46113 | ドキュメント(3) | 事件経過一週間目以降の動き |
事件発生より一週間を経過して、以降ブッシュ政権は次のことを為した。及び関連する主要な動きも見ておくことにする。
第六ラウンド |
@・ブッシュ大統領がイスラム・センターで演説
A・米軍事行動開始、米軍の兵力展開始まる
B・タリバン、評議会開く
C・G8首脳声明、テロ非難
D・米軍の爆撃機や戦闘機など合わせて百機以上を中東方面に増派命令
E・パキスタンで反米デモ
【@・ブッシュ大統領がイスラム・センターで演説】
「イスラムは平和を体現する」
【ワシントン清宮克良】ブッシュ米大統領は17日、ワシントン市内のイスラム・センターを訪れ、イスラム団体指導者やアラブ系代表と会談した。大統領は会談後、「イスラム教は平和を体現するが、テロリストは平和ではなく悪魔や戦争を象徴している。イスラム教徒は我が国にとって価値ある貢献をしている」と述べ、イスラム教徒市民を尊重する考えを表明した。
同時多発テロの首謀者がイスラム原理主義の黒幕、ウサマ・ビンラディン氏と報じられ、米国ではアラブ系や中東・南アジア出身者への嫌がらせが多発している。このため、大統領が人種偏見などの事態を懸念してイスラム・センターで演説を行なった。
一方、米連邦捜査局(FBI)のミュラー局長は17日、「米政府はアラブ系に対するいかなる攻撃や脅しを見逃さない」と述べた。FBIは米国内で17日までに殺人を含め起きたアラブ系市民に対する犯罪40件を捜査している。
[毎日新聞9月18日]
【A・米軍事行動開始、米軍の兵力展開始まる】
米軍事行動:米軍の兵力展開始まる 作戦名は「無限の正義」
同時多発テロ事件で、軍事報復に備えた米軍の兵力展開が始まった。ウサマ・ビンラディン氏が潜むアフガニスタンの周辺海域には既に米空母2隻が待機中。19日、米本土東岸から空母セオドア・ルーズベルトが出港し、21日には横須賀からキティホークがインド洋に向かう。爆撃機など100機以上の中東地域への増派も命じられた。米海軍佐世保基地でも20日、強襲揚陸艦が航海の準備を始めた。
【ワシントン布施広】米国のラムズフェルド国防長官は19日、対アフガニスタン軍事行動に備え、爆撃機など100機以上と空母セオドア・ルーズベルトの中東地域への派遣を命じた。ブッシュ大統領は20日午後9時(日本時間21日午前10時)から米議会で演説、「新たな戦争」への理解を求める見通しだ。アフガンのタリバン政権が、同時多発テロの「主要な容疑者」とされるウサマ・ビンラディン氏の引き渡しに応じない限り、米軍が軍事報復に踏み切るのは必至の情勢となった。
長官が増派を命じたのは、爆撃機B1やF16戦闘機、空中給油機などで、武力行使に備えてトルコやサウジアラビア、クウェート、バーレーンなどの基地に配備される。ペルシャ湾やインド洋には、既に空母エンタープライズ、カール・ビンソンが待機、セオドア・ルーズベルトを加えて、対アフガン武力行使に動員可能な空母は週内に3隻態勢となる。
また、湾岸地域やトルコ、インド洋ディエゴガルシアの基地には、計200機近い米軍機が配備されている。空母3隻の艦載機は総計200機以上で、増派の約100機を加え、域内の米軍機は500機以上に膨れ上がる。対アフガン軍事行動に向けた米軍兵力の移動が公表されたのは初めて。
ブッシュ大統領は19日、各国に後方支援や情報提供、資金面での広範な協力を求める一方、今回の軍事行動は「イスラムとの戦い」ではないと強調した。また、同日記者会見したライス大統領補佐官は特殊部隊を中心としたテロ組織掃討作戦で、米兵の犠牲も覚悟していることを示唆した。補佐官によると、大統領は議会演説で、「21世紀最初の戦争」の開始に当たり、国民の決意と忍耐を求める。
一方、同日ブッシュ大統領やパウエル国務長官と会談したイワノフ外相は、11日のテロを「前例のない規模の犯罪」と呼び、アフガン地域を中心とするテロ組織壊滅作戦で「米露の緊密な連携」を図る意向を明らかにした。ロシアはこれまでテロを非難しながらも、米軍の無差別的な軍事行動には反対していた。
◇
米国防総省は、湾岸地域の展開を含め今後の軍事報復作戦を「無限の正義」と名付けた。米本土をテロから防衛する作戦は既に「高貴なワシ」としている。
[毎日新聞9月20日] ( 2001-09-20-12:48 )
【B・タリバン、評議会開く】
(9/20)タリバン、20日にも改めて評議会
【ニューデリー20日=吉野蔵一】米同時テロ事件の首謀者とされるイスラム過激派指導者ウサマ・ビンラディン氏の潜伏を助けているアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバン政権は20日(日本時間同日午後)、前日に続いて聖職者らによる意思決定機関「評議会(シューラ)」を開催する。同日中のビンラディン氏引き渡し問題への対応決定を目指す。(日経)
タリバン、身柄引き渡しに応じるかどうか最終判断
【イスラマバード春日孝之】アフガニスタンのタリバン政権は19日、首都カブールの旧大統領府で、国会に相当する聖職者会合を開始した。アフガン・イスラム通信が伝えた。米国が要求するウサマ・ビンラディン氏の身柄引き渡しに応じるかどうか、最終的な結論を出す。拒否した場合、米国の軍事行動は不可避の情勢となる。
会合には全国から約1000人が参集。攻撃された場合の米国に対するジハード(聖戦)の布告や、防衛態勢などについても決定を下すとみられている。
タリバンはビンラディン氏の同時多発テロ関与を一貫して否定。「容疑はアフガン攻撃の口実にすぎない」と主張し、国民に「ジハードに備えよ」と呼びかけている。
米ワシントン・ポスト紙はタリバンの最高指導者オマル師が17日にパキスタン政府代表団と会談した際、ビンラディン氏の引き渡しを明確に拒否したと報じた。しかし、オマル師が(1)国際社会による政権承認(2)国連制裁の解除――などの条件を提示したとの未確認情報もあり、条件付きで引き渡し要求に応じる可能性はある。
聖職者会合での論議は長時間に及ぶことが予想される。AFP通信は19日、会合は少なくとも20日まで続くとタリバン幹部が語ったと伝えた。
[毎日新聞9月20日]
【C・G8首脳声明、テロ非難】
「平和、繁栄への脅威」 G8首脳声明、テロ非難
主要8カ国(G8)の各国首脳は19日、テロ攻撃を防止するため、「G8首脳声明」を発表した。小泉首相が20日未明、声明文を公表した。
テロについて「すべての国、すべての人々、すべての信仰の平和と繁栄と安全に対する深刻な脅威である」と非難。「我々は、憎しみとテロを犯す者により世界の諸国民や諸文化を分断することは許さない」と宣言した。
具体的には、テロリストへの資金の流れを断ち切る措置や制裁の行使の拡大、航空安全、武器輸出の管理、治安当局間の協力、テロに対するすべての支援の拒絶、テロの脅威の特定と除去などであることを明らかにした。(朝日02:10)
【D・米軍の爆撃機や戦闘機など合わせて百機以上を中東方面に増派命令】
米軍機100機、中東に増派 空母も異例の3隻態勢
【ワシントン19日=内藤泰朗】ラムズフェルド米国防長官は十九日、米軍の爆撃機や戦闘機など合わせて百機以上を中東方面に増派する命令を下した。米中枢同時テロを受けた軍事作戦開始に向けた動きが本格化していることを示すもので、国防総省筋が明らかにしたところによると、これらの攻撃機は早ければ、二十日にも湾岸地域の基地に配備される。19日、米バージニア州の海軍基地を出港する原子力空母「セオドア・ルーズベルト」(AP)(産経)
【E・パキスタンで反米デモ】
反米デモで初の死者 警察側が発砲 パキスタン
【イスラマバード春日孝之】ロイター通信などによると、パキスタン南部カラチで21日、反米を訴えるイスラム過激派のデモ隊が警察隊と衝突し、デモ隊の1人が射殺され、3人が負傷した。警察側もデモ隊の投石で10人が負傷したという。パキスタンが米国への「全面支援」を表明した15日以降、国内でアフガニスタン・タリバン政権を支持するイスラム過激派の抗議が続いているが、死者が出たのは初めて。
[毎日新聞9月21日]
(9/21)パキスタンで反米デモ相次ぐ
【ニューデリー21日=吉野蔵一】パキスタンではアフガニスタンとの国境付近や南部カラチなどの大都市ではイスラム教徒らの大規模な反米デモが相次いでおり、急進的なイスラム教徒と一般市民との意識差も浮き彫りとなっている。米同時テロ事件を巡る米政府の報復攻撃への積極協力を表明した19日のムシャラフ大統領のテレビ演説後、対米協力支持論が広がる兆しも出始めた。
英BBC放送は大統領演説から一夜明けた20日のイスラマバードの表情を報道。その中では「『国家始まって以来の危機的状況』という大統領の演説を聞いて初めて我が国が難しい立場にあると知った」と語る市民の声が目立った。
現地からの報道では「大統領の言葉で見方が変わった。我が国を『テロ支援国家』と非難するインドの言い分を否定するためにも、タリバン攻撃はやむを得ない」などの「積極支持」も増加。パキスタンはインドとの間に国境問題を抱えており、大統領が演説でインドのパキスタン批判に言及したことが国民の危機意識を目覚めさせたようだ。
一方、複数のイスラム政党は国内のイスラム神学生らに全土でのデモを呼び掛けている。21日には商業都市カラチで200人のデモ隊が市内バスに投石。「米国に死を」と連呼して、タイヤに火をつけて警察隊と衝突したという。
イスラマバードからの報道によると、ムシャラフ大統領は20日、対アフガニスタン国境の北西辺境州とバルチスタン州の少数民族代表をイスラマバードに呼び、対米積極協力の方針に理解を求めた。
容疑者19人中、3人は別人か
【カイロ小倉孝保】同時多発テロで、米捜査当局が容疑者として発表したアラブ系19人のうち3人が18日までに、アラブ紙に「私は事件当時、米国にいなかった」などと語った。パスポートを盗まれた人もおり、なりすました別人が犯行を行った可能性もある。
アメリカン航空11便に乗っていたとされるアブドル・アジズ・アルオマリ氏は93年、米コロラド州の大学に留学。95年、アパートに泥棒が入りパスポートを盗まれたという。同年12月に新しいパスポートを発行してもらい、現在はリヤドの通信系企業に勤務。テロ事件当時も会社にいたという。同氏は「米国が発表した人物は生年月日、名前が私と一緒だが、紛失したパスポートを別人が使ったと思う」と話す。
また、ユナイテッド航空93便に乗っていたとされるサイード・アルガムディ氏はサウジアラビア航空のパイロットで、8カ月前からチュニジアで研修中だ。CNNテレビで容疑者として自分の名前と顔写真が報道され驚いたという。アメリカン航空77便のサレム・アルハムジ氏も「この2年間サウジから出ていない」と関与を否定している。
[毎日新聞9月20日]
犠牲者は62の国・地域
同時多発テロの犠牲者の出身国・地域について米国務省のバウチャー報道官は17日、62に上ることを明らかにした。米国メディアは被害者の総数しか報じていないが、各国の報道を調べた限りでは、被害者総数が不明な米国を含め、55の国・地域で犠牲者が確認されている。世界の政治・経済の2大中心都市を襲った惨劇は「人種のるつぼ」といわれる米国の断面を象徴している。
これまでに判明している死者・行方不明者は墜落した旅客機の乗客・乗員や容疑者を含め、ニューヨークの世界貿易センタービルで5422人▽ワシントン近郊の国防総省で188人▽ペンシルベニア州で墜落した旅客機の乗客・乗員44人――の計5654人。うち公表された死亡者は201人。 【長谷川豊】
◆同時多発テロ事件での国・地域別の不明者・死者数
※各国の政府発表やAFPなどの報道による判明分(18日現在)。カッコ内は確認された死者数
合計(含む米国) 5654人(201) <欧州> 英国 200〜300人(100) ロシア 117人 ドイツ 100人(4) ベルギー 60人 イタリア 49人 オーストリア 40人 アイルランド 24人以上(4) フィンランド 17人 スペイン 8人 スイス 6人(4) デンマーク 5人 ポルトガル 5人 オランダ 3人以上 ノルウェー 1人 スウェーデン 1人 ウクライナ 1人 フランス 少数 <北米・中南米> ホンジュラス 500人 メキシコ 500人 コロンビア 295人 チリ 250人以上 エルサルバドル 100人(1) カナダ 40〜75人(3) ブラジル 55人 エクアドル 27人(7) ドミニカ 8人(1) グアテマラ 5人 パラグアイ 2人 ペルー 6人(1) アルゼンチン 4人 ベネズエラ 3人 ウルグアイ 1人 <中東・アフリカ> トルコ 131人 イスラエル 10人(2) レバノン 6人(2) 南アフリカ 6人 ジンバブエ 6人 エジプト 4人 ガーナ 4人 ヨルダン 1人 ケニア 1人 <アジア・オセアニア> フィリピン 117人(2) オーストラリア 72人(3) バングラデシュ 50人 日本 24人 パキスタン 21人(1) カンボジア 20人 香港 19人 タイ 19人 韓国 18人(2) 台湾 9人 中国 4人(3) マレーシア 4人 インドネシア 2人(1)
[毎日新聞9月19日]
首相訪米:「大統領は喜んで会うだろう」 米大統領報道官
【ワシントン清宮克良】フライシャー米大統領報道官は19日、小泉純一郎首相が同時多発テロの対応をブッシュ大統領と協議するため緊急渡米する意向であることについて「大統領は日本の首相といつでも喜んで会うだろう」と述べた。日米両政府は21日を軸に会談開催の調整をしている。報道官はテロ対策は米国を中心とした国際協調体制で行なう必要があると強調した。
[毎日新聞9月20日] ( 2001-09-20-12:09 )
米空軍:ユーゴ空爆指揮した司令官がサウジ入り
米紙ニューヨーク・タイムズは21日、99年のユーゴスラビア空爆を立案、成功させた米空軍第9空軍司令官のチャールズ・ワルド中将がアフガニスタン空爆を指揮するため、サウジアラビアの空軍基地に到着したと報じた。
同司令官は米空軍の中東・南西アジア地域の作戦拠点となるサウジアラビアのスルタン王子空軍基地で指揮を執る。(ワシントン共同)
[毎日新聞9月22日] ( 2001-09-22-09:59 )
ビンラディン氏の逮捕は不可能 独特殊部隊司令官
ドイツ連邦軍特殊部隊のギュンツェル司令官は、21日のドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)との会見で、ウサマ・ビンラディン氏の逮捕は不可能との見方を示した。司令官は、逮捕作戦を強行すれば「大量殺りくを招く」と強調。「米国、イスラエル、フランス、英国の特殊部隊も現状では逮捕作戦の実施は不可能と認識している」と述べた。(ベルリン共同)
[毎日新聞9月21日]
第七ラウンド |
@・ブッシュ大統領の議会演説
A・ビンラディン氏の動向情報
B・アメリカの外交根回し
C・米軍機の一部をウズベクとタジクに配備
D・聖職者会合 ビンラディン氏にアフガンからの自主退去を勧告
E・同時テロの経済的余波
【@・ブッシュ大統領の議会演説】
米大統領の議会演説 国際社会に「踏み絵」
【ワシントン布施広】ブッシュ米大統領は20日の議会演説で、テロとの戦闘開始を宣言する一方、国際社会に向けて「米国の側につくか、テロリストの側か」と「踏み絵」を突き付けた。対テロ戦争への協力の度合いによって同盟国と敵対国を選別する、米国の新たな外交と世界再編が始まったと言えよう。だが、ブッシュ大統領の「十字軍」発言は、イスラム世界に反発を広げており、米国に対する国際社会の同情が長く続くかどうか、疑問視する見方も強い。
キリスト教圏の十字軍と戦ったイスラム世界では、十字軍は侵略軍にほかならない。イスラム諸国は「赤十字」の十字をイスラムの象徴である新月に置き換え、「赤新月」と呼び替える。同時多発テロへの報復行動を「十字軍」に例えた大統領の発言(16日)に、イスラム諸国が戸惑い、反発したのは当然である。
この発言の穴埋めのように、ブッシュ大統領はワシントンのイスラムセンターを訪問したり、イスラム大国であるインドネシアとサウジアラビアの大統領、外相を米国に招き、米国との協調関係を誇示した。議会演説でも「米国人の敵は、多くのイスラムの友人たちではない」と強調した。
だが、米国の軍事報復が始まれば、アフガニスタンのタリバン政権の拠点には星条旗が立てられ、イスラム国家で果てしない殺りくが始まることが予想される。空爆などで多くの一般市民が犠牲になれば、イスラム世界の対米同情論は急速に薄らぐだろう。
「テロとの戦争」は、確かに正義の戦いである。だが、サウド・サウジ外相が「世界が求めるのは復讐ではなく、公正さである」と語ったように、米国には冷静な対応が求められる。圧倒的な軍事力と経済力に、「被害者」としての強みを加えた米国が、怒りにまかせて暴走するような事態は極めて危険だ。
なぜ米国がテロの標的になるのか、という分析や自省も必要だろう。イスラム原理主義組織のテロは突出した行為であり、憎むべき犯罪だが、その背景に、長年にわたって醸し出されたイスラム世界の米国への反感があることは否めない。ブッシュ政権が「テロとの戦争」に真の勝利を収めるには、イスラム世界の理解と協力が不可欠だ。
[毎日新聞9月21日]
テロとの総力戦宣言、国民に決意求める 米大統領
【ワシントン吉田弘之】ブッシュ米大統領は20日午後9時(日本時間21日午前10時)過ぎ、同時多発テロ事件後初めて米上下両院合同本会議で演説した。大統領はアフガニスタンに潜むウサマ・ビンラディン氏を重要容疑者と改めて名指しし、同氏を含むすべてのテロリストの無条件即時引き渡しをタリバン政権に要求した。また米軍に軍事報復の準備を求める一方、長期にわたる「テロとの戦争」を勝ち抜くための決意と平静さを国民に求めた。
大統領は30分余りにわたった演説の冒頭、同時テロについて、米捜査当局が集めた証拠は「ビンラディンの組織『アルカイダ』がテロを実行したことを示している」と指摘。タリバン政権に「アルカイダ」の指導層全員を直ちに引き渡すよう求め、応じなければ「タリバンはテロリストと運命をともにする」と、軍事報復を警告した。
また、投獄されている米国人を含む外国人全員の釈放▽すべてのテロ訓練キャンプの閉鎖▽キャンプ閉鎖後の米国による立ち入り調査――などを要求した。
大統領は今回の事件で「米国は危機に目覚め、自由を守ることを迫られた」と指摘。「テロの世界ネットワークを打ち破るために、外交、司法、金融での影響力など、あらゆる力、武器を使う」と述べ、テロと戦う姿勢を強調した。
また「アルカイダ」への支援が指摘される外国政府に対し「米国の側につくのか、テロリストの側か、選択しなければならない」と態度決定を求め、テロ組織を直接間接に支援する国には厳しく対処していく方針を改めて示唆した。
一方で、「米国の敵はイスラム教徒やアラブの友人たちではない。テロリストだ」と述べ、イスラム諸国への配慮を示した。
また、今回のテロを防げなかった反省から「テロとの戦いのための準備と祖国防衛」の必要性を強調。閣僚レベルの「国土安全保障局」を創設する方針を明らかにした。
米メディアは今回の大統領の議会演説を、日本軍による真珠湾攻撃(1941年)直後のフランクリン・ルーズベルト大統領の議会演説になぞらえ、その重要性を指摘。演説には訪米中のブレア英首相や、同時テロで最大の犠牲者が出たニューヨークのジュリアーニ市長らが出席した。
[毎日新聞9月21日]
大統領の議会演説にチェイニー副大統領は出席せず
【ワシントン吉田弘之】ブッシュ大統領が20日、行った議会演説に、チェイニー副大統領は出席しなかった。上院議長を兼任する副大統領が、こうした大統領演説に出席しないのは極めて異例。
副大統領は大統領が死亡した際、大統領に昇格することから、テロが発生した場合に備えた措置とみられる。同時多発テロ発生後、2人はほとんど行動を共にしていない。
[毎日新聞9月21日]
【A・ビンラディン氏の動向情報】
ビンラディン氏、出国か パキスタン紙が報道
21日付パキスタン紙ニューズは、アフガニスタンのタリバン政権に近い複数の消息筋の話として、米同時多発テロの黒幕とされるウサマ・ビンラディン氏が、タリバンの意思決定機関、聖職者会合による国外退去勧告の少なくとも4日前にアフガンを出国したと報じた。
消息筋によると、ビンラディン氏は健康で、護衛には命をいとわない複数のアラブ人の若者が同行しているという。出国先について、イスラム教団体の関係者はロシア・チェチェン共和国かレバノンを挙げているという。
パキスタンの元内相もビンラディン氏が出国したと述べ、評議会の開催、決定までに時間がかかったのは、同氏を出国させるための時間稼ぎだった可能性があると指摘した。(イスラマバード共同)
[毎日新聞9月21日]
【B・アメリカの外交根回し】
NATO同盟国へ理解と結束求める 米国務副長官
【ブリュッセル森忠彦】米国のアーミテージ国務副長官は20日、北大西洋条約機構(NATO)本部を訪れ、大使級理事会に出席。同時多発テロ事件に関する同盟国の理解と結束を求めた。NATOはすでに先週、米国の要請があれば同条約第5条による「集団的自衛権」を発動することを決めているが、この日の協議の中で米国側からの具体的な要請はなかった。
理事会の後、記者会見した副長官は「同盟国に対して第5条発動の承認への感謝を伝えた。アフガニスタンから始まる今回のテロとの戦いは必ずしも軍事面だけのものではない。政治、経済などのあらゆる面ですべての国の理解をえる必要がある」と語った。
[毎日新聞9月21日]
(9/21)EU、米の報復容認し攻撃に同調
【ブリュッセル21日=品田卓】欧州連合(EU)各国は21日、ブリュッセルで首脳会議を開き、米国の同時テロ事件を受けた米の報復行動の正当性を認め、加盟各国が「それぞれの手段に従って」米国と共同で行動する姿勢を打ち出した。報復行動の対象の安易な拡大にくぎをさす一方で「行動はテロリストを支持、かくまう国家にも向けられる」とし、テロ組織だけではなく支援国家への攻撃も認めた。
反テロの国際連携では「国連主導とし、EU加盟候補国、ロシア、アラブ、イスラム諸国などを含むべきだ」と最大限幅広い包囲網を築く必要性を指摘した。
北大西洋条約機構(NATO)は加盟国の攻撃を同盟国全体への攻撃と見なして共同で軍事行動に出る「集団的自衛権」を発動する方針を決めている。EUは15カ国のうち11カ国がNATO加盟国だが、スウェーデン、オーストリアなど中立国も含まれる。
EU首脳がテロ組織だけではなくテロ支援国家への攻撃も認めたうえ、中立国を含めて米の作戦に何らかの形で協力する姿勢を打ち出したことで、米の報復行動の流れが加速するのは必至だ。
一方、EU首脳はテロ事件をきっかけに中東和平交渉を加速させる必要があると判断、イスラエルとパレスチナ両首脳による対話の実現を呼び掛けた。これを後押しするため、閣僚級代表団を来週、シリア、イランなど中東各国に派遣することで合意した。
共通のテロ政策承認へ EU司法・内相理事会
【ブリュッセル森忠彦】米国の同時多発テロ事件を受けた欧州連合(EU)の司法・内相理事会が20日、開かれた。テロ容疑者にはEU共通の逮捕状を発行、20年以上の禁固刑を設けるなどの本格的なEU共通のテロ政策を承認する。
欧州委員会の提案によると、新政策はテロ行為の犯罪性を明確に定義づけた上で、容疑者にはEU全域での捜査・逮捕が可能な広域の逮捕状を発行する。欧州大陸では日常の国境検問は事実上廃止されているが、法律に関しては各国の刑法などがまちまちで、横の連絡も甘い。
今回のテロ事件に関してもフランスを拠点としたイスラム原理主義者の犯罪組織が、ベルギーやオランダ、ドイツなどに居住し、域内を転々としていた。だが、加盟国15カ国のうち、9カ国にはテロ行為を対象とした法律が整備されていない。
[毎日新聞9月20日]
【C・米軍機の一部をウズベクとタジクに配備】
米軍機の一部をウズベクとタジクに配備 米紙報道
【ワシントン中井良則】20日付ワシントン・ポスト紙は、国防総省当局者の話として、同時多発テロに対する軍事報復で中東地域に増派される米軍機の一部がウズベキスタンとタジキスタンに配備されると伝えた。旧ソ連の中央アジア諸国に米軍が展開するのは初めて。
同紙によると19日、パウエル国務長官と会談したイワノフ露外相は、米国がウサマ・ビンラディン氏に対する軍事行動で旧ソ連の中央アジア諸国を使うことにロシアが反対しない意向を伝えた。
両国はアフガニスタンに隣接し、アフガンへの爆撃や特殊部隊投入の拠点となりうる。また両国の受け入れにより、米国はパキスタンに対し米軍機駐留を認めるよう圧力を強めることができる。
[毎日新聞9月21日]
【D・聖職者会合 ビンラディン氏にアフガンからの自主退去を勧告】
聖職者会合 ビンラディン氏にアフガンからの自主退去を勧告
【イスラマバード中坪央暁】アフガニスタンを実効支配するタリバン政権は20日、首都カブールの旧大統領府で国会に相当する聖職者会合を19日に続いて開き、米国が同時多発テロの最重要容疑者とみなし身柄の引き渡しを要求しているウサマ・ビンラディン氏に対し「アフガンからの自主退去」を勧告するファトワ(宗教布告)を発した。アフガン・イスラム通信がタリバン幹部の話として伝えた。
【E・同時テロの経済的余波】
(9/21)航空保険料、大幅値上げ・賠償額を圧縮
世界の損害保険会社が、日本航空、全日本空輸を含む内外の全民間航空会社に、航空保険料の大幅増額と賠償額(保険金)の引き下げを通告したことが21日、明らかになった。同時テロに対する米国の報復軍事行動が近いとの観測から、航空保険のリスクが高まると判断した。日航、全日空の場合、保険料は5-6倍になる見込み。需要急減で苦境に立つ世界の航空会社にとって大きな打撃になる。
日航、全日空は25日にも保険料引き上げの通告を受けたことを発表、運賃への転嫁など対応策を検討する。
航空保険は、航空機の事故による機体の損傷や死傷した乗客への損害賠償などを補償する保険。1991年の湾岸戦争時にはその前後の3カ月間、全地域の航空保険料が2割前後引き上げられたが、一気に数倍に上がるのは初めて。
損保会社はまず追加保険料の支払いを要求。全航空会社一律で、旅客1人あたり1.25ドルを従来の保険料に上乗せする。いつまで追加保険料を適用するかは明示していない。世界の航空旅客数は2000年で14億1000万人強だった。単純計算すると航空業界の負担増は17億ドル以上となる。
さらに、事故が起こった際の貨物や第三者(ビル、建造物やそこにいた人など)に対する賠償額の上限について、数10億ドルとみられる現在の契約額を一気に数10分の1に引き下げる。
これらの通告に従わなければ、戦争やテロ、ハイジャックなど「特殊事故」による賠償責任保険を契約から除外し、こうした場合には保険金を支払わない。
これらの見直しは国際線、国内線の区別なく定期便を運航しているすべての民間航空会社が対象で、10月1日までに適用するとしている。日航と全日空には保険契約を結んでいる東京海上火災保険が通告した。
日航、全日空の場合、それぞれ年間で4000万―4500万人前後を輸送しており、追加保険料は年換算すると50億―60億円規模となる。両社が現在支払っている航空保険料はそれぞれ年間10億円前後(1人あたり0.2ドル強)とみられ、大幅に保険料が上がる。
両社は損保会社からの要求は受けざるをえないと判断。経営環境が厳しいことから、運賃への転嫁のほか、日本政府への支援要請なども含めて検討する考えだ。
民間の航空保険料が急騰することを受け、ミネタ米運輸長官は20日、連邦政府が民間機のテロ発生リスクなどを肩代わりする「航空戦時保険制度」を米航空会社の国内便に拡大適用する方針を明らかにした。欧州連合(EU)は航空保険料問題を、21日から開かれる非公式財務相理事会で取り上げる方針だ。
政府による支援を要請している英ブリティッシュ・エアウェイズは21日、「政府、損保会社との三者の交渉が進んでおり、近く解決策が明らかになる」との声明を発表した。一方、豪カンタス航空やシンガポール航空は今回の保険料引き上げに対応して、運賃に転嫁する方針を固めた。(日経)
(9/21)米政府、航空業界に2兆円規模援助・来週にも実施
【ワシントン21日=安藤淳】米政府は同時テロの影響で経営危機にある航空業界に180億ドル(約2兆円)規模の支援案を固めた。議会が関連法案を可決するのを待って来週中にも実施に移す。政府が民間企業に資金援助するのは1979年の自動車大手クライスラー以来。
空港閉鎖命令など政府の措置で航空会社に生じた損失を埋め合わせるのが目的で、資金贈与分の50億ドルは航空機のリース代支払い、給与など当面の運転資金向け。各社の運航距離や座席数に応じて配分する。
空港の高度な荷物点検装置導入など安全強化にも30億ドルを出す。航空会社が借り入れをする際、政府が返済を保証する100億ドルの枠も設ける。
政府はテロの被害額の詳細な分析データを業界に要求、「経営失敗のツケを国民が負わされる」と批判されないよう細心の注意を払っている。
連邦政府による民間への資金援助は過去に71年のロッキードに対する2億5000万ドルの債務保証、79年のクライスラーに対する15億ドルの債務保証などがある程度。金融機関に対しては80年代にコンチネンタル・イリノイ銀行、80年代後半から90年代初めに貯蓄金融機関(S&L)の経営危機で公的資金を導入したが、直接の資金贈与は例がないという。
クライスラー救済には批判も多かったが、米産業を代表するビッグスリーの一角が崩れるのを恐れた。ロッキードには軍用機を大量発注していたため、安全保障上の理由から救済した。両社は政府保証付き融資をすべて期限内に返した。(日経)
【F・EU首脳会議がアメリカ全面支援】
「米の対応、全面支持」とアフガン攻撃認める EU首脳会議
【ブリュッセル森忠彦】米国の同時多発テロ事件を受けた欧州連合(EU)の緊急首脳会議が21日夜、EU本部で開かれ、「米国の対応を全面的に支援し、団結してテロの撲滅に当たる」との議長総括を採択した。米国の報復攻撃に向けて欧州が一体となって「お墨付き」を与えた形だ。
事件後初の先進国間の首脳会議は厳戒体制の中で開かれた。議長国ベルギーがまとめた議長総括は「テロの支援国家も攻撃の対象となる」との見解も表明。米国が準備を進めているアフガニスタン攻撃も支持したことになる。EU15カ国のうち11カ国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)はすでに、米国の要請があれば「集団的自衛権」を発動することで合意しているが、スウェーデンなど中立国もEU加盟国として米国の基本姿勢に賛成した。
また長期的なテロ対策としてEU内や米国との捜査協力を強め、広域犯罪にかかわる組織のリスト化や資金源の封鎖、容疑者にEU共通の逮捕状を発行するなどの措置を導入し、世界規模に及ぶテロ犯罪の撲滅を加速させる施策を打ち出した。議長のフェルホフスタット・ベルギー首相は「具体的な行動計画が示せた。EUはテロには容赦しない」と語った。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
米、欧州の協力求める 対イランの関係改善へ向け
◇テロ報復、軍事行動で重視
【ワシントン布施広】パウエル米国務長官は21日、敵対してきたイランとの関係改善に向け、同国と国交を持つ欧州諸国の協力を求めていることを明らかにした。一方、同時多発テロを受けた米国の軍事報復に関連し、ハタミ・イラン大統領は20日、英国のブレア首相と電話会談し、報復がアフガニスタンに壊滅的状況を招かないため、自制を促すよう求めた。英・イラン両首脳の接触が明らかになったのは極めて異例。仲介役の英国などを通じ、米・イラン関係改善の機運が高まっている。
イランには英国のストロー外相が来週初めに訪問、欧州連合(EU)議長国ベルギーのミシェル外相ら閣僚代表団も、24日からイランを含む中東諸国を歴訪する。パウエル長官は20日訪米したブレア英首相と、ストロー外相のイラン訪問について協議したと述べ、「テロと戦う協力を得るためには、いかなる機会も検討する」と対イラン関係改善への意欲を示した。
今回のテロ事件後、アフガニスタンに潜伏するとされるウサマ・ビンラディン氏の関与が濃厚になると、イランは対アフガン国境を閉鎖。ビンラディン氏らの逃亡を阻止したい米側を喜ばせた。フライシャー米大統領報道官によると、イランはテロの犠牲者を悼むメッセージを米政府に伝達、米側は感謝する書面をイランに送った。
アフガニスタンに隣接するイランは軍事、地政学的に重要度を増している。パウエル長官によると、イランを訪問するストロー外相は、関係改善を模索する米側の意向をイラン政府に伝える予定。米側は、EU代表団のイラン訪問を通じたハタミ政権との歩み寄りにも期待している。
米国は79年のイスラム革命以来、イランと険悪な関係になり、テヘラン米大使館占拠事件を機に断交。だが、クリントン前政権はハタミ大統領の「文明の対話」論を評価。ブッシュ政権は、イランとの石油資源取引を求める米業界の要望もあって、対イラン制裁の緩和に前向きな姿勢を見せている。また、やはり敵対してきた英国は99年、イランと関係を正常化させたが、外相訪問はたびたび延期されていた。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
米、タリバンへの証拠提出拒否
【ワシントン21日=池内新太郎】フライシャー米大統領報道官は21日の記者会見で、米同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の引き渡しをめぐりアフガニスタンのタリバン政権が米側に証拠の提示を求めていることについて「交渉はしない。証拠を示すのは貴重な情報を提供するのと同じだ」と拒否し、同氏の無条件引き渡しを重ねて求めた。
報道官は25日にワシントンで日米首脳会談を開くことを正式に発表。会談では「日米二国間、多国間の双方の観点から、テロに対抗する次のステップについて話し合う」と表明した。
一方、ブッシュ大統領はトルコのセゼル大統領、ナイジェリアのオバサンジョ大統領、オマーンのカブース国王に相次いで電話し、反テロ連合形成への外交努力を続けた。24日にはカナダのクレティエン首相が訪米し、米加首脳会談を開く。
大統領はまた、先に成立した400億ドル(約4兆7000億円)の緊急予算から51億ドルを国防総省の復旧や民間航空機の安全強化、テロに関する情報提供への謝礼などに支出することを決めた。(日経)
ビンラディン氏容疑の証拠、米が開示拒否
【ワシントン布施広】フライシャー米大統領報道官は21日、アフガニスタンのタリバン政権がウサマ・ビンラディン氏を同時多発テロの容疑者と断定する「証拠」の提示を求めたことに関連し、「捜査情報の開示はテロ組織を利する結果になる」と述べ、タリバン側の要求を拒否した。
一方で、報道官は、タリバン側の見解はマスコミ報道によるもので「米国は公式な返答を受け取っていない」と述べ、暗にタリバン側の再考を求める態度を見せたが、一切、交渉はしない方針を明確にした。また、軍事報復の方針に変わりないことを強調した。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
(9/21)「報復はテロと同じ」イスラム教信者、警戒感あらわに
米中枢同時テロに対する報復攻撃の緊張が高まる中、金曜日の礼拝のため日本各地のイスラム教施設を訪れた信者たちは21日、「無関係な住民への攻撃はテロと同じ」などと、米国の動きへの警戒感をあらわにした。
神戸市中央区の「神戸ムスリムモスク」。正午すぎから正装した男性や頭にベールをかぶった女性約50人が訪れ、祈りの声が流れると、ひざまずく信者の姿が見られた。
「だれがやったか証拠を出してから、戦争の準備をすべきだ」。パキスタン人の自営業ジャニ・アーメドさん(35)は強い口調で言い切った。
パキスタン人の貿易業クレシ・カムラン・マムードさん(37)も「米国がアフガニスタンを攻撃しても無実の民衆が苦しむだけで、テロリストはなくならない」と話した。
「東京ジャーミイ・文化センター」(渋谷区)には約200人が集まり、礼拝所は満員。アフガニスタン出身のアミン・コヒィさん(60)は「タリバンはイスラムのためではなく、自分たちのために戦っている。報復は仕方ないが、米国ではなく国連が(アフガニスタンに)新しい政府をつくってほしい」と、時折声を詰まらせながら話した。
京都市左京区のアパートの集会場には、約50人の信者が集まった。インドネシアから京大に留学中のセティアディ・ラフマットさん(30)は「テロの首謀者や、テロが起きた背景を冷静に分析するのが先だ。いま攻撃すれば、報復の繰り返しになるだけだ」と強調した。
今年5月、富山県小杉町で聖典コーランが破り捨てられた事件で、警察に届けたパキスタン人のイムティアーズ・アーメド・ゴンダルさん(37)は「今回のテロはイスラム全体がやったわけではない。米国が報復を考えるのも仕方ないが、一般の人が被害を受けてしまったら、今回のテロリストと何も変わらない」と話していた。(日経)
テロ対策へ専門家会合、米中外相が合意 安保理根回し着
【ワシントン布施広】訪米した中国の唐家セン外相は21日、パウエル国務長官と会談し、「テロは両国共通の脅威」との認識で一致、テロ対策の米中専門家会合を25日にワシントンで開くことで合意した。同時多発テロ事件後、仏、露、英の首脳や外相が相次いで訪米し連携を表明しており、米国は報復攻撃に向けて、国連安保理常任理事国の間での当面の根回しを終えたことになる。
その他の主要国については、ブッシュ大統領は24日にカナダのクレティエン首相、25日には小泉純一郎首相と会談する。
アフガニスタンに隣接する中国は、同時テロの容疑者とされるウサマ・ビンラディン氏やタリバン政権に関する有力情報を持つものとみられる。情報提供は米側の軍事作戦立案に有益だが、唐外相は具体的な協力事項には触れず、特に軍事面での協力は話題に上らなかったという。
パウエル長官と唐外相は、米軍機の在ベオグラード中国大使館誤爆事件(99年5月)を境に凍結された人権対話を、来月1〜3日にワシントンで再開することでも合意した。唐外相はブッシュ大統領とも会談した。
ブッシュ大統領は来月上海で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)を機に中国公式訪問を予定。唐外相は米中首脳会談の準備も兼ねて訪米した。共同会見で、唐外相は「中国はあらゆる形態のテロに強く反対する」と述べ、テロ問題に関して米国と緊密に協議する意向を示した。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
米スター100人、支援呼び掛け 史上最大規模チャリティー
【ニューヨーク佐藤由紀】米国での同時多発テロ事件の犠牲者家族などに献金を呼び掛けるチャリティー番組「アメリカ・トリビュート・トゥ・ヒーローズ(英雄にささぐ)」が21日夜(日本時間22日午前)、2時間にわたり全米に生中継された。ニューヨークとロサンゼルスのスタジオにハリウッドやポップ音楽界のスターが集合し、全米30局のテレビ、ラジオ局、インターネットに同時に流れる史上最大規模のチャリティーとなった。
番組はブルース・スプリングスティーンが「ぼくの街が破壊された。さあ立ち上がろう」と熱唱して幕を開け、トム・ハンクス、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ロバート・デニーロ、スティングら100人以上の人気アーティストが出演した。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
第七ラウンド |
@・英特殊部隊がタリバンと銃撃戦か
A・米ミサイル予算が復活
B・パキスタンの反米デモ、参加者4万人に
C・反タリバン連合、米に協力申し入れ
D・プーチン・ロシア大統領が米と共同行動とる用意ある声明
E・米、印パ経済制裁の解除決定
【@・英特殊部隊がタリバンと銃撃戦か】
アフガニスタン:英特殊部隊がタリバンと銃撃戦か 英紙報道
23日付の英紙メール・オン・サンデーは、アフガニスタンのタリバン支配地域で偵察、情報活動を行っていた英陸軍特殊部隊が21日、カブールの丘陵地でタリバン兵士との間で銃撃戦になったと報じた。
特殊部隊は4人組で、5日前からアフガンで活動していた。タリバン側と偶然出合い、銃撃戦となったが、犠牲者はいないという。
一方、サンデー・タイムズ紙によると、アフガン北部では英陸軍特殊部隊、英情報局秘密情報部(MI6)、米中央情報局(CIA)が反タリバンの北部同盟の協力を得て既に活動しており、ウサマ・ビンラディン氏の所在調査や逃走ルート遮断を進めている。
英国防省報道官はロイター通信に「特殊部隊に関する事柄は一切話さない。英軍は現在、米軍をいかに支援できるかを検討している段階だ」と語った。
(ロンドン共同)
[毎日新聞9月23日] ( 2001-09-23-12:39 )
【A・米ミサイル予算が復活】
米ミサイル予算が復活 民主党、対決姿勢に影ひそめる
【ワシントン中井良則】米国での同時多発テロを受け、米上院は21日、事件前に民主党が減らしたミサイル防衛予算13億ドルを復活させ、10月からの02会計年度国防予算を来週中に成立させることで合意した。民主党はブッシュ政権のミサイル防衛を批判し予算減額で対決姿勢を打ち出したが、同時テロ後、政府との協調姿勢に転換した。
レビン上院軍事委員長は「危機の時には行動は異なるものだ。違いはひとまず、棚上げだ」と述べ、同時テロ以前の政府批判とは様変わりした。
テロの4日前の7日、民主党が多数を握る上院軍事委員会で、ミサイル防衛関連予算83億ドルのうち13億ドルを削り、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約違反の実験には議会の事前承認を義務付ける案が可決された。ラムズフェルド国防長官は「有害な決定だ」と批判し、ブッシュ大統領に拒否権行使を勧告する方針を示していた。
党派対立が顕著になり、予算審議は難航するとみられていたが、民主党は21日、満額の承認と事前承認条項の撤回に応じた。また、ブッシュ大統領はミサイル防衛予算をテロ対策費に転用する権限を認められた。テロ事件をきっかけにした国防意識の高揚を背景にした動きといえそうだ。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
【B・パキスタンの反米デモ、参加者4万人に】
パキスタンの反米デモ、参加者4万人に
【イスラマバード支局】パキスタン最大の都市カラチで21日、警官隊の発砲で参加者4人が死亡したタリバン政権を支持するイスラム過激派の反米抗議デモは、最終的な参加者が4万人に上った。一部の参加者は酒類販売店に放火したり、マクドナルドなど米系チェーン店の窓ガラスを割るなどした。イスラム過激派は米国への協力を約束したパキスタン政府に反対し、全国的なデモを呼びかけていた。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
【C・反タリバン連合、米に協力申し入れ】
兵士3万人の協力、米に申し入れ 反タリバン連合
【ワシントン吉田弘之】ロイター通信は21日、アフガニスタンの「反タリバン連合」(北部同盟)が米政府に対し約3万人に上る兵士に攻撃、情報収集支援などでの協力を申し出たと報じた。ラムズフェルド米国防長官が対アフガン軍事報復に関連し、「反タリバン連合」との共闘の意向を示していることを受けたものとみられる。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
【D・プーチン・ロシア大統領が米と共同行動とる用意ある声明】
米と共同行動とる用意ある プーチン・ロシア大統領
【モスクワ石郷岡建】ロシアのプーチン大統領は21日、ドイツ公式訪問を前に独マスコミのインタビューに応じ、対米同時多発テロ事件に関して「ロシアは広い意味で、米国と共同行動をとる用意がある」と表明。「情報機関同士は既に協力し合っている」と述べた。
米国の軍事作戦への参加については「いつ、どのような規模で行うのか具体的な提案を見てからにしたい」と、必ずしも完全拒否ではないとの立場を示したが、ロシア軍派遣には「連邦会議の承認が必要であり、第三国への派遣は国連安保理決議が必要だ」と語った。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
【E米、印パ経済制裁の解除決定】
米、印パ経済制裁の解除決定
【ワシントン22日共同】ブッシュ米大統領は22日、1998年にインドとパキスタンが相次いで行った核実験を理由に両国に科している経済制裁について「米国の安全保障上の利益にならない」とし、解除すると発表した。米国によるアフガニスタン・タリバン政権への報復攻撃を支持・協力する両国への「報酬」で、米中枢同時テロの主要容疑者とされるウサマ・ビンラディン氏への包囲網を一層強化するのが狙い。
また、米国防総省は同日、報復軍事作戦への準備として空軍予備役など約5000人の予備役を招集した。ラムズフェルド国防長官は、第二波として戦闘機など200機のペルシャ湾岸地域やアフガニスタン周辺への増派も検討している。
既にアフガニスタンの隣接国への特殊部隊の配備が開始されているとされ、湾岸戦争以来の大規模攻撃への準備が本格化している。
22日の5000人を加えると予備役の招集は計4万5000人を超えた。
ビンラディン氏の身柄引き渡しを期待 サウジアラビア外相
【ワシントン共同】サウジアラビアのサウド外相は20日、米中枢同時テロでウサマ・ビンラディン氏をかくまっているとされるアフガニスタンのタリバン政権に対し「賢い選択をしてくれるという望みを捨てていない」と述べ、同氏の身柄引き渡しを強く促した。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
「報復攻撃、数日内に」 デンマーク首相、見通し
【ベルリン藤生竹志】デンマークのラスムセン首相は21日、米国の同時多発テロに対する報復攻撃が早ければ「数日以内に始まる」との見通しを示した。コペンハーゲンからの報道によると、同首相は記者団に対し、「タリバン政権がウサマ・ビンラディン氏の無条件の身柄引き渡しに応じなければ報復攻撃は避けられない」との見通しを示した上で、「遅くても1週間以内には攻撃が始まるだろう」と述べた。
(毎日新聞2001年9月22日東京夕刊から)
(9/22)米市民8割が対テロで長期戦覚悟・ニューズウィーク誌調査
【ニューヨーク22日共同】米誌ニューズウィークが22日発表した米中枢同時テロに関する世論調査によると、米市民の79%が米国のテロとの戦いが数年以上の長期戦になると考えていることが分かった。
このうちの半数以上に当たる全体の44%が10年以上の超長期戦になるとの見方で、ブッシュ大統領が20日の議会演説で訴えた長期戦への覚悟が浸透した結果とみられる。
大統領の支持率は一週間前の調査より4ポイント高い86%の高水準に達し、テロリストの拠点やテロ支援国に対する武力攻撃は71%が支持した。
経済的な影響については、58%が短期的な不況を予想。長期の不況を見込む人は26%と少数派だった。テロ後に飛行機での旅行や大きな買い物を延期したと答えた人は14―16%にとどまったものの、年末の買い物シーズンで贈り物などの支出を抑えるとした人は26%に上った。(日経)
(9/22)ビンラディン氏の組織、最新暗号技術を利用か
【ニューヨーク22日共同】米中枢同時テロの主要容疑者と名指しされたウサマ・ビンラディン氏の組織は、相互の連絡、指令手段に「電子あぶり出し(ステガノグラフィ)」と呼ばれる最新のコンピューター技術を利用している疑いが出ている。
22日の週刊誌ニューズウィーク電子版など米メディアが一斉に報じた。
電子あぶり出しは暗号技術の一種。一見、何の変哲もない写真画像などに秘密情報を埋め込み、見えなくしてしまう。特別なプログラムを「カギ」として使わなければ取り出せない仕組み。暗号と見えないだけに発見も、解読も困難だ。
ビンラディン氏のテロ組織はインターネットのサイトを利用して、画像で情報を交換していたという。NBCテレビによると、この際にポルノ系サイトを隠れみのとして利用した可能性があるという。
電子あぶり出しの技術はインターネットから簡単にダウンロードできるという。CNNテレビは、米軍がすでに、解読技術の開発を依頼していると報じた。
(9/22)ビンラディン氏に新たに懸賞金29億円・米政府
【ニューヨーク22日共同】米CNNテレビが22日報じたところによると、中枢同時テロの犯人と名指しされているウサマ・ビンラディン氏とその組織のテロリストに対し、米政府が総額2500万ドル(約29億円)の「懸賞金」をかけた。
国務省の予算から支出され、ビンラディン氏らの逮捕につながる情報提供に対して支払われる。
米政府は、1998年の米大使館同時爆破事件でも同氏に500万ドルの懸賞金をかけている。
(9/22)米、新たに5000人の予備役招集・戦闘機の増派も検討
【ワシントン22日共同】米国防総省は22日、米中枢同時テロに対する報復軍事作戦への準備として空軍予備役など約5000人の予備役を招集した。さらにラムズフェルド国防長官は、第二波として戦闘機など200機のペルシャ湾岸地域やアフガニスタン周辺への増派を検討している。
既にアフガニスタンの隣接国への特殊部隊の配備が開始されているとされ、湾岸戦争以来の大規模攻撃への準備が本格化している。
22日の5000人を加えると予備役の招集は計4万5000人を超えた。
国防長官は19日、戦闘機など百機以上のペルシャ湾岸地域への派遣命令を出し、F15戦闘機、B52戦略爆撃機、B1爆撃機、ステルス爆撃機、空中給油機などの移動が始まっている。
第二波として200機が増派されれば、関係地域に合計で550機が配備されることになる。大規模な空爆から、テロの主要容疑者とされるウサマ・ビンラディン氏のテロ組織施設などへのピンポイント攻撃まで幅広い攻撃をする態勢が強化される。
一方、米CNNテレビは22日、アフガニスタンのタリバン政権が同国北部で撃墜したとする無人偵察機は米軍ではなく、米中央情報局(CIA)が情報収集に使用していた偵察機の可能性があると報じた。
2001年9月23日(日)「しんぶん赤旗」
米国は、戦闘機や爆撃機、空母などのペルシャ湾岸やインド洋地域への増派を決定し、軍事報復態勢づくりを急ピッチですすめています。増派で空母は四隻となり、米軍機は、すでに展開している三百五十機と合わせて五百機近くになる見込みで、大規模な空爆も可能になります。
米国防総省は十九日、B52爆撃機、F16戦闘機、KC135空中給油機など百〜百三十機の増派を決定したのに続き、二十一日にも十数機の増派を発表しました。米紙ニューヨーク・タイムズ二十一日付は、米空軍のウォルド司令官がサウジアラビアの空軍基地に空爆作戦指令のため移動したと伝えています。
米空母は湾岸地域にいるカールビンソン、アラビア海のエンタープライズに加え、セオドア・ルーズベルトが十九日に米東海岸を地中海に向け出港。二十一日には神奈川県横須賀を出港したキティホークが湾岸近海に向かうとみられ、空母は四隻体制になります。各空母にはトマホーク・ミサイルを搭載したミサイル巡洋艦などが十数艦、同伴しています。
在日米軍基地からは、空母キティホークのほか、ミサイル巡洋艦カーティス・ウィルバーなどもすでに出港。横須賀基地を母港とする駆逐艦オブライエンは空母エンタープライズ戦闘群の一部としてすでに展開しています。イラクの「監視」作戦に三沢、嘉手納基地からインシルリク基地(トルコ)に派遣されていたF16・15戦闘機は引き続き展開するものとみられます。
海兵隊は、上陸用部隊二千二百人が空母ルーズベルトの同伴艦に乗艦。ノースカロライナ州に本拠を置く突撃作戦部隊の第26海兵遠征隊(MEU)も派遣が決まっています。
湾岸地域に近い主要な米軍基地は、インシルリク空軍基地、プリンス・スルタン空軍基地(サウジアラビア)、キャンプ・ドーハ基地(クウェート)、第五艦隊司令部(カタール)、ディエゴ・ガルシア空軍基地(インド洋)などですが、今回、アフガニスタンに隣接するウズベキスタン、タジキスタンからも軍用機配置の承認を得たと伝えられています。軍事作戦時の不明兵の捜索救出作戦に使用されると米紙は報道しています。ほかにポルトガルが同国沖のアゾレス島基地、インドがカシミールなどの三基地の使用を米軍に認めたといいます。
地上部隊は、ホワイト陸軍長官が「継続する地上戦の準備をしている」と言明したほか、ノースカロライナ州フォートブラッグ基地の陸軍特殊部隊の派遣も決定されています。特殊部隊は心理作戦部隊やグリーンベレーなどで敵国に潜入し奇襲攻撃や首謀者の捕獲作戦を展開する部隊です。パナマ侵攻の際には、パナマのノリエガ将軍を「捕獲」しました。
英紙タイムズ二十一日電子版は、米特殊部隊には、イギリスやフランスの特殊部隊も加わると報道。「隠密部隊がビンラディン氏の追跡・捕獲に第一の役割を果たす」とし、英特殊部隊SASがすでに、アフガニスタンで情報収集活動を展開し、同国のタリバンへの反対勢力との接触を行っていると指摘しました。
(二週間目以降)
「タリバン政権は共犯」 米大統領初めて指摘 演説 軍事力行使鮮明に
【ワシントン21日=前田徹】二十日、米議会合同本会議で行われたブッシュ大統領の米中枢同時テロに対する演説は、アフガニスタンを実効支配するタリバン政権とテロ事件の黒幕とされるウサマ・ビンラーディン氏が共犯関係にあると初めて指摘し、タリバンに対し事実上の最後通告を行う結果になった。演説では米軍の戦闘準備への呼びかけもあり、いよいよアフガニスタンに対する軍事行動に動き始めた観を強める内容となった。
この日の演説で特に注目されたのはイスラム原理主義者、ウサマ・ビンラーディン氏とそのテロ組織「アルカーイダ」が今回のテロ事件の黒幕にあるとしたうえで、「アルカーイダはタリバン政権に強い影響力があるだけでなく、アフガニスタン支配をも支えている」と、双方が切っても切れない共犯関係にあると断じた点だ。
これまで米国はタリバン政権に対してビンラーディン氏追放への圧力をかけることに集中、むしろタリバンとビンラーディン氏の分離を狙ってきた側面が強かった。
だが、この日は「アフガニスタンの人たちは飢え、多くは逃げ出した。女性は学校にも行けず、テレビを持つだけで刑務所入りとなる。そこにはアルカーイダの望むような世界がある。われわれはタリバン政権を強く非難する」と、タリバン政権そのものへの非難を集中させた。
さらに▽すべてのアルカーイダ指導者の引き渡し▽すべてのテロリスト訓練キャンプの閉鎖とテロリスト全員の引き渡し▽米国の査察許可▽拘束外国人の解放−というタリバン側にとって到底受け入れ不能な四項目要求が突きつけられており、米国とタリバン政権の武力衝突は不可避という印象を与えている。
また、テロ戦争について「金融や情報戦などすべての手段を使う」としながら「結局、テロを負かすには排除し破壊することに尽きる」と、武力による排除を明確にしている点もタリバンとビンラーディン氏への軍事報復が間近に迫っていることを思わせた。
一方、米国のテロ戦争の目的についても「アルカーイダは手始めであり、地上のすべてのテロリストを見つけだし必ず打ち負かす」と宣言しており、アフガニスタン作戦以降、今度はイラクなど別のテロ支援国家へ矛先が向けられる可能性が一層、強まったといえる。
無人偵察機撃墜と発表 タリバン政権
【イスラマバード22日=共同】アフガン・イスラム通信によると、アフガニスタンのタリバン政権が二十二日朝、北部のサマンガン州サングサラド地区で米国機とみられる無人の軍事偵察機を重機関銃で撃墜した。同州のタリバン政権当局者が明らかにした。
事実とすれば、タリバン支配地域領空で、米国が報復攻撃を前提とした軍事偵察活動を行っていることになる。サマンガン州はウズベキスタン、タジキスタンと国境を接しており、偵察機は両国のいずれかから入境した可能性が高い。
同政権報道官は「(われわれは)いかなる種類の航空機に対しても領空を閉ざしているが、偵察機は許可なく侵入した」と指摘した。「撃墜したのは(タリバンの対立勢力の)北部同盟のヘリコプター」(情報省当局者)との情報もある。
米国防総省は偵察機撃墜の情報については未確認とコメントしている。(産経)
やはりイラクが関与? イスラエル軍が指摘
米国での同時多発テロで、イラクが資金面や補給面で実行犯グループを支援していたとの見方が依然として指摘されている。イスラエル軍の諜報(ちょうほう)機関「アマン」の情報が「イラク関与説」を裏付けているためだ。疑いの目は当面なくなりそうにない。
軍事情報誌を発行する英国の「ジェーンズ・インフォメーション・グループ」が伝えた「アマン」の情報によると、テロ計画の立案などで実際の指揮を執ったのは、レバノンのイラン系イスラム原理主義組織「ヒズボラ」の対外工作担当者イマド・ムグニエ氏と、「ウサマ・ビンラディン氏の後継者」とも言われるエジプト人のアイマン・ザワヒリ博士。
ムグニエ氏は密かにドイツを訪れ、工作員と接触していたらしい。ドイツの中心都市ハンブルグはテロ犯19人のうち3人が渡米するまでの拠点の一つと言われている。
またイスラエル軍関係筋によると、最近2年間、イラクの諜報機関SSOの複数の工作員がアフガニスタンとの間を頻繁に行き来しザワヒリ博士と接触していたという。
情報に基づき、「アマン」はテロ発生の6週間前、「前例のない大規模なテロが起こりそうだ」との警告を同盟諸国に発していたとされる。
イスラエル軍のマルカ情報部長は23日付イスラエル紙とのインタビューで「現時点ではイラクが直接関与していたとの情報はない」と否定に回ったが、イラク関与説は根強い。ムグニエ氏を知るイスラエル人は「ムグニエは最高のテロ技術を持った天才だ。彼に比べたら、ビンラディンは子供みたいなものだ」と話しているという。【和田 浩明】
[毎日新聞9月24日]
元パキスタン軍情報機関長官が毎日新聞と会見
【イスラマバード春日孝之】パキスタンのイスラム原理主義勢力の理論的指導者で、アフガニスタンのタリバン政権樹立に関与したとされるハミド・グル元パキスタン軍情報機関(ISI)長官(61)は22日、イスラマバード郊外の自宅で毎日新聞と会見した。元長官は「米国がアフガン軍事行動を開始すれば(敗退した)ソ連の二の舞になる」と強く警告。またパキスタン政府が表明している米国への全面協力について「兄弟国タリバン政権と戦争状態に入ることを意味する」と指摘し、協力は限定的にすべきだと主張した。
グル氏は米国が第一撃として想定しているとみられる空爆について「壊すべき道路も橋も軍事施設もない。身を潜めた兵士に最新鋭のステルス爆撃機も通用しない。逆に米軍は(アフガン戦争で米国が供与した)対空ミサイル・スティンガーで撃墜され、市民をやみくもに殺傷するだけの結果になる」と予測する。
また、米国が地上軍を投入した場合、タリバンはすぐに駆逐され、カブールには米国の傀儡(かいらい)政権が樹立されるとみる。「しかし本当の戦争はそれからで、タリバンはゲリラ戦で通信、軍事施設を破壊し、新政権の統治は『点』だけで『面』にはならず、内戦状態が収束することはない」と断言。米国の勝利も訪れないと語った。
一方、戦争が泥沼化し、米軍が掃討作戦を敢行、市民の犠牲者が増えれば、国際社会で反米感情が一層高まり、新たな対米テロも誘発することになると警告。「テロの標的は米国の支援国に及ぶだろう」とも述べ、日本もテロの対象になる可能性があると示唆した。
グル氏は長官時代のアフガン戦争(79〜89年)末期、米中央情報局(CIA)と共同でソ連軍に対するゲリラ戦を指揮。現役引退後はアフガン戦争での対米協力から、ビンラディン氏同様「反米」に転換した。94年夏にはISIが支援したタリバン創設にも関与したとされる。
[毎日新聞9月24日]
アフガン:30万の兵力が戦闘態勢 タリバン国防相
【イスラマバード春日孝之】アフガニスタン・タリバン政権のウベドアフンド国防相は24日、首都カブールで、米国の侵攻に備え、30万の兵力が戦闘態勢に入ったと語った。アフガン・イスラム通信が伝えた。国防相は「我々は戦争回避に向け最善を尽くすが、戦争が始まれば米国にとって最悪の事態を招く」と述べた。
[毎日新聞9月24日] ( 2001-09-24-21:22 )
米軍事行動:外国への制裁 大統領権限で解除可能に 米紙報道
【ワシントン布施広】米紙ワシントン・ポストは24日、外国への軍事支援と武器供与に関する既存の制裁や規制について、今後5年間、大統領の権限で解除可能にするようブッシュ政権が米議会に要請したと報じた。長期戦が必至の「テロとの戦争」が迫る中、大統領権限を強化する特例措置といえる。認められた場合、民主化や人権状況などに多少問題があっても規制を解除することが可能になり、米外交は大きな転機を迎える。
米国は現在、「テロ支援国」に指定するイラン、シリアなど7カ国や、民主化が遅れている国、国際規約に反して大量破壊兵器を開発・輸出する国などへの軍事支援、武器供与を禁じている。さまざまな国内法による規制で、解除には一定の基準を満たした上で議会の承認が必要だ。
しかし、同時多発テロの軍事報復を前に、ブッシュ政権は従来の制裁対象国との関係見直しを迫られた。パキスタンに対する核実験関連の制裁は解除したが、ムシャラフ大統領によるクーデター(99年10月)に関連した制裁は続く。同国を対アフガニスタン攻撃の拠点に想定する米国は、軍事支援の規制を全面解除してムシャラフ政権との連携を強める狙いがある。
また、同じアフガンの隣国のイランと中国にも制裁が科されているが、イランはテロの犠牲者を悼む書簡を米政府に送り、中国は米国とのテロ対策専門家会合の開催を決めるなど、米国との歩み寄りが目立つ。「アフガン後」のテロ撲滅作戦を考えれば、イスラム急進派に影響力を持つシリアとの連携も重要になる。
「テロとの戦争」では、従来の図式とは異なる協力関係が必要で、迅速かつ効果的なテロ対策を取るためにも、大統領の裁量権拡大が課題になっている。
[毎日新聞9月24日] ( 2001-09-24-20:14 )
米軍事行動:米国防総省の代表団がイスラマバード入り
【イスラマバード小松健一】米同時多発テロで軍事報復行動についてパキスタン政府と協議するため、米国防総省の代表団が24日未明、イスラマバード入りした。パキスタン政府筋によると、代表団は同日、パキスタン軍幹部らに対して軍事行動の計画を説明、パキスタン側に協力を求める協議を始めた。
代表団の団長はケビン・チルトン空軍准将。協議内容や日程などのスケジュールは不明だが、政府筋は「協議には日程を設けていないが、数日かかる見込み」という。またチルトン准将らはムシャラフ大統領とも会談する予定だ。
ムシャラフ大統領は19日の国民向け演説で、ウサマ・ビンラディン氏を捕そくするための情報提供、米軍機などの領空通過、後方支援の3項目について米国から要請を受けていることを明らかにしており、今回の協議で細部を詰める。
◇
【イスラマバード小松健一】米国の国防総省代表団が24日、アフガニスタンに対するテロ報復攻撃計画についてパキスタン政府と協議に入ったことで、米国のタリバン軍事包囲網は最終局面に入りつつある。米国への「全面協力」を約束したとはいえ、タリバン政権のパキスタンへの不信感が高まれば、タリバンに同情的な国内世論が取り返しのつかない事態を招く恐れがある。軍事協議でどこまで米軍に協力するか、パキスタンは苦渋の決断を迫られている。
米代表団のスケジュールについて、「米代表団はイスラマバードにいる。それ以上のことは言えない」(米大使館)、「何もコメントできない」(パキスタン軍報道官)と関係当局はピリピリしている。軍事作戦上の機密事項ではあるが、世論を警戒した側面も強い。
98年の米大使館爆破テロ事件に伴うアフガン報復攻撃の際、パキスタン領空を巡航ミサイルが通過した時にも反米世論が高まった。現在も国内各地で反米デモが連日続いているが、「コントロールの範囲内」(治安当局者)にとどまっている。
ムシャラフ大統領がいち早く国民向け演説で、米国からの協力要請内容を発表したのは、具体的協力を決めるまでに時間をかけて国民に対米協力を納得してもらい、抗議デモを徐々に沈静化させる狙いがあったようだ。
問題なのは安全保障上、緊密な関係にあるタリバンがパキスタンに反旗を翻すことだ。アフガン国境地帯を警備する兵士の間では、アフガン難民に混じってタリバン兵が流入し治安情勢が不安定になることを警戒する声が広まっている。
消息筋によると、ムシャラフ大統領はタリバンとの関係維持を念頭に具体的な対米協力の交渉に臨む方針という。
[毎日新聞9月24日] ( 2001-09-24-19:27 )
(9/24)米代表団、パキスタン政府と報復作戦巡り協議
【ニューデリー24日=吉野蔵一】米同時テロ事件への報復作戦を巡り、米政府代表団は24日、イスラマバード入りし、パキスタン政府と協議に入った。事件の首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の潜伏先とみられるアフガニスタンへの攻撃を想定し、空港使用問題などが議題になったもようだ。一方、中央アジアのカザフスタンは同日、米国の報復に全面協力する用意があることを表明、軍事的にも対アフガン包囲網が築かれつつある。
イスラマバードからの報道によると、米代表団は中東・南アジア戦略を担当するケビン・チルトン准将(空軍)らで構成。米側はパキスタンが既に決めた「領空使用許可」に加え、空港など国内軍事施設の利用や、ビンラディン氏の所在に関する情報提供などで協力を求める見通しだ。
米代表団はパキスタン滞在中、ムシャラフ大統領や軍幹部らとも会談、ビンラディン氏の潜伏を助けるアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバン政権への攻撃計画について説明する方針。米軍の機材や燃料などの物資輸送の際のパキスタン軍による警備も要請する考えだ。
これに先立ちチェンバリン駐パキスタン米大使はパキスタン政府との間で、3億7500万ドルの対米債務返済の繰り延べを決める協定に調印した。米政府が対パキスタン経済措置を解除したのに伴う措置で、報復攻撃に向けたパキスタン側の「全面協力」を引き出すのが狙いとみられる。
駐パキスタン米大使館筋は24日、「米代表団の滞在期間は未定」と述べ、期限を切らずに協議するとの見通しを明らかにした。
一方、アフガンでは23日深夜から24日にかけて同国北部でタリバン軍と反タリバン勢力の北部同盟との戦闘が激化、双方に死者が出ているとの情報もある。カブールからの報道によると、タリバン政権は米軍の報復攻撃に備え、兵員30万人の追加配置を決めるなど南西アジア情勢は依然として緊迫している。(日経)
ロシア、反タリバンへ軍事支援−−対米支援の指針発表
【モスクワ石郷岡建】ロシアのプーチン大統領は24日、テレビ演説し、アフガニスタンの反タリバン連合(北部同盟)への軍事支援などを骨子とする米軍事報復作戦への対応を初めて明らかにした。支援策には軍部隊の派遣は含まれていないが、米軍事作戦への積極支援の意思を明確にしている。イワノフ露国防相によると、来週末には米国防総省高官がモスクワ入りし、軍事作戦の協議を行うという。
大統領が発表した対米支援策の指針は、(1)情報機関の国際協力の活発化(2)反テロ作戦実施地域への人道物資空輸のためのロシア領空通過許可(3)領空通過や空港使用問題などで、中央アジア諸国との共同行動(4)必要な場合は、捜索・救出国際行動に参加(5)(北部同盟を構成する)ラバニ政権との協力と同政権の軍事組織への兵器・軍事技術援助――の5項目。
さらに、大統領は軍事作戦参加国とのより深い協力行動もあり得ると説明し、イワノフ国防相を中心とする特別チームを編成し、状況分析や協力行動を協議すると述べた。
また、大統領はロシア南部のチェチェン共和国問題も国際テロとの闘いの枠外に置くことはできないと述べ、武装勢力に対し、72時間以内の期限付きの武装解除を求めた。
プーチン大統領は、声明の中で、テロに効果的に対抗できる国際法の改善を求め、国連および国連安保理の役割強化を訴えた。しかし、米軍事作戦の実施には国連決議の必要性を挙げておらず、米軍事報復作戦の積極支持を打ち出した形となっている。
プーチン大統領は、中央アジア諸国とも協議して、根回しをした形跡が濃厚で、中央アジアからアフガニスタンへの軍事作戦ルートを事実上、開けて見せたといえる。
パキスタン国内はタリバン支持のイスラム原理主義勢力の動きが高まり、米軍事作戦の拠点になるかどうか微妙になっており、北部同盟支援の行方が注目されている。
(毎日新聞2001年9月25日東京夕刊から)
オマル師 世界で最もなぞ多い指導者
緑の中に官庁が点在する計画都市イスラマバード。その一角にあるアフガニスタン・タリバン政権の在パキスタン大使館で21日午後0時半(日本時間同4時半)、ザイーフ大使が記者会見に臨んだ。「証拠なしにウサマ・ビンラディン氏を(米国に)引き渡すつもりはない」。林立したマイクを前に大使は声を張り上げたが、最高指導者の肉声は今も聞こえてこない。
1959年ごろ、アフガン南部カンダハル近郊の貧農の家に生まれた。80年代には侵攻してきたソ連軍との戦闘に参加。ソ連撤退後の94年登場したタリバンの創設メンバーの一人だ。
「政治的、軍事的能力ではなく、イスラム教への敬けんさで指導者に選ばれた」。パキスタン人ジャーナリスト、アハメド・ラシッド氏は著書「タリバン」の中で、メンバーの話を紹介する。
カンダハルの自宅で執務し、かたわらに置いた無線機は各地の司令官との連絡のため、いつもオンのまま。移動する時は日本製四輪駆動車で、何十人もの護衛兵を引き連れるという。
宗教指導者の会議でもほとんど発言せず、聞き役に徹する。面会が許された数少ないパキスタン人記者は「威厳を増すために、意図的に人との距離を保っているのではないか」と語るが、海外在住のアフガン人の間では「海外勢力や強硬な側近に操られているだけ」との評もある。
英BBCが5年前、ひそかに撮影した写真が20日、世界を駆け巡った。長身でやせ形。ターバンを巻き、兵士らに囲まれる人物こそ、初めてカメラがとらえたオマル師とされる=写真、AP。89年に近くでロケット弾が爆発し、右目を失ったとされるが、不鮮明で表情や顔かたちまでは分からない。
20日午後9時(同21日午前10時)過ぎ、米連邦議会。「テロリストを引き渡さなければ、タリバンはテロリストと運命を共にする」。ブッシュ米大統領の演説は全世界に、そしてオマル師に向けられたものだ。攻撃準備を急ぐ米国にタリバンはどう動くか。「世界で最も厚いベールに隠された指導者」と評される男が2600万アフガン国民の命運を握る。【西尾英之】
(毎日新聞2001年9月22日東京朝刊から)
アフガン・ネットワーク 約20カ国、4000〜5000人訓練
Q ウサマ・ビンラディン氏を軸にする「アフガン・ネットワーク」とは。
A ビンラディン氏は、サウジアラビアの首都リヤドの建設財閥出身で、豊富な資金力を持つ。79年のソ連軍のアフガニスタン侵攻時、義勇兵を募り勢力を拡大、国際的な支援組織「アルカイダ」を結成した。その後、米軍がイスラムの聖地のあるサウジアラビアに進駐したのをきっかけに、反米に転向し、国境を超えた連携組織、アフガン・ネットワークを築いた。
ネットワークは世界約20カ国に広がる。武力によるジハード(聖戦)でイスラム国家の樹立を目指すイスラム過激派だ。
主な組織は、エジプトで最大の過激派組織「イスラム団」。93年にニューヨークの世界貿易センタービル爆破事件を起こした。「ジハード団」は81年にエジプトのサダト大統領を暗殺し注目された。今年に入り、「アルカイダ」と合併し「アルカイダ・アルジハード」となった。
フィリピンの「アブ・サヤフ」は5月、人質事件を起こした。ウズベキスタンの「ウズベキスタン・イスラム運動」は99年、キルギスで日本人鉱山技術者4人らの拉致(らち)事件を、イエメンの「イスラム復興党」は92年にアデンのホテル爆破事件を起こしたとされている。ネットワーク下の組織数などは不明だが、4000〜5000人規模の軍事メンバーを訓練しているという情報がある。【三角真理】
(毎日新聞2001年9月15日東京朝刊から)
米特殊部隊とは
◇デルタ・フォース
77年、英国のSASを参考に創設され、世界最強の部隊と言われる。人質事件などに対応する対国際テロ特殊部隊として知られ、最新鋭武器を装備。米軍は存在さえ公式に認めていない。
◇レンジャー
ベトナム戦争以降、主要な戦争や紛争の大半に参加しているとされる。奇襲や後方かく乱、夜間戦闘などを得意とし、陸海空からの配備が可能。心理作戦や対化学兵器調査グループもある。
◇グリーンベレー
呼称は緑のベレー帽から取られた。主に他国でのゲリラ戦に参加。隊員は2カ国語以上を使いこなすことが条件。当初は偵察や後方かく乱を担当していたが、ベトナム戦争を機に対ゲリラ戦が主任務となった。
◇シール
海軍所属。43年創設の海軍施設破壊部隊(NCB)が前身で、現在はテロ事件にも対応。16人前後で行動し、陸海空にまたがる偵察、急襲破壊工作が主任務。計6チームあり、湾岸戦争では2チームが投入された。
(毎日新聞2001年9月25日東京朝刊から)
(9/25)サウジがタリバンと断交、国際孤立が決定的に
【カイロ25日共同】サウジアラビア政府は25日、アフガニスタン・タリバン政権の「反イスラム活動」を非難、外交関係を断絶するとの声明を発表した。イスラム教聖地メッカの擁護者を自認するサウジの断交宣言で、同政権の承認国はパキスタンだけとなり、タリバンの国際孤立は決定的となった。米国はパキスタンも近く断交するとの見通しを示している。
声明は「タリバンはイスラムの教えに反し、アフガニスタンをテロリストの養成、訓練所として利用した」と強く非難。米中枢同時テロで米国が最重要容疑者とするウサマ・ビンラディン氏の引き渡し問題で「タリバンはサウジアラビアなどの呼び掛けや外交努力をことごとく無視した」と断交の理由を明らかにした。
タリバン政権はサウジとパキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)の3カ国だけが正式承認していたが、各国が見直しに動き、UAEは22日に断交を発表した。サウジアラビアには多数のアフガン系労働者がいる上、サウジの主流派であるイスラム教ワハブ派と同様に厳格なイスラム教生活様式を重視するタリバンに同調する国民も少なくなく、サウジ政府はタリバン問題に慎重に対応してきた。
サウジ政府は約2年前からタリバンへの援助は中止しているという。(日経)
ペンタゴンとは
ペンタゴン ワシントン郊外のバージニア州アーリントンにある米国防総省の通称。国防政策の企画立案を担い、米国の陸海空の3軍は国防長官を経て大統領の命令を受ける。ペンタゴンの通称は外観が正五角形であることを示す英語からきており、1943年に完成した。約236万平方メートルの土地に、約34万平方メートルのスペースを持つ世界最大級のオフィスで、2万3000人前後が働いている。〔共同〕
(9/25)アフガン暫定政権を計画、元国王が米大統領に親書
【ワシントン25日共同】米中枢同時テロで混迷するアフガニスタンのザヒル・シャー元国王(86)=亡命中=がブッシュ米大統領に親書を送り、反タリバン政権各派を結集した「最高評議会」と、各派軍部を統合した軍司令機構を設置するとの暫定民主政権樹立の計画を伝えていたことが、24日明らかになった。ポスト・タリバン政権の首班として最有力候補とされる元国王が、新政権づくりの具体的な内容を明らかにしたのは初めて。
米政府は同時テロに対する報復の軍事作戦ではタリバン政権の崩壊も視野に入れており、元国王の計画はタリバン政権崩壊の場合の新政権案として、米国が承認する公算が大きい。
共同通信が米政府筋から入手した元国王の親書は9月18日付。暫定政権樹立の目標を「アフガニスタンを解放し、国際テロリストの害悪を取り除く」とテロの根絶を誓い、米国と国連に対して政権樹立への「政治的、実質的な支援」を要請。暫定政権樹立に向けた具体的協力について、必要であれば米政府に特使を派遣し協議したいと提案した。
また(1)各民族を統合した広範囲な「最高評議会」を樹立しアフガニスタンの伝統的意思決定機関ロヤ・ジルガ(国民大会議)の緊急会合までの暫定政権とする(2)愛国勢力、司令官、将校を組み入れた司令機構を確立し必要な軍事作戦の態勢を整える―との計画を明らかにした。
ロヤ・ジルガには「国連参加の可能性もある」として、カンボジア型の国連管理の政権も想定。「(平和を望む)アフガニスタン国民はこの決定をあらゆる手段で支持する」とした。さらに「アフガニスタンは軍事勢力、内外の狂信者に乗っ取られた」と述べ、同時テロがサウジアラビア出身のウサマ・ビンラディン氏ら非アフガニスタン勢力の犯行であると強調した。
反タリバンの最大の軍事勢力「北部同盟」は元国王との接触を強化。ベンドレル国連アフガニスタン和平問題担当特使も元国王と23日にローマで会談し「元国王の果たす役割は大きい」と述べるなど、元国王への待望論は強まっている。(日経)
対タリバン、サウジアラビアも断交を発表
【カイロ小倉孝保】サウジアラビアは25日、アフガニスタン・タリバン政権との断交を発表した。アラブ首長国連邦(UAE)に続く決定で、タリバン政権の承認国はパキスタンだけになった。イスラムの盟主サウジの決定で、タリバンはイスラム諸国からも孤立することになった。一方、イスラム原理主義勢力を中心に批判が高まるのは必至だ。
国営サウジ通信によると、サウジ政府は「タリバン政権はサウジ政府の忠告に反し、テロリストの隠れ場所として土地を提供し続けている」とウサマ・ビンラディン氏を保護しつづけることを批判し、断交を決定した。
タリバンとの外交関係については22日、UAEが断交を決定。サウジの出方が注目されていた。
サウジ政府内にはタリバンと外交を維持することが、テロ対策に消極的との印象を国際社会に与えることへの懸念が広がっていた。イスラムの2大聖地を抱えるサウジの断交は、イスラム教諸国を代表してタリバン政権拒否の姿勢を国際社会に示す。一方、イスラム原理主義勢力から、「米国の圧力に屈した」との批判が出る可能性が高い。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
サウジの断交、「反タリバン」流れ加速−−背景に米国の圧力
◇原理主義勢力は反発必至
【カイロ小倉孝保】米国の同時多発テロを受け、イスラムの盟主・サウジアラビアがタリバン政権との断交に踏み切ったことで、イスラム諸国の「反タリバン」の流れは決定的となった。だが、サウジの決断の背景には、軍事・政治面で同国が依存する米国の強い圧力があったとみられる。イスラム原理主義勢力の反発が強まり、政情不安につながりかねない危険をはらむ。
米国はタリバン政権に対する軍事報復に向け、アラブ諸国からの支援取り付けに重点を置いている。アラブ首長国連邦(UAE)が22日、タリバンとの断交を発表したのは、いわばサウジの意向を受けた外交上の「最後通ちょう」だった。だが、その後もタリバンはテロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の身柄引き渡し拒否の方針を変えていない。
サウジは98年のケニア、タンザニアの米大使館爆破テロ事件でビンラディン氏の関与がとりざたされ、タリバンとの外交関係を凍結。今回、国際的に反テロの世論が盛り上がる中、タリバンを承認し続けることは国益を損なうと判断したようだ。また、イスラム教徒の範となるべき国として、「このままではイスラム世界総体がビンラディン氏を庇護(ひご)していると誤解されかねない」との懸念も働いたとみられる。
だが、アラブのイスラム教徒は、イスラエル寄りの姿勢に終始する米国に、何の注文も付けられない自国政府に失望している。サウジの決定で多数のイスラム教徒が「やはりアラブの政府は米国の言いなりだ」との認識を深めるのは確実だ。米国への拒否姿勢を貫くタリバンはイスラム原理主義勢力の間で英雄視されつつある。今後、「英雄を売り渡した」として、サウジ政府に標的が向く可能性がある。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
タリバン代理大使と単独会見「米の証拠、認めない」
◇単独会見、引き渡しを拒否
【イスラマバード春日孝之】アフガニスタン・タリバン政権のソエル・シャヒーン駐パキスタン代理大使は25日、毎日新聞と会見した。ウサマ・ビンラディン氏の身柄引き渡し問題で、パウエル米国務長官が「(ビンラディン氏が)事件に関与した具体的証拠を提出する用意がある」と述べたことについて「国際的な中立機関が検証した結論がなければ、明確な証拠とは言えない」と反論、米国独自の「証拠」は認めず、身柄引き渡しには応じる考えがないことをタリバン政権として初めて明確にした。
会見はアフガンの国外唯一の外交窓口であるイスラマバードの同国大使館で行われた。タリバンの最高指導者オマル師は共同会見以外、メディアの取材に応じないよう布告を出しているが、本紙は「唯一の例外」とし、ザイーフ大使も同席した。
代理大使は中立機関として国連やイスラム諸国会議機構(OIC)などの名前を挙げ、「そのような国際機関が検証した結論でなければ信用性に欠ける。アフガン攻撃を正当化するための口実に過ぎない」と指摘した。
代理大使は「ビンラディン氏は今回のテロに関与していない。米国の捜査は面目を保つのが目的で、明確な証拠を出せるはずがない」とも述べた。
さらにテロは「ユダヤ人が仕組んだ可能性がある」と述べ、当日、世界貿易センタービルには「通常いるはずの約4000人のユダヤ人が不在だった」ことなどを理由に挙げた。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
タリバン代理大使と単独会見(一問一答)
◇代理大使との一問一答−−「テロ、ユダヤ人が関与?」
アフガニスタン・タリバン政権のソエル・シャヒーン駐パキスタン代理大使との一問一答は次の通り。【イスラマバード春日孝之】
――米国の対タリバン政策をどうみるか。
◆我々はいつも対話の窓を開けているが、米国は閉ざしている。高慢で、非妥協な姿勢からは何も得られない。
――同時多発テロはだれが起こしたか。
◆ウサマ・ビンラディン氏には今回のような大規模テロを行う能力はない。ユダヤ人関与の可能性がある。まず、テロ当日の9月11日、世界貿易センタービルには通常勤務しているはずの約4000人のユダヤ人が不在だった。さらに、シャロン・イスラエル首相が、モサド(イスラエル情報機関)の助言で米国訪問を急きょ中止した。米国はこうした事実に目を向けようとしない。
――ユダヤ陰謀説が真実なら、目的は。
◆ユダヤ人は米国の力を利用し、イスラム社会の破壊をたくらんでいる。この事件を機に、イスラムは米国への支持、不支持をめぐり混乱し、分断の事態に陥っている。
――米国のアフガン攻撃が迫っているが。
◆アフガン侵攻は容易だが、居座ることは困難だ。英国(19世紀)、ソ連(79〜89年)と、当時の超大国でさえアフガン征服に失敗した。米国がカブールにかいらい政権を打ち立てても安定政権は望めない。国外のイスラム教徒1万人が対米ジハード(聖戦)に参加したいと申し出ている。米国はピクニック気分で臨む雰囲気だが、数年後、アフガンは彼らの墓地と化す。
――同時多発テロ自体をどう見るか。
◆我々はテロを認めない。米国は反タリバン連合などと「タリバン後」の政権構想について議論を始めている。米国の本当の標的はビンラディン氏ではなく、タリバン壊滅にあるのだろう。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
テロ資金を封鎖へ、G7共同声明を発表−−電話会議
先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は25日夜、財務相による電話会議を開き、米同時多発テロ事件の容疑者とされるウサマ・ビンラディン氏の資産を凍結するなど、各国が協調してテロ資金封じ込めのための包囲網を構築することで合意した。26日未明、共同声明を発表した。また、G7会合を10月6日にワシントンで開催することも固まった。
会議は25日午後9時過ぎから約1時間行われ、オニール米財務長官がビンラディン氏と同氏の組織「アルカイダ」を含む計27のテロ組織と指導者、関連団体の資産凍結命令を出したことを説明、協力を要請した。各国とも要請を受諾し、G7として結束してビンラディン氏の資金源と送金ルートの根絶に全力を挙げる考えで一致した。
また、塩川正十郎財務相は電話会議で、日本が22日に国連安保理決議に基づきビンラディン氏ら165人への送金を禁止するなど具体的な資産凍結措置を取ったことを伝えた。【岩崎誠】
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
中国、APECでの反テロ宣言を検討
【北京・浦松丈二】中国外務省の朱邦造報道局長は25日、今年10月に上海で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の非公式首脳会議で「米国の同時多発テロに対して関心を表明することになる」と述べ、反テロ宣言の発表などを検討していることを明らかにした。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
パキスタン、反タリバン連合に難色−−米国との軍事協議
◇パキスタン、空港供与でも隔たり
【イスラマバード小松健一】米国のアフガニスタン報復攻撃を巡る米国の国防総省代表団とパキスタン政府との協議は、25日も引き続き行われた。パキスタン軍情報筋によると、パキスタン側は報復攻撃に理解を示しながらも、米、ロシアなどが反タリバン連合(北部同盟)を引き込んで作戦を展開することに難色を示した模様だ。協議はなお数日行われるが、パキスタンの具体的協力が決まるかどうか予断を許さない情勢だ。
軍情報筋によると、パキスタン政府は、攻撃後に予想される「ポスト・タリバン政権」づくりにインドの支援を受けている北部同盟が主導権を握ることを警戒している。パキスタンとしてはタリバン穏健派が政権の主体となる方向を探っている。
焦点の空港供与問題についてパキスタンは、パンジャブ州ラジャンプル、バルチスタン州シャムシ、北西辺境州コハトの3空港での物資補給、医療援助面での協力にとどめたい意向だ。しかし米側は、これに加えてペシャワルなど戦略拠点となりうる都市部の複数の空港を希望しており、パキスタン軍内には「米側の要請をすべて認めればタリバンを敵に回すことになる」(情報筋)との警戒心が根強い。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
「近く、証拠示したい」−−英外相、22年ぶりテヘラン訪問
【カイロ小倉孝保】英国外相として22年ぶりにテヘランを訪問しているストロー外相は25日、イランのハタミ大統領、ハラジ外相と会談した。両国はテロ対策の必要性で一致。ストロー外相はイランに対して、ウサマ・ビンラディン氏らが同時テロにかかわった証拠を示す用意があると伝えた。
外相のイラン訪問は、米国がアフガンに対して報復攻撃する際、隣国イランからの強い反発を回避する狙いがあるとみられている。ストロー外相は両者との会談の中で、「我々は、ビンラディン氏がテロに関与したとの強い疑いを持っている。近く、その証拠を示したい」と述べた。また、ストロー外相は「イランはアフガンに忠告ができる重要な国だ。我々はテロ対策で協力する必要がある」と語った。
イランは反タリバン連合(北部同盟)を支持しており、北部同盟への影響力は大きい。米英とすれば、イランのこうした影響力を利用したいとの思いもあるとみられる。
米同時多発テロ発生後、ハタミ大統領はテロ行為を厳しく批判。市民レベルで米国の犠牲者への追悼集会が開かれたり、保守派指導部から厳しい米国批判が消えるなど対米関係改善ムードが広まっている。
しかし、ハメネイ最高指導者は「米国は罪のないアフガン市民を犠牲にすべきでない」と米国の報復攻撃に反対する姿勢を示している。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
プーチン・ロシア大統領、米国支持を改めて表明
ドイツのシュレーダー首相は25日、ベルリンでロシアのプーチン大統領と会談、同時多発テロを受けた報復攻撃への対応などについて意見交換した。
会談後の会見でプーチン大統領は「テロリストと妥協することはできない。テロ根絶のためには計画的な作戦が必要だ」と述べ、米国を支持する姿勢を改めて示した。【ベルリン支局】
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
アフガンとの国境開放?−−パキスタン政府と国連発表
【クエッタ(パキスタン中西部)中坪央暁】パキスタン政府と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は25日、アフガニスタンとの国境地帯であるパキスタン・バルチスタン州チャマンの国境検問所を開放すると発表した。だが、同日午後(日本時間同夜)までに国境は開かれていない。州都クエッタのUNHCR当局者は毎日新聞に「治安上の問題を理由にパキスタン側が封鎖を続けているためだ」と話した。チャマンの国境検問所近くには、数万人のアフガン難民が滞留している。
クエッタでは24日夜、2発のロケット弾が撃ち込まれる事件が起きた。負傷者はなかったものの、パキスタン側にいるタリバン関係者の関与が指摘され、パキスタン軍・警察が厳戒態勢を敷いている。
(毎日新聞2001年9月26日東京朝刊から)
(9/25)米基幹産業揺るがす・米テロから2週間
米国の中枢を襲った同時テロから2週間、事件の後遺症が自動車やハイテクなど米基幹産業を揺るがしている。需要の落ち込みに対応してゼネラル・モーターズ(GM)や半導体大手のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が一部の工場閉鎖を発表。航空業界ではUSエアウェイズが航空子会社の清算を決めた。大規模な人員削減や業績見通しの下方修正も相次いでおり、米景気は失速の懸念が一段と強まっている。
【ニューヨーク25日=中山淳史】GMは25日、「シボレー・カマロ」など乗用車を生産するカナダ・ケベック工場を2002年中に閉鎖すると発表した。工場閉鎖の発表は10年ぶり。同工場で働く従業員約1400人は早期退職者優遇制度で順次削減する予定で、7-9月期決算にはこれに伴う特別費用3億ドルを計上する。フォード・モーターはすでに7-9月期の生産台数を前年同期比12%減らす方針を打ち出している。
航空ではUSエアが、ワシントンと米東部や中西部を結んで運航していた子会社「メトロジェット」の清算を決めた。拠点だったワシントン・レーガン・ナショナル空港がテロ直後に閉鎖され、運航不能状態が続いていた。最大手のアメリカン航空も従業員に賃金カットを提示。幹部はすでに賞与を含めた減給に応じているという。航空業界ではこれまでに、14社が計8万人を超す人員削減と定期便の削減を打ち出しているが、アメリカンのカーティ会長は「それだけでは乗り切れない」としている。
シェラトンなどを展開する米ホテル運営大手のスターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイドは、北米従業員の約23%に当たる1万人余りの削減を決めた。同社の米国内のホテルは客室稼働率が50%台に落ち込んでいるという。
【シリコンバレー25日=小柳建彦】AMDは25日、テキサス州にある2工場の閉鎖などに伴って、全世界従業員の15%に当たる2300人を2002年6月までに削減すると発表した。ブロードバンド(高速大容量)インターネット接続サービス大手で経営危機に陥っているエキサイト@ホームも全従業員の25%に当たる500人を年内に削減すると発表した。
AMDはマレーシア工場でも業務縮小を進める。同社は主力の超小型演算処理装置(MPU)で半導体最大手インテルの激しい値下げ攻勢にあっているほか、携帯電話用メモリーの需要急減・価格急落にも見舞われ、7-9月期に営業赤字転落の見通し。エキサイトは新たに資金調達できないと年末までに事業継続不能になるとしている。(日経)
(9/25)米大統領、日韓訪問を延期・APEC首脳会議は出席
【ワシントン25日=池内新太郎】米ホワイトハウスは25日、ブッシュ米大統領の10月のアジア歴訪について、20、21両日に上海で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のみに出席し、前後に予定していた日韓両国と中国・北京への訪問は延期すると発表した。
軍事行動の開始時期との関連は不透明だが、同時テロへの対応を最優先するため、外国訪問は最小限にとどめる必要があると判断したもよう。上海滞在中にプーチン・ロシア大統領や日韓中3国首脳との個別会談を行う見通しだ。
大統領はAPEC首脳会議への出席に合わせ、就任後初のアジア歴訪を計画していた。15日に米国を出発して東京、ソウル、上海、北京の順に訪れる予定だった。延期された訪日などは軍事作戦の状況などを踏まえて再調整する。
(9/25)米テロ、産業界に打撃広がる
米産業界でリストラの動きが一段と広がってきた。景気減速に同時テロによる経済の混乱が追い打ちをかけており、ゼネラル・モーターズ(GM)が景気後退への懸念を強めてカナダ工場の閉鎖を決めたほか、航空ではUSエアウェイズが事業の再開見通しがつかない航空子会社の清算を決めた。ハイテク業界でも大規模な人員削減に踏み切る企業が相次いでいる。
GMは25日、「シボレー・カマロ」など乗用車を生産するカナダ・ケベック工場を2002年中に閉鎖すると発表した。工場閉鎖の発表は10年ぶり。同工場で働く従業員約1400人は早期退職者優遇制度で順次削減する予定で、7-9月期決算にはこれに伴う特別費用3億ドルを計上する。航空ではUSエアが、ワシントンと米東部や中西部を結んで運航していた子会社「メトロジェット」の清算を決めた。拠点だったワシントン・レーガン空港がテロ直後から閉鎖され、運航できない状態が続いていた。USエアは同空港発着のシャトル便運航も停止したままだ。最大手のアメリカン航空も従業員に賃金カットを自主的に受け入れるよう要請。
(9/25)仏政府、ビンラディン氏の資産4億5000万円を凍結
【パリ25日=山崎浩志】フランス外務省は25日、米同時テロの首謀者とみられているウサマ・ビンラディン氏とアフガニスタンのタリバン政権が仏に所有している資産2800万フラン(約4億5000万円)を凍結したと発表した。同省報道官は「国連安全保障理事会の決議に基づいた措置」としている。
凍結した資産はタリバンが保有している銀行口座や事実上の管理下にある企業など複数。具体的な内容や凍結時期などは明らかにしていない。米政府が24日にテロ組織の資産凍結を打ち出したほか、欧州連合(EU)各国も域内のタリバン資産の凍結を決めており、テロ資金源を封じ込めるための国際的な包囲網が狭まっている。
反米デモ続く−−アフガン・カブール
【イスラマバード支局】米軍の同時多発テロを受け、アフガニスタンの首都カブールでは25日、米国に対する聖戦を呼びかける反米デモが行われた。AFP通信によると、カブール中心部では、頭にターバンを巻くなどした数百人がバスやトラックに分乗し、「我々は聖戦の準備ができている」などと叫んだ。デモは3日連続で行われたという。隣接のパキスタンに向かっていた避難民の一部には、国境でパキスタン当局に通過を阻まれたり、乱暴な扱いを受けるとの情報を伝え聞き、故郷に逆戻りする人も出ているという。
(毎日新聞2001年9月26日東京夕刊から)
「イスラム抑圧への復しゅう」と主張−−タリバン・オマル師
【イスラマバード共同】アフガン・イスラム通信によると、アフガニスタン・タリバン政権の最高指導者ムハマド・オマル師は25日、米国民向けのメッセージを発表、米同時多発テロは「米政府がイスラムの国々で行った抑圧への復しゅうだ」と主張した。
(毎日新聞2001年9月26日東京夕刊から)
軍事報復で「多くの兵士を失う可能性も」−−米国防長官
【ワシントン吉田弘之】ラムズフェルド米国防長官は25日の記者会見で、同時多発テロへの軍事報復は「Dデー(第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦の開始日)のようにはならない」と述べ、多数の兵士を一挙に投入する従来型の戦争とは異なるとの見通しを示した。
また、「(戦闘は)難しく危険で、残念ながら多くの兵士を失う可能性がある」と、兵士の犠牲が出ることを米国民が覚悟する必要性を訴えた。
(毎日新聞2001年9月26日東京夕刊から)
「原発の対策強化を」−−米市民団体が会見
【ワシントン斗ケ沢秀俊】米国の核管理研究所など市民団体は25日、記者会見を開き、ハイジャック機が原子力発電所を直撃すれば炉心溶融などの大事故につながるとして、国内103基の原発での対策強化を求めた。
同研究所によると、米国の原発は原子炉容器と格納容器で二重に防護されているが、航空機の衝突の可能性は空港に近い一部の原発を除いて考慮されていない。旅客機が衝突した場合、冷却水供給系が壊れ、炉心溶融が起こる恐れがある。
ポール・レーベンソール所長は「炉心溶融で放射性物質が外部に放出されると、大量のがん死者が発生する」と指摘した。
31州64カ所にある全原発の周囲に防空施設を配備すること、新規の原発では航空機衝突を考慮し構造を強化することなどを提言している。
(毎日新聞2001年9月26日東京夕刊から)
サウジアラビア、基地提供前向き 報復攻撃の拠点に−−米紙報道
【ワシントン布施広】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は27日、米高官の話として、同時多発テロに対する米国の軍事報復のために、サウジアラビアが国内の基地を提供することに前向きな姿勢を示したと報じた。イスラム教の聖地があるサウジは当初、駐留米軍がプリンス・スルタン基地の管制センターをアフガニスタン攻撃用に使うことに難色を示していた。湾岸戦争(91年)の終結後、サウジは米英軍の対イラク攻撃にも表立った協力はしていない。
報道は複数の米高官の話に基づいているが、サウジが当初の姿勢を変えて基地使用を正式に認めたかどうかは明らかでない。しかしサウジはアフガンのタリバン政権と断交するなど、外交姿勢の変化も指摘されている。同基地はアフガン攻撃で重要な軍事拠点で、サウジが使用を拒否した場合、軍事作戦は数週間遅れるとの見方もあった。
(毎日新聞2001年9月28日東京夕刊から)
ビンラディン氏への退去勧告「使者通じ伝達」−−タリバン
【イスラマバード春日孝之】アフガニスタンのタリバン政権は27日、聖職者会合が20日に決定した同国からの自主退去勧告をウサマ・ビンラディン氏に伝えたことを、複数の外国報道機関に確認した。勧告への返答はまだないという。タリバンはこれまで、ビンラディン氏の行方が分からず連絡がとれないと主張していた。この説明を自ら否定し、ビンラディン氏がアフガン国内にいることを認めたものだ。
カブール発のロイター通信によると、タリバン政権のジャマル情報相は、自主退去勧告は使者を通じて伝えられ、時間を要したと語った。同政権のザイーフ駐パキスタン大使もAP通信に対しビンラディン氏が勧告を受け取ったと述べた。
(毎日新聞2001年9月28日東京夕刊から)
容疑者と「アルカイダ」との関連に初言及−−FBI長官
【ワシントン斗ケ沢秀俊】米連邦捜査局(FBI)のモラー長官は27日記者会見し、同時多発テロのハイジャック容疑者と主謀者とされるウサマ・ビンラディン氏のテロ組織「アルカイダ」との関連に、捜査責任者として初めて言及した。
長官は「一人かそれ以上」の容疑者がアルカイダと接触していた証拠があると述べた。また、長官は乗っ取り容疑者19人全員の氏名と顔写真を公表し、情報提供を求めた。
(毎日新聞2001年9月28日東京夕刊から)
タリバン、和平代表にジャクソン師を招待−−米国務長官は難色
【ワシントン中井良則】米国の黒人運動指導者、ジェシー・ジャクソン師は27日、アフガニスタン・タリバン政権から同師を和平代表として招待する手紙が届き、アフガンに行きを検討していることを明らかにした。パウエル国務長官は同日「米国はタリバンと交渉しない」と述べ、ジャクソン師の訪問は問題の解決につながらず、支持しない立場を示した。
ジャクソン師によると26日にタリバンから「軍事攻撃によるアフガン国民の破局を避け、事態を解決するための代表団を歓迎する」と招待状が届いたという。また、タリバンに拘束されている米国人援助団体メンバー2人の家族が解放交渉を助けてほしいと同師に要請した。
同師は27日「戦争を選ぶより、援助関係者を解放し、テロ容疑者を引き渡すようタリバンに呼びかけたい」と述べた。
(毎日新聞2001年9月28日東京夕刊から)
ベルギー首相、米・EU会議を提案−−米大統領と会談
【ワシントン布施広】欧州連合(EU)議長国ベルギーのフェルホフスタット首相は27日、ホワイトハウスでブッシュ大統領と会談した。同首相は会談後、同時多発テロに対する米国の軍事報復は「正当」であり、「これらの行動に参加したい」と記者団に語った。
また同首相は、米政府に対し、EUに求める協力事項をリストとして提出するよう要請、近くテロ対策に関する米・EUの合同会議を開くことも提案した。
一方、北大西洋条約機構(NATO)の一員であるトルコのジェム外相は同日、パウエル国務長官と会談した。パウエル長官はトルコとの緊密な協力関係を強調、「テロリストに対する軍事作戦が始まった時は、トルコの支援を期待できる」と記者団に語った。この日はヨルダンのアブドラ国王もパウエル長官、ライス大統領補佐官と会談し、テロとの戦いに協力することを表明した。
(毎日新聞2001年9月28日東京夕刊から)
(9/28)米特殊部隊、すでにアフガン潜入しビンラディン氏捜索・米紙 【ワシントン28日共同】28日の米紙USAトゥデー(電子版)は、米政府とパキスタン政府当局者の話として、中枢同時テロの最重要容疑者とみられるウサマ・ビンラディン氏を追跡するため、米軍特殊部隊が既に2週間にわたりアフガニスタン国内に潜入、捜索活動を展開していると伝えた。 米軍の特殊部隊の潜入が具体的に報じられたのは初めて。 同紙によると、今月13日、米陸軍、空軍の特殊部隊と空挺(くうてい)部隊がパキスタンのペシャワルとクエッタに到着、同国内に合同作戦司令部を設立した。その後、1チーム3人から5人で構成する複数のグループがアフガニスタンに入り、ラディン氏の潜伏が疑われる南西部のカンダハルに近い洞穴や塹壕(ざんごう)を中心に捜索を続けているという。(日経) |
(9/27)VOAがオマル師会見放送・国務省の反対押し切る
【ワシントン26日共同】米政府系の放送メディアである「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)は26日、アフガニスタンのタリバン政権の最高指導者オマル師とのインタビューを、「テロリストをかくまう人物の宣伝に米国民の税金を使うべきでない」とする国務省の反対を押し切って放送した。
VOAは極めてまれなオマル師とのインタビューを当初21日に放送する予定だった。しかし、「米国が自国を攻撃する悪を作った。帝国主義的な意思をイスラム諸国に押し付けるべきでない」などとオマル師が一方的に米国を非難する内容だったため国務省高官の圧力でいったん中止となった。
その後、オマル師の会見とブッシュ大統領やアフガン専門家の声も盛り込んだ番組に仕立てて26日放送した。
バウチャー国務省報道官は「アフガンにいる人が『VOAでオマル師の声を聴いた』などと話すのは耐えられない」と強い不快感を示した。これに対し、VOAの職員らは「民主主義の根源は報道の自由だ」と反論している。(日経)
パキスタン:代表団がオマル師と会談 身柄引き渡し協議継続へ
【イスラマバード春日孝之】パキスタンのイスラム聖職者や政府当局者による代表団は28日、アフガニスタン南部・タリバン政権の本拠地カンダハルで、最高指導者オマル師と会談した。米国が同時多発テロの主要容疑者とみなすウサマ・ビンラディン氏の身柄引き渡し問題で進展はなかったが、両者は会談後、「今後も協議を続けることで一致した」との共同宣言を発表した。
今回の代表団にはタリバンに密接な関連があるパキスタンのイスラム原理主義指導者は含まれておらず、いずれ「最後の切り札」としてアフガン入りする可能性がある。
代表団に随行したタリバン政権のザイーフ駐パキスタン大使は帰国後、毎日新聞の電話取材に「会談は実りがあった」と強調。「オマル師はビンラディン氏の身柄引き渡しを拒否した」と報じた米CNNや共同通信など一部報道を否定した。
パキスタン軍事筋によると、タリバンが同氏を引き渡す可能性は極めて少なく、米国のアフガン攻撃は不可避の状況になりつつある。
しかし、最近の国際世論は、米国の軍事行動に自制を求める方向に傾きつつあり、パキスタンとタリバン政権も攻撃回避の道を懸命に模索している。今回の代表団派遣は、交渉姿勢を国際社会にアピールする一方、協議を長期化させ、米国の軍事行動を阻止したいとの狙いもあるようだ。
共同宣言では、同時テロを「悲劇的な事件」と表現し、犯行を非難する一方、「米国は理由もなくアフガンを攻撃しようとしている」と批判した。
[毎日新聞9月29日] ( 2001-09-29-10:49 )
NY株:ダウ続伸、終値で8800ドル回復 ナスダックも反発
【ワシントン逸見義行】28日のニューヨーク株式市場は、市場の予想より経済指標の結果が良かったことから、ハイテク、金融など広範囲に買われ、ダウ工業株30種平均株価は前日終値比166・14ドル高と続伸、8847・56ドルで取引を終えた。18日以来、8営業日前の水準に戻った。ハイテク銘柄の多い店頭市場のナスダック総合指数も同比38・09ポイント高と反発し、1498・80で取引を終えた。
同時多発テロで休場後、取引を再開した先週は、大恐慌以来、約68年ぶりの大幅な下落率となったが、その反動で今週は買い戻しが入り、1週間でダウは7・4%上昇した。週間上昇率では、84年以来、17年ぶりの大幅な上昇。
しかし、四半期ベースで見ると、今年第3四半期(7〜9月)の下落率は15・8%に達した。これは、ブラックマンデーの大暴落があった87年第4四半期(10〜12月)以来、約14年ぶりの大幅な下落で、米経済の景気が急減速していることを示す結果となった。
市場では「テロで景気が一層悪化し、企業業績懸念が再燃するのは必至で、株価が一本調子で上昇するのは無理」との見方が支配的だ。
[毎日新聞9月29日] ( 2001-09-29-10:12 )
国連安保理、テロ資金根絶措置を決議
【ニューヨーク28日共同】国連安全保障理事会は28日、テロ組織への資金の流れを断つための措置をとるよう全加盟国に義務付けることを柱とする米国提出のテロ資金根絶のための決議を全会一致で採択した。決議は国連憲章第7章(強制措置)を引用しており、将来決議に反する国に対し、安保理が経済制裁などを発動する道を開いた。
24日に米国が決議案を提起してからわずか5日目に採択。国連外交筋は「米国が中長期的なテロ対策では一方的外交を棚上げ。国連の主導を受け入れる姿勢を打ち出した」と高く評価している。
決議はテロ資金の受け渡し禁止や凍結のほかに、加盟国に対し(1)テロ関与者の移動や国境通過を阻止する措置をとる(2)テロ防止のために現在ある12の条約に速やかに署名、批准する―ことなどを呼び掛けた。
米中枢同時テロ以来、テロ関連決議が安保理で採択されたのは、12日のテロ非難決議に次いで2度目。(日経)
(9/28)米英特殊部隊がアフガンに潜入・CNN
大統領も示唆
【ワシントン28日=春原剛】米CNNは28日、米政府高官の話として米英軍の特殊部隊が既にアフガニスタンに潜入し、活動を開始したと報じた。ブッシュ米大統領は同日、米同時テロ報復の軍事行動について「普通の戦争とは違い、通常の兵器を使うかもしれないし、そうでないかもしれない」などと述べ、米特殊部隊が極秘行動を展開している可能性を示唆した。
CNNによると、複数の特殊部隊が既にアフガン国内で数日間活動し、同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏の捜索活動を進めている。28日付米USAトゥデー紙もビンラディン氏捜索のため、米軍の特殊部隊がすでに2週間前からアフガン国内に潜入し、極秘の軍事行動に入っていると報じた。
同紙によると、アフガンに潜入しているのは3-5人で構成する複数の精鋭チームで(1)ビンラディン氏の身柄確保(2)同氏の暗殺(3)消息確認――のいずれかの達成を命じられているという。
ブッシュ大統領はテロ組織撲滅を目指した作戦行動に関して「前線にはいくつもの種類があり、米国民はそれを(テレビなどで)見れない時もある」と指摘、湾岸戦争のように大規模な空爆や地上軍による戦闘ではなく、水面下での特殊工作なども含まれることを示唆した。
大統領はアフガンを実効支配しているタリバン政権に対し「ビンラディン氏、およびその配下の幹部を引き渡さなければならない」と述べ、一切の交渉に応じない姿勢を改めて明確にした。(日経)
サウジアラビア:
米軍による基地使用拒否を表明 国防航空相
【カイロ小倉孝保】サウジアラビアのスルタン国防航空相は30日付地元紙オカズで、米同時多発テロの報復攻撃に際し、米軍に国内の軍事基地を使用させない考えを明らかにした。サウジ政府が事実上、基地使用拒否の考えを示したのは初めて。米軍の軍事報復作戦に影響が出そうだ。
同紙によると、国防航空相は、サウジが米軍に基地使用を認めるとの情報について「ナンセンスだ」と強調した。「イラクがクウェートに侵攻した際に米軍を受け入れた90〜91年とは状況がまったく違う。アラブ市民やイスラム教徒との戦争のために、米軍が我が国の施設を使用することは受け入れられない」と述べた。
サウジでは国内の米軍基地を狙ったテロが発生し、米軍への対応に苦慮してきた。スルタン国防航空相の発言は、イスラム過激派の標的がサウジ政府自身に向かうことを警戒したものだ。
米政府はサウジに対し、アフガン報復攻撃のためにリヤド南方のプリンス・スルタン空軍基地の使用を許可するよう求めているといわれる。
[毎日新聞9月30日] ( 2001-09-30-20:35 )
中東諸国と米国との関係が激変
【カイロ小倉孝保】今回のテロを機に、中東諸国と米国との関係が激変しつつある。中でも関係改善が急速に進むスーダンやリビアには、石油や天然ガス開発への外資を呼び込み、国連や米国の制裁で疲弊した経済を活性化させたいとの思惑がある。
リビアのカダフィ大佐は事件直後、「こうした恐ろしい行為を前にした時、同情するのは人間としての義務だ」と従来の姿勢からは異例ともいえる気遣いを見せた。
98年、東アフリカで起こった米大使館同時爆破テロで、米軍の報復攻撃を受けたスーダンは、同時テロ後、イスラム原理主義者の入国規制を強化、米国の捜査官を受け入れる配慮をみせた。
一方、イランやシリアは、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織「ヒズボラ」やパレスチナ組織による対イスラエル闘争をテロとみなすことに強い抵抗を示す。イランでは同時テロ後、保守派宗教指導者などが米国非難を控えていたが、米国の意向を受けた英外相がイラン訪問で、ヒズボラに関する情報提供を求めたため、「自国の利益だけを考える米国の態度は変わっていない」と反発している。
[毎日新聞9月30日]
「テロ支援国」と米国が関係改善
【ワシントン布施広】同時多発テロを契機に、米国が「テロ支援国」と名指ししてきた国々との関係改善の動きが目立ってきた。28日に国連制裁解除が決まったスーダンをはじめ、リビア、シリアは、ウサマ・ビンラディン氏のテロ組織「アルカイダ」の情報を米国に提供したとされる。また、米政府はイランや朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)にも協力を求める見通しだ。一方で、イラクとキューバの孤立化が際立っている。
27日付の米ボストン・グローブ紙によると、ビンラディン氏が一時、潜伏していたスーダンは、既に米国にアルカイダの情報を提供した。国務省のバウチャー報道官は「事件発生後、スーダンとテロ対策のための真剣な協議を重ねた」と語った。96年以来続いてきたスーダンに対する国連制裁解除にあたり、米国が事実上黙認した背景には、ビンラディン氏追跡に同国の協力が不可欠との判断もあったようだ。
また、かつてその強硬姿勢から「中東の狂犬」と呼ばれたリビアの最高指導者カダフィ大佐も米国への情報収集に協力、国民に犠牲者のための献血さえ呼びかける優等生ぶりだ。米政府が24日発表した資産凍結対象リストには、「反カダフィ」を唱える「リビア・イスラム闘争グループ」も含まれており、米国は大佐に「報償」を与えたともいえる。
今回のテロを非難したシリアも既に米国に情報を提供したと伝えられる。また、80年以来断交が続くイランに対し、米国はビンラディン氏の主要資金源の1つとみられるアフガニスタンの麻薬ネットワーク情報を期待、水面下で接触を図っており、対米関係改善の兆しがみえる。北朝鮮がテロ組織関連の情報提供に応じれば、米朝協議再開に弾みが着くことも予想される。
米国が指定する7カ国の「テロ支援国」のうち、イラクは大量破壊兵器開発疑惑が消えず、軍事報復の対象となる可能性さえある。キューバについては、「カストロ(国家評議会議長)が政権の座にある限り、わが国が科した制裁解除はあり得ない」(チェイニー副大統領)との立場だ。
[毎日新聞9月30日]
反タリバン勢力が新連合結成 ドスタム将軍
【モスクワ石郷岡建】アフガニスタンの反タリバン連合(北部同盟)に参加するウズベク系のドスタム将軍は29日、反タリバン勢力を中心とする「アフガニスタン・イスラム民族評議会」と称する新たな連合組織が結成され、ローマ在住のザヒル・シャー元国王との会談や米政府代表と話し合いを行うと発言した。
ドスタム将軍はアフガニスタン北部からウズベキスタン在住のインタファクス通信に衛星電話のインタビューに答えて明らかにした。新連合組織はタリバン政権打倒後の受け皿を目指していると見られる。だが、いつ、どこで結成され、メンバー構成がどうなっているかは明らかでない。
北部同盟の関係者は、マスード総司令官の葬儀のため、今月中旬、パンジシール渓谷に集合し、対策会議を開催したと伝えられており、この際に新組織が結成されたのではないかと推測されている。
ラバニ政権のアブドロ外相は、北部同盟関係者などの代表団がシャー元国王と会談すると発表しており、新組織を中心とした前国王擁立の新政権工作が始まったとみられている。
[毎日新聞9月30日]
資金源封じ込め国連決議でようやく国際協調体制
【ニューヨーク上村幸治】国連安全保障理事会が28日、テロ資金源封じ込めを図る決議を採択したことで、同時多発テロへの対応には、米国による軍事報復とは別に国連主体の新たな柱ができることになった。テロ対策に向けた国際協調の枠組みがようやく構築されたとも言える。もっとも、決議が効果を上げられるかどうかは関係国の意思にかかっており、手放しの評価はできない。
決議は当初、フランスやロシアが発案し、関係国に打診していた。しかし、米国が「被害者である我々が決議案をまとめるべきだ」と説明し、正式に提案した。
当面の軍事行動はともかく、中長期的な対応を考えた場合、国際社会の協力が不可欠と判断した模様だ。国連が進める今後の対策において、主導権を確保したいという狙いもあっただろう。
決議のポイントは、テロ行為のための資金作りを阻止し、テロ活動を行ったり企図する者の資金・財産を凍結し、犯罪として摘発するよう求めた点にある。
ただ、同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏や、同氏が率いるテロ組織「アルカイダ」は、極めて巧妙に資金を動かしていると言われる。カムフラージュのため慈善団体などを経由して資金を動かし、有力者やその親族がからんでいるという指摘もある。一部の国については本気で対応するのかという懸念がどうしても残る。
このため決議は安保理に監視委員会を作り履行状況をチェックすることを盛り込んだ。また、決議は国連憲章第7章(強制措置)に基づくものだと明記し、各国に内容の実行を義務付けた。
憲章第7章は、安保理がとれる軍事、非軍事の強制措置を定めている。今回の決議は、この中の兵力を伴わない非軍事的強制措置と位置付けられたことになる。
拒否する国への罰則は定めていないが、決議実行のため「あらゆる必要な措置をとる」とも説明している。制裁の可能性をほのめかす表現だ。見方を変えれば、これくらい厳しくしなければテロ組織の資金源は絶てないとも言える。
[毎日新聞9月30日]
「攻撃なら聖戦開始」−−オマル師、ラジオ演説で米国を非難 【イスラマバード中坪央暁】アフガニスタン・タリバン政権の最高指導者、オマル師は30日夜、タリバンのラジオ・シャリアのインタビューで、「米国人はここ(アフガン)に来る勇気はない」と述べた。米国に強い姿勢を示すとともに、国民に米国の攻撃を心配しないよう呼び掛けたものとみられる。また新政権の樹立作業に参画する意思を表明しているザヒル・シャー元国王(ローマに亡命中)を激しく非難した。 オマル師がラジオを通じて肉声を伝えたのは珍しい。 オマル師は米国に「もし我々を攻撃すれば、(アフガンに侵攻、その後撤退した)ロシア人と同じ結果になるだろう」などと繰り返し警告。さらに「我々は平和を愛し、テロを憎んでいる」と語る一方、「米国は自分たちの政策を考え直すべきだ。イスラム教徒に対し、不必要な問題を引き起こすべきではない」と語った。 米国主導の攻撃への支持を表明しているシャー元国王については「米国の支援で(アフガンに)戻って来ることを恥じるべきだ」と激しく非難。新政権が誕生した場合でも断固戦い続ける決意を表明した。 また米国がアフガンに対し、軍事作戦に踏み切れば、ジハード(聖戦)を開始すると改めて宣言した。 (毎日新聞2001年10月1日東京夕刊から) |
米大統領、臨戦態勢を公式表明
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報復作戦の準備が整ったことを表明するブッシュ米大統領(右)〔著作権:AP.2001〕 |
【ワシントン1日=春原剛】ブッシュ米大統領は1日、テロ組織への報復軍事行動について「我々の軍隊は用意ができている」と述べ、作戦発動の時期が近いことを強く示唆した。大統領は「ゆっくりと、だが確実に彼ら(テロリスト)の隠れる場所を無くしていく」と言明。ビンラディン氏らの退路を外交工作などで入念に断ったうえで、武力行使に踏み切る考えを強調した。
米軍最高司令官の大統領が臨戦態勢にあることを公式表明したのを受け、米軍による本格的な武力行使は、国際社会の動静やアフガニスタンの政情を視野に入れた大統領の政治判断を待つだけの段階に入った。大統領は連邦緊急事態管理局(FEMA)での演説で、軍事・外交両面で「めざましい進展がある」と表明。具体的には、ビンラディン氏らの潜伏先とされるアフガン周辺に(1)二つの空母を中心とする機動部隊(2)数百機の米軍機(3)2万9000人の兵力――を配備済みと明らかにした。
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中東など4カ国歴訪 軍事面の連携を強化へ−−米国防長官
【ワシントン布施広】ラムズフェルド米国防長官は2日、オマーン、サウジアラビア、エジプト、ウズベキスタンの計4カ国の歴訪に出発した。米軍への基地提供など軍事面の連携を強化するのが目的で、アフガニスタンのタリバン政権に軍事的圧力をかける狙いもありそうだ。長官は6日に米国に戻る予定で、週内の軍事報復の開始は考えにくい情勢となった。
4カ国歴訪の理由について長官は「現在の状況に照らして、訪問するのはいい考えだと思った」と語り、対アフガン軍事行動の準備が主目的であることを示唆した。エジプトは米軍との年次定期演習を行っており、長官は演習中の米軍兵士を激励する方針を示した。
オマーンとサウジは米軍に基地を提供しているが、対アフガン攻撃用の基地使用を許すかどうかは明らかでない。
(毎日新聞2001年10月3日東京夕刊から)
米・FRBが0.5%利下げ 歴史的低水準−−テロ不況深刻 【ワシントン逸見義行】米連邦準備制度理事会(FRB)は2日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、代表的短期市場金利で日本のコールレートに当たるフェデラル・ファンド(FF)レートを年3%から2・5%に、公定歩合を同じく年2・5%から2%に引き下げることを決め、即日実施した。同時多発テロの影響で約10年ぶりの景気後退入りが確実になり、大幅追加利下げで景気の早期回復を図る。(5面に関連記事) FFレートは今年9回目の引き下げで、利下げ幅は合計4%。FFレートは62年以来39年ぶり、公定歩合は58年以来43年ぶりの歴史的な低水準。 最近の消費者物価の前年比上昇率を下回り、実質金利は93年末以来、約8年ぶりにマイナスに転じた。テロで休場したニューヨーク株式市場が再開した先月17日に0・50%の大幅利下げを実施したばかりで、約2週間で計1%の利下げは、82年以来、19年ぶり。景気の先行きに対するFRBの強い危機感と同時に、テロが米経済に与えた打撃の大きさを反映している。 (毎日新聞2001年10月3日東京夕刊から) |
イスラム諸国、「国家テロ」で米国批判 パレスチナ問題念頭−−国連総会 【ニューヨーク上村幸治】米同時多発テロ事件を受けて国連総会で開かれているテロ問題集中討議は2日、リビアなどイスラム諸国の代表が演説し、パレスチナ問題を念頭に「国家テロ、占領政策によるテロ」という表現で、イスラエルと同国を支える米国を批判した。米国の対テロリスト軍事報復が、一つ間違えるとイスラム諸国を刺激することをあからさまに示した。 リビアのアブジッド・オマール・ドルダ国連代表はアラブ諸国代表として演説し、「アラブ諸国は何十年もの間、国家テロ、占領テロの犠牲者だった」「外国勢力による占領はもっとも醜いテロであり、パレスチナの人々に対するそれはもっとも残酷なテロだ」と訴えた。また、テロには「経済テロ」もあると指摘、米国など先進国による経済制裁をテロと位置付けた。 同総会は、包括的テロ防止条約の作成にからんで「テロの定義」問題が焦点になっており、イスラム諸国は「テロの中に国家テロも含むべきだ」と主張している。ドルダ代表はこれを踏まえ、国際会議を招集してテロの定義付けを行うべきだと呼びかけた。 マレーシアのハスミイ・アガム国連大使も「パレスチナの被占領地域で過剰な武力が行使されている。テロリストグループの行為と同等にみなされるべきだ」と演説し、国連の組織する国際会議でテロの定義を話し合うよう訴えた。 イランのジャバド・ザリフ外務次官は「イスラエルによるパレスチナ住民の弾圧」を指摘、イスラエルを名指しで批判し、パキスタンのシャムシャッド・アフマド国連大使も「民族の自決権が重要だ。国家テロを含むいかなるテロにも反対する」と表明した。 (毎日新聞2001年10月3日東京夕刊から) |
ペンタゴン修復、8億ドルが必要−−米国防総省
【ワシントン斗ケ沢秀俊】米国防総省は2日、米同時多発テロ事件の被害を受けた同省の施設の修復に、約8億ドル(約960億円)と3年以上の期間を要することを明らかにした。
建物の形からペンタゴン(五角形)と呼ばれる同省は乗っ取り機が激突し、5区画のうち2区画が破壊され、死者・行方不明者は189人に達した。事故直後から、大量のがれきや破損した設備の撤去作業が進められている。
(毎日新聞2001年10月3日東京夕刊から)
NYに響くイマジンの歌−−支援コンサート開く 【ニューヨーク佐藤由紀】ニューヨーク市内で2日夜(日本時間3日朝)、世界貿易センタービルの被災者を支援するチャリティーコンサート「カム・トゥゲザー、ジョン・レノンの言葉と音楽の夕べ」が開かれた。会場では「想像してごらん。みんなが平和に暮らせると」と戦争のない世界を望んだ故ジョン・レノンの名曲「イマジン」の歌声が響きわたった。 コンサートでは俳優のダスティン・ホフマンさんが「私たちには宗教や人種を超えて平和な世界をつくる責任がある」と訴え、全米に浮上している好戦的な風潮に警鐘を鳴らす催しになった。 (毎日新聞2001年10月3日東京夕刊から) |
ブッシュ米大統領、攻撃「予定表ない」…いつでも報復可能と表明 【ワシントン吉田弘之】ブッシュ大統領は2日、米議会指導部と会談後、タリバン政権に対する「タイムテーブル(予定表)はない」と記者団に語り、米側の判断でいつでも報復攻撃に踏み切る考えを明らかにした。 大統領はタリバン政権に対し、ビンラディン氏と「アルカイダ」メンバーの引き渡し、テロリスト養成キャンプの破壊を要求している。大統領は、「交渉はしない。カレンダーもない。我々の時間で行動する。世界の自由のためだ」と語った。 一方、民主党のゲッパート下院院内総務はブッシュ大統領との会談後、記者団に「時間がなくなってきている」と述べた。 (毎日新聞2001年10月3日東京朝刊から) |
ブレア英首相の演説、タリバン転覆も 【ロンドン笠原敏彦】ブレア英首相は2日、英南部ブライトンでの労働党大会で演説し、同時多発テロに絡み、「テロリストを引き渡すか、政権を手放すか」とタリバン政権に呼びかけ、政権転覆を視野に入れた最後通牒(つうちょう)を突き付けた。米国の報復攻撃に英軍が参加するのは確実となっている。 ブレア首相は、同時テロの首謀者と言われるウサマ・ビンラディン氏やタリバン政権との妥協は一切あり得ないと断言。「この戦いの結果は一つしかない。それは、我々の勝利であり、彼らの勝利ではない」と訴えた。 報復攻撃の対象について首相は、ビンラディン氏とその組織だけでなく、タリバン軍も含まれると指摘した。 (毎日新聞2001年10月3日東京朝刊から) |
ブレア英首相の演説(要旨)
ブレア英首相が2日、労働党大会で行った演説の要旨は次の通り。
一、この戦いの結果は一つしかない。我々の勝利であり、彼らの勝利ではない。
一、(軍事)行動を起こさない危険の方が、行動に伴う危険よりはるかに大きい。
一、タリバン政権は恐怖政治と麻薬資金で成り立っている。英国のヘロインの9割はアフガニスタン産であり、麻薬も破壊の対象となる。
一、テロを財政支援する者、資金を洗浄する者らはその実行者と全く同様に有罪である。
一、(報復)攻撃は適正な規模でアフガン市民の犠牲は最小限に抑えられる。
一、私はタリバンに宣告する。「テロリストを引き渡すか、政権を手放すのか」と。
一、(もし戦争になれば、戦争の後も)英国は立ち去らない。現在の政権が、すべての民族を団結させた幅広い基盤を持つ政権に取って代わるのを見届け、人々の惨状が改善されるよう努める。【ロンドン笠原敏彦】
(毎日新聞2001年10月3日東京朝刊から)
当面の軍事作戦はアフガンに限定・米国務長官
【ワシントン3日=池内新太郎】パウエル米国務長官は3日の記者会見で、当面の軍事作戦は同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏とその組織、アルカイダの基地があるアフガニスタンに限定する方針を明確にした。一方、サウジアラビアを訪問したラムズフェルド米国防長官は3日夜(日本時間4日未明)、サウジのファハド国王らと会談。サウジ側は米国の攻撃がイスラム過激派を刺激しかねないことに強い懸念を表明した。
国務長官は「我々は作戦の第1段階としてアルカイダとアフガンに焦点を合わせている。これは反アラブ、反イスラムではなく、反テロの戦いだ」と強調した。同時に「将来何が起きるかはコメントできない」とも指摘。「他の国との戦いを想定しているものではないが、テロ組織をかくまい支援する国に注目している」と述べ、米国がテロ支援国とみなすイラクなどへの攻撃の可能性に含みを残した。(日経)
サウジアラビア、米報復攻撃に懸念表明
【バーレーン4日=岐部秀光】リヤドからの報道によるとサウジアラビアを訪問したラムズフェルド米国防長官は3日夜(日本時間4日未明)、同国のファハド国王、アブドラ皇太子、スルタン国防相らと相次ぎ会談した。サウジ側は米国の攻撃で無関係のイスラム教徒に犠牲が広がる可能性を指摘。各地のイスラム過激組織の活動を刺激しかねないと中東のアラブ諸国が懸念していると強調した。
国防長官は会談で「問題の複雑さと、起こり得る二次作用について配慮しながら問題に対応することの重要性」について話し合ったと述べた。国防長官はサウジがテロ発生後の米政府の対応を評価する一方、報復攻撃がもたらす影響に懸念を表明したことを認めた。アラブ諸国の懸念についてブッシュ米大統領が慎重に考慮していることを国防長官はサウジ側に伝えた。米国がこれまでボスニアやアフガンなどのイスラム世界に支援を実施してきたことも強調した。
米大統領「財政支出を600億―750億ドル増」
【ワシントン3日=吉次弘志】ブッシュ米大統領は3日、ニューヨークを訪問し、景気てこ入れのために財政支出を600億―750億ドル増やす考えを表明した。同時テロの発生直後に決めた450億ドルと併せると1000億ドル(約12兆円)を超える。大統領は中身について、「個人への追加的な減税」や失業対策などをあげており、2002会計年度(今10月―来年9月)予算の審議に向け、議会との調整を急ぐ。
大統領は「連邦政府には果たすべき役割がある」と語り、財政面からの景気下支えに全力をあげる考えを示した。政府、議会が2日まとめた暫定見通しでは、2002会計年度の財政黒字は520億ドルと当初見通し(1760億ドル)の3分の1以下に減る。1000億ドル超の景気対策をとれば財政赤字に転落し、国債増発を迫られることになる。