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タリバン:ザイーフ元大使を拘束 CIA、FBIが取り調べか
【イスラマバード春日孝之】崩壊したアフガニスタン・タリバン政権のザイーフ元駐パキスタン大使は3日、パキスタン軍情報機関(ISI)により、アフガン国境に近いペシャワルに連行された。ISI筋によると、ペシャワルにある米中央情報局(CIA)と米連邦捜査局(FBI)が合同設置した尋問センターで取り調べを受けるとみられる。
前大使は昨年12月、パキスタン政府に政治亡命を申請した。外務省筋によると、現在も審理中だという。だが、ISI筋によると、米国から「タリバン幹部は全員、逮捕し尋問する。元大使も例外ではない」と圧力があり、3日、身柄を拘束したという。
ISI筋によると、ISIスタッフが2日、前大使宅を訪ね「3日以内に国外退去せよ」と通告。同日夕、再び訪れ、「亡命申請を審理してるから滞在を続けてよい」と告げており、元大使の処遇をめぐり、ISIと米捜査当局の間に不協和音が生じている可能性がある。
パキスタン政府は同政権崩壊後、タリバンの「顔」として知られた前大使の滞在を例外的に認めていた。
[毎日新聞1月3日] ( 2002-01-03-21:41
オマル師:身柄引き渡しで反タリバン勢力と合意 米国防総省
【ワシントン布施広】米国防総省のクラーク報道官は2日、アフガニスタンの反タリバン勢力などがタリバン最高指導者のオマル師を拘束した場合、アフガン暫定政権が米側に同師の身柄を引き渡すことへの期待を表明した。また報道官は、米側が身柄を拘束したタリバン兵などの人数はこれまでに221人に上ったことを明らかにした。
オマル師はアフガン南部ヘルマンド州バグラン近郊に潜伏しているとの情報があり、バグラン周辺に残るタリバン部隊と反タリバン勢力の交渉が注目されている。国防総省によると、米海兵隊は12月31日から約29時間にわたってアフガン南部のタリバン関連施設を捜索、多数の文書などを押収した。
しかし、米統合参謀本部のスタッフルビーム副作戦部長によると、海兵隊による捜索は、直接的にオマル師やウサマ・ビンラディン氏の拘束を目指したものではなく、2人の居場所を特定する広範な情報収集の一環だという。オマル師が実際にバグラン周辺に潜伏しているのかどうか、国防総省は明確につかみかねている模様だ。
一方、クラーク報道官は、海兵隊と交代する陸軍101空てい師団の数百人が、ここ数日間でアフガン南部カンダハルに到着したことを明らかにした。空てい師団からは、海兵隊の現有勢力と同じ約1000人が現地に派遣される。
[毎日新聞1月3日] ( 2002-01-03-18:33
ビンラディン氏:死亡か、逃走 米司令官トラボラ捜索に懐疑
【ワシントン布施広】アフガニスタン東部トラボラ地区で同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏らを捜索している米軍特殊部隊のマルホランド司令官は2日、記者団に対し、ビンラディン氏はトラボラの洞くつ内で死んだか、既に逃走したとの見解を示した。先に米上院のグラハム情報特別委員長が同氏生存の可能性に言及していたが、米軍の現地責任者による今回の発言は、トラボラ地区に限った捜索の意義に懐疑的な態度を示したものといえる。
司令官は洞くつ捜索を続行する方針を確認したものの、司令官の見解は、数百もの洞くつを一つ一つ探すのは困難との空気が米軍内で強まっていることの反映とみられる。ビンラディン氏が昨年末、新たなビデオ映像を公開したことも、同氏の逃亡説を強める結果になっている。
司令官は「彼(ビンラディン氏)がそこ(トラボラ)にいるとは思えない。彼は岩に埋もれて死んだか、既にいないかのどちらかだと思う」と語った。米国防総省は一時、数百人の海兵隊をトラボラ捜索に振り向ける構想を検討したが、現時点では危険が大きすぎるとして投入を見合わせた。
だが、米軍が頼みとする反タリバン勢力はトラボラ地区の捜索には積極的でないとされ、米軍としては兵員を増派して洞くつを全て捜索するか、トラボラの捜索に見切りを付けるかの選択を迫られそうだ。
[毎日新聞1月3日] ( 2002-01-03-18:23
アフガン:米軍がタリバン元大使を拘束 パキスタンから送還後
ロイター通信は5日、米政府高官の話として、パキスタン政府からアフガニスタン側へ事実上送還されたタリバンのザイーフ元駐パキスタン大使を米軍が拘束したと伝えた。
高官によると、元大使は同日までに米軍が拘束したタリバンとアルカイダ兵計307人の中で最高位。どこに拘束されているかは明らかにされていない。
元大使は昨年12月下旬、パキスタンへの亡命を申請し拒否され、今月3日、同国当局に身柄を拘束された。タリバンの最高指導者オマル師や、ウサマ・ビンラディン氏に関する尋問をパキスタン当局から受け、5日にアフガンで米軍に引き渡されたという。
米軍はオマル師やビンラディン氏の所在を突き止める情報を知っている可能性があるとみて、元大使をさらに追及しているもようだ。
元大使は昨年9月の米中枢同時テロ後、タリバンのスポークスマンとしてイスラマバードで世界のメディアを前に英語で連日記者会見を続け、米軍の軍事攻撃に批判を繰り返してきた。タリバン政権が崩壊し、パキスタンが昨年11月に在パキスタン大使館の閉鎖を命令、元大使も国外退去を求められていた。(ワシントン共同)
[毎日新聞1月6日] ( 2002-01-06-11:51
アフガン:帰還家族が、荒廃ぶりにショック 生活再建厳しく
暫定政権が発足したアフガニスタンでは、内戦を逃れていた難民や国内避難民の帰還が始まっているが、数年ぶりに戻る故郷への安ど感の一方で、多くの家族がその荒廃ぶりにショックを受け、生活再建の厳しさに直面している。「北部同盟」とイスラム原理主義勢力・タリバンの戦闘の最前線となった村を見た。【アフガニスタン東部パルワン州で笠原敏彦】
首都カブールの北75キロのカラエハザラ村。戦闘激化に伴い、合わせて120家族が村を追われた。だが、タリバン政権崩壊後、この村にも住民の帰還が始まり、2日には避難していたパンジーシール渓谷から3家族が戻った。
「家に着いたとき、うれしくて、家族全員で泣きました」。シャー・モハムードさん(62)は目の見えない3男(8)を抱き寄せ、帰還の喜びを口にした。
だが、砲弾で我が家の住居部分は破壊され、跡形もない。土塀に囲まれたモハムードさんの自宅敷地内には砲弾の破片がいくつも転がる。家族6人が寝起きするのは元の炊事場だ。
現金の貯えは底を突き、食料もパン以外ほとんど何もない。「戦争が終わっただけでも幸せだ」。長かったテント生活を思い起し、モハムードさんはつぶやいた。
村の産業はぶどうや小麦栽培などが主体だが、周辺の畑は近年の干ばつの影響も大きく、荒れ放題だ。このため、現金を得るには周辺で薪を集め、近くの町まで運ぶしかない。モハムードさんは「春の種まきまでに、水は確保できるだろうか。種を買うお金もない」と顔を曇らせた。
同村を訪れた記者を多くの村人が人道支援機関のスタッフと勘違いし、食料の配給票を手に集まってきた。村人らはみな外国からの支援への期待を口にした。
カブール北郊に広がるショマリ平原からは98年以降、20万人が戦闘を逃れて村々を後にしたという。20年以上に及ぶ内戦では、国外に難民400万人、国内で避難民140万人が出た。
これら難民のうち約8万人が隣国のパキスタンとイランからすでに帰国、国内避難民については、先月末から帰還希望者をバスで移送する促進プログラムを始めている。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)広報担当官の篠原万希子さんは「カブールなど一部の都市を除けば、治安は依然不安定で、地雷や不発弾など帰還への障害は多い」と話す。
[毎日新聞1月8日] ( 2002-01-08-10:32
アフガン:米兵攻撃は14歳少年か 部族長老らが引き渡し検討
ロイター通信によると、アフガニスタン東部ホスト州で4日に米軍兵士が何者かの攻撃を受け死亡した事件で、同州の地元部族長老らによる評議会が7日、犯人とみられる14歳の少年の身柄を米側に引き渡すかどうかを検討している。
パキスタン国境付近の町ミランシャーの消息筋が明らかにした。少年の身元は明らかにされていないが、米兵らに対し発砲したとみられている。
アフガン・イスラム通信(AIP)によると、死亡した兵士は、空爆が民間人にもたらした被害を調べる調査団の一員だったという。米側は、米陸軍特殊部隊の兵士が小規模な戦闘の中で死亡したと発表。米中央情報局(CIA)工作員1人も重傷を負ったと伝えられている。(イスラマバード共同)
[毎日新聞1月8日] ( 2002-01-08-09:47
アフガン:アルカイダが再結集図る 米軍が施設を集中空爆
【ワシントン布施広】米統合参謀本部のスタッフルビーム作戦副部長は7日、米軍がアフガニスタン東部にある「アルカイダ」の訓練施設周辺を集中的に空爆していることについて「彼ら(アルカイダ)は再結集を図っている」と述べ、離散したアルカイダの戦闘員が同施設に集まる傾向があることを指摘した。米軍のアフガン空爆はこの日で3カ月目に入ったが、同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン氏捕捉のめどは依然立っていない。
同施設は東部トラボラ近郊のパキスタン国境地帯にあり、米軍は3日から3波にわたって空爆した。爆撃機のB52、B1のほか空母艦載機を投入し、アルカイダが今も隠匿する装甲車両や兵器などを破壊したという。
副部長によると、この施設はアルカイダのかつての最重要拠点で、周辺に強力な反タリバン勢力が存在しないため、アフガン各地から戦闘員が少しずつ集まっている。米軍は施設周辺をアルカイダの活動が「比較的活発な地域」とみなしている。
[毎日新聞1月8日] ( 2002-01-08-10:44
アフガン:東京の復興国際会議にパウエル国務長官出席へ
【ワシントン佐藤千矢子】21、22日に東京で開かれるアフガニスタン復興国際会議に、日本などとともに共同議長国となる米国からパウエル国務長官が出席することが8日、固まった。長官の訪日は昨年7月以来で、同時多発テロ後は初めて。長官は訪日に合わせて、緊張が高まるインド、パキスタン両国やアフガニスタンなど南西アジア地域を歴訪することも検討している。
訪日では小泉純一郎首相らとの会談も予定されている。長官は、米国としてアフガン復興支援に積極関与することを伝えるとともに、今後の「テロとの戦い」について改めて日本に軍事・外交両面での協力を求めるものと見られる。また日本の経済構造改革を支援する姿勢を伝えて、改革を促すものと見られる。
東京での復興会議にはアフガン暫定政権のカルザイ議長(首相)をはじめ、50カ国以上から閣僚級が参加。米国からはオニール財務長官も出席する。会議では、国連が今後5年間で90億ドル(約1兆2000億円)と推計する復興資金を、各国がどう分担するかが最大の焦点となりそうだ。
[毎日新聞1月9日] ( 2002-01-09-12:00
アフガン:投降した旧タリバン3閣僚を釈放 米軍の方針に反し
【イスラマバード小松健一】アフガニスタン南部カンダハル州を統治するグル・アガ氏の側近は9日、毎日新聞の電話取材に対し、州当局に投降した旧タリバン政権のオバイドラ元国防相ら3閣僚を釈放したことを明らかにした。
米軍はすべてのタリバン幹部の身柄引き渡しをアフガン暫定政権に要求しているが、カンダハル州当局がこれに反する方針を改めて鮮明にしたことで、米軍のアフガン軍事作戦をめぐり、今後、暫定政権と地方を統治する部族勢力の対立が表面化する恐れが出てきた。
投降したのはオバイドラ国防相のほか、トラビ元司法相、サドゥディン元鉱工業相。グル・アガ氏の側近は「3人は自由の身だが、身の安全のために移動できない」と語り、グル・アガ氏の部隊の保護下にあることを示唆した。側近は「投降したタリバン幹部らは武器を捨てた。彼らは裁きにかけるほどの脅威ではない」と釈放の理由を説明した。
その上で、側近は「アフガンの治安改善のため、タリバンの武装解除を投降交渉によって進める。我々の目標は(タリバンの最高指導者)オマル師の捕捉だ」と述べ、オマル師を除き、今後も投降したタリバン幹部に恩赦を与え、自由を保障することを明らかにした。
グル・アガ氏はタリバンの最高指導者、オマル師の捕捉作戦の指揮を執っている。グル・アガ氏の部隊に参加するパシュトゥン部族勢力司令官の一人は、毎日新聞に「グル・アガ氏の狙いは、タリバン幹部の支持を取り付け、カンダハルや周辺州での影響力を強めることだ」と語った。
[毎日新聞1月9日] ( 2002-01-09-19:08
アフガン:米空中給油機が墜落 パキスタン西部で着陸前に
フライシャー米大統領報道官などによると、パキスタン西部クエッタ近郊で9日、飛行場に着陸しようとしていた米海兵隊所属の空中給油機KC130が墜落した。
米国防総省が墜落原因など詳しい状況を調べている。死傷者がいるかどうかは不明。
KC130はC130輸送機を空中給油機として改造したもので、通常は乗員8人が乗り組んでいる。
アフガニスタン南部カンダハルに駐留する米海兵隊当局者によると、KC130は9日、作戦行動のためパキスタンのジャコババードを出発、アフガン上空を飛んでシャムシ飛行場に着陸する予定だった。同飛行場は、アフガンでの軍事行動のため米軍が使用していた。パキスタン軍や地元の救助隊などが墜落現場に向かう一方、海兵隊が墜落原因など詳しい状況を調べている。
KC130はC130輸送機を改造したもので、戦闘機やヘリコプターに対し空中で給油を行う。(ワシントン共同)
[毎日新聞1月10日] ( 2002-01-10-08:22
米国務副長官:強固で健全な日本経済を 構造改革を強く促す
【ワシントン佐藤千矢子】アーミテージ米国務副長官は11日、毎日新聞などとのインタビューで、同時多発テロに伴う日本の軍事・外交両面に渡る貢献を改めて評価するとともに、日本に「もう一つの旗を見せてほしい」と、不良債権処理をはじめとする経済構造改革を強く促した。対アフガニスタン軍事作戦に一区切りつく一方で、世界同時不況の懸念が広がる中、日本がその発震源にならないよう求めたものだ。今後、米国はブッシュ大統領らの訪日などを通じて、日本の経済改革努力への圧力を強めると見られる。
ブッシュ政権は「日本はテロ対策に全力を注いだ結果、経済構造改革が遅れた。だが、今度は経済構造改革、中でも不良債権処理を何としてもやってもらわなければならない」(米政府筋)と見ている。世界同時不況の懸念に加え、米国経済が昨年3月から景気後退に入り、テロがそれを加速する中、日本の改革の遅れが世界と米国経済の回復の足かせにならないよう求めている。副長官の発言はこうした姿勢を反映したもので、大統領訪日でも日本の経済問題が大きな焦点になると見られる。
また副長官は、日本の貢献について、テロ対策支援法の立法化と、海上自衛隊の補給艦など艦艇派遣の迅速ぶりは「どこの国の政府にとっても驚くべきものだった」と評価。日本が最終的にイージス艦を派遣しなかったことにも「それでも我々はかなり満足だ」と理解を示した。
そのうえでブッシュ大統領の初訪日について、最重要課題は日米同盟の重要性を再確認することだと指摘。さらに「米国は小泉純一郎首相の構造改革と経済改善策への支援を続ける。米国と世界は強固で健全な日本(経済)を必要とする」と経済構造改革を強く求めた。
また、副長官はインタビューの最後に「日本はテロとの戦いで『旗』を見せたと思うか」と聞かれて「そう思う」と発言。「冗談だ」と断りながら、「日の丸」の中央に「NPL」(ノン・パフォーミング・ローンズ、不良債権)にバツ印をつけた絵をメモ用紙に走り書きし、「今度は日本にもう一つの『旗』を見せてほしい」と、不良債権処理を要請した。
「ショー・ザ・フラッグ」はテロ直後、副長官が当時の駐米大使に語ったとされるフレーズで、「旗を見せろ」と訳され、日本に貢献を求める象徴的な文言として伝えられた。
[毎日新聞1月12日] ( 2002-01-12-12:19
アフガン:日本の積極貢献要請 カルザイ議長が毎日新聞と会見
【カブール笠原敏彦】アフガニスタン暫定行政機構のカルザイ議長(首相)は14日、カブールの旧王宮で毎日新聞と単独会見し、21日からアフガン復興支援国際会議を開催する日本政府に「古くからの友人」としての積極的な貢献を要請した。また、イスラム原理主義勢力タリバンを支援していたパキスタンを含め、近隣諸国との善隣外交を進める方針を強調した。カルザイ氏が首相就任後、日本の新聞との単独会見に応じたのは初めて。
カルザイ首相は国土再建について「政府が機能するよう官僚機構を再活性化するのが優先課題だ。それが復興の源泉となる」と指摘した。具体的な復興計画の青写真は15日に取りまとめ、東京会議に提出する。
首相は東京会議における「国際社会の寛大な復興支援」に期待を表明、「アジア最大の経済大国で、会議開催国の日本には最初に支援を表明してもらいたい」と積極的な関与を求めた。
テロ組織「アルカイダ」を率いるウサマ・ビンラディン氏とタリバン最高指導者のオマル師の捕捉を目指し継続中の米軍の空爆には、「アフガン人の犠牲を出さない細心の注意」を条件に支持の姿勢を示した。オマル師の処遇については「国民に対して責任があり、カブールで裁判にかけられるべきだ」と指摘。ビンラディン氏に関しては、「犯罪者であり、最も適切に裁かれる国に引き渡される」と述べ、米国などへの国外移送に応じる考えを示唆した。
首相は外交政策の基盤を「善隣外交」に置き、近隣諸国に対して「アフガンの国益と領土保全、独立を尊重しなければならない」とくぎを刺した。米同時多発テロとアフガン空爆を受けてムシャラフ・パキスタン政権がタリバンと決別した点を歓迎し、「パキスタンとは良好な関係を築けると確信している。関係改善は既に始まっている」と和解機運を強調した。
アフガン再建のカギを握る治安維持では、全土を統括する国軍を創設するとともに、武装解除を通じて反タリバン連合(北部同盟)各派兵士の社会復帰を進める方針を明らかにした。
[毎日新聞1月15日] ( 2002-01-15-10:54
米軍の駐留長期化へ 露、影響力拡大を警戒
アフガニスタン攻撃を続ける米軍の中央アジア駐留が長期化する見通しが強まっている。これまでロシアの影響下にあった中央アジア諸国が、対米接近をきっかけに独自の動きを強めているのに対し、ロシアは米国の影響力拡大を警戒している。 【モスクワ田中洋之】
昨年12月27日、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの4カ国首脳がタシケントで会談し、ロシア抜きの新たな地域協力機構「中央アジア共同体」の創設で合意した。ウズベキスタンのカリモフ大統領は記者会見で、中央アジアでのロシアの影響力について「古いステレオタイプの考えだ」と一蹴。さらに米軍の駐留をいつまで認めるかは「国益に基づいて決定する」と独自路線を強調した。大統領は米国との協議はまだ始まっていないと述べたが、ウズベキスタンは米国に25〜50年間の基地提供を提案しているとの報道もある。
ウズベキスタンやタジキスタンは基地供与の見返りに米国から経済支援を取り付けた。またタリバン政権崩壊でイスラム原理主義の脅威が減少した。この結果、経済や軍事面でのロシアへの依存度が相対的に低下し、米軍駐留を新たな外交カードにしようとの思惑がある。
今月6日にウズベキスタンを訪れた米国のリーバーマン上院議員は「同時多発テロは中央アジアの重要性を我々に気付かせた」と、中央アジア地域への関与を継続していく考えを示した。米国はキルギスのビシケク空港近くに空軍施設の建設を計画するなど、軍事的プレゼンスを維持する構えを見せている。
同地域での米軍の基地使用は、そもそも対テロ作戦への積極協力を打ち出したロシアが容認したものだ。しかし、旧ソ連諸国の急速な対米接近に、ロシアの独立新聞は「独立国家共同体(CIS)の統合強化に向けたロシアの10年間の努力が台無しになった」と皮肉った。12日にタジキスタンを訪れたセレズニョフ露下院議長は「中央アジアはロシアの利害地域だ」と米国の影響力拡大に不快感を示した。プーチン政権の協調路線が今後、野党から批判の矢面に立たされる可能性がある。
一方、米軍の駐留長期化は中央アジア内部に警戒感も呼んでいる。自国内のイスラム教徒を刺激し、力で押さえ込んでいるイスラム過激派の活動を活発化させる恐れがあるためで、各国とも慎重な舵取りを迫られそうだ。
また、米国には旧ソ連の権威主義的体質を残す中央アジア諸国への支援に消極的な意見もある。ウズベキスタンでは、00年に3選されたばかりのカリモフ大統領の任期を5年から7年に延長する動きが出ている。リーバーマン米議員はウズベキスタンの米軍支援に感謝するとともに、一層の民主化と人権改善を進めるようクギを刺した。
[毎日新聞1月16日
対テロ戦争:米の対応に「一貫性なし」 国際人権監視組織
【ワシントン中井良則】国際人権監視組織ヒューマン・ライツ・ウオッチは16日、年次報告を発表し、米国主導の「テロとの戦争」により、個人の自由が損なわれ、人権を抑圧する政府が批判されない矛盾が世界に広がっていると指摘した。テロ対策を口実に反政府派を取り締まり人権を無視する政府が「目的が正しければどんな手段をとってもいい」と考えていると批判。反テロ戦争が結果としてテロリストと同じ論理を強調する恐れがあると警告した。
米国のテロや政治暴力への対応について「どこの市民が攻撃され、だれが攻撃したかによって、判断している。米国が攻撃されれば強く反対し、他の国民なら反対しない。政府による市民攻撃は無視する」と一貫性がないと批判した。サウジアラビアやエジプトなどの人権や宗教弾圧を批判しない欧米について「恥ずべき沈黙であり、民主的変化を恐れている」と厳しく指摘した。
米国の国内政策について、あいまいな基準で外国人の無期限拘束を可能にした立法を批判。外国人テロリストを裁く軍事審問委員会(特別軍事法廷)は公正な裁判が保障されないと疑問を示した。「ペルーやナイジェリアで同じような軍事法廷が開かれた時、米国は反対した。今後、軍事独裁者はブッシュ政権のまねをすれば、米国に批判されない弾圧法廷を作れる」と皮肉を込めた。
さらに、オーストラリアや欧州で難民の排除やテロ容疑者捜査で人権無視が広がっていると指摘。人権の国際基準を自国に適用しない例外主義や偽善が同時テロ後、拡大していると警鐘を鳴らした。
[毎日新聞1月17日] ( 2002-01-17-18:58
大量破壊兵器:イラクが査察拒否なら軍事行動も 米大統領
【ワシントン布施広】ブッシュ米大統領は16日、訪米したトルコのエジェビット首相と会談し、米国が対イラク攻撃を行う場合はトルコと事前協議することを約束した。大統領は共同会見で、フセイン・イラク政権が国連の大量破壊兵器査察を拒否した場合、米国が軍事行動を起こす方針を強く示唆した。
ブッシュ大統領は共同会見で、フセイン政権が大量破壊兵器を開発していないと言うなら、国連査察を受け入れるべきだと主張。「受け入れないなら、米国は適切な時期に対処しなければならない」と語った。
エジェビット首相は米国の対イラク攻撃によって域内が不安定化し、トルコにも関係するクルド人問題などが紛糾することを懸念、ブッシュ大統領に再考を強く求めた模様だ。しかし米側はイラク攻撃のカードを捨てようとせず、トルコとしては事前の緊密な協議を約束させるのが精一杯だったとみられる。
またブッシュ大統領は、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する唯一のイスラム教国トルコが、アフガニスタンの国際平和維持活動で主導的役割を果たす決断をしたことを歓迎した。
[毎日新聞1月17日] ( 2002-01-17-18:58
アフガン制裁:事実上解除テロ関係者に対象絞る 国連安保理
国連安全保障理事会は16日、アフガニスタンに対する制裁をタリバンやアルカイダなどテロに関与した組織、個人だけに絞り込み、暫定政権に関係する制裁措置を事実上全面解除する決議案を採択した。
タリバン政権の崩壊後に成立した暫定政権に対し、国家再建に必要な物資や資金を供給できるようにするのが決議の狙い。15日に採択された国営アリアナ航空機の外国乗り入れ禁止解除に続き、この日の決議で暫定政権に対する(1)武器や軍事技術の供与禁止(2)金融資産の凍結(3)政権高官の入出国禁止措置―などが一気に解除される。
決議によると、タリバンなどに対する制裁措置に期限はないが、1年後に安保理が見直しを行うとしている。(ニューヨーク共同)
[毎日新聞1月17日] ( 2002-01-17-13:42
アフガン復興:踏み込んだ支援を小泉首相に要請 緒方政府代表
緒方貞子アフガニスタン支援政府代表は17日、首相官邸に小泉純一郎首相を訪ね、アフガニスタンやパキスタンなどの視察結果を報告した。緒方氏は21日から東京で開くアフガン復興支援国際会議で、日本政府が踏み込んだ支援策を公表する必要性を指摘。首相は会議成功に努力する考えを伝えた。会談後、緒方氏は記者団に「(政府は)それなりのコミットメント(関与)はしていただきたい」と語った。
復興会議で共同議長を務める緒方氏は、記者団に「現地を見てアフガン復興は大変な事業と痛感した」と強調。今後2年半で49億ドルの復興資金が必要とする世界銀行など国際機関の試算について「数字そのものを達成しなければいけない問題でない」としながら、「日本はホスト国だから、相当なものを出していただきたい」と語った。
緒方氏自身が復興資金で日本の「2割負担」を主張していることについては「めどであり、細かく言っているわけではない。特に初年度の支援が必要だ」と述べた。
[毎日新聞1月17日] ( 2002-01-17-12:17
アフガン:ビンラディン氏ら国内に アブドラ外相見解
【カブール福島良典】アフガニスタン暫定行政機構のアブドラ外相は16日、外務省で日本人記者団と会見し、ウサマ・ビンラディン氏とタリバン最高指導者のオマル師の所在について「アフガン国内にいる可能性が高い」と述べた。
首都カブールに展開する国際治安支援部隊については「国民は部隊が諸地域に展開するのを支持している」と指摘、展開地域の拡大を求めていく考えを示唆した。さらに「治安と復興は関連している」と述べ、東京でのアフガン復興支援国際会議で治安回復への協力を求める意向を示した。
[毎日新聞1月17日] ( 2002-01-17-09:51
【カブール春日孝之】アフガニスタン国営アリアナ・アフガン航空のニューデリー行きボーイング727便が24日、カブール空港を飛び立った。同航空の国際線の再開は、旧タリバン政権に対する国連制裁決議が科された99年11月以来。国連は15日、同航空の国際線就航を認めた。
昨年10月からの米軍のアフガン空爆で、同航空が保有していた航空機6機が破壊され、現在は2機しか残っていない。
[毎日新聞1月25日
「アルカイダ兵の処遇、基準を逸脱」 アムネスティ
国際人権保護団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)のジョナサン・オドナフュー法律顧問(28)は24日、都内で毎日新聞と会見し、アフガニスタンからキューバの米軍基地に送られたアルカイダ兵の処遇について「米国のやり方は、犯罪者、捕虜にも適用される人権保護の基準を逸脱している」と語り、第三者による調査の必要性を説いた。
同顧問はグアンタナモ米軍基地に移送されたアルカイダ兵が目隠しをされ、足かせ、手かせをはめられていた点を重視。「拘束者の目隠しを人権侵害とみる国連の処遇規定に反した行為だ」と米国を非難し「戦争捕虜の保護をうたったジュネーブ条約にも反する」と主張した。
アムネスティによると、アフガンで拘束されたアルカイダ兵約4800人のうち、これまでに160人前後がグアンタナモ基地に収容されたという。
アムネスティは現地調査を認めるよう米政府に要請しているが、24日現在、回答はないという。 【藤原章生】
[毎日新聞1月24日
豪、アフガン派兵延長に難色 財政負担息切れ、秘密主義批判も
【シドニー堀内宏明】米国の対テロ作戦が拡大する中、同盟国のオーストラリアが苦慮している。豪州は、米国のアフガニスタン報復攻撃に際して最も早くアフガン派兵を決め、米政府から「貢献度の高い国」と賞賛された。しかし、長期化する作戦に豪州の財政負担は増し、軍事情報がほとんど公開されない点でも国民の不満が高まっている。
ヒル豪国防相は11日に訪米し、ラムズフェルド米国防長官との会談後、「米国がアフガン以外で行う軍事作戦を支援する」と明言した。しかし、これに対してアンダーソン豪副首相は「われわれが直接的な軍事行動に参加するかは、状況に応じて判断する」と慎重な姿勢を貫いている。
豪州は同時テロの3日後に「アンザス条約(豪・ニュージーランド・米国相互安全保障条約)」に基づく集団的自衛権を発動した。アフガンには特殊部隊200人、後方支援を含め計1500人の兵士を派遣した。期間は半年の予定だったが、昨年末に国連を通じて1年の任務延長を求められると「兵力に余裕がない」と難色を示した。
政府は今月、米軍のイラク監視が手薄となったペルシャ湾に艦船2隻を送ったが、議会などに事前説明はなかった。18日にアフガンの豪兵が地雷で負傷した際も、初めて現地任務の一端が分かったほどで、メディアは「政府の秘密主義」に批判を強めている。
「米国追随」の印象は豪州のアジア外交にも影響する。ヒル国防相は米国がテロ勢力の活動を指摘したインドネシアについて聞かれ、「インドネシアは自力で過激派に対処できるだろう」と述べた。99年の東ティモール騒乱以来、関係が悪化した隣国を刺激したくない配慮が明らかだった。
豪政府は昨年、「近隣情勢が不安定」という理由で国防費を3%増額した。今年度予算は約130億豪ドル(約8900億円)だが、すでに関係者の間では「赤字が濃厚」といわれている。テロ以降、ハワード首相の支持率は60%前後の高さを保つが、今後の展開は予断を許さない。
◇「米の代理警察」豪は望まぬ アルビンスキー・シドニー大教授
豪州のアフガン派兵について、シドニー大学のヘンリー・アルビンスキー教授に聞いた。【シドニー堀内宏明
――豪州はいち早く派兵を表明しました。
◆同時多発テロは、豪州にとって最も重要な安保体制であるアンザス条約の締結50周年式典の直後に発生した。NATO(北大西洋条約機構)が迅速に動く中で、米国の同盟国としてNATOに遅れる訳にはいかなかった。事件に対する国民の危機感も大きかった。
――今回の行動で、豪州の国際的評価は高まったと思いますか。
◆全体を見れば豪州が果たした役割は小さく、最初から特別な評価など望んでいない。テロは国際社会のがんであり、どの国も他人事ではない。国力に応じて「当り前のこと」をしただけだ。
――アジア各国は、豪州が「米国の代理警察官」を務めることに不快感も抱いています。
◆東ティモール騒乱の時にハワード首相の発言が誇張されて伝わったのは不幸だった。確かに米国は豪州に代理人の役割を期待している。だが、豪州は米国の力が今以上強くなることを望まない。むしろ、地域の安全保障に日本がもっと関与してほしい。憲法改正や軍備によってではなく、外交でだ。
テロ後、米国と中国が接近し始めたのは良い兆候だ。米中対話が進み、日本がアジア各国の調整役に回れば地域は安定する。豪州にとってもベストの形になる。
――フィリピンなどで米軍の対テロ作戦が本格化した場合、豪州は派兵するでしょうか。
◆外交面では米国を支持するが、軍事行動には慎重になると思う。豪州は今も世界各地に平和維持活動の軍を出している。これ以上の派兵は予算と人員の両面で難しく、国民も支持しない。
[毎日新聞1月24日
米国人タリバン義勇兵の裁判、24日にバージニアの連邦地裁で
英BBCのインターネット版が23日付で報じたところによると、アフガニスタンのタリバンに義勇兵として参加したジョン・ウォーカー容疑者(20)=米カリフォルニア州出身=の裁判が24日午前(現地時間)、バージニア州の米連邦地裁で開かれる。ウォーカー容疑者はすでに米国に移送されている。
ウォーカー容疑者は、米国人殺害の共謀とウサマ・ビンラディン氏の組織「アルカイダ」への支持などの容疑で審理される。有罪の場合、最高刑は終身刑となる。
ウォーカー容疑者は、厳重な警備のもとに米軍の軍用機でアフガン南部カンダハルからワシントンの空港に移送された。
一方、アシュクロフト米司法長官は、ウォーカー容疑者が弁護士をつけることを拒否していることを明らかにした。(了)