国家や地方公共団体と、宗教とを分離する憲法上の原則。日本では明治以来、国家と神道が密接に結びついていた。太平洋戦争後、国と神道との結びつきが戦争突入に関係したと考えた連合国軍総司令部(GHQ)が1945年に神道指令を出し、国家と神道とが分離された。その後、日本国憲法の発布で、政治と宗教の分離が確立した。「二度と国家と神道とを結び付けない事を国内外に約束するものとして盛り込まれた経緯」がある。
信教の自由を保障した憲法20条は、宗教団体が国から特権を受けたり、政治上の権力を行使することのほか、国が宗教的活動をすることも禁止している。具体的には次のように規定している。
憲法第20条 【信教の自由、国の宗教活動の禁止】 |
1 |
- 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
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Freedom of religion is guaranteed to all. No religious organization shall
receive any privileges from the State, nor exercise any political authority. |
2 |
何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 |
No person shall be compelled to take part in any religious acts, celebration,
rite or practice |
3 |
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。 |
The State and its organs shall refrain from religious education or any
other religious activity. |
キリスト教団体その他宗教団体は、首相の靖国神社参拝に対して次のように批判している。
意訳概要「靖国神社は、戦後の一連のGHQ措置で国家管理から離れ、東京都認可の一宗教法人として再発足した。民間神社になった以上、首相の靖国神社参拝は、憲法第20条の規定する『いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない』、『国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない』の規定に反することになる。要するに靖国神社という特定の宗教団体に対する肩入れは許されず、不当なものである」。 |
又、89条では、宗教団体への公金支出も禁止している。
憲法第89条 【公の財産の支出利用の制限】 |
公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 |
No public money or other property shall be expended or appropriated for the use, benefit or maintenance of any religious institution or association, or for any charitable, educational or benevolent enterprises not under the control of public authority. |
愛媛県の玉ぐし料訴訟では、地方公共団体による神社への公金支出も政教分離の原則に反するとの最高裁判決が出ている。(2004.4.8日、毎日新聞「NEWSことば」参照) |