第23章 2000年代の諸闘争(10期その3 2000年代)
(この時期の政治動向)
ここでは2000年代の流れを確認する。小渕政権、森政権、小泉政権、安部政権、福田政権、麻生政権、鳩山政権、菅政権の時代となる。この時代、日本政治は急速に腐臭を放ち始める。特に2001年に登場した小泉政権は中曽根政治の「戦後総決算、大国責任論」路線を更に推し進め「日米運命共同体」路線を振りかざし始め、それはとりもなおさず日本の国家的富の外資への譲り渡しに過ぎないものでしかないが、これをマスコミが提灯することで5年有余にわたる長期政権を維持させた。その後、安部、福田、麻生と首相が代えるが、日本の国家的溶解化は止まらない。歴史の摩訶不思議で、この頃より自由党と民主党が合同し政権交代論をぶちあげ、歩一歩実現に向かい始める。これに日共が「唯一の野党」路線で水を差してきたが、2009.7月の東京都議選での敗北以降「建設的野党論」に転換した。この時の都議選で民主党が歴史的な大勝利を収め、政権交代論を一気に加速させた。
2009年8月、第45回衆議院選が行われ、民主党が歴史的な大勝利を収め、悲願の政権交代を果たす。9月、鳩山民主連合政権が発足した。驚くべきは、期待を担って登場した鳩山政権が選挙前のマニュフェストを何ら履行せず足踏みし始めることである。この間、「政治とカネ問題」で鳩山首相と小沢幹事長に対する検察―マスコミ連合によるツ―トップ攻撃が続けられた。*政権交代政権のツ―トップ攻撃は明らかに異常であるが、その異常さに防戦一方で終始した民主党の胡散臭さをも問わねばなるまい。本来なら、歴代政権のツ―トップの鳩山首相、小沢幹事長のそれ以上の「政治とカネ問題検証」と抱き合わせで行われるのが正当であろうが、キレイゴト政治に傾斜し過ぎている民主党政治のアキレス腱が上手に突かれたことになろう。
その鳩山政権は、沖縄米軍の普天間基地移設問題で座礁させられた。鳩山首相はしばしば「国外、最低でも県外」と言及していたにも拘わらず最終的に自公政権時の辺野古案に落着させた。これにより政権与党の一角を占めていた社民党が離脱し、7月の第22回参院選を乗り切れないと見た小沢幹事長が談判に及んだ結果、ツ―トップ同時辞任となった。これにより政権交代政権二番手として菅政権が誕生する。その菅政権は政権発足時には支持率を大きく上げたが、7月の第22回参院選のさ中に消費税増税10%案を打ち出し、党内批判が高まるや醜悪な弁明に終始するなど自ら敗北路線に誘導し惨敗する。選挙敗北の責任を何ら取らず続投し、9月の代表選での立候補を表明する。こうして信じられない政治腐敗が現出する。
この時代の日本左派運動は、もはや完全に死に体に陥り政局絡みの運動は何一つ組織し得ない。学生運動で僅かに法政大学で中核派系の主導による紛争が持続的に続けられている。こういう関心を以て、以下検証する。
【森政権】 4月5日、森喜朗が第19代自民党総裁に選出された。自民党は自由党との連立解消、公明・保守との連立。官房長官・青木幹雄(再任)。
【第42回衆議院選挙】
6月2日、森首相が衆院解散。「神の国解散」と云われる。小選挙区比例代表並立制となって2度目の総選挙。選挙戦は480議席をめぐって争われた。総定数は小選挙区が300、比例区が180で、前回に比べて比例区定数は20削減された。6.13日、総選挙公示。与党3党が選挙後の連立継続を明示し、共通の公約を掲げて信を問う初めてのケースとなった。公明党が結党以来掲げてきた「反権力」、「反自民」の旗を降ろして、自民党と協力態勢を組んで臨んだ初めての選挙ともなった。
6月25日、第42回衆議院選挙が行われ、自民党233、民主党127、公明党31、自由党22、共産党20、社民党19、保守党7、無所属の会5、自由連合1、無所属15となった。与党3党(自・公・保)は合計で選挙前勢力の336議席から大きく後退したものの271議席を得た。衆院のすべての常任委員会で委員長を占め、かつ過半数も取ることができる絶対安定多数(269議席)を確保した。自民党は過去最大の議席減となり、公明、保守両党も大きく議席を減らしたが、「政権は信認された」として森首相の続投となった。
【日共第22回党大会】
11月24日、日共第22回党大会。この大会で、「前衛政党」、「社会主義革命」を明記していた規約を全面改訂し新規約から消した。有事の際の自衛隊活用を容認した(「自衛隊活用論打ち出し」)。但し、前衛2001年2月臨時増刊91頁は次のように留保している。概要「決議案で自衛隊の活用としているのは、自衛隊解消を追求する過程で、かりに『万が一』の事態がおこったら、その時点において存在し、使用しうる手段を、使用できる範囲で生かすというものであって、有事立法をはじめ、自衛隊の役割と行動を拡大するためのいかなる新規立法にも、わが党が反対であることはいうまでもないことであります」。
更に、「自衛隊活用論打ち出し」を次のように是認している。概要「国民の安全に責任をおう政党ならば、あくまで理論的想定にたいする理論的回答であっても、国民の疑問に答える責任があります。『急迫不正の主権侵害』がおこったときに、国民に抵抗をよびかけながら、現に存在している自衛隊にだけは抵抗を禁止したとしたら、これはおよそ国民の理解はえられないことは明白ではないでしょうか」。これにより、日共は、日の丸・君が代立法化で演じた役割に続き「自衛隊活用論」を打ち出したことになる。代議員一人が賛否を保留したが、大会議案が全会一致で可決されなかったのは42年ぶり。その他、柔軟頑固路線を打ち出した。
第22回大会で規約の全面改訂を行い、除名、除籍問題について次のように確定させた。「第四条、党の綱領と規約を認める人は党員となることができる」。概要「第十一条、党組織は、第四条に定める党員の資格を明白に失った党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる。除籍にあたっては、本人と協議する。党組織の努力にもかかわらず協議が不可能な場合は、おこなわなくてもよい。除籍は、一級上の指導機関の承認をうける」。ところが、除籍措置は規約上の処分でないので、所属支部の審議は要らない。党中央が党中央批判・異論党員や専従を党外排除したくなれば、党中央規律委員会に命令する。党中央の下部・任命機関である規律委員会は支部・中間機関を飛び越えて、全党のどこに所属している党員でも直接に即座に除籍できる。支部へは除籍の事後連絡で済む仕掛けになっている。これほど手が掛からない簡便で実質的な除名システムはないということになる。
*この除籍措置の反動性は如何に。除籍について所属支部の審議が要らなくされている。こうなると、党中央が党中央批判、異論党員、不都合専従を党外排除したくなれば党中央規律委員会に命令し、規律委員会は支部・中間機関を飛び越えて直接即座に除籍できることになる。支部へは除籍の事後連絡ですむ。1994年以降、恣意的な除籍決定と通告という第2除名システム=簡易除名が、批判・異論党員を党外排除するための主な手法となった。
不破委員長が議長に、志位和夫書記局長(46)が委員長に、市田忠義書記局次長(57)が書記局長となる新執行部が選出された。これまで188名いた名誉議長、名誉幹部会委員、顧問らを「名誉役員」に一本化した。「中央委員歴20年以上の経験者」に推薦対象を絞られ69名に大幅減員された。宮顕名誉議長は他の名誉職と横並びの名誉役員になった。金子満広元書記局長、立木洋副委員長ら古参幹部が引退した。
【小泉政権】 4月24日、自民党総裁選本選。小泉、橋本、麻生で争われ、小泉氏が第20代自民党総裁(第87代首相)に選出された。4月26日、首相に就任する。外相に「政権産みの親」田中真紀子氏を起用した。小泉政権は「聖域なき構造改革路線」、「国債発行枠を30兆円内に収める」をシグナルし、道路公団、郵政の民営化に突き進むことになる。*この時点での小泉は或る種の期待を持たせた。しかしながら次第に馬脚を露にし、最後にはネオシオニズムの愚劣な御用聞きでしかないことを暴露する。
【第19回参議院選挙】 7月29日、第19回参議院議員選挙が行われ、自民党64、公明党13、保守党1、民主党26、自由党6、共産党5、社民党3、無所属3となった。非改選を合わせると、自民党111、公明党23、保守党5、民主党59、自由党8、共産党20、社民党8、無所属13となった。自民党が「小泉旋風」を巻き起こし、9年ぶりに過半数獲得の64議席を獲得した。
【小泉首相の靖国神社公式参拝続く】 8月13日、小泉首相が就任後初の靖国神社参拝。この時、「口は一つだが、幸い耳は二つ持っている。虚心坦懐に熟慮に熟慮を重ねて判断した」の弁を為している。2002年4月21日、小泉首相が春季例大祭に合わせて二度目の靖国神社参拝。中国側との事前調整せず。2003年1月14日、小泉首相が三度目の靖国神社参拝。2004年1月1日、小泉首相が四度目の靖国神社参拝。
【米国で9.11同時多発テロ発生】
9月11日午前(日本時間同日夜)、米国の経済中心地ニューヨーク・マンハッタン島南部の世界貿易センタービル2棟と首都ワシントン郊外にある国防省(ペンタゴン)ビルにハイジャックされた飛行機が激突(前者に二機、後者に1機)、その他ペンシルベニア州などでもテロ発生が伝えられており、同時多発テロが発生した。計約3千人が死亡又は行方不明となった。アルカイダ・テロリストの犯行とされた。これを「9.11テロ」と云う。ブッシュ政権は「9.11テロ」を奇禍としてアフガン、イラク戦争へと突き進むことになる。
*「9.11テロ」は、ブッシュ政権を盟主とする米英イスラエル派をして一挙に戦争の時代に突き進ませる契機となった。その後、「9.11テロは、ブッシュにより仕組まれた偽装テロではないか」とする論調が生まれ現在まで議論が続いている。日本左派運動は、これに対する党見解を対置できないままのお粗末さを見せている。たまに聞こえるのは偽装テロ説批判見解であり、この点で間接的にブッシュ派の聖戦論と同衾している。重症と云うべきではなかろうか。
【米国がアフガニスタン空爆開始】 10月7日、米国空軍がアフガニスタンの空爆開始。アフガン戦争始まる。
【テロ対策特別措置法成立】 10月18日、テロ対策特別措置法案、自衛隊法改正案、海上保安庁法改正案(共産党賛成で反対は社民党のみ)採決される。10月29日、テロ対策特別措置法成立。11月30日、PKO協力法改正案採決される。
【アフガニスタンでタリバン政権崩壊】 12月7日、アフガンのタリバン政権崩壊する。12月22日、アフガニスタンでタリバーン後の暫定政権が発足する。
【田中真紀子外相罷免される】 1月24日、田中真紀子外相は、衆院予算委員会で、アフガン復興支援国際会議へのNGO参加に関して鈴木宗男衆議院議員が圧力をかけたという趣旨の発言をした。「真紀子vs鈴木」の対立が公然化し、結局、田中真紀子は小泉首相に更迭され、鈴木も小泉の秘書官・飯島勲に促され衆院議院運営委員長の職を辞することになる。*鈴木は後に「二人を戦わせ共倒れさせるリングをつくりたかったのだ」と述懐している。
【元大阪高検公安部長・三井環・氏逮捕事件】 4月22日、元大阪高検公安部長の三井環(たまき)氏が、検察内部の裏金告発でテレビ局の取材を受ける予定だったこの日、大阪地検特捜部に逮捕された。容疑は捜査情報を得ようとした元暴力団組員から飲食や女性の接待を受けたなどとして収賄や公務員職権乱用罪。*明らかにこじつけのような逮捕容疑であった。
【外交官・佐藤優・氏逮捕事件】 5月14日、外交官の佐藤優・氏が鈴木宗男事件に絡む背任容疑で逮捕された。同年7月3日、偽計業務妨害容疑で再逮捕される。2003年10月、保釈。512日間の拘留されたことになる。
【鈴木宗男衆院議員が逮捕、起訴される】
6月19日、鈴木宗男衆院議員が帯広市の製材会社「やまりん」からのあっせん収賄容疑で逮捕、衆議院からの議員辞職を勧告される。7月、あっせん収賄罪で起訴される。8月、建設会社からの受託収賄容疑で再逮捕・追起訴される。9月、衆院予算委が偽証罪で鈴木議員を告発したのを受けて議院証言法違反の罪で起訴される。同時に政治資金規正法違反の罪でも追起訴される。
【小泉首相が北朝鮮を訪問、「日朝平壌宣言」調印、朝共同声明発表】 9月17日、小泉首相が北朝鮮を訪問し、金正日(キム・ジョンイル)総書記と会談。「日朝平壌宣言」調印し、日朝共同声明発表。この時、「諸懸案の解決を確かなものにするためにも、正常化交渉の再開が適切と判断した」の弁有り。10月15日、北朝鮮の日本人拉致被害者5名が帰国する。翌10月15日、拉致被害者5名が24年ぶりに帰国する。
【民主党の石井紘基議員が刺殺される】 10月25日、民主党の石井紘基衆議院議員が自宅前で何者かに刺された。
【鈴木宗男氏の公判闘争始まる】11月、 鈴木宗男衆院議員の初公判が始まる。12月、保釈を申請するも「証拠隠滅の恐れがある」として却下される。2003年4月、保釈を再度申請するも「証拠隠滅の恐れがある」として却下される。
【元革共同中核派政治局員・白井朗・氏が中核派にテロられる】 12月18日、元革共同中核派政治局員・白井朗・氏が、春日部市のマンション自室で襲撃され、両手脱臼、片足大腿骨陥没、全身打撲により救急病院へ搬送されるという事件が発生した。中核派の内ゲバ的襲撃であった。
【小泉首相が国債発行額30兆円枠公約不履行を堂々と居直る】 1月30日、小泉首相が、衆院予算委で、国債発行額30兆円枠の公約を守っていないではないかとの追求に対し、「この程度の約束を守れなくてもたいしたことではない」と発言し、物議をかもす。
【パナウェーブ研究所と称する白装束集団が俄かに登場】 パナウェーブ研究所と称する白装束集団が岐阜、長野、山梨あたりに突如登場し、マスコミが大きく採り上げる。同会は、千乃正法という宗教団体の関連組織で、電磁波攻撃、スカラー波攻撃の調査をしているとしていた。
【米英多国籍軍によるイラク戦争勃発】 3月20日、米英によるイラク戦争開戦。アメリカは、イギリス、オーストラリア、日本等の有志連合の国々とともに、フランス、ロシア、中国などの反対を押し切ってイラク戦争に突入した。5月、終戦宣言。
【鈴木宗男氏が保釈される】 8月29日、収監されたまま公判闘争中の鈴木宗男衆院議員が保釈保証金5000万円を納付し保釈された。拘置日数は437日で、戦後の逮捕された衆議院議員で最長となった。
【小泉政権下で反動法制相次ぎ立法化される】
5月6日、個人情報保護関連5法案決議される。5月15日、有事法制関連3法案決議される。5月23日、個人情報保護法が可決、成立。6月、有事関連3法を公布。7月4日、イラク復興特措法案決議される。8月、イラク特措法を公布。自衛隊派遣へ。10月3日、テロ対策特措法改正案決議される。これについて筆者はかく思う。日本左派運動は、これらの動きに対して全く闘いが組織されず、あれよあれよというまに法案が通過していった。
【民主党と自由党が合同】 7月23日、「民主党と自由党の合同」が発表された。民主党の菅直人代表と自由党の小沢一郎の党首会談が開かれ、「政権交代を目指すためには結集が必要との観点で小異を捨て大同につく」旨合意し、「次期衆院選前の両党合流に向けた協議を行う」との発表が為された。これについて筆者は思う。この政治史的意味は殊のほか大きく、久しぶりの政界流動化であり、実にこの時から政権交代の流れが本格化することになる。
【第43回衆議院選挙】 11月9日、小泉政権発足後初の第43回総選挙が行われ、自民党が議席を減らす。与党3党で安定多数維持。
【小泉政権続投】 11月19日、小泉首相が第88代首相に選出される。第2次小泉内閣発足。
【イラクでの外交官2名殺害事件】 11月29日、日本人外交官・奥克彦在英国大使館参事官(45歳)、在イラク大使館・井ノ上正盛書記官(30歳)、イラク人運転手の3名が殺害されるという事件が発生した。犯人像、犯行状況について未だに情報が錯綜しており、「不審」が付きまとっている。結果的に小泉政府は、米国の目論見通りに事件を政治的に利用し、「脅しに屈しない」との口上で自衛隊のイラク派兵盲動にのめり込むことになった。被害者及びその家族に為したことは、お定まりのテロ非難声明と葬儀の取り仕切りと何の価値もありはしない川口賞を授与するだけというお粗末振りとなった。日本政府は、日本人初の犠牲者にして現役外交官が殺害されるという不祥事にして「不審な事件」であるにも拘わらず、その捜査を米国に「丸投げ」している。主権国家の面目が疑われる失態を平然と続けており、事件被害国としての調査責任を果たそうする気配もない。*小泉首相派が対北朝鮮に見せる強面(こわもて)外交とは対照的で、腰を引かせた軟弱な対応を見せているが国家の一大不祥事であろう。が、このことをを指摘するマスコミは皆無である。恐ろしい日本に成り下がったもんだと思う。
【イラク復興特別措置法に基づく自衛隊のイラク派兵】
1月26日、小泉政権は、62回目の真珠湾攻撃記念日の翌日に当る2003.12.9日に自衛隊のイラク派遣を閣議決定し、陸上自衛隊のイラク・サマワへの派遣命令が下された。これにより陸自先遣隊がイラク入りする。1月31日、衆院がイラク復興特別措置法に基づく自衛隊のイラク派遣承認案を承認。2月9日、参院本会議でも承認された。参院本会議での採決は押しボタン方式で行われ、賛成は自民、公明両党など138票、反対は民主、共産、社民などの103票で、賛成多数で可決された。2月、陸自本隊も派遣される。
同年12月9日、イラクへの自衛隊派遣の1年延長を閣議決定し、以降繰り返されることになる。イラク復興支援費用1188億円を盛り込んだ03年度補正予算も、同本会議で可決、成立した。円売りドル買い介入のための資金調達枠は21兆円増額され、現行の79兆円から100兆円となった。更に40兆円の増額が見込まれており、最終的には140兆円規模になる見込みである。財務省と日銀が一体化させられており、日銀の相対的自主性は遠い昔物語となってしまっている。
*自衛隊のイラク派遣は、そもそもに於いて自衛隊創設時の海外派兵禁止決議違反であり、その後の自衛隊膨張に伴う安保論議に於ける国会での東南アジア海域までを専守防衛区域とする申し合わせ違反であった。小泉政権は、この縛りを一気に解いたことになる。反省すべきは、日本左派運動が健在なら、こういう暴挙が許されぬところ、この時既にこれを押しとどめる力を持たなかったことであろう。左派運動の不在により、政権党が何でもできる時代に入ったことになる。
【市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3名が自衛隊官舎内のビラ配りで逮捕される】
2月、自衛隊のイラク派兵が始まったこのころ、市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3名が、立川市の自衛隊官舎に「自衛官・ご家族の皆さんへ イラク派兵反対! いっしょに声をあげよう」という内容のビラを配ったことが、住居不法侵入罪にあたるとして逮捕、起訴され、その後も保釈されず75日間勾留された。
一審の東京地裁は「ビラ配りは憲法で保障された政治的表現活動。住民の被害は小さく、刑事罰にするほどの違法性はない」と無罪とした。しかし、東京高裁は「住民の不快感を考えれば被害は軽微ではない」として逆転有罪の判決を下した。2008.4.11日、最高裁は、3被告の上告を棄却し、「表現の自由の行使でも、官舎の共有地に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権を侵害し、私的生活の平穏を害する」と指摘。住民から被害届が出されており「被害が軽微とはいえない」として有罪の判決を下した。“立ち入り禁止の場所に無断で入ったのだから住居不法侵入だ”という形式的な判断で処理した。マスメディアの反応は、読売新聞や産経新聞は最高裁判決を支持し、本件をマナーの問題として報道した。判決はビラ配りという表現方法そのものを否定したのではなく、「節度を欠いた被告の行為」を罰したにすぎないという論調を流した。
【木村愛二氏が「小泉レイプ疑惑訴訟」を提訴】 3月31日、ジャーナリストの木村愛二氏が小泉首相を被告とする「レイプ疑惑訴訟」を提訴する。6月14日、平野貞夫議員が、「小泉首相のレイプ疑惑」を国会で追及する。*小泉首相の履歴疑惑は、1・慶応入学の浪人期年数、2・慶応大学生時のレイプ事件、3・レイプ事件後のロンドン高跳びまでの経緯、4・衆議院議員時代の神楽坂芸者変死事件について言い逃れのきかない形で疑問がある。これを解明しておくことが必要なところ、日本左派運動はサボっている不可解さがある。木村氏の「小泉レイプ疑惑訴訟」は当然の提訴であろう。同時に、小泉首相に纏わりついている数々の疑惑が実際の事件であったとすると、そういう履歴を持つ国会議員を首相に据えたこと、在任5年有余の歴代3位の在任期間を与えた日本政治の失態が問題となる。事は余りに重大なことになるが、問題にされぬまま今日まで経ている。
【「イラクでの日本人人質事件」】 4月8日、イラクで、日本人3名の人質事件が発生する(「イラク日本人人質事件」)。謎の武装集団が「イラクからの自衛隊の撤退」を要求するも、「テロには屈しない」として断固拒否。小泉政権周辺が、「自己責任論」を打ち出す。その後、人質3名は無事に解放される。さらに2名が拉致されるが同様に解放される。
【小泉首相再訪朝。拉致事件被害者家族5名が帰国する】 5月22日、小泉首相が再訪朝し平壌で金正日総書記と会談。北朝鮮に対する25万トンの食糧及び1000万ドル相当の医療品の支援を表明し、日朝国交正常化を前進させると発表。5人の拉致被害者の家族の帰国を実現。拉致被害者の家族が帰国(曽我ひとみさんの家族帰国は7月)。
【第20回参議院選挙】 7月11日、第20回参議院選挙が行われ、自民党49、公明党11、民主党50、共産党4、社民党2、無所属5となった。非改選を合わせると、自民党115、公明党24、民主党82、共産党9、社民党5、無所属7。自民党が民主党に僅差で敗れた。
【イラクで日本人の人質が殺害される】 10月、再びイラク日本人人質事件。イラク聖戦アルカーイダが「イラクからの自衛隊の撤退」を要求するも、「テロには屈しない」として断固拒否。その後、人質は殺害される。
【鈴木宗男氏が第一審で有罪判決下される】 11月5日、鈴木宗男議員が、東京地方裁判所からあっせん収賄罪など4つの罪で懲役2年の実刑判決が言い渡される。2008年2月26日、東京高等裁判所が、東京地方裁判所の判決を全面的に支持し控訴を棄却した(有罪判決)。2010年9月7日
最高裁判所が上告を棄却。懲役2年の実刑判決が確定し、身柄を収監される見通しとなった。
【小泉首相が「自衛隊が活動しているところが非戦闘地域」発言】 11月10日、党首討論で、「非戦闘地域」の定義を、「自衛隊が活動しているところが非戦闘地域だ」と答弁し、物議をかもす。 【鈴木宗男氏が保釈される】2004年11月5日、東京地方裁判所からあっせん収賄罪など4つの罪で懲役2年の実刑判決が言い渡される。2008年2月26日、東京高等裁判所が東京地方裁判所の判決を全面的に支持し、控訴を棄却した(有罪判決)。2010年9月7日 最高裁判所が上告を棄却。懲役2年の実刑判決が確定し、身柄を収監される見通しとなった。
【日共の不破夫妻の皇室外交お相伴事件】 11月17日、日共の不破夫妻が、東京元赤坂の迎賓館で、デンマークのマルグレーテ2世女王夫妻招待の夕食会に招かれ参列した。日本側の主賓は天皇皇后夫妻で、夕食会への参加は、日本の政党関係では不破夫妻だけだったとのこと。不破は、見知っている人として俳優の岡田真澄氏や外務省から宮内庁に移っていた役人がいたと伝えている(筆坂秀世著「日本共産党」141P参照)。*なぜ不破が招かれたのか何やら臭い。筆坂秀世著「日本共産党」の真価は、これを報じたことにあるように思われる。
【連帯労組関西地区生コン支部の武委員長ら組合役員4人が逮捕される】 1月13日、大阪府警が生コン業界などの労働者で組織する労働組合連帯労組関西地区生コン支部に乗り込み、武建一委員長ら組合役員4人を「強要未遂」、「威力業務妨害」、「政治資金規正法違反」、「背任」容疑で逮捕した。テレビが速報を流し、新聞は「生コン界のドン逮捕」「生コン組合、恐怖で支配」などと大見出しをつけた記事で連日キャンペーンを張った。以降、3月、11月、12月と強制捜査をくり返し、そのたびに組合役員を逮捕することになる。武委員長は1年2ヶ月、他の組合役員も3人が11ヶ月、2人が9ヶ月、1人が3ヶ月も勾留された末、2006年3月8日に全員が保釈される。
【小泉首相が郵政民営化断行の決意表明】 1月21日、通常国会召集。施政方針演説で、郵政民営化断行の決意表明。「改革断行は私の本懐とするところだ」の弁を残す。4月4日、政府が郵政民営化関連法案の骨格を決定する。4月27日、郵政民営化関連法案を国会に提出した。
【外交官・佐藤優・氏に一審有罪判決】 2月、東京地方裁判所(安井久治裁判長)が、佐藤優・氏に対して執行猶予付き有罪判決(懲役2年6ヶ月 執行猶予4年)を云い渡した。佐藤氏は控訴。
【大阪地裁が元大阪高検公安部長・三井被告に収賄罪で実刑判決】 2月1日、捜査情報を得ようとした元暴力団組員から飲食や女性の接待を受けたなどとして、収賄や公務員職権乱用などの罪に問われた元大阪高検公安部長の三井環(たまき)被告(60)に対する判決公判が大阪地裁で開かれ、宮崎英一裁判長は「現職の検察幹部でありながら、検察に対する社会の信用を大きく損なった」として、懲役1年8カ月、追徴金約22万円(求刑懲役3年、追徴金約28万円)の実刑を言い渡した。被告が訴えた検察の調査活動費(調活費)の流用疑惑については「社会的に重大な問題で、究明が必要であることは明らか」と述べた。
【中国の反日デモ激化】 4月9日、中国各地で反日デモが続発。中国の北京で、反日デモ。日本大使館の窓ガラスが破損させられる。
【郵政民営化法案を廻る郵政解散】 7月5日、郵政民営化関連法案が衆議院本会議で可決される。8月8日、郵政民営化関連法案が参議院本会議で否決される。小泉首相は直ちに衆議院解散を閣議決定し、署名を拒否した島村宣伸農林水産大臣を罷免・自ら兼務する。同日、憲法7条に基づき衆議院を解散する。小泉はこの解散を「郵政解散」と命名する。*小泉首相の衆議院での再可決をせぬままの衆議院解散は違憲行為である。しかしながら、これを指摘した党派はなかった。憲法学者を始めとする法学者は一体何を学問しているのだろうか。
【鹿砦社社長・松岡利康氏不当逮捕事件】
7月12日、1970年代学生運動の同志社大ブント履歴を持ち、社会不正告発を旨とした「紙の爆弾」を発刊している鹿砦社社長・松岡氏が、阪神タイガース元職員やパチスロ製造会社役員らを書籍やインターネット上での記述による名誉棄損罪、プライバシー侵害罪に問われ、神戸地検特別刑事部により逮捕された。本来なら、問題にするとしても、民事裁判でやるべきところである。ところが、検察が刑事事件として扱った。明らかに異常な「やり過ぎ懲らしめ」が発生した。
出版社経営者に対する「名誉毀損での逮捕は月刊ペン事件(1976年)以来」となった。同種事件として他に「噂の真相事件」(1995年)がある。「月刊ペン事件」(1976年)では、3月号、4月号が創価学会の池田会長スキャンダル記事を書いたところ、同年4月、創価学会は編集長を名誉毀損罪で告訴。同誌の編集長が逮捕され25日間勾留、1審、2審とも記事には公益性がないとして罰金25万円の判決となった。最高裁で差し戻し後、審理中に被告の編集長が死亡した為被疑者不在となり裁判が終結した。「噂の真相事件」(1995年)では、西川氏と和久氏に関わる記事の両方の名誉毀損を併合して刑事事件にされ、「噂の真相」の岡留編集長とデスクが在宅起訴された。編集長に懲役8月(求刑10月)、デスクに懲役5月(求刑6月)、各執行猶予2年の判決となった(最高裁で確定)。 鹿砦社は直ちに「不当逮捕。憲法で保障された表現の自由への挑戦で、言論弾圧である」として次のような抗議声明を発表した。詳論は「「鹿砦(ろくさい)社裁判」(「鹿砦社社長・松岡利康不当逮捕裁判闘争」)考」で言及する。
(http://www.marino.ne.jp/~rendaico/ronpyo/mascomiron/kijishiseico/hyogennojiyuco/rokusaisyasaibanco/rokusaisyasaibanco.htm)
【2005.8.15小泉首相の戦争謝罪談話】 8月15日、1995年に発表された戦後50周年の終戦記念日にあたっての村山首相談話を踏襲した小泉首相談話を発表し、第二次世界大戦中に行われた日本のアジア諸国に対する侵略と植民地支配を謝罪した。戦争謝罪の談話を発表した首相は村山富市以来。
【自民党内に郵政造反組と刺客騒動発生】 第44回総選挙のさなか、自民党内に郵政造反組に対する公認取り下げ、刺客を送り込む騒動が発生した。これをマスコミが面白おかしく取り上げ、抵抗勢力=悪の図式で煽って行った。郵政造反組は、国民新党、平沼グループ、無所属に分かれて応戦し、選挙後に深刻な亀裂を生むことになる。
【第44回衆議院選挙】 9月11日、第44回衆議院選挙が行われ、自民党296、公明党31、民主党113、共産党9、社民党7、国民新党4、新党日本1、新党大地1、無所属18となった。自民党だけで296議席、与党で327議席の歴史的大勝となった。9.21日、第89代内閣総理大臣に就任。第163回特別国会で、衆・参両議院の本会議の首相指名選挙が行われ、自民党の小泉純一郎総裁が第89代内閣総理大臣に指名された。小泉首相は、昨年9月に行った内閣改造の閣僚をすべて再任して第3次小泉内閣の組閣を行った。
【自衛隊の米軍傭兵化進む】 1月、陸上自衛隊西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市、山中洋二連隊長)が、米国カリフォルニア州で米海兵隊かに直接の訓練指導を受け、1ヶ月に及んだ。5.1日、米軍と自衛隊の「再編実施の為の日米のロードマップ最終報告」が発表された。1・共同訓練、2・基地の共同使用、3・共同作戦計画などが織り込まれていた。これにより、米軍と自衛隊の一体化が加速さることになった。5月、在日米軍再編の実施基本方針を閣議決定。「日米同盟は新たな段階に入った」と宣言。米軍と自衛隊の連携強化は一層進んだ。6月、航空自衛隊第3航空団(三沢基地)と米第5空軍(横田基地)、第11空軍第3航空団(アラスカ)によるグアムでの共同訓練が実施された。沖縄の嘉手納基地では、新たに米空軍と空自の共同訓練が実施される。
【法大闘争】 3月14日、法政大学(増田総長)当局が、法政大校内の立て看板、ビラまきを一方的に規制し始め、抗議した学生29名が逮捕される事件が発生した。以降、法大当局は活動家学生を次々と処分、逮捕者延べ110名、起訴者33名に及んでいる。
【小泉首相がイスラエル訪問、聖地巡礼】
6月30日、小泉首相は、はブッシュ大統領夫妻と共に、テネシー州メンフィスにあるロック歌手エルビス・プレスリー邸(グレースランド)を訪問した。7月12日、ロシアのサンクトペテルブルク・サミットに先立ちイスラエルへ立ち寄り、ホロコースト記念館を訪問した後、イスラエルの建国の原点にもなっている復讐の誓いを為す聖地「嘆きの壁」を訪問した。小泉首相のホロコースト記念館でのいでたちが異様であった。小泉は頭上にユダヤ教徒が頭に載せる小さなお皿のような帽子であるキッパを乗せ、「永遠の炎」のそばでたたずんでいる。これは、見る者が見れば分かる歴史的ユダヤの秘密結社の行事である。「嘆きの壁」でも、ユダヤ帽をかぶってにたたずみ、ユダヤ教徒がする仕草で祈念している。
*小泉はこたびのイスラエル訪問で、「永遠の炎前たたずみ」、「嘆きの壁詣で」という二種の宗教行為を演じた。1・日本の首相職の者が、2・ユダヤ教徒としてのいでたちで、3・ユダヤ教の信仰儀式を演じた。これは、靖国神社参拝問題を吹っ飛ばすもっと大きな衝撃的政治的事件ではなかろうか。こう感知することのできない日本世論は政治的に死んでいる。小泉首相のこの行為は、憲法上の政教分離に明らかに抵触している。日本の祖宗である神道仏教のうちの特定宗派の儀式に参加したのでも責められるのに、ユダヤ教儀式なら何故許されるのか。ここが論ぜられなければならない。北朝鮮問題には論客が現れ、かまびすしく議論するが、こういう本筋の問題には誰も近寄らないのは滑稽なことである。
【安部政権】 9月22日、3月8日に釈放されたばかりの関生支部の武健一委員長が大阪拘置所刑務官に対する贈賄容疑で逮捕された。
【安部政権】 9月20日、小泉純一郎総裁の後継を決める自民党総裁選が行われ、安倍晋三官房長官(51)が全体の6割を超える得票を集めて圧勝し、第21代総裁に選出された。9月26日、自民党の安倍晋三総裁(52)が、午後1時からの本会議で首相指名選挙が行われ、安倍氏が自民、公明両党などの賛成多数により首相に指名された。続く参院本会議でも安倍氏が指名された。第90代、57人目の首相に選出された。戦後生まれの首相は初めて。これにより、小泉内閣は総辞職して内閣総理大臣を退任した。任期満了による退任は1987年の中曽根政権以来であり、小泉政権は2001年4月26日以来の5年5ヶ月1980日の在位で戦後3位の長期政権を記録した。
【防衛庁が防衛省に移行】 1月9日、防衛庁が防衛省に移行。
【外交官・佐藤優・氏に二審有罪判決】 1月31日、外交官・佐藤優・氏に対する二審の東京高等裁判所(高橋省吾裁判長)は一審の地裁判決を支持し控訴を棄却。控訴。2009年6月30日、最高裁判所(那須弘平裁判長)は上告を棄却し、期限の7月6日までに異議申し立てをしなかったため判決が確定した。国家公務員法76条では禁錮以上の刑に処せられた者は失職すると定められており、これにより外務省を失職した。
【中国の温家宝首相が来日】 4月11日、中国の温家宝首相が来日。日中首脳会談。4月12日、温家宝首相が衆議院本会議で演説。中国首相としては史上初。
【国民投票法が成立】 5月14日、日本国憲法改正の手続きを定める国民投票法が成立。
【6.15共同集会】 1960年6月15日の国会構内での樺美智子さんの死を追悼する「6.15共同集会」が開かれ、党派の壁を乗り越える往年の闘士が集結し、集会後デモで気勢を挙げた。
【松岡農相変死事件発生】 5月28日正午過ぎ、「松岡農相の議員会館宿舎内変死事件」が発生した。事件直前までのこの日の松岡利勝農水相(62歳)の様子は伝えられていない。松岡農相は、「午前10時頃、秘書と話した」ことが証言されている。松岡農相は、この日の午後1時40分からの参院決算委員会で「緑資源機構」の官製談合事件について答弁する予定だった。事件は自殺で処理された。*松岡農相の死は自殺というより変死の状況を示している。にも拘わらず自殺処理され、与野党、マスコミから、これを疑う声が上がらないまま風化させられつつある。現役大臣の命がかくも粗末にされる時代になったことが分かる。
【新潟中越沖地震発生、柏崎刈羽原発が壊滅的な被害】 7月16日、新潟中越沖地震が発生し、柏崎刈羽原発が壊滅的な被害を受けた。3号機原子炉建屋の電源トランス(変圧器)が火災し、使用済み核燃料貯蔵プールの冷却水のオーバーフロー、排気塔からのヨウ素他の排出が報じられた。7号機では放射性のヨウ素、クロム、コバルトが検出された。1~5号機では、建屋の屋上などを通っている排気ダクトがずれているのが見つかった。さらに全7基で、使用済み燃料プールの水が作業用の床にこぼれていることが確認された。
【福田政権】 9月25日、安倍内閣の総辞職を受け国会で衆参両院の本会議が開かれ、首相指名選挙の結果、自民党の福田康夫総裁が第1回投票で首相に選ばれた。一方、与野党が逆転している参院は決選投票の末、民主党の小沢代表が133票、福田総裁が106票となり、衆参の議決が異なったため、約9年ぶりに両院協議会が開催された。衆参両院で首相指名が異なったのは、過去に芦田均(48年)、海部俊樹(89年)、小渕恵三(98年)の各首相がそれぞれ選出された時に例がある。両院協議会には衆参両院から選出された各10人の委員が参加し、それぞれの決議について採決を行ったが、いずれも3分の2以上の賛成を得られず、首相指名について成案を得ることができぬまま不調に終わった。このため午後5時半過ぎから開かれた衆院本会議で、河野衆院議長が「憲法67条の規定により、衆院の議決(福田氏の指名)が国会の議決となった」と宣告、福田氏が
第91代、58人目の首相に選出された。福田氏の父の故赳夫氏が1976~78年に首相を務めており、憲政史上初の親子首相となる。
【民主党の小沢一郎代表の辞任騒動】 11月4日、民主党の小沢一郎代表が大連立構想に伴う党内の混乱の責任を取って辞任を表明。11月6日、辞任表明した民主党の小沢一郎代表が辞意を撤回する。
【法大闘争】 この年も法大で闘争が続いている。法大当局-教授会は弾圧体制を強め、活動家学生の退学、無期停学処分連発、学友会解体決定、ガードマン倍増による警備強化で対応した。闘う法大生は公判闘争も含め果敢に闘いを続行した。
【イージス艦衝突事故】 2.19日、海上自衛隊所属の護衛艦あたご(イージス艦)と漁船・清徳丸が千葉県の野島崎沖衝突する海難事故が発生し、漁船の乗員であった船主(58歳男性)と船主の長男(23歳男性)の2名が行方不明となる事故が発生した。数十日間におよぶ漁協関係者・海上保安庁・海上自衛隊3者が懸命の捜索をおこなったが発見できず、5.20日、認定死亡とされた。
【法大闘争】 5月20日、文化連盟と全学連が、学友会解体過程での恩田君処分に対する5・20実力決起闘争を敢行した。続く5月29日、戦闘的なキャンパスデモを敢行した。次のように確認されている。「弾圧と処分によってしか学生支配を維持できない大学の腐敗を暴露し、学生が団結して立ち上がった時にそれは無力化できることを示し続けてきた」。7月3日、法政大学当局が文化連盟の学生に呼び出しをかけ活動の沈静を目論む。内田、鈴木、市川君の3名が「転向拒否」し、キャンパスで「処分阻止・新自由主義大学打倒・サミット粉砕」を訴えビラまきを敢行。7月24日、「法大弾圧ぶっとばせ!7・24全国集会」当日、警視庁公安部により会場近くの中野駅前で逮捕される。8月14日、東京地検により建造物侵入罪で起訴される。
【麻生政権】 9月22日午後、自民党総裁選が過去最多の5氏(麻生太郎幹事長、与謝野馨経済財政担当相、小池百合子元防衛相、石原伸晃元政調会長、石破元防衛相)で争われ、1回目の投票で麻生氏が全体の7割近い351票(国会議員票217、地方票134、総得票率66.9%)の過半数を得て第23代総裁に選出された。麻生氏の祖父は、戦後保守政治の基盤を築いた故吉田茂元首相、妻は故鈴木善幸元首相の三女。9月24日、首相指名選挙を経て新内閣を発足させた。麻生首相は24日夜、首相官邸で就任後初の記者会見に臨み、「景気への不安、国民の生活への不安、政治への不信という危機にあると厳しく受け止めている。日本を明るく強い国にすることが、私に課せられた使命だ」と決意を表明した。
【米国で民主党のオバマ政権誕生】 11月6日、民主党オバマが共和党マケイン候補に大差をつけ次期米国大統領選に勝利した。アメリカ国政史上初の有色人種大統領が選出されたことになる。オバマはチェンジとイエス・ウィ・キャン(われわれはできる)を旗印に掲げ、ブッシュ共和党の好戦政治からの転換、内治重視政治を標榜している。これを支持した労働者大衆の期待を担うのか裏切るのか、はたまた暗殺されるのかに関心が寄せられている。
【小沢・元民主党代表の公設秘書が逮捕される】 3月3日、小沢・元民主党代表の公設第一秘書の大久保隆規氏が、東京地検特捜部により西松建設事件に絡み政治資金規正法違反で逮捕された。起訴後の5月26日、保釈される。
【法大闘争】
2009年3月、法政大当局が、大学の「営業権」を理由としてビラまきを禁止する「情宣禁止仮処分」を発令した。4月8日、「追加処分」抗議学内集会とデモが敢行される。4月14日、法大キャンパス中央で新入生がビラまきに決起。4月24日、「不当処分撤回! 法大解放集会」を呼びかけ1500人の大集会。概要「増田体制が『入構禁止看板』を掲げ学生活動家を取り締まっていることに対し、これこそ監獄大学・法大の象徴である。学生の看板を一切認めない法政大学が、学生が大学の看板を認めないと言ったら警察に逮捕させる。こんな理不尽な逮捕が許されるのか!」」と抗議する署名を集め、ビラをまく中でキャンパス討論が始まる。これに対し、約300名の警察が学生らに襲いかかり、文化連盟副委員長の恩田、倉岡ら5学生を逮捕する。4月30日、法大で4・24闘争に続き60名が参加して正門前集会と抗議デモが闘われた。その後、法大総長室と、恩田・文連副委員長が勾留されている麹町警察署に怒りのデモをかけた
5月15-16日、12名が一斉逮捕された。6月5日、4人の仲間を奪還。全学連の織田委員長、法大文化連盟の恩田副委員長、増井企画局長をを始め5名が暴処法違反によって再逮捕・起訴される。続いて、不起訴でいったん釈放された文化連盟の斎藤委員長ら3名が4・24法大解放集会における「威力業務妨害」などのデッチあげ容疑で再逮捕される。6月8日、4・24集会に関して逮捕されていた全学連の冨山書記長を起訴される。6・14-15闘争。渋谷2100―法大1200の大結集で「労学共闘」集会。6月20日、文学部教授会が、文化連盟A君(社会科学研究会所属)に対し「停学1カ月」の処分を下す。処分理由は「今年2月19日の正門前での看板破壊に加わった」とされている。こうして、法大は、「弾圧に次ぐ弾圧、処分に次ぐ処分によってしか学生支配を維持できない」状況に至っている。
【小沢キード事件勃発】 3月3日、東京地検特捜部は、国内で多額の裏金を作っていたとされる準大手ゼネコン「西松建設」(東京)の政治献金に絡み、違法献金を受けていた疑いが強まったとして、小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で、小沢代表の公設第1秘書を務める大久保隆規容疑者(47)、西松建設前社長の国沢幹雄容疑者(70)=外国為替及び外国貿易法違反の罪で起訴=ら計3人を、政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕し、東京都港区の陸山会など関係先の捜索に乗り出した。これを「小沢第一秘書逮捕事件」と云う。これにより、小沢民主党代表の責任問題追及が始まる。
【オバマ大統領の核兵器廃絶演説】
4月5日、オバマ米国大統領が、プラハで核兵器廃絶演説を行った。次のように述べている。概要「米国は核兵器のない、平和で安全な世界を追求していくことを明確に宣言する。核兵器を使用したことのある唯一の核兵器保有国として、米国は行動する道義的責任がある。協力のよびかけを非難したり、一笑に付すのは簡単だが、臆病な行為でもある。それは戦争のきっかけともなる。そこでは人間の進歩はとまってしまう。核兵器のない世界にむけて一緒になって平和と進歩の声を高めなければならない。私は世間知らずではない。この目標はすぐに到達できるものではない―おそらく私が生きているうちには無理だろう。辛抱強さと粘り強さが求められる。しかし今、われわれは、世界は変えられないという人たちの声にも耳を貸してはならない。われわれは強く主張しなければならない、イエス・ウィ・キャン(われわれはできる)」。
核兵器最大保有国アメリカが、「核兵器のない世界-核兵器廃絶を国家目標とする」ことを公言した。「核兵器のない世界に向けた具体的措置」として、新しい戦略核兵器削減条約の交渉開始、包括的核実験禁止条約の批准、兵器用核分裂物質の製造を禁止する条約の追求などをあげた。
【大阪地検特捜部の厚生労働省官僚逮捕事件】
4月16日、大阪地検特捜部が郵便法違反容疑で凛の会設立者の倉沢邦夫被告らを逮捕。5.26日、大阪地検特捜部が、証拠品として上村被告の自宅からフロッピーディスク(FD)を押収。5月27日、稟議書を偽造したとして厚生労働省の上村勉係長(41歳)らを逮捕。6月14日、大阪地検特捜部が、上村被告に証明書偽造を指示したとして村木厚子局長ら4人を逮捕。6月29日、検察がFDを印刷したデータを証拠採用した捜査報告書を作成する。7月4日、特捜部が村木局長、上村被告ら4人を起訴。これを仮に一括して「郵便不正事件」と命名する。事件を担当した検事は、前田恒彦主任検事、高橋和男副検事、牧野善憲副検事、坂口英雄副検事、林谷浩二検事、國井弘樹検事である。國井検事は大阪地検刑事部から特捜部へ抜擢され、村木局長を取り調べた。この國井検事が前田検事の証拠物改竄に疑義を訴えることになる。
検察の筋書きでは、上村被告が村木被告から証明書の不正発行を指示されたのは2004年6月上旬。上村被告が証明書を作成したのはその後という構図となっていた。ところが、上村被告の自宅から押収していたFDの最終更新日時は「04年6月1日午前1時20分06秒」であった。この期日は、検察にとって都合の悪いものだった。7月13日頃、前田検事は、検察側の構図と合わすべくFD改竄に着手した。これを「前田検事による押収証拠物改竄事件」と云う。これを前田検事が独断でしたのか、上司との相談の上での行為であったのかは今のところ定かではない。
【小沢代表辞任】 5月11日、西松建設の献金事件を受け、小沢氏が代表辞任を表明。5月16日、民主党両院議員総会で、鳩山氏が代表に選出される(鳩山由紀夫124票、岡田克也95票)。
【第45回衆議院選挙】 8月30日、第45回衆院選が行われ、自民党119、公明党21、民主党308、社民党7、国民新党3、新党日本1、新党大地1、みんなの党5、無所属6となった。政権与党の自公が大敗北を喫し、野党第一党の民主が大躍進で第一党となり、悲願の政権交代を掌中のものにした。*これは、国政の最高権力機関である国会における「選挙による平和革命という政変」であり、日本史上のみならず人類史上でさえ非常に珍しい政権交代である。新政権の真価はこれから明らかになるが、日本政治史が大きく動き始めたことになるのは間違いない。この動きと共に歴史を生きられる僥倖を喜ぶべきであろう。
【鳩山民主連合政権登場】
9月16日、民主党の鳩山由紀夫代表が、民主連合(民主、社民、国民新各党など)の支持を得て衆参両院で過半数票を獲得し、第93代、60人目の首相に指名された。非自民勢力による政権交代は平成5年の細川政権以来の16年ぶりであった。鳩山首相は直ちに組閣に着手し、自公政権と様変わりの民主連合の「老、壮」のバランスが良い登用により清新な閣僚が登場することとなった。*日本左派運動は、この鳩山民主連合政権をどう評し向き合うのか、又もやまともな評論ができなかった。筆者は、55年体制が真の意味で完全に断ち切られ、新たな枠組みの下で政治が始まった、戦後左派運動の能力が問われる面白い局面に至ったと判じたい。
【鳩山民主連合政権の低迷】 2009年9月に誕生した鳩山政権は、年が明け「政権ハネムーン」を終えても一向に2009総選挙時のマニフェストに対する実行がなく、日本人民大衆は次第に失望して行く。
「コンクリートから人へ」、「子育て支援」等々のスローガンを打ち出すが、「コンクリートから人へ」は土木建設業界から反発され、「子育て支援」は単なる給付金政策に過ぎないことを批判され、足元を掬(すく)われる。年初より沖縄普天間基地の移転移設問題が浮上し、2009年総選挙で「国外、最低でも県外」と言明してきた民主党の政治能力が問われることになった。並行して、「政治とカネ問題」が浮上し、小沢幹事長、鳩山首相のツ―トップが矢面に立たされる事態になる。
【小沢・元民主党代表の秘書2名が逮捕される】 1月16日、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」の土地購入経緯を巡る陸山会事件で政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で東京地検特捜部に民主党国会議員である石川知裕、公設第一秘書の大久保隆規氏が逮捕される。大久保氏は2月4日、起訴。2月5日、保釈。3月、公設秘書を辞職した。東京地方検察庁が西松建設事件の起訴内容に陸山会事件を加える訴因変更を申請し、弁護側は「訴因変更は違法」と主張。6月16日、最高裁判所が訴因変更を認めると云う異例な進行になっている。
【厚生労働省の村木元局長が容疑否認。検察起訴上の期日ズレを批判する】 1月27日、村木元局長は、初公判で検察の起訴状の内容を堂々と否認した。弁護団も、弁護側冒頭陳述で、FD期日のズレを咎めて「検察側の主張は破綻している」と訴えた。
裁判長がこれを認め「検察側の主張と符合しない」と指摘した。マスコミメディアは、この騒動を報道しなかった。この為、検察側は捜査報告書を作成し直し、それが新たに証拠採用されると云うこれまた恐らく前代未聞の失態を演じている。9月10日、村木元局長に無罪判決下されることになる。
【「国鉄1047名問題(JR不採用事件・1047名解雇問題)」が解決する】
4月9日、「国鉄1047名問題(JR不採用事件・1047名解雇問題)」の政府案が策定され、4者4団体が受け入れを決定した。解決内容は、和解金が200億円(組合員や遺族ら計910世帯に1人当り2200万円)、雇用については「政府がJRへの雇用について努力する」としている。
4月26日、国鉄労働組合(国労)本部は社会文化会館で臨時大会を開催し、「和解案」の受け入れを強行した。組合員や家族ら560人が参加。高橋伸二・中央執行委員長は「国鉄改革法によって作り出された組合差別との闘いを解決に導いた意義は大きい」とあいさつ。JR各社に対し不採用者の雇用確保を訴えていく方針も議決した。
【米軍普天間飛行場の移設先をめぐり沖縄県民大会】 4月25日、前日24日、米軍普天間飛行場の移設先をめぐり、辺野古埋立修正案としてくい打ち桟橋方式が大きく報道される中、読谷村運動広場で沖縄県民大会が開かれ、大会開始時で約10キロの渋滞で会場に到着できなかった約1万人を含め、計9万人が大集結した。同日、宮古島集会に3千、前日の八重山集会に700が結集。全体で計9万3700名の参加者となった。
【菅政権】 6月4日、菅直人副総理兼財務相(63)と樽床(たるとこ)伸二衆院環境委員長(50)を候補とする両院議員総会による民主党代表選が国会内の講堂で開かれ、菅291票、樽床129票(無効2票)となり菅氏が新代表に選出した。同日、衆参両院は首相指名選挙を行い、衆院本会議の首相指名選挙では、「定数480、過半数241」のところ民主党の管直人313票、自民党の谷垣禎一116票、公明党の山口那津男代表が21票、共産党の志位委員長が9票、福島瑞穂7票、渡辺喜美5票、平沼赳夫5票、舛添要一1票。参院本会議では「定数242、過半数119」のところ、菅直人123票、谷垣禎一71票、山口那津男21票、志位和夫7票、福島瑞穂6票、舛添要一6票、平沼赳夫2票、渡辺喜美1票で、民主党の管直人代表が衆参両院で過半数の票を獲得し、第94代61人目の首相に指名された。政治家一族出身ではない非世襲首相は村山富市以来で、東京工業大卒としては初めてとなる。管首相は直ちに組閣に着手し、内閣の要となる官房長官に仙谷由人国家戦略担当相、党幹事長に枝野幸男行政刷新担当相を起用し、露骨な反小沢シフトを敷き出航した。
【第22回参院選】 6月24日、第22回参院選挙が公示され、7.11日の投開票となった。菅政権は奇妙なことに財政再建を名目に自民党が打ち出した消費税10%案に相乗りし、選挙戦のさなか吹聴して行った。これが為、候補者が弁明を余儀なくされ選挙戦を通じて守りの選挙に終始させられた。菅首相は、次善策として消費税10%案の適用除外所得層論を唱え始めたが、遊説先で年収300万円、350万円、400万円云々を対象とすると云うデタラメの釈明をすることで有権者の反感を増幅させた。選挙結果は、政権党の民主党は改選数54議席から44議席となり惨敗した。自民党は38議席から51議席へと復活させた。その他、みんなの党が大当たり10議席、公明ジり貧9議席、共産ジりジり貧3議席、社民ジり貧2議席、たちあがれ1議席、改革1議席、国民新党無惨なり0議席、その他諸党0議席となった。菅政権は、この選挙結果に対して何らの責任を取らなかった。幹事長、選対責任者は無論のこと落選した千葉景子法相も続投となった。
【3労組(連帯ユニオン・生コン産労・全港湾)が無期限スト】7月2日、大阪広域生コンクリート協同組合に対して3労組(連帯ユニオン・生コン産労・全港湾)が無期限ストを通告、大阪府一円で生コン製造や出荷を停止させる。7月5日、阪神地区生コン協同組合に対しても、3労組が無期限ストを実施、兵庫県西宮以東の地域で生コン製造や出荷を停止させる。7月6日、近畿バラセメント輸送協同組合に対して3労組が無期限ストを通告し突入、近畿一円でセメントメーカーのSS(サービスステーション)からの出荷を止める。近畿圧送経営社会に対して圧送労組と連帯ユニオンの2労組が、「春闘事態が打開されなければ7月12日から無期限ストに突入する」と通告。
【民主党代表選】
9月14日、菅首相と小沢前幹事長の一騎打ちとなった民主党の代表選挙が都内のホテルで行われ、菅候補が小沢候補に圧勝した。内訳は次の通り。党員サポーター票(34万2394人)300ポイント、地方議員(2382人)票100ポイント国会議員411名(衆院305、参院106)のうち409人が投票(無効票3)、1人2ポイントの822ポイントで争われ、菅首相は、党員・サポーター票249ポイント、地方議員票60ポイント、国会議員票206人(412ポイント)の合計721ポイント。小沢前幹事長は、党員・サポーター票51ポイント、地方議員票40ポイント、国会議員票200票(400ポイント)の合計491ポイント。予想を上回る200ポイント以上の大差となった。
但し、この党首選は不正選挙の疑いの濃い後味の悪いものとなった。その最大の根拠は、党首選でありながら投票率が異常に低い有権者数342,394人に比して投票者数229,030人の投票率66・9%にある。なっている。、「党員サポーター票の小沢票抜き取り」が疑惑されている。投票用紙の保管方法も含め物議を呼んでいる。
【菅改造内閣発足】
9月17日、菅首相は、閣僚10人を入れ替える大幅な内閣改造を行い、菅改造内閣が発足した。小沢一郎元幹事長と戦った党代表選のしこりが残る中、小沢氏を支持した鳩山前首相のグループから海江田万里経済財政担当相と大畠章宏経済産業相の2人が入閣した。小沢グループからの入閣はなく、閣僚人事でも「脱小沢」路線を貫いた。旧社会党系や旧民社党系の中間派グループにも配慮した。官房長官に留任した仙谷官房長官が同日午後、閣僚名簿を発表した。岡田外相の後任に前原国土交通相が就くほか、海江田万里衆院財務金融委員長が経済財政相で初入閣した。野田財務相、北沢防衛相、蓮舫行政刷新相らは留任した。新たに馬淵澄夫が国土交通相、玄葉光一郎が国家戦略担当相兼政調会長に登用された。
菅首相は首相官邸で記者会見し、改造内閣を「有言実行内閣」と命名した。首相は民主党政権の1年を「試行錯誤を繰り返した内閣だった」と述べ、「具体的なことを実行する有言実行内閣を目指す」と表明した。そのうえで、重点課題として〈1〉金融・財政対策〈2〉国際社会での活動〈3〉地域主権改革――の3点を挙げた。
【大阪地検特捜検事逮捕事件】 9月21日、朝日新聞朝刊が厚生労働省官僚逮捕事件の検察不正をスクープする。最高検が、大阪地検特捜主任検事の前田検事を証拠隠滅容疑で逮捕する。大阪地検が、村木さんの控訴断念を発表する。9月23日、最高検が、大坪前部長、佐賀前副部長の事情聴取を開始する。10月21日、最高検が、郵便不正事件に絡む証拠改竄隠蔽事件で、大坪、佐賀両容疑者を大阪地検に移送した上で犯人隠避罪で起訴した。同日、法務省は、二人を懲戒免職処分とした。法務省は、小林敬・大阪地検検事正を減給4ケ月、玉井英章・当時の大阪地検次席検事を同6ケ月の懲戒処分、三浦正晴・当時の大阪地検検事正を同1ケ月、太田茂・当時の大阪高検次席検事を戒告、伊藤鉄男・最高検次長検事を訓告、国井弘樹・大阪地検検事を減給1ケ月処分に付した。三浦、小林、玉井検事は処分を受け辞職した。
【鈴木宗男衆院議員が収監される】 12月6日、最高裁まで争い敗訴し、9月16日、衆議院議員を失職した北海道の地域政党「新党大地」の代表・鈴木宗男衆議院議員が収監された。鈴木氏は、「法治国家だから、間違った判断でも国家の決定には粛々と従わざるを得ない」とのソクラテス的法理論に従い出向いた。
【小沢元秘書の公判闘争始まる】 2月7日、小沢元秘書の公判闘争の第1回公判の冒頭陳述で、大久保被告は世田谷区の不動産購入を巡る虚偽記載及び、小沢自身の関与、水谷建設からの闇献金授受の疑惑を全面的に否定した。
【三陸巨大震災】
2011年3月11日午後2時46分頃、東北太平洋側の三陸沖を震源とする東日本一帯に巨大地震が発生した。気象庁はマグニチュード(M)8・8と発表した。米地質調査所(USGS)はマグニチュード(M)の暫定値を8・9とした。USGSのマグニチュードは気象庁と計算方法が異なる「モーメントマグニチュード」のため同庁発表のM8・8と数値に差がある。3.13日、気象庁は、東日本大震災についてマグニチュード(M)を8.8から9.0に修正した。これを仮に「三陸巨大震災」と命名する。これにより死者3万人、被災難民30万、倒壊家屋、車両に甚大な被害が発生した。
菅政権は阪神大震災の教訓を学ぶとして震災後直ちに自衛隊10万人態勢を動員し現地に派遣した。但し、治安活動を重視した救援活動となり緊急事態の応急活動としての在り方に疑問が残るものとなった。これに要した総費用と効果の査定は未だ為されていない。
【福島原発事故】 三陸巨大震災は東京電力の福島第一原発、第二原発に甚大な被害を与え、メルトダウン寸前の事故により放射能の大気汚染、冷却水の放出による水質汚染等々で、史上初の本格的な原発事故による甚大な被害を与えた。これについては事後対策も含め2011年5月5日現在、予断を許さない状況下にある。
【ウサマ・ビンラーディン容疑者暗殺報道】 5月11日、大阪府警警備部が、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部、大阪市西区)の副執行委員長、高英男(コウ・ヨンナン)容疑者(54)=韓国籍、京都市南区東九条明田町ら計12人を生コンクリート会社に集団で押しかけ、出荷を妨げたとして威力業務妨害容疑で逮捕した。逮捕容疑は昨年5月14日朝、大阪市此花区の生コンクリート会社の工場に組合員ら約百人で押しかけ、出社する社員に立ちふさがったり、工場長を取り囲んで謝罪を求めるなどして、同社の生コンの出荷を妨げたとしている。