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米軍特殊部隊、地上作戦を開始 米紙電子版報道
【ワシントン吉田弘之】19日付の米紙ワシントンポスト(電子版)は米国防総省高官の話として、米軍特殊部隊がアフガニスタン南部のタリバン政権支配地域で地上作戦を開始したと報じた。同時多発テロ事件に端を発した米軍のアフガン攻撃は、空爆開始以後、最大の転換点を迎え、新たな段階に突入した。
ロイター通信も18日夜、同省高官が特殊部隊による地上作戦の開始を確認したと報じた。高官の話では、特殊部隊投入の目的は、米中央情報局(CIA)が行っているアフガンの多数派民族パシュトゥン人の指導者をタリバン政権から引き離すための工作を拡大、支援することだという。
現在のところ、アフガンに投入された特殊部隊は少人数で、湾岸戦争(91年)のような大規模な地上戦に発展することはないという。しかし別の高官は、新たな特殊部隊が近く追加投入され、偵察や空爆の標的の確定作業のほか、場合によってはタリバン軍やウサマ・ビンラディン氏のテロ組織「アルカイダ」に対する直接攻撃もありうると述べた。
[毎日新聞10月19日]
「必ずカブール落とす」 北部同盟前線基地ルポ
【ジャバルサラジ(カブール北方)大木俊治】アフガニスタン北部を支配する反タリバン連合(北部同盟)の基地パンジシール渓谷のジャバルサラジに18日入った。カブールまでは70キロ。攻略の拠点になる。数十キロ離れた前線からは、時折砲弾を放つ音が響く。町はタリバン撃退を目指す機運と緊張に包まれていた。
記者はタジキスタンとの国境の町ホジャパファウディンから四輪駆動車や大型トラックを乗り継ぎ、ファイザバードを経由して6日間かけて到着した。
途中の山岳地帯では、切り立ったがけ沿いの悪路が続いた。すでに岩山の山頂は白く雪化粧し、夜間は氷点下に冷え込む。パンジシール渓谷の手前には標高約4500メートルの峠があり、車を降りて徒歩で越えた。
この道路は北部同盟の兵員や武器弾薬を輸送するルートにもなっており、ムジャヒディン(イスラム聖戦士)を荷台に大勢乗せた旧ソ連製大型トラック「カマズ」を途中で何度も追い越した。
兵士らは、タロカンやマザリシャリフの攻略に向けた北部前線での戦闘に4カ月間派遣され、交代のためパンジシールへ戻る途中だった。パンジシールの手前で会った兵士、ホンオゴール君(19)は「必ずカブールを攻略する。我々に困難はない」と胸を張った。
テロで死亡した同盟の指導者、マスード将軍の故郷、バザーロク近郊では、将軍の墓地を建設中で、多くの住民が花を手に墓参に訪れていた。レンガ造りの塔状の廟を建てる計画という。墓地の前には、将軍の演説文が掲げられていた。「私の目標はアフガニスタンの独立。ただそれだけだ」
[毎日新聞10月19日]
APEC:首脳宣言と反テロ声明採択し、閉幕
【上海・大高和雄】アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は21日夕、首脳宣言と反テロ声明、上海アコード(合意)を採択して閉幕した。本来、経済問題を討議するAPECで、反テロ声明のような政治的アピールをまとめるのは前例がない。9月11日の米同時多発テロ以降、主要国の首脳が一堂に会するのはこの場が初めてで、政治、経済両面で各国が結束してテロに対抗する強い決意を示した。
会議には議長役の江沢民・中国国家主席のほか、小泉純一郎首相、ブッシュ米大統領やプーチン露大統領ら20の国・地域の首脳が出席。台湾は、代表選定をめぐる中国とのあつれきから欠席した。
首脳宣言は「テロと戦うAPEC参加国の共同の決意を明確で強いメッセージとして発する」と、反テロでの参加国の結束を強調。世界経済については「予想より厳しく減速している」との懸念を表明し、同時不況回避に向けた自由貿易体制の強化を訴えた。そのために、11月の世界貿易機関(WTO)閣僚会議で、次期多角的貿易交渉(新ラウンド)を始めることを確認した。
反テロ声明は「テロと戦うための国際協力が必要で、国連が主要な役割を果たすべきだ」と国連の役割を強調。多数のイスラム教徒を抱えるインドネシアやマレーシアなどが、米英軍の軍事行動に慎重な姿勢を示したことに配慮し、反テロ活動は「国連憲章と国際法に沿って行う」ことも明記した。
同声明はさらに、テロへの資金提供を阻止するための金融措置や、炭疽(たんそ)菌をはじめとする生物化学兵器への対策、航空・船舶安全の強化、エネルギー安全保障策などを盛り込んだ。
タリバン兵20人死亡か 米特殊部隊奇襲で
21日付の英国日曜紙オブザーバーは、イスラマバードの軍事筋の情報として、アフガニスタン南部のカンダハル近郊を奇襲した米軍特殊部隊との戦闘でタリバン政権軍の兵士約20人が死亡したと報じた。
同紙によると、落下傘で降下した100人以上の特殊部隊員がカンダハルの北西約8キロの丘にあるババサヒブ村などを奇襲し、地方空港付近の弾薬庫を爆破、タリバンの司令部を破壊した。2、3時間後、隊員が障害物などを除去した滑走路にヘリコプター5機が着陸、隊員を無事撤退させた。
同村には、タリバンの最高指導者オマル師が最近、建てた家があるが、攻撃当時、オマル師の姿はなかったという。
攻撃の前にカンダハルの上空を米軍機4機が低く旋回、地元のラジオ放送に割って入り、パシュトゥー語で「おまえたちの支援するテロリストが米国の航空機を乗っ取った瞬間、おまえたちは自分で自分に死刑判決を下した」と威嚇する放送を流したという。(ロンドン共同)
[毎日新聞10月21日]
空爆続く タリバン、北部同盟に共闘呼びかけ
【イスラマバード小松健一】地上での軍事作戦を開始した米軍は20日未明から、断続的にアフガニスタン空爆を続行した。タリバン政権の軍情報当局者はAFP通信に対して、タリバンの本拠地カンダハル、首都カブール、西部ヘラートなどが爆撃され、少なくとも29人の民間人が死亡した、と語った。 また、反タリバン連合(北部同盟)が攻勢をかけている北部のサマンガン州では、米軍機がタリバン軍部隊などの前線基地を爆撃した模様だ。米軍の空爆が、地上戦の展開をにらみながら北部同盟の支援に移行しつつあるとの観測も流れている。
タリバン政権のスポークスマンを務めるモタキ教育相はロイター通信に対して、「北部同盟とタリバンが和解して米国と戦う共同戦線を築く時が来た」と語り、北部同盟に共闘を呼びかけていることを明らかにした。
[毎日新聞10月21日]
米特殊部隊と戦闘 タリバン政権が公式に確認
【イスラマバード小松健一】アフガニスタン・タリバン政権のモタキ教育相は20日、同国南部のカンダハル近郊でタリバン軍と米特殊部隊が戦闘を行ったことを公式に確認した。アフガン・イスラム通信が報じた。
同通信やタリバン政権当局者の話を総合すると、19日午後11時ごろ、カンダハルの西約40キロにあるババサヒブ丘陵のアルガンダブ地区に米軍ヘリから特殊部隊が降下した。これに対してタリバン軍が銃撃を加えたため、特殊部隊はヘリに戻って撤収したという。
米CBSテレビなどは特殊部隊が軍用飛行場を攻撃したと報じたが、モタキ教育相は米側の攻撃状況については明らかにしておらず、「タリバン軍は特殊部隊の撃退に成功した。タリバン側には死傷者はいない」と語った。
特殊部隊が急襲したババサヒブ丘陵は、タリバン政権の最高指導者オマル師やウサマ・ビンラディン氏の軍事施設があるといわれており、米軍の空爆対象だった。
[毎日新聞10月21日]
米軍、アフガン急襲作戦の続行を表明
【ワシントン21日=池内新太郎】マイヤーズ米統合参謀本部議長は20日の記者会見で特殊部隊の急襲作戦を今後もアフガニスタン各地の様々な施設に対して展開する方針を明らかにした。AP通信は国防総省高官の話として、現地時間の20日、別の秘密地上作戦が実施され、終了後も明らかにされることはないと報じた。米軍は21日も首都カブール付近などで空爆を続けている。
マイヤーズ議長は陸軍レンジャー部隊によるアフガン南部における作戦の概要を説明。タリバンの最高指導者オマル師が使用していた軍司令部と同国南部の空港施設2カ所が目標だったことを明らかにした。議長はタリバンやアルカイダの幹部らは発見できなかったとしながらも、「大して期待はしていなかった」と述べた。急襲の理由について「情報収集が目的だった」として、押収した資料などからウサマ・ビンラディン氏らの手がかりが得られることに期待を表明した。
タリバン崩壊後「全民族の参加」−−露、タジキスタン、北部同盟の3首脳が共同声明
【ドゥシャンベ(タジキスタン)福島良典】ロシアのプーチン大統領は22日、ドゥシャンベでラフモノフ・タジキスタン大統領、アフガニスタン・反タリバン連合(北部同盟)の有力指導者、ラバニ前大統領と会談した。プーチン大統領は、ロシアが北部同盟を正式な政権として承認し、軍事支援することを確認した。3首脳は、タリバン政権崩壊後の新政権づくりについて「全民族の参加」を呼びかけた共同声明に署名した。
プーチン大統領は「北部同盟は国際的に認められた政権で、国民の自由のために戦ってきた。北部同盟を支援する立場はずっと以前から決まっている。軍事技術面などで、引き続き援助したい」と表明。ラバニ前大統領も「共闘してテロを根絶したい」と応えた。
共同声明では、新政権への支援で「国連とすべての外国政府が関与すべきだ」としている。ただ、プーチン大統領は「タリバンを除く政権が安定している」と述べ、タリバン穏健派を取り込もうとしているパキスタンや米国に反対する立場を強調した。
[毎日新聞10月22日]
難民数千人強行突破、タリバン警備兵発砲3人重軽傷−−パキスタン国境で騒乱
【イスラマバード澤田克己】パキスタン西部チャマンのアフガニスタンとの国境検問所付近に21日、パキスタン側へ逃れようとする難民約600人が殺到、制止しようとするパキスタンの警備兵に投石を始めたため、警備兵が威嚇射撃を行った。タリバン政権側の警備兵も発砲。この騒ぎで難民の少年(13)が被弾し重傷、警備兵2人も軽いけがを負った。この日チャマンを通過した難民は米英軍のアフガニスタン攻撃開始以来、最大の1日当たり約5000人となった。
騒乱状態は約2時間続き、難民は有刺鉄線のさくをなぎ倒し、投石しながら数千人が強行突破したという。
チャマンはタリバン政権の本拠地カンダハルに近く、空爆が激しくなるにつれて、難民の到来が急増している。パキスタン側は国境を封鎖しているため、周辺では約1万〜1万5000人が待機、検問所の審査のため数百メートルの難民の列ができている。警備の目を逃れ、周辺の山からパキスタン側に入る難民も1日1000人程度いるという。国連は国境の開放を訴えている。
[毎日新聞10月22日]
米英空爆3週目
【ワシントン吉田弘之】米英軍は21日もアフガニスタン空爆を行い、攻撃は3週目に入った。AP通信は同日、米国防総省高官の話として、特殊部隊による秘密作戦が行われたと報じた。
現地からの報道によると、21日の攻撃は首都カブール北郊、西部ヘラート、南部のタリバン政権の本拠地カンダハル、北部マザリシャリフなどを中心に行われた模様だ。
米CNNテレビによると、現地時間の21日午前7時45分(日本時間同日午後0時15分)ごろ、米軍のF18戦闘機がカブール北郊の反タリバン連合(北部同盟)支配下の軍用空港近くでタリバン地上軍を約45分間にわたり攻撃した。タリバン側は対空砲火で応戦した。カブール進攻を狙う北部同盟に対する側面支援の意味があるとみられる。
21日も行われたとみられる特殊部隊の活動の詳細は不明だが、タリバン政権幹部、ウサマ・ビンラディン氏とその支援組織「アルカイダ」メンバーらの行方追及や空爆標的の情報収集などとみられる。
[毎日新聞10月22日]
テロ支援国攻撃も、「戦い世界規模に」−−米統合参謀議長
【ワシントン吉田弘之】マイヤーズ米統合参謀本部議長は21日、米ABCテレビとのインタビューで今回の軍事行動を「第二次大戦以来の幅広い戦いになる。アフガニスタンはそのほんの一部だ」と語った。議長は名指ししなかったが、イラクなどの「テロ支援国」も攻撃対象として視野に入れる考えを明らかにしたと言える。
また議長は、同時多発テロでテロリストが大量破壊兵器使用へ踏み出したとの認識を示し、「テロと大量破壊兵器に対する世界規模の戦いとなる」と言明。軍事行動だけでなく金融、司法面など国力を総合した戦いが同時進行すると述べ、「数年間、場合によっては永遠に続く」と語った。
議長はこれまでのアフガン空爆でウサマ・ビンラディン氏とその支援組織「アルカイダ」のテロ訓練キャンプのほとんどを破壊したと述べ、「近い将来、彼らがアフガンで訓練を行うことは出来なくなった」と述べた。
[毎日新聞10月22日]
カブール早期進攻に慎重 北部同盟の役割、結論でず−−米国務長官
【ワシントン中井良則】パウエル米国務長官は21日、アフガニスタンの反タリバン連合(北部同盟)のカブール進撃が迫っているとの見方を示す一方、北部同盟のカブール陥落の是非について「議論が続いている」と述べ、北部同盟の役割について米政府がまだ結論を出せないことをうかがわせた。滞在中の上海でCNN、FOXなど米テレビのインタビューに答えた。
長官は「あと1か月で冬になり、米軍の作戦の速さも変わる。北部同盟の攻勢が強まっており、きわめて近い将来、カブールに向かうだろう」と北部同盟のカブール進撃に期待感を示した。しかし、「北部同盟は人口の15%の少数派民族を代表するだけだ。タリバン後の新政権の重要な一部となるが、安定のためにはアフガンのすべての勢力が新政権に加わるべきだ」と述べ、北部同盟だけの新政権構想に難色を示した。
北部同盟がカブールを占拠すると新政権に大きな発言権を持つことになるため、米国は北部同盟のカブール攻撃に期待しながらも、陥落にまで至らないようけん制するジレンマ状態にある。
また11月半ばに始まるラマダン(イスラム教徒の断食月)は軍事攻撃を中断するか、との質問に「重要な宗教的期間として尊重している。しかし、軍事作戦が必要かどうかは国防総省に任せている」と述べ、軍事上の必要性があればラマダン中でも攻撃を続ける可能性を示唆した。
[毎日新聞10月22日]
CIAに「せん滅」命令 ビンラディン氏とアルカイダ−−米大統領
【ワシントン吉田弘之】米政府高官は21日、ブッシュ大統領が米中央情報局(CIA)に対し同時多発テロの重要容疑者とされるウサマ・ビンラディン氏とテロ組織「アルカイダ」メンバーのせん滅を命じる大統領令に署名したことを明らかにした。またCIAに特別予算10億ドル(約1200億円)の特別予算を追加したという。
ワシントンポスト紙などによると、大統領が先月署名した大統領令は、CIAに対しビンラディン氏の通信・軍事施設の攻撃などを指示する内容という。米政府高官によると、大統領はその中でアルカイダを排除するため「必要なことすべて」を実行する許可を与えた。この中には同氏の殺害も含まれるとみられる。また特殊部隊にCIAの情報活動を支援させる異例の命令も出した。
フォード政権以来、歴代米大統領は海外要人の暗殺を禁止する大統領令に署名しており、今回のブッシュ大統領の指示は大きな方針転換を意味する。また、マイヤーズ米統合参謀本部議長は21日、米ABCテレビに「状況によっては銃弾が飛び交う」と述べ、特殊部隊によるビンラディン氏の殺害もあり得るとの認識を示した。
[毎日新聞10月22日]
元国王の政権樹立支援明言−−EU上級代表
【ローマ井上卓弥】欧州連合(EU)のソラナ共通外交・安全保障上級代表は21日、ローマ北郊の私邸で亡命生活を送るアフガニスタンのザヒル・シャー元国王(87)と会談し、タリバン後の暫定政権樹立を目指すアフガン諸勢力結集構想に支持を表明した。
ソラナ代表は会談後、「元国王は尊敬すべき品格を備えた人物であり、(今後のアフガン情勢で)大きな役割を果たすだろう」と述べ、EUの支援姿勢を明確にした。元国王は22日に国連のブラヒミ・アフガニスタン担当特別代表と会談する予定だ。
[毎日新聞10月22日]
特殊部隊投入、米認める
【ワシントン吉田弘之】米軍特殊部隊がアフガニスタンに潜入、タリバン軍施設に対して行った奇襲攻撃について、マイヤーズ米統合参謀本部議長は20日、国防総省で会見し、米陸軍特殊部隊「レンジャー」などがタリバン軍指揮施設、空港滑走路などに攻撃を加えたことを認めた。特殊部隊がパラシュートで降下した際、隊員2人が負傷したという。アフガン領土内で特殊部隊投入に際し、けが人が出たのは初めて。
議長は作戦で計4部隊がアフガン国内に展開、標的の1つにタリバン最高指導者オマル師の自宅が含まれているとした。作戦の際、タリバン側から若干の応戦があったが、軽微なものだった。タリバン側の死傷者は不明。作戦で、タリバン幹部やウサマ・ビンラディン氏の支援組織「アルカイダ」の幹部は見あたらなかったという。
会見に先立ち、部隊の活動状況を撮影した複数のビデオを公開。ビデオは、部隊員が空港ビルなどに侵入、武器、弾薬を破壊している状況などが映し出された。
[毎日新聞10月21日]
米の攻撃に露大統領理解 首脳会談
【上海・布施広】ブッシュ米大統領は21日、APEC閉幕後、上海市内でプーチン・ロシア大統領と会談した。プーチン大統領はミサイル防衛構想に道を開く弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約改廃や、戦略核弾頭の大幅削減について前向きな姿勢を示し、来月行われる米露首脳会談で包括合意が達成される可能性も出てきた。首脳会談に併せて両国はアフガニスタンのタリバン政権を非難する共同声明を発表、アフガンの新政権づくりに協力する意向を表明した。
両首脳の直接会談は同時多発テロ後、初めて。
会談後の共同会見でプーチン大統領は、ABM制限条約を安全保障の「安定的要素」としながら「将来の脅威も考慮しなければならない」と述べ、条約改廃に含みを残した。新たな時代に合わせて米露関係を包括的に見直す討議を11月に行うことも明らかにした。
一方、ブッシュ大統領は「我々(米国)が戦略核弾頭の削減を検討していることをプーチン大統領に伝え、ABM制限条約は時代遅れだとの見解を表明した」と語った。米側はミサイル防衛配備に向け、今秋のうちに条約改廃への道を開きたいところで、プーチン大統領が来月訪米して行う首脳会談と専門家協議が大きな分かれ道になる。
米露共同声明は「アフガニスタンの現在の状況は、タリバン政権が進めた政策がもたらした結果」として軍事行動を追認。「タリバンは国家をテロと急進派の中心地に変えた」と厳しい調子で非難している。
◇
【上海・布施広】米露両国が21日発表した共同声明の要旨次のとおり。
一、米露両国の大統領はテロリズムを絶対的に否定し、強く非難する。
二、犯罪者を司法の場へ引き出すためのすべての努力を払うことで合意した。
三、国連と緊密に協力し、平和なアフガンの回復を可能とする広範な支持を受けた政権樹立をもたらす解決策を推進することを再確認した。
四、両国の協力が反テロの世界的取り組みの死活的な要素であると認識する。
五、核、生物・化学兵器、インターネットを使った新たなテロに対抗するための協力を進める決意を示し、関連技術の拡散を防ぐ2国間・多国間の協力を強化する。
[毎日新聞10月21日]
タリバンがオマル師の息子死亡を否定 BBC
英BBCのインターネット版が22日付で報じたところによると、アフガニスタンのタリバン政権は、同政権の最高指導者、オマル師の10歳の息子が米国などのアフガン攻撃により死亡したとの報道を否定した。
タリバン高官のアブドゥル・ハナン・ヒマト氏は現地通信社に対し、「(オマル師の)息子は大丈夫だ。オマル師も大丈夫だし、ビンラディン氏と彼の基地も大丈夫だ」と語り、「われわれの士気は高い」と述べたという。
BBC放送は21日、オマル師の息子を実際に治療した医師の証言として、米国などが最初にカンダハルへの攻撃を実施した7日夜、息子は爆撃を受けて腹部に重傷を負い、病院で手当てを受けたが回復しなかったと報じていた。
ヒマト氏は同医師の報告を、「全くの誤り」と述べたという。(了)
タリバン、米ヘリ撃墜を発表 米側は否定
【イスラマバード澤田克己】アフガン・イスラム通信によると、アフガニスタンのタリバン政権は22日、南部カンダハル近郊でタリバン軍が撃墜した米軍ヘリの残がいを発見したと発表した。米特殊部隊とタリバン軍が19日深夜から20日未明にかけて交戦した際に撃墜したもので、タイヤなど複数の部品のほかに血痕も見つかり、米兵の遺体を別のヘリが収容した形跡があるとしている。
カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」は22日、このタイヤなどの映像を放映した。車輪の軸に「ボーイング」「CH47」などの表示があり、米軍が使用している双発ヘリ「チヌーク」のものと見られる。
一方、米国のマイヤーズ統合参謀本部議長やパウエル国務長官は、米軍ヘリは撃墜されていないと否定した。
[毎日新聞10月23日]
米・パキスタン アフガンに「第三勢力」構想 反タリバンのパシュトゥン人集め
【イスラマバード春日孝之】アフガニスタンのタリバン政権穏健派の切り崩しが難航していることを受け、パキスタン政府が米中央情報局(CIA)の支援で、タリバン崩壊後の「連合政権」の母体として、「第三勢力」樹立に乗り出す方針を決め、秘密工作を進めていることが22日、分かった。パキスタン軍情報機関(ISI)筋が毎日新聞に明らかにした。
同筋によると、ISIが主導し、近くタリバン、北部同盟とは別の二つの「第三勢力」を旗揚げする。米中央情報局が勢力拡大のため資金支援を行う方針だ。これは、ISIが94年、ゲリラ各派が入り乱れたアフガン内戦の収拾に向け、CIAの支援を得て、新勢力としてのタリバン育成に乗り出した構図と酷似する。
タリバンはアフガンの多数派民族パシュトゥン人主体だが、「第三勢力」は当面、パシュトゥン人内の反タリバン勢力が主体となる。二つの「第三勢力」ともアフガン戦争(79〜89年)で活躍した元ゲリラ司令官が率いる。パシュトゥン人社会の広範な支持を得るのが狙いだ。
パキスタン政府は、タリバン穏健派の切り崩し工作を続ける一方、タリバンをパシュトゥン人社会で孤立化させることで、同穏健派を「第三勢力」に取り込みたいと考えている。
「第三勢力」の一つはアフマド・ギラニ元司令官率いる「アフガン・イスラム戦線」。24日、パキスタン北西部ペシャワルで、イタリア亡命中のザヒル・シャー元国王の特使やアフガン全州からの代表者を招き会合を開く。
もうひとつは、ハジ・ズマン元司令官を中心に25日、アフガン東部ナンガルハル州で発足する「80人委員会」。タリバンに「政権に終止符を打て。さもなくば宣戦する」と迫る一方、他州にも組織を拡大させていく方針だ。
パキスタン政府は将来的に2組織を糾合し、タリバン穏健派の受け皿としたい考えだ。
【イスラマバード小松健一】タリバン政権崩壊後をにらみ、パキスタン政府が米中央情報局(CIA)の支援で「第三勢力」の支援に乗り出した背景には、新政権へのタリバン穏健派取り込みをめぐり関係各国間で亀裂が深まっている現状がある。ロシア、イラン、インドが穏健派排除の外交交渉を活発化させる一方で、穏健派の政権参加を支持する米国、パキスタンは、タリバン指導部の分断工作に失敗し孤立化していた。今回の方針はロシアなどの発言権を封じ込める苦渋の秘策といえる。
タリバン穏健派の中核、ムタワキル外相に対するパキスタンの離反工作の失敗が明らかになった19日、ロシアとインドは「タリバンの暴力的思想は新政権の安定を損なう」との共同声明を発表し、タリバン穏健派排除を明確に打ち出した。
その後も、ラフモノフ・タジキスタン大統領とハラジ・イラン外相が穏健派の政権参加反対を確認するなど、外交舞台での穏健派包囲網が築かれつつある。
反パキスタンの北部同盟がロシアなどの後ろ盾でアフガン新政権協議の主導権を握れば、パキスタンは安全保障上の重大な脅威にさらされ、対米協調路線のムシャラフ政権が崩壊し、核問題も絡んで南アジア情勢が不安定化する恐れがある。
米、パキスタン両国はタリバン穏健派参加を軸にした外交交渉の決裂を避けるために、パキスタンが影響力を行使しうる新たなアフガン和平構想を用意せざるを得ない状況に追い込まれたわけだ。
国連のブラヒミ・アフガン問題担当特使は「タリバン、北部同盟を合わせても7万人程度。アフガン国民2500万人の意思確認が必要だ」と指摘し、性急な政権協議をけん制している。アフガン全土の代表者結集を目指す「第三勢力」は、国連でのアフガン和平協議で中核となる可能性は十分にある。
そのためにも、イタリアに亡命中のザヒル・シャー元国王の承認を得たうえで、北部同盟も受け入れやすい政権構成にする必要がある。
パキスタンにはタリバン穏健派を誘い込む土台とする狙いがあるが、新たな政権構想の中で、事実上蚊帳の外に置かれたタリバンが結束を強め、アフガンが内戦状態に戻る危険性もはらんでいる。
[毎日新聞10月23日]
イラクに強い警戒感表明 パウエル国務長官、米下院外交委で
【ワシントン佐藤千矢子】パウエル米国務長官は24日、米下院外交委員会の対テロ軍事行動に関する公聴会で証言し、イラクが9月11日の同時多発テロや炭疽(たんそ)菌事件に関与している可能性について「現時点では必ずしも関与しているとは言えない」と述べる一方で、「イラクが生物・化学兵器の開発を推進していることは間違いない」と強い警戒感を表明した。
長官は「フセイン大統領は、9月11日以前に(テロを)実行していたかもしれないし、今後もできる。彼の選択次第で、やろうと思えばいつでもできる」との見通しを示した。
また、核兵器開発問題について「イラクは核兵器開発も推進しており、我々は注意深く監視しているが、目ざましい成功は収めていない」と語った。対イラク国連経済制裁は「不十分だが、おおむね機能している」と述べ、継続させる考えを示した。
[毎日新聞10月25日]
北部同盟支援の空爆、4日連続で 遊牧民が犠牲
【イスラマバード小松健一】アフガニスタンからの報道によると、米軍は24日朝、アフガニスタンの首都カブール北方のバグラム付近に展開するタリバン政権軍部隊を空爆した。バグラムはカブール進撃の機会をうかがう反タリバン連合(北部同盟)とタリバン軍が戦闘を続ける前線。北部同盟を支援する形での米軍の空爆は4日連続となった。
一方、アフガン・イスラム通信によると、23日の空爆で、タリバンの本拠地カンダハル近郊のチャコルカレズ村で52人が死亡した。犠牲者は遊牧民だったという。同通信は、カンダハル周辺の空爆の死者は23、24の両日で88人に上った、と報じた。
[毎日新聞10月25日]
「各勢力で暫定政府を」 タリバン後めぐり部族代表らが協議
【ペシャワル(パキスタン北西部)井田純】タリバン政権崩壊後の新政権について、パキスタンで活動するアフガニスタン勢力が話し合う「アフガニスタン国民統一平和会議」が24日、ペシャワルで開かれた。開催を呼び掛けたのは、元ゲリラ司令官のアフマド・ギラニ氏が議長を務める「アフガン・イスラム戦線」。会議には、アフガンの各部族代表やイスラム聖職者、パキスタンで活動するアフガン組織代表ら約700人が出席した。
会議で意見を述べたアフガン人組織代表らは、米国によるアフガン爆撃停止を訴えるとともに、「今日のアフガンの荒廃を招いたのはタリバンだ」と重ねて非難した。ペシャワルに本拠を置く「アフガン国民団結イスラム評議会」の代表者は「タリバンは、『ジハード(聖戦)への参加』を呼び掛けているが、あれはジハードではない」と述べ、「元国王以外にアフガン統合の象徴になりうる人物はいない」と強調した。
この会議は、パキスタン軍情報機関(ISI)が、タリバン穏健派を誘い込むための「第3勢力」を結集するため、開催を働きかけた。ギラニ議長は、イタリア亡命中のザヒル・シャー元国王側にも接触を重ねており、反タリバン連合(北部同盟)やタリバン穏健派を糾合した新たな枠組みを模索、タリバン政権崩壊後の新政府の母体としたい考えだ。
アフガン・イスラム戦線によると、アフガニスタン統治の母体として、元国王が議長を務めるアフガン各勢力の代表者会議を組織。同会議の下に暫定政府を樹立し、イスラム諸国が組織する国連治安維持部隊による活動の下で新憲法を制定する考えだ。同構想は、ローマでの協議で元国王側の合意も得ているという。
ギラニ議長は、ISIの意向に沿い、新政権へのタリバン穏健派の参加を認める考えで、ムタワキル外相らに参加を呼びかけたが、拒否されたという。同会議は25日も開かれる予定。
[毎日新聞10月25日]
「タリバンが米の援助食糧に毒混入計画の情報」 米統合参謀本部作戦副部長
【ワシントン吉田弘之】米統合参謀本部のスタフルビーム作戦副部長は24日、国防総省で行った記者会見で、アフガニスタンのタリバン政権が米国の人道援助食糧などに毒を入れる計画を立てているとの情報があることを明らかにした。
副部長は情報源を明らかにしなかったが「情報には自信を持っている。タリバンはこれを利用して米国を非難するつもりだ」などと述べた。その上で「米国から直接もたらされた物資は安全で、タリバン政権がコントロールする組織などから来た物資には気をつけるよう、様々な方法で早急に呼びかける」と語った。
米軍は空爆を開始した7日から連日、援助物資を空中から投下、その数は24日までに約70万食に達した。またタリバン政権を非難する宣伝ビラも投下しアフガン国民をタリバン政権から離反させる作戦を続けている。
これに対してタリバンは一部地域で投下食糧を押収するなどして対抗してるとされる。
副部長が明らかにした情報が事実とすれば、タリバン政権が米軍の戦略を逆手に取り、政権への求心力を維持するために計画しているとみられる。
一方、副部長はタリバン軍について「タフな戦士たちだ。頑強に権力にしがみついていることに少し驚いている」と語り、タリバン政権打倒まで時間がかかることを改めて強調した。
[毎日新聞10月25日]
米反テロ法:電話やインターネットの盗聴強化 26日成立へ
【ワシントン佐藤千矢子】米下院は24日、米連邦捜査局(FBI)などの捜査機関に電話やインターネットの盗聴拡大を05年末までの期限つきで認める反テロ法案について、上院との調整協議を経た修正案を357対66で可決した。同案は25日に上院でも可決され、26日にはブッシュ大統領が署名、成立する予定。
主な内容は、(1)管轄区域ごとにしか認められていなかった固定電話の盗聴許可を国内全域に拡大し、携帯電話やインターネットにも認める(2)司法長官はテロ容疑の外国人を拘留できる(3)生物・化学兵器に利用できる物質の原則所有禁止(4)FBI、国務省、移民帰化局などの情報共有化(5)テロ行為やテロ支援者への罰則強化――など。テロの取り締まり強化を狙う一方で、人権の侵害につながる危険性も指摘される内容となっている。
法案は11日に上院、12日に下院でいったん可決されたが、内容に食い違いがあったため、調整が行われてきた。下院が主張した盗聴などの時限立法化と、上院が主張したマネーロンダリング(資金洗浄)に対する取り締まり強化がそれぞれ盛り込まれ、一本化された。
ブッシュ大統領は24日、「テロリストを打倒する手段を捜査当局に与える反テロ法案に、議会が合意に達したことを喜んでいる」との声明を発表した。
[毎日新聞10月25日] ( 2001-10-25-19:13 )
「アフガン新政権、元国王の役割が重要」 パウエル国務長官
【ワシントン佐藤千矢子】パウエル米国務長官は24日、米下院外交委員会の公聴会で証言し、タリバン政権崩壊後のアフガニスタン新政権樹立について、ローマに亡命中のザヒル・シャー元国王が「極めて重要な役割を果たす」と述べ、元国王を中心とした新政権づくりを支持する考えを強調した。この発言はアフガン各派や各国による協議を促す狙いがあるとみられる。
また長官はイラクが同時多発テロや炭そ菌事件に関与している可能性について「現時点では必ずしも関与しているとは言えない」と語る一方で、「イラクが生物・化学兵器の開発を推進していることは間違いない」と強い警戒感を表明した。
長官は「イラクのフセイン大統領は9月11日以前に(テロを)実行していたかもしれないし、今後もできる。彼の選択次第で、やろうと思えばいつでもできる」との見通しを示した。
一方、公聴界証言に先立つ会見で、長官は11月中旬からイスラム教のラマダン(断食月)が始まることに触れ「その段階で攻撃の成果を評価し、攻撃が必要ならば継続する」と述べた。
[毎日新聞10月25日]
ビンラディン氏拘束は困難 タリバン政権崩壊に重点 米国防長官
【ワシントン佐藤千矢子】ラムズフェルド米国防長官は25日の会見で、同時多発テロ事件の重要容疑者ウサマ・ビンラディン氏の追跡状況について「きっとできると思うが、将来、確実に捕まえられるかと聞かれれば、干し草の山から針を探すくらい難しい」と述べ、現状では拘束は極めて困難との認識を表明した。
発言は、同日付けの米USAトゥデー紙が「ビンラディン氏は逃げたかもしれない―ラムズフェルド長官」との大見出しで長官とのインタビュー記事を掲載したことについて釈明する中で出た。
長官は今後もビンラディン氏追跡に全力をあげる考えを強調した。しかし、「特定の人間を見つけ出すよりも、タリバンの指導者を変えるほうが容易だ」とも述べ、当面はアフガニスタンのタリバン政権崩壊に重点を置く考えを示した。
[毎日新聞10月26日]
米軍、バスやモスク空爆か 各地に激しい攻撃
【イスラマバード澤田克己】米軍は24日夜から25日にかけ、アフガニスタン各地に激しい空爆を続行した。アフガンからの報道によると、南部カンダハルでミサイルが満員の大型バスに命中して少なくとも10人の民間人が死亡したほか、西部ヘラート近郊のモスクでは祈りを終えた信者20人が爆撃を受けて死亡した。
アフガン・イスラム通信は、カブール北方に展開するタリバン前線部隊に25日だけで26回の空爆が行われたと伝えた。バーミヤンなど他の前線でも激しい空爆が行われている模様。反タリバン連合(北部同盟)は25日夜、北部の要衝マザリシャリフから南西30キロのマールマルへの攻撃を始めた。
アフガン国営バフタル通信幹部は、AFP通信に対して、米軍が前線攻撃でクラスター(集束)爆弾を使ったと語った。国連アフガン調整事務所も24日の記者会見で、西部ヘラートへの空爆で同爆弾が使われたことを確認した。同爆弾は、缶ビール大の小爆弾を広範囲にばらまく兵器で殺傷能力が高く「非人道的」と非難されている。
[毎日新聞10月26日]
【ブリュッセル森忠彦】チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世は24日、仏ストラスブールで開催中の欧州議会本会議で演説し、米国に対しアフガニスタンへの空爆停止を呼びかけた。
この中で、「市民が巻き沿いになるような空爆は停止すべき。平和的な対話こそが最短の解決策」と説いた。その上で米国支援の立場を取る欧州連合(EU)で構成する同議会にも賛同を呼びかけた。
[毎日新聞10月26日]
「タリバンの情報操作は古典的」 米国防総省高官
【ワシントン吉田弘之】米国防総省高官は24日、匿名を条件に行った記者会見で「タリバン軍の(情報操作の)やり方は古典的なもの」とこき下ろした。タリバン側が発表する米軍の誤爆情報などに、いら立っている表れともいえる。
高官によると、情報操作には「否定」と「偽装」の2種類がある。「偽装」の典型は、タリバン側がアフガン国内の病院にジャーナリストを招待して民間人の負傷者の様子などを見せたことで「反米感情をあおる狙いがあった」と語った。
また、米軍が空爆しにくいイスラム寺院や民間施設に兵器類を隠すことも「偽装」に入ると分類。その証拠として、偵察衛星が撮影した西部ヘラートの軍用空港近くにあるイスラム教礼拝堂付近の2枚の写真を公開した。空爆開始後の8日、礼拝堂のそばに軍用ヘリコプターが写っているが、空爆前日の6日にはない。「世論の反発を気にする米軍が礼拝堂を爆撃しないと考えてヘリをそばに置いた」と分析してみせた。
その上で湾岸戦争の際、イラクが米軍の空爆から兵器を守るためオトリを使ったことなどを挙げ、タリバン軍の情報操作には「技術」が見られず、イラクにも劣ると断じた。
◆
【イスラマバード澤田克己】アフガニスタン・タリバン政権のスポークスマンであるモタキ教育相は25日、空爆被害の実態調査のための代表団派遣をイスラム諸国会議機構(OIC)に求めていることを明らかにした。タリバン系のアフガン・イスラム通信が伝えた。
教育相は「米国がいかに我々の国を破壊しているかを直接確認してほしい」と語り、モスクや病院の被害現場を代表団に見せると表明した。
教育相はさらに、タリバンが民間施設を隠れ蓑に使っているために民間人被害が拡大しているという米国側主張は「プロパガンダだ」と反論した。
[毎日新聞10月26日]
タリバン後、国連主導政権の支援で一致 仏独首脳会談
【ブリュッセル森忠彦】定例の仏独首脳会談が24日夜、パリで行われ、アフガニスタン問題の政治解決を求めるとともに、「タリバン政権後」の国連主導の政権を欧州連合(EU)が全面的に支援する方針で一致した。
両首脳は先週のゲント(ベルギー)でのEU首脳会議の直前に行われた英仏独首脳会議で、英国とともに米国が中心となって進めているアフガン攻撃に軍事参加する用意があることを確認した。その一方で、EUとしては「タリバン政権後」には国連主導でアフガン国民の幅広い政党の参加を求めた「草の根政権」を樹立、EUとして人道問題や経済復興などで支援することを表明した。
この日の会談で両国首脳が政治解決を図ると表明したことは、「出来れば武力介入は避けたい」との本音が現われたものとも言える。EU自体も依然、新政権への具体的な関与策は打ち出せておらず、当面は米国の空爆とアフガン側の動静をうかがう姿勢に留まっている。
[毎日新聞10月26日]
決議7項目採択し閉会 アフガン会議
【ペシャワル(パキスタン北西部)井田純】第3勢力の中核となる「アフガニスタン国民統一平和会議」は25日、ペシャワルで2日目の会合を開き、ザヒル・シャー元国王の擁立などを盛り込んだ7項目の決議を採択して閉幕した。
会議には、元ゲリラ司令官のギラニ氏が議長を務める「アフガン・イスラム戦線」の呼び掛けで、アフガン人組織代表ら約700人が参加した。
決議では、イタリアに亡命中のザヒル・シャー元国王の果たす役割への支持を明らかにするとともに、国連とイスラム諸国連盟の協力を得た上で、伝統的意思決定機関の国民大会議(ロヤ・ジルガ)開催を呼び掛けている。
また、米軍とタリバン双方に戦闘終結を求めた上で、「カブールの非武装化」の重要性について言及している。
[毎日新聞10月26日]
空爆で死亡の武装組織幹部の遺体、パキスタンに
【イスラマバード小松健一】米軍によるアフガニスタン空爆で死亡したパキスタンのイスラム武装組織「ハルカト・ムジャヒディン」幹部ら19人のうち8人の遺体が24日夕、パキスタン側にひそかに搬送された。パキスタン政府は、同国がアフガンへのテログループの「出撃基地」との印象を与えたくないため、遺体搬入を拒否していた。
ハルカトは、インドと領有を争うカシミール紛争で、パキスタン支配地域を拠点に活動している。米同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏のテロ組織「アルカイダ」との関連が指摘され、米国がテロ組織に指定している。
パキスタン政府は国際社会の「テロとの戦い」に協調してハルカト代表を一時拘束したり、資産を凍結するなどハルカトへの締め付けを強化している。しかし、アフガン空爆死で明白になったハルカトとビンラディン氏のつながりは、カシミール紛争を「パキスタン側のテロ」と主張するインドに格好の口実を与えてしまった。
米国もパキスタン政府に武装勢力の封じ込め強化を改めて求めるとみられ、その場合、カシミールの武装勢力を事実上支援している軍部の反発が予想される。
[毎日新聞10月26日]
長期化に懸念を表明 エジプト大統領
【カイロ小倉孝保】ムバラク・エジプト大統領は24日、エジプト・シャルムエルシェイクで記者会見し、米国のアフガニスタン攻撃の長期化に懸念を表明し、事態の早期収拾に期待を表明した。アラブ世界では、アフガン市民の被害が広がっていることで米国への反発が強まっており、今後アラブ指導者から同様の要求が強まる可能性が高い。
ムバラク大統領はシュッセル・オーストリア首相との会談後の会見で、「アフガンへの攻撃が続けば、アラブ世界と米国の溝は広がるだろう。米国が攻撃を長引かさないよう努力することを望む。これは我々にとって重要な問題だ」と述べた。
アラブでは連日、新聞やテレビでアフガン市民の被害状況が報告されており、市民の間で反米感情が高まっている。大統領の発言はこうしたアラブ市民の感情を考慮したものとみられる。
[毎日新聞10月26日]
タリバン:国内で住民多数を虐殺 国連調査官が発表
【ニューヨーク上村幸治】国連のカマル・ホサイン人権問題担当調査官は26日、アフガニスタンのタリバンが97年5月から今年6月までの4年間に国内で住民多数を虐殺し、拷問やレイプ、財産強奪なども行なったと発表した。
ホサイン氏はアフガン中部バーミヤン地方のヤコアロン地区を例に挙げて説明。タリバンは今年1月に同地区に進撃した際、3日間で住民130人を処刑したという。銃剣で突いたりナイフで手足を切るなど拷問を行なったほか、皮をはいだり焼き殺したケースもあったという。
1月下旬にはさらに50人を処刑。5月〜6月にかけても住民150人を処刑し、高校、モスク、病院各1棟と市場の露店800店、家屋500軒に放火したという。
ホサイン氏は処刑の場所や大量の墓も特定したと述べ、「成人男子が片端から逮捕され、無差別に処刑された」と説明した。
ホサイン氏は、この4年間にマザリシャリフ、カイサル、タクハル地方のタロカン、サリプル地方のゴスファンディ、サマンガン地方のロバタクでも、同種の残虐行為が行なわれたと述べた。
[毎日新聞10月27日] ( 2001-10-27-20:01 )
アフガン攻撃:米国手詰まり タリバン政権動揺せず
【ワシントン布施広】米軍のアフガニスタン攻撃は27日で3週間を迎えた。タリバン政権に大きな動揺は見られず、誤爆も相次ぎ、手詰まりの状態が続いている。同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の拘束は実現しない上、米国とパキスタンがタリバン崩壊後の新政権の母体として結集を図る第三勢力の有力者、アブドル・ハク氏がタリバンに処刑されたことで、情報戦の失敗を指摘する声も出ている。来月中旬のラマダン(断食月)入りまでに、米軍がタリバン政権を分裂・崩壊に追い込めるかどうかは微妙な情勢だ。
27日付の米紙ワシントン・ポストによると、タリバンに包囲されたハク氏は、ペシャワル(パキスタン)にいた支援者の米国人実業家に衛星電話で助けを求め、この実業家がマクファーレン元米大統領補佐官に連絡。元補佐官が米軍に救出を依頼した。元補佐官は実業家が運営する団体の顧問で、ハク氏とは18年前から知り合いだったという。
米軍は攻撃兵器を搭載した無人偵察機を現地に派遣、ハク氏を援護したが、同氏は逃げ切れずに結局、タリバンに処刑された。この一件について国防総省当局者は26日の会見で「救出活動が行われたとの情報は得ていない」と語り、後に高官が匿名で無人偵察機を派遣したことを認めた。
同紙によると、元補佐官らは、アフガンの国民大会議(ロヤ・ジルガ)による和平推進を図るため、先月ホワイトハウスで米高官と会談した。ハク氏はこの構想に基づいて各派を説得する意向だったとみられ、米政府が同氏のアフガン入りを事前に承知していたかどうかが問題になりそうだ。
一方、米軍は26日、首都カブールにある赤十字国際委員会の倉庫など3件の誤爆を認める声明を発表。さらに、小型爆弾をばらまく「クラスター(集束)爆弾」使用に対して、一般市民の安全を懸念する声も上がっている。不発の小型爆弾を踏むと爆発するためで、空爆に対する国際社会の批判は強まる傾向にある。
特殊部隊を投入する地上作戦についても、英紙は今月19日の作戦が、タリバンの頑強な抵抗により、ほとんど失敗に終わったと報じている。報道の当否はともかく、ビンラディン氏拘束に不可欠な地上作戦はここ数日、行われていない。
[毎日新聞10月27日] ( 2001-10-27-19:41 )
国連:包括的テロ防止条約案 西側とイスラム諸国合意できず
【ニューヨーク上村幸治】包括的テロ防止条約案について協議していた国連総会第6委員会(法律)のテロ条約作業部会は26日、テロの定義などをめぐるイスラム諸国と他の国の対立が解けず、合意に至らないまま終了した。新たな協議の場を設けることができるかが今後の焦点となる。
あらゆるテロの根絶を目指す同条約の採択は、米同時多発テロを受けて緊急課題に浮上、アナン国連事務総長も早急な採択を促していた。
会議では、イスラム諸国がテロの定義を明確にすべきだと訴えた上で「民族自決運動をテロとは呼ばないことを条約の中で確認せよ」と要求した。また、条約案の中で「国家の正規軍による行為はテロとみなさない」と規定している「軍事適用除外条項」を批判し、「国家によるテロもあるはずだ」と反論した。
「民族自決運動」がパレスチナの反イスラエル闘争を、「国家によるテロ」がイスラエルを、それぞれ意識した指摘であるのは明白だ。
欧米や条約提案国のインドは条約に政治がらみの文章を入れることに反対し、西側諸国とイスラム諸国が中東和平問題を背景に対立する形になった。討議中に中東情勢が悪化したこともあり、調整不能に陥った。
対立する双方は部分的には妥協的な姿勢も示しており、新たな協議の場を設けて話し合いを続ける可能性はある。
[毎日新聞10月27日] ( 2001-10-27-19:41 )
米軍、山岳部の洞穴を集中爆撃
【ワシントン吉田弘之】米軍によるアフガニスタン空爆で米統合参謀本部のスタフルビーム作戦副部長は26日、タリバン軍やウサマ・ビンラディン氏とその支援組織「アルカイダ」の幹部らが潜んでいるとみられる山岳部の洞穴を集中的に爆撃していることを明らかにした。
同副部長は「どの洞穴にだれが住んでいるか不明だが、情報が確認されれば攻撃対象となる」と述べ、空爆から逃げるタリバン軍、アルカイダのテロリストを追い詰める作業に入っていることを明らかにした。25日の空爆は約80機の戦闘機や爆撃機を投入。計10カ所を爆撃した。
また同副部長は、今後の作戦で「すべての戦力と、大量破壊兵器の使用を除くあらゆるタイプの戦闘を導入する」と語り、近く特殊部隊の大規模な展開があり得ることを示唆した。
(毎日新聞2001年10月27日東京夕刊から)
米国、赤十字倉庫また誤爆−−通信施設では5人死亡
【イスラマバード澤田克己】米軍はイスラム教の休日(金曜日)である26日にも、首都カブールなどアフガニスタン各地への空爆を続行した。ロイター通信によると、カブールでは、食糧や毛布などの支援物資が置かれていた国際赤十字の倉庫3棟が爆撃を受けて破壊された。赤十字倉庫に対する誤爆は、16日に続いて2回目。通信関係施設も爆撃され、少なくとも5人が死亡した。
一方、アフガン・イスラム通信によると、アフガニスタン・タリバン政権の最高指導者、オマル師は26日、イスラム諸国に向けて声明を発表し、「ジハード(聖戦)はすべてのイスラム教徒の義務である」と訴え、今後72時間、タリバン政権とオマル師支持のデモ行動を起こすよう呼びかけた。
(毎日新聞2001年10月27日東京朝刊から)
タリバン、第三勢力有力者を処刑−−米パの支援で活動中
【イスラマバード小松健一】アフガニスタン・タリバン政権に反対する勢力の有力指導者、アブドル・ハク氏が26日未明、アフガン東部ロガル州でタリバン軍に拘束された。またタリバン系の国営バフタル通信はハク氏が同日午後、国家反逆の罪でタリバン政権によって銃殺、処刑されたと報じた。
パキスタン政府はタリバン支配地域内のパシュトゥン人部族に対しタリバンから離反を促す工作を続けていたが、ハク氏の処刑は大きな痛手になりそうだ。
パキスタン軍情報機関(ISI)筋がアフガンから得た情報によると、ハク氏はタリバン、反タリバン連合(北部同盟)とは別の第三勢力結集に向け衛星携帯電話で米軍と連絡を取り、工作資金として大量の米ドル紙幣を持っており、同行していた7人も処刑された。カタールの衛星テレビ、アルジャジーラによると、反タリバンの兵士を募るための文書も所持していたという。
ハク氏はアフガンに侵攻した旧ソ連軍と戦い、92年にナジブラ政権を打倒したゲリラ勢力の司令官の一人で反タリバン勢力を束ねる有力者。
イタリアに亡命中のザヒル・シャー元国王を国民統合の象徴に据える第三勢力結集に向けてISIや米中央情報局(CIA)の支援を受けてアフガンに潜入。東部ナンガハル州で部族指導者らと新政権樹立の秘密会議を開いていたという。
(毎日新聞2001年10月27日東京朝刊から)
ハク氏が「助けて」 米無人偵察機が出動、ミサイル発射も援護ならず−−アフガン
【ワシントン吉田弘之】アフガニスタンで26日、反タリバン勢力の有力指導者、アブドル・ハク氏がタリバン軍に処刑された事件で、米国防総省高官は同日、ハク氏が逃走中に衛星電話でパキスタンの友人に助けを求め、米軍が無人偵察機「プレデター」を現場に派遣したと明らかにした。米ワシントン経由で連絡を受けた米軍の偵察機はタリバン軍に向け対戦車ミサイル「ヘルスファイヤー」を発射したが、援護できなかったという。
高官はロイター通信に「プレデターは人の救助用ではない。ハク氏はすぐ米軍に連絡できず、米軍も他の手段を講じる時間がなかった」と語った。また26日付ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)によると、ハク氏はタリバン軍に包囲された時マクファーレン元大統領補佐官に連絡を取ろうとした。理由は不明だ。
(毎日新聞2001年10月27日東京夕刊から)
ハク氏処刑を非難 タリバンと政権協力せず−−元アフガン国王の孫
【ローマ井上卓弥】イタリアで亡命生活を送っているアフガニスタンのザヒル・シャー元国王(87)の孫で、政治顧問を務めるモスタファ・ザヒル氏(37)は26日、ローマ市内で毎日新聞と会見した。モスタファ氏は元国王に近い旧ゲリラ勢力指導者、アブドル・ハク氏を処刑したタリバン政権を非難。元国王を中心とした「第三勢力」結集を狙う米国やパキスタンが取り込みを図るタリバン穏健派について「交渉していないし、新政権参加を求める意思もない」と協力の可能性を明確に否定した。
モスタファ氏は「ハク氏は武器を持たず、アフガン和平推進を目的に活動していた」との見解を示し「なぜ旧ソ連抵抗運動の国民的英雄を処刑しなければならないのか」と怒りを表明した。その上で「広範な国民に支持される新政権樹立を目指す我々の努力に影響はない」と述べ、多数派パシュトゥン人をはじめ各民族・部族との接触を続ける方針を明らかにした。
一方、元国王が提唱する伝統的意思決定機関「ロヤジルガ」開催の前段階となる「最高評議会」については「メンバーはほぼ固まったが、会議の場所や日程は未定」と語った。
(毎日新聞2001年10月27日東京夕刊から
次世代戦闘機「JSF」ロッキード・マーチンに発注
【ワシントン26日=春原剛】米国防総省は26日、空軍、海軍、海兵隊、及び英空軍向けの次世代主力戦闘機「JSF」の発注先企業に米大手航空機メーカー、ロッキードマーチン社を選定したと発表した。対抗するボーイング社は受注から外れた。JSFは合計3000機製造される予定で、総契約金額は2000億ドル(約24兆6000億円)。米軍の契約額としては過去最大で、米国防産業の勢力図を塗り替える衝撃を与えそうだ。
米国防総省は将来、日本を含む同盟国にもJSFの採用を呼び掛ける見通しで、これら輸出分を含めるとロッキードマーチン社の契約額は4000億ドル(約49兆2000億円)規模にのぼる。今後50年間でみると、補修備品なども含め1兆ドル(約120兆円)を超えるビックビジネスになるとの見方もある。
JSFは「ジョイント・ストライク・ファイター」の略称。1996年から開発に計画に着手し、ロッキードマーチン社とボーイング社が異なる二つの機種を開発、激しい受注合戦を繰り広げていた。
タリバン:北部同盟指揮官5人を公開処刑
【イスラマバード澤田克己】アフガニスタンのタリバン政権は27日、北部サマンガン州での前日の戦闘で捕虜にした反タリバン連合(北部同盟)の野戦指揮官5人を公開で絞首刑にした。タリバン系のアフガン・イスラム通信が伝えた。
タリバンは26日、北部同盟とは別の反タリバン勢力指導者、アブドル・ハク氏を処刑したばかり。連日の即決処刑には敵対勢力への厳しい姿勢を示し、支配下にある部族指導者らが離反しないよう締め付ける狙いがあるものと見られる。
一方、同通信はハク氏の遺体が既にカブールに運ばれ、遺族に引き渡されると伝えた。昨年暗殺された同氏の妻と息子の墓があるペシャワルで、28日に埋葬されるとしている。
[毎日新聞10月27日] ( 2001-10-27-21:25 )
アフガン難民:国境開放ならパキスタンに新たに200万人
【イスラマバード澤田克己】パキスタンのムシャラフ大統領は27日、イスラマバードで会見し、「我々は既に250万人のアフガニスタン難民を受け入れている。もし国境を再び開けた場合、新たに200万人の難民が入ってくるだろう」と述べた。
パキスタン国境には、米軍の空爆を逃れようとするアフガン難民が殺到している。国連はパキスタンに先月17日以降、閉鎖されたまま国境再開を要請しているが、パキスタンは旧ソ連のアフガン侵攻(79年〜89年)などに伴うアフガン難民を抱えているため、拒否している。
[毎日新聞10月27日] ( 2001-10-27-21:50 )
タリバン:国内で住民多数を虐殺 国連調査官が発表
【ニューヨーク上村幸治】国連のカマル・ホサイン人権問題担当調査官は26日、アフガニスタンのタリバンが97年5月から今年6月までの4年間に国内で住民多数を虐殺し、拷問やレイプ、財産強奪なども行なったと発表した。
ホサイン氏はアフガン中部バーミヤン地方のヤコアロン地区を例に挙げて説明。タリバンは今年1月に同地区に進撃した際、3日間で住民130人を処刑したという。銃剣で突いたりナイフで手足を切るなど拷問を行なったほか、皮をはいだり焼き殺したケースもあったという。
1月下旬にはさらに50人を処刑。5月〜6月にかけても住民150人を処刑し、高校、モスク、病院各1棟と市場の露店800店、家屋500軒に放火したという。
ホサイン氏は処刑の場所や大量の墓も特定したと述べ、「成人男子が片端から逮捕され、無差別に処刑された」と説明した。
ホサイン氏は、この4年間にマザリシャリフ、カイサル、タクハル地方のタロカン、サリプル地方のゴスファンディ、サマンガン地方のロバタクでも、同種の残虐行為が行なわれたと述べた。
[毎日新聞10月27日] ( 2001-10-27-20:01 )
パキスタン:パシュトゥン人約1万人がアフガンへ越境
【イスラマバード小松健一】パキスタン北西部の北西辺境州のマルカンド地区で27日、パシュトゥン人部族地域の住民約1万人が自動小銃などの武器を手に、アフガニスタン・タリバン政権支援のため国境に向かった。パキスタン政府はアフガンへの越境を阻止しようとしたが、部族地域は政府から自治権を与えられているため、次々とアフガン入りした模様だ。
住民に対米聖戦を呼びかけたのは、部族地域に影響力を持つイスラム原理主義指導者、スーフィ・モハマッド師。同師が率いる組織「シャリア(イスラム法)強化運動」は、各地の部族地域にもタリバン軍支援を訴えており、今後も越境する民兵が増えそうだ。
[毎日新聞10月28日] ( 2001-10-28-00:19 )
タリバン支援で1万人の義勇兵 パキスタン北西部
【イスラマバード小松健一】パキスタン北西部のパシュトゥン人部族地域の住民ら約1万人が、アフガニスタン・タリバン政権を支援する義勇兵としてアフガン国境に終結している。タリバン政権のザイーフ駐パキスタン大使は29日、「タリバン政権は今のところ、パキスタンからの支援は必要ない。義勇兵にとっても危険だ」と語り、受け入れない意向を示した。
部族地域に影響力を持つイスラム原理主義指導者、スーフィ・モハマッド師が25日、対米ジハード(聖戦)参加を呼びかけ、26日には百人前後がアフガン国境に入った。その後、参加者が膨れ上がり、28日に義勇兵の代表団がタリバン側と交渉を続けていた。
(毎日新聞2001年10月30日朝刊から)
タリバン、第三勢力を切り崩し 難民相がパキスタンで
【イスラマバード小松健一】アフガニスタン・タリバン政権のアブドル・ラキブ難民相がパキスタン北西部のペシャワルを極秘に訪問し、パキスタン軍情報機関(ISI)と米中央情報局(CIA)が支援している「第三勢力」に参加する元ゲリラ司令官らの切り崩し工作を行っていることが29日、分かった。ISI筋が毎日新聞に明らかにした。
「第三勢力」有力指導者のアブドル・ハク氏が27日、アフガンでの反タリバン活動中にタリバンに処刑され、同勢力は事実上、機能停止状態に陥っている。タリバン政権が同勢力を抱き込む戦略に乗り出したことで、CIAとISIはタリバン分断工作の練り直しを迫られ、「タリバン後」の新政権構想にも影響を与えそうだ。
ラキブ難民相は、アフガンに侵攻した旧ソ連とのジハード(聖戦)で死亡したゲリラ将兵の遺族対策をしており、反タリバンのゲリラ勢力とも近い関係にある。ISI筋によると、ハク氏が処刑された翌日の27日にペシャワル入りした。
同相はISIと協力していたハク氏に近かった複数の元司令官に接触し、「タリバンの結束は固い。ともに対米ジハードに参加しよう」と呼びかけ、拒否した場合、ハク氏と同じ運命になると警告したという。既にISIが連絡を取れなくなった元司令官もいる。同相は29日にアフガンに戻った。
ISI筋は「タリバンがCIAとISIを標的にした作戦を始めた」と語り、第三勢力構想の実現は困難になったと認めた。
(毎日新聞2001年10月30日朝刊から)
ハク氏のアフガン潜入計画リークされていた? UAE紙
アラブ首長国連邦紙「ガルフ・ニュース」のインターネット版は29日付で、アフガニスタンで処刑された反タリバン「第三勢力」の有力指導者アブドル・ハク氏のアフガン潜入に関する情報が、何者かによってタリバン側にリークされていた可能性があると報じた。
同紙がラホール発として伝えたところによると、米国はハク氏の行動に関する情報がパキスタン国内から事前にタリバン側に漏れていた可能性があることについて懸念を示しているという。もし漏えいがあったとすれば、今後の米国の作戦にも影響を及ぼすことから、どこから情報が漏れたかについて注目が集まっている。
ハク氏は26日未明、アフガン東部でタリバン軍に拘束され、国家反逆の罪でタリバン政権によって処刑された。同氏はパキスタン軍情報機関(ISI)や米中央情報局(CIA)の支援を受け、タリバン分断工作のためアフガンに潜入していた。
ハク氏のアフガン潜入は極秘に計画され、ほんのわずかな人々しか知らなかったとされる。だが、タリバンが潜入計画を事前に察知していたとの推測もある。これまでに、パキスタン情報機関内の「タリバン支持派」がハク氏の潜入計画をタリバンに流した可能性や、何らかの方法で計画を知った過激派がリークした可能性などが論じられているという。
ある情報機関幹部によれば、「パキスタンは(リークに)関与した人物を見つけ出すよう多大なプレッシャーをかけられている」という。同幹部は、「もし漏えいがあったとすれば、米国の将来の作戦にも影響を及ぼすことから、米国は非常に気をもんでいる」という。
一方、パキスタン当局は、ハク氏のアフガン潜入計画を事前に認識していなかったと主張しており、潜入計画に精通していた人物の割り出しを試みている。(了)
アフガン:米国主導のタリバン後政権構想参加を拒否 イラン
【カイロ小倉孝保】イラン最高指導者のハメネイ師は30日、米国によるタリバン政権崩壊後のアフガニスタン新政権構想に関連し、「米国と関係を持つことは国益に反する」と述べ、新政権作りに向けた米国主導の交渉には加わらない考えを示した。 ハメネイ師は中部・イスファハンでの演説で、「我々は米国とは関係正常化を拒否するだけでなく、あらゆる交渉も拒否する」と述べた。また、米同時多発テロ以降、改革派を中心に政府や国会の一部に、長期的国益を考えて米国との関係を改善すべきとの意見が出ていることについて、「そうした者はイスラム的見地からみて、政府や議会での自らの義務を果たせない」とけん制した。
イラン国会に設けられた「アフガン危機問題特別委員会」は先に、タリバン後のアフガンにイランの国益を反映させるためにも、米国との交渉が必要との結論を出していた。
[毎日新聞10月31日] ( 2001-10-31-21:17 )
英国人の過半数が空爆の一時停止求める 英紙世論調査
英国民の62%がアフガニスタンでの軍事行動を支持する一方、54%が空爆を一時停止することによって援助部隊がアフガンに入国できるようにすべきだと考えていることが、英紙「ガーディアン」が30日付で発表した世論調査により分かった。
この調査は今月26日から28日にかけて、英国内で無作為抽出した18歳以上の成人男女1000人を対象に、電話での質問に答えてもらう形式で行われた。
その結果によると、タリバンに対する軍事行動への英国民の支持率は、2週間前に比べ12ポイント下がった。同紙は支持率の急落について、戦争に対する国民感情に大きな変化があった証拠だと分析している。
アフガンでの軍事行動については、特に女性や高齢者の間で支持率の低下が目立った。2週間前には女性の68%が軍事行動を支持していたが、今回の調査で51%に下がった。また、65歳以上の高齢者による支持率も、2週間前の71%から54%に急落した。
一方、軍事行動に反対すると回答した人は2週間前の16%から20%へと、わずか4ポイント上昇するにとどまった。代わりに、「分からない」と答えた人が10%から18%に増加した。
英国民の3分の2近くが、依然としてアフガニスタンでの軍事行動を支持する一方で、空爆を一時停止することによって援助部隊がアフガン入りできるようにすべきだと考えている人が、全体の54%にのぼった。同紙はこの点について、あからさまな反戦感情というよりは、人道的理由によるものと分析している。
一方、空爆が間断なく続行されるべきだと考えている人は全体の29%だった。
空爆の一時停止を求める声は特に女性の間で強く、59%にのぼり、空爆続行を求める19%を大きく引き離した。反対に、男性では空爆の一時停止に賛成する人が49%、反対が40%と差は縮まった。
アフガニスタンでの地上作戦に、英国の海兵隊強襲部隊を参加させるという英政府の発表(26日)については、約57%が支持すると回答し、反対は約29%にとどまった。
同調査はまた、英国内で炭疽菌や天然痘などを使った生物テロが発生した場合についても尋ねた。その結果によると、英政府の対応能力を「信頼できる」と答えた人が過半数(51%)で、「まったく信頼できない」もしくは「あまり信頼できない」と答えた人(44%)を上回った。(了)
住民が「血の一滴まで戦う」−−空爆下のカンダハル入り
【イスラマバード支局】「米国は侵略者。最後の血の一滴まで戦う」――米同時多発テロ後初めてアフガニスタン南部カンダハル訪問を許された外国報道陣に、住民の一人は「徹底抗戦」の決意を語った。30日夜(日本時間31日未明)、ロイター通信などの記者が訪れたタリバン政権の本拠地は、灯火管制で暗闇に沈んでいた。タリバン兵士が行き交う街路の静寂を破るのは犬のほえ声だけ。激しい空爆は31日も続いたが、タリバン政権担当者は「恐れることなど何もない」と言い切った。
タリバン政権が取材を許可したのは、欧米やパキスタン、日本の報道機関の記者20数人。
ロイター通信などによると、パキスタン西部の国境の町チャマンから陸路約120キロをマイクロバスに分乗しカンダハルに向かった。でこぼこ道をパキスタン目指してやってくる難民を乗せたトラック数台とすれ違うだけだった。
ブドウやザクロを満載したトラックもほこりを巻きたてて国境へ向かった。その一方で、カンダハルにプロパンガスのボンベや小麦、玉ねぎなどを運ぶ車も見られた。アフガン国内には、パキスタンへの入国を拒まれた難民が集まった即席のキャンプがあった。
夜になって到着したカンダハルは、真っ暗で満月の月明かりがまぶしいほど。何度も米軍機による爆撃を受けた飛行場の周辺は何の明かりも見えず、人の気配もない。住民のモハマドさんは「今朝空港の近くで空爆があった。米国はあのあたりに外国から来たイスラム戦士がいると思っているようだ」とロイター通信に話した。
市街には厳重な夜間外出禁止令がひかれており、人影はほとんどない。タリバン政権の政府関連施設が集中している一角には、武装した兵士たちが警戒していた。
タリバン政権の担当者は「空爆は午前2時ごろならないと始まらない。我々は何も恐れていない」と語った。
31日早朝、カンダハル西方約7キロの山中上空に米軍機が飛来、タリバン軍陣地への空爆を行った。10月7日に米軍の空爆が始まって以来、爆撃はほぼ毎日のように続いている。
[毎日新聞10月31日]
「タリバン、分裂の兆候」ラマダン中の空爆も容認−−パキスタン大統領
【イスラマバード支局】パキスタンのムシャラフ大統領は30日、11月中旬に始まるラマダン(イスラム教の断食月)中のアフガニスタン空爆中止を米国に求めるつもりはないとロイター・テレビに語った。大統領は、アフガンのタリバン政権支持者に分裂の兆候があると指摘。同政権への造反によって空爆停止の前提条件となる政治的解決が実現する可能性が高まっていると語った。
ムシャラフ大統領はラマダン前の軍事作戦終了に期待するとしながらも「そうならなければブッシュ米大統領と相談するが、(空爆中止について)強要はしない」と述べた。タリバン政権内の造反の可能性については「希望的観測ではない」と強調したが、どの勢力が反タリバン側に回りそうかについては言及を避けた。
大規模地上軍も検討、アフガン内の米軍駐留認める−−米国防長官
【ワシントン布施広】ラムズフェルド米国防長官は30日、アフガニスタン攻撃に関して、湾岸戦争型の大規模な地上軍の編成も排除しない意向を示した。アフガニスタン攻撃の手詰まり状態に不満が高まっていることを考慮、地上作戦の根本的な見直しの可能性を示唆した発言とみられる。また長官は、アフガニスタン領内に攻撃支援の米軍部隊が駐留していることを初めて認めた。
訪米したフーン英国防相と共同会見したラムズフェルド長官は、アフガニスタン攻撃の現状について「我々は第二次大戦や朝鮮戦争、湾岸戦争時のような地上軍を持っていないが、それを論外とはしない」と述べた。
米軍は現在、アフガン周辺に数百人の特殊部隊と約1000人の陸軍山岳師団を配備しているが、長官の発言は、これらの地上兵力を、場合によっては数万〜数十万規模に増やす可能性に言及したものだ。
米議会では、有力者のマケイン上院議員(共和党)らが「大規模な地上軍」の編成を主張している。長官の発言は、米軍に対する不満のガス抜きとの見方も強い。
[毎日新聞10月31日]
アフガン攻撃早期終結と長期支援を訴え−−パキスタン財政歳入相
【香港・成沢健一】パキスタンのアジズ財政歳入相は30日、香港で開かれている「東アジア経済サミット」(世界経済フォーラム主催)で講演し、米英軍によるアフガニスタン攻撃の早期終結と同国への長期的な支援の必要性を訴えた。
財政相は「旧ソ連のアフガン介入やその後の内戦を世界が見放したことが、急進的な政権(タリバン政権)の出現につながった」と指摘。「軍事行動が速やかに終わることを望んでいる。アフガン人による政権の経済復興を長期的に支援すべきだ」と語った。
また、財政相は主要国の対パキスタン経済制裁の解除などで米同時多発テロ以降、外資流入が早くも昨年度総額を上回ったと説明。株式市場の伸びも20%を超えたことなどから「今年度は4%の経済成長を見込んでいる」と述べた。
[毎日新聞10月31日]
米軍、アフガン空爆を続行・B52も投入
【イスラマバード31日=村松雅章】米軍は31日も未明からアフガニスタンに対する空爆を続行。タリバン政権の拠点であるカンダハルや北部の要衝マザリシャリフがあるバルク州を爆撃した。タリバン筋によるとカンダハル近くでは診療所が爆撃を受け14人が死亡した。首都カブール攻撃にはB52戦闘爆撃機が投入されたもようだ。
アフガンから国境を越えパキスタンに逃れる難民が急増。国連高等難民弁務官事務省(UNHCR)は今後さらに最大150万人の難民が発生する可能性を指摘した。パキスタンはアフガン難民の流入を原則拒否してきたが、30日ムシャラフ大統領がルベルス国連難民高等弁務官との会談で、パキスタン国内に難民キャンプを設置することを承認した。収容能力は約30万人になる見通し。
パキスタンのムシャラフ大統領は30日、アフガニスタン空爆についてイスラム教のラマダン(断食月)までの終結を米軍に強く求めない意向を明らかにした。11月10日に予定されるブッシュ米大統領との会談で公式に伝えるとみられる。