46119 ドキュメント(9) カンダハル攻防戦

米大統領 イラク攻撃を示唆 大量破壊兵器廃棄査察拒否を理由に

 【ワシントン布施広】ブッシュ米大統領は26日、大量破壊兵器廃棄をめぐる国連査察を拒否し続けているフセイン・イラク大統領を名指しし「査察官の入国を許可し、大量破壊兵器を開発していないことを示す必要がある」と指摘、イラクが拒否した場合は軍事行動も辞さない構えを示した。米政府内では最近、アフガニスタン攻撃終了後、イラク攻撃を唱える意見が噴出しているが、ブッシュ大統領が同時多発テロとは直接関係のない国連査察を盾に、攻撃を示唆したのは初めて。

 また、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)などを念頭に「大量破壊兵器の開発によって他国を脅かす者」は責任を問われると述べ、実際にテロに関与しなくても、大量破壊兵器の開発目的によっては、テロとの関連で懲罰対象とする「新見解」を示した。

 ホワイトハウスでの会見で大統領は「テロリストをかくまい、養う者もテロリスト」と従来の見解を繰り返した後、「世界を恐れさせるために大量破壊兵器を開発する者も責任を問われる」と語った。

 イラク査察の枠組みは、米英軍によるイラク大規模空爆(98年12月)によって完全に宙に浮き、99年以降、既に3年近くに渡り、イラクは査察受け入れを拒否している。イラクが査察を拒み続けた場合の対応を問われたブッシュ大統領は「彼(フセイン大統領)は、いずれ分かる」と述べ、軍事的懲罰を検討していることを強く示唆した。

 さらに北朝鮮に対しても、核査察の受け入れやミサイル輸出の停止などを改めて求め、米朝対話再開の条件として「彼らが大量破壊兵器を開発しているかどうかを知る必要がある」と述べた。

 一方、アフガン攻撃について大統領は「米国を攻撃した人々を狩り出す危険な段階に入った」と述べ、ウサマ・ビンラディン氏らを捜索する中で、米兵の犠牲も覚悟しなければならないと訴えた。また、テロの容疑者を軍事法廷で裁く米国の方針は、欧州諸国などの批判を浴びているが、大統領は「戦時には大統領が軍事法廷を設置する選択肢を持っている」と述べ、正しい決定と強調した。

[毎日新聞11月27日


アフガン:オマル師「持ち場を死守しろ」とラジオで指示

 【クエッタ(パキスタン中西部)井田純】ロイター通信は28日、タリバンの最高指導者オマル師が、タリバン兵士などにラジオで「持ち場を死守しろ」と呼びかけたと報じた。オマル師はメッセージの中で、兵士らに「占領地を放棄せず戦え」と要求。さらに「これは部族間の問題ではなく、イスラムの問題だ」と発言したという。タリバンの最後の拠点カンダハルを放棄せず、「聖戦」続行を求めたものとみられる。

 一方、同通信によるとカンダハルとパキスタン国境の間にあるタクテポルの争奪戦で先週、部族集団がタリバン兵士160人を処刑したと報じた。

[毎日新聞11月28日] ( 2001-11-28-23:44


(11/28)アフガン代表者会議、4派の対立が表面化
  北部同盟、多国籍軍を拒否

 【ボン28日=小林明】ドイツのボンで開催されているアフガニスタン暫定政権協議は28日、2日目の折衝に入り、反タリバン四会派の意見対立が表面化してきた。北部同盟のカヌニ内相は同日の記者会見で、国連が検討する多国籍治安部隊の派遣を改めて拒否した。暫定政権の閣僚ポストの配分をめぐっても激しい駆け引きが続いており、新政権の枠組み合意にはなお時間がかかる見通しだ。

 国連のベンドレル事務総長特使は28日の記者会見で「困難な道の始まりであり、短い期間ですべての合意を得るのは不可能」と説明。ザヒル・シャー元国王を象徴的な国家元首とする構想については「四派は元国王を尊重しており、何らかの役割を期待しているが、詳細はこれからだ」と語った。

 国連は27日、ボン協議の期間を3-5日に明確に設定した。調整難航による混乱長期化を避ける狙いだ。暫定行政機構の期間も3-6カ月としたのも同機構が各派の権力抗争の場となって新政権樹立が遅れるのを防ぐ意図とみられる。国連は国民の合意を得るため来春、アフガンの伝統的意思決定機関「ロヤ・ジルガ(国民大会議)」を開いて暫定政権を承認する手続きも提案している。

 閣僚ポストをめぐる駆け引きは激しい。首都を押さえた北部同盟が首相や内相、国防相をはじめ過半数の閣僚ポストを要求しているとされ、元国王派らが強く反発。15とされた閣僚ポスト数が協議の過程で大幅に増える可能性もある。

 政権樹立の総論では一致しても、人事など各論での思惑の隔たりは大きく、治安体制も含めた合意への展望はまだ開けていない。

 北部同盟は「詳細にわたる協議は首都カブールで開く第二ラウンドの会合に持ち越す」姿勢だ。カヌニ北部同盟内相は記者会見で、「治安はアフガンの部隊で守りたい」と強調、国連が提案する多国籍軍の派遣受け入れを明確に否定した。閣僚の割り振りや政権の権限など具体像については、今回のボン協議で最終結論に達しないとの見通しが強まりつつある。

 国連は提案通りの日程で新政権への移行が進むのならアフガン支援を継続するとの意向を非公式に示し、早期合意を促している。外交筋は「日程が順守されなければ援助を停止するという、けん制の意味も込められている」と解説する。



ビンラディン氏 「アフガン東部に潜伏」 パキスタン情報機関

【イスラマバード春日孝之】米軍が同時多発テロの首謀者としてアフガニスタンで追跡を続けるウサマ・ビンラディン氏が、パキスタン国境に隣接する東部ホースト州の洞くつに潜伏している可能性が極めて高いことが分かった。パキスタン軍情報機関(ISI)筋が29日、毎日新聞に明らかにした。

 ビンラディン氏はアフガン戦争(79〜89年)時代、アラブ義勇兵として、洞くつが密集する同州一帯を拠点に活動、地勢を熟知しており、文字通り「最後の砦(とりで)」と覚悟を決めた可能性が高いという。軍情報機関筋は「ビンラディン氏の命運は尽きたも同然。数週間で決着する可能性もある」と指摘している。

 ISI筋によると、アフガン東部ジャララバード近郊の複数の住民が26日ごろ、ビンラディン氏が南方のホースト方面に車で移動しているところを目撃した。この情報は、ただちにパキスタン側のあるパシュトゥン部族に流れ、部族長が使者を送り「越境すれば保護する」と伝えたが、同氏は断ったという。

 同氏は米海兵隊が25日、南部カンダハル近郊に入ったため、東部に脱出、200〜300人規模の警護を大幅に縮小し、妻子とも別行動を始めたようだという。

 ホースト州は現在、親タリバンのパシュトゥン部族ユノス・ハリス氏の支配下にある。ホースト州のパキスタン国境に近いヤワル地区は険しい山岳部で、地下には大小数百もの天然の洞くつがあるという。これらの洞くつは深く、米軍が空爆で使用している地中貫通爆弾(バンカーバスター)は効果がないとみられる。

 【イスラマバード春日孝之】ウサマ・ビンラディン氏が潜伏している可能性が極めて高いとみられるアフガニスタン東部ホースト州には自然の洞くつ群があり、ビンラディン氏は96年にアフガンに潜伏して以来、これらの洞くつ内を改造、要さい化したと言われている。

 パキスタン軍情報機関(ISI)筋によると、洞くつはソ連軍侵攻に伴うアフガン戦争(1979―89年)中、アフガン・ゲリラと、ゲリラを支援・指揮していたISIが、作戦会議や要人会談など「前線本部」として使っていた。当時のジアウル・ハク大統領も訪れたという。

 洞くつの中には約400人を収容できる「公会堂」のような大洞くつもあり、それぞれの洞くつは迷路のように連絡トンネルで結ばれているという。

[毎日新聞11月30日]


ビンラディン氏 パキスタン支援者の保護申し出断る

 【イスラマバード春日孝之】ウサマ・ビンラディン氏を支援するパキスタンのイスラム武装勢力筋は29日、毎日新聞に対し、同氏に約3週間前、パキスタン・パンジャブ州のチューリスタン砂漠にあるアラブ人居住区で保護すると申し出たが、同氏がこれを断っていたことを明らかにした。

 同砂漠は首都イスラマバードの南約400キロにあり、インド国境に近い。砂漠の中の都市ラヒムヤ・ハーン近郊にはアラブ首長国連邦が造った滑走路がある。同砂漠で狩猟するために訪れるアラブ王族や豪商が利用しているという。

 空港近郊にはアラブ人の大豪邸地区があり、アラブ人商人の往来も多い。このため同氏の支援組織は「変装すれば見破られない」とアフガンからの゛脱出゛を勧めたという。

[毎日新聞11月30日


貿易センタービル爆破 犯人の息子を反タリバンが拘束 米紙報道

 【ワシントン布施広】29日付け米紙ロサンゼルス・タイムズは、ニューヨークの世界貿易センタービル爆破テロ(93年)に関与し終身刑の判決を受けたアブデルラーマン師の息子が、アフガニスタンの反タリバン勢力に拘束された模様だと報じた。

 ウサマ・ビンラディン氏が率いる組織「アルカイダ」のアハメド・アブデルラーマン幹部(35)で、アフガン国内でテロリスト訓練施設を運営していたという。拘束された場所などは不明。アハメド氏はビンラディン氏の居場所を知っている可能性があり、拘束が事実かどうか注目される。

 また、同紙は米当局者の話を引用し、アルカイダの主要メンバー20人のうち7人が米軍の空爆で死亡した伝えた。死亡者の中には同時多発テロの首謀者とされるモハメド・アテフ副官をはじめ、エジプト出身の「モハメド・サラ」「タリク・アンワル・アルサイード・アハマド」が含まれているとしている。

 空爆開始の時点で、アフガンにはビンラディン氏の支援組織「アルカイダ」の戦闘員が4000〜5000人いたが、うち数百人は死亡、現在数千人が戦闘態勢にあるという。米当局者はアルカイダは大きな打撃を受けたが、なお米軍にとって危険な存在だと指摘している。

[毎日新聞11月30日


アフガン:カンダハル明け渡し交渉拒否 タリバン

 【クエッタ(パキスタン中西部)井田純】アフガニスタンのタリバンは29日、南部の本拠地カンダハルなどの明け渡しを求めるパシュトゥン部族勢力に交渉拒否を通告した。部族勢力は先週末、カンダハル・スピンブルダック間のタリンコットで、投降を拒否したタリバン兵約170人を殺害したとされ、タリバン側が態度を硬化させたとみられる。タリバン消息筋は「部族側との大規模な衝突に発展する可能性が高い」と指摘している。

[毎日新聞11月30日] ( 2001-11-30-12:14


アルカイダ:幹部6人が米軍の空爆で死亡か

 米NBCテレビは29日、ウサマ・ビンラディン氏のテロ組織アルカイダの幹部35人のうち6人が米軍のアフガニスタン空爆で死亡したと伝えた。

 またAP通信によると、30人以上のタリバン政権幹部のうち、12人が死傷、もしくは投降した。

 米軍による空爆ではこれまでに、アルカイダの最高幹部で米中枢同時テロの首謀者とされるモハメド・アテフ副官らが死亡している。(ワシントン共同)

[毎日新聞11月30日] ( 2001-11-30-12:14


ビンラディン氏捕捉:情報提供外国人に査証発給 米司法長官

 【ワシントン佐藤千矢子】アシュクロフト米司法長官は29日の会見で、同時多発テロの容疑者ウサマ・ビンラディン氏らの捕捉につながる有力情報を提供した外国人に、米国での滞在や就労を認める査証(ビザ)を発給すると発表した。ビンラディン氏らの所在情報に関しては米軍が史上最高の2500万ドル(約30億円)の懸賞金をかけており、ブッシュ政権はなりふりかまわぬ手法でビンラディン氏らの捕捉に全力を挙げている。

 この中で長官は、情報と引き替えに、最高3年間、米国に滞在できるビザを取得できる手助けをすると指摘、「ビザ所持者はその間に米国永住を申請でき、最終的に米国市民になれるかもしれない」と呼びかけた。

 米政府は先に、テロ事件のハイジャック容疑者が就学ビザなどで入国していたことを受けてビザ発給規制を強化する方針を打ち出しており、ビザ政策の一貫性について批判も出そうだ。

[毎日新聞11月30日] ( 2001-11-30-12:14


大規模テロによる保険会社破たん防止の法案可決――米下院

 【ワシントン逸見義行】米下院本会議は29日、9月の同時多発テロのような大規模テロ事件が再び起きた場合の保険会社の経営破たんを防止するため、政府の支援策を盛り込んだテロ保険法案を227対193で可決した。ただ、テロ被害者がビル所有者、警備会社など関係者に損害賠償を求めることを禁じる条項が法案に盛り込まれたため、民主党は反対を表明しており、同党主導の上院では、審議が難航しそうだ。

 同法案によると、テロによる支払い保険金が10億ドルまでは全額、保険会社が負担し、10億ドルを超えた分は、9割を政府が、残りを保険会社が負担する。保険会社は200億ドルを上限に、政府が負担した分を保険金支払い後に時間をかけて返済する。法案の期間は原則として1年間。その後は、状況の変化に応じて法律を見直す。

 保険業界は、今回のテロ事件による支払い保険金について400億ドルまでは支払いが可能としているが、大規模なテロが再発すると、対応不可能と主張している。テロ保険に対する政府支援がまとまらない場合は、テロ被害を来年から保険の対象外にする動きが広がっており、議会も年内決着が迫られている。

[毎日新聞11月30日


国連の人道支援が足踏み 武装強盗の横行で

 【ニューヨーク上村幸治】アフガニスタンでようやく再開にこぎつけた国連の人道支援活動が、武装強盗の横行で足踏み状態に陥っている。アナン事務総長も作業難航を認めた。現地の国連スタッフや非政府組織(NGO)関係者からは「人道支援物資を守るための緊急治安対策が必要だ」といった訴えが相次いでいる。

 タリバン軍が撤退し、交戦や空爆の心配がなくなった地域には、国連スタッフが次々に復帰しつつある。ただ、「権力の空白」で無政府状態になった村があるほか、食い詰めた住民や悪質な兵士が略奪に走るケースもあるという。

 世界食糧機関(WFP)報道官は「各地に大変な数の強盗がいる」と説明。すでに物資を運ぶトラック多数が奪われ、運転手2人が殺されたほか、6人のアフガン人職員が行方不明になっているという。

 北部では、ウズベキスタンのテルメズからアムダリヤ川を越える搬入ルートが出来た。しかし、近くの要衝マザリシャリフでは支援物資を運ぶ車両がすべて持ち去られ、国連職員はトラックやタクシーを借りている。

 東部では、パキスタンのペシャワルからカブールへ向かう幹線道路が利用できるようになった。だが、武装した強盗が数キロおきに「関所」を作って通行料を要求したり、支援物資を強奪する事件が相次いでいる。ジャララバードでは、治安維持を受け持つはずの兵士が非政府組織(NGO)や国連の施設を襲う事件も起きた。

 このほか南部カンダハル方面にパキスタンのクエッタから向かうルートや、西部ヘラートにイランから入るルートも確保されたが、いずれも強盗被害が続発。ヘラート方面だけでトラック5台と支援物資185トンが奪われた。

 国連によると、アフガン国民2600万人のうち約600万人が生存の危機に直面し、その数は750万人に増える見込み。国連児童基金(ユニセフ)によると、この冬だけで10万人の乳幼児が死ぬ危険があるという。最も深刻なのは北部山間部で、70万人の住民が寒さの中で孤立している。

 このためWFPは、1カ月で食糧や医療品5万2000トンを輸送する計画を立案。ブルドーザーや除雪車を集めており、飛行機による食糧投下も準備している。

[毎日新聞12月1日]


特別軍事法廷の開設決意を表明――米大統領

 【ワシントン佐藤千矢子】ブッシュ米大統領は29日の演説で、米同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏ら国際テロリストを裁く軍事審問委員会(特別軍事法廷)開設への批判に関して、「大量殺人を計画・実行した者たちは刑事犯罪の容疑者以上だ」と述べて、同法廷で裁く決意を表明した。

 大統領は「米国に戦争をしかける外国人テロリストのために軍事審問委員会という選択肢を用意した」と語った。さらに大統領は「米国は開かれた社会だが、戦争状態にある」として、同法廷の必要性を理解するよう求めた。

[毎日新聞11月30日


(11/30)ビンラディン氏、アフガン東部に潜伏の可能性・米副大統領
  

 【ワシントン30日=池内新太郎】チェイニー米副大統領はABCテレビの番組で29日、ウサマ・ビンラディン氏がアフガニスタン東部のトラボラの山岳地帯に潜伏している可能性を指摘した。同氏を一段と追い詰めたと見られることから米軍はアフガン内の拠点作りを加速、迅速な部隊派遣が可能な態勢作りに動いている。30日はカンダハルの空港を空爆した。

 米中東軍のフランクス司令官はビンラディン氏とテロ組織アルカイダに対する掃討作戦の重点を南部のカンダハル周辺と東部のジャララバードの南方に位置するトラボラ周辺の2地域に置いていることを既に明らかにしている。副大統領は「彼(ビンラディン氏)はかなり安全な場所と考えている地下洞くつにいると思う。彼がよく知っている地域だ」と述べ、トラボラ周辺の可能性を示した。

 軍事専門家などによるとトラボラには1980年代に旧ソ連軍と戦ったアフガン・ゲリラが築いた巨大な要さいがある。米軍の空爆開始後の戦闘でジャララバードを追われたタリバン兵も多数潜伏しているとみらる。

 米メディアによると、カンダハル周辺とともにジャララバード近郊にも米軍連絡将校が入り、現地の反タリバン勢力と接触しているという。こうした動きに加え、フロリダ州タンパにある中東軍司令部についても迅速な意思決定を可能にするため、より現場に近い中東地域に前線司令部を設ける案が検討されており、カタールなどが候補に浮上している。

 一方、米軍の拠点作りはカンダハル近郊で海兵隊が前線基地を設けたのに続き、北部でも陸軍山岳師団が展開を開始する形で進んでいる。

 海兵隊の前線基地はタリバンが唯一堅持している主要都市であるカンダハルの南西約130キロの地点にある。反タリバン勢力が制圧した飛行場を利用し、29日までに約1000人が展開を終えた。

 北部では首都カブール北方のバグラムとマザリシャリフの2カ所の飛行場に合わせて100人近くの陸軍山岳師団が隣国のウズベキスタンから降り立った。ウズベク南部の基地には約1000人の同師団が駐留しており、さらに増強する見通しだ。


アフガン:「タリバン指導部は戦死か捕虜」米国防長官

 【ワシントン布施広】ラムズフェルド米国防長官は30日、アフガニスタン・カンダハルの攻防について、米国はタリバン最高指導者オマル師の免責や避難路確保につながる政治的取引には「強く反対する」と述べ、タリバン指導部は戦死か捕虜かの選択肢しかないことを強調した。

 長官はオマル師の進退が「行き詰まった」と述べ、カンダハル陥落も時間の問題との見解を示した。しかし、同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏や「アルカイダ」の戦闘員を捜索する米軍の任務は今後、さらに危険になると指摘。「(米兵が)捕虜になったり殺されたりするかも知れない」と述べ、先に確認された米中央情報局(CIA)要員の死亡に続き、新たな犠牲者が出るのは避けられないとの認識を示した。

 一方、アルカイダのアハメド・アブデルラーマン幹部(35)とみられる人物が拘束されたとの報道について、長官は多くの捕虜の中から重要人物を見つけ出す難しさを強調、「現時点では、アルカイダの幹部を発見できていない」と否定的な発言を行った。

 チェイニー副大統領は29日、アハメド幹部拘束の報道を「信用できる」と指摘、別の米高官も「拘束を確認した」と発言していた。

[毎日新聞12月1日] ( 2001-12-01-10:17


アフガン:ロシア兵士が続々とカブール入り 存在感誇示が狙い

 【カブール大木俊治】アフガニスタンの首都カブールで、ロシアの「兵士」やトラックが今週初めから続々と市中心部に集結している。非常事態省から人道支援目的のため派遣されたとされるが、カブールに多数のロシア人が姿を見せたのは、アフガニスタンに侵攻した旧ソ連軍が89年に撤退後初めて。タリバン政権崩壊後の新政権協議が進む中、ロシアの存在感を示す狙いとの見方が強い。

 ロシア兵らがカブール市内に現われたのは、米軍がカンダハルで攻撃を開始した先月26日。その後も連日、カブール北方のバグラム軍事空港に機関銃で武装した警備兵や輸送車両、大量の食糧やテント、医薬品を積んだ貨物機が到着し、カブール中心部の約100メートル四方の空地に集結している。珍しい光景に人だかりが絶えず、ロシア当局は30日、治安上の理由から物資や人員を人目につかない別の場所に移動した。

 ロシア外務省のオブロフ特別代表(大使級)によると、市中心部の空地に一般市民向けの病院を建設するほか、近く市民向けに医薬品の配給を始める予定。また、市南部の旧ソ連大使館は90年代の内戦で破壊され、現在は多くの難民が定住して使用できないため、当面、別の場所に臨時代表部を設ける一方、到着した人員の一部を旧大使館の復旧作業にあてる計画だ。

 オブロフ代表は「彼らは人道支援物資の警護要員であり、軍の兵士は1人もいない」と強調する。だが、当地の西側軍事情報筋は「アフガンはもともとロシアの支配圏。米英には渡さないという意思を示すデモンストレーションではないか」とみている。

[毎日新聞12月1日] ( 2001-12-01-10:51 )


アフガン:北部同盟ナンバー2が暫定政権協議を離脱し帰国

 【ボン岸本卓也】アフガニスタン暫定政権協議に参加している北部同盟のカヌニ内相は30日、北部同盟代表団のナンバー2を務めていたナンガルハル州知事のハジ・アブドル・カディルル氏が協議を離脱して帰国したことを明らかにした。自らが属するパシュトゥン人の意向が同協議で十分に反映されていないと不満を漏らしていたようだという。

[毎日新聞11月30日] ( 2001-11-30-19:44


アフガン:タリバンと部族勢力が激しい戦闘 数百人の死者

 【クエッタ(パキスタン中西部)井田純】アフガニスタンの原理主義勢力タリバンは30日、本拠地カンダハル市からパキスタン国境に通じる各地で、部族勢力側と激しい戦闘に入った模様だ。

 現地からの情報によると、国境近くのスピンブルダックをはじめ、タクタプルなど街道沿いの都市で衝突。クエッタの部族勢力筋によると、カンダハル市から約20キロのメダンでは、双方合わせて数百人の死者が出ているという。

 部族勢力は米海兵隊のカンダハル州展開と並行し、今週初めから同州各地のタリバン拠点を制圧。これに伴って、タリバンにカンダハル市の明け渡しを求めていたが、29日にタリバン側がこれを拒否、全面対決の方針を示していた。

[毎日新聞11月30日] ( 2001-11-30-18:26


アフガン:オマル師「持ち場を死守しろ」とラジオで指示

 【クエッタ(パキスタン中西部)井田純】ロイター通信は28日、タリバンの最高指導者オマル師が、タリバン兵士などにラジオで「持ち場を死守しろ」と呼びかけたと報じた。オマル師はメッセージの中で、兵士らに「占領地を放棄せず戦え」と要求。さらに「これは部族間の問題ではなく、イスラムの問題だ」と発言したという。タリバンの最後の拠点カンダハルを放棄せず、「聖戦」続行を求めたものとみられる。

 一方、同通信によるとカンダハルとパキスタン国境の間にあるタクテポルの争奪戦で先週、部族集団がタリバン兵士160人を処刑したと報じた。

[毎日新聞11月28日] ( 2001-11-28-23:44


米大統領:景気後退を認める 対策法案の可決を要求

 【ワシントン逸見義行】ブッシュ米大統領は1日午前(日本時間2日未明)のラジオ演説で「3月から景気後退が始まったという公式の宣言が今週あった」と述べ、民間団体、米経済調査局(NBER)の判定を容認する考えを初めて示した。大統領は「多くの米国民はこれを冷静に受け止めている」と指摘し、失業増大など、景気後退が米国民の生活に悪影響を及ぼしていることを率直に認めた。

 そのうえで「今こそ、失業した労働者を支援し、景気を回復させるために行動することが必要だ」と述べ、米議会が早急に景気対策法案をとりまとめ、可決するよう要求。下院は1000億ドルにのぼる同法案を可決したが、上院で与野党の意見が対立しているうえ、下院案の規模に米政府は難色を示したままだ。

 また大統領は7月から実施した大型所得税減税に触れ「夏の終わりには、景気回復の兆しがあった」と説明し、3月からの景気後退への政策対応を怠っていないことを強調。「9月11日のテロ攻撃が経済を直撃した」と述べ、テロがこれまでの景気対策の効果を吹き飛ばしたとの認識を示した。

[毎日新聞12月2日] ( 2001-12-02-01:00


タリバン内部で近く大規模な分裂 UAE紙

 アラブ首長国連邦紙「ガルフ・ニュース」のインターネット版は3日付で、アフガニスタンのタリバン勢力内部で近く大規模な分裂が起こる模様だと報じた。タリバン最高指導者オマル師らの強硬路線に反発する元政権幹部らが一派を形成し、反タリバン勢力やパキスタン側との接触を活発化させているという。

 タリバン筋が同紙に明かしたとこによると、12人以上の元タリバン政権幹部や高官らが、タリバン放棄に向けた動きに出ており、反タリバン勢力やパキスタン高官らと積極的に接触を図っている。これらの離脱勢力とパキスタン高官らとのパイプ役を務めているのは、アフガンの政治勢力「イスラム革命運動」の党首、モハマド・ナビ・モハマディ氏だという。

 モハマディ氏の息子、ムル・アガ氏は同紙に対し、「複数のタリバン高官らがモハマディ氏とコンタクトを取っており、話し合いを通じて(アフガン)危機の解決を探っている。彼らは戦いを好んでいない」と述べた。また、この離脱勢力が少人数のグループに分かれてモハマディ氏のもとへ訪れて来ており、ひとつのまとまったグループとしては接触がないことも明らかにした。

 タリバン筋によると、これら分離勢力の大半は、タリバンに加わる以前はイスラム革命運動派として、ロガール州やパクティア州で活動していた。イスラム革命運動は、タリバンの母体とされている。

 同筋によるとオマル師らタリバン幹部は、これら元政権幹部らによる離脱の動きを好ましく思っていないという。

 あるタリバン筋の人物は離反勢力について、「この変節者どもは不実にもタリバン指導層を裏切った。彼らは、オマル師らタリバン幹部がカンダハルで困難に直面しているというときに、たもとを分かとうとしている」と述べた。

 この離反勢力には、旧タリバン政権のザヒード副外相やモタキ教育相らが含まれており、一部はすでにパキスタンに移り住んでいるという。(了)


ロシアがカブールに簡易病院開設

 【カブール大木俊治】ロシアは2日、アフガニスタンへの人道支援のためカブールに簡易病院を開設した。かつての敵・旧ソ連の流れをくむロシアの援助だけに、大勢の市民が珍しそうに見物に訪れた。

 ロシア非常事態省によると、病院は大型のテント式。18人の医師を含む34人のスタッフが勤務し、1日に約100人の患者を診ることができる。

 市中心部の空き地にある病院は野戦病院のような光景。ロシアは大使館の再開準備を進めるなどアフガンでの影響力確保を急いでいるが、アフガン国内には依然、警戒感も残っている。

[毎日新聞12月3日


「テロから文明を守る戦い」駐日米国大使 ハワード・H・ベーカー 英文はこちら

 9月11日の同時多発テロで、ニューヨークの世界貿易センターでは約80カ国の人々の命が失われた。米国を襲ったテロの使者たちは全世界を攻撃したのである。そして世界は、これに反応して立ち上がった。

 北大西洋条約機構(NATO)は史上初めて、条約第5条の集団的自衛権を発動した。国連安全保障理事会や国連総会、米州機構、アジア太平洋経済協力会議、イスラム諸国会議機構、アラブ連盟、その他の何十もの国際機関が、このテロ攻撃を非難する決議や声明を出した。

 日本など親密な友好国はもちろん、それまで米国と対立していた国々さえ、この重要な戦いへの支援を申し出た。世界は結束してテロに対抗している。

 しかし、まだいくつかの誤解が残っている。

 テロとの戦いは、イスラム教に対する戦いではない。米国は宗教的な寛容を実現すべく、ひたすら努めてきた社会である。米国人のうち数百万人はイスラム教徒である。イスラム教は人命を尊重し、大量殺戮を容認しない。テロリストはイスラムの教えを冒涜している。

 テロとの戦いは、アフガニスタンの人々との戦いでもない。国際テロ組織「アルカイダ」とその支援者タリバンに対する戦いなのである。アルカイダは少数の過激派であり、米国の敵というだけでなく、その背教的な観念を拒むすべてのイスラム諸国の敵でもある。タリバンはイスラム教の正統ではない。アラーの意思や人々の意思を代表していない。人々はタリバンの狂信的な支配の下で、苦しみ、命を失ってきたのだ。

 テロとの戦いは、政策や貧困によって引き起こされたのではない。それは、私たちが体現する自由や価値観ゆえに文明世界全体を憎む犯罪者たちに起因するのである。

 テロとの戦いは、「報復」攻撃ではない。報復という表現は誤っている。私たちはテロリストたちが狙うような何の罪もない人々を標的にはしない。民間人の生命のいかなる損失も遺憾に思う。米国は軍事施設とテロリストの施設だけを標的にしている。米軍はアフガニスタンに潜伏しているテロリストを追い詰めるにあたり、民間人の死傷を避けるために並々ならぬ対策をとっている。

 テロとの戦いは単なる軍事作戦ではない。9月11日以前から米国はアフガニスタンの人々に対する人道支援の最大の提供国だった。その後も支援を続けている。そして、アフガニスタンとその周辺全域が抱える問題の政治的、外交的、経済的解決のために、すべての文明諸国とともに不断の努力を重ねている。ブッシュ大統領が述べた通り、「アフガニスタンに、すべてのアフガン国民の利益を代表するリーダーシップが登場するのを私たちは見たい」のである。

 アフガニスタンでの軍事作戦の終結後も、私たちの前にはテロとの長い戦いが待っている。しかし私は、日本がこの努力に加わった決断に勇気づけられている。小泉純一郎首相は、7項目の支援策や後方支援の艦船の派遣などに偉大なリーダーシップを発揮された。日本政府は懸案だった爆弾テロ防止条約の批准手続きを取り、テロ資金供与防止条約に署名した。

 日本はこのテロとの戦いが米国だけの問題ではないことを理解している。それは日本の問題であり、中国の問題、ロシアの問題、アフガニスタンの問題であり、要するに人類の問題なのである。それは文明を守るための戦いであり、私たちは必ずや勝利するであろう。

【訳・竹川正記】


THE WAR ON TERROR

U.S. Ambassador to Japan
Howard H. Baker, Jr.


Some 80 nations lost citizens in the World Trade Center on September 11. The messengers of terror who invaded the United States attacked the entire world. And the world responded. NATO invoked Article V for the first time in its history. The United Nations Security Council, the UN General Assembly, the Organization of American States, APEC, the Organization of Islamic Conference, the Arab League and dozens of other organizations issued resolutions and statements condemning this assault. Close friends like Japan, and even former adversaries, offered their support in this great struggle. The world is united against terror.

Misconceptions remain. The war on terror is not a war against Islam. The United States is a society devoted to religious tolerance. Millions of Americans are children of Islam, a religion that respects human life. Islam does not sanction mass murder. Terrorists defile the teachings of Islam.

The war on terror is not a war on the Afghan people; it is against al-Qaeda and its Taliban sponsors. Al-Qaeda is an extremist minority, enemies not only of the United States, but also of all Islamic states that reject its perverted ideology. The Taliban is not a legitimate expression of Islam. It does not represent the will of Allah or the will of the people, who have suffered and died under its fanatical rule.

The war on terror was not caused by policy or poverty. It was started by criminals who hate the entire civilized world because of the freedoms and values we represent.

The war on terror is not a "retaliatory" attack. That description is wrong. We do not target innocent people, as the terrorists do. We regret any loss of civilian life. The U.S. is targeting only military and terrorist sites, and U.S. military forces are taking extraordinary measures to avoid civilian casualties, as they hunt down the terrorists hiding out in Afghanistan.

The war on terrorism is not just a military campaign. Even before September 11, the United States was the greatest donor of humanitarian assistance to the people of Afghanistan. We continue to provide this assistance, and are working tirelessly with all civilized nations to build political, diplomatic and economic solutions to the problems of Afghanistan and the entire region. As President Bush said, "We would like to see leadership arise in Afghanistan which represents the interests of all the Afghan people."

We face a long struggle against the forces of terror even after the military campaign in Afghanistan is over, but I am heartened by the resolve with which Japan has joined the effort. Prime Minister Koizumi has shown great leadership with his seven-point plan and the dispatch of support vessels. The Japanese government ratified the UN convention on terrorist bombing, and signed the International Convention for the Suppression of the Financing of Terrorism. Japan understands that this war against terror is not an American problem. It is a Japanese problem, a Chinese problem, a Russian problem, an Afghan problem, in short, a human problem. It is a war for the preservation of civilization, and we will prevail.


米エンロンが破産法申請、過去最大の会社倒産

米テキサス州ヒューストンにあるエンロンの本社ビル(右)と別館(左)〔著作権:AP.2001〕

 【シカゴ2日=千葉研】通信事業の失敗や簿外債務の膨張で深刻な経営危機に陥った米総合エネルギー会社のエンロンは2日、ニューヨークの連邦破産裁判所に米連邦破産法11条の適用を申請し、会社更生手続きに入った。グループ全体の債務残高は11月中旬時点で約160億ドル(約1兆9000億円)、資産総額は9月末時点で618億ドル。1987年のテキサコ(現シェブロンテキサコ)の破産(資産総額359億ドル)を上回る米市場で過去最大の会社倒産となった。

 エンロンが破産申請したのは本社を含むグループ14社。裁判所への提出資料によると、エンロン本社の資産総額は247億ドル、債務残高は131億ドルで、破産申請した14社合計の資産残高は500億ドル弱になる。簿外債務を含めた総債務残高は400億ドルにのぼるとの指摘もある。エンロンは7-9月期決算で通信、水道事業の合理化に伴う10億ドル超の巨額損失を発表。簿外金融取引に伴う損失や12億ドルにのぼる自己資本減額を明らかにした。格付け低下に伴い簿外取引で追加的な債務返済義務も発生。信用不安で本業の電力、天然ガスの卸売り事業でも取引が細り、資金繰りに行き詰まった。


(12/6)オマル師、カンダハル明け渡し決定・前駐パキスタン大使会見
  

 【イスラマバード6日=野沢康二】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンのザイーフ前駐パキスタン大使は6日、イスラマバードで記者会見し、最高指導者オマル師が南部の本拠地カンダハルを反タリバン勢力に明け渡すことを決めた、と述べた。タリバン兵士は7日から武器を引き渡し、明け渡し作業は数日間で終了する見通し。

 既に政権として崩壊しているタリバンがカンダハルを明け渡せば最後の拠点を失うことになりタリバンは完全に崩壊する。米国は同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の身柄確保や同氏の傘下にあるテロ組織アルカイダの壊滅に全力を挙げる。

 アフガン・イスラム通信によると、タリバンの報道官は「オマル師は地元パシュトゥン人の指導者であるナキブラ師にカンダハルを明け渡すことを決定した」と述べた。明け渡し条件などの詳細は不明。

 パウエル米国務長官は6日、ブリュッセルで記者会見しカンダハルの明け渡しについて「時間の問題だ」と指摘した。

 アフガニスタン暫定政権の議長(首相)に内定しているハミド・カルザイ氏はCNNのインタビューに応じ、カンダハル明け渡し交渉は7日から「2,3日で完了する」との見通しを明らかにした。

 同氏はウサマ・ビンラディン氏とタリバン最高指導者オマル師の居場所は「わからない」とし、「オマル師への恩赦は認めない」と強調した。ザイーフ氏はオマル師の処遇については「命を守るように努力すべきだ」と語り、生命を保障するよう求めた。

 タリバンは、米軍の空爆の支援を受けた反対勢力との攻防で、犠牲者を増やすことを避けたとみられる。今後、山間部でゲリラ戦を挑むとの見方もある。


タリバン:カンダハルから撤退 オマル師の安全保証は情報錯綜

 【イスラマバード福原直樹、クエッタ(パキスタン南西部)中坪央暁】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンは6日、南部の本拠地カンダハルの明け渡しについて地元武装勢力と続けてきた交渉で最終合意に達した。最高指導者オマル師をはじめとするタリバン勢力は同日午後、カンダハル州北方のウルズガン州に撤退した。これにより、タリバンはアフガンでの実効支配地域をほとんど失った。山岳地帯のゲリラ戦を通じて武装勢力としての命脈を保つ狙いとみられる。 

 アフガンの暫定行政機構議長(首相に相当)に決まったハミド・カルザイ氏の近親者が毎日新聞に語ったところでは、カルザイ氏はカンダハル北部でタリバン幹部と交渉し、同日夕(日本時間同日夜)、タリバンが町を明け渡すことで合意した。カルザイ氏は引き続き武器の引渡し条件を詰めているが、タリバン側は「武器はカルザイ氏や米側ではなく、地元部族の長老に引き渡す」と話しているという。

 この近親者によると、カンダハルのタリバン部隊には同日現在、ウサマ・ビンラディン氏の支援組織「アルカイダ」所属の外国人兵士約2000人が残っている。

 タリバン側はこれまで、オマル師やタリバン幹部の身の安全の保証や裁判にかけないことなどを明け渡し条件として要求していた。カルザイ氏は6日、米CNNのインタビューにカンダハル撤退について「数日で終了する」との見通しを示した上で、「タリバンは国を破壊し、市民を殺した。この国を去り、裁判にかけられるべきだ」との考えを示した。

 一方、タリバンのザイーフ元駐パキスタン大使はAP通信に「カルザイ氏側はオマル師の身の安全を保証した。7日にも明け渡しを始める」と述べており、情報が錯綜している。

[毎日新聞12月7日] ( 2001-12-07-01:32


タリバン:オマル師赦免しない 米国防長官

 【ワシントン布施広】ラムズフェルド米国防長官は6日、アフガニスタン南部カンダハルの明け渡し交渉に関して、イスラム原理主義勢力タリバンの最高指導者オマル師の赦免は容認しないと述べる一方、同師の身柄を米国に引き渡すことを絶対の条件とはしない意向を示した。米政府はオマル師のカンダハル撤退を確認しておらず、多数のタリバン勢力が残存していることを前提に、無血での明け渡し実現のため一定の柔軟姿勢を示したものとみられる。

 カンダハルの明け渡し交渉はタリバンと、22日に発足する暫定行政機構の議長(首相に相当)に決まったハミド・カルザイ氏派のパシュトゥン人勢力などが続けてきた。ラムズフェルド長官は会見で「米国が受け入れにくい形で交渉が終わるとは思わない」と述べた。交渉を通じてオマル師に「尊厳ある生活」が保証されたとの情報があるものの、長官は「それが米国の条件に合致するかと言えば、答えはノーだ」と述べた。

 フライシャー米大統領報道官も同日、「テロリストをかくまう者は裁きにかける」との原則を確認。オマル師も裁判の対象か、との問いには「そうだ」と答えた。実際にオマル師が裁判にかけられるかどうかは明らかでない。

 一方、ラムズフェルド長官は、米軍がカンダハル攻略に十分な地上兵力を持たず、反タリバン勢力の交渉を尊重せざるを得ない点を指摘。オマル師の身柄の米国への引き渡し以外の選択肢も「排除しない」として、交渉を見守る姿勢を示した。

[毎日新聞12月7日] ( 2001-12-07-10:19


タリバン:元大使がゲリラ抗戦表明

 【イスラマバード春日孝之】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンのザイーフ元駐パキスタン大使は6日夜、イスラマバードの自宅で毎日新聞の電話インタビューに応じた。タリバンが本拠地カンダハルから撤退した理由について、「カンダハルに固執すれば、米国は空爆により罪のない市民を殺りくし続けた」と述べ、今後はゲリラ戦で米国に徹底抗戦を続けると表明した。

 タリバンは一時、全土の9割以上を支配していたが、6日のカンダハル撤退で実効支配勢力としての地位を失った。だがザイーフ元大使は「タリバンは神の意思に従い闘争を続ける。アフガン社会の一部であり続ける」と強調した。

 22日に発足する予定の反タリバン連合(北部同盟)中心の暫定政権に関しては「アフガン人ではなく、米国がお膳立てした米国の政権だ。アフガンに和平をもたらすことができるか、お手並みを拝見したい」と語った。

 米国によると、同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏は今、アフガン東部に潜伏している。同氏の所在について、元大使は「カブール陥落(11月13日)以降、連絡がつかない。すでにアフガンを離れたのではないか」と逆に問いかけた。

 米国は9月11日の同時多発テロ後、同氏の身柄引き渡しを要求し続け、これを拒否したタリバンを「テロ支援勢力」とみなして軍事力による壊滅作戦を進めてきた。

 しかし、ザイーフ元大使は「ビンラディン氏がテロに関与した証拠を示せば要求に応じると約束したのに、最後まで示さなかった。米国の本当の目的は、我々のイスラム統治システムと、この国を破壊することだった」と改めて非難した。

[毎日新聞12月7日] ( 2001-12-07-10:05


タリバン、カンダハルから撤退 実効支配地域失う

 【イスラマバード福原直樹、クエッタ(パキスタン南西部)中坪央暁】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンは6日、南部の本拠地カンダハルの明け渡しについて地元武装勢力と続けてきた交渉で最終合意に達した。最高指導者オマル師をはじめとするタリバン勢力は同日午後、カンダハル州北方のウルズガン州に撤退した。これにより、タリバンはアフガンでの実効支配地域をほとんど失った。山岳地帯のゲリラ戦を通じて武装勢力としての命脈を保つ狙いとみられる。 

 アフガンの暫定行政機構議長(首相に相当)に決まったハミド・カルザイ氏の近親者が毎日新聞に語ったところでは、カルザイ氏はカンダハル北部でタリバン幹部と交渉し、同日夕(日本時間同日夜)、タリバンが町を明け渡すことで合意した。カルザイ氏は引き続き武器の引渡し条件を詰めているが、タリバン側は「武器はカルザイ氏や米側ではなく、地元部族の長老に引き渡す」と話しているという。

 この近親者によると、カンダハルのタリバン部隊には同日現在、ウサマ・ビンラディン氏の支援組織「アルカイダ」所属の外国人兵士約2000人が残っている。

 タリバン側はこれまで、オマル師やタリバン幹部の身の安全の保証や裁判にかけないことなどを明け渡し条件として要求していた。カルザイ氏は6日、米CNNのインタビューにカンダハル撤退について「数日で終了する」との見通しを示した上で、「タリバンは国を破壊し、市民を殺した。この国を去り、裁判にかけられるべきだ」との考えを示した。

 一方、タリバンのザイーフ元駐パキスタン大使はAP通信に「カルザイ氏側はオマル師の身の安全を保証した。7日にも明け渡しを始める」と述べており、情報が錯綜している。

[毎日新聞12月7日


ドスタム将軍、暫定政権への参加を拒否

 【イスラマバード支局】アフガニスタンの反タリバン連合(北部同盟)など4派が5日に合意した暫定政権構想について、北部同盟のウズベク人勢力を率いるドスタム将軍は6日、参加拒否を明言した。4派のうちペシャワル・グループの指導者も同日、合意への不満を表明した。懸念されていた「タリバン後」の亀裂が、早くも表面化した。

 アフガン北部マザリシャリフを拠点とするドスタム将軍は、ロイター通信の衛星電話取材に対し「暫定政権をボイコットする。正当な政権ができるまではカブールへは行かない」と述べた。

 将軍は理由として、暫定政権で自派に外相ポストを要求したものの、農相など経済ポストを割り当てられた事実を挙げ、「屈辱的だ」と語った。将軍は、アフガン北部地域への暫定政権当局者の立ち入りを拒否するとも述べた。

 一方、パシュトゥン人主体のペシャワル・グループの指導者で「アフガン・イスラム民族戦線」党首のアフマド・ギラニ氏はイスラマバードで記者会見。暫定政権の合意について「外相、内相、国防相の主要閣僚が北部同盟のラバニ派(タジク人勢力)に与えられ、バランスを欠く」と批判した。ボンで開かれた4派代表者会議には、息子のハミド・ギラニ氏が出席していた。

[毎日新聞12月7日


ベーカー米大使 明確な証拠なければイラクなど攻撃せず

 米国のベーカー駐日大使は6日、東京で開かれたアジア調査会(会長・松永信雄元駐米大使)主催の講演会で、米国がアフガニスタンに続きイラクなどを攻撃する可能性について「(ブッシュ政権は)テロ支援の明確な証拠がない限り、新たな懲罰的行動を起こさないだろう」と述べた。

 また、自爆テロとイスラエルの報復攻撃で和平崩壊が懸念されるパレスチナ情勢では「米国は双方に平等な立場で仲介に臨んできた」と強調し、「仲介役として道義的な義務がある」と、今後も積極的に和平仲介を進める姿勢を示した。

 一方、日本に対しては「憲法上の制約を乗り越えた艦船派遣などの迅速な決定に感謝し、アフガン復興支援の主導的な役割を期待する」と表明。さらに「テロリストが高度な兵器を手にし安全が脅かされる中、日米同盟にも広い視野が必要だ」と述べ、日本に国際安全保障への一層の貢献を求めた。 【竹川正記】

[毎日新聞12月7日


カルザイ氏、米誤爆で負傷? AP通信報道

 【北米総局】アフガニスタンで22日発足する暫定行政機構の議長(首相に相当)に決まったハミド・カルザイ氏が5日、同国南部カンダハルの近郊で起きた米軍機の誤爆で軽傷を負った。AP通信などが米国防総省当局者の話として伝えた。

 この誤爆は、米兵2人が死亡、20人が負傷したと伝えられたB52爆撃機によるもの。その後、米兵は特殊部隊員で死者は3人と分かった。反タリバン勢力の5兵士も死亡した。

 カルザイ氏は着弾地点の近くで米特殊部隊員と会っていたという。爆弾で直接負傷したのではなく、巻き上がった小石などが当たった模様だ。

 カルザイ氏は米、英などのテレビの取材に、空爆での負傷を否定しているが、危機一髪だったことは間違いないようだ。

 同氏は英テレビ局のインタビューには「けが人がこのように話せますか?」と答え、「今、カンダハルから20キロの地点にいる。私の周りは平穏だ」と付け加えた。

[毎日新聞12月7日


アフガン:カルザイ氏がタリバン支配の終えんを明言

 【クエッタ(パキスタン中西部)中坪央暁】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンは7日も、本拠地カンダハル市から撤退を続けている。アフガン暫定行政機構の議長(首相)に就任するハミド・カルザイ氏はAP通信に「タリバン勢力による支配は終わった」と語り、タリバン支配の終えんを明言した。

 アフガン・イスラム通信は7日、地元部族勢力への武器引き渡しを開始したと報じた。しかし、どの勢力が武器を引き継ぎ、カンダハル支配を受け継ぐのかなど情報が錯そうし、タリバン後のカンダハル情勢はむしろ不透明感を増している。

 タリバンとのカンダハル明け渡し交渉に当たったハミド・カルザイ氏の弟アハメド・カルザイ氏によると、カンダハル市のほかにカンダハル、ヘルマンド、ザブルの南部3州も地元部族に明け渡すことで合意した。すでにヘルマンド州の一部からタリバン部隊は撤退したという。

 また、7日にはタリバン支配下の対パキスタン国境の町スピンブルダックが陥落、地元部族に明け渡された。

 しかし、カンダハル市をめぐっては、略奪などが相次ぎ、無秩序状態になりつつあるとの情報がある。今後、パシュトゥン部族同士の衝突に発展する可能性も含め、情勢は混沌(こんとん)としている。

[毎日新聞12月7日] ( 2001-12-07-23:54


アフガン:タリバンの無線機器は日本製 オマル師も使用

 【イスラマバード福原直樹】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンの通信網や兵たん部門の実態が7日、分かった。アフガンで戦ったタリバン司令官や外国人義勇兵ら10人が毎日新聞に証言したもので、タリバンは3系列の無線連絡網を持ち、最高指導者オマル師はその一系列を使用している。軍事指令のほか、戦闘中にも宗教的指導を行っているという。無線機器はすべて日本製だが、傍受が可能で、米軍は通信内容を把握しているとみられる。

 義勇兵らの証言を総合すると無線通信は、(1)全国連絡用(2)車両搭載用(3)個人用の3系列。

 機器はすべて日本製で、パキスタン北西部ペシャワルなどで売られている密輸品も購入していた。車両搭載用無線のアンテナは28000ルピー(約5万6000円)だった。全国連絡用の無線機は、200人の兵士を統率する現場司令官に1台ずつ支給されている。

 オマル師は全国連絡用の無線を使用し、午前7〜9時の間に指令を流していた。同師は細い声でゆっくり「必要な金や車、武器を報告せよ」「空爆の対象になるので、車の移動は避けよ」など軍事的指令や「祈れ」「正直であれ」「善行をせよ」などの指導もしている。無線では、ウサマ・ビンラディン氏や支援組織「アルカイダ」との連絡は、行われなかったという。

 一方、タリバンはアフガン南東部のスピンブルダックに20人規模の物資供給基地を設置。各地からカンダハル経由で物資請求が行われ、軍靴や食料などを全土にトラックで運んだという。だが、供給基地は11月下旬に空爆で破壊された。武器の保管所はカンダハルにあるといい、取材に応じた大部分のタリバン兵士が、内戦時代に獲得したロシア、中国製の武器を使用していると証言した。

     ◇    ◇

 【イスラマバード澤田克己】アフガニスタンのタリバン司令官らが毎日新聞に証言した3系列の無線連絡網は、日本製の民生用機器を転用した可能性が高いもので、世界最高水準の電子戦能力を誇る米軍にとって通信妨害(ジャミング)は簡単だ。しかし空爆開始後もタリバンの無線網は機能し続けている。米軍はタリバンの無線連絡をあえて妨げずに傍受し、ウサマ・ビンラディン氏の所在などの情報収集を狙っている可能性が高い。

 証言によると、200人の部隊を率いる司令官に1台ずつ、日本製の無線機が配備されていた。数万人規模のタリバン軍の連絡用に使うには少なくとも数百台が必要だ。入手し易さを考えると、高度な秘話装置などは備えていない民生用機器と考えられる。

 カブールで情勢分析を行ってきた軍事専門家の平可夫氏によると、民生用無線機を使った場合、米国の偵察衛星や偵察機は簡単に傍受でき、タリバンの交信内容は完全に把握されたはずという。

 一方、米軍はEA6Eなどの電子作戦機で空から妨害電波を発信し、無線連絡を不可能にすることができるが、今回はこれを控えている模様だ。

 平氏は「イラク軍の通信網を完全に麻痺させた湾岸戦争と今回の戦争は全く違う。米は情報戦に重点を置いている」と指摘。米軍は通話傍受を通じて、ビンラディン氏の所在▽同氏の支援組織「アルカイダ」とタリバンの関係▽タリバン部隊の状況▽タリバンの最高指導者オマル師の動向――などを探っていると分析する。

 米軍は空爆開始から2カ月後の現在もビンラディン氏の所在を特定できていない。タリバン司令官らは「ビンラディン氏やアルカイダは無線通信していない」と話しており、平氏は「ビンラディン氏がタリバンとの無線連絡を一切絶ち、タリバンもビンラディン氏に関する情報を無線で流すのを停止した」と見る。

 英国情報筋によると、ビンラディン氏とオマル師は子供らを伝令役に連絡を取り合っているという。11月中旬の時点で、米英軍は両者の間を伝令が片道2―3日かけて行き来していたという情報をつかんでいた。

[毎日新聞12月7日] ( 2001-12-07-23:58


アフガン:事前調査隊がカブール入り 多国籍部隊

 【カブール井上卓弥】国連がアフガニスタンに派遣する多国籍部隊の事前調査隊が8日、カブール入りした。軍、警察、司法関係者の代表計7人で、国連の報道官によると、食糧や資材の供給などの兵たん関連や治安状況を調査する。

[毎日新聞12月9日] ( 2001-12-09-00:44


アフガン:タリバン兵力5000人以上 パキスタン機関元長官

 タリバンやアフガン情勢の今後について、パキスタン軍情報機関(ISI)のハミド・グル元長官に聞いた。【イスラマバード春日孝之】

 ――タリバンは消滅したとの見方があります。

 ◆山岳部に散っただけだ。米軍のカンダハル空爆で兵士約1万人が死亡したが、まだ精鋭5000〜6000人がおり、国内各派勢力の中で最大兵力を維持している。ゲリラ戦に戦車などは不要だ。カラシニコフ銃(自動小銃)で事足りる。資金も潤沢だ。

 ――タリバンは今後、どう動きますか。

 ◆当分は暫定政権の行方を息を潜めて眺めているだろう。今のアフガンは多くの元ムジャヒディン(イスラム聖戦士)勢力が群雄割拠し、一つの政府が治められる状況にはない。米国など外国勢力が関与を強めれば、反発する勢力が武装闘争を始める。タリバンはそうした状況を待つだろう。

 ――オマル師は?

 ◆タリバンは組織名を変える可能性がある。指導者も当然、代わるが、オマル師はいつも組織内に居続けるだろう。

 ――米軍の空爆後、タリバンとヘクマティアル元首相が連携する動きがありました。

 ◆タリバン撤退は内戦の終わりを意味しない。新たな内戦の始まりだ。アフガン北半分はイスマイル・カーン(支配地域4州)▽ファヒーム(6州)▽ドスタム(4州)▽ハリリ(3州)らが支配し、南半分にはハリスやヘクマティアルらの勢力もいる。タリバンが、どの勢力と連携しても不思議はない。

[毎日新聞12月8日] ( 2001-12-08-23:53 )


アフガン:まずオマル師拘束目指す 米軍

 カンダハルの明け渡しにより、米軍がタリバンの最高指導者オマル師とウサマ・ビンラディン氏の捜索に専念する態勢が整った。ラムズフェルド米国防長官は8日付ワシントン・ポスト紙との会見で、オマル師はカンダハル市北方の山岳地帯を含む広い意味での「カンダハル地域」にいるとの見方を示したが、ビンラディン氏については既にアフガンを出国した可能性も排除しなかった。

 米軍としては、まずオマル師を拘束し、供述からビンラディン氏の所在を特定したいところだ。

 米軍はオマル師の身柄拘束と米国内での裁判を目指しているが、オランダ・ハーグの国際司法裁判所で裁く選択肢も浮上している。オマル師を同時多発テロの直接的な「共犯」と見なすなら米国内、タリバン政権下の民衆抑圧や「人道に対する罪」を問題にするなら国際司法裁となる可能性が強い。

 22日に暫定政権の首班に就任するハミド・カルザイ氏は、米国との関係が深い。実質的な後ろ盾とされる米国は暫定政権の安定を図るためにも、局地的に抵抗を続けるタリバン勢力やビンラディン氏の支援組織「アルカイダ」の戦闘員を徹底的にたたく方針だ。 【ワシントン布施広】

[毎日新聞12月8日] ( 2001-12-08-23:45


アフガン:支配放棄し機会うかがうタリバン

 アフガニスタンの原理主義勢力タリバンは、本拠地カンダハルを明け渡したのを最後に統治組織としての機能を失った。最高指導者オマル師を含む核心集団は市街地など「平地」の支配を放棄した。しかし「戦い」が終わったわけではない。米軍はウサマ・ビンラディン氏やオマル師の捜索を強化する構えだ。アフガン国内各派の確執が、内戦へと発展する可能性も否定できない。【イスラマバード小松健一、春日孝之】

 ◆タリバンの戦略

 「タリバン兵はみな武装解除して市民生活に戻った」。カンダハル明け渡し交渉の中心人物で、アフガン暫定政権の首相役を果たすことになるハミド・カルザイ氏の近親者は、毎日新聞の電話取材にそう答えた。

 だが実際には、多数のタリバン兵が自動小銃などを手にしたまま山岳地帯へと消えた。カルザイ氏とともに明け渡し交渉に参加したナキブラ元司令官は一時、タリバン部隊を率いた人物で、武装解除したはずのタリバン兵の一部を自派に組み込んだとの情報もある。

 タリバン消息筋は、カンダハル撤退は約3週間前から協議されてきた予定の行動だったと証言する。撤退の理由は、タリバンが居続ければ米軍の空爆も続き、今は親タリバン感情の強い住民の支持もいずれ失うとみたからだという。また、現時点で戦力を投入しても、米軍と反タリバン勢力の結束を強めるだけとの判断があり、抵抗を控えているともいう。

 パキスタン英字紙ニューズのラヒムラ・ユスフザイ・ペシャワル支局長は「タリバンは今、ゲリラ戦を行う余力はない。タリバンの軍事的影響力は消滅した」と語るが、同時に「タリバンは慎重に国内情勢を見て、息を吹き返す機会をうかがっている」と指摘する。

 ◆オマル師はどこに?

 オマル師の所在をめぐり、さまざまな憶測が乱れ飛んでいる。しかし、オマル師がカンダハル北方の山岳部に逃れたのは確実だ。情報が錯そうする背景には、カンダハル市の支配権をめぐる部族勢力の権力闘争も絡んでいる。

 パキスタン軍情報機関(ISI)筋によると、オマル師は6日午後、側近のハッサン・カンダハル州知事ら幹部とカンダハル州北方のウルズガン州の山岳部に移動した。

 その後、米国の複数の高官は「カンダハルにいる」との見方を示し、英国では「身柄拘束」の報道も出た。

 こうした中、カンダハル市統治をめぐり、地元部族のグル・アガ元カンダハル州知事が、ナキブラ元司令官とハミド・カルザイ氏に反発し、巻き返しを始めた。

 グル・アガ元知事の近親者は8日、毎日新聞の電話取材に「オマル師はナキブラ元司令官とカンダハルにいる」と述べたが、ISI筋は「敵対するナキブラ元司令官を米軍が攻撃するようニセ情報を流している」と指摘した。

[毎日新聞12月9日] ( 2001-12-09-01:01


日EU首脳会談:アフガン復興、テロ対策で協調

 【ブリュッセル三岡昭博】小泉純一郎首相は8日午前(日本時間同日夜)、欧州連合(EU)のフェルホフスタット議長(ベルギー首相)、プロディ欧州委員長とブリュッセル市内の迎賓館で会談した。双方はアフガニスタン復興に向け日本とEUが協力していくことで一致するとともに、会談後にテロ対策での共同歩調を盛り込んだ「テロに関する日EU共同宣言」を発表した。また日EU間の協力関係を政治課題や安全保障問題にまで拡大する行動計画「共通の未来の構築」が採択された。

 アフガン問題についてフェルホフスタット議長は「よい復興計画を日本とEUで作っていきたい」と呼びかけたのに対し、首相も「二度とアフガンがテロの温床にならないよう支援していきたい。日本は歴史的にアフガンと敵対的な関係はなく、素直な気持ちで復興に参加する」と応じた。

 対テロ共同宣言は、テロ根絶を目指す関連条約の早期締結などに向け、日EU協力を進めるとともに、アフガンやその周辺国の安定に向けた政策対話を打ち出した。また議長は来年1月に東京で開かれる復興支援閣僚級会議の成功に向け努力したいとの考えを表明した。

 日EU協力のための行動計画は、平和と安全の促進、地球規模の問題及び社会的課題への挑戦など重点4目標、21項目。地球規模の問題では、京都議定書の02年発効に向け「すべての国の実効性ある参加を求めるための協力」を行うことを明記。また狂牛病被害など、効率優先の農業やバイオ技術の応用が引き起こす食品の安全性への脅威について「包括的対話と迅速な情報の流れ及び多国間協力を促進する」ための共同行動をとることをうたった。

 【ブリュッセル三岡昭博】8日の日・欧州連合(EU)首脳会談で合意されたテロに関する共同宣言の骨子は次の通り。

・米国へのテロ攻撃を国際社会全体への挑戦として強く非難する。

・あらゆる国際的なテロ防止関連条約を可及的速やかに発効させる。

・テロと闘う米国などの軍事行動に確固たる支持を表明する。

・アフガニスタンの和平実現、復興に向け以下の協力を行う。

 (1)アフガニスタンおよび周辺国の平和と安定を目指した政策対話と連携の強化(2)同地域における難民および避難民に対する積極的な人道支援実施(3)アフガニスタン復興支援とパキスタンなど周辺国に対する支援

・米テロ事件が世界経済に与える影響を最小限に抑え、状況の変化に対応して適切な措置を講ずる。

[毎日新聞12月9日] ( 2001-12-09-00:10


アフガン復興に積極協力 日・EU首脳協議 米を支持 テロ撲滅へ共同宣言

 【ブリュッセル8日=大谷次郎】小泉純一郎首相は八日午前(日本時間同日夜)、ブリュッセルのエグモン宮で、欧州連合(EU)議長国であるベルギーのフェルホフスタット首相、プローディ欧州委員会委員長と第十回定期首脳協議を行った。双方は国際テロ防止やアフガニスタン復興支援での協力や、世界経済の減速傾向に対して共同歩調をとることを確認。テロ撲滅に向けた「テロに関する日・EU共同宣言」と「日・EU協力のための行動計画」を採択した。

 テロに関する共同宣言は、九月の米中枢同時テロを「国際社会全体に対する直接の挑戦」として非難し、米国などの軍事行動に「確固たる支持」を表明。アフガニスタンや周辺国の支援などについて協力していくことを打ち出した。

 また、行動計画は今年からスタートした「日欧協力の十年」を踏まえ、(1)平和と安全の促進(2)経済・貿易関係の強化(3)地球規模の問題・社会的課題への挑戦(4)人的・文化的交流−の四つの重点目標を列挙。地球温暖化防止のための京都議定書の二〇〇二年発効に向けた努力や朝鮮半島やバルカン地域での協力など二十一分野での取り組みを盛り込んだ。

 小泉首相は協議で「周辺国や関係国と協力して支援していきたい」と述べ、日本がアフガン復興支援に積極的に取り組む考えを表明。フェルホフスタット首相も「アフガン復興のため日本と協力していきたい」と同意した。

 また、双方は十七日からブリュッセルで開かれる「アフガニスタン復興支援運営委員会」と来年一月下旬に東京で予定される閣僚級会合がともに成功するよう緊密に協力することを確認した。

 フェルホフスタット首相は小泉首相が進める構造改革を支持する姿勢を示すとともに、世界経済における日本の重要性を指摘した。

         ◇

 【共同宣言骨子】

 一、米中枢同時テロを国際社会全体に対する挑戦として強く非難

 一、テロ防止関連条約の速やかな発効が重要。国連の役割を強調し、あらゆるレベルでの連帯を強化

 一、テロと戦う米国などの軍事行動に確固たる支持を表明

 一、アフガニスタン和平の実現、政治的解決、復興に向けて積極的に協力

 一、宗教とテロとの関係を否定し、多様な宗教と文化間の寛容と理解の重要性を再確認

 一、テロが世界経済に与える影響を最小限に抑えるために協力

 (ブリュッセル 大谷次郎)(産経)


タリバン:カンダハル撤退を完了 山岳武装勢力に転落

 【イスラマバード小松健一】アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンが、本拠地カンダハルからの撤退を完了したことが8日、関係筋の情報で分かった。これでタリバンは住民への統治機能を維持していた地域をすべて失った。かつて国土の9割を実効支配していたタリバンは、主に山岳地帯に潜む武装勢力へと転落した。

 タリバン撤退後のカンダハル統治について、グル・アガ元カンダハル州知事の側近は8日、毎日新聞の電話取材に対し「アガ氏がシューラ(評議会)によって知事に任命された」と語った。

 22日に発足するアフガン暫定政権の首相役に決まったハミド・カルザイ氏は7日、カンダハル明け渡し交渉を取り仕切ったナキブラ元司令官が主導権を握る形での共同統治を決めた。しかしアガ氏がカンダハルに部隊を進め、事実上のクーデターを起こした。

 報道によると、アガ氏の部隊は軍施設にいるナキブラ氏を包囲し一触即発の緊張が続いているという。一方、カンダハルの消息筋は「ナキブラ氏は依然としてカンダハルの実権を握っている」と述べ、アガ、ナキブラ両氏の権力闘争を巡る情報は錯そうしている。

 アガ氏は7日夜、約4000人の部隊を率いて知事公舎を占拠した。

 3氏はいずれもパシュトゥン人。アガ氏は親タリバンのナキブラ氏がカンダハルの実権を握ることに反対し、同氏のカンダハルからの退去を求めている。アガ氏のこれらの要望にカルザイ氏が同意したとの情報もある。

[毎日新聞12月9日] ( 2001-12-09-01:11


ビンラディン氏:母親が「息子に神の救いを」 サウジ紙に語る

 【カイロ支局】サウジアラビア紙「アルマジナ」は7日、同国出身で、米同時多発テロ事件の首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の母親のインタビューを掲載した。匿名の母親は「息子の考えや行動は認めないが、息子には怒っていない。神が正しい道に導き、救うことを祈っている」と語った。

 時事AFPによると、母親はまた「全ての母親と同じように、息子に満足し、息子がいることに喜びを感じている」と述べた。

 ビンラディン氏の父には4人の妻がいるが、同氏を育てた義母が話したとみられる。同氏はテロ活動に関与したことを理由に90年、サウジアラビアを国外追放された。

[毎日新聞12月8日] ( 2001-12-08-21:07


アフガン:「タリバン免責ありえない」 仏大統領

 【ストックホルム福井聡】ユーゴスラビアを訪問中のシラク仏大統領は7日、タリバンがカンダハルを撤退したことについて「今後の問題は、テロリストが自らの犯罪にどう責任を取るかだ、免責や妥協はありえない」と述べた。

 また、大統領は「タリバンの崩壊は民衆からの支持がなかった証拠だ。しかし、テロリストに対する闘いはまだ終わっていない。これは民主主義と我々の価値を守る戦いだ」とした。

[毎日新聞12月8日] ( 2001-12-08-20:36


(12/7)米大統領、タリバン崩壊を確認・アルカイダ壊滅に自信  

 【ワシントン7日=春原剛】ブッシュ米大統領は7日、アフガニスタン情勢を巡り「われわれの軍隊はアフガンを解放するために送られ、作戦は成功しつつある」と述べ軍事行動の成果を強調した。タリバン支配の終焉(しゅうえん)を確認するとともに、米同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の身柄捕捉や、テロ組織アルカイダの壊滅という作戦の目的達成に強い自信を示した。

 ブッシュ大統領はビンラディン氏らが支配下に置くのは「わずかな洞くつだけとなった」と強調。「アルカイダの指導部は米国を『張り子の虎』とバカにしたが、それは虎がほえる前のことだった」などと述べた。今後の作戦については「困難で危険な仕事が残っている」として最終局面に入った軍事作戦を慎重に遂行する姿勢も示した。

 ビンラディン氏らアルカイダ幹部の居所については、地中の秘密基地に隠れていると指摘。米特殊部隊がアルカイダの秘密基地を「一つ一つ探し出し、テロリストのネットワークを粉々にするだろう」と言明した。

 これに関連して、フランクス米中東軍司令官は7日の記者会見でビンラディン氏らの消息について、所在地を絞り込みつつあるものの「いまどこにいるかは正直言って定かではない」と述べ、場所の特定にまでは至っていないことを明らかにした。

 同司令官は、多数の米特殊部隊が集結しているアフガン東部のトラボラ周辺にアルカイダ幹部が潜伏している可能性が高いとの見方を表明。現時点では米軍がパキスタンや反タリバン勢力、北部同盟と連携を保ちながら、これら幹部の退路を断ち、包囲網を狭めている状況だと説明した。


(12/7)米大統領、対テロ日米連携を強調・真珠湾攻撃60周年記念式典で演説  

 「かつての敵国は今や最も素晴らしい友好国となり、協力してテロと戦っている」――ブッシュ米大統領は7日(日本時間8日)、真珠湾攻撃60周年記念式典で演説し、テロ撲滅に向けて日米が連携して取り組んでいることを強調した。

 大統領は「テロリストはファシズムの継承者だ」と指摘。真珠湾攻撃と9月の同時テロをともに「自由への攻撃」と位置づけ、「60年前と同様、米国は忍耐強く断固たる決意で臨み、執ように自由を追求していく」と訴えた。

 ただ、真珠湾攻撃への言及では「敵による攻撃」としただけで日本を名指しすることを避け、「60年前の苦い思い出は過ぎ去り、太平洋での戦いは歴史となった」と表明。アフガニスタン軍事作戦に参加している米海軍に対する海上自衛隊の支援に触れながら「同盟国である日本と日本の人々に感謝している」と日米同盟のアピールに力点を置いた。

 式典はアラビア海からアフガン作戦に加わり、約1カ月前にバージニア州ノーフォークの海軍基地に帰還した空母エンタープライズの艦上で行われた。(ワシントン=池内新太郎)