をパキスタンに派遣。これに先立ち同国に対する4000万ドルの緊急経済援助を実施すると発表した。米国としては、タリバン政権と緊密な関係にあったムシャラフ大統領にアフガン攻撃を容認させる必要があり、日本は外交面で米国をアシストした形だ。

 同じくアフガニスタンの隣国であるイランと、イスラム社会の大国でありウサマ・ビンラディン氏の母国サウジアラビアには高村正彦元外相、周辺のエジプト、アラブ首長国連邦には橋本龍太郎元首相がそれぞれ首相特使で派遣された。米国はイランとの関係が疎遠だが、日本はハタミ大統領の改革路線を支持しており、日本が米国に代わってイランとのパイプを保つ必要があった。

 さらにアフガニスタンの北に位置するタジキスタンには、ロシアと太いパイプを持つ鈴木宗男前自民党総務局長が首相特使で訪れ、今月8日のラフモノフ大統領との会談後に約200万ドルの緊急援助を決めた。同国はタリバンと対立する北部同盟と密接な関係があり、米国の軍事戦略上も重要な位置を占めている。

 5人目の首相特使として近くインドに向かうのは森喜朗前首相。インド・パキスタンの対立関係がパキスタンの対米協力路線に悪影響を与えないよう、インドへの働きかけも必要と判断したためだ。政府は98年の核実験以来、インド、パキスタン両国に対して新規の経済援助を凍結する経済制裁を実施してきたが、森氏のインド訪問を機に一時的な制裁解除も検討している。

 日本はカンボジア和平で主導的な役割を果たした実績があるものの、アフガン和平は周辺国だけでなく、米国、ロシア、中国などの大国の利害も絡み、極めて複雑な展開になることが予想されるだけに、日本の総合的な外交力が試される場になりそうだ。

[毎日新聞10月23日]


米後方支援、自衛艦隊1000人規模派遣

 米英軍のアフガニスタンに対する軍事行動を支援するため、政府が実施する自衛隊部隊の派遣計画の骨格が26日、明らかになった。(1)インド洋上の英領ディエゴガルシア島にある米軍基地に燃料や物資を輸送し、洋上で米軍艦艇に補給するため、海上自衛隊の補給艦二隻と護衛艦3,4隻で構成する1000人規模の艦隊を派遣する(2)航空自衛隊のC130輸送機3-6機を派遣する――が柱。米側が要請しているイージス護衛艦の派遣は政府・与党内でなお調整中で、小泉純一郎首相が最終判断する方向だ。

 自衛隊による米英軍への補給、輸送などの後方支援を可能にするためのテロ対策特別措置法案は26日夕、参院外交防衛委員会で自民、公明、保守の与党三党などの賛成多数で可決され、週明け29日の参院本会議で可決、成立する見通しだ。(日経)